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次回の「櫻井ジャーナルトーク」は12月20日午後7時から駒込の「東京琉球館」で開催します。12月のテーマは「トランプ政権樹立の直前、ロシアに〈宣戦布告〉した米英支配層」を予定しています。予約受付は12月1日午前9時からですので、興味のある方は東京琉球館までEメールで連絡してください。東京琉球館https://dotouch.cocolog-nifty.com住所:東京都豊島区駒込2-17-8Eメール:makato@luna.zaq.jp アメリカやイギリスの政府は自国のミサイル・システムをウクライナ軍がロシア深奥部に対する攻撃に使うことを許可しました。この攻撃はアメリカやイギリスによる事実上の対ロシア宣戦布告と見做されています。そこでロシア軍が極超音速の中距離弾道ミサイル「オレーシニク」でドニプロ(ドニプロペトロウシク)にあるユジュマシュの工場を攻撃しました。ウクライナの治安機関SBUは情報を機密扱いしているようですが、ユジュマシュは灰燼に帰したとする情報が現地から届き始めています。 ウクライナ軍がロシア深奥部を攻撃するのに使った兵器はアメリカが開発したATACMS(陸軍戦術ミサイル・システム)やイギリスとフランスが共同開発したストーム・シャドウ/SCALP-EG(長距離自律巡航ミサイル・システム)。こうした兵器を使うために兵器を扱える要員が必要であるだけでなく、兵器を誘導するための情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報なども必要です。 つまり、こうした兵器を使うということは、兵器の供与国や情報の提供国が攻撃の主体だといことであり、今回の場合、米英がウクライナからロシア深奥部を攻撃したということになり、米英はロシアと戦争状態に入ったことを意味します。こうしたことは以前からロシアのウラジミル・プーチン大統領が繰り返し警告していました。そうした警告を無視して米英両国政府はロシア深奥部を攻撃したわけです。ATACMSやストーム・シャドウで戦局が一変することはありえませんが、ロシアから宣戦布告だと見なされるのは当然です。 アメリカは1950年代に沖縄を軍事基地化した後、イタリアやトルコに中距離核ミサイルを配備、それに対抗してソ連は1962年にキューバへミサイルと核弾頭を持ち込み、全面核戦争の寸前まで進みました。 この時はジョン・F・ケネディ大統領とソ連の最高指導者だったニキータ・フルシチョフが外交的に解決しましたが、ダニエル・エルズバーグによりますと、ソ連に対する先制核攻撃を計画していた国防総省の好戦派の間ではクーデター的な雰囲気が広がっていたといいます。 今のアメリカ政府に「ケネディ大統領」はいません。核戦争の可能性はキューバ危機当時より高いと考えられています。そうした状況について考えたいと思っています。櫻井 春彦
2024.11.25
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キューバ危機を話し合いで解決、ソ連との核戦争を回避することに成功したジョン・F・ケネディ大統領は1963年6月10日、アメリカン大学の学位授与式でソ連と平和共存する道を歩き始めると宣言した。いわゆる「平和の戦略」を打ち出したのだ。それから5カ月後の11月22日、テキサス州ダラスでケネディ大統領は暗殺された。この出来事をクーデターと考える人は少なくない。 アメリカが軍事力で世界に押しつける「パックス・アメリカーナ(アメリカ支配による平和)」を否定することから演説は始まり、アメリカ市民は「まず内へ目を向けて、平和の可能性に対する、ソ連に対する、冷戦の経過に対する、また米国内の自由と平和に対する、自分自身の態度を検討しはじめるべき」(長谷川潔訳『英和対訳ケネディ大統領演説集』南雲堂、2007年)だと語りかけた。 ケネディ大統領はソ連とアメリカとの間で全面戦争が起これば、いずれの国も破壊されると指摘、冷戦の段階でも「両国はともに無知と貧困と病気を克服するためにあてることができるはずの巨額のカネを、大量の兵器に投じている」と警鐘を鳴らしている。 相手国に対して「屈辱的な退却か核戦争」を強いるのではなく、緊張の緩和を模索するべきだとしたうえで、自分たちの遠大な関心事は「全面完全軍縮」だと表明、核実験の禁止を訴え、他国がしない限りという条件付きで、アメリカは大気圏の核実験をしないと宣言している。 