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イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2月4日にドナルド・トランプ米大統領の招待でホワイト・ハウスを訪れて会談したが、その際、トランプがネタニヤフが座ろうとしていた椅子を引いてサポートする様子を撮影した映像が世界に発信され、ウェイターのようだと話題になった。ウォロディミル・ゼレンスキーとの口論とは全く違う。 ウクライナでの戦闘やCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動の問題ではジョー・バイデンやバラク・オバマ政権の闇にメスを入れようとしているトランプ大統領だが、イスラエルによるパレスチナ人虐殺の問題では民主党政権と同じようにイスラエルと連携している。 イスラエル軍によるガザでの住民虐殺は2023年10月7日に始まったのだが、その前からイスラエルは挑発を続けていた。例えば、2023年4月1日にイスラエルの警察官がイスラム世界で第3番目の聖地だとされているアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺、4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクへ突入、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/昨年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人が同じモスクを襲撃、さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせて10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。ハマスを中心とする武装グループがイスラエルを攻撃したのはその直後、10月7日のこと。その攻撃は「アル・アクサの洪水」と名付けられた。 ネタニヤフ政権は停戦を第2段階へ進めることを望んでいない。その先には永続的な平和とガザからのイスラエル軍撤退があるからだと言われている。 イスラエルはガザを再び包囲、アメリカ政府の支援ですべての物資がガザへ運び込めないようにしている。人道支援物資も運び入れることができない。パレスチナ人に対する兵糧攻めが強化されている。 イスラエル支持という点でトランプも民主党も変わりはない。イギリスのキア・スターマー首相は親イスラエルを公言、妻ビクトリア・アレキサンダーの家族がユダヤ系だということをアピールしてきた。イギリスでパレスチナ人虐殺を批判した労働党のジェレミー・コービンは有力メディアから「反ユダヤ主義者」だと激しく攻撃され、党首の座から引摺り下ろされた。 欧米でシオニストを批判することは難しいのだが、シオニストの一派であるネオコンはここにきて力が弱まっている。トランプからの攻撃で風前の灯だが、そのトランプもイスラエルを盲目的に支持している。シオニスト全体が弱体化しているわけではない。 トランプに多額の資金を提供してきたシェルドン・アデルソンはラスベガス(ネバダ州)、ベスレヘム(ペンシルベニア州)、さらにマカオ(中国)、マリナ湾(シンガポール)でカジノを経営、日本にもカジノを作らせるように要求していた。この人物は2021年1月に死亡したが、妻のミリアムもトランプに対する大口スポンサーだ。シェルドンはネタニヤフと関係が深く、生前、イランに核兵器を使用することを提案していた。ミリアムは1億ドルの選挙資金を寄付する代償として、イスラエルによるヨルダン川西岸の正式な併合を認めるように求めていた。 アル・カイダ系武装集団ハヤト・タハリール・アル・シャム(HTS)が昨年12月8日にシリアの首都ダマスカスを制圧、バシャール・アル・アサド政権は倒された後、イスラエル軍がシリアへ軍事侵攻、シリアの防衛システムの大半を破壊、ゴラン高原の占領地域を拡大、シリア南部に対する激しい空爆を展開している。イスラエルとハマスは1月15日にガザでのに合意、その協定は19日に発効したのだが、すでに本格的な戦闘が再開されそうな雲行きだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.03.06
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ウクライナ議会は3月3日にロシアとの戦争に関する声明を出した。「ウクライナ国民は世界の誰よりも平和を望んでおり、ドナルド・トランプ大統領の個人的役割と彼の平和維持活動が敵対行為の迅速な停止とウクライナ、ヨーロッパ、そして世界全体の平和達成に決定的な影響を与えると信じている」としている。トランプ大統領の和平イニシアチブを歓迎しているのだ。 ウクライナにおける大統領の任期は5年である。ウォロディミル・ゼレンスキーが大統領に就任したのは2019年5月なので、24年5月に任期は切れたわけだが、ゼレンスキー政権や後ろ盾の西側諸国は戒厳令を口実にして大統領選挙を実施せず、居座っている。トランプ大統領はゼレンスキーの支持率は一桁だと言っているが、ウクライナ人に支持されていないことは間違いないだろう。ゼレンスキーは大統領に就任した直後、ロシアとの関係修復に前向きの姿勢を見せていたが、和平に向かって歩き出しはしなかった。 国内では不人気のゼレンスキーだが、イギリスやフランスを含むヨーロッパの一部リーダーからは支持され、そのリーダーたちはロシアとの戦闘に執着している。問題は彼らにロシアと戦争する能力がないこと。そこでアメリカを引き込まなければならないのだが、彼は2月28日にホワイト・ハウスでトランプ大統領と口論、ドナルド・トランプ政権はNATOに相談することなくキエフへの軍事援助停止を決めたと伝えられている。 トランプがロシアとの戦争から手を引こうとしている可能性は高い。大統領に就任した当初、彼はウクライナでの戦闘で戦死したロシア兵を100万人近くだと主張、ウクライナ兵の戦死者約70万人を上回るとしていたが、そうしたことは口にしなくなった。 こうした発言は彼がウクライナ特使に起用したキース・ケロッグ退役陸軍中将の主張に基づいていた。同中将はロシアが軍事的にも経済的にも疲弊しているとしていたのだが、ロシアが制空権を握っている事実だけでも間違いがわかる。 戦場において発射された砲弾の数は死傷者数に反比例すると言われているが、その数は6対1から10対1でロシア軍が上回る。つまりロシア軍の死傷者数はウクライナ軍の6対1から10対1だということだ。実際は1割程度だと見る人が少なくない。 イギリスのベン・ウォレス元国防大臣は2023年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中で、その当時、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求していた。それだけ死傷者数が多いということをイギリスの元国防大臣も認めている。現在の状態はさらに悪化しているはずだ。 ウクライナ軍が保有する武器弾薬が枯渇していることはゼレンスキーの発言でも明確であり、ヨーロッパ諸国の兵器庫も空だ。ヨーロッパのNATO加盟国は何もできない。 NATOを東へ拡大させないという西側諸国の「約束」をソ連やロシアの政府は信じたが、その「約束」は反故にされた。2014年のミンスク1と15年のミンスク2も西側諸国は守らなかった。アンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領はミンスク1とミンスク2はキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎだったと発言している。ロシアは何度も煮湯を飲まされてきたのだ。ウラジミル・プーチン露大統領は話し合いでの解決が不可能だと腹を括ったはずである。そのプーチン大統領は2022年9月21日に部分的な動員を実施すると発表した。その時点で戦争の中身が変わった。 崩壊状態のウクライナ軍にトドメを刺すつもりなのか、ロシア軍は春に攻勢をかけると言われている。ゼレンスキーはウクライナ軍が100個以上の旅団を戦場に展開しているとしていたが、ロシア軍はその倍、つまり200個師団以上だと見られている。しかも兵器の質や量でロシアはウクライナを圧倒している。そうした中、ヨーロッパ諸国の軍隊が3個師団程度を派遣しても意味はないのだが、各国の国民に幻影を見せ続けるには、無意味なことでもしなければならないのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.03.05
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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーは3月2日、ロンドンでイギリス国王チャールズ3世と会った。2月28日にホワイト・ハウスでドナルド・トランプ米大統領と口論したことを意識したのか、和やかな雰囲気を演出していた。3月1日にゼレンスキーはキール・スターマー首相と会談、首相から永続的な平和を実現するというイギリスの揺るぎない決意を伝えられたというが、イギリスはフランスなどと同様、戦争の継続を求めている。スターマーは「ロシアを殲滅する」つもりなのかもしれないが、現実的には不可能だ。 ウクライナ軍は降伏するか全滅するしかない状態。スターマーは3月2日に安全保障サミットを開催、ウクライナへの軍事援助を継続し、ロシアに対する経済的圧力を強め続けると主張、さらに西側諸国は地上部隊をウクライナへ派遣、イギリスは地上軍と空軍でその部隊を支援する用意があるとしているのだが、ヨーロッパ諸国の軍隊にはロシア軍と戦う能力はなく、その兵器庫は空だと言われている。アメリカ軍を引き込まなければロシアとの戦争を継続することはできない。それは世界大戦へ突き進むことを意味する。アメリカ軍とロシア軍を戦わせ、共倒れを狙っているのだろうか? 故ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は2014年3月5日付けワシントンポスト紙で、ネオコンのウクライナ制圧計画を批判している。キッシンジャーはウクライナが複雑な歴史と多言語構成を持つ国であると指摘、西部は1939年にソ連へ編入され、人口の60パーセントがロシア人であるクリミアは54年にウクライナ生まれのニキータ・フルシチョフがロシアとコサックの協定300周年記念の一環としてウクライナへ与えたと説明する。ドンバスを含む東部もソ連時代にロシアからウクライナへ割譲されたのだ。 また文化面の問題にも彼は触れている。西部は主にカトリック教徒、東部は主にロシア正教徒、また西部ではウクライナ語が話され、東部では主にロシア語が話されるのだ。こうしたウクライナで一方が他方を支配しようとすれば内戦または分裂につながるだろうとキッシンジャーは指摘しているが、その予測通りになった。 ソ連が消滅する直前にウクライナ議会は独立を宣言するが、すぐ東部や南部ではウクライナからの独立が現実化しそうになった。その地域では7割以上の住民が自分たちをロシア人だと認識しているのだ。その動きを抑え込むために「中立」という方針が掲げられたのだが、それが気に入らないネオコンは2004年11月から05年1月にかけて「オレンジ革命」を仕掛け、新自由主義者のビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。 しかし、新自由主義は富を一部の特権集団に集中させ、貧富の差を拡大させる。そこで国民は離反、次の選挙では「オレンジ革命」で排除されたビクトル・ヤヌコビッチが当選した。バラク・オバマ政権はヤヌコビッチ政権を倒すだけでなく、二度と登場しないように別の工作を始めた。それがネオ・ナチを使ったクーデターである。 クーデターは2013年11月から14年2月にかけてキエフで実行され、ヤヌコビッチ政権は倒されたが、リビアとは違い、クーデター軍に拘束されることはなかった。ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の人びとはクーデターを拒否、軍や治安機関の約7割もネオ・ナチ体制に加わることを嫌って離脱、その一部は反クーデター軍へ合流したと言われている。 そこで当初は反クーデター軍がクーデター軍より強く、オバマ政権はクーデター派を支援するためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込んだ。また傭兵会社「アカデミ(旧社名:ブラックウォーター、Xe、2014年6月にトリプル・キャノピーと合併してコンステリス・グループ)」の戦闘員約400名がウクライナ東部での戦闘に参加、CIAは2015年からウクライナの特殊部隊員をアメリカ南部で訓練している。そのほか、イギリス、フランス、カナダ、リトアニアの特殊部隊員がウクライナ国内出活動しているとも伝えられていた。 その後、2022年までの8年間にクーデター体制の戦力を西側諸国は増強する。兵器など軍事物資を供給、兵士や子どもたちを訓練、反クーデター軍が支配するドンバスの周辺に地下要塞を建設するなどして戦争の準備を進めた。そのための時間を稼ぐために使われたのが停戦協定。つまり、2014年のミンスク1と15年のミンスク2だ。アンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領は後に、この合意がキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎだったと証言している。 しかし、ネオコンをはじめとする西側の好戦派が描いた計画通りには進まなかった。すでにウクライナ軍が壊滅状態にあることをアメリカ軍は知っているだろう。トランプ大統領の主張にも無理がある。何度も煮湯を飲まされているロシア政府が話し合いに応じるとは思えない。ドナルド・トランプ政権が戦争の終結を望むなら、ロシア側の要求を呑まなければならない。イギリス国王が出てきても状況は変わらない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.03.04
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アメリカを訪問したウォロディミル・ゼレンスキーは2月28日にホワイト・ハウスへ乗り込み、アメリカ側のアドバイスを無視してラフな服装でドナルド・トランプ大統領との会談に臨んだ。その日、レアアースに関する協定に署名、昼食をとり、共同記者会見を開く予定だったのだが、署名の前にドナルド・トランプ大統領やJ・D・バンス副大統領と激しく口論を始め、その予定は取り消された。 口論の切っ掛けは、アメリカ側から和平を求められ、ゼレンスキーが腹を立てたことにあるように見えるが、「ファシストのトランプ」と戦う「民主主義のゼレンスキー」というイメージを作ろうとしたのかもしれない。ただ、小遣いをねだる行儀の悪い子どもにしか見えないが。 結局、口論が始めると同席していた記者は退席させられ、ゼレンスキーたちはホワイトハウスから追い出されてしまったが、この出来事がなくてもゼレンスキー政権に対するアメリカからの資金や兵器などの支援は続きそうもない。本ブログでも繰り返し書いてきたが、ゼレンスキーはイギリスの情報機関に操られている可能性が高く、今回の出来事の背景にはMI6が存在しているかもしれない。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、ウォロドミル・ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問した際、イギリスの対外情報機関MI6(SIS)のリチャード・ムーア長官を非公式に訪問、会談している。 その訪問はジャーナリストに察知され、撮影された。その事実からゼレンスキーはMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーア長官だと推測されているのだ。会談後、ゼレンスキーの警護担当者はウクライナ人からイギリス人へ交代になったという。 今回の出来事によって対立を世界に知らせることができ、ヨーロッパ諸国のリーダーから支援の声を引き出せたことは成功だと考える人もいるのだが、ヨーロッパ諸国にはロシアと戦うための資金も戦力もなく、現状ではウクライナを助けようがない。 ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ政権をアメリカのバラク・オバマ政権がクーデターで倒したのは2014年2月のことだが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の人びとはクーデターを拒否、軍や治安機関では約7割が離脱したと言われている。そこでクーデター派は軍事力を高めるために8年を要したのだ。その時間を稼ぐために使われたのが2014年のミンスク1と15年のミンスク2をロシアは停戦合意にほかならない。アンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領は後に、この合意がキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎだったと証言している。 クーデター直後からオバマ政権はクーデター派を支援するためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として送り込み、傭兵会社「アカデミ(旧社名:ブラックウォーター、Xe、2014年6月にトリプル・キャノピーと合併してコンステリス・グループ)」の戦闘員約400名がウクライナ東部での戦闘に参加。またCIAは2015年からウクライナの特殊部隊員をアメリカ南部で訓練している。そのほか、イギリス、フランス、カナダ、リトアニアの特殊部隊員がウクライナ国内出活動しているとも伝えられていた。 その後もウクライナへは国外から傭兵や軍事教官が入っている。昨年1月16日、ロシア軍はハリコフの軍事施設や旧ハリコフ・パレス・ホテルを破壊したが、この旧ホテルは西側の情報機関や軍関係者に使われていて、爆撃された際、200人近くの外国人傭兵が滞在していたと言われている。その攻撃で死傷した戦闘員の大半はフランス人傭兵で、そのうち約60名が死亡、20人以上が医療施設に搬送されたという。 ロシア国防省によると、3月1日にロシア軍はイスカンデル・ミサイルでドネプロペトロフスク州にあるウクライナ軍の試験場を攻撃し、外国人教官最大30人を含む武装勢力最大150人を殺害したという。ここではウクライナ軍第157機械化旅団の戦闘員が訓練を受けていた。ゼレンスキーがアメリカ政府の要人と口論した後、ヨーロッパの一部指導者はゼレンスキーを支持、ロシアとの戦争を煽っていたが、その影響があるかもしれない。 その一方、クーデター政権を支える勢力はウクライナへ供与した資金の一部を受け取っていたと言われ、国防総省はウクライナで生物化学兵器の研究開発を進めていた。ウクライナに平和がもたらされた場合、資金の流れや生物化学兵器に関する話が浮上してくる可能性もある。そうした展開はウクライナで戦争を推進していた勢力にとって都合が悪い。 2014年2月にヤヌコビッチが排除される前、オバマ政権で国務次官補を務めていたビクトリア・ヌランドはウクライナ駐在アメリカ大使を務めていたジェオフリー・パイアットとクーデター後の閣僚人事について電話で話し合ったいる音声が漏れ出た。その中でヌランドは「EUなんかくそくらえ」と口にしている。この発言について「品のない言葉」で誤魔化そうとする人もいたが、EUがキエフの混乱を話し合いで解決しようとしていたことに対する怒りだった。 その後、クーデターでロシアからEUへ天然ガスを運ぶパイプラインはアメリカの傀儡体制によって止められた。バルト海を通る迂回ルートの「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」は2022年9月に爆破された。 この爆破をジョー・バイデン政権は予告していた。ヌランドは2022年1月27日、ロシアがウクライナを侵略したらNS2は前進しないと発言し、同年2月7日にバイデン大統領がNS2を終わらせると主張、記者に実行を約束している。そして2022年9月、NS1とNS2は爆破された。これによってヨーロッパ経済は大きなダメージを受け、社会は破壊された。それを現在のEU指導部は容認している。クーデター当時と現在ではEU指導部の考え方が逆だが、その考え方はウクライナ情勢に影響を及ぼすことはできない。話し合いが無意味だと悟ったロシア政府は軍事力で目的を達成しようとするだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.03.03
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厚生労働省は2月27日、昨年12月分の「人口動態統計速報」を発表した。死亡者数は15万6829人。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動」が始まる前年、2019年の同じ月に比べて2万9593名増えている。今年1月の死亡者数はさらに増える兆候を見せており、事態は深刻だ。今後、中長期の副作用が出てくることが予想されるが、どのような症状になるかは不明である。 SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)は人工的に作られた可能性が高いが、COVID-19騒動の核心は「ワクチン」というタグがつけられて遺伝子操作薬にあり、その黒幕はアメリカの国防総省だ。医薬品メーカーはその国防総省と契約している企業にすぎず、医薬品メーカーを批判することで終わってしまえば、問題を解決することができない。 長年医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワは早い段階からCOVID-19騒動と国防総省の関係を指摘していた。アメリカでは裁判所の命令で医薬品メーカーやFDA(食品医薬品局)が隠蔽しようとした文書が公開されたが、それを彼女は分析、バラク・オバマ大統領の時代から国防総省が「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めたという結論に達していたのだ。 彼女によると、2020年2月4日に保健福祉長官はCBRN(化学、生物、核、放射線)緊急事態に関するふたつの宣言をしている。そのひとつがEUA(緊急使用許可)で、大量破壊兵器が関与する重大な緊急事態を想定、CBRN物質に対する対抗手段を安全性と有効性を確保するために規制監督なしで使用する許可だ。 ジョン・ラドクリフCIA長官を含む人びとは病原体のウイルスが中国の武漢研究所から漏れたとする説を支持してきたが、ウェルカム・トラストの理事長からWHO(世界保健機関)の主任科学者になったジェレミー・ファラーはCOVID-19の発生が中国にとって最悪のタイミングで発生したと強調していたとされている。多くの中国人が旅行する旧正月の直前に、主要な交通ハブである武漢で始まった。意図的にウイルスが撒かれたのではないか、ということだ。 COVID-19騒動の幕開きは2019年12月、中国の湖北省武漢の病院でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されたところから始まる。患者から回収されたサンプルが「上海市公共衛生臨床中心」の張永振へ送られて検査したところ、すぐに「新型コロナウイルス」が発見され、そのウイルスが病気の原因だと断定されたとされている。 中国で伝染病対策の責任者を務めている疾病預防控制中心の高福主任は2020年1月22日、国務院新聞弁公室で開かれた記者会見の席上、武漢市内の海鮮市場で売られていた野生動物から人にウイルスが感染したとする見方を示した。この仮説を有力メディアは世界へ拡げた。 高福は1991年にオックスフォード大学へ留学して94年に博士号を取得、99年から2001年までハーバード大学で研究、その後04年までオックスフォード大学で教えている。また、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長を務めてきたアンソニー・ファウチの弟子とも言われている。 SARS-CoV-2が人工的に作り出されたとするならば、ノースカロライナ大学のラルフ・バリックを無視することはできない。武漢病毒研究所(WIV)と彼は協力関係にあり、WIVの石正麗と2015年11月にSARSウイルスのスパイク・タンパク質をコウモリのウイルスのものと取り替えて新しいウイルスを作り出すことに成功している。 しかし、SARS-CoV-2が中国で作り出された可能性は小さい。このウイルスに感染した動物が中国の自然界で発見されていないのだ。ところが北アメリカに生息するシカ、ノネズミ、コウモリを含む5種類の動物が感染していることが判明、それらの種はモンタナ州にあるロッキー・マウンテン研究所で実験動物として使用されていたことが突き止められた。 アメリカの国防総省はウクライナで生物化学兵器の研究開発を進めてきた。その中心はDTRA(国防脅威削減局)だとロシア側は主張、ロシア議会は2023年4月に報告書を発表している。ロシア軍は2022年2月にウクライナをミサイル攻撃した後、ウクライナの研究施設から機密文書を回収した模様で、その分析はイゴール・キリロフ中将が率いていたロシア軍のNBC防護部隊が中心になって行われてきた。 キリロフ中将は2022年3月7日に分析結果を公表、研究開発はDTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められ、ウクライナにはDTRAにコントロールされた研究施設が約30カ所あったとされている。 2022年8月4日にもキリロフは記者会見を開き、SARS-CoV-2は中国に対して意図的に放出されたアメリカの生物兵器であるという強い証拠があるようだと語っている。 そのキリロフは昨年12月17日、モスクワの自宅の前に仕掛けられていた爆発装置によって暗殺された。実行したのはウクライナの情報機関だが、アメリカ/NATOの承認なしにそうした挑発的な作戦を実行することは不可能だと考えられている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.03.02
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アメリカのFDA(食品医薬品局)とCDC(疾病予防管理センター)が共同で運用しているVAERS(ワクチン有害事象報告システム)への自主的な報告によると、「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」による死亡者数は3月3日現在、3万4455名に達した。VAERSに報告される副作用の件数は全体の1%、あるいは数%にすぎないと言われている。 いずれの「COVID-19ワクチン」とも接種が始まった直後から深刻な副作用が報告されるようになり、その危険性が人類の存続を脅かすものだということも判明してきたが、最も多く使われたタイプはmRNAを利用している。「ワクチン」の接種を推進している勢力は世界規模で検閲を実施、情報が広まらないようしたきた。中でも検閲が徹底している国は日本にほかならない。 日本の福島県南相馬市では、mRNA技術を利用した製品を製造する工場が建設されている。 武田薬品の湘南研究所がスピンオフして誕生したアクセリードはアメリカのアークトゥルスと合弁でアルカリスを設立した。同社はmRNA技術を利用した製品を製造する工場の建設計画を作成、その計画をMeiji Seika ファルマと経済産業省へ共同申請し、採択され、建設中だ。すでに危険性が明確になっているmRNAを利用した医薬品の生産供給体制を築くというのである。 生産はアルカリスとMeiji Seika ファルマが共同で行うようだが、より重要な役割を演じているのはアルカリス、アクセリード、武田薬品のラインだと言えるだろう。武田薬品はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団と関係が深い。 例えば、武田薬品のグローバル・ビジネス・ユニットでプレジデントを務めるラジーブ・ベンカヤはビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団でワクチン・デリバリー・ディレクターを務めていた。 そのほか、ベンカヤは同財団とも関係の深いワクチン・ロビー団体とも言えるGaviの理事、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やIAVI(国際エイズワクチン推進構想)の理事会メンバーを務め、CFR(外交問題評議会)の終身会員でもある。 CEPIを創設したのはビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、WEF(世界経済フォーラム)、ウェルカム・トラストなど。ウェルカム・トラストの理事長を務めていたジェレミー・ファラーはWHOの主任科学者になる予定。 ウェルカム・トラストは2020年5月にウェルカム・リープを創設、アメリカの国防総省で新技術を研究開発しているDARPA(国防高等研究計画局)の長官を務めていたレジーナ・デューガンを雇い、CEOに据えた。 Gaviはワクチンを推進するため、2000年にWEFの年次総会で設立された団体。活動資金はWHO、UNICEF(国連児童基金)、世界銀行、ビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団などから得ている。 武田薬品にはもうひとり、興味深い人物が幹部として在籍していた。同社の研究開発部門を統括、2021年に死亡した山田忠孝である。かれは同社へ入る前、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団でグローバル健康プログラムを指揮していた。その前はグラクソ・スミスクラインの重役だ。 ちなみに、ウェルカム・トラストは1995年にグラクソへ売却されてグラクソ・ウェルカムになり、後にスミスクラインを買収してグラクソ・スミスクラインになった。 山田忠孝の父親である山田忠義は渋沢敬三の秘書などを経て1952年に八幡製鉄へ入社しているが、戦争中の1940年代の前半、ヨーロッパから日本へ上海経由で逃げてきたユダヤ系の若者、ショール・アイゼンベルグを世話している。渋沢家の命令だろう。神戸へ着いた時、アイゼンベルグは19歳か20歳だった。 日本が敗戦へ向かう中、財界の大物たちに守られたユダヤ人難民は大戦後、アメリカ第8軍のロバート・アイケルバーガー司令官に可愛がられる。そのコネクションを活かし、アイゼンベルグはペニシリンの販売で大儲けしたという。 その後、アイゼンベルグは日本から追い出されるが、イスラエルの情報機関モサドの幹部としてさまざまな秘密工作に関わり、イスラエルと中国を結びつけたと言われている。似た境遇にあったジョージ・ソロスと緊密な関係にあったことでも知られている。 南相馬での工場建設の背景を見ても、「COVID-19ワクチン」には医療利権を超えた勢力が存在していることを理解できる。COVID-19騒動を計画したのはアメリカの国防総省であり、その国防総省はウクライナに生物兵器の研究開発施設を建設していた。 なお、ビル・ゲイツは長野県の別荘地、軽井沢町の千ヶ滝西区に敷地面積2万1969平方メートルという巨大な「個人の別荘」を建てたと言われている。地上1階、地下3階だという。ただ、軽井沢町役場も建設会社も秘密にしているので詳細は不明だ。
2023.03.11
