CHI-AKIの部屋

CHI-AKIの部屋

2006.03.26
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緑の天蓋



 咲耶山の中腹で、その少年は目覚めた。
 少年の名は、中井友樹(ナカイ トモキ)。
 年は10歳。
 目を開けると、視界を埋め尽くしていたのは真っ白な世界だった。
(……雪?)
 目覚めた友樹は、青い空から降り注ぐ白いものを見て、雪かと思った。
 しかし、自分の身体を埋め尽くすかのように降ってくるものが肌に触れても冷たく感じないことに気付く。
「…………」
 自分に降り注ぐ桜の花びらがあまりにも綺麗だったので、友樹はそれをぼんやりと見ていた。
 しばらく桜吹雪を見ていた友樹は、自分が桜の花びらに半ば埋もれかかっているのに気付き、身体を起こした。
 周りを見ると、そこは見たことも来た事もない場所だった。
「ここ、どこ?」
 まぶしいくらいの晴天。
 友樹は花見に来た記憶はまったくなかった。
 常春の幽玄郷には不似合いな、黒いタートルネックのセーターと厚手でこげ茶のコーデュロイのパンツをはいていた友樹は、少し暑さを感じていた。
 無理もない。
 寒さの残る春先ならともかく、今、友樹は初夏の香りのする場所にいるのだ。
 しかも、気温が少しずつ上がっていくのが肌で感じられた。
 暑さを感じた友樹が思わずセーターを脱ごうとした――その時、それは起こった。

 どん!

 ごんっ! 


 何かが全速力で背中からぶつかってきたのだ。
 それは背中にぶつかった後バウンドして、友樹の後頭部にぶつかり、腰の後ろで止まった。
「~~~っ!」
 予想だにしなかった衝撃に、上半身を前に突っ伏した格好の友樹は目をチカチカさせ、背中を襲った痛みに涙目になる。
(何が起こったんだ……?)
 突然のことで、自分の身に何が起こったのかわからない友樹。
「いたたたた……」
 背中から自分より高い子供の声がして、友樹は頭と背中をさすりながら振り返った。
 ――そこには、見たことのない物体がいた。
「…………」
 それは、若草色の丸っこい物体。
 リュックを背負った背中には、メロンパンみたいな模様が描かれた青緑色の甲羅がある。
「こんな所に岩なんかあったっけ?」
 しかも、それは動いてしゃべっている。
「カメの新種……?」
 思わず友樹がつぶやくと、そのつぶやきに反応した生物は、「カメじゃないもんカッパだもん!」と、猛烈な抗議を返してきた。
 しかし、友樹の姿を確認したカッパだと叫んだ謎の生物は、びっくりした顔(?)をしてつぶやいた。
「えっ、人間?」
 目と目が合った次の瞬間――。

 ザーッ――

 晴天だった空はいつの間にか雨雲で覆われていて、滝のような雨が二人を襲った。
「わっ、とうとう梅雨になっちゃったよ」
 困ったようなセリフを言いながら、空を仰いだカッパは全然困った感じがしない。
 少し暖かい雨に濡れて、逆に気持ちよさそうでもあった。
 一方、いきなりずぶぬれになってしまった友樹は、頭が混乱していた。
「さっきまで満開だったのに……」
 いつのまにか、周りの木はすべて葉桜になっていた。
 周辺の変化についていけなくて、友樹は茫然としている。地べたに座ったままだった友樹の服が雨を吸って少し重くなっていく。
「僕はカッパ! キミの名前は?」
「友樹……」
「トモキ、だね? 僕と一緒に来て!」
 何が何だかわからなかったが、友樹はカッパに促されるまま咲耶山を下山することになった。
 降り注ぐ雨が、地面を覆っていた桜の花びらをさらって斜面を伝い下りていく――。


             〔来訪者 3〕へ続く……




 他のキャラクターが出てくるだろうと思っていた方、ごめんなさい。
 人間の男の子・友樹くんの登場です。
 苗字の『中井』は、DCカードの某俳優さん(ばればれじゃん(笑))から来ています。



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最終更新日  2006.03.26 10:04:31


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