第2次世界大戦後、敗戦国の日本やドイツだけでなく、戦場になったヨーロッパやロシアも疲弊していた。そうした中、アメリカは国土の大半が戦場にはならず、軍事物資の生産や金融などで大儲け、しかもドイツや日本が戦争中に略奪した財宝も手に入れていたと見られている。軍事的にも経済的にもアメリカは優位な立場にあった。 それだけでなく、1944年7月22日にはアメリカのニュー・ハンプシャー州ブレトン・ウッズに連合国44カ国の代表が集まって会議を開いて通貨金融に関する協定を締結、戦後の国際通貨金融システムのあり方を決め、アメリカは国際通貨金融を支配できるようになる。世界を支配するための障害はソ連だけだったが、そのソ連はドイツとの戦争で疲弊していた。 ドイツ軍は1941年6月にソ連に対する奇襲攻撃、バルバロッサ作戦を開始している。西側には約90万人だけを残し、310万人を東側へ投入するという非常識なものだが、これはアドルフ・ヒトラーの命令で実行されたという。これだけの作戦を実行するためには半年から1年は準備のために必要なはずだが、1940年9月から41年5月までの間、ドイツ軍はイギリスを空爆していた。これは陽動作戦だったと見ることもできる。 1941年7月にドイツ軍はレニングラードを包囲、9月にはモスクワまで80キロメートルの地点に到達した。ヒトラーはソ連軍が敗北したと確信、再び立ち上がることはないと10月3日にベルリンで語っている。またウィンストン・チャーチル英首相の軍事首席補佐官でNATOの初代事務総長に就任するヘイスティングス・イスメイは3週間以内にモスクワは陥落すると推測しながら傍観していた。(Susan Butler, “Roosevelt And Stalin,” Alfred A. Knopf, 2015) しかし、ソ連軍の抵抗でこうした予想通りにことは進まず、ドイツ軍は1942年8月にスターリングラード市内へ突入するものの、ここでソ連軍に敗北し、1943年1月に降伏。この段階でドイツの敗北は決定的だ。 そこでアメリカやイギリスの支配層は慌て始め、1943年1月にフランクリン・ルーズベルト米大統領とウィンストン・チャーチル英首相はフランスのシャルル・ド・ゴールらとカサブランカで会談している。この時に出てきた「無条件降伏」は戦争を長引かせ、ソ連対策を講じようとしたのだとも言われている。「ソ連勝利」の事実を隠蔽するために使われたのはハリウッド映画だ。 その当時、アメリカでは原子爆弾の研究開発プロジェクトが進められていた。「マンハッタン計画」だが、これを主導した国はイギリスだった。1940年2月にバーミンガム大学のオットー・フリッシュとルドルフ・パイエルスのアイデアに基づいてプロジェクトが始まり、MAUD委員会なるものが設立されている。 1943年には核兵器用のウランとプルトニウムを製造するため、テネシー州オーク・リッジに4施設が建設され、そのひとつはオーク・リッジ国立研究所へと発展した。ワシントン州に建設されたハンフォード・サイトではプルトニウムを製造するため、1944年9月にB原子炉が作られている。 この「マンハッタン計画」を統括していたアメリカ陸軍のレスニー・グルーブス少将(当時)は1944年、同計画に参加していたポーランドの物理学者ジョセフ・ロートブラットに対し、その計画は最初からソ連との対決が意図されていると語ったという。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) ルーズベルトは1945年4月12日に急死、その翌月の上旬にドイツは降伏するが、その直後にチャーチルはソ連への奇襲攻撃を目論む。そこでJPS(合同作戦本部)に対して作戦を立案を命令し、5月22日には「アンシンカブル作戦」が提出された。 その作戦によると、1945年7月1日にアメリカ軍64師団、イギリス連邦軍35師団、ポーランド軍4師団、そしてドイツ軍10師団で奇襲攻撃、「第3次世界大戦」を始めることになっていた。この作戦が実行されなかったのは、参謀本部が計画を拒否したからである。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000) チャーチルは1945年7月26日に退陣するが、大戦後の46年3月にアメリカのフルトンで「鉄のカーテン演説」を行い、「冷戦」の幕開けを宣言した。FBIの文書によると、チャーチルは1947年にアメリカのスタイルズ・ブリッジス上院議員に対し、ソ連を核攻撃するようハリー・トルーマン大統領を説得してほしいと求めている。