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エマニュエル・マクロンは2月24日、トランプ大統領と会談するためにホワイトハウスを訪問、その際、ウクライナで和平が成立すれば、同国に派遣されるイギリスとフランスの部隊にアメリカが「支援」を与えるべきだと主張したというが、実現することは困難だ。ホワイトハウスの報道官は、トランプ大統領がまとめている和平協定に将来の軍事援助の保証や、この地域へのアメリカ軍派遣の約束は含まれないとしている。 トランプが第1期目に国家安全保障補佐官として選んだマイク・フリン元DIA(国防情報局)長官はウクライナで戦闘中のNATO軍がアメリカを戦争に巻き込む恐れがあると警告、ジョー・バイデン政権を操っていた勢力の計画を非難している。 一方、ロシアは話し合いでウクライナの戦闘を終わらせられるとは考えていない。2014年のミンスク1と15年のミンスク2をロシアは停戦合意だと信じたようだが、アンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領はこの合意がキエフのクーデター体制の軍事力を強化するための時間稼ぎだったと証言している。 EUの官僚やフランス、ドイツ、イギリスの指導者たちは別の理由で戦争を継続したがっている。彼らにとって和平は破滅を意味する。ロシアは和平を実現するため、軍事的にウクライナやヨーロッパ諸国を屈服させるしかないと考える人が少なくない。トランプ政権はロシアの要求を呑むしかないだろうが、ウラジミル・プーチン政権との話し合いで、安全保障や軍縮、外交、経済などの仕組みを協議することはできる。 アメリカとロシアの高官がウクライナ情勢などを協議するため、サウジアラビアのリヤドで会談したのは2月18日のことだった。アメリカからはマルコ・ルビオ国務長官、マイク・ウォルツ国家安全保障担当補佐官、スティーブ・ウィトコフ中東担当特使、またロシアからはセルゲイ・ラブロフ外相とクレムリンのユーリー・ウシャコフ大統領補佐官が出席しているのだが、事前に入念な打ち合わせはなかったようだ。何らかの成果を期待して会議を開いたのではないという人もいる。 2月14日から2月16日までドイツでミュンヘン安全保障会議が開催されたが、ここでアメリカのJ・D・バンス副大統領は言論統制を強め、国民を弾圧しているヨーロッパ諸国について「民主主義的価値観」から逸脱していると非難したほか、ピート・ヘグセス国防長官はウクライナのNATOへの加盟、ウクライナとロシアの国境を2014年以前に戻すこと、平和維持軍に対するアメリカ軍の支え、ウクライナへのアメリカ軍派兵にいずれも反対すると明言した。そもそもEUは非民主主義的なシステムだ。アメリカ側の姿勢は予想以上に厳しかったようだ。 そして2月17日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は緊急会議を開き、イギリス、ドイツ、ポーランド、イタリア、オランダ、スペイン、デンマークの首脳、さらに欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、NATO事務総長のマーク・ルッテが出席している。 この会議の直前、イギリスのキール・スターマー首相は和平協定の一環としてイギリス軍をウクライナへ派遣する「準備と意志」があると述べていたが、口先だけだろう。同日、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は同国がウクライナへ部隊を派遣することはないと記者団に断言、ドイツのオラフ・ショルツ首相は和平協定が成立する前に平和維持部隊について議論するのは「不適切」だと述べた。 近い将来、イギリスの対外情報機関MI6のエージェントである可能性が高いウォロディミル・ゼレンスキーは排除されることになると見られている。イギリスの情報機関はネオコンと手を組み、偽情報でトランプを攻撃してきたわけで、そうした行為に対する報復という意味もあるだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.27
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ハマスは2月22日、停戦合意の一環として、拘束していた6名のイスラエル人を解放した。その際、式典が催されたが、そこでイスラエル人オメル・シェム・トフがハマスの戦闘員ふたりの頭部にキス、世界的に話題になった。イスラエルのメディアは大半が無視している。イスラエルは日常的にパレスチナ人を拘束してきたが、22日の人質交換で、そのうち約600名を解放した。 戦闘は2023年10月7日、ハマスを中心とするパレスチナ側の武装勢力がイスラエルを攻撃したところから始まったとされている。いわゆる「アル・アクサの洪水」だ。 アル・アクサとはイスラムにとって第3番目に重要なモスクを指している。2022年4月1日にイスラエルの警察官がアル・アクサ・モスクの入口でパレスチナ人男性を射殺し、4月5日にはイスラエルの警官隊がそのモスクへ突入、400名以上のパレスチナ人が拘束された。その間、2022年12月にベンヤミン・ネタニヤフが首相に就任している。 さらに、ユダヤ教の祭りであるヨム・キプール(贖罪の日/2023年は9月24日から25日)の前夜にはイスラエル軍に守られた約400人のユダヤ人がそのモスクを襲撃、さらにユダヤ教の「仮庵の祭り」(昨年は9月29日から10月6日)に合わせ、10月3日にはイスラエル軍に保護されながら832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入している。 勿論、パレスチナ問題は1948年5月にシオニストがイスラエルの建国を宣言してから始まっているわけであり、それを忘れてはならないのだが、アル・アクサ・モスクを舞台としたイスラエル側の挑発があったことも間違いない。そして10月7日、ハマスを中心とする武装グループがイスラエルを攻撃して今回の戦闘が始まったのだ。 この作戦でパレスチナ側はイスラエル人を拘束、イスラエルに拘束されているパレスチナ人を解放させるために利用しようとしているはず。そのためには生きたまま拉致する必要がある。それに対し、イスラエル側は拘束者の交換を望んでいないため、イスラエル人が生きたまま拘束されることを嫌う。 10月7日の攻撃の際、約1400名のイスラエル人が死亡したとされ、その後1200名に訂正された。イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル軍は侵入した武装グループを壊滅させるため、占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊している。イスラエル軍は自国民の殺害を命令したというのだ。いわゆる「ハンニバル指令」である。ハーレツの記事を補充した報道もある。エルサレム・ポスト紙によると、イスラエル軍は10月7日にハンニバル指令を出していたことが判明したという。 イスラエル人が人質として拘束されるのを防ぐため、いかなる手段を使って構わないとする命令が1982年には出されたという。そして1986年、イスラエル軍のヤコブ・アミドロールが中心になり、ハンニバル指令が正式に作成されたと伝えられている。 この指令は2016年に正式に撤回されたというが、2023年10月7日におけるイスラエル軍側の言動は、この指令がネタニヤフ政権によって再び発動されたことを示唆しているとイスラエルの複数のメディアが報じている。その日、相当数のイスラエル人が殺害されたが、その原因はハンニバル指令にあった可能性が高い。イスラエルのヨアブ・ガラント元安全保障相はその指令を実施するよう命じられたと認めている。 なお、ガラントは昨年11月7日付けで安全保障相を解任され、今年1月5日にクネセト(イスラエル議会)を辞任、その直後にハンニバル指令が出ていたと発言した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.03.01
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ドナルド・トランプ米大統領は1月24日、連邦政府内の省庁や機関で監査役を務める監察総監17名を解雇すると発表した。その中には保健福祉省、国防総省、そしてUSAIDも含まれている。本来の役割を果たしていないという理由からだろう。 アメリカだけの話ではないが、予算の実態は闇の中にある。カネと情報が流れる先に権力は生まれるわけで、予算は権力システムの核だと言える。特に闇が深いのは国防総省や中央情報局(CIA)。CIAが麻薬取引など違法行為で資金を調達していることは公然の秘密だ。 ベトナム戦争中は東南アジアの山岳地帯、いわゆる「黄金の三角地帯」で生産されるヘロイン、ラテン・アメリカでの工作が激しくなった1980年前後にはその地域で生産されるコカイン、アフガニスタンでの工作が本格化してからはその地域で生産されるヘロインをCIAは資金源にしていた。そうした麻薬を売りさばくのが犯罪組織だ。 いわゆる「イラン・コントラ事件」ではアメリカの情報機関による武器と麻薬の違法売買が関係していたが、その実態に迫ろうとするジャーナリストもいた。1985年にはAPの記者だったロバート・パリーやブライアン・バーガーはニカラグアの反革命ゲリラ「コントラ」と麻薬取引の関係を記事にしている。コントラを操っていたのはCIAだった。 この記事に触発されて上院外交委員会の『テロリズム・麻薬・国際的工作小委員会(ジョン・ケリー委員長)』が1986年4月に調査を開始、89年12月に発表された報告書にはコントラと麻薬業者との深い関係が明確に指摘されていた。 1996年8月にはロサンゼルスのサンノゼ・マーキュリー紙にコカインとコントラの関係を指摘した連載記事『闇の同盟』が掲載される。執筆したゲーリー・ウェッブは1990年にサンフランシスコ地震に関する報道でピューリッツァー賞を受賞している。有力メディアはこの記事を無視したが、公民権運動の指導者や議員が麻薬問題の徹底的な調査をジョン・ドッチCIA長官やジャネット・レノ司法長官らに要求し始めた。 ジャーナリストが記事にする前、1970年代からロサンゼルス市警の捜査官はCIAによる麻薬売買に気づいていた。1980年代になると市警察は麻薬取引を調査するための特捜隊を編成、実態に迫り、1987年に解散するのだが、その直後からアメリカ司法省は捜査官の税務申告について調べ始め、1990年頃、捜査を担当した警察官は組織から追い出されてしまうが、特捜隊が編成される前に警察官として麻薬の問題を調べていた人物がある集会でジョン・ドッチCIA長官にCIAと麻薬の問題を質問、長官は調査を約束した。 その調査結果が1998年1月と10月、2度に分けて公表されている。監察総監による報告書、いわゆる『IGレポート』だ。CIAの内部調査だという限界はあるが、10月に出た『第2巻』では、コントラとコカインとの関係を認めている。ウェッブの記事が裏付けられたわけだが、有力メディアのウェッブ攻撃は続き、「自殺」に追い込まれた。 国防総省の場合、「白紙小切手」を持っていると言われてきた。情報機関と同様、安全保障上の機密ということで実態は不明だったのだが、1990年代の後半には資金の流れが調べられていたと言われている。 同省の使途不明金や「ジョージ・W・ブッシュ大統領の財布」と呼ばれていたエンロンに関する捜査資料は世界貿易センターの7号館(ソロモン・ブラザース・ビル)に保管されていたが、2001年9月11日、このビルはツインタワーと同じように崩壊、資料は消えた。 アメリカの政府機関は1991年12月にソ連が消滅して以降、ウクライナに多額の資金を投入してきた。ビクトリア・ヌランドは国務次官補時代の2013年12月、アメリカは1991年からウクライナのエリートを懐柔するために50億ドルを投入したと語っている。 そして2014年2月、彼女たちネオコンはネオ・ナチのグループを使ってキエフでクーデターを成功させたのだが、それ以降、アメリカの国防総省はウクライナで生物化学兵器の研究開発を進めてきた。この研究開発にはCOVID-19プロジェクトも含まれ、保健福祉省や医薬品メーカーも関係している。それと並行してマネーロンダリングを行っていたと見られている。 2020年2月4日に保健福祉長官はCBRN(化学、生物、核、放射線)緊急事態に関するふたつの宣言、EUA(緊急使用許可)とPREP法の適用を宣言した。EUAは大量破壊兵器が関与する重大な緊急事態を想定している。CBRN物質に対する対抗手段を安全性と有効性を確保するため、規制監督なしに使用することの許可だ。またPREP法により、付随的損害について誰も法的責任を負わないことが保証されている。 つまり、COVID-19問題で医薬品メーカーに的を絞ることは間違いであり、国防総省にメスを入れる必要がある。元外交官で、2020年当時にはトランプの弾劾を進めていた下院司法委員会の共同顧問を務めたノーム・アイゼンは今回、トランプによる情報公開作業を妨害しているが、そうしたことがなくても国防総省や情報機関はガードが硬い。そのガードを破らない限り、アメリカを民主化することは不可能である。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.28
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ウクライナを舞台にした戦闘に対するドナルド・トランプ米大統領の姿勢が劇的に変化、ジョー・バイデン政権に従属していたヨーロッパ諸国のリーダーは動揺しているようだ。ヨーロッパ諸国の首脳は自分たちだけで会議を開き、意味のあることをしているように演じているが、トランプ大統領やロシアのウラジミル・プーチン大統領から相手にされていない。思考力も決定権もないからだ。 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は2月24日にトランプ大統領と会談するためにホワイトハウスを訪問したのだが、到着時に出迎えたのはホワイトハウスのスタッフだけ。裏でどのようなやり取りがあったのかは不明だが、マクロンは到着をやり直し、その2度目はトランプが出迎えた。マクロンとしてはアメリカとフランスの友好関係を演出したかったのだろうが、この出来事は両国の関係がそれほど友好的でないことを世界に知らせることになった。 自分たちがアメリカの支配層と結びついていると思わせることで地位と収入を手にしてきた人々にとって、アメリカ政府から相手にされなくなることは恐怖以外の何ものでもないだろう。ロスチャイルド系銀行の幹部だったマクロンも追い詰められているはずだ。 トランプはウクライナ問題でロシア側の要求を基本的に受け入れているようだが、最初は違った。トランプはキース・ケロッグ退役陸軍中将をウクライナ特使に起用、同中将は自身が2024年春に執筆した論文に基づく「和平計画」を作成し、それをトランプは実行しようとしたが、この論文はロシアが苦境にあるという前提で書かれていた。つまり、事実に基づいていなかったのだ。 当初、トランプはウクライナでの戦闘で戦死したロシア兵を100万人近くだと主張、ウクライナ兵の戦死者約70万人を上回るとしていたが、これは事実に反している。制空権を握っているのがロシア軍だということが決定的だが、ミサイルの数や性能でもロシア軍が圧倒、ウクライナの街頭で兵士の徴募担当者が男性通行人を拉致している現実もある。 戦場において発射された砲弾の数は死傷者数に反比例すると言われているが、その数は6対1から10対1でロシア軍が上回っている。つまり、ロシア軍の死傷者数はウクライナ軍の6対1から10対1だということになる。実際は1割程度だと見る人が少なくない。ウクライナ軍が保有する武器弾薬が枯渇していることはゼレンスキーの発言でも明確だであり、ヨーロッパ諸国の兵器庫も空だ。ヨーロッパのNATO加盟国は何もできない。 イギリスのベン・ウォレス元国防大臣は2023年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中で、その当時、ウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求していた。それだけ死傷者数が多いということをイギリスの元国防大臣も認めている。現在の状態はさらに悪化しているはずだ。 トランプの言動から判断すると、彼はすでにウクライナでロシア軍が勝っていることを理解している。欧米の代理として戦ってきたウクライナは降伏するか全滅するしかない状態。早晩、トランプ政権はウォロディミル・ゼレンスキーを排除すると見られているが、そうなると戦争を推進してきた勢力の不正が一気に露見する可能性がある。 ゼレンスキーがイギリスの情報機関MI6のエージェントだと指摘したのは、アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターだ。 ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問した際、MI6のリチャード・ムーア長官を非公式に訪問、会談しがが、その訪問はジャーナリストに察知され、撮影された。その事実からゼレンスキーはMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーア長官だと推測されている。会談後、ゼレンスキーの警護担当者はウクライナ人からイギリス人へ交代になったという。ゼレンスキーの排除はイギリスの支配層にとって大きな痛手だろう。 EU経済を支えてきたドイツ、そのドイツ経済を支えてきた自動車産業はロシアとの戦争で大きなダメージを受けている。昨年10月、フォルクスワーゲンの経営者は従業員代表に対し、ドイツ国内の少なくとも3工場を閉鎖する意向を伝えたという。すでにアメリカがドイツの自動車メーカーを呑み込もうとしているが、中国の自動車会社もドイツの工場に興味を示しているようだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.26
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2月17日付けフィナンシャル・タイムズ紙にドイツの武器メーカー、ラインメタルのアルミン・パペルガーCEOのインタビュー記事が掲載された。その中で同CEOはEUの兵器庫が空になっていると語っている。アメリカを中心とするNATO諸国はウクライナに対して資金や兵器を供与、その結果だ。こうした状況にあることは以前から知られていたが、西側の有力メディアもその事実を伝えるようになった。空になった兵器庫を埋めるための需要で収益が上がるというわけだ。 リヤドで2月18日に行われた会談で、さまざまな問題に対処するための専門グループを結成することで米露両国は合意した。ひとつは戦略的安全保障と軍備管理に関するグループ、第2に地球規模の安全保障構造を見直すグループ、第3に2国間の外交的な相互影響に関するグループ、第4にエネルギーや制裁に関するグループ、第5にウクライナにおける戦闘の決着をつけるためのグループ、第6にはパレスチナや北極圏を含む国際問題に関するグループだ。 ウクライナの停戦について話し合うためにアメリカとロシアがリヤドで会談したわけではないことがわかるが、すでにキエフ政権は無条件降伏か「総玉砕」かという状況に陥っているわけで、必然とも言える。 1993年にマーストリヒト条約が発効したことに伴って誕生したEUの前身はEC(欧州共同体)。このECについて堀田善衛はその「幹部たちのほとんどは旧貴族です。つまり、旧貴族の子弟たちが、今ではECをすべて取り仕切っているということになります。」(堀田善衛著『めぐりあいし人びと』集英社、1993年)と書いている。またEU首脳のほとんどは、ビルダーバーグ・グループとアメリカのエリートが選出しているとも言われている。EUの首脳はネオコンの命令通りに動く「首のない鶏」にすぎず、リヤドの会議にEUの人間が関与する余地はない。 これも繰り返し書いてきたことだが、ビルダーバーグ・グループはアメリカとヨーロッパを支配する私的権力が利害を調整する場だった。第2次世界大戦後にアメリカの支配層はヨーロッパを統合、支配するためにACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)を設立、そこからヨーロッパ統一運動へ資金が提供されていた。西ヨーロッパを支配する「ヨーロッパ統合」はアメリカの巨大資本の意志だった。ACUEの下にはビルダーバーグ・グループのほか、ヨーロッパ運動なども存在していると言われている。(Richard J. Aldrich, “OSS, CIA and European Unity,” Diplomacy & Statecraft, 1 March 1997) ウクライナの停戦問題でドナルド・トランプ政権はウラジミル・プーチン政権が要求している条件を受け入れざるをえない。NATOやアメリカの軍隊がウクライナへ入ることはなく、ソ連が消滅した1991年当時の「国境」に戻ることもなく、「平和維持部隊」が編成されたとしてもNATOが関係することはなく、全ての負担はウクライナやEUに押し付けられる。 トランプ政権がウクライナに対して出している経済協定案では、ウクライナの現資源採掘収入の50%と、将来の資源の収益化のために第三者に発行されるすべての新規ライセンスの金銭的価値の50%を受け取るという条件を出していると伝えられている。EU以上に悲惨な現実がウクライナを待ち受けている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.22
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すでに深刻な副作用が問題になっている「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」だが、エール大学の研究者は新たな「憂慮すべき症候群」を発見したという。研究は進行中で、さらなる研究が必要だともしている。 その症状とは意識混濁、めまい、耳鳴り、運動不耐性で、エプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)という休眠ウイルスが再活性化されて引き起こされる。日本では3歳頃までに6から7割、成人では8から9割が感染しているウイルスで、ヘルペスウイルス科に属す。「癌ウイルス」としても知られ、また自己免疫疾患の原因になり、パーキンソン病など神経性疾患との関係も指摘されている。免疫力の低下が発症の引き金になる。 記事では「COVID-19ワクチン」により、アメリカでは300万人、世界では数千万人の命をCOVID-19から救ったと「推定」されているとしているが、医学的に考えて予防効果はないとする研究者は少なくない。実際、効果があるようには思えない。免疫力を低下させるため、病気を広めている可能性が高い。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、COVID-19騒動はアメリカ国防総省のプロジェクトで、CIAも関係している。このプロジェクトで重要な役割を演じたエコヘルス連合はWHO(世界保健機関)へアドバイスする立場にある。 エコヘルス連合はアンソニー・ファウチが所長を務めていたNIAID(国立アレルギー感染症研究所)から研究費を得ていたが、それ以上に多額の資金をCIAが利用してきたUSAIDのPREDICTプロジェクトや国防総省のDTRA(国防脅威削減局)から得てきた。NIAIDはDARPA(国防高等研究計画局)と連携している。このネットワークはウクライナで生物化学兵器の研究開発を行っていた。 COVID-19のプロジェクトはモンタナにあるロッキー・マウンテン研究所が中心的な存在だとも言われ、人工的に作られたコロナウイルスが中国の武漢へ持ち込まれた可能性が高い。その事実から人びとの目を逸らさせるために中国を悪役にした物語が語られているが、それも限界にきている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.21
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イギリスの有力メディア、BBC(英国放送協会)は2月4日、「USAIDの資金援助に関する声明」を発表した。その中で同協会の「国際開発慈善団体」だというBBCメディア・アクションが2023年から24年にかけて収入の約8%をUSAID(米国国際開発庁)から得ていたことが明らかにされた。この「慈善団体」は、政治的に不安定な地域で現地のメディアと連携して影響力を拡大させるキャンペーンを展開している。 USAIDはCIAの工作資金を流す仕組みのひとつ。「独立系メディア」と同様、BBCも情報機関の資金を受け取っていたことになるが、ドナルド・トランプ米大統領が対外援助のほぼ全面的な凍結を命令したことから、西側で好まれている「独立系メディア」と同じように、BBCの「慈善団体」も影響を受けた。 そのBBCは2019年6月、世界の報道機関やソーシャル・メディアの幹部を集めて「信頼できるニュースサミット」を開催、9月には「信頼できるニュース憲章」を発表し、「TNI(信頼できるニュース戦略)」を組織した。「偽情報が定着する前に迅速かつ共同で行動して偽情報を弱体化させる」ことが目的だとされているが、要するに国際的な検閲体制の構築であり、日本からはNHKが参加している。 その年の12月に中国の湖北省武漢の病院でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見され、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動が始まり、西側では情報が厳しく統制される。公式発表に反する情報は「フェイク」だとされ、封じ込めようとする動きがあった。その後、「フェイク」とされた情報が事実であり、公式発表がフェイクだといことが明らかになってきた。 以前から言論統制の仕組みがあったことは本ブログでも繰り返し書いてきた。例えば、1948年にスタートしたCIAの極秘プロジェクト「モッキンバード」。責任者はコード・メイヤーで、実際の工作で中心的な役割を果たしたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだという。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) グラハムの死後、妻のキャサリーンが社主に就任、その下でワシントン・ポスト紙は「ウォーターゲート事件」を暴くのだが、その取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞めて「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) またフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。 2003年3月にアメリカ主導軍がイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒したが、その際、ジョージ・W・ブッシュ政権は軍事侵攻を正当化するために「大量破壊兵器」の話を宣伝した。その話をもっともらしく見せるため、02年9月にイギリスのトニー・ブレア政権は「イラク大量破壊兵器、イギリス政府の評価」というタイトルの報告書を作成している。いわゆる「9月文書」だ。これはメディアにリークされ、サン紙は「破滅まで45分のイギリス人」というセンセーショナルなタイトルの記事を掲載している。 この報告書をアメリカのコリン・パウエル国務長官は絶賛したが、大学院生の論文を無断引用した代物。その文書をイギリス政府はイラクの脅威を強調するため改竄している。 BBCのアンドリュー・ギリガン記者は2003年5月にラジオ番組で「9月文書」を取り上げ、粉飾されていると語る。サンデー・オン・メール紙で彼はアラステアー・キャンベル首席補佐官が情報機関の反対を押し切って「45分話」を挿入したと主張した。2004年10月にジャック・ストロー外相は「45分話」が嘘だということを認めている。つまりギリガンの話は事実だった。 ギリガンの情報源はイギリス国防省で生物化学兵器部門を指揮していたデイビッド・ケリー。そのケリーはイラクの大量破壊兵器がないとブレア首相に説明したが、その首相は偽情報で世論を戦争へと誘導しようとする。そこでギリガンに事実を伝えたのだ。 しかし、ブレア政権の言論弾圧は厳しく、ケリーは変死している。ギリガン記者はBBCから追い出され、放送局の執行役員会会長とBBC会長は辞任に追い込まれた。 ドナルド・トランプ米大統領はウォロディミル・ゼレンスキーを支持しているウクライナ国民は4%だと発言、西側の有力メディアはその話を否定しようと必死だが、BBCやウクライナの「独立系メディア」を信じろという方が無理だ。西側の有力メディアが根拠にしている民間世論調査会社はゼレンスキーの仲間が所有、USAID、同じようにCIAの資金を流しているNED、あるいはソロス財団からも間接的に資金が提供されているという。そもそもウクライナでは政府に批判的なメディアは潰され、野党は禁止されている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.23
