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August 13, 2012
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カテゴリ: 日本の小説

【送料無料】朱鳥の陵 [ 坂東真砂子 ]
坂東真砂子
集英社 四六上製
☆☆☆☆☆◎
 亡くなった高市皇子の妻、御名部皇女の見た夢の夢解きを依頼されて、彼女と(後の)元明天皇の元にはるばる香島(=鹿島)から藤原京に召しだされた白妙は、その夢解きを行おうとすると讃良と呼ばれる(=持統天皇、作中では既に譲位して太上天皇となっている)皇女の追憶に入り込んでしまう。そして、白妙の視線を中継に、持統天皇の生涯が描かれる。
 持統天皇の生涯は里中満智子さんの漫画「天上の虹」を大体読んでいるのでおおよそは把握しているのだが、それでも冒頭のルビだらけで、皇太妃(おおきさい)だの大納言(おおいものもうすつかさ)だのの言葉にかなり戸惑った。それに、讃良の幼い頃の周辺の人間関係からいくので、最初は誰が誰やら時代も分からずかなり読むのに時間がかかったのだが、およその人間関係が把握できてからは一気に読めた。
 それにしても、この小説、この時代の古代史好きにはたまらない内容。持統天皇は日本の女帝の中でも存在感の大きい女帝の一人だが、彼女が歴史上なしたといわれている事柄についての解釈もなかなか面白い。私は息子草壁皇子を盲愛する母より、こちらの権力欲の強い、鉄の女という解釈の方が好きだ。
 そして、クライマックスになるにつれ、展開はスリリングになっていく。権力を掌中にするために持統天皇がやったことは実に壮絶。そして、最初にこの本の案内を読んだ段階で、白妙の名が出てきて、あの百人一首の歌の白妙だなーと思っていたら、この歌に見事な (そして凄惨な) 解釈が添付されている。
 そして、 ラストははっきりいって怖い。読後感については、読書サイトではあまり良くないとかいておられる方も多いが、私にとってはさほど悪くない。確かにこの終わり方では白妙は気の毒だが、ハッピーエンドではないだけだ。

この時代の有名人は結構出てくるのだが、私も読書サイトのほかの方の感想を読んでいて同感だったのだが、他の登場人物に比べて白妙の存在感が希薄に感じるのだ。でもそれも、他人の夢に入り込む彼女の能力ゆえなのかもしれない。
 昨秋私は持統天皇が壬申の乱のときに逃げ込んだ吉野の宮滝に行ったのだが、この本を読んでいたら、もっと楽しくあのあたりを歩けただろうなぁ。実際、夢の環蛇にも行った記憶があるのだが、ただの水の流れにしか見えず、少々残念だった。
 私は随分前にこの著者の書いた奈良のエッセイが私の持つ奈良のイメージに近く、とても感銘を受けたのだが、この小説もその流れの上にある。大好きな奈良時代を舞台にしたかなり好みの小説に出会えてとてもうれしい。しかもこの本、ブックデザインもとても素敵なのだ。奈良時代が好きな人のツボを押さえた小説だ。





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Last updated  August 14, 2012 02:53:43 AM
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