(Daniel Bates, “Winston Churchill’s ‘bid to nuke Russia’ to win Cold War - uncovered in secret FBI files,” Daily Mail, 8 November 2014) 日本がポツダム宣言の受諾を通告してから約1カ月後、アメリカの統合参謀本部では必要なら先制攻撃を行うことが決められた。この決定は「ピンチャー」という暗号名で呼ばれ、1946年6月18日に発効している。(Annie Jacobsen, “Area 51”, Little, Brown, 2011) 原爆を手にしたアメリカの支配階級はソ連を先制核攻撃する計画を立てる。1949年に出された統合参謀本部の研究報告では、ソ連の70都市へ133発の原爆を落とすという内容が盛り込まれていた。(Oliver Stone & Peter Kuznick, “The Untold History of the United States,” Gallery Books, 2012) アメリカは1952年11月に水爆実験を成功させ、核分裂反応を利用した原子爆弾から核融合反応を利用した水素爆弾に核兵器の主役は移っていく。勿論、核兵器を使うには運搬手段が必要。この当時、原爆の輸送手段は爆撃機で、その任務を負っていたのがSAC(戦略空軍総司令部)だ。1948年から57年にかけてSACの司令官を務めたのは日本の諸都市で市民を焼夷弾で焼き殺し、広島や長崎に原爆を落とし、朝鮮戦争では3年間に人口の20%を殺したカーティス・ルメイ中将にほかならない。 中国を核攻撃する場合、日本や沖縄が出撃拠点になるが、その沖縄では1950年代に「銃剣とブルドーザー」で土地が強制接収され、軍事基地化が推し進められていた。1953年4月に公布/施行された布令109号「土地収用令」に基づき、武装米兵を動員した暴力的な土地接収が実施され、55年の段階で沖縄本島の面積の約13%が軍用地になっている。 SACは1954年に600から750発の核爆弾をソ連に投下、118都市に住む住民の80%を殺すという計画を立て、57年に作成された「ドロップショット作戦」では300発の核爆弾をソ連の100都市に落とすることになっていた。 その頃、アメリカではICBMの準備が進められ、統合参謀本部議長のライマン・レムニッツァーや空軍参謀長だったカーティス・ルメイを含む好戦派は1963年後半までにソ連を先制核攻撃する計画をたてた。まだソ連がICBMの準備ができていない時点で攻撃したかったのだ。その作戦の障害になっていたケネディ大統領は1963年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺されたのだ。 しかし、ケネディ大統領の暗殺計画はその前から動いていた。大統領は1963年11月2日にシカゴを訪れる予定になっていたが、そのシカゴで大統領を暗殺する計画があるとする警告が警備当局に対し、2カ所からもたらされている。ひとつはFBIの情報提供者「リー」から、もうひとつはシカゴ警察のバークレー・モイランド警部補からだ。 FBIが入手した情報によると、パレードの途中で4名のスナイパーが高性能ライフルで大統領を狙うとされていた。その情報はシークレット・サービスへも伝えられている。ちなみに、ケネディ大統領暗殺の容疑者として逮捕され、警察で殺されたリー・ハーベイ・オズワルドはFBIの情報提供者だと言われている。シークレット・サービスのシカゴ支部は容疑者を監視、11月1日に2名を逮捕したが、残りの2名には逃げられてしまう。 また、モイランド警部補の話は「ケネディ嫌いの男がいる」というもの。10月の後半にシカゴのカフェテリアで食事をしていたモイランドは、そこの経営者からケネディ大統領に関して不穏当な話をする常連客がいることを知らされたのだ。そこで警部補はその男が来るのを待ち、トーマス・アーサー・ベイリーだと確認してからシークレット・サービスに連絡している。(James W. Douglass, “JFK”, Orbis, 2008) ベイリーは元海兵隊員で、ジョン・バーチ協会に所属。海兵隊時代にはJTAG(統合技術顧問グループ)のメンバーとして日本にいた。オズワルドも1956年7月に日本の厚木基地の第1航空管制大隊へ配属されている。