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アメリカのドナルド・トランプ大統領はNATOやEU、第2次世界大戦の後にアメリカとイギリスの支配層によって作られた組織に対して厳しい姿勢で臨んでいる。この大戦においてヨーロッパ戦線でドイツと戦ったのはソ連とコミュニストを主体とするレジスタンスであり、ヨーロッパ諸国の政府は屈服し、イギリスは傍観していた。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、ドイツ軍は1941年6月22日、西部戦線に約90万人を残し、300万人以上の戦力でソ連に向かって進撃を開始した。ドイツ軍の首脳は西部方面を防衛するために東へ向かう部隊に匹敵する数の将兵を配備するべきだと主張したのだが、アドルフ・ヒトラーに退けられたという。軍の首脳が知らない何かをヒトラーは知っていたのだろう。(David M. Glantz, The Soviet-German War 1941-1945,” Strom Thurmond Institute of Government and Public Affairs, Clemson University, October 11, 2001) 事実上、ドイツはソ連に負けたのだが、西部戦線でレジスタンスがドイツ軍と戦っていたことも確かであり、シャルル・ド・ゴールはそのレジスタンスと関係していた。大戦の終盤、ドイツの降伏が見通される中、アメリカとイギリスはレジスタンスを懸念し、ゲリラ戦部隊を編成している。ジェドバラだ。大戦後、ジェドバラを基盤にして秘密部隊が組織されるが、この勢力はド・ゴールを敵視した。 フランスでは1947年6月に社会党系の政権が誕生した。その内務大臣を務めたエドアル・ドプは政府を不安定化するための策略について語っている。そのためにアメリカとイギリスは秘密部隊を使ったクーデター「青計画」を作成したというのだ。その計画にはド・ゴール暗殺も含まれていたとされている。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) この暴露があった後、計画の首謀者としてアール・エドム・ド・ブルパンなる人物が逮捕された。フランス北部で重火器、戦闘指令書、作戦計画書などが発見されている。 彼らのシナリオによると、まず左翼を装って「テロ」を実行して政治的な緊張を高め、クーデターを実行しやすい環境を作り出すことになっていた。この計画にはフランスの情報機関SDECEが関与していたと疑われたが、調査を行ったのはSDECEの長官だった。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) 1948年4月にアメリカやイギリスはNATO(北大西洋条約機構)を組織する。創設時の参加国はアメリカとカナダの北米2カ国に加え、イギリス、フランス、イタリア、ポルトガル、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、ベルギー、オランダ、そしてルクセンブルクの欧州10カ国だ。ジェドバラから派生した秘密部隊は全てのNATO加盟国で編成されてネットワークを構築する。中でも有名な組織がイタリアのグラディオだろう。 アメリカとイギリスの支配層は1948年にACUE(ヨーロッパ連合に関するアメリカ委員会)も組織した。この団体へ資金を提供していたのはフォード財団やロックフェラー財団など。その下にはヨーロッパ運動、ビルダーバーグ・グループ、そしてヨーロッパ合州国を目指す行動委員会が存在していると言われているが、特に有名な団体はビルダーバーグだろう。(Richard J. Aldrich, “The Hidden Hand”, John Murray, 2001)アメリカやイギリスの支配層がACUEを組織した理由はヨーロッパを統一した上で支配することにあった。その延長線上にEUはある。 ビルダーバーグ・グループが最初の会議を開いたのは1954年5月29日から31日。開催場所はオランダのアルンヘム近くにあるビルダーバーグ・ホテルだった。グループの初代会長はこのホテルを所有していたベルンハルトだが、生みの親はユセフ・レッティンゲルだと考えられている。 レッティンゲルは戦前からヨーロッパをイエズス会の指導の下で統一しようと活動、大戦中はロンドンへ亡命していたポーランドのブワディスラフ・シコルスキー将軍の側近だ。シコルスキーはコミュニズムが嫌いで、イギリス政府の支援の下、亡命政府を名乗っていた。1952年にレッティンゲルはベルンハルトへ接近、すぐにアメリカのハリー・トルーマン政権に接触している。 NATOを創設した理由も同じだ。ソ連軍の侵攻に備えるために米英はNATOを作り上げたと宣伝されていたが、ソ連はドイツとの戦いで約2500万人が殺され、工業地帯の3分の2を含む全国土の3分の1が破壊され、惨憺たる状態。ナチスの拠点を制圧したものの、西ヨーロッパへ軍事侵攻する余裕はなかった。 フランスでは1961年にド・ゴールを敵視する軍人らがOAS(秘密軍事機構)を組織するが、この結社にはSDECEや第11ショック・パラシュート大隊が結びついていた。その年の4月12日にOASはマドリッドで会議を開き、アルジェリアでクーデターを実行する計画について話し合っているが、そこにはCIAの人間も参加している。 1961年4月22日にクーデターは実行に移されるのだが、それに対してアメリカのジョン・F・ケネディ大統領は、クーデター軍がパリへ軍事侵攻してきたならアメリカ軍を投入するとド・ゴールへ伝えている。つまり、パリでCIAとアメリカ軍が衝突するということだ。このケネディの対応でクーデターは失敗に終わるが、そのケネディは1963年11月22日に暗殺された。 ケネディ大統領と対立していた好戦派にはアレン・ダレスCIA長官、チャールズ・キャベルCIA副長官、ライマン・レムニッツァー統合参謀本部議長、カーティス・ルメイ空軍参謀長などが含まれていたが、大統領は1961年11月にダレス長官を、また62年1月にはキャベル副長官をそれぞれ解任、62年10月にはレムニッツァー議長の再任を拒否した。 レムニッツァーはイギリスの貴族階級に憧れを持っていた人物で、イギリスの軍人、ハロルド・アレグザンダーから可愛がられ、アメリカでも出世していく。シチリア島上陸作戦以降、彼を出世街道へ乗せ、アレン・ダレスにレムニッツァーを紹介したのもアレグザンダーだ。この人物はイギリスの貴族階級に属し、イギリス女王エリザベス2世の側近として知られていた。 通常、統合参謀本部議長を辞めた後はリタイアするのだが、アレグザンダーはレムニッツァーに対し、SACEUR(欧州連合軍最高司令官)にならないかと声をかけている。ちなみに、欧州連合軍最高司令官とは、NATOの軍事部門におけるヨーロッパ大陸の最上級司令部のトップだ。 ケネディ暗殺の容疑者として逮捕されたのはリー・ハーベイ・オズワルド、そのオズワルドを射殺したとされているジャック・ルビーは1959年にキューバ革命が成功した後、反革命の亡命キューバ人へ武器を供給していたのだが、その時、トーマス・デイビスなる人物と一緒に仕事をしている。そのデイビスはケネディ大統領が暗殺された際、アルジェリアの刑務所へ入れられていた。ド・ゴール大統領の暗殺に関わる集団に武器を供給していたからだ。クーデターが失敗に終わった後、ド・ゴール大統領はSDECE長官を解任、第11ショック・パラシュート大隊を解散させた。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) 1962年1月にOASの幹部が逮捕され、その5カ月後にOASは休戦を宣言する(Henrik Kruger, “The Great Heroin Coup (2nd),” Trine Day, 2015)のだが、この決定にジャン-マリー・バスチャン-チリー大佐に率いられた一派は従わない。その年の8月22日にパリでド・ゴール大統領の暗殺を試み、失敗している。暗殺計画に加わった人間は9月にパリで逮捕され、全員に死刑判決が言い渡されたが、実際に処刑されたのはバスチャン-チリー大佐だけだった。(Daniele Ganser, “NATO’s Secret Armies”, Frank Cass, 2005) ケネディ大統領が暗殺されてから3年後の1966年にド・ゴールはフランス軍をNATOの軍事機構から離脱させ、翌年にはSHAPE(欧州連合軍最高司令部)をパリから追い出した。SHAPEはベルギーのモンス近郊へ移動する。 フランスではド・ゴールの政権を揺さぶる出来事が1968年5月から6月にかけて起こる。いわゆる「五月危機」だ。パリでゼネラル・ストライキが実行され、抵抗運動はフランス全土に広がった。ド・ゴールはその翌年、1969年の4月に辞任、政界から去っている。人びとの怒りのエネルギーがド・ゴール排除に利用された。 ド・ゴールの後任大統領は首相だったジョルジュ・ポンピドゥー。アメリカとの関係強化を推進する立場の人物で、SDECEの長官に親米派のアレクサンドル・ド・マレンシェを据えた。新長官はアメリカとの関係強化に邪魔だと見なされる815名を解雇した。(Henrik Kruger, “The Great Heroin Coup 2nd Edition,” TrineDay, 2015)1982年にSDECEはDGSE(対外治安総局)へ名称が変更になるが、実態に変化はない。 その後、ヨーロッパ諸国に対する米英の支配力は強化されていくが、その支配システムの中核にはNATOがあり、それをトランプが揺さぶっている。その背景にはネオコンと対立していた支配層の一部が存在しているのかもしれないが、ヨーロッパが「自爆」した今、NATOは必要なくなったのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.21
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核兵器廃絶の訴えに反対する人は少ないだろうが、現在、核戦争勃発の可能性はかつてなく高まっている。1962年10月のキューバ危機よりも危険な状態だという人もいる。それにもかかわらず、大多数の人は気にしていないようだ。「核兵器廃絶」は中身のない掛け声にすぎないと言われても仕方がないだろう。 2013年5月から16年5月までSACEUR(NATO軍作戦司令部の司令官)を務めたアメリカ空軍のフィリップ・ブリードラブ退役大将は2022年4月7日付け記事の中で、ウクライナにロシアが軍事介入した直後に「私たちは核兵器と第3次世界大戦をあまりにも心配したため、完全に抑止されてしまった」と語っている。核兵器と第3次世界大戦を気にせず、ロシアを攻撃しろということだろう。2022年4月9日、イギリスのボリス・ジョンソン首相はキエフへ乗り込み、ロシアとの停戦交渉を止めるように命令している。 アメリカには核兵器を脅しの道具に使った歴史がある。例えば、ドワイト・アイゼンハワーは1953年に大統領となった直後、泥沼化した朝鮮戦争から抜け出そうと考え、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) その後、アメリカは矛先をインドシナへ向けるのだが、そうした中、1958年8月から9月にかけて台湾海峡で軍事的な緊張が高まる。1971年にベトナム戦争に関する国防総省の秘密報告書を有力メディアへ流したダニエル・エルズバーグによると、1958年の危機当時、ジョン・フォスター・ダレス国務長官は金門島と馬祖に核兵器を投下する準備をしていた。 アイゼンハワー政権で副大統領を務めたリチャード・ニクソンは大統領になっていた1972年4月、北ベトナムを核攻撃してはどうかと国家安全保障補佐官を務めていたヘンリー・キッシンジャーに語ったというのだが、キッシンジャーの側近だったロジャー・モリスによると、ニクソンは北ベトナムに対する核攻撃の計画を1969年10月から11月の期間に指示したとしている。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) アイゼンハワーが朝鮮戦争を終わらせる手法を見ていたニクソンは「凶人理論」の信者になり、核攻撃しかねないと思わせればアメリカ主導の和平に同意すると考えていたようだ。パキスタンの政治学者、エクバル・アーマドによると、北ベトナムの代表団と和平交渉している間にキッシンジャーは12回にわたって核攻撃すると脅したという。(前掲書) また、イスラエルのモシェ・ダヤン将軍は狂犬のように思わせなければならないと語ったが、その意味するところは同じである。ジョー・バイデンを担いでいるシオニストの一派、ネオコンも脅せば屈すると信じている。 ネオコンは1991年12月にソ連が消滅して以降、核兵器の使用にも前向きになった。彼らはアメリカが唯一の超大国になったと信じ、他国に配慮することなく好き勝手に振る舞えると考えたのである。 ロシアや中国は相当数の核兵器を保有しているが、それでも問題ないとアメリカの支配層は考えるようになったようだ。例えば、外交問題評議会(CFR)が発行している定期刊行物「フォーリン・アフェアーズ」の2006年3/4月号に掲載されたキール・リーバーとダリル・プレスの論文には、ロシアと中国の長距離核兵器をアメリカ軍の先制第1撃で破壊できるようになる日が近い、つまり核戦争で中露に勝てる日が近づいているとしているのだ。 彼らの論理によると、ソ連の消滅でアメリカは核兵器の分野で優位に立ち、近いうちにロシアや中国の長距離核兵器を先制攻撃で破壊できるようになるだろうというのだ。リーバーとプレスはロシアの衰退や中国の後進性を信じ、アメリカが技術面で優位にあるという前提で議論している。ブリードラブも同じように考えている。 バラク・オバマはアメリカ大統領に就任した後に「核兵器のない世界の平和と安全を求めるアメリカの決意」を表明、2009年4月にオバマ大統領はロシアの元大統領ドミトリ・メドベージェフ氏とともに「核のない世界を実現する」と誓約し、その直後にプラハで「核兵器のない世界の安全」を求めると演説しているが、口先だけで終わった。オバマはかつてないほど核兵器を増強することになる。 そもそも核兵器はソ連を破壊するため、イギリス主導で開始された。1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づくプロジェクトが始まり、MAUD委員会が設立されている。アメリカでは1941年6月にフランクリン・ルーズベルト大統領がEO(行政命令)8807という大統領令を出し、OSRD(価格研究開発局)が設置された。 MAUD委員会のマーク・オリファントは1941年8月にアメリカへ派遣されてアーネスト・ローレンスと会い、アメリカの学者も原子爆弾の可能性に興味を持つようになったと言われている。この年の10月にルーズベルト大統領は原子爆弾の開発を許可、イギリスとの共同開発が始まった。日本軍が真珠湾を奇襲攻撃する2カ月前のことである。 マンハッタン計画を統括していた陸軍のレスニー・グルーブス少将は1944年、ポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。(前掲書) そして1945年7月16日にアメリカのニューメキシコ州トリニティ実験場でプルトニウム原爆の爆発実験を行い、成功。それを受けてハリー・トルーマン大統領は原子爆弾の投下を7月24日に許可。そして26日にアメリカ、イギリス、中国はポツダム宣言を発表、8月6日に広島へウラン型を投下、その3日後には長崎へプルトニウム型を落としている。 日本は8月15日に「玉音放送」と呼ばれる天皇の声明が放送されたが、その半月後にグルーブス中将に対し、ローリス・ノースタッド少将はソ連の中枢15都市と主要25都市への核攻撃に関する文書を提出。9月15日付けの文書ではソ連の主要66地域を核攻撃で消滅させるには204発の原爆が必要だと推計している。そのうえで、ソ連を破壊するためにアメリカが保有すべき原爆数は446発、最低でも123発だという数字を出した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.12
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ドナルド・トランプ大統領は政府効率化局(DOGE)を設置、政府機関が動かすカネの流れを調べ始めた。ターゲットのひとつがCIAの工作資金を動かしているUSAID(米国国際開発庁)だ。外国政府を倒したり生物兵器の研究開発にもそうしたカネは使われてきたが、トランプ大統領は1月20日、対外援助の一時停止を指示する大統領令に署名した。財務省にもメスを入れようとしたが、財務省のシステムにアクセスすることを禁じる判決を連邦地裁が出している。 その財務省はアメリカや各国の金塊をニューヨーク連銀の地下金庫、フォート・ノックス陸軍基地、そしてウエストポイントの施設に保管しているのだが、最後に検査されたのは1950年代で、実際に存在しているかどうか不明だ。怪しいと思っている人は少なくない。何者かが盗み出したのではないかと疑われている。 本ブログでは何度か書いたことだが、ヨーロッパ文明はラテン・アメリカ、アフリカ、アジアなどに押し入って財宝を略奪、イギリスはそうした略奪財宝を海賊に奪わせて富を築いた。第2次世界大戦中、ドイツはヨーロッパ全域で金塊を盗み、日本は中国で財宝略奪作戦を展開、それらを戦後、アメリカが押収している。「ナチゴールド」と「金の百合」だ。戦後、こうした資金はアメリカの私的権力による秘密工作に使われてきた。 ソ連が消滅する際、ゴスバンク(旧ソ連の国立中央銀行)に保管されていた2000トンから3000トンの金塊が400トン足らずに減っていた。この金塊の行方を追った金融調査会社のジュールズ・クロール・アソシエイツは不明だとしているが、この調査会社がCIAと緊密な関係にあることは有名だ。ゴスバンクの頭取だったビクトル・ゲラシュチェンコは後にオフショア市場の一角を占めるジャージー島で金融マネージメント社を設立している。 ボリス・エリツィン時代にロシアの資産が盗まれているが、この工作で重要な役割を果たしたとされているのはワシントンDCのリッグス銀行とリパブリック・ナショナル銀行ニューヨーク。こうした銀行はロシアから盗み出した資産のロンダリングをしていたと言われている。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) リッグス銀行はCIAがキューバ侵攻作戦の時に使った銀行であり、リパブリック・ナショナル銀行ニューヨークを創設したエドモンド・サフラは1996年にヘルミテージ・キャピタル・マネージメントの共同創設者になるが、99年12月にモロッコの家が火事になり、窒息死した。 もうひとりの創設者であるウィリアム・ブラウダーはCPUSA(米国コミュニスト党)の幹部だったアール・ブラウダーの孫で、エリツィンが大統領だった1990年代のロシアで巨万の富を築いたオリガルヒのひとりである。 ところで、2012年にニューヨークではタングステンで作られた偽物の金塊が流通していると話題になったが、アメリカで保管されている延べ棒もそうではないかと疑われている。DOGEを指揮するイーロン・マスクはこうした金塊についても調査する意向だという。 そのタングステンもここにきて問題になっている。中国の商務部と海関総署は2月4日、タングステン、テルル、ビスマス、モリブデン、インジウムの関連品目に対して輸出管理を実施すると発表したのだ。アメリカ政府が中国からの輸入に10%の関税を課したことを受け、輸出規制で応じたのである。世界で生産されているタングステンの8割以上が中国産だが、このタングステンがなければ兵器産業は成り立たない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.17
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ハマスが停戦合意を守る中、テル・アビブ郊外で人が乗っていないバス3台が爆破され、近くのホロン市ではバスに置かれたバッグの中から爆破装置が発見されたと報道されている。バッグにはアラビア語で「攻撃」と「トゥル・カルム」と書かれていたという。 トゥル・カルム旅団はその日、「占拠者がわれわれの土地に居座る限り、殉教者への復讐は忘れられない」という声明を発表した。戦闘を再開、ガザから出ていかないパレスチナ人を虐殺したいベンヤミン・ネタニヤフ政権として好都合。爆破事件でパスポートなど「犯人」を示唆するようなものが発見されるが、今回も似ている。 しかし、治安機関のシンベトはバス爆破事件に関与した疑いでイスラエル人2人を21日に逮捕した。裁判所が箝口令を敷いているので詳細は不明だが、パレスチナ人によるテロ攻撃というストーリーは揺らいでいる。戦闘を再開したいネタニヤフ政権による偽旗作戦の疑いが出てきたということだ。 ジョー・バイデン政権はイギリス政府やドイツ政府と連携、ガザを破壊し、住民を虐殺するイスラエルを支援、ドナルド・トランプは大統領に就任して早々、200万人と言われるガザの住民をヨルダンやエジプトへ移住させると宣言していたが、ヨルダンやエジプトがその計画に賛成する可能性は小さい。そうしたことをトランプもわかっているはずで、実現不可能な好戦的計画を宣伝したと推測する人もいる。 トランプ大統領が戦闘再開に消極的であるなら、ネタニヤフ首相が偽旗作戦を仕掛けても不思議ではない。そうした状況の中、シンベトが容疑者としてイスラエル人を逮捕したことに注目する人もいる。イスラエル政府ないにネタニヤフ首相の好戦的な政策に賛成していないグループが存在、それなりの力を維持しているのではないかということだ。 しかし、戦闘が再開されてもイスラエルの状況が良くなるとは言えない。ガザは廃墟と化しているが、住民は逃げ出さず、ハマスは健在。しかも23日にはヒズボラの指導者だったハサン・ナスララがベイルートで埋葬されたが、その葬列に数百万人が参加、ヒズボラが健在であることを世界に示した。イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)も変わりがなく、シリアは安定化する見通しが立っていない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.24
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EUで外交問題の責任者を務めるキャサリン・アシュトンとエストニアのウルマス・パエト外相の電話での会話が盗聴され、3月5日にYouTubeへアップロードされた。キエフを見てきたパエト外相はその中で、デモ隊や警官隊を狙撃しているのは「西側」に支援されたクーデター派に雇われた人間だと推測されていると報告している。 リビアやシリアでも「西側」やペルシャ湾岸の産油国が送り込んだ傭兵が抗議活動をしている人や治安部隊を狙撃、戦闘を本格化させていったのだが、同じことがウクライナでも起こるだろうと推測する人は少なくなかった。予想通りで驚きではないが、こうした会話が出てきた意味は重い。 こうした会話が盗聴されることは当人たちもわかっていたはずで、漏れることを承知で話している可能性もある。戦争を望んでいるネオコンに対する牽制だということだ。バラク・オバマ政権が協力している可能性も排除できない。
2014.03.05
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サウジアラビアで王族メンバーのひとり、ナーイフ・ビン・アーメド・ビン・アブドラジズが3月7日に逮捕されたと伝えられている。この人物は前日に逮捕されたアーメド・ビン・アブドラジズの息子だ。3月6日にはムハンマド・ビン・ナーイフ前皇太子、前皇太子の弟であるナワフ・ビン・ナーイフも逮捕されている。モハメド・ビン・サルマン皇太子によると、逮捕された人びとはアメリカと共謀してクーデターを目論んだからだという。 ナーイフ前皇太子がヒラリー・クリントンを担いでた勢力、つまりアメリカの巨大資本やネオコンと結びついていたことは事実だが、ビン・サルマン皇太子もアメリカやイスラエルの支配層の影響下にあることも事実。そうした背景が皇太子を交代させることになった。 つまり、ムハンマド・ビン・ナーイフは2015年4月、ヒラリー・クリントンがアメリカの大統領になるという前提でサウジアラビアの皇太子に就任したのだが、16年の選挙でドナルド・トランプが勝利したため、17年6月にビン・サルマンへ交代したのである。 ビン・サルマンは好戦的な政策を打ち出しているが、ビン・ナーイフも平和的な人物とは言えない。ダーイッシュ(イラクとレバントのイスラム首長国。イスラム国、IS、ISIS、ISIL、IEILとも表記)が売り出された2014年、総合情報庁の長官としてジハード傭兵を動かしていたバンダル・ビン・スルタンが爆弾攻撃で重傷を負うが、そのバンダルに替わって傭兵をビン・ナーイフは指揮するようになっている。 皇太子になったモハメド・ビン・サルマンは2017年9月にイスラエルを極秘訪問、10月にはドナルド・トランプ大統領の義理の息子にあたるジャレッド・クシュナーがサウジアラビアを極秘訪問、そして11月に王族の粛清を実行した。そのときにバンダル・ビン・スルタンとムハンマド・ビン・ナーイフは拘束されたと伝えられている。 クシュナーはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しく、ネタニヤフに対する影響力を持つカジノ経営者のシェルドン・アデルソンは義理の父親、つまりドナルド・トランプのスポンサーだ。 サウジアラビアの権力抗争はアメリカやイスラエルの権力抗争とつながっていると言えるだろう。
2020.03.09
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イスラエル当局はアメリカ人ジャーナリストのジェレミー・ロフレドを逮捕した。10月1日にイラン軍は180機以上の弾道ミサイルを発射、イスラエルの軍事基地や情報機関の本部を攻撃した。イスラエル政府は否定しているが、周辺でミサイル攻撃の様子が撮影されたほか、何人かのジャーナリストが着弾地点を実際に調べている。そうした取材、報道していたひとりがロフレドだ。保釈にはなったが、出国は禁止されている。 攻撃された場所はF-35戦闘機を配備するネバティム基地、ハッサン・ナスララをはじめとするヒズボラの指導者を殺害したネツァリム基地、弾道ミサイルのあるテル・ノフ基地、そしてモサドの本部など。ロフレドは、ネゲブのネバティム空軍基地からテルアビブのモサド本部まで、イランのミサイル攻撃を受けた軍事基地や情報機関モサドの本部を訪れて被害を確認している。 このイランによる攻撃はイスラエルに対する報復だった。イスラエル空軍は4月1日にゴラン高原の方向からダマスカスを攻撃してイラン大使館領事部を破壊、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊コッズの上級司令官であるモハマド・レザー・ザヘディ准将と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害、7月31日にはテヘランにいたハマスのイスマイル・ハニヤを暗殺している。 こうした攻撃に対するイラン政府の報復は不可避だと考えられたが、動きは鈍かった。焦らしているとする推測もあったが、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領によると、イスラエルを攻撃しなければイランに対する実質的な制裁の解除と、ハマスの条件に沿ったガザでの停戦保証を欧米の当局者は提案、その提案をペゼシュキアは信じというのだが、それが事実ならあまりにもお粗末。愚かすぎた。 そして9月27日、イスラエル軍は南レバノンにバンカー・バスター爆弾(地中貫通爆弾)約85発を投下して破壊。レバノン社会医学協会のライフ・レダ会長はイスラエルがバンカー・バスター爆弾BLU-109の弾頭に劣化ウラン弾を使っている疑いがあると語った。サイード・ナスララをはじめとするヒズボラの幹部が殺されたほか、少なからぬ市民が犠牲になっている。そのイスラエルによる攻撃でペゼシュキアンは目が覚めたのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.13
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中国と戦略的な同盟関係を結び、朝鮮との関係を強化しているロシアは日本の対ロシア政策は非友好的だと考えている。ロシア大統領の報道官を務めるドミトリー・ペスコフは1月25日、日本はモスクワに対して非友好的な政策を続けていると述べた。アメリカに従属しているということだ。 こうした主張をロシアが突然言い出したわけではない。2021年9月、ロシア国家安全保障会議の議長を務めていたニコライ・パトロシェフはAUKUSについて中国やロシアを仮想敵とする「アジアのNATO」だと指摘、ロシアは朝鮮との関係を急ピッチで強化することになっている。 中国やロシアとの関係を維持しようとしていた安倍晋三が首相を務めていた時代ならロシアはそこまで言わなかったかもしれないが、2020年9月16日に体調の悪化を理由にして辞職してしまった。日本企業がアメリカの圧力を跳ね除けてサハリンにおける石油や天然ガスの開発を継続すると発表する直前の22年7月8日に彼は射殺されている。 アメリカへ従属する姿勢が目についた岸田文雄に次いで首相となった石破茂はロシアと「領土問題」を解決し、平和条約を締結したいと述べたというが、これは千島列島に属す択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島をアメリカ軍が支配することを意味する。ロシアにとってこうしたことは極東の安全保障だけでなく、北極航路の安全にも関わる問題だ。日本とロシアとの接近を阻止したいアメリカにとってこの領土問題は重要な仕掛けにほかならない。 日本の領土問題は1945年2月の「ヤルタ協定」から始まる。アメリカのフランクリン・ルーズベルト、イギリスのウィンストン・チャーチル、ソ連のヨシフ・スターリンがクリミア半島のヤルタで会談した際に決められもので、ドイツが降伏し、ヨーロッパでの戦争が終結してから2カ月から3カ月後にソ連が日本に宣戦布告する条件を取り決めている。 その中には現在のサハリン南部や近くにある全ての島々をソ連へ返還し、千島列島はソ連へ引き渡すことが含まれてたのだが、日本側は択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島を千島列島でないとしているわけだ。この主張の背後にはアメリカが存在していると言えるだろう。1956年10月に日本の鳩山一郎政権はソ連と共同宣言に署名した歯舞島と色丹島を日本領にするというソ連案を受け入れたのだが、問題解決を嫌ったアメリカ政府がこの案を潰している。 日本が従属しているアメリカは現在、苦境に陥っている。外交や軍事の分野で主導権を握ってきたネオコンはウクライナで戦争を仕掛けてロシアに敗北、中東でも思惑通りの展開にはなっていない。東アジアでは中国やロシアと戦うための準備を進めてきたものの、計画通りには進んでいないようだ。 アメリカは21世紀に入ってからロシアや中国と戦争する準備を進めてきた。日本から台湾にかけての島々は米英両国にとって中国を侵略するための拠点であり、朝鮮半島は橋頭堡にほかならない。 日本には自衛隊というアメリカ軍の補完部隊が存在、韓国には現役の軍人が50万人、そして予備役が310万人いる。その韓国を動かすためにアメリカは尹錫悦を大統領に据え、日米韓の「三国同盟」を推進しようとしたのだろうが、尹大統領の従米政策は国民の反発を招く。 韓国では政党に関係なく朝鮮半島が戦場になることを恐れていた。朴槿恵も戦争を嫌がり、中国との関係を重要視、アメリカがTHAAD(終末高高度地域防衛)ミサイル・システムを韓国へ配備することに難色を示していたのだが、2017年4月に持ち込まれた。朴大統領がスキャンダルで身動きできなくなり、阻止できなかったのだ。朴槿恵を失脚させ検事が尹錫悦にほかならない。 その尹をアメリカは大統領に据える。大統領として尹はアメリカの意向に沿う政策を推進、中国やロシアとの関係を悪化させ、韓国経済を失速させた。アメリカは日米韓の「三国同盟」を推進しようとしたのだろうが、尹大統領の従米政策は国民の反発を招き、クーデターというギャンブルを仕掛けざるをえなくなった。戒厳令宣言の黒幕は韓国駐在アメリカ大使のフィリップ・ゴールドバーグではないかと考える人もいる。 ゴールドバーグは2006年10月からボリビア駐在大使を務めていた人物だが、2008年9月、ボリビア大統領だったエボ・モラレスはクーデターを支援したとして彼を国外へ追放している。また2013年12月から16年10月にかけてフィリピン駐在大使を務めていた際、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領からCIAがドゥテルテの追放、あるいは暗殺を企てていると非難されていた。 その一方、アメリカは日本でも戦争の準備を進めている。自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカの軍事戦略に基づく。 この戦略は2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が明らかにしている。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表したのだ。 南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋と太平洋を一体のものとして扱うということだろう。 2020年6月にNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。 アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。 与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。 岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。 2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 アメリカは千島列島から南西諸島までの島々を軍事的な拠点と考えている。中曽根康弘は首相に就任して間もない1983年1月にアメリカを訪問、その際にワシントン・ポスト紙のインタビューを受けたのだが、その中で「日本列島をソ連の爆撃機の侵入を防ぐ巨大な防衛のとりでを備えた不沈空母とすべきだ」と発言、さらに「日本列島にある4つの海峡を全面的かつ完全に支配する」とし、「これによってソ連の潜水艦および海軍艦艇に海峡を通過させない」と語ったと報道された。 当然のことながらこの発言は問題になり、中曽根は「不沈空母」発言を否定しようとするのだが、インタビューが録音されていたことを知ると「巨大空母」と言ったのだと主張して誤魔化した。その前からイスラエルは自国のことをアメリカの中東における不沈空母だと表現していたので、それを記者は使ったのかもしれない。 ダグラス・マッカーサーは第2次世界大戦や朝鮮戦争の際、台湾を「不沈空母」と呼んでいたが、日本軍も中国を空爆するための空母として利用していた。 その台湾も韓国と同じように、アメリカの軍事戦略から離れたがっているが、日本はアメリカから離れられないようだ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.11
