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January 6, 2012
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カテゴリ: ミステリ(日本)

【送料無料】 砂の器 上巻 新潮文庫 改版 / 松本清張 マツモトセイチョウ 【文庫】

【送料無料】 砂の器 下巻 新潮文庫 改版 / 松本清張 マツモトセイチョウ 【文庫】
松本清張
新潮文庫
☆☆☆☆☆
 昨秋(実は昨春3月12日放映予定だったのが半年延びた)のドラマを観てから読んだ。原作の大体の結末も知っていたのだが、それはそれで楽しめた。主人公がベテランの今西から若手の吉村に変わっているだけでなく、他の点でも違いがあり、そこが意外に面白いところだったりしたので、ドラマとの相似点・相違点を較べるのも面白かったし、原作のストーリーを知っていたところで、この著者の小説全般に言えるような気がするが、この小説は今となっては推理小説としての価値より時代風俗小説としての価値の方が大きくなっているような気がするので、あまり興がそがれるようなことはなかった。また、ドラマでみたせいか、今西と吉村がドラマの俳優さんに置き換わって読めたのでそれも却ってよかったと思う。ただ、和賀はそうでもなかったかな。
 特に和賀の音楽の描写は面白かった。和賀が音楽家だというのは知っていたし、ドラマでもオーケストラを指揮して自作自演をやっていたので、そのままだと思っていたら、原作では電子音楽だったのはかなり意外だった。しかも、その演奏会はいわゆる現代音楽・前衛音楽の演奏会風景だ。(今ならちょっと古めかしいかもしれない)また、和賀の自宅の様子も興味深い。今でいうスタジオだし、しかもそこで説明されているのは、ただその辺にある音を音楽にしている(ミュージック・コンクレートというらしい)だけでなく、シンセサイザーに似た原理も説明されている(というかそのあたりに少し著者自身及びまだそこまで分化していなかった時代ゆえの混同があるような気がする)今でこそ音のサンプリングも普通に行われているし、シンセサイザーも普及しているが、この本の初版は1961年なのだ。調べてみたら、50年代半ばにシュトックハウゼンが和賀がやったようなのと同じようなことをやっているようだし、日本でも黛敏郎や武満徹、湯浅譲二などが作品を発表していたようだが、モーグのシンセサイザーが最初に発表されたのは64年なのだ。半世紀近く後になって読んでみると、改めて和賀(の設定)が当時の最先端をいく音楽家だったのが分かる。ただ、その仲間のヌーヴォーグループの面々はちょっとおバカさんっぽいけど。ただ、他の本の記述(司馬遼太郎の「街道を行く~琵琶湖・奈良散歩」)にもあったので思い出したが、この時代、既存の価値観や伝統などにとりあえず否定反抗する若い人々(代替の中身があるかどうかは不問)がいたようなので、そういう若い人々の描写なんだろうな。
 もっとも残念ながら 和賀が最初の被害者以外に取った音波を使う殺人方法は、原理としてはSFでもよく出てくるが、今でも市販されて簡単に入手可能な技術でも不可能だ。これが採用されているあたりでも、現代小説というより、そろそろ時代小説といってもいい状態かもしれない。
 それに、動機などはもっとドロドロした描写を予想していたが、不足に感じるほどあっけない描写だった。ただ、今とは時代が違うというのも大きい。正直想像はつくが実感はできない。これ、発表直後はドロドロ描写しなくても読者は実感できたんだろうか。
 そういえば、今西刑事の自宅の描写でお風呂がないというのにも時代を感じてしまった。しかもお風呂をつけるには建て増ししなければならないが、予算がないという記述まであるのだ。あと、彼が捜査のために歩き回る地域の描写はこの著者のお得意の一つだと思う。これも往時の日本の描写で郷愁をそそられる。そういえば、 東北弁に似た言葉を話す地域が山陰地方にある という記述は著者の日本古代史への造詣へと繋がりそうな気もするが、ここの名産が算盤で、今西刑事がこれを使う場面も出てくる。このあたりが本当に隔世の感だ。いま、この町はどうなっているのだろう?





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Last updated  January 6, 2012 02:24:36 PM
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