(Peter Janney, “Mary’s Mosaic,” Skyhorse, 2013) ケネディ大統領がシカゴのオハラ空港へ到着する予定時刻の30分前、11月2日午前9時10分(東部時間10時10分)にベイリーは逮捕され、シークレット・サービスの取り調べを受けてから収監されたのだが、シークレット・サービスのエージェントは暗殺未遂事件に関する文書を作成していないという。担当の特別エージェント、モーリス・マーティノーの命令だった。 ケネディ大統領のシカゴ訪問が取りやめになったことは東部時間で10時15分に発表されている。少なくともその10分前に取りやめは決まっていたはずで、このケースでは10時に関係者は決定を聞いていたと言われている。つまり、大統領の訪問中止が決まった約10分後に警察はベイリーを逮捕したことになる。 そうした情況にあったため、大統領の周辺、例えばウイリアム・フルブライト上院議員たちは大統領に対し、ダラス行きを中止するようにワシントンDCで20日に忠告しているのだが、取りやめにならなかった。(Anthony Summers, "The Kennedy Conspiracy," Paragon House, 1989 ケネディ大統領のダラス訪問は1963年4月にリンドン・ジョンソン副大統領が発表している。ダラスに不穏な空気が漂っていたことは大統領自身も承知していたはずだが、大統領は予定を変えず、11月21日の夜にフォート・ワース入りした。 その日から翌日の未明まで、警備を担当するシークレット・サービスのエージェントの多くが「セラー(穴蔵)」というナイトクラブへ繰り出して騒いでいた。そのナイトクラブを経営するパット・カークウッドはジャック・ルビー、つまり、オズワルドを警察署で射殺したとされている人物の友人だという。(Robert J. Groden, “The Killing Of A President”, Bloomsbury, 1993) 大統領一行は11月22日の朝にフォート・ワースのカーズウェル空軍基地からダラスのラブ・フィールドへ移動、パレード用のリンカーン・コンバーティブルに乗り込んだ。 このリムジンは防弾仕様でなく、屋根はシークレット・サービスのウィンストン・ローソンの指示で取り外されていた。またリムジンのリア・バンパーの左右には人の立てるステップがあり、手摺りもついているのだが、パレードのときには誰も乗っていない。大統領の指示だったという話もあるが、エージェントだったジェラルド・ベーンは大統領がそうした発言をするのを聞いていないと証言している。元エージェントのロバート・リリーに言わせると、大統領はシークレット・サービスに協力的で警備の方法に口出しすることはなかった。 12時30分頃、ケネディ大統領は暗殺された。後ろの教科書ビルから撃たれたことになっているが、映像を見ても証言を調べても、致命傷になったであろう銃撃は前方からのものだった可能性がきわめて高い。教科書ビルの所有者はリンドン・ジョンソンの親友だったデイビッド・バード。そのビルに入っていてオズワルドが働いていたテキサス評価書倉庫なる会社のオーナーは、FBIに君臨していたJ・エドガー・フーバーの友人、ジャック・ケイソンだ。 銃撃が始まると、大統領を乗せたリムジンの後ろを走る自動車にいた特別エージェントのエモリー・ロバーツは部下のエージェントに対し、銃撃だと確認されるまで動くなと命令するが、これを無視してエージェントのクリント・ヒルは前のリムジンに飛び乗った。 ヒルによると、銃撃の後に喉を押さえるケネディ大統領を見てのことで、まだステップに足がかかる前、血、脳の一部、頭骨の破片が自分に向かって飛んできて、顔、衣類、髪の毛についたとしている。ステップにヒルの足がかかった時、大統領夫人のジャクリーンもボンネットの上に乗り、大統領の頭部の一部を手に触れようとしていた。その時、大統領の頭部の中が見えたという。リムジンの前方から銃撃されたことは決定的だ。(Clint Hill with Lisa McCubin, “Mrs. Kennedy and Me”, Gallery Books, 2012)事件を調査したウォーレン委員会でジャクリーンは髪の毛を元に戻そうとしたと証言しているが、委員会の報告書からは削除された。 銃撃の直後、ダラス警察のジョー・マーシャル・スミスはパレードの前方にあった「グラッシー・ノール(草で覆われた丘)」へ駆けつけ、硝煙の臭いを嗅いでいる。そこで近くの駐車場にいた自動車修理工のように見えた男を職務質問したところ、シークレット・サービスのエージェントだということを示されたのだが、そこにシークレット・サービスの人間は配置されていなかったことが後に判明している。 