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アメリカとロシアの高官がサウジアラビアのリヤドで協議を始めた。アメリカからはマルコ・ルビオ国務長官、マイク・ウォルツ国家安全保障担当補佐官、スティーブ・ウィトコフ中東担当特使、またロシアからはセルゲイ・ラブロフ外相とクレムリンのユーリー・ウシャコフ大統領補佐官が出席した。またサウジアラビアの外相や国家安全保障問題担当補佐官も同席している。 ウクライナを舞台とした戦闘はバラク・オバマ政権がネオ・ナチをを利用して実行したクーデターから始まり、ジョー・バイデン政権が従属国を率いて行ってきた。兵士として戦っているのは基本的にウクライナ人だが、実際はアメリカとロシアの戦争だ。そうした事情から考え、交渉の場にウクライナの自称大統領やヨーロッパ諸国の首脳がいないことを不思議がることはない。 ドナルド・トランプ大統領はロシアの要求を相当部分呑むと見られ、両国の関係を修復する姿勢を見せているのだが、その一方、ガザでは進展が見られない。そうした中、注目されているのが台湾問題だ。アメリカ国務省の台湾に関するサイトから「台湾の独立を支持しない」という文言を削除したのだ。トランプ政権は東アジアの軍事的な緊張を高めようとしている。 中国にとって「台湾の独立」とは台湾がアメリカの支配下に入ることを意味する。日中戦争の際、日本軍は中国を空爆するための「空母」として台湾を利用、ダグラス・マッカーサーは第2次世界大戦や朝鮮戦争の際、台湾を「不沈空母」と呼んでいた。 日本では19世紀後半、イギリスを後ろ盾とする勢力が「徳川朝」を倒して天皇制官僚国家の「明治朝」を樹立した。そのクーデターは明治維新と呼ばれている。その新王朝は1872年に琉球を併合した後に台湾へ派兵、続いて江華島へ軍艦を派遣、そして日清戦争や日露戦争に突き進んだ。 日露戦争では「棍棒外交」で有名なアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領が日本を助けるために講和勧告を出し、1905年9月には講和条約が締結され、その2カ月後に桂太郎首相はアメリカで「鉄道王」と呼ばれていたエドワード・ハリマンと満鉄を共同経営することで合意しているが、ポーツマス会議で日本全権を務めた小村寿太郎はこの合意に猛反対し、覚書は破棄された。日露戦争で獲得した利権をアメリカに取られると小村は主張したのだが、セオドア・ルーズベルトが講和を仲介した目的のひとつは利権にあったのだろう。 ルーズベルトは1880年にハーバード大学を卒業しているが、その2年前に同大学で法律を学んでいた金子堅太郎と親しい間柄だった。ふたりは1890年にルーズベルトの自宅で知り合っている。 日露戦争の最中、金子は日本政府の使節として渡米、1904年にハーバード大学でアンゴロ・サクソンの価値観を支持するために日本はロシアと戦っていると演説、同じことをシカゴやニューヨークでも語っていた。また日露戦争の後、セオドアは日本が自分たちのために戦ったと書いている。(James Bradley, “The China Mirage,” Little, Brown and Company, 2015) 日本が韓国を併合する動きを察知した朝鮮の高宗はホーマー・ハルバートを特使としてワシントンへ派遣するが、セオドア大統領やエリフ・ルート国務長官はその特使と会おうとしない。朝鮮は米朝修好通商条約の第1条に基づいて独立維持のための援助を求めたが、これをアメリカ政府は拒否している。すでにセオドア・ルーズベルト政権は桂太郎や金子堅太郎らと韓国併合で話はついていたのである。日本の中国侵略の背後にはイギリスやアメリカが存在していたと言えるだろう。 第2次世界大戦後、アメリカは日本を東アジア支配の拠点として利用してきた。1972年2月にリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問、その際に発表された「上海コミュニケ」でアメリカは「台湾海峡の両側にいるすべての中国人は、中国は1つであると主張している」ことを正式に認めた。いわゆる「ひとつの中国」だ。この立場をアメリカ政府は維持してきたが、2月13日にアメリカの国務省は台湾に関するサイトから「台湾の独立を支持しない」という文言を削除したのである。「独立を支持する」と主張しているわけではないが、中国を刺激した。 トランプ政権は中国との対決姿勢を強めている。経済戦争が注目されているが、21世紀に入ってから軍事的な圧力も強めてきた。自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させているが、これはアメリカの軍事戦略に基づくものだ。 この戦略は2022年の4月にアメリカ国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が説明している。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するという計画を公表したのだ。 南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋と太平洋を一体のものとして扱うということだろう。 2020年6月にNATO(北大西洋条約機構)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長はオーストラリア、ニュージーランド、韓国、日本をメンバーにするプロジェクト「NATO2030」を開始すると宣言。2021年9月にはアメリカ、イギリス、オーストラリアのアングロ・サクソン3カ国が太平洋でAUKUSなる軍事同盟を創設したとする発表があった。 アメリカとイギリスはオーストラリアに原子力潜水艦の艦隊を建造させるために必要な技術を提供するとも伝えられたが、そうした潜水艦を動かすためにはアメリカの軍人が乗り込む必要があり、事実上、アメリカ海軍の潜水艦になる。その原子力潜水艦を受け入れる可能性があると山上信吾オーストラリア駐在大使はキャンベラのナショナル・プレス・クラブで2022年11月14日に表明した。 与那国島にミサイル発射施設を建設する前年、2015年の6月、総理大臣だった故安倍晋三は赤坂の「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている。安倍首相は南シナ海における中国との軍事衝突を見通していた。 岸田文雄政権は2022年12月16日に「国家安全保障戦略(NSS)」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」の軍事関連3文書を閣議決定、2023年度から5年間の軍事費を現行計画の1.5倍以上にあたる43兆円に増額して「敵基地攻撃能力」を保有することを明らかにした。 2022年10月には、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル「トマホーク」の購入を米政府に打診している」とする報道があった。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。 トランプ政権がロシアとの戦争状態を追えたがっている理由のひとつは対中国戦争にあると見る人もいる。ロシアと中国を分断し、中国を攻撃しやすくしたのだろうということだ。ニクソンが1972年に中国を訪問し、関係修復に乗り出した目的のひとつはソ連と中国を分断し、ソ連を孤立させることにあった。その成功体験を再現したのではないかと考える人がいる。 第2次世界大戦後、アメリカのハリー・トルーマン政権は蒋介石に中国を支配させる予定で、資金援助だけでなく軍事顧問団も派遣、ソ連のヨシフ・スターリンもコミュニストには中国を統一する力がないという判断から蒋介石を支持していた。ソ連が東ヨーロッパを支配できた一因はここにあるという人もいる。 1946年夏の戦力を比較すると国民党軍は200万人の正規軍を含め総兵力は430万人。それに対し、紅軍(コミュニスト)は120万人強にすぎず、装備は日本軍から奪った旧式のもの。国民党の勝利は確実だと思われていたのだが、1947年の夏になると農民の支持を背景として人民解放軍(47年3月に改称)が反攻を開始。兵力は国民党軍365万人に減少したのに対し、人民解放軍は280万人へ増加。1948年の後半になると人民解放軍が国民党軍を圧倒するようになり、49年1月に解放軍は北京へ無血入城した。 1949年に入るとアメリカの極秘破壊工作機関OPCが拠点を上海から日本へ移動させる。厚木基地をはじめ6カ所に拠点がつくられた。中華人民共和国が成立するのはその年の10月のことだ。(Stephen Endicott & Edward Hagerman, “The United States and Biological Warfare”, Indiana University Press, 1998) OPCが拠点を上海から日本へ移動させた1949年、国鉄を舞台とした怪事件が相次ぐ。7月5日から6日にかけての下山事件、7月15日の三鷹事件、そして8月17日の松川事件だ。いずれも共産党が実行したというプロパガンダが展開され、組合活動は大きなダメージを受け、物資の輸送が滞る心配はなくなった。日本を兵站拠点にする準備が整ったということだ。 アメリカでも日本でもロシアと中国が手を組むことはありえないと今でも主張する人が少なくない。そうした人びとには現在の状況が受け入れられないのだろうが、すでに両国はパイプライン、鉄道、道路などの建設で結びつきを強めている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.19
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このブログは読者の皆様に支えられています。ブログを存続させるため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。【振込先】巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦 アメリカの外交や軍事をコントロールしてきたネオコンはソ連を消滅させた後、世界制覇プロジェクトを始めました。正規軍による先制攻撃でイラクのサダム・フセイン政権を倒し、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする傭兵を利用してシリアやリビアを侵略、それと同時にヨーロッパではNATOを東へ拡大させるという形で侵略を開始、資源や穀倉地帯を手に入れようとしたのですが、彼らの思惑はウクライナで破綻しました。 その事実を受け入れられないネオコンやその従属者は戦争の継続を要求、ウクライナ人に対しては最後にひとりまで戦えと言ってきました。「撃ちてし止まむ」や「総玉砕」といったかつて日本で掲げられたスローガンを思い起こさせます。日本でもそうした主張をする人が少なくないようです。しかも東アジアにおける戦争の準備をするべきだと主張しています。すでにアメリカ軍は南西諸島にミサイル発射基地を建設、戦争の準備を進めてきたのですが、それを始動させる準備を始めたのかもしれません。 今でもキエフ政権を支持している人は2014年2月のクーデターを正当化、そのクーデターを認めない東部や南部の人びとを悪玉として描いています。勿論クーデターは憲法で認められていないわけで、クーデター体制を認めている人が「護憲派」であるはずはありません。しかもクーデターを主導したのはNATOの訓練を受けたネオ・ナチで、今でもその勢力はウクライナで力を持っています。つまりクーデター体制を認めている人は「親ナチズム」でもあるのでしょう。 クーデター体制における大統領の任期は5年。大統領就任が2019年5月のウォロディミル・ゼレンスキーは昨年5月に任期が切れましたが、今大統領選挙を実施すれば敗北することが確実なゼレンスキーは戒厳令を口実にして選挙の実施を拒否、彼の後ろ盾は彼を大統領だと今でも言い続けています。 ウクライナという国についてヘンリー・キッシンジャー元国務長官は2014年3月5日付けワシントンポスト紙に書いています。ロシアの歴史はキエフ・ルーシと呼ばれた国から始まり、ロシアの宗教はそこから広まったのであり、ウクライナは何世紀にもわたってロシアの一部だと指摘、またウクライナの西部は1939年にソ連へ編入され、クリミアは54年にニキータ・フルシチョフがウクライナへ住民に無断で譲与したのだとしています。東部もソ連時代になってからロシアからウクライナへ割譲されました。また西部は主にカトリック教徒、東部は主にロシア正教徒、また西部ではウクライナ語が話され、東部では主にロシア語が話されているともキッシンジャーは指摘しますが、これは事実です。そこでキッシンジャーは、ウクライナで一方が他方を支配しようとすれば内戦または分裂につながるだろうと予測していました。 ネオコンは2014年2月のクーデターより前、2004年から05年にかけて「オレンジ革命」でウクライナを制圧していますが、その革命で実権を握った新自由主義者が国民を貧困化させたことから2010年の大統領選挙でビクトル・ヤヌコビッチが当選、「中立」を打ち出します。 キッシンジャーが指摘したような国だったウクライナでは中立的な政策を進めていたのですが、それを受け入れられなかったのがネオコンにほかなりません。そしてオレンジ革命、そしてクーデター。そのクーデター体制が今、崩壊しようとしていますが、日米欧支配層の一部はクーデターの成功体験から抜け出せず、ウクライナ人に戦争を続けさせようとしています。第2次世界大戦終盤の沖縄戦を思い起こさせる状況だと言えるでしょう。 こうした状況を作る上で有力メディアは重要な役割を果たしてきました。かつて少なからぬ日本人が「大本営発表」を信じてように、現在の日本人は有力メディアが流す「権威」の話を信じ、地獄へ向かっています。有力メディアの呪術に打ち勝つには事実を知る必要があります。このブログが状況を理解する一助になればと願っています。櫻井 春彦【振込先】巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2025.02.20
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タルシ・ガバードが2月12日にDNI(国家情報長官)へ、その翌日にはロバート・ケネディ・ジュニアが保健福祉長官へそれぞれ就任した。いずれもかつては民主党に属していたが、同党をネオコンが主導するようになってからふたりは党から離れざるをえなくなった。 2019年末から世界を揺るがせてきたCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で重要な役割を演じてきたCDC(疾病管理予防センター)、FDA(食品医薬品局)、NIH(国立衛生研究所)が保健福祉省の部局に含まれている。1984年11月から22年12月までの期間、アンソニー・ファウチが君臨してきたNIAID(国立アレルギー感染症研究所)はNIHの一部門だ。 COVID-19騒動はアメリカ国防総省のプロジェクトだが、この問題に限らず、医療と軍事の関係は緊密になっている。生物化学兵器の開発ということもあるが、感染症を口実として人びとの行動を制限するなど、軍事色を隠して軍事作戦を展開することができるからだ。 医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワは公開された関連文書の分析から、COVID-19騒動を軍事作戦だと2022年初頭の段階で主張していた。彼女によると、2020年2月4日に保健福祉長官はCBRN(化学、生物、核、放射線)緊急事態に関するふたつの宣言をしている。WHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言したのは3月11日のことだ。 宣言のひとつがEUA(緊急使用許可)で、大量破壊兵器が関与する重大な緊急事態を想定、CBRN物質に対する対抗手段を安全性と有効性を確保するため、規制監督なしに使用する許可だ。 そしてPREP法の宣言。EUAに基づいて使用する対抗手段によって生じる可能性がある付随的損害について、誰も法的責任を負わないことを保証している。要するに免責。2029年12月31日まで有効だ。 2020年2月4日、保健福祉長官だったアレックス・アザーは大量破壊兵器が関与する重大な緊急事態が発生したと判断、EUAを宣言したということになるのだが、世界的に見ても「新型コロナウイルス感染症」の確認症例は少なく、国家安全保障に脅威を与えるような事態ではなかった。 そうした中、国防総省から「新たに発見されたSARS-2ウイルスが国家安全保障上の脅威となっている」とする連絡があったと製薬会社の幹部が話している音声が録音されている。 ラティポワによると、国防総省パンデミック対策コンソーシャムに参加しているアストラゼネカなどの製薬会社は国防総省から「新型コロナウィルスが国家安全保障上の脅威となっている」という電話を受けている。そのコンソーシャムは2017年に設立され、昨年2月の段階でも国防総省が管理しているという。 WHO(世界保健機関)が目論んだ「パンデミック条約」はそうした軍事的な仕組みを世界へ広げるものにほかならない。国防総省と契約した企業は情報開示を免除され、問題が発生しても免責されるが、当然、医薬品メーカーにも当てはまる。 ところで、保健福祉長官が緊急事態に関する宣言をした翌月、3月9日の段階でもトランプは通常の手段で対処できると考えていたのだが、11日に態度を変える。12日にはヨーロッパ、イギリス、オーストラリアからの渡航をすべて停止、13日に保健福祉省はパンデミック政策の権限をCDCから国家安全保障会議へ、最終的には国土安全保障省へ移管する機密文書が作成された。10日に何かがあったとジェフリー・タッカーは推測する。 彼の仮説は、3月10日にトランプが信頼する情報源がトランプに「極秘情報」を伝えた。教科書には載っていない恐ろしいウイルスが武漢の研究所から漏洩したと脅し、mRNAプラットフォームに関する20年間の研究の成果で、ワクチンを数か月で展開できるので、選挙の前にワクチンを配布できると保証したのではないかという推測だ。そうなれば再選は確実で、歴史に名を残すこともできると言われたかもしれない。その結果、トランプはロックダウンを決断、経済を破壊してしまった。そして「ワクチン」というタグのつけられた遺伝子操作薬が数十億人に接種されることになった。 再選に失敗したトランプは自分が騙されたことに気づいたはず。第2期目には真相を明るみに出し、自分を騙した勢力に報復しようと決意している可能性がある。ロバート・ケネディ・ジュニアならできるかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.15
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ドイツでは2月23日に連邦議会選挙があり、CDU/CSU(キリスト教民主同盟)が32%を獲得して第1党になった。EUの現体制を支えている勢力から激しい攻撃を受けてきたAfD(ドイツのための選択肢)は得票率21%で第2党。現首相のオラフ・ショルツが率いるSPD(社会民主党)は20%で第3党に止まり、ロシアとの戦争を煽っていた好戦派のアンナレーナ・ベアボック外相が所属する同盟90/緑の党は12%で第4党だ。AfDは平和を訴えているが、CDU/CSUは与党と同じようにロシアとの戦争を継続したいと考えている。 議席の増減を見ると、CDU/CSUが11議席増、AfDが69議席増だったのに対し、SPDは86議席減、同盟90/緑の党は33議席減。そのほか左翼党が25議席増やしている。ショルツ政権はアメリカのジョー・バイデン政権の命令に従ってロシアとの戦争へのめりこんでドイツ経済に大きなダメージを与え、社会を破壊、首相は無能さを曝け出していた。好戦的な言動を繰り返していたベアボックの同盟90/緑の党が敗北するのも必然だった。 平和を実現し、経済を回復させることを望む人の声がAfDの躍進につながったのだが、ヨーロッパの支配層はそうした声を抑え込んでいる。平和を求めるデモをインターネットは表示しないようにされているようだ。イギリスやドイツで戦争に反対すると要注意人物としてチェックされる恐れがある。スウェーデンでは、NATO加盟は重要すぎる問題なので国民に承認を求めないと説明されている。 ウクライナにおけるロシアとの戦争でイギリスはアメリカのネオコンと同じように重要な推進役を演じてきた。アメリカ海兵隊の元情報将校で、UNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、ウォロドミル・ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問した際、イギリスの対外情報機関MI6のリチャード・ムーア長官を非公式に訪問している。その事実から、ゼレンスキーはMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーア長官だと推測されている。 そのイギリスで労働党の党首を務めていたジェレミー・コービンはイスラエルによるパレスチナでの破壊と殺戮に反対、ロシアとの戦争にも反対していたが、有力メディアから「反ユダヤ主義者」だというタグをつけられ、激しく攻撃されて党首の座から引き摺り下ろされた。 その後釜に据えられたキール・スターマーは2008年11月から13年11月までCPS(王立検察局)を検察局長として率いていた人物で、内部告発を支援する活動を続けてきたWikiLeakesの象徴だったジュリアン・アッサンジの引き渡し問題で2009年、11年、12年、13年、4度にわたってワシントンDCを訪問している。そのスターマーは親イスラエルを公言、自分の妻ビクトリア・アレキサンダーの家族はユダヤ系だとアピールしている。 イギリスの労働党はイスラエルが「建国」されて以来、親イスラエルだったが、1982年9月にレバノンのパレスチナ難民キャンプのサブラとシャティーラでイスラエルとファランジスト党がパレスチナ難民を虐殺して以来、親パレスチナへ変化しつつあった。 この虐殺はファランジスト党の武装勢力はイスラエル軍の支援を受けながら無防備の難民キャンプを制圧、その際に数百人、あるいは3000人以上の難民を殺したと言われている。イギリス労働党の内部ではイスラエルの責任を問い、パレスチナを支援する声が大きくなった。 ところが、1994年5月、労働党の党首だったジョン・スミスが急死、その1カ月後に行われた投票で勝利したのがイスラエルを後ろ盾にするトニー・ブレアだ。1994年1月に彼は妻のチェリー・ブースと一緒にイスラエル政府の招待で同国を訪問、帰国して2カ月後にロンドンのイスラエル大使館で開かれたパーティーに出席、そこで全権公使だったギデオン・メイアーから紹介された富豪のマイケル・レビーを紹介され、それ以降、レビーはブレアの重要なスポンサーになった。 レビーだけでなく、イスラエルとイギリスとの関係強化を目的としているという団体LFIを資金源にしていたブレアは労働組合を頼る必要がない。そこで国内政策はマーガレット・サッチャーと同じ新自由主義、国外では親イスラエル的で好戦的なものになったのだ。 労働党員の中にはブレアのような姿勢に反発する人は少なくない。そこで台頭してきた人物がコービンにほかならない。2015年9月から党首を務めるが、これを米英の支配層は嫌ったのだ。 コービンに対する攻撃には偽情報も使われているが、その重要な発信源のひとつが2015年に創設されたインテグリティ・イニシアチブ。イギリス外務省が資金を出している。「偽情報から民主主義を守る」としているが、その実態は偽情報を発信するプロパガンダ機関にすぎない。そして2020年4月4日、党首はスターマーに交代した。 ロシアにはウクライナとの戦争に反対する反ウラジミル・プーチン派が少人数ながら存在していたが、国外へ脱出した。2022年2月以降にロシアを離れたロシアの反体制派はその約7割がイスラエルへ移住、パレスチナ人虐殺を支持していると伝えられている。 イスラエル軍によるパレスチナの破壊と住民虐殺を支えているのは西側からの支援。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)によると、軍事物資の69%はアメリカから、30%はドイツから供給され、それをイギリスが輸送している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.25
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外国が水中活動をしている疑いがあるとして、スウェーデン軍はバルト海で大規模な作戦を始めたという。1981年にソ連の潜水艦が座礁する事故があり、これを思い出す人もいるようだが、1990年代の前半の場合、スウェーデン政府はミンククジラをロシアの潜水艦だと信じていたことが後に判明している。 スウェーデンへの影響という点では、1982年の出来事が大きい。この年の10月8日、アメリカとは一線を画すという姿勢を貫いていたオルオフ・パルメが首相として返り咲くのだが、その1週間前、潜水艦騒動が始まる。 当時、パルメはニカラグアの革命政権を明確に支持するなど、アメリカにとって好ましくない人物だった。このパルメは1986年、妻と映画を見終わって家に向かう途中、銃撃され、死亡している。 1979年からアメリカはソ連との戦争に向かって動き始めている。7月にはエルサレムでイスラエルとアメリカの情報関係者が集まり、「国際テロリズム」に関する会議を開いたのだが、そこで「テロの黒幕」はソ連だというキャンペーンを始めることになる。 アメリカからの出席者は、ジョージ・H・W・ブッシュ元CIA長官(後の大統領)、レイ・クライン元CIA副長官、CIAの対ソ強硬派「Bチーム」を率いていたネオコン(親イスラエル派)のリチャード・パイプス、そして「ジャーナリスト」のアーノウド・ド・ボルクグラーブとクレア・スターリングらがいた。会議後、日本ではスターリングらを情報活動の専門家として扱っている。 その年の12月に開かれたNATOの理事会では1983年からアメリカのパーシングIIと巡航ミサイルをNATO5カ国に順次配備すると決定した。そうした流れに反発する西側の人びとは反核運動を開始、1981年10月に西ドイツで開かれた反核集会には約30万人が集まっている。 その前年、元ビートルズのジョン・レノンがトッド・ラングレンのファンでキリスト教原理主義者から大きな影響を受けたいたといわれるマーク・チャップマンに射殺されているが、もしレノンが生きていたなら運動に参加した可能性は高く、運動をさらに盛り上げていたことだろう。こうした情勢の中、1980年のスウェーデンではソ連を脅威だと考える人は全体の5〜10%にすぎなかった。 ところが、1982年に国籍不明の潜水艦がスウェーデン領海へ侵入、大捕物が展開されると状況は一変、ソ連を脅威だと考える人が1983年には40%に上昇、軍事予算の増額に賛成する人の比率は1970年代の15〜20%が約50%に増えている。 潜水艦の領海侵入騒動でアメリカの好戦派や軍需産業は大きな利益を得たが、ソ連は評判を落とし、大きな損失を被ることになった。本当にソ連の潜水艦がスウェーデンの領海内に侵入したのだとすると、稀に見る愚かな作戦だったと言えるだろうが、ノルウェーの研究者、オラ・ツナンデルはアメリカとイギリスがスウェーデン国民のソ連感情を悪化させるために仕組んだと推測している。 騒動の直前、9月にNATO軍はデンマークやノルウェーへの上陸演習「ノーザン・ウェディング」を、バルト海では別の演習「USバルトップス」を行い、さらに対潜水艦戦訓練「ノットバーブ」が実施されている。この対潜水艦戦の訓練こそが潜水艦追跡劇の真相ではないかと考える人もいる。 ノルウェーの情報将校は問題の潜水艦はソ連のものではないと断言、西側の潜水艦だとし、ソ連のウィスキー型潜水艦だとする説も明確に否定し、アメリカやスウェーデンの当局者と真っ向から対立している。(Ola Tunander, “The Secret War Against Sweden”, 2004) 1983年の春、アメリカ海軍は千島列島エトロフ島の沖に3空母、つまりエンタープライズ、ミッドウェー、コーラル・シーを中心とする機動部隊群を終結させ、大規模な艦隊演習「フリーテックス83」を実施している。志発島の上空に侵入して対地攻撃訓練を繰り返し、米ソ両軍は一触即発の状態になったと言われている。(田中賀朗著『大韓航空007便事件の真相』三一書房、1997年) この年の8月31日から9月1日にかけて大韓航空007便がアラスカの「緩衝空域」と「飛行禁止空域」を横切り、ソ連領空を侵犯、サハリン沖で撃墜されたと見られている。その年の11月にはNATO軍が軍事演習「エイブル・アーチャー83」を計画、核攻撃のシミュレーションも行われることになっていた。これをソ連の情報機関KGBは「偽装演習」だと疑い、全面核戦争を仕掛けてくるのではないかと警戒体制に入っている。 ところで、スウェーデンでは9月14日の総選挙で社会民主労働党が第1党になり、10月2日に同党のステファン・ロベーン党首が首相に就任することを議会が承認した。原発依存を見直す可能性もあるが、それ以上に注目されているのがパレスチナを国家として承認する方針を打ち出していること。イスラエル政府は激しく反発している。これまでスウェーデンはWikiLeaksに対するアメリカ政府の攻撃を支援してきたが、この方針も変化するかもしれない。そうした中での騒動だ。
2014.10.18
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東芝が2017年3月期の決算で数千億円規模の減損損失を計上する可能性があるという。 前期にも同社は2500億円程度の減損処理を実施しているが、そうした事態を招いた最大の原因は原子力部門である。2006年2月に東芝はイギリスのBNFL(British Nuclear Fuels Limited/英国核燃料会社)からウェスティングハウス・エレクトロニックを54億ドルで買収したが、この取り引きが原因で2年後には粉飾決算を始めることになったようだ。 こうした事実が公表される直前、安倍晋三政権が高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃炉と新たな高速炉開発する方針を固めたと報じられた。もんじゅには36年間で1兆0410億円がつぎ込まれたが、計画は全く進んでいない。もっとも、計画が進んでいたなら日本を死滅させるリスクを飛躍的に増加させていたはずで、不幸中の幸いと言えるかもしれない。 もんじゅの計画にはアメリカの事情が反映されている。ジミー・カーター政権は核分裂性物質の管理を強化する政策を推進、1978年に成立した原子エネルギー法は、アメリカで作られた核物質を外国がどのように輸入し利用するかを厳しく制限するものだった。その結果、議会は国境を越える原子炉用核燃料の輸送に承認を与えなければならなくなる。 しかし、次のロナルド・レーガン政権は違った。新型核弾頭の設計や、増殖炉の開発に取り組んでいる科学者たちに資金を注ぎ込んだのだ。そうした計画の中心がクリンチ・リバー渓谷にあったエネルギー省オークリッジ国立研究所の施設。1980年から87年の間に160億ドルが投入されたと言われているが、アメリカの経済状況が悪化したこともあって87年に議会はクリンチ・リバーへの予算を廃止してしまう。 調査ジャーナリストのジョセフ・トレントによると、そこで登場したのが日本だった。クリンチ・リバーの計画を推進していたグループはそこで開発された技術を日本の大手電力会社へ千分の一の値段で移転したのだ。 日本が核兵器の開発を進めていると確信していたCIAはこうした動きを警戒するが、内部に入り込むことはできなかった。IAEAがアメリカ支配層に逆らうことも難しいだろう。それだけ増殖炉に絡んだ人脈は強力だということを意味している。日本とアメリカの科学者は共同で研究を始め、資金は日本の電力会社が出したという。 その過程で日本側が第1に求めたのは核兵器用プルトニウムを量産してきたサバンナ・リバー・サイトにあるプルトニウム分離装置。その装置が運び込まれることになるのは、東海再処理工場に付属する施設として1995年に着工されたRETF(リサイクル機器試験施設)だ。プルトニウムを分離/抽出する施設だ。 こうした目論見をもんじゅの廃炉で諦めるつもりはないようで、文科省はもんじゅ内に新たな試験炉を設置する方針もまとめ、安倍政権はもんじゅに代わる新しい高速炉の開発に着手する方針を確認した。もんじゅで得る予定だったデータはフランス政府が計画している高速炉ASTRIDに資金を拠出して共同研究に参画したり、もんじゅの前段階の研究に使われた実験炉の常陽を活用するつもりのようだ。 こうした動きの源は核兵器を持ちたいという日本支配層の欲望にあると言えるだろう。原子力ビジネスによって私腹を肥やしたいという思いも強いだろうが、カネ儲けだけなら原子力である必要はない。 以前にも書いたことがあるが、日本の核兵器開発は第2次世界大戦の時代までさかのぼることができる。そうした研究開発にはふたつの流れがあり、そのひとつは理化学研究所の仁科芳雄を中心とした陸軍の二号研究、もうひとつは海軍が京都帝大と検討していたF研究だ。陸軍は福島県石川郡でのウラン採掘を決め、海軍は上海の闇市場で130キログラムの2酸化ウランを手に入れて1944年には濃縮実験を始めたという。 1945年に入るとドイツは日本へ約540キログラムの2酸化ウランを潜水艦(U234)で運ぶ計画を立てるが、途中でアメリカの軍艦に拿捕されてしまう。日本側は知らなかったようだが、アドルフ・ヒトラーの側近だったマルチン・ボルマンは潜水艦の艦長に対し、アメリカの東海岸へ向かい、そこで2酸化ウランを含む積み荷をアメリカ海軍へ引き渡すように命令していたという。(Simon Dunstan & Gerrard Williams, “Grey Wolf,” Sterling, 2011)その結果、このUボートに乗り込んでいた日本人士官は自殺、積み荷はオーク・リッジへ運ばれたとされている。 NHKが2010年10月に放送した「“核”を求めた日本」によると、1965年に訪米した佐藤栄作首相はリンドン・ジョンソン米大統領に対し、「個人的には中国が核兵器を持つならば、日本も核兵器を持つべきだと考える」と伝えている。1967年には「動力炉・核燃料開発事業団(動燃)」が設立され、69年に日本政府は西ドイツ政府に対して核武装を持ちかけた。 この提案を西ドイツは拒否するものの、日本側は核武装をあきらめない。10年から15年の期間での核武装を想定、核爆弾製造、核分裂性物質製造、ロケット技術開発、誘導装置開発などについて調査、技術的には容易に実現できるという結論に達している。 原爆の原料として考えられていた高純度のプルトニウムは、日本原子力発電所の東海発電所で年間100キログラム余り、つまり長崎に落とされた原爆を10個は作れると見積もっていた。 1977年になると東海村の核燃料再処理工場(設計処理能力は年間210トン)が試運転に入るのだが、山川暁夫は78年6月に開かれた「科学技術振興対策特別委員会」で再処理工場の建設について発言、「核兵器への転化の可能性の問題が当然出てまいるわけであります」と主張している。実際、ジミー・カーター政権は日本が核武装を目指していると疑い、日米間で緊迫した場面があったという。 ウェスティングハウス・エレクトロニックなどアメリカやイギリスの核関連会社の買収が経済的に危険だということは東芝の経営者も承知していただろう。だからこそ、日本企業が買収できるのだ。そうしたリスクがあっても買収したい理由があったはずだ。東芝の救済がどのような形で行われるか、興味深い。