兵士のゴードン・アーノルドは銃撃の直前、「シークレット・サービスのエージェント」をそこで見たと語っている。パレードを見やすい場所を探してグラッシー・ノールに近づいたところ、私服の男に遮られ、近づかないようにと言われたというのだ。アーノルドが抗議したところバッジを見せながらシークレット・サービスだと名乗ったという。 銃撃が収まってから、今度はふたりの制服を着た「警察官」がアーノルドに近づいて、フィルムを渡すように命じた。アーノルドは素直に渡している。そのフィルムがどうなったかは不明だ。やはり銃撃後、グラッシー・ノールのフェンス近くを走っていたジーン・ヒルもシークレット・サービスを名乗る人物からフィルムを全て取り上げられている。ただ、エイブラハム・ザプルーダーが撮影した8ミリフィルムは後に公開されている。 事件直後、そのフィルムに関する全ての権利を写真雑誌LIFEの編集者リチャード・ストーリーが5万ドルでザプルーダーから買い取ってシカゴの現像所へ運び、オリジナルはシカゴに保管、コピーをニューヨークへ送ったとされていた。 ジャクソンはフィルムが外部に漏れることを警戒し、ストーリーに対して動画に関する権利も買い取るように指示。この契約でLIFEはザプルーダー側へさらに10万ドル、合計15万ドルを支払っている。後にオリジナルのほか3本のコピーが作られ、オリジナルはCIAと国防総省の共同プロジェクトとして設立されたNPIC(国家写真解析センター)へ送られたことがわかる。なお、NPICは1996年にNIMA(国家画像地図局)に組み込まれた。現在のNGA(国家地理空間情報局)だ。 このフィルムをNPICが保管していることを知ったCIA長官のジョン・マコーンは持ってくるように指示、映像を見ている。NPICはそれをオリジナルだとしていたが、本当のところは不明。マコーンはロバート・ケネディに対し、銃撃にはふたりの人間が関係しているという映像から受けた印象を語ったという。またNPICのスタッフで事件直後に映像を見たホーマー・マクマホンによると、銃撃は約8回、少なくとも3方向から撃たれているとしている。(Peter Janney, “Mary’s Mosaic,” Skyhorse, 2013) ザプルーダー・フィルムは長い間、一般に公表されていない。フィルムを隠したC・D・ジャクソンはアイゼンハワー大統領のスピーチライターを務めた人物で、アレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、フィリップ・グラハムを中心とするメディア支配プロジェクトの協力者でもあった。 このフィルムを公開させたのがルイジアナ州ニュー・オーリンズの地方検事だったジム・ギャリソン。これがオリジナルである保証はないのだが、ともかくそれを1969年2月に法廷で映写させた。ただ、フィルムには大きな傷があり、見えない部分がある。 その傷に関し、LIFE側は現像所の技術的なミスで損傷を与えたと説明したが、有名写真雑誌のプロがそうしたミスをするとは考えにくい。いつ、どのようにして傷つけたかを明確にするべきだが、現在に至るまで納得のできる説明はない。 本来ならフィルムを隠したC・D・ジャクソンから事情を聞くべきなのだが、大統領が暗殺された翌年、1964年9月18日に彼は62歳で死亡している。 ケネディ大統領の死亡が確認されたのはダラスのパークランド記念病院。死体を見た同病院のスタッフ21名は前から撃たれていたと証言、確認に立ち会ったふたりの医師、マルコム・ペリーとケンプ・クラークは大統領の喉仏直下に入射口があると記者会見で語っている。前から撃たれたということだ。 その後、ペリーにベセズダ海軍病院から電話が執拗にかかり、記者会見での発言を撤回するように求められたという。これは同病院で手術や回復のための病室を統括していた看護師、オードリー・ベルの証言。ペリー本人から23日に聞いたというが、数カ月後にそのペリーは記者会見での発言を取り消し、喉の傷は出射口だとする。ウォーレン委員会でもそのように証言した。(Peter Janney, “Mary’s Mosaic,” Skyborse, 2013) 大統領の死体は法律を無視してパークランド記念病院から強引に運び出され、検死解剖はワシントンDCのベセズダ海軍病院で行われた。担当した軍医のジェームズ・ヒュームスは検死に不慣れだったとも言われている。 ケネディ大統領の暗殺を調査するため、リンドン・ジョンソン新大統領は1963年11月29日に「ケネディ大統領暗殺に関する大統領委員会」を設置、アール・ウォーレン最高裁長官を委員長に据えた。委員長の名前から「ウォーレン委員会」と呼ばれることが多い。 委員会のメンバーはウォーレンのほか、リチャード・ラッセル上院議員(当時、以下同じ)、ジョン・クーバー上院議員、ヘイル・ボッグス下院議員、ジェラルド・フォード下院議員、アレン・ダレス元CIA長官、ジョン・マックロイ元世界銀行総裁がいた。そして主席法律顧問はリー・ランキンだ。 ダレスはウォール街の大物弁護士で、大戦中からOSSの幹部として破壊活動を指揮、戦後CIA長官になるが、ケネディ大統領に解任させられている。マックロイはウォール街の大物で、大戦の後に世界銀行の総裁を経てドイツの高等弁務官としてナチスの大物たちを守った。フォードはJ・エドガー・フーバーFBI長官に近く、ランキンはCIAとFBIにつながっている。ダレスは委員会の中で唯一の専従だった。(David Talbot, “The Devil’s Chessboard,” HarperCollins, 2015) この委員会にはCIAやFBIから情報が提供されたが、1964年1月にはCIAとの連絡係としてジェームズ・アングルトンが任命された。FBIはウィリアム・サリバンが担当している。(Michael Holzman, “James Jesus Angleton,” University of Massachusetts Press Amherst, 2008) ウォーレン委員会が暗殺に関する報告書と出した3週間後の1964年10月12日、ケネディ大統領と親密な関係にあったマリー・ピンチョット・メイヤーが散歩中に射殺された。銃弾の1発目は後頭部、2発目は心臓へ至近距離から撃ち込まれている。プロの仕業だ。 ウォーレン委員会の結論はリー・ハーベイ・オズワルドの単独犯行だが、この結論をヘイル・ボッグスは口頭で批判していたという。ボッグスは1966年、委員会の腐敗した状況をジム・ギャリソンに話しているという。ボッグスを乗せたセスナ310は1972年10月16日、アラスカで行方不明になった。(Joan Mellen, “A Farewell to Justice,” Potomac Books, 2007) ケネディ暗殺の際、CIA、シークレット・サービス、警察などに不可解な動きがあり、複数の狙撃者がいたことを示す証拠や証言が次々と明らかになる。それに対抗し、単独犯説を主張する勢力は「陰謀論」という呪文を考えつき、連呼するようになった。事実を隠蔽する呪文として多用されている「陰謀論」はこの時から盛んに使われている。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.24
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ロシア軍は11月21日、マッハ10という極超音速で飛行する中距離弾道ミサイル、オレーシニクでドニプロにあるユジュマシュの工場を攻撃した。射程距離は約6000キロメートルだとされているが、今回使われた派生型は短いという。これは新型極超音速中距離ミサイルのテストを兼ねた警告だ。 ウクライナ軍は11月19日に6発のアメリカ製ATACMSでロシア深奥部を攻撃、また11月20日にはイギリス製ストームシャドウとHIMARSミサイルで複合攻撃した。いずれの場合もミサイル供与国は攻撃を許可しているはずだ。 ATACMSやストームシャドウで戦局が一変することはないのだが、その攻撃における供与国の役割を考えると無視できないということだろう。そうした攻撃はロシアに対するミサイル供与国による攻撃とみなされるとウラジミル・プーチン大統領は明確に警告していた。 バイデン政権はロシアとの戦争を引き起こすことでドナルド・トランプの大統領就任を妨げようとしていると推測する人もいる。トランプ政権の誕生を恐れる関係者が国防総省、CIA、FBI、保健福祉省には少なくないだろう。 ATACMSやストームシャドウでの攻撃に対する報復としてロシアはオレーシニクで攻撃したのだが、米英をはじめとするNATO諸国への警告だったことから核弾頭は外されていた。 ATACMSのようなミサイルでロシア深奥部への攻撃は兵器を扱えるオペレーターが必要であるだけでなく、兵器を誘導するための情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報などもなければならないとウラジミル・プーチン大統領は以前から指摘していた。 