2016.12.29
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アフリカ、インド、ハイチなど医薬品メーカーや研究機関が「臨床試験」に使ってきた地域では「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン、特に米英の製品に対する拒絶反応が強いが、ここにきてその危険性が広く知られるようになり、接種にブレーキがかかった。それだけでなく、「COVID-19騒動」そのものの胡散臭さも公的な機関が認めざるをえなくなりつつある。「感染爆発」を演出する軸になってきたPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査を利用したマジックの種が露見、来年以降もこれまでと同じように続けることは難しくなった。 そうした中、アメリカ軍は接種をさらに推進するために「ワクチン」接種を強制する動きがあるほか、ジョー・バイデン政権は大学、老人ホーム、国の資金が提供されている団体に対し、「ワクチン」を強制しない場合は資金の提供を取りやめると脅し始めたようだ。アメリカの属国である日本でも「COVID-19」に対する恐怖心を煽り、「ワクチン」の接種を加速させようと必死だが、その先には暗黒の世界が見える。
2021.08.12
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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はイギリスの対外情報機関MI-6の命令で動いているとスコット・リッターは自身が作成した2部構成のドキュメント「エージェント、ゼレンスキー」の中で指摘した。(パート1、パート2)リッターはアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官だ。調査にはフランスの元情報機関員エリック・デネーゼが協力している。 2020年10月14日にゼレンスキーはイギリスを訪問したが、その際にMI-6のリチャード・ムーアからゼレンスキーの周辺にロシアのスパイがいて情報が漏れていると警告されたと伝えられていた。その後、ゼレンスキーの身辺警護はすべて英国に引き継がれたという。同時にウクライナのすべての反対派報道機関は、イギリスの命令で検閲され、活動できなくなった。ゼレンスキーはMI-6の長官に操られているということだ。 ウクライナは2013年11月から14年2月にかけてのクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ大統領が排除され、ネオ・ナチが街を跋扈する反ロシア体制になった。そこでヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部では住民がクーデターを拒否、南部のクリミアはロシアと一体化し、東部のドンバスでは内戦が始まる。そのほかの地域でも人びとはネオ・ナチが支配する体制を嫌っていた。 そうした中、2015年11月に下ネタを得意とするコメディアンだったゼレンスキーを主役とするテレビ番組『人民のしもべ』が始まり、人気になる。このドラマは教師がウクライナの指導者というもので、国民が望む大統領に即したイメージをゼレンスキーにつけた。そのイメージが功を奏し、2019年の3月から4月にかけて実施された大統領選挙で圧勝する。番組は選挙の直前まで続いた。 しかし、当選後、彼はそうしたイメージとは反対の政策、つまりネオコンの手先として活動していたネオ・ナチが望む政策を始める。ゼレンスキーはMI-6やCIAが書いた台本に従って演じるコメディアンだとも言える。 ゼレンスキーの政策は西側の巨大資本の制圧された他の国々と同じように、そうした巨大資本へ国の資産を叩き売る。その報酬は多額で、財産が膨らんでいった。複数のオフショア市場の口座を持ち、欧米やイスラエルなどに高級住宅を保有することになる。 ソ連時代、ウクライナには造船、エレクトロニクス、ロケット、化学工業、冶金などの産業があり、少なからぬ大学など研究施設もあった。また膨大な農地をアメリカのアグリビジネスに売却、最近では未開発のレアアースが注目されている。 シティを拠点とするイギリスの支配層、つまり金融資本は19世紀からロシアの征服を計画、そこに新興国家のドイツを潰すと言う目的が加わり、第1次世界大戦につながった。この戦略を実行する上で重要な役割を果たしたのがイギリスと関係の深い有力貴族、ユスポフ家だ。 第1次世界大戦が始まる前からこの家にはイギリス人の家庭教師がいて、サンクトペテルブルクにあった同家の宮殿で家庭教師の子どもが誕生している。スティーブン・アリーだ。その11年後にフェリックス・ユスポフが誕生、後にイギリスのオックスフォード大学へ留学し、ブリンドン・クラブへ入っている。留学先で親密な関係になったオズワルド・レイナーは流暢なロシア語を話した。アリーとレイナーは大学を卒業した後、イギリスの対外情報機関MI6のエージェントになる。MI6は金融資本と緊密な関係にある組織だ。(Joseph T. Fuhrmann, “Rasputin,” John Wiley & Son, 2013) 第1次世界大戦に参加するかどうかで帝政ロシアの支配層は割れていた。ドイツとの戦争に積極的な産業資本家と消極的な大地主だ。産業資本家側には有力貴族のフェリックス・ユスポフが、また大地主側には修道士のグレゴリー・ラスプーチンがつき、ラスプーチンの背後には皇帝アレキサンドロビッチ・ニコライ2世と皇后アレクサンドラがついていた。 戦争を望んでいなかった皇后は7月13日にラスプーチンへ電報を打って相談、ラスプーチンは戦争が国の崩壊を招くと警告しているが、その内容を盗み見た治安当局は議会などにリーク、ラスプーチンは腹部を女性に刺されて入院してしまう。入院中にロシアは総動員を命令、ドイツは動員を解除するよう要求。それをロシアが断ったため、ドイツは8月1日に宣戦布告している。ラスプーチンが退院したのは8月17日のことである。 すでにドイツと戦争を始めていたロシアだが、ラスプーチンが復帰したことでいつ戦争から離脱するかわからない状況。それを懸念したイギリス外務省は1916年にサミュエル・ホーアー中佐を責任者とする情報機関のチームをペトログラードへ派遣。チームにはアリーとレイナーが含まれていた。(前掲書) ペトログラードにおけるイギリスのお抱え運転手だったウィリアム・コンプトンの日記によると、彼はレイナーをユスポフの宮殿へ1916年の10月後半から11月半ばにかけて6度運んだという。ユスポフは1916年12月19日にレイナーと会ったと書き残している。(前掲書) ラスプーチンは1916年12月30日に暗殺された。殺したのはユスポフだと言われているが、暗殺に使用された455ウェブリー弾はイギリスの軍用拳銃で使われていたもので、殺害現場にいた人の中でその銃弾を発射できる銃をもっていたのはレイナーだけだったという。
2023.07.25
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アメリカの大統領選挙で勝利したドナルド・トランプは選挙期間中、ウクライナでの戦闘を終わらせると約束していた。この公約を実現できるのかどうかを人びとは注目しているが、トランプも万能ではない。 ウクライナでの戦闘は1992年2月、アメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクト(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)をネオコンが作成したところから始まった。 この計画に基づいてアメリカはドイツや日本を自分たちの戦争マシーンに組み込む一方、旧ソ連圏を解体しはじめる。まずユーゴスラビアの解体を進め、NATOは99年3月にユーゴスラビアを先制攻撃して破壊している。世界制覇戦争が本格化するのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてからだ。 アメリカが旧ソ連圏の解体を進め、ウクライナの独立を認める。そこでソ連時代にロシアからウクライナへ割譲された東部や南部の住民はウクライナからの独立や自治権獲得を望むが、これを西側は認めないのだが、それでもウクライナでは西側にもロシアにも与しないという方針を打ち出した。 しかし、ロシア征服の鍵を握るウクライナを制圧したいアメリカの支配層は中立を認めようとしない。2004年の大統領選挙で中立を掲げるビクトル・ヤヌコビッチが勝利すると、アメリカは2004年から05年にかけて「オレンジ革命」と呼ばれたクーデターを実行、西側の傀儡だったビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。ユシチェンコ政権は新自由主義政策を推進、不公正な政策で貧富の差を拡大させたことからウクライナ人の怒りを買う。 2009年1月にバラク・オバマが大統領に就任、その翌年にはウクライナでも大統領選挙があった。その選挙で再びヤヌコビッチが勝利。そこでオバマ政権は2013年から14年にかけてネオ・ナチを利用したクーデターを実行、西側資本の属国にした。 この戦争を主導したのはネオコンで、ホワイトハウスの中では副大統領だったジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、そして副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンが中心的な存在だったとされている。 しかし、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部や南部の住民はクーデタを拒否、クリミアはロシアの保護下に入り、ドンバスでは内戦が勃発したのである。こうした経緯を無視してウクライナ情勢を語ることはできない。 2014年にネオ・ナチを主体とするクーデター政権が成立しているのだが、軍や治安機関の約7割は新体制を拒否、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱、一部は東部ドンバス(ドネツクやルガンスク)の反クーデター軍に合流したと伝えられている。そのため、当初、ドンバスでの戦闘は反クーデター軍が優勢だった。 そこでロシアと戦う態勢を整えるための時間が必要になり、出てきたのがミンスク合意だ。これをアメリカなど西側諸国は時間稼ぎに使い、8年かけて武器弾薬を供与、兵士を育成、訓練、ドンバス周辺に地下要塞をつなぐ要塞線を構築した。 2021年1月にバイデンが大統領に就任、ロシアのウラジミル・プーチン大統領を人殺し呼ばわりするだけでなく、ロシアに対する軍事的な挑発を始めた。バイデン大統領の下でそうした好戦的な政策を推進していたのは国家安全保障補佐官に就任したサリバン、国務次官になったヌランド、そしてアントニー・ブリンケン国務長官だろう。 2022年に入るとウクライナのクーデター体制はドンバス周辺に部隊を集め、砲撃を活発化させた。そうした状況を見て、少なからぬ人が大規模な軍事作戦が始まると推測していた。そうした時、ロシアはウクライナに対する攻撃を始めたのだ。 こうしたアメリカの好戦派は自国の軍事力や生産能力を過大評価、ロシアの軍事力や生産能力を過小評価し、ロシアと戦争しても簡単に勝てると信じていたようだが、その背景には優生思想、あるいは信仰があるのかもしれない。 アメリカをはじめとする西側諸国はウクライナ人とロシア人を戦わせて「漁夫の利」を得ようとしていた、あるいは共倒れを目論んでいたかもしれないのだが、2022年以降、ロシアの優位は変わらないまま推移し、すでにウクライナ軍は降伏するか全滅するしかない状況だ。 ここにきて西側の有力メディアは「朝鮮兵話」を流しているが、これは西側の軍隊を入れる布石だとする見方もある。そうしたことをロシア側が認めるとは思えず、アメリカ軍とロシア軍が直接衝突することも考えられる。通常兵力では劣勢のアメリカ軍は核兵器を使うことになる可能性も否定できない。朝鮮兵の話を持ち出してきたブルース・W・ベネットはアメリカ国防総省系シンクタンクRANDの上級国際/防衛研究者である。 ロシア政府はウクライナの非武装化、非ナチ化、中立性の回復などを求めてきた。ソ連時代にロシアからウクライナへ一方的に割譲された地域のロシアへの返還も実現しようとするだろう。いかなる形でもNATOがウクライナへ入ることは許さないはずだが、西側の好戦派はロシア政府を甘く見て入ってくる可能性がある。核戦争で脅し続ければロシアは最終的に屈服するとネオコンは今でも信じているかもしれない。 ロシアが実現しようとしている目標の中で最も難しいのは非ナチ化だろう。ナチスはシティやウォール街、つまり米英金融資本から資金援助を受けていた。第2次世界大戦後はアメリカの政府機関に逃亡を助けられ、保護され、雇用され、後継者も育成されてきた。ウクライナでもナチスの後継者、いわゆるネオ・ナチが使われた。米英金融資本を中心とする西側の支配システムが存在している限り「非ナチ化」は不可能だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.10
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次期アメリカ大統領に選ばれたドナルド・トランプが11月7日にロシアのウラジミル・プーチン大統領と電話でウクライナにおける戦争について話し合ったとワシントン・ポスト紙が10日に報じたが、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官はそれを否定、トランプの広報担当スティーブン・チュンもこのやりとりを認めていない。またウクライナ外務省は、キエフがトランプとプーチン大統領の電話会談について事前に知らされていたという報道は誤りだと述べた。 ワシントン・ポスト紙を含む西側の有力メディアは支配層が人びとを操る道具にすぎないことは明確になっている。今回の記事を書いた記者は「ロシアゲート」なるフィクションを宣伝していたひとりでもある。有力メディアは人びとに幻影を見せ、支配層が望む方向へ国を進めるのが役割であり、ワシントン・ポスト紙が事実を伝えると考えることはできない。 トランプがプーチンに対してウクライナ戦争をエスカレートさせないよう助言、アメリカがヨーロッパにかなりの軍事力を有していることを思い起こさせたと同紙は伝えているのだが、現在、ウクライナ軍は戦死者の山を築きながら後退している状況。ロシア軍は進撃のスピードを速めていると伝えられている。またロシア軍と戦うだけの戦力はヨーロッパに配備されていない。「エスカレート」なる表現が入り込む余地はないのが実態。 ウクライナで戦争を始めたネオコンは「膠着状態」を演出したかったのか、8月6日に1万人から3万人の兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻した。国境警備隊しか配置されていないクルスクを狙ったのかもしれないが、ロシア軍はすぐに航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けている。増援部隊を投入しようとしたとも言われているが、成功しなかったようだ。 この軍事作戦には虎の子の「精鋭部隊」が投入されているが、兵士の数が圧倒的に足りないため、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が参加、東アジアからもウクライナ側へ兵士が派遣されているとする噂もある。 この作戦でウクライナ側はすでに3万1000人以上が死亡したとも言われている。戦死者の遺体交換でロシアは563体をウクライナ側へ引き渡し、ウクライナは37体をロシア側に引き渡したとも言われ、こうしたことからウクライナ軍の戦死者数はロシア側の10倍以上だと見られている。ネオコンはウクライナ兵に「玉砕攻撃」を繰り返させ、ロシア兵の死傷者を増やそうとしたようだが、成功したとは言えない。 プーチンはアメリカ側と話し合う用意があるとしているが、西側に対する信頼を失っているロシア政府は軍事力で解決するしかないと覚悟しているはずで、米英が得意とする「幻術」は通用しない。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの情報機関、イギリスの対外情報機関SIS(通称MI-6)のエージェントで、MI6長官のリチャード・ムーアがハンドラーとして操っているとスコット・リッターは自身が作成した2部構成のドキュメント「エージェント、ゼレンスキー」の中で指摘した。(パート1、パート2)イギリス、あるいはシティは厳しい状況に陥っている。 リッターはアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官。調査にはフランスの元情報機関員エリック・デネーゼが協力している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.12
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第二次世界大戦中、ポーランドにはドイツの強制収容所が存在していた。その象徴的な存在がアウシュビッツ(オシフィエンチム)の施設にほかならない。ユダヤ人、ロマ(かつてはジプシーと呼ばれた)、ソ連兵、心身障害者、同性愛者などが収容されていたが、9割程度がユダヤ人だったという。 その強制収容所は1945年1月27日、ソ連軍によって解放された。解放から80年目にあたる今年、ポーランドのアウシュビッツ・ビルケナウ国立博物館で記念式典が開催されたのだが、ポーランド政府はロシアの代表を排除している。 ドイツ軍は1941年6月にソ連侵略作戦、いわゆるバルバロッサ作戦を開始した。この作戦で東へ向かったドイツ兵は約300万人、西部戦線に残った兵士は90万人と言われている。ドイツ軍の首脳は西部方面を防衛するために東へ向かう部隊に匹敵する数の将兵を配備するべきだと主張したが、アドルフ・ヒトラーがそれを退けたという。この非常識なヒトラーの「判断」は背後からイギリスなどが攻撃してこないことを「予知」していたからではないかと思える。 ドイツ軍は1941年7月にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点まで迫る。ソ連軍は敗北し、再び立ち上がることはないと10月3日にアドルフ・ヒトラーはベルリンで語り、ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官で、後にNATOの初代事務総長に就任するヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測している。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) ソ連の敗北を予想しながら動かなかったイギリスが動き始めるのは、1942年11月にソ連軍がレニングラードで猛反撃に転じ、ドイツ軍25万人が完全に包囲され、43年1月に生き残ったドイツの将兵9万1000名が降伏した後だ。ドイツの敗北が決定的になり、慌てたということだ。 チャーチル英首相はフランクリン・ルーズベルト米大統領やフランスのシャルル・ド・ゴールと1943年1月にモロッコのカサブランカで急遽会談している。「無条件降伏」という語句が出てきたのは、この会談の時。ドイツの降伏を遅らせ、米英が軍事作戦を行う時間的な余裕が欲しかったのだろうと言われている。そして1943年7月に米英両国軍はシチリア島へ上陸、ハリウッド映画で有名になったノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)は44年6月になってからだ。 ヒトラー率いるナチがドイツで実権を握ったのは1933年に国会議事堂が放火された後。ナチが実行したと見られているが、コミュニストの犯行だと宣伝され、それが成功したわけだ。この年の8月にシオニストはナチ政権との間でユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることで合意している。「ハーバラ合意」だ。 ナチによる弾圧で少なからぬユダヤ人がヨーロッパから脱出したが、パレスチナへ向かった人は多くなかった。大半はオーストラリアやアメリカへ逃れたとされている。ヨーロッパの文化、風習、自然環境などに親しんだ人たちがそうした国へ逃れるのは当然だったが、それをシオニストは見通せなかったのだろう。大戦後、パレスチナに住むユダヤ人を集めるため、イラクなどでユダヤ人を狙ったテロ攻撃を実施している。 ナチはアウシュビッツだけで人びとを虐殺したわけではない。例えばウクライナではステファン・バンデラが率いていたOUNのバンデラ派(OUN/B)と手を組み、ユダヤ人、知識人、ロシア人、コミュニストなどを殺している。ウクライナでは、そのバンデラ派が2014年のクーデター以降、実権を握っている。そのウクライナをポーランド政府は支援してきた。 それに対し、ロシアのウラジミル・プーチン政権はウクライナからナチ勢力を一掃するとしている。その条件はロシアにとって譲れない。ドナルド・トランプ米大統領はロシアがウクライナでの戦闘で100万人を失い、西側の「制裁」で経済が破綻しているという前提でウクライナ問題を語っている。そうしたことを本当に信じているのだとすれば、彼の停戦案は相手にされない。ロシア政府は「ミンスク合意」の過ちを繰り返すことはないだろう。2022年2月以降に犠牲になったウクライナ兵は80万人程度、ロシア兵はその1割程度だ。 ロシアが苦境に陥っているという「御伽話」をトランプに吹き込んだ人物がいるとするならば、それはCIAの担当者か、彼がウクライナ担当特使に指名したキース・ケロッグ退役陸軍中将なのだと推測されている。 もし、トランプがそうした戦況を認識しているのだとすれば、そうした発言はカモフラージュで、ウクライナへの支援を止めて成り行きに任せるつもりかもしれない。そうした場合、1カ月程度でウクライナは戦争を継続できなくなる。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.30
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ドナルド・トランプ米大統領とウラジミル・プーチン露大統領が2月12日に電話で会談したことが明らかになった。トランプによると、ウクライナ、中東、エネルギー、人工知能、ドルなどの問題について話し合ったという。 ウクライナに関しては、NATOに加盟せず、アメリカやNATOではなくヨーロッパがウクライナの安全保障の責任を負わねばならず、アメリカは地上軍を派遣しないといったことが合意されたようだ。 電話会談が行われたその日にピート・ヘグセス国防長官はウクライナがNATOに加盟することはないとしたうえで、2014年当時の国境に戻そうとするのは「非現実的」だとしている。言うまでもなく、2014年はバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターでウクライナのビクトル・ヤヌコビッチを排除、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部で内戦が勃発した年。へぐセスの発言はウォロディミル・ゼレンスキーが主張していた「交渉再開の前提条件」を否定するものだ。 今後、ロシアとの交渉はマルコ・ルビオ国務長官、ジョン・ラトクリフCIA長官、マイケル・ウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官、そして中東担当特使のスティーブ・ウィトコフが主導するとトランプは表明したが、その中にウクライナ/ロシア担当特使のキース・ケロッグが含まれていないことに注目する人もいる。 ケロッグは彼と同じトランプの安全保障政策顧問を務めていたフレデリック・フライツとふたりで昨年6月、ウクライナにおけるロシアとの戦争を終結させるための和平プランをトランプに提示した。ロシアとウクライナ、両国に和平交渉を強制するというものだが、そのプランの前提はロシアが軍事的にも経済的にも疲弊していること。その前提が間違いだということは本ブログでも繰り返し書いてきた。 トランプは第2次世界大戦のことにも触れ、「ロシア」の犠牲について語っている。この大戦でドイツ軍は1941年6月22日に約300万人のドイツ軍は西側に約90万人を残してソ連に対する軍事侵攻を開始、そのドイツ軍をソ連軍が倒したのだが、その事実を西側世界は隠蔽する工作を続けてきた。 ドイツと英仏との不可解な動きはドイツ軍がソ連を軍事侵攻する前にもあった。1940年5月下旬から6月上旬にかけての時期にイギリス軍とフランス軍34万人はフランスの港町ダンケルクから撤退しているが、その際にアドルフ・ヒトラーは追撃していたドイツ機甲部隊に進撃を停止するように命令したいるのだ。その命令がなければ英仏軍の部隊は降伏するか全滅していたはずである。 ソ連へ攻め込んだドイツ軍は1941年7月にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点まで迫る。1941年10月2日からドイツ軍はモスクワに対する攻撃を開始、10月3日にヒトラーはソ連軍が再び立ち上がることはないとベルリンで語っている。同じ頃、ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官を務めていたヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測しているが、それでもイギリスは動かなかった。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入して市街戦が始まる。当初はドイツ軍が優勢に見えたが、11月にソ連軍が猛反撃に転じ、ドイツ軍25万人はソ連軍に完全包囲され、43年1月に生き残ったドイツの将兵9万1000名は降伏する。ドイツの敗北はこの時点で決定的になった。その1月にウィンストン・チャーチルとフランクリン・ルーズベルトはカサブランカで会談、シチリア島とイタリア本土への上陸を決め、「無条件降伏」を要求を打ち出している。 計画通り、その年の7月にアメリカ軍とイギリス軍はシチリア島に上陸。ハスキー計画だ。9月にはイタリア本土を占領、イタリアは無条件降伏する。ドイツ軍の主力は東部戦線で壊滅していたわけで、難しい作戦ではなかった。 つまり第2次世界大戦でドイツ軍と戦ったのは事実上、ソ連。ドイツはソ連に負けたのだ。ところがジョー・バイデンを担いでいたネオコンはこの歴史的な事実を否定している。そうした御伽話を人びとに信じ込ませる上で重要な役割を果たしてきたのがハリウッド映画にほかならない。 ドイツ軍によるソ連への軍事侵攻、いわゆるバルバロッサ作戦はウクライナとベラルーシに対する攻撃から始まる。同じ動きをNATOはソ連が消滅してから見せ、2004年から05年にかけて「オレンジ革命」でウクライナ制圧に取り掛かる。そして2014年2月のクーデターだ。 ネオコンは新たなバルバロッサ作戦を始めた。ロシアでもアメリカでもプーチンの動きが鈍かったと批判する人がいるのはそのためであり、動き出したロシアを止めることは困難である。トランプもそのように判断した可能性がある。 大統領に就任した直後、トランプはウクライナにおける戦闘でウクライナ兵の戦死者は約70万人だが、ロシア兵はそれを上回る100万人近くだと主張していた。ところが今回、「ロシア/ウクライナとの戦争で数百万人の死者が出るのを止める」ことで両首脳は合意したとトランプ大統領は述べた。ウクライナよりロシアの方が死傷者が多いという主張を撤回したように見える。 オバマ政権やバイデン政権はウクライナでCOVID-19プロジェクトを含む生物化学兵器の研究開発、資金援助に絡むマネーロンダリング、武器弾薬の横流し、人身売買、臓器密売などの不正行為に利用されてきたと言われている。ウクライナでの戦闘が終結すれば、こうした不正が摘発される可能性がある。摘発が実現すれば、2001年9月11日に主導権を握ったネオコンの天下が揺らぐかもしれない。 トランプとプーチンは「中東和平」についても話し合ったというのだが、パレスチナでは停戦合意が崩壊寸前だ。ウィトコフ中東担当特使は1月10日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に電話、ガザでの停戦にこぎつけたが、停戦合意が1月19日に発効した後でもイスラエル軍はガザで住民を殺害、3週間足らずで110人が殺害されたという。ガザに住む約200万人をヨルダンやエジプトへ移住させ、人のいなくなった土地を「中東のリビエラ」にするという地上げ屋的な計画はイスラム諸国から拒絶されている。ここでもロシアの力を借りざるをえないのかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】【追加】 アメリカ、ロシア、ウクライナの代表が来週、サウジアラビアで会議を開催すると伝えられている。ゼレンスキーだけでなく、ジョー・バイデン政権(ネオコン)に従属し、自国を破壊へと導いたヨーロッパの「指導者」は追い詰められた。
2025.02.14
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アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、ウォロドミル・ゼレンスキーは2020年10月にイギリスを公式訪問した際、イギリスの対外情報機関MI6(SIS)のリチャード・ムーア長官を非公式に訪問、会談している。その訪問はジャーナリストに察知され、撮影された。その事実からゼレンスキーはMI6のエージェントであり、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はムーア長官だと推測されている。会談後、ゼレンスキーの警護担当者はウクライナ人からイギリス人へ交代になったという。ゼレンスキー政権はMI6政権だということもできる。MI6は歴史的にシティ(ロンドンを拠点とする金融資本)と関係が深い。 降伏か「総玉砕」かという状況に陥っているウクライナでの戦争継続に意味を見出せないドナルド・トランプ米大統領はウラジミル・プーチン露大統領と交渉を開始、今月下旬にはサウジアラビアで会うと言われている。ロシアとの交渉を進めたいなら、アメリカはロシアの要求を相当部分呑む必要がある。バラク・オバマ政権が2013年11月に始めたウクライナのクーデターで獲得した利権の相当部分を手放さなければならなくなるだろうが、それをトランプはウクライナのクーデター体制から回収しようとしている。ロシアにとってウクライナの戦争は祖国防衛が目的であり、ミンスク合意や戦闘の凍結のようなことでNATO諸国に時間を稼がせるつもりはないはずで、トランプ大統領にとっては厳しい会談になると見られている。 しかし、和平へ向かうことをネオコンやその配下にあるヨーロッパ諸国の政府は焦っていることだろう。そうした状況の中、イギリスのキール・スターマー政権は2万5000人の部隊を編成、フランスと連携してウクライナへ派兵する話が流れている。日本でもこうした欧米の好戦派に同調した主張をしている政治家もいる。アメリカが楽勝すると思い込んでいたであろう人びとは慌てているはずだ。 ソ連を消滅させることに成功したアメリカの好戦派は21世紀に入ってロシアが再独立した後、ロシアの再制圧を目指している。2004年から05年にかけて「オレンジ革命」や2013年11月から14年2月にかけてのキエフにおけるクーデターもその一環だ。アメリカは暴力によって縄張りを東へ移動させてきた。そうした侵略行為にロシアは耐えていたのだが、「やりすぎ」てロシアを怒らせてしまった。怒ったロシアをなだめることは至難の業だ。。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.18
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マイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が2月13日に辞任した。事実上の解任だ。ヒラリー・クリントンを担いでいたネオコンなど好戦派はロシアとアメリカのと関係改善、いわは「デタント」を推進すると公言していたドナルド・トランプを憎悪、その背後にいたフリンを排除しようと必死だった。 前回も書いたようにフリン攻撃の拠点のひとつはCIAだが、首席戦略官のスティーブ・バノンも同じ立場で、反フリンの波はトランプ政権の内部にも押し寄せていた。そうした波を侵入させるルートのひとつだと考えれているのが大統領の娘イバンカ。彼女が結婚したジャレッド・クシュナーは大統領の顧問を務め、その父親でドナルド・トランプの同業者でもあるチャールズは上級顧問になっているのだが、ユダヤ系なのだ。ユダヤ系の影響力という点では、多額の選挙資金を寄付したカジノ経営者、シェルドン・アデルソンも忘れてはならない。 今回の辞任劇はワシントン・ポスト紙が先陣を切った。トランプが大統領に就任する1カ月ほど前、フリンがセルゲイ・キスリャクと話をし、その中でアメリカがロシアに対して行っている「制裁」を話題にしたことが問題だと報じたのだ。 この「制裁」とはキエフのクーデター政権がクリミアにあるセバストポリの基地を制圧に失敗したことなどに対する腹いせだと言えるだろう。1997年にウクライナとロシアとの間で締結された協定でロシアはこの基地を20年間使え、さらに25年間の延長が認められていた。それに伴ってロシア軍は2万5000名の駐留が可能になり、実際は1万6000名のロシア兵が駐留していた。クーデター直後、西側の政府やメディアは「侵略軍」だと宣伝していたのはこの駐留軍だ。 クーデターを拒否する住民が多かったクリミアでは3月16日にロシアの構成主体になることの是非を問う住民投票が実施され、80%の有権者が参加、その95%以上が加盟に賛成し、すぐに防衛体制に入った。 この住民投票では国外から監視団が入り、公正なものだったことが確認されているが、その投票結果を認めるわけにはいかない西側の支配層は投票に不正があったと宣伝している。ネオ・ナチが憲法の規定を無視して実権を握ったキエフの暫定政権を正当だとする一方、クリミアの「民意」は認めないというわけだ。 このクーデターは2013年11月21日にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で始まったが、その前日、議会ではオレグ・ツァロフ議員がクーデター計画の存在を指摘していた。ツァロフ議員によると、ウクライナを内戦状態にするプロジェクトをアメリカ大使館はジェオフリー・パイアット大使を中心に準備、NGOがその手先として動くことになっていたという。 抗議活動が広がる中、EUは話し合いでの解決を模索するのだが、それに激怒していたのがビクトリア・ヌランド国務次官補。2014年2月4日にYouTubeへアップロードされたヌランドとパイアットとの会話では次期政権の人事について話し合われ、ヌランドはアルセニー・ヤツェニュクを強く推していたが、その一方で「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にしている。ちなみに、ヤツェニュクは実際、クーデター後、首相に就任した。 その音声が公開された後、2月18日頃からネオ・ナチが前面に出て来て暴力が激しくなる。棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら、石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めたのだ。 当時、広場をコントロールしていたのはネオ・ナチの幹部として知られているアンドレイ・パルビー。この人物はソ連が消滅した1991年にオレフ・チャフニボクと「ウクライナ社会ナショナル党(後のスボボダ)」というネオ・ナチ系の政党を創設、クーデター後には国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長に就任、2014年8月までその職にあった。同年9月にはヤツェニュクたちと新たな政党「人民戦線」を組織して議員になる。 広場では無差別の狙撃があり、少なからぬ犠牲者が出た。西側の政府やメディアは狙撃をビクトル・ヤヌコビッチ政府側によるものだと宣伝したが、スナイパーがいたのはパルビーの管理下にあったビル。2月25日にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は事実が逆だと報告している。 反大統領派で医師団のリーダー格だったオルガ・ボルゴメツなどから聞き取り調査をした結果で、その内容を26日にEUの外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)だったキャサリン・アシュトンへ電話で報告する。 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」 勿論、この報告はアシュトンにとって都合の悪い事実で、封印してしまった。 クーデター後、アメリカの傭兵会社、アカデミ(旧社名はブラックウォーター。2009年からXe、10年から現社名)系列のグレイストーンは400名の戦闘員を派遣、アカデミはウクライナ政府の要請で射撃、市街戦、接近戦、兵站などの訓練をしたようだ。また、アメリカ政府は訓練のためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として派遣、国防総省は戦略と政策の専門家チーム、つまり軍事顧問団をキエフへ送り込んでいる。2014年4月23日には第173空挺旅団をポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアへ派遣した。 空挺団が派遣される11日前、4月12日にジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問し、4月22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、それにタイミングを合わせるようにしてオデッサでの工作に関する会議が開かれている。この会議に出席したのは大統領代行、内相代行、SBU(情報機関)長官代行、そしてユーロマイダンの惨劇を演出したパルビー、さらにオブザーバーとしてドニエプロペトロフスクの知事で三重国籍のシオニスト、イゴール・コロモイスキー。 オデッサで反クーデター派の住民が虐殺されのは会議の10日後。その数日前にパルビーは数十着の防弾チョッキをオデッサのネオ・ナチへ運んでいる。その装具を受け取ったミコラ・ボルコフは虐殺の当日、労働組合会館へ向かって銃を発射、状況をキエフの何者かに報告する様子が映像に残っている。 虐殺は午前8時に「サッカー・ファン」を乗せた列車が到着したところから始まる。赤いテープを腕に巻いた人びとがフーリガンやネオ・ナチを抗議活動が行われていた広場へ誘導したのだ。誘導した集団は「NATOの秘密部隊」だと疑われているUNA-UNSOだと言われている。 虐殺を仕掛けたグループは、住民を労働組合会館の中へ誘導、そこが殺戮の舞台になった。殺戮の現場を隠すことが目的だったとも推測されている。48名が殺され、約200名が負傷したと伝えられているが、これは確認された数字で、住民の証言によると、多くの人びとが地下室で惨殺され、犠牲者の数は120名から130名。虐殺の調査をキエフ政権は拒否、その政権の後ろ盾になってきた西側も消極的で、実態は今でも明確になっていない。 オデッサの虐殺から1週間後の5月9日、ソ連がナチスに勝ったことを記念する戦勝記念日にキエフ軍の戦車がドネツク州マリウポリ市に突入、住民が殺された。記念日を狙ったのは心理的なダメージを狙っただけでなく、住民が街頭に出てくることを見越してのことだったと言われている。5月11日に予定されていた住民投票を止めさせることも目的だっただろうが、予定通りに投票は行われ、独立の意思が明確になった。 それに対し、6月2日にデレク・チョレット米国防次官補がキエフ入りし、そのタイミングでキエフ軍はルガンスクで住宅街を空爆、建物を破壊し、住民を殺し始めた。民族浄化作戦の始まりだ。この戦乱は今でも終結せず、ここにきてNATOがロシアとの国境近くで威嚇的な演習を実施、キエフ軍によるドンバスへの攻撃は激しくなっている。 ロシアを制圧するというアメリカ支配層の目論見は崩れ、その報復として行っているのが「制裁」なのだが、この「制裁」はロシアを助けることになっていると指摘する人もいる。ロシア経済に対する西側巨大資本の影響力を弱め、生産活動を活性化させたというのである。「制裁」の解除をロシア政府は歓迎しないだろうともいう。フリンがこの「制裁」についてロシア側と話し合ったことを問題にするのは、「制裁」がロシアにダメージを与えているという妄想に基づいている。そうした様子を見ている世界の人びとがアメリカに見切りをつける可能性も小さくない。
2017.02.15
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ビル・クリントンが大統領だった当時、彼の特別顧問を務めていたマーク・ミドルトンが5月7日に死亡したという。アーカンソー州の農園で首を吊っていたのだが、その胸にはショットガンによる傷があったとされている。 この出来事が注目されているのは、ミドルトンがクリントンとジェフリー・エプスティーンを結びつけるキーパーソンだと考えられているからだ。エプスティーンはクリントン政権時代、ホワイトハウスを17回訪問しているが、そのうち7回以上をミドルトンが招待しているとされている。エプスティーンは未成年者を世界の有力者に提供し、寝室などでの行為を映像などで記録して脅しに使っていたと言われている。 フランスでモデル事務所を経営、多くのモデルを発掘したというジャン-リュック・ブルネルが2月19日にラ・サンテ刑務所で「自殺」した。この人物はニューヨーク、マイアミ、テル・アビブに事務所を持ち、エプスティーンから融資を受けていたという。 世界がCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で混乱し、アメリカがロシアや中国との緊張を高める直前2019年7月6日にエプスティーンは逮捕され、8月10日に「メトロポリタン矯正センター」で死亡している。常識的に考えると、彼に弱みを握られている人びとの意向を受けてのことだろうが、証拠を全て回収できたかどうかは不明だ。 エプスティーンは首吊り自殺したとされているが、彼が死んだ房のシーツは紙のように弱く、首をつることは困難だという人もいる。しかも死の前日に同房者はほかへ移動、問題の瞬間における監視カメラの映像は利用できない状態で、エプスティーンが死んだ時に担当の看守ふたりは過労で居眠りしていたのだとされていた。エプスティーンのパートナーだったギスレイン・マクスウェルは2020年7月2日に逮捕され、裁判が続いている。 ジェフリーとギスレインが知り合ったのは1990年代の前半だとされているが、イツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めた経験のあるアリ・ベンメナシェによると、ふたりは1980年代の後半から知り合いだったとしている。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) このふたりが行っていたことが問題になったのは、有力者へ提供されたするバージニア・ゲファーの告発があったからである。そのゲファーに対し、連邦判事のロレッタ・プレスカは証拠を「破壊」するように命じた。事実を明らかにするなということになる。 有力者とは巨大資本の利益に関わる政策を決める立場にある人びと。ドナルド・トランプ、ビル・クリントン、アンドリュー王子、ビル・ゲイツといった名前がエプスティーンの「友人」として名前が上がっているが、「顧客リスト」は明らかにされていない。 しかし、全くわかっていないとも言えない。2009年にエプシュタインの自宅から少なからぬ有名人(顧客)の連絡先が書かれた「黒い手帳」をある人物が持ち出し、手帳を5万ドルで売ろうとしたのだ。その時にエプスティーンが行っていた「ビジネス」に関する情報の一部が漏れている。ビル・ゲイツがエプスティーンと親しくなるのはその2年後だ。 未成年の男女を有力者へ提供したとしてエプスティーンは以前にも逮捕されたことがあった。2005年3月にフロリダの警察を訪れた女性が14歳になる義理の娘のエプスティーンによる不適切な行為について訴え、13カ月にわたって捜査、家宅捜索も行われている。 その時に事件を担当した地方検事がトランプ政権で労働長官を務めたアレキサンダー・アコスタである。アコスタによると、その時にエプスティーンは「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたとしている。 この「情報機関」をイスラエルの情報機関「モサド」だと解釈する人が多いようだが、アリ・ベンメナシェによると、エプスティーンとギスレイン、そしてギスレインの父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルの3名はいずれもイスラエル軍の情報機関(アマン)に所属していた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) 結局、エプスティーインは有罪を認め、懲役18カ月の判決を受けた。通常、こうした犯罪では州刑務所へ入れられるのだが、エプスティーンはパーム・ビーチ郡の収容施設に入れられている。軽い刑だと言えるだろうが、2019年のケースは違う。ネオコンとイスラエルとの間に亀裂が入ったのかもしれない。 エプスティーンが逮捕されて間もない2019年7月31日、ニューヨーク・タイムズ紙は彼がニューメキシコの牧場で自分のDNAによって複数の女性を妊娠させる計画を持っていたと伝えた。著名な科学者をエプスティーンが招待していることから、優生学的な実験を行おうとしていたのではないかとも言われている。 5月31日にはコロンビア特別区(ワシントンDC)連邦地裁で陪審員はマイケル・サスマンに無罪の評決を出した。サスマンは2016年のアメリカ大統領選挙でヒラリー・クリントン陣営に参加していた弁護士で、虚偽の情報をFBIに伝えたとされていた。 この争いの核には「スティール文書」がある。クリストファー・スティールが作成した文書で、ドナルド・トランプとロシア政府に関する話が書かれていたのだが、問題は中身が事実でなかったことにある。スティールはMI6(イギリスの対外情報機関)の元オフィサーで、1990年から93年までMI6のオフィサーとしてモスクワで活動していた。 2016年の選挙キャンペーン中、ヒラリー・クリントン陣営やDNC(民主党全国委員会)の法律顧問を務めていたマーク・エリアス弁護士がフュージョンという会社にドナルド・トランプに関する調査を依頼、同社は2016年秋にネリー・オーなる人物にドナルド・トランプの調査と分析を依頼した。その夫、ブルース・オーは司法省の幹部だったが、その直後にブルースは司法省のポストを失い、フュージョンはクリストファー・スティールに調査を依頼することになった。(The Daily Caller, December 12, 2017) スティールの作成した報告書は噂を集めた代物で、根拠が薄弱なことはのちに本人も認めている。事実がひとかけらもないと言う人もいるほどだ。その怪しげな報告書に基づいて2017年3月に下院情報委員会でロシア疑惑劇の開幕を宣言したのがアダム・シッフ下院議員。そして同年5月にロバート・マラーが特別検察官に任命された。 マラーは2001年9月4日から13年9月4日かけてFBI長官を務めたが、長官就任から1週間後にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンにある国防総省の本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されている。この攻撃では詳しい調査が実施されていないため、事件の真相を隠蔽したとマラーを批判する人もいる。 このスティール文書を受け取った民主党はFBIへ携帯電話のメールで連絡する。その担当者がサスマン。つまりサスマンはクリントン陣営の代表としてFBIに接触した。そこから「ロシアゲート」は水面下で始まる。 その時点で民主党は困った問題を抱えていた。2016年7月にウィキリークスがヒラリー・クリントンの電子メールを公表、その中に2015年5月26日の段階で民主党の幹部たちがヒラリー・クリントンを同党の候補者にすることを内定していたことを示唆するものが含まれていたのだ。 民主党がクリントンを候補者に選ぶ方向で動いていたことはDNCの委員長だったドンナ・ブラジルも認めている。彼女はウィキリークスが公表した電子メールの内容を確認するために文書類を調査、DNC、ヒラリー勝利基金、アメリカのためのヒラリーという3者の間で結ばれた資金募集に関する合意を示す書類を発見したという。 その書類にはヒラリーが民主党のファイナンス、戦略、そして全ての調達資金を管理することが定められていた。その合意は彼女が指名を受ける1年程前の2015年8月になされている。 公表された電子メールは内容だけでなく、ヒラリー・クリントンが機密情報の取り扱いに関する法規に違反している疑いを生じさせた。捜査の結果、彼女は公務の通信に個人用の電子メールを使い、3万2000件近い電子メールを削除していることをFBIはつかむ。ジェームズ・コミー長官は彼女が機密情報の取り扱いに関する法規に違反した可能性を指摘、情報を「きわめて軽率(Extremely Careless)」に扱っていたと発表した。 この「きわめて軽率」は元々「非常に怠慢(Grossly Negligent)」だと表現されていたのだが、それをFBIのピーター・ストルゾクは書き換えさせられていた。後者の表現は罰金、あるいは10年以下の懲役が科せられる行為について使われるという。 コミーがヒラリー・クリントンの電子メールに関する声明を発表した5日後、DNCのスタッフだったセス・リッチが背中を撃たれて死亡している。警察は強盗にあったと発表したが、金目のものは盗まれていない。その発表に納得できなかったリッチの両親は元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーを雇った。 ウィーラーはDNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間にやり取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルがセスからウィキリークスへ渡されたとしている。 ちなみに、ウィキリークスの創設者であるジュリアン・アッサンジは2012年8月からロンドンにあるエクアドル大使館に閉じ込められる形になる。そして2019年4月11日、イギリスの警察はエクアドル大使館へ乗り込んでアッサンジを逮捕、イギリス版のグアンタナモ刑務所と言われているベルマーシュ刑務所へ入れた。 ビル・クリントンはジョージタウン大学時代の1968年にローズ奨学生としてイギリスのオックスフォード大学へ留学、反戦運動にも参加したという。1969年にはモスクワを訪問している。 一見「左翼」だが、CIAの高官だったコード・メイヤーはクリントンがオックスフォードで学び始めた最初の週にCIAは彼をリクルートしたと語っている。ジョージタウン大学でCIAとの関係ができた可能性もあるのだが、それはともかく、モスクワ訪問の目的はフルシチョフの回想録を入手することにあったという。(Jeremy Kuzmorov, “There is Absolutely No Reason in the World to Believe That Bill Clinton Is a CIA Asset,” CovertAction Magazine, January 3, 2022) しかし、ビルより怪しげなのはヒラリー。マデリーン・オルブライトやビクトリア・ヌランドといった好戦派と親しく、本人も戦争ビジネスをスポンサーにしてきた。そのヒラリーの友人で1993年に大統領副上級顧問に就任したビンス・フォスターは同年7月20日に自殺している。
2022.06.11
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ウクライナの特殊部隊「シャーマン大隊」がロシア領内へ侵攻、ロシアの重要な基盤施設を破壊する作戦を実行したとイギリスのタイムズ紙は伝えた。石油精製施設、兵器庫、通信施設などが目標になった可能がある。 アメリカのバラク・オバマ政権がウクライナでクーデターを成功させてビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除したのは2014年2月のことだった。その翌年からCIAはウクライナの特殊部隊員をアメリカ南部で訓練していると伝えれられている。 ニューヨーク・タイムズ紙によると、CIAだけでなく、イギリス、フランス、カナダ、リトアニアの特殊部隊員がウクライナ国内で活動している。主に首都のキエフで活動しているとされているが、ドンバス(ドネツクとルガンスク)にもいるようだ。 ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノはウクライナで取材を終えて帰国した後、アメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加していると伝えていたが、こうしたことも続いているだろう。アメリカ陸軍の第10特殊部隊グループはドイツで訓練の準備を秘密裏に進めているともいう。 ウクライナではネオ・ナチだけでなく、西側の情報機関や特殊部隊も戦闘に参加しているのだが、第2次世界大戦後、アメリカの情報機関と特殊部隊は正規軍と別に軍事作戦を展開してきた。 ナチスに支配されていたドイツは1941年6月、全戦力の4分の3を投入してソ連に向かって軍事侵攻を開始した。「バルバロッサ作戦」だ。ドイツ軍は1941年7月にレニングラード(現在のサンクトペテルブルク)を包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点まで迫った。 この展開を見たアドルフ・ヒトラーは10月3日の段階でソ連軍の敗北を確信、再び立ち上がることはないとベルリンで語った。イギリスも同じ見方で、ウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官だったヘイスティングス・イスメイはモスクワの陥落は3週間以内だと推測している。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) フランクリン・ルーズベルト米大統領はソ連に対して信教の自由を要求、それを受け入れれば助けると伝えていたというが、ウィンストン・チャーチル英首相はソ連を敵視、敗北を願っていた。(前掲書) しかし、米英の見通しとは違ってドイツ軍は攻めきれない。1942年8月にドイツ軍はスターリングラード市内へ突入して市街戦が始まっていたが、11月になるとソ連軍の反撃でドイツ軍25万人は完全包囲され、43年1月に生き残ったドイツの将兵9万1000名は降伏した。 この展開を見て慌てた米英両国は1943年5月にワシントンDCで会談し、7月に両国軍はシチリア島に上陸した。「ハスキー計画」だ。 この大戦でヨーロッパ各国の軍隊は事実上、ドイツ軍と戦っていない。戦ったのはレジスタンスだったが、その主力はコミュニスト。ドイツの敗北が決定的になると、西ヨーロッパでコミュニストの影響力が強まることを懸念したイギリスのSOEとアメリカのSOは1944年にフランスでゲリラ戦を目的として部隊を編成している。「ジェドバラ」だ。 大戦後、ジェドバラの一部はアメリカの特殊部隊になり、一部は破壊工作機関のOPCになった。1950年に10月にOPCはCIAに吸収され、52年8月にはOPCが中心になって計画局が設置された。計画局は要人暗殺やクーデターなど秘密工作を実行、その一端が1970年代に議会で明らかにされると作戦局に名称を変更、2005年にはNCS(国家秘密局)へ衣替えし、15年には再び作戦局へ戻った。 情報機関の秘密工作を調査するため、1975年1月に上院に特別委員会が設置され、2月には下院でも特別委員会が設置された。上院の委員会はフランク・チャーチ議員が委員長に就任したことから「チャーチ委員会」と呼ばれている。下院の委員会は当初ルシエン・ネジ議員が委員長になるが、すぐにオーティス・パイク議員へ交代したことから「パイク委員会」と呼ばれる。 こうした調査の過程で「フェニックス・プログラム」と名付けられた作戦が明るみに出た。1967年6月、NSC(国家安全保障会議)に所属していたロバート・コマーの提案に基づき、MACV(ベトナム軍事支援司令部)とCIAは共同で「ICEX(情報の調整と利用)」を始動させた。これはすぐ「フェニックス・プログラム」へ名称が変更になる。 この作戦はCIAの命令に基づき、特殊部隊の隊員が動いた。その実働チームとして機能したのは、1967年7月に組織されたPRU(地域偵察部隊)という傭兵部隊。隊員の中心は凶悪犯罪で収監されていた囚人たちだったという。この作戦は「ベトコンの村システムの基盤を崩壊させるため、注意深く計画されたプログラム」だという。その後、CIAと特殊部隊はラテン・アメリカや中東でも似たような作戦に従事、そしてウクライナだ。
2022.06.29
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日本で「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」が11月28日に承認され、その決定をメーカーもその事実を発表した。これは一種の人口ウイルスで、動物の種を超えて感染する可能性が指摘されている。「ワクチン」というタグがつけられているものの、実際は遺伝子導入剤。この薬剤の承認を「不名誉」だとする声が世界から聞こえてくるが、日本の専門家も危険性を具体的に指摘している。 承認申請したメーカーはMeiji Seikaファルマで、同社は武田薬品系のアルカリスと共同でmRNA技術を利用した製品の製造工場を建設福島県南相馬市に建設、そこでアルカリスが開発した遺伝子導入剤「ARCT-154」を作る計画だ。 アルカリスはアークトゥルスとアクセリードが共同で設立したmRNA医薬品CDMO(医薬品受託製造)会社であり、アクセリードは武田薬品の湘南研究所が2017年にスピンオフして誕生した。 武田薬品には興味深い人物が関係してきた。例えば山田忠孝はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を経て同社へ入った人物で、父親の山田忠義は渋沢敬三の秘書などを経て1952年に八幡製鉄へ入社している。 戦争中の1940年代の前半、ヨーロッパから日本へ上海経由で神戸に辿り着いたユダヤ系の若者、ショール・アイゼンベルグを忠義は世話している。神戸へ着いた時、アイゼンベルグは19歳か20歳だった。その若者をなぜ日本の財界が面倒を見たのかは謎だ。 財界の大物たちに守られたユダヤ人難民のアイゼンベルグは大戦後、アメリカ第8軍のロバート・アイケルバーガー司令官に可愛がられる。そのコネクションを活かし、アイゼンベルグはペニシリンの販売で大儲けしたという。 その後、アイゼンベルグは日本から追い出されるが、イスラエルの情報機関モサドの幹部としてさまざまな秘密工作に関わり、イスラエルと中国を結びつけたと言われている。似た境遇にあったジョージ・ソロスと緊密な関係にあったことでも知られている。 山田忠孝と同じようにビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を経由して武田薬品に入ったラジーブ・ベンカヤも興味深い人物だ。財団ではグローバル・ヘルス・プログラムのワクチン・デリバリー・ディレクターを務め、武田薬品ではグローバル・ワクチン・ビジネス・ユニットを率いた。 財団に入る前、ジョージ・W・ブッシュが大統領だった2002年から03年にかけての時期にホワイトハウス・フェローを務め、さらにバイオ防衛担当ディレクターを経て大統領特別補佐官およびバイオ防衛担当シニアディレクターとして活動、バイオ・テロリズム研究グループを率いている。 ホワイトハウス時代、ベンカヤはフランシス・タウンゼント国土安全保障担当補佐官の直属で、その時、ロックダウンを考え出したという。その一方、Gavi(ワクチンアライアンス)の理事を務め、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やIAVI(国際エイズワクチン推進構想)の理事会メンバー。CFR(外交問題評議会)の終身会員でもある。なお、今年3月からアエイウム・セラピューティックのCEOに就任している。 医薬品業界で研究開発に関わってきたサーシャ・ラティポワによると、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動はアメリカ国防総省がバラク・オバマ政権の時代に始めた作戦だ。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。 アメリカの国防総省はウクライナで生物化学兵器の研究開発を行っていたことが判明している。ロシア軍のイゴール・キリロフ中将によると、ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)が管理する研究施設が約30カ所あり、生物兵器の研究開発を行っていた。 昨年2月24日からロシア軍はミサイルなどでウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを攻撃、その際に機密文書を回収。その中に生物化学兵器に関する約2000文書が含まれていた。そうした文書を分析するためにロシアは議会に委員会を設立、ロシア軍の放射線化学生物兵器防衛部隊と連携して分析、アメリカはウクライナで「万能生物兵器」を研究していたことが判明したという。 万能兵器とは、敵の兵士だけでなく動物や農作物にもダメージを与えることができる兵器だという。そうした病原体を拡散させることでターゲット国を完全に破壊し、民間人、食糧安全保障、環境にも影響を与えることを目的としている。アメリカの国防総省は人間だけでなく動物や農作物にも感染できる万能の遺伝子操作生物兵器の開発を目指しているのだ。レプリコン・ワクチンをWHOが言うところの「疾病X」だと考える人もいる。
2023.12.17
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アメリカとイギリスは8月3日、レバノンにいる自国民に対し、速やかにレバノンから離れるように警告した。航空会社はすでにイスラエル、レバノン、イランの発着便をキャンセルしている。外交官と情報機関員が入れ替わっている疑いもあるようだ。 アメリカやイギリスの支援を受けたイスラエルはガザで住民を虐殺する一方、ハマスのイスマイル・ハニヤやヒズボラのフア・シュクルを暗殺、情勢が急速に悪化している。 ヒズボラは50発以上のカチューシャロケット弾をイスラエルの入植地である西ガリラヤに向かって発射したと伝えられているが、イランが実行すると予想されている報復攻撃はこうした規模でなく、これまでにない大規模なものになると見られている。アメリカやイギリスもそのように予想しているのだろう。 ハニヤはイランの新大統領マスード・ペゼシュキアンの就任式に出席するためにテヘランを訪れていたのだが、ペゼシュキアンの前任者であるエブラヒム・ライシは5月19日、搭乗していたアメリカ製のベル212ヘリコプターが墜落、死亡している。これは事故でなく破壊工作だった可能性がある。 アメリカは12隻の艦隊を地中海へ移動させ、フロリダ州タンパのマクディル空軍基地に拠点を置く中央軍司令官がバーレーンの第5艦隊本部に到着したとも伝えられている。 エネルギー資源を中東に頼る一方、ロシアの安価な天然ガスを拒否してアメリカの高価なエネルギー資源を購入する日本にとって深刻な事態だ。
2024.08.04
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ロシア国防省は11月9日、同国の航空宇宙軍とシリアの空軍がシリア領内で合同演習を実施したと発表した。シリア北西部のグレーター・イドリブ地域でテロリスト集団が政府軍に対する大規模攻撃を開始する準備を進めていると伝えられているが、その対策かもしれない。11月9日にはシリアのアル・マシア丘の頂上にあるレーダー施設がイスラエル軍から2度の攻撃を受けたともいう。 また、アメリカやイギリスなど西側諸国を後ろ盾とするイスラエルがガザやレバノンで住民を虐殺するだけでなく、イランやシリアに対する攻撃も激化させて中東の軍事的な緊張を高めていることも意識している可能性が高い。 イスラエル軍は4月1日にダマスカスのイラン領事館を空爆し、IRGC(イスラム革命防衛隊)の特殊部隊と言われているコッズのモハマド・レザー・ザヘディ上級司令官と副官のモハマド・ハディ・ハジ・ラヒミ准将を含む将校7名を殺害した。7月31日にはテヘランでハマスのイスマイル・ハニヤが暗殺されたが、イスラエルが実行したと信じられている。 8月5日にはロシアの安全保障会議で書記を務めるセルゲイ・ショイグがイランを訪問してマスード・ペゼシュキアン大統領らと会談。ショイグはイスラエルに対する報復についてイラン側と話し合ったのだろうと見られている。イスラエルは「一線」を超えることでアメリカを戦争へ引き込もうとしていると言われている。 次期大統領のドナルド・トランプは2017年1月にもアメリカ大統領に就任している。その3カ月後、アメリカ海軍の駆逐艦2隻、ポーターとロスは地中海から巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したが、その6割が無力化されてしまった。 ロシア製防空システムの能力に興味を持ったのか、その年の10月5日にサウジアラビアのサルマン国王はロシアを訪問、ロシア製防空システムS-400を含む兵器/武器の購入を打診したと言われているが、アメリカの圧力で実現しなかったという。 2018年4月にトランプ政権はイギリスやフランスを巻き込み、100機以上の巡航ミサイルをシリアに対して発射したが、今度は7割が無力化されてしまう。ECM(電子対抗手段)の能力が注目されているが、前年には配備されていなかった短距離用の防空システムのパーンツィリ-S1が効果的だったとも言われている。 この当時、ロシアはシリアやイランへの防空システム供与に慎重だった。アメリカやイスラエルからの圧力があったと言われている。シリアに配備された新しいタイプの防空システムは基本的にロシア軍の基地を守ることが目的だったようだ。 しかし、欧米の支援を受けたイスラエルの攻撃が激しくなり、イランとイスラエルとの戦争が勃発する危険性が高まる中、ロシアはこれまで供与してこなかった兵器も渡し始めた可能性がある。 イラクにしろリビアにしろシリアにしろ、戦争に巻き込んだのはアメリカにほかならない。イスラエルへ供給されている武器の69%はアメリカから、そして30%はドイツから。輸送の拠点はイギリスで、キプロス経由で運ばれている。 中東などでアメリカが侵略戦争を本格化させたのは2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてから。 ジョージ・W・ブッシュ政権は従属国を従えて2003年3月にイラクを先制攻撃したが、この軍事作戦は思惑通りに進まず、09年1月にアメリカ大統領となったバラク・オバマはムスリム同胞団を中心とする武装集団を編成して代理戦争を始めた。この戦術はオバマの師にあたるズビグネフ・ブレジンスキーが1970年代に考えたものだ。 オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、北アフリカからシリアにかけての地中海沿岸国で体制転覆作戦を進め始めた。いわゆる「アラブの春」だ。 オバマ政権は2011年2月にリビア、同年3月にはシリアを攻撃し始めているが、その作戦ではムスリム同胞団のほかサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とするアル・カイダ系武装集団が投入された。リビアはその年の10月にムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、カダフィ本人を惨殺したが、シリアのバシャール・アル・アサド政権は倒されていない。 アサド政権を倒せないため、オバマ政権はリビアから武器弾薬や戦闘員を移動させただけでなく、新たな戦闘集団を編成している。イラクのサダム・フセイン政権時代に軍人だった人びとが参加したと言われている。 そうした動きを危険だと判断したのがDIA。オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと名称が変わっても実態は同じだと指摘している。その集団の中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。 DIAは報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュ(IS、ISISなどとも表記)という形で現実になった。2014年1月にダーイッシュはファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言、6月にはモスルを制圧する。 その後、この武装集団は残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘う。2015年9月30日にロシア軍はシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していくのだが、本格的な介入は行ってこなかった。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.11
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ドナルド・トランプ大統領の打ち出す政策に恐怖している人がいることは確かだろう。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動を仕掛けた人びとやロシアと戦争させるためにウクライナのクーデター体制を支援してきた人びともその中に含まれているはずだが、トランプ大統領の発言には背後にシオニストの存在を窺わせるものがある。 少なからぬ人が指摘しているが、トランプはウクライナでの戦争を終わらせるため、ロシアを恫喝するとしている。かつて、ドワイト・アイゼンハワーやリチャード・ニクソンが使った手法だ。 ドワイト・アイゼンハワーは大統領に就任してまもない時期に、ハリー・トルーマン政権が始めた朝鮮戦争を休戦させようと考えた。そこで、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。アイゼンハワー政権で副大統領を務めていたリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながらアイゼンハワーの手法を使っている。つまり核兵器で北ベトナムを恫喝したのだ。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) トランプはウラジミル・プーチン露大統領に対し、ウクライナでの戦争をやめなければ新たな「制裁」でロシアの置かれた状況をさらに悪化させると脅している。そのプランはウクライナ特使のキース・ケロッグ退役陸軍中将が考えた「和平計画」に基づくもので、この計画は同中将が2024年春に執筆した論文が基本になっている。問題は、この論文が事実に基づいていないということだ。恫喝がロシアにも通用すると考えている。 トランプはウクライナでの戦闘でロシア兵は100万人近くが戦死したと主張している。ウクライナ兵の戦死者約70万人を上回ると主張しているわけだが、これはありえない。ウクライナ兵の戦死者は80万人、あるいはそれ以上だと推定されているが、それを否定できないため、70万人と少なめの数字を提示、ロシア兵の戦死者数をそれ以上にする必要があると考えたのだろう。 ウクライナ軍の兵士不足は2023年10月1日、イギリスのベン・ウォレス元国防大臣も指摘している。ウォレスはテレグラム紙に寄稿した論稿の中でウクライナ兵の平均年齢はすでに40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。 ウクライナの街中で男性が徴兵担当者に拉致される様子を撮影した少なからぬ映像がインターネット上で伝えられているが、ロシアの街頭でそうした光景は見られない。ロシア側の戦死者数はウクライナ側の1割程度、つまり10万人に達していないと推定されている。 ロシア軍とウクライナ軍が戦場で使用している砲弾の数はロシア側が6対1から10対1の優位性を持つと推定されている。死傷者数の比率は砲弾の比率に準ずると言われているので、この面からもトランプ大統領の判断は否定される。「ウクライナはロシアよりも兵士の死傷者数が少ないが、それでもロシアに負けている」ということはありえない。 しかも兵器の性能が違う。言うまでもなくロシア軍がウクライナ軍、つまりアメリカ/NATO軍を圧倒しているのだ。ロシア軍はミサイル、滑空弾、ドローン、戦闘機、戦車、防空システムなどでウクライナ軍を圧倒、制空権を握っている。 アメリカがロシアに対する戦争を始めたのは2014年2月のことだと言える。ナチス時代下のドイツは1941年6月からソ連への軍事侵攻を始めたが、最初に攻め込んだのはウクライナとベラルーシだ。バラク・オバマ政権が仕掛けたウクライナにおけるネオ・ナチを使ったクーデターは新たなバージョンのバルバロッサ作戦だと言えるだろう。ベラルーシでもクーデターが試みられたが、これは失敗に終わっている。 朝鮮戦争の場合と同じようにウクライナでも「休戦」して戦況を「凍結」し、イギリス、ドイツ、フランスといった国の兵士で構成される「平和維持軍」をウクライナへ入れることをロシア政府が認めるとは思えない。その部隊は「平和維持軍」というタグをつけたNATO軍にすぎないからだ。 トランプはロシアがアメリカの命令に従わない場合、経済的に締め上げると脅しているが、ロシア経済が好調だということをロシア在住の少なからぬアメリカ人が伝えていた。アメリカ人ジャーナリストのタッカー・カールソンもモスクワの豊かな生活を伝えている。アメリカ政府が西側の企業をロシアから撤退させたため、ロシアの国内産業が息を吹き返し、経済にとってプラスに働いたことは明らかだ。苦境に陥ったのはヨーロッパであり、アメリカにも悪い影響を及ぼしている。 トランプはガザからアラブ系住民を一掃してヨルダンやエジプトへ追放しようとしている。露骨な民族浄化計画であり、アメリカに従属しているアラブ諸国からも反対されているのだが、トランプは強引に推し進めようとしている。 アメリカで行われているのは「権力抗争」にすぎず、社会の仕組みを変える「革命」ではないのだろう。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.01.31
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アメリカのドナルド・トランプ大統領は対外援助のほぼ全面的な凍結を命令、DOGE(政府効率化省)を率いるイーロン・マスクはUSAID(米国国際開発庁)を閉鎖する意向だと表明した。その影響が「独立」を掲げるメディア、つまりアメリカ支配層の意向に沿う情報を流してきたメディアに及んでいるようだ。 そうした「独立系メディア」を支援してきた「国境なき記者団」によると、援助が凍結されたことで今年の「独立系メディアと情報の自由な流れ」に充てられる予定だった2億6800万ドルが凍結されたという。 そうした「独立系メディア」で「濾過」した偽情報を西側の有力メディアは事実として垂れ流してきた。これは確信犯だろう。USAIDを経由して資金はアメリカのメディアへも流れたとされている。そのひとつがポリティコ。このメディアがUSAIDから受け取った金額は820万ドルに達すると指摘されている。ちなみに、ポリティコを「左翼メディア」だとする人もいるが、それは勿論、間違いだ。あえて言うなら体制派。 USAIDは1961年11月、ジョン・F・ケネディ大統領の時代に民間の対外援助と開発援助の管理を担当するという名目で設立されたが、ケネディ大統領が暗殺されて以降、CIAの工作資金を流すためのパイプ役になった。 1983年11月には同じ目的でNED(ナショナル民主主義基金)が創設され、そこからNDI(国家民主国際問題研究所)、IRI(国際共和研究所)、CIPE(国際私企業センター)、国際労働連帯アメリカン・センターなどへ資金は流れている。そうした資金の一部が情報操作のため、メディアの手に渡ってきたわけだ。 支配層は大衆の心理や思考を操作するため、メディアをプロパガンダ機関として利用してきた。1883年4月12日、ニューヨーク・タイムズ紙の主任論説委員を務めていたジョン・スウィントンはニューヨークのトワイライト・クラブで次のように語っている:「アメリカには、田舎町にでもない限り、独立した報道機関など存在しない。君たちはみな奴隷だ。君たちはそれを知っているし、私も知っている。君たちの中で正直な意見を表明する勇気のある人はひとりもいない。もし表明したとしても、それが印刷物に載ることはないと前もって知っているはずだ。」 アメリカでは第2次世界大戦後、組織的な情報操作が始まる。「モッキンバード」だ。これは1948年にスタートしたCIAの極秘プロジェクトで、責任者はコード・メイヤー。実際の工作で中心的な役割を果たしたのはアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだという。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) グラハムの死後、妻のキャサリーンが社主に就任、その下でワシントン・ポスト紙は「ウォーターゲート事件」を暴くのだが、その取材で中心的な役割を果たしたカール・バーンスタインは1977年に同紙を辞めて「CIAとメディア」というタイトルの記事をローリング・ストーン誌に書いている。 その記事によると、1977年までの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供したという。ニューズウィーク誌の編集者だったマルコム・ミュアは責任ある立場にある全記者と緊密な関係をCIAは維持していたと思うと述べたとしている。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) またフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。 ウルフコテによると、CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。実際、オバマ政権やバイデン政権はロシアを挑発、核戦争の危機はかつてないほど高まっている。 最近ではインターネット企業にもCIAの「元職員」が入り込み、どのコンテンツが見られ、何が抑制されるかを決定するアルゴリズムを事実上制御しているという。シリコンバレーの巨大企業はアメリカの情報機関と一体化しつつある。そうした流れにTikTokも飲み込まれたと伝えられている。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後に実権を握ったネオコンは03年3月にイラクをアメリカ主導軍で先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒すが、その際、「大量破壊兵器」という嘘をメディアに宣伝させた。 アメリカを含む国々は2011年3月、サラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする武装集団を編成してシリアを攻撃させたが、その時には有力メディアの「報道」から事実を見つけ出すことが難しい状況だった。 2012年6月、シリアへ入って戦乱の実態を調査したメルキト・ギリシャ典礼カトリック教会のフィリップ・トゥルニョル・クロス大主教はローマ教皇庁のフィデス通信に対し、「誰もが真実を語ればシリアの平和は守られる。紛争の1年後、現地の現実は、西側メディアの偽情報が押し付けるイメージとはかけ離れている」と報告している。それ以降、現在に至るまで西側の有力メディアは真実を語ろうとしていない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.10
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ウォール・ストリート・ジャーナル紙は2月13日、ウラジミール・プーチン露大統領がキエフの長期的独立を保証するウクライナとの和平協定に同意しない場合、アメリカ政府はモスクワに対して制裁、場合によっては軍事行動を仕掛けるだろうとJ・D・バンス米副大統領述べたと伝えた。ロシア政府はこの報道について説明を求めたのだが、バンスはそうした発言をしていないと主張、副大統領の広報担当はこの記事を「完全なフェイクニュース」だと批判した。 アメリカやその従属国の有力メディアは2001年9月11日以降、偽情報の比率が高まり、2011年春からジハード傭兵を使ってリビアやシリアを攻撃し始めてから、少なくとも国際問題では、正しい情報を探すことが難しくなっているので、今回の「報道」も驚きではない。 1991年12月にソ連が消滅して以来、アメリカはNATOを東へ拡大させ、ロシアへ迫ってきた。1999年3月にはユーゴスラビアを先制攻撃で破壊している。ジョージ・W・ブッシュ大統領の人気が半年を切っていた2008年8月、北京の夏季オリンピックに合わせてジョージア軍が南オセチアを奇襲攻撃したが、その背後にはアメリカやイスラエルが存在していた。 アメリカの傭兵会社MPRIとアメリカン・システムズは元特殊部隊員を2008年1月から4月にかけてジョージアへ派遣して軍事訓練を実施、イスラエルの会社は2001年からロシアとの戦争に備えてジョージアへ武器を提供、それと同時に軍事訓練を行ってきた。 ジョージアの部隊を訓練していた会社とはイスラエル軍のガル・ヒルシュ准将(予備役)が経営する「防衛の盾」で、予備役の将校2名の指揮下、数百名の元兵士が教官としてジョージアへ入っていた。しかもイスラエル軍の機密文書が使われていたとする証言もある。アメリカのタイム誌によると、軍事訓練だけでなく、イスラエルからドローン、暗視装置、対航空機装置、砲弾、ロケット、電子システムなどの提供を受けている。(Tony Karon, “What Israel Lost in the Georgia War”, TIME, August 21, 2008) 攻撃の前、2008年7月10日にはアメリカのコンドリーサ・ライス国務長官がジョージアを訪問、攻撃直後の8月15日にも彼女は同国を訪問してミヘイル・サーカシビリと会談している。ジョージアの軍事作戦を指揮したのはアメリカ政府ではないかと疑われても仕方がない。 アメリカやイスラエルの動きを見ると、この奇襲攻撃は対ロシア戦争の予行演習だったように感じられるが、ジョージア軍はロシア軍に粉砕されてしまった。 次のバラク・オバマ政権は師のズビグネフ・ブレジンスキーを真似てジハード傭兵を使い始め、2014年2月にはウクライナでビクトル・ヤヌコビッチ政権をクーデターで倒した。そのクーデターの主力として使われたのがステパン・バンデラを信奉するネオ・ナチのグループだ。 このクーデターでロシアに対する圧力を強め、またロシアとヨーロッパを分断しようとしたと見られている。当時、ロシアとヨーロッパが接近していたが、両者を繋いでいたのがロシアの天然ガス。その天然ガスを運ぶパイプラインの多くがウクライナを通過していたことから、ウクライナをアメリカが制圧すれば、ヨーロッパから安いエネルギー資源を奪い、ロシアから大きなマーケットを奪うことができる。ヨーロッパとロシアを弱体化できるということだ。 アメリカとイギリスの情報機関は2014年9月から12月まで香港で反中国政府の「佔領行動(雨傘運動)」を展開している。この運動とウクライナのクーデターを見た中国はロシアへ接近。ロシアにとって中国は新たな天然ガスのマーケットというだけでなく、アメリカに対抗するための同盟相手になっていく。 かつて、ヘンリー・キッシンジャーを含むアメリカの支配グループは中国とソ連を分断する政策をとっていたが、1970年代から台頭してきたネオコンは腕力で世界支配を目指した。その結果、中国とロシアを接近させてしまった。 2015年になるとオバマの後任大統領はヒラリー・クリントンに内定したという話が流れたが、そこでキッシンジャーが動き始め、16年2月3日にはモスクワを訪問して米露の関係修復に乗り出した。その後に登場してくるのがドナルド・トランプ。その年に実施された大統領選挙でヒラリーはトランプに敗れた。そこで民主党、CIA、FBIなどはトランプをロシアゲートなる作り話で攻撃し始めた。 その一方、オバマ大統領はロシアとの関係を悪化させようと必死になる。任期終了が迫る中、ワシントンのロシア大使館とサンフランシスコのロシア領事館に勤務する外交官35人に対して国外退去を命じ、ロシア政府が所有する2つの土地への立ち入りを禁じた。 結局、トランプの第1期目はオバマ時代と同じような政策を実施することになったが、ジョー・バイデン政権を挟んで今年から始まったトランプの第2期目はネオコンからの攻撃をかわすことに今のところ成功している。 現実を無視した好戦的な発言を繰り返してきたマーク・ルッテNATO事務総長はここにきてトーン・ダウン、和平協定の一環としてウクライナをNATOへ加盟させるという約束はしていないと言い始めた。 ウクライナの問題はキッシンジャーが2022年5月の段階で言っていたような方向へ動いているが、西側は当時より厳しい条件を受け入れざるをえない。今後、医療分野にもメスが入るだろうが、懸念されているのはパレスチナ問題だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.16
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ふと、こんなことを考えた。 商品の売り上げは商品がどの程度売れたかで決まる。人気のある商品は売れるだろうが、人気がなくても売れれば売上高は膨らむ。商品が欲しいのではなく、買うことに意味がある場合もある。そうした買い手は通常の客ではない。そうした商品の場合、一般の客が不買運動をしてもカネの流れに大きな変化はないだろう。 かつてコロガシが問題になった。ある商品を何社かが転売していくのだが、その商品が欲しいわけではない。利益をプラスしながらコロガシていくのだ。誰も商品自体には興味がない。その商品を最終的につかんだ人間は、そのゲームの敗者だ。 昔々、そうしたゲームをして負けた会社が梱包を解いたところ、別の商品が入っていたことがあるという。
2019.04.24
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ウェンディ・シャーマン国務副長官が6月末に退任する予定だ。その後任としてビクトリア・ヌランド国務次官が昇格するのではないかと言われている。シャーマンだけでなくNSC(国家安全保障会議)で中国担当シニアディレクターを務めてきたローラ・ローゼンバーガー、そして国務副次官補として中国と台湾の問題を担当するリック・ウォーターズも退任すると言われ、ジョー・バイデン政権の好戦的な色彩は強まると可能性が高い。 ヌランドは父方の祖父母がウクライナからの移民で、夫はネオコンの重鎮であるロバート・ケーガン、義理の弟はフレデリック・ケーガン、フレデリックの妻はISW(戦争研究所)を設立したキンベリー・ケーガン。ヒラリー・クリントンは友人のひとりだという。アメリカ中央軍、ISAF(国際治安支援部隊)司令官、そしてCIA長官を務めたデイビッド・ペトレイアスとキンバリーは親しい。 2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ってウクライナでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒した。このクーデターで中心的な役割を果たしたのはジョー・バイデン副大統領、ビクトリア・ヌランド国務次官補、副大統領の国家安全保障補佐官を務めていたジェイク・サリバンだ。 現在バイデンは大統領、ヌランドは国務次官、サリバンは国家安全保障問題担当の大統領補佐官。この3人にアントニー・ブリンケン国務長官が好戦的な政策を推進している。そうした中、シャーマンが排除されてヌランドが昇格した場合、その好戦性は強まる。 シャーマンはビル・クリントン政権時代、1993年5月から96年3月までウォレン・クリストファー国務長官の下で国務次官補を務めていた。1997年1月に国務長官がクリストファーからマデリーン・オルブライトに交代するとクリントン政権はユーゴスラビアへ軍事侵攻する方向へ舵を切った。1997年8月、シャーマンは参事官として国務省へ復帰している。 オルブライトは1998年秋にユーゴスラビア空爆を支持すると表明、99年3月から6月にかけてNATO軍はユーゴスラビアへの空爆を実施した。4月にはスロボダン・ミロシェビッチの自宅が、また5月には中国大使館も爆撃されている。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後、03年3月にジョージ・W・ブッシュ政権はイラクを先制攻撃するが、泥沼化。そこでバラク・オバマ米大統領は2010年8月にPSD-11を承認してムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を使った体制転覆作戦を始動させ、「アラブの春」が始まる。 しかし、シリアやリビアに対してはズビグネフ・ブレジンスキーが作り上げた「アル・カイダ」の仕組みが使われる。2011年春に両国に対する攻撃が始まり、同年10月にはムアンマル・アル・カダフィ体制が倒された。カダフィ本人はその際に惨殺されている。 そこで戦力をシリアへ集中させるのだが、バシャール・アル・アサド政権は倒れない。そこで軍事支援を強化、登場してきた戦闘集団がダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)。2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧される。ダーイッシュは残虐さを演出、アメリカに軍事介入させる道を作ろうとしていると考える人もいた。 その当時、オバマ政権には戦争に消極的な人物がいた。例えばチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長は上院軍事委員会で直接的な軍事介入に慎重な姿勢を示し、ヒラリー・クリントン国務長官らと対立している。 オバマ大統領が主張する穏健派は存在しないとする報告を出したDIAの局長、マイケル・フリンは2014年8月に退役を強いられていたが、それだけでなくヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任を拒否されている。オバマ大統領は戦争体制を整えた。 デンプシーが退役した直後の2015年9月30日にロシアはシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュを含むアル・カイダ系武装集団を敗走させる。 そこでアメリカはクルドと手を組むのだが、これによってアメリカとトルコの関係が悪化する。現在、アメリカ軍はシリア領内に900名程度の部隊を侵攻させ、10カ所とも20カ所とも言われる数の軍事基地をシリアに建設、不法占領を続けている。 そして今、バイデン政権はまたホワイトハウスを好戦的な布陣にしようとしている可能性がある。簡単に勝てるという思い込みで始めたロシアや中国に対する戦争だが、ネオコンの思惑は外れた。窮地に陥ったバイデン政権は暴走し始めた。6月12日から23日まで実施されるNATOの軍事演習「エア・ディフェンダー23」が注目されたのはそのためだ。 ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は6月13日、ロシアから戦術核兵器をすでに受け取っていると語った。自国が攻撃にさらされれば躊躇なく核兵器を使用するとしている。ルカシェンコの要請に基づくとされているが、少なくともロシアは同意している。ネオコンが攻撃してくれば受けて立つという意思表示だろう。 そうした国際環境の中、日本は夢遊病者のように戦争へと向かっている。すでにアメリカ/NATOはウクライナへ供給する武器弾薬が枯渇、5月には韓国がアメリカ経由でウクライナへ砲弾を提供したと伝えられてるが、ここにきてアメリカ政府は日本政府と155mm榴弾のウクライナへの供給することで話し合ったという。数少なくなったアメリカ支援国として日本に対する要求は強まってくるだろう。
2023.06.17
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ウクライナで2014年から始まった内戦でキエフのクーデター体制が敗北したことは明らかだ。つまりアメリカ/NATO軍がロシア軍に負けたわけだが、その事実をアメリカの有力メディアも否定できなくなっている。 そのクーデターはアメリカのバラク・オバマ政権が2013年11月からネオ・ナチを使って開始、14年2月にはウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除することに成功したのだが、ヤヌコビッチの支持基盤だった東部と南部の住民はクーデター体制を拒否、東部では内戦が始まる。 クーデター体制には世界中からネオ・ナチが集まったが、その背後にはアメリカ/NATOがいた。武器弾薬を提供、軍事訓練を実施、軍事情報を提供、昨年夏頃からは作戦を指揮していたとも言われている。 ヨーロッパでアメリアやイギリスが最も恐れてきたのはドイツとロシアが手を組むこと。ロシアの十月革命で成立したボルシェビキ体制はドイツと友好的な関係にあったが、それはナチスの台頭で壊れた。そのナチスに資金を提供していたのはシティとウォール街、つまり米英の巨大金融資本だ。その一員であるウィンストン・チャーチルを「最初のネオコン」と呼ぶ人もいる。 ウクライナはドイツとロシアの中間にある。ドイツを中心とするEUはロシアからパイプラインで天然ガスや石油を輸送していたが、その多くがウクライナを通過している。そのウクライナを抑えてエネルギー資源の輸送をコントロールできれば、EUとロシアの接近を阻止できる。 ウクライナ自体も資源国で、穀倉地帯もある。すでに穀物生産はカーギルなど西側の巨大企業が支配、金融は「闇の銀行」と呼ばれるブラックロックが動かしている。西側から供給される兵器や「復興資金」の使い道についてアドバイスしているのもブラックロックだという。 ウクライナはロシアへ軍事侵攻するための通り道でもある。オバマ政権がクーデターを実行した目的のひとつは侵攻の通り道を抑えることにあった。その際、反応が鈍かったロシアのウラジミル・プーチン大統領が批判された理由もそこにある。 そのオバマ政権でクーデターを指揮していたチームの中心は副大統領だったジョー・バイデン、国務次官補だったビクトリア・ヌランド、副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンだったと言われている。その周辺にはネオコン人脈がいた。 ウクライナでロシアに敗れたアメリカは東アジアで軍事的な緊張を高めている。その東アジアにおけるアメリカの軍事戦略で最も重要な役割を果たしている国は日本にほかならない。 アメリカのJCS(統合参謀本部)が1949年に出した研究報告にはソ連の70都市へ133発の原爆を落とすと書かれている。1954年にSAC(戦略空軍総司令部)は600から750発の核爆弾をソ連に投下、118都市に住む住民の80%、つまり約6000万人を殺すという計画を作成、57年初頭には300発の核爆弾でソ連の100都市を破壊するという「ドロップショット作戦」を作成している。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) こうしたアメリカの戦略に合わせ、沖縄では1953年に布令109号「土地収用令」が公布/施行され、暴力的な土地接収が始まる。1955年の段階で「沖縄本島の面積の約13%が軍用地」になっていた。 1955年から57年にかけてライマン・レムニッツァーが琉球民政長官を務めているが、その間、56年6月に「プライス勧告」が公表された。この勧告の中で沖縄は制約なき核兵器基地として、アメリカの極東戦略の拠点として、そして日本やフィリピンの親米政権が倒れたときのよりどころとして位置づけられている。なお、レムニッツァーはドワイト・アイゼンハワー時代の1960年にJCSの議長に就任する。 この勧告が伝えられると沖縄の住民は激怒、「島ぐるみ闘争」が始まるのだが、それに対して民政府は琉球政府の比嘉秀平主席の更迭を含む事態収拾策を画策している。そうした混乱の中、1956年10月25日に比嘉長官は55歳の若さで急死した。(中野好夫、新崎盛暉著『沖縄戦後史』岩波書店、1976年) テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、JCSのライマン・レムニッツァー議長やSACの司令官だったカーティス・ルメイなど好戦派は1963年の後半にソ連を奇襲攻撃る予定だったという。その頃になればアメリカはICBMを配備でき、しかもソ連は配備が間に合わないと見ていた。ソ連が反撃するためにはアメリカの近くから中距離ミサイルを発射するしかない。そこでソ連はキューバへ中距離ミサイルを運び込んだ。 アメリカの軍事戦略上、日本は重要な位置にあるわけだが、その関係を中曽根康弘は的確に表現している。 1982年11月に内閣総理大臣となった中曽根は翌年の1月にアメリカを訪問、ワシントン・ポスト紙の編集者や記者たちと朝食をとるが、その際に彼はソ連のバックファイア爆撃機の侵入を防ぐため、日本は「不沈空母」になるべきだと言ったと報道された。 中曽根はそれをすぐに否定するが、発言が録音されていたことが判明すると、「不沈空母」ではなく、ロシア機を阻止する「大きな空母」だと主張を変えた。このふたつの表現に本質的な差はない。日本列島はアメリカ軍がロシア軍を攻撃するための軍事拠点だと中曽根は認めたのである。 ワシントン・ポスト紙は「大きな空母」発言以外に、「日本列島にある4つの海峡を全面的かつ完全に支配する」と主張し、「これによってソ連の潜水艦および海軍艦艇に海峡を通過させない」と語っている。こうした発言はソ連を刺激した。 それから間もない1983年4月から5月にかけてアメリカ海軍は千島列島エトロフ島の沖で大規模な艦隊演習「フリーテックス83」を実施。この演習には3空母、つまりエンタープライズ、ミッドウェー、コーラル・シーを中心とする機動部隊群が参加した。 演習では空母を飛び立った艦載機がエトロフ島に仮想攻撃をしかけ、志発島の上空に侵入して対地攻撃訓練を繰り返したとされている。米ソ両軍は一触即発の状態になったのだが、この演習を日本のマスコミは無視した。(田中賀朗著『大韓航空007便事件の真相』三一書房、1997年) そした中、大韓航空007便はソ連の領空を侵犯、しかも重要な軍事基地の上空を飛行したのだが、NATO軍はその年の11月、ヨーロッパで大規模な演習「エイブル・アーチャー83」を予定していた。これを軍事侵攻のカモフラージュだと判断したソ連政府は核攻撃に備える準備をはじめるように指令を出し、アメリカのソ連大使館では重要文書の焼却が始まったと言われている。 NATOが軍事演習を計画していた1983年11月、レーガン政権は戦術弾道ミサイルのパーシングIIを西ドイツへ配備、作業は85年の終わりまで続いた。 ソ連は1991年12月に消滅するが、その当時、アメリカの国務省や国防総省はネオコンに支配されていた。ネオコンのポール・ウィルフォウィッツで国防次官(当時)は1992年2月にアメリカの国防総省はDPG草案という形で世界制覇プラン、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」を作成した。その時の国防長官はディック・チェイニーだ。 旧ソ連圏を乗っ取るだけでなく、EUや東アジアを潜在的なライバルと認識、ドイツや日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に組み入れ、新たなライバルの出現を防ぐともしている。 このドクトリンに日本を従わせるため、1995年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表したが、それと前後して奇怪な出来事が相次いだことは本ブログで繰り返し書いてきた。 日本がアメリカの軍事戦略において、中国やロシアを攻撃するための重要な拠点であるという事実は現在も同じだ。
2023.10.02
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今年の「ノーベル生理学医学賞」はBioNTechのカタリン・カリコとペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン教授に授与すると発表された。「mRNAワクチンの開発を可能にした塩基部修飾ヌクレオチドに関する発見」が理由だという。「mRNAワクチン」によって深刻な副作用を引き起こされ、多くの人が死亡しつつあるが、その「功績」が認められたようだ。 アメリカ大統領として「棍棒外交」を打ち出し、侵略、殺戮、略奪を繰り返したテディ・ルーズベルト、核兵器を保有したがった佐藤栄作、チリやカンボジアでの大量殺戮の黒幕的な役割を果たしたヘンリー・キッシンジャー、イルグンという「テロ組織」のリーダーだったイスラエルのメナヘム・ベギン、CIAの傀儡として活動したポーランドの労働組合「連帯」のレフ・ワレサ、やはりCIAから支援を受けていたダライ・ラマ、CIAと連携していた人脈に周りを囲められ、西側支配層の計画に協力したミハイル・ゴルバチョフ、ドローン(無人機)を利用して暗殺を実行、ムスリム同胞団やサラフィ主義者を利用して侵略戦争を展開したバラク・オバマなどは「ノーベル平和賞」を受賞している。今年の生理学医学賞もノーベル賞らしい選定だったと言えそうだ。 一般的に「mRNAワクチン」と呼ばれているが、実際は遺伝子操作薬であり、ワクチンではない。人間の細胞に病気の原因であるスパイク・タンパク質を製造させ、抗体を作るという理屈になっているが、このスパイク・タンパク質が病気の原因になる。 そのため、人間の免疫システムは細胞を病気の原因だと認識して攻撃し、炎症を引き起こす。そうした炎症を免疫の低下が抑えている。いわばAIDS状態にするわけで、VAIDS(ワクチン後天性免疫不全症候群)なる造語も使われ始めている。接種が始まる前から懸念されていたADE(抗体依存性感染増強)も引き起こされているようで、「ワクチン」を接種した後、それまで感染したことのない、さまざまな細菌性の病気にかかることになる。 また、DNAの混入、mRNAを細胞の内部へ運ぶために使われているLNP(脂質ナノ粒子)の毒性、グラフェン誘導体の混入といった問題も指摘されている。LNPは卵巣を含むあらゆる臓器に蓄積、生殖システムが破壊される可能性があり、人類の存続を危うくしかねない。 ノーベル賞授与の理由になった「mRNAワクチン」はインフルエンザ程度の危険性と言われていたCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)を予防するとされていたが、体に炎症を引き起こし、免疫力を低下させることで、接種した人はさまざまな病気に罹りやすくなり、死亡したり障害が残る人が少なくない。 WHO(世界保健機関)や各国の政府機関と同様、COVID-19を口実にしたロックダウンを推進、「mRNAワクチン」の接種を進めてきたWEF(世界経済フォーラム)。その中心的な理論家で顧問でもあるユバル・ノア・ハラリはAI(人工知能)の発達によって不必要な人間が生み出されるとしている。仕事、特に専門化された仕事で人間はAIに勝てないというわけだ。 WEFは1971年にクラウス・シュワブが創設した団体。この人物はアメリカのハーバード大学でヘンリー・キッシンジャーから学んでいるのだが、ロドニー・アトキンソンによると、シュワブの父親であるオイゲン・シュワブはナチスを支援していたスイスのエンジニアリング会社のエッシャー・ビスを率い、ノルウェーの工場でナチスの核開発計画のための重水生産を支援していたという。 エッシャー・ビスは1960年代に合併、スルザー・エッシャー・ビスになる。1967年から70年までクラウスが取締役を務めた同社は核兵器を開発していた南アフリカへ核技術を供給する仕事に関わっていたと言われている。なお同社は現在、スルザーに名称を変更している。 ハラリが引用したオックスフォード大学の研究によると、2033年までにさまざまな職業がAIに乗っ取られる可能性が高いそうだ。スポーツの審判は98%の確率で、レジ係は97%、シェフは96%、ウェイターは94%、法律事務員は94%、ツアーガイドは91%、パン職人は89%、バスの運転手は89%、建設労働者は88%、獣医助手は86%、警備員は84%、船員は83%、バーテンダーは77%、記録係は76%、大工は72%、監視員は67%などだ。日本でもバスを無人で走らせる実験が始まるようだ。 アルゴリズムよりも優れている仕事につけなければ人間は失業する。雇用されていても、変化についていけなければ職を失う。技術の進歩によって身につけた能力が役に立たなくなることも想定される。テクノロジーの進歩によって人口の大部分を必要としないくなるというわけだ。 かつて、イギリスではエンクロージャーによって共有地などが私有化され、土地を追われた農民は浮浪者や賃金労働者になった。労働者の置かれた劣悪な状況はフリードリヒ・エンゲルスの報告『イギリスにおける労働者階級の状態』やチャールズ・ディケンズの小説『オリバー・ツイスト』などでもわかる。 ロンドンのイースト・エンドで労働者の集会に参加したセシル・ローズは「パンを!パンを!」という声を聞く。その状態を放置すれば内乱になると懸念、植民地を建設して移住させなければならないと考えたようだ。つまり、社会問題を解決する最善の方法は帝国主義だというわけである。 ハラリは「有機的な領域から無機的な領域へと脱皮する」ため、人間より洗練された新しいタイプの機械人間の創造を考えているというが、彼を雇っているシュワブは2016年1月、スイスのテレビ番組でマイクロチップ化されたデジタルIDについて話している。最終的にはコンピュータ・システムと人間を連結、つまり人間をコンピュータの端末にするというのだ。 現在、世界の人口は約80億人と言われているが、AI、ロボット、端末化された人間で構成される世界に生身の人間はさほど必要ない。そこで西側の富豪たち、つまり私的権力は人口を削減するべきだと主張してきた。 2009年5月、マイクロソフトを創設したビル・ゲイツが音頭を取り、マンハッタンで富豪たちが秘密会合を開き、「過剰な人口」が優先課題であることで合意した。参加者にはデビッド・ロックフェラー・ジュニア、ウォーレン・バフェット、ジョージ・ソロス、マイケル・ブルームバーグ、テッド・ターナー、オプラ・ウィンフリーも含まれている。 テッド・ターナーは会合の前年、2008年の4月にチャーリー・ローズの番組に出演し、そこで人口が問題だと主張している。人が多すぎるから温暖化も起こるのだというのだ。ターナーは1996年に「理想的」な人口を2億2500万人から3億人だと主張したが、2008年にはテンプル大学で20億人に修正している。 ゲイツも人口を削減するべきだとも発言している。2010年2月に行われたTEDでの講演では、ワクチンの開発、健康管理、医療サービスで人口を10~15%減らせると語っている。「COVID-19ワクチン」で人口は減っているようだが、これは古典的な意味でのワクチンではなく、遺伝子操作薬だ。 2020年のWEFのパネルで「国連平和大使」のジェーン・グドールは世界人口を「500年前」、すなわち5億人に戻すよう呼びかけた。それが最適な数字だというのだが、その目標を達成するためには現在の人口の約95%を消滅させなければならない。 1798年に『人口論」を出版、人口削減を主張したトーマス・マルサスはイギリスのエリート層に大きな影響を及ぼした。「自然選択(自然淘汰)説」で有名なチャールズ・ダーウィンはマルサスの人口論やレッセ・フェールの影響を受けていたとも言われている。そのダーウィンの従兄弟にあたるフランシス・ゴールトンは優生学の創始者だ。 彼らの考え方に従うと、社会的な強者は優秀なのであり、弱者は劣等だということになる。そして人口を削減するためには劣等な人びとを処分するということになる。 セシル・ローズもそうした考えの持ち主で、彼は1877年6月にフリーメーソンへ入会した直後に『信仰告白』を書いたが、その中で彼はアングロ・サクソンを最も優秀な人種だと位置づけ、その領土が広がれば広がるほど人類にとって良いことだと主張している。大英帝国を繁栄させることは自分たちの義務であり、領土の拡大はアングロ・サクソンが増えることを意味するというのだ。(Cecil Rhodes, “Confession of Faith,” 1877) イギリスで生まれた優生学はアメリカの支配層へ広まり、イギリス以上に社会へ大きな影響を与えることになる。支援者の中心はカーネギー財団、ロックフェラー財団、そしてマリー・ハリマンで、優生学に基づく法律も作られた。 マリーは鉄道で有名なE・H・ハリマンの妻だが、ハリマン家は金融の世界でも有名。ハリマン家の銀行で重役を務めていたジョージ・ハーバート・ウォーカーの娘と結婚したのがプレスコット・ブッシュだ。プレスコットはウォーカーの下でブラウン・ブラザーズ・ハリマンやユニオン・バンキング・コーポレーションの重役を務めていたが、いずれもウォール街からナチスへ資金を供給する重要なルートだ。同僚のひとりにW・アベレル・ハリマンがいる。 そうした考えに引き寄せられたひとりがアドルフ・ヒトラーであり、ウクライナを支配しているネオ・ナチもその神話を信奉している。
2023.10.03
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ウクライナとパレスチナは戦乱で破壊されて多くの人が死亡、東アジアでは軍事的な緊張が高まっている。仕掛け、推進しているのはネオコンと呼ばれるアメリカの好戦的な勢力だが、いずれもイギリスの支配層が19世紀に始めた長期戦略と深く関係している。 この戦略は「グレート・ゲーム」と呼ばれていたが、それをイギリスの地理学者ハルフォード・マッキンダーは理論化、1904年に発表した。日露戦争が勃発した年だ。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーの理論に基づいている。マッキンダーを無視して現在の国際情勢を語ることはできない。 マッキンダーによると、世界を支配するためには「世界島(アフリカとユーラシア)」を支配しなければならない。そのためにはボルガ川から長江、北極圏からヒマラヤ山脈までの「ハートランド」を支配する必要があり、そのためには東ヨーロッパを支配しなければならない。 イギリスは海軍力の国である。ユーラシア大陸を締め上げるため、その周辺部(内部三日月帯)をその海軍力で支配するのだが、そのためには1869年に完成したスエズ運河が重要な意味を持つ。その運河を利用して地中海から紅海を通り、インド洋へ抜けることができるようになったのだ。スエズ運河の近くにイスラエル(1948年)とサウジアラビア(1932年)を作り上げたのはイギリスにほかならない。 イギリスからマダガスカル、スリランカ、マレー諸島、海南、台湾、そして日本へ至る地域は外部三日月帯と呼ばれる。マレー半島から日本へ至る地域は中国を侵略するための拠点。明治維新の背後でイギリスが暗躍、明治体制に深く関与した理由はここにあるだろう。 徳川時代の日本は長崎だけでなく、松前から蝦夷地、対馬から朝鮮半島、薩摩から琉球という経路で大陸と盛んに交易していた。鎖国していなかったことは明白であり、明治維新で「開国」したわけではない。 マッキンダーがまとめた戦略の背後にはイギリスの支配層がいた。その中心グループはビクトリア女王にアドバイスしていたネイサン・ロスチャイルド、ウィリアム・ステッド、レジナルド・ブレット、そしてセシル・ローズらだ。 イギリスはボーア戦争(南アフリカ戦争/1899年~1902年)で金やダイヤモンドを産出する南アフリカを奪い取ることに成功したが、ローズはその戦争で大儲けしたひとり。その侵略でウィンストン・チャーチルも台頭してくる。イギリスの金融資本は世界の金をコントロールできるようになり、金本位制を採用する国の通貨にも大きな影響力を及ぼせるようになった。 1871年にNMロスチャイルド&サンの融資を受けて南部アフリカでダイヤモンド取引に乗り出して大儲けしたセシル・ローズはアングロ・サクソンを最も高貴な人種だと考えていた。 ローズは1877年6月にフリーメーソンへ入会、『信仰告白』を書いている。その中で彼はアングロ・サクソンが最も優秀な人種だと主張、その優秀な人種が住む地域が増えれば増えるほど人類にとってより良く、大英帝国の繁栄につながるとしている。秘密結社はそのために必要だというわけだ。 1890年にローズはロンドンでナサニエル・ド・ロスチャイルドのほか、ステッド、ブレット、ミルナー、サリスバリー卿(ロバート・ガスコン-セシル)、ローズベリー卿(アーチボルド・プリムローズ)たちへ自分のアイデアを説明、そのうちローズ、ロスチャイルド、ブレット、ステッドの4人が協会の指導者になったとされている。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013) ステッドによると、ローズはチャールズ・ダーウィンの信奉者で、トーマス・マルサスの『人口論』から影響を受けたとされている。ダーウィンの従兄弟にあたるフランシス・ゴールトンは優生学の創始者だが、その優生学は人口論と結びつく。人口の爆発的増加を防ぐために「劣等」な人間を削減の対象にしようというわけだ。ハーバート・スペンサーもダーウィンの仮説を社会へ持ち込んだ人物である。ローズも優生学を信奉していた。 貧困問題の原因を社会構造でなく先天的な知能の問題に求め、産児制限を提唱、フェミニストの運動を支持していたマーガレット・サンガーもマルサスの人口論やゴールトンの優生学を信奉していた。彼女は劣等な人間は生まれつきだと考え、そうした人間が生まれないようにしようということになるからだ。 ローズの遺産を利用して1903年に始められた奨学制度は今でも機能しているローズ奨学金。奨学生に選ばれると、学費を生活費が提供され、オックスフォード大学の大学院で学ぶことができる。この制度は支配層の人脈を形成する仕組みのひとつだ。 キャロル・クィグリーによると、1901年までこの協会を支配していたのはローズ。彼以降はアルフレッド・ミルナーを中心に活動した。ミルナーはシンクタンクのRIIA(王立国際問題研究所)を創設した人物としても有名で、「ミルナー幼稚園」や「円卓グループ」も彼を中心に組織されたという。 ミルナーは1854年にドイツで生まれ、オックスフォードで学ぶ。その後、1881年からポール・モール・ガゼットという新聞社で働くが、85年に退社して政界入りを試みたものの失敗し、南アフリカへ向かった。 アメリカやイギリスはイスラエルを使い、パレスチナ人を絶滅させようとしている。ウクライナではロシア軍の反撃で失敗したが、日本では遺伝子導入剤の生体実験で住民が死滅しかねない状況だ。人がいなくなれば「高貴な人種」の支配地域が増えると考えている人がいるかもしれない。
2024.02.22
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Meiji Seika ファルマなる製薬会社が立憲民主党の原口一博議員を東京地裁に近く提訴すると伝えられている。同社が製造販売する「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」について、安全性が確認されていないと議員が批判してきたことが誹謗中傷に当たるとしているのだ。 しかし、議員の主張は事実である。少なからぬ研究者が科学的根拠な根拠に基づいて原口と同じようにmRNA技術を利用した新薬を批判、特にレプリコン・ワクチンのリスクが高いとしている。「Meiji Seika ファルマの現役社員」を名乗る人、あるいはグループが書いた『私たちは売りたくない!』という書籍も出版されている。 このタイプの新薬が高リスクであることを製薬会社や厚生労働省が認識しているであろうことは、重要な情報が開示されていないことからも類推できる。つまり「国と取り組んできた公衆衛生向上への取り組み」が問題なのであり、これは水俣病などの公害と同じ構造だ。 原口議員の主張が「非科学的断定でないなら名誉毀損等は成立しないので、製薬会社も提訴しません」と別の議員がXに書き込んでいたが、この議員は会社が提訴した時点で原口議員の主張は「非科学的断定」であると断定していることになる。原口議員に対する誹謗中傷だと言われても仕方がないだろう。 原口議員に批判的なこの議員は「科学的判断は科学的機関が行」うと考えているようだが、その「科学的機関」とは何を指しているのだろうか。そもそも判断するのは人間であり、この場合は科学者だと言うべきだ。さまざまな判断が出てくるだろう。何が正しいのかはそこから議論することになる。 過去の薬害や公害では政府主導の「科学的判断」が押し付けられ、少なからぬ人を苦しめることになった。mRNA技術を利用した新薬の場合、そうしたケースよりもリスクは大きい。 COVID-19騒動が始まって間もない頃からサーシャ・ラティポワは騒動の黒幕はアメリカ国防総省で、バラク・オバマ政権が始めたと主張している。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。 しかも、レプリコン・ワクチンの仕組みから想定される特性はアメリカがウクライナで研究開発していた「万能生物兵器」と似ている。ロシア議会が発表した報告書の180ページから181ページにかけて次のような記述がある。「アメリカは人間だけでなく動物や農作物も標的にできる普遍的な遺伝子操作生物兵器の開発を目指している。その使用はとりわけ敵に大規模で回復不可能な経済的損害を与えることを前提としている。」「避けられない直接的な軍事衝突の可能性を見越して、秘密裏に標的を定めて使用することで、たとえ他の大量破壊兵器を保有している相手であっても、アメリカ軍が優位に立てる可能性がある。アメリカ軍の戦略家によれば、ある特定の時期に、ある特定の地域で、異常な伝染病を引き起こす可能性のある生物学的製剤を、秘密裏に、かつ標的を定めて使用した場合の結果は核の冬に匹敵する可能性がある。」 かつて日本では軍医学校、東京帝国大学医学部、京都帝国大学医学部が中心になって生物化学兵器の開発が進められていた。その一環として生体実験をおこなう加茂部隊を中国に設置している。その責任者が京都帝国大学医学部出身の石井四郎中将であり、その後ろ盾は小泉親彦軍医総監だったとされている。その後、加茂部隊は東郷部隊へと名前を替え、1941年には第七三一部隊と呼ばれるようになり、捕虜として拘束していた中国人、モンゴル人、ロシア人、朝鮮人を使って生体実験していた。 こうした部隊の隊長を1936年から42年、そして45年3月から敗戦まで務めた人物が石井四郎。途中、1942年から45年2月までを東京帝国大学医学部出身の北野政次少将が務めている。こうした第七三一部隊の幹部の大半は日本へ逃亡、1946年に入ると幹部たちはアメリカ軍の対諜報部隊CICの尋問を受けることになるが、厳しいものではなく、資料はアメリカ側へ引き渡された。 尋問の過程でGHQ/SCAPの情報部門G2の部長を務めていたチャールズ・ウィロビー少将と石井は親しくなり、隊の幹部たちはアメリカの保護を受けるようになる。日本が提供した資料や研究員はドイツから提供された知識と同じように、アメリカにおける生物化学兵器開発の基盤になった。 1950年6月に朝鮮戦争が勃発、52年2月に朝鮮の外務大臣はアメリカ軍が細菌兵器を使用していると国連に抗議した。アメリカ側は事実無根だと主張したが、1970年代にウィリアム・コルビーCIA長官は議会証言の中で、1952年にアメリカ軍が生物化学兵器を使ったと認めている。 朝鮮戦争が始まると、アメリカ軍は輸血体制を増強しなければならなくなり、「日本ブラッドバンク」が設立されたが、北野政次が顧問に就任するなど、この会社は第七三一部隊と深い関係がある。後に社名は「ミドリ十字」へ変更され、「薬害エイズ」を引き起こすことになった。現在は田辺三菱製薬の一部だ。 大戦後、第七三一部隊を含む日本の生物化学兵器人脈は「伝染病対策」の中枢を形成し、その拠点として1947年には国立予防衛生研究所(予研)が創設された。当初は厚生省の所管だったが、1949年には国立になる。1997年には国立感染症研究所(感染研)に改名され、現在、「COVID-19対策」で中心的な役割を果たしている。 Meiji Seika ファルマが原口議員を提訴した場合、正常な裁判が行われれば、これまで隠されていた情報が出てくる可能性もある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.10.31
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ドナルド・トランプ大統領が新たに設置した政府効率化省を率いているイーロン・マスクは2月3日、USAID(米国国際開発庁)がCOVID-19を含む生物兵器の研究に資金を提供していたと「X」に書き込んだ。この機関はCIAの工作資金を流す役割を負い、CIAのフロント組織だとも言える。USAIDがエコヘルス同盟へ5300万ドルを注ぎ込んだとする投稿への返信としての書き込みだ。 そのUSAIDから資金を提供されたカリフォルニア大学デービス校のワン・ヘルス研究所は2009年から疫学研究プログラム「プレディクト」を始めた。そのパートナーのひとつがエコヘルス同盟。CIAはこのプログラムを利用して世界中の生物学研究施設へ人員を配置する直接的な仕組みを手に入れたとされている。 エコヘルス連合はWHO(世界保健機関)へアドバイスする立場にある団体で、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)は2014年からコロナウイルスの研究費としてエコヘルス連合へ数百万ドルを提供、NIAIDの上部機関であるNIH(国立衛生研究所)は武漢病毒研究所(WIV)の石正麗へ研究費として370万ドルを提供していたと伝えられている。エコヘルス同盟はNIAIDからWIVへ資金を提供する仲介役を演じてきた。こうした繋がりから、ウクライナの研究施設はCOVID-19にも関係していると疑われてきた。 エコヘルス連合を率いていたピーター・ダザックはウクライナ人の父親を持つ人物で、WIVの研究者とも親しくしていたというが、同連合の幹部だったアンドリュー・ハフによると、ダザックがCIAと関係している疑いがあるという。 アメリカ国防総省や同省のDTRA(国防脅威削減局)はウクライナにおける生物兵器の研究開発で中心的な役割を果たし、USAIDも関係している。そのほかUSAMRIID(米国陸軍伝染病医学研究所)、WRAIR(ウォルター・リード陸軍研究所)、そしてアメリカの民主党が仕事を請け負い、メタバイオタ、ブラック・アンド・ビーチ、そしてCH2MCヒルも関係している。 メタバイオタは生物学的な脅威の評価したり管理する仕事をしている会社で、ウイルス学者のネイサン・ウルフによって創設され、2014年からエコヘルス同盟のパートナーになっている。その背後にはプレディクトがある。 COVID-19騒動の核心はウイルス、遺伝子操作、そして免疫だと言えるだろうが、国防総省の国防研究技術局で副局長を務めていたドナルド・マッカーサーは1969年9月、下院の歳出委員会で、伝染病からの感染を防ぐための免疫や治癒のプロセスが対応できない病原体が5年から10年の間に出現すると語っている。この発言を否定したり無視する人が少なくなかったが、議会の記録に残っているので否定できない。 そして1980年前後になると、免疫が機能しなくなる病気が話題になり始めた。いわゆるAIDS(後天性免疫不全症候群)だ。当初、これは同性愛者や麻薬中毒の人々の病気だと考えられたが、後に「HIV(ヒト免疫不全ウイルス)」が原因だとされるようになる。 その結果、AIDSの対策予算は肥大化、大きなビジネスが出現することになった。1970年代になって伝染病による死亡者が少なくなり、その存在意義が疑われるようになっていたNIAIDやCDC(疾病管理予防センター)にとってAIDS騒動は「天恵」だった。AIDS騒動が始まって間もない1984年11月からNIAIDの所長を務めることになったのがアンソニー・ファウチにほかならない。 1980年代の半ばに「イラン・コントラ事件」が発覚、麻薬取引を含むCIAの秘密工作が注目されるようになる。その際、CIAが免疫について詳しく調査、日本の企業や研究者に接触していることも明らかになった。 プレディクトはCOVID-19騒動が始まる直前、2019年に終了するが、その決定を翌年、アンガス・キング上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員は批判、そうしたプログラムは拡大するべきだとしている。そうした中、2020年4月にUSAIDは6か月間の緊急延長としてプログラムに226万ドルを交付した。 ウイルスの「発見」から「COVID-19ワクチン(遺伝子操作薬)」へと続く騒動はアメリカ国防総省のプログラムだということが今では明確になっている。情報公開法によって明らかにされた関係文書を分析したサーシャ・ラティポワは、この騒動が国防総省のプロジェクトだということを突き止めたのだ。バラク・オバマ大統領の時代から国防総省が「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めたと主張している。 ドナルド・トランプ大統領からCIA長官に任命されたジョン・ラトクリフもウイルスがWIVから漏れ出たとする説を主張しているが、ウェルカム・トラストの理事長からWHO(世界保健機関)の主任科学者になったジェレミー・ファラーはCOVID-19の発生が中国にとって最悪のタイミングで発生したと強調していた。多くの中国人が旅行する旧正月の直前に、主要な交通ハブである武漢で始まったことから、中国側の意思、あるいはミスだったとする説は不自然だということだ。 ただ、中国側に米英と関係の深い人物がいることも事実だ。COVID-19騒動の幕開きは2019年12月、中国の湖北省武漢の病院でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されたところから始まる。その直後に武漢市内の海鮮市場で売られていた野生動物から人にウイルスが感染したとする話が広がるのだが、その発信源は中国で伝染病対策の責任者を務めている疾病預防控制中心の高福主任。2020年1月22日、国務院新聞弁公室で開かれた記者会見の席上、そう語ったのである。 高福は1991年にオックスフォード大学へ留学して94年に博士号を取得、99年から2001年までハーバード大学で研究、その後04年までオックスフォード大学で教えている。また、ファウチの弟子とも言われている。 しかし、COVID-19騒動への対応は高福でなく中国軍の陳薇が2020年2月から指揮している。陳はSARSの時にも指揮、その経験を活かしてキューバで開発されたインターフェロン・アルファ2bを使い、短期間に沈静化させている。 武漢の海鮮市場から広がったとするならば、その周辺の自然界に問題のウイルスが存在していなければならないのだが、発見されていない。ところが、北アメリカに生息するシカ、ノネズミ、コウモリを含む5種類の動物が感染していることが判明した。それらはモンタナにあるロッキー・マウンテン研究所で実験動物として使用されていたという。中国を悪玉に仕立てたい人びとにとって都合の悪い情報だ。 アメリカのエリート層にとって都合の悪い情報をイゴール・キリロフ中将も公表していた。この軍人はロシア軍のNBC防御部隊を率いていたのだが、昨年12月17日、モスクワの自宅の前に仕掛けられていた爆発装置によって暗殺された。 キリロフは2022年3月7日に分析結果を公表、研究開発はDTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められ、ウクライナにはDTRAにコントロールされた研究施設が約30カ所あったとしていた。同年8月4日にはSARS-CoV-2が中国に対して意図的に放出されたアメリカの生物兵器であるという強い証拠があると語っている。 アメリカの国防総省がウクライナで開発していたウイルスのプロジェクトを旧ソ連諸国や東南アジアへ移管、アメリカ政府はアフリカに関心を寄せているとロシア国防省は主張している。アフリカは危険な病原体の無限の天然貯蔵庫、実験的医療治療の実験場として使われてきた。 キリロフはジャカルタにあるアメリカ海軍のNAMRU-2研究所を含む東南アジアの施設についても言及している。この研究所は2010年にインドネシア保健省が「国家主権への脅威」と指定して閉鎖するように命じたが、その後もアメリカ軍の関係者が秘密裏に生物学研究を続けていた疑いが持たれている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2025.02.04
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