このミサイルがウクライナから発射されたとしても、実際に攻撃したのは兵器を供給し、オペレーターを派遣、情報を提供した国こそが攻撃の主体だということだ。今回の場合、アメリカとイギリスがロシアを攻撃したことになる。プーチン大統領はATACMSなどでロシア深奥部が攻撃された後、ウクライナでの戦争は局地的なものから世界的なものへ性格が変わったと主張した意味はそこにある。 西側はロシアが保有しているオレーシニクは数機にすぎないと主張しているが、ロシアは200機程度をすでに持っているとも言われている。オレーシニクはMIRV(複数個別誘導再突入体)を使用、一度に4ないし6都市を破壊することが可能だ。今後、弾頭に通常の爆弾、あるいは核爆弾を搭載して攻撃する場合、事前に警告することをロシア政府は約束した。 アメリカがネオ・ナチを使ったクーデターを始めたのはバラク・オバマが大統領だった2013年11月のこと。翌年の2月にはビクトル・ヤヌコビッチ政権が暴力的に倒され、ネオ・ナチ体制が樹立された。ウクライナの制圧はロシア侵略の最終局面であり、「ネオバルバロッサ」を始めたとも言える。この段階でロシア政府が動かなかったことをポール・クレイグ・ロバーツ元米財務次官補は批判していた。 今後、米英が戦闘をエスカレートされてロシア深奥部を繰り返し攻撃するようになった場合、ロシアは攻撃目標をウクライナの外へ拡大させる可能性がある。そこで指摘されているのがポーランドに建設されたアメリカのミサイル基地。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.23
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CDC(疾病予防管理センター)の所長を2018年3月から21年1月まで務めたロバート・レッドフィールドがCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)について語り、その発言をダナ・パリシュが11月15日に公開した。レッドフィールドによると、このウイルスは人工的に作られたもので、「バイオ防衛プログラムの一環として意図的に作られた」と示唆している。パンデミック騒動にアメリカは重要な役割を果たしたもと彼は主張している。 アメリカ国防総省とCOVID-19の関係は以前から指摘されていた。例えば、製薬業界で25年以上にわたってデータ分析、臨床試験、技術に携わってきたサーシャ・ラティポワ。彼女によると、COVID-19騒動は国防総省がバラク・オバマ政権の時代に始めた作戦。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。 国防総省のDTRA(国防脅威削減局)がウクライナ国内で生物兵器の研究開発を進めていたことはロシア軍が指摘、同国の議会は2023年4月に報告書を発表している。 アメリカのバラク・オバマ政権は2013年11月にウクライナをネオ・ナチを使ったクーデターを開始、翌年の2月にビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒してネオ・ナチ体制を樹立させた。 それから8年かけてアメリカ/NATOはウクライナの軍事力を増強、22年に入ると反クーデター軍が支配するドンバスの周辺に部隊を配備し、砲撃を激化させた。ドンバスに対する大規模な軍事作戦を開始、住民を虐殺してロシア軍を要塞線の内側へ引き入れ、封じ込めようとしていたと見られているが、その直前、2月24日にロシア軍はウクライナに対する攻撃を始めた。 その攻撃でウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設から機密文書を回収、分析結果をロシア軍核生物化学防護部隊のイゴール・キリロフ中将は2022年3月7日に公表した。それによると、DTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められたという。ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が約30カ所あったとされている。 キリロフが記者会見した翌日の3月8日、アメリカの上院外交委員会でビクトリア・ヌランド国務次官はウクライナの施設で研究されている生物化学兵器について語っている。マルコ・ルビオ上院議員の質問を受け、兵器クラスの危険な病原体がロシア軍に押収されるかもしれないと語ったのだ。つまりウクライナの研究施設で生物化学兵器の研究開発が行われていたことを否定しなかった。 ロシア議会は2023年4月、アメリカの生物化学兵器の研究開発に関する報告書を発表した。それによると、アメリカの研究者は人だけでなく動物や農作物にも感染でき、大規模で取り返しのつかない経済的損害を与える「万能生物兵器」を遺伝子組換え技術を利用して開発していたとしている。そうした兵器を秘密裏に使い、「核の冬」に匹敵する結果をもたらすつもりだという。この特性は「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」と酷似。その推測が正しいなら、日本で生物兵器が大量生産されることになる。 レッドフィールドによると、COVID-19の研究はNIH(国立衛生研究所)のほか国防総省、そしてCIAの資金を扱うUSAIDが資金を提供していたが、研究の中心はノースカロライナ大学チャペルヒル校のラルフ・バリック教授。ウイルスの発祥地がチャペルヒルだった可能性は十分にあるとレッドフィールドは推測している。 アンソニー・ファウチが所長を務めるNIAID(国立アレルギー感染症研究所)は2014年からコロナウイルスの研究費としてエコヘルス連合へ数百万ドルを提供、その一部は「武漢病毒研究所(WIV)」の研究員へ提供されていたと伝えられている。 エコヘルス連合はWHO(世界保健機関)へアドバイスする立場にある団体で、NIAIDの上部機関であるNIHからWIVの石正麗へ研究費として370万ドルが提供されていたとも伝えられていた。 石正麗を中心とするチームはSARSに似たコロナウイルスのスパイク・タンパク質が人間などの細胞のACE2(アンジオテンシン変換酵素2)と結びつくメカニズムを研究、石はラフル・バリックとも協力関係にあった。 石とバリックは2015年11月にSARSウイルスのスパイク・タンパク質をコウモリのウイルス(SHC014-CoV)のものと取り替えて新しいウイルスを作り出すことに成功したとも言われ、またコウモリのコロナウイルスを操作してほかの種を攻撃させる方法をバリックは石に教えたともいう。 モデルナはNIAIDと共同開発した「mRNAワクチン」の候補について2019年12月初旬に守秘義務契約を結び、その候補をノースカロライナ大学チャペルヒル校に譲渡することで合意している。 その直前、武漢では2019年10月18日から27日にかけて国際的な軍人の競技会が開かれ、アメリカも選手団を派遣。その前、10月18日にはコロナウイルスが全世界で流行するというシミュレーション「イベント201」がニューヨークで開かれている。主催者はジョンズ・ホプキンス健康安全保障センター、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、そしてWEF(世界経済フォーラム)だ。 イベント201には中国疾病預防控制中心の高福主任も参加していた。この人物は1991年にオックスフォード大学へ留学、94年に博士号を取得した人物で、99年から2001年までハーバード大学で研究、その後04年までオックスフォード大学で教えている。NIAIDの所長を務めてきたアンソニー・ファウチの弟子とも言われている。高福に限らず、中国のビジネスやアカデミーはアメリカ支配層の強い影響下にあり、それを政治が抑えている。 中国の湖北省武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されたという報告があったのは2019年12月のこと。高福は武漢市内の海鮮市場で売られていた野生動物から人にウイルスが感染したとする見方を示し、ウイルスは武漢の海鮮市場から世界に広がったというストーリーが世界中で語られるようになった。 しかし、2020年2月からCOVID-19対策は中国軍の陳薇が指揮しはじめた。中国政府は高福の正体を知っていたはずで、信用していなかった可能性がある。陳はSARSの時の経験を活かし、インターフェロン・アルファ2bを使って短期間に沈静化させている。 この医薬品はキューバで研究が進んでいるもので、リンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされている。吉林省長春にも製造工場があり、中国の国内で供給できた。この事実は中国やキューバなどで報道され、中国の習近平国家主席がキューバのミゲル・ディアス-カネル大統領に謝意を述べたとも伝えられている。 COVID-19騒動がアメリカ国防総省のプロジェクトだということは以前から指摘されていたが、元CDC所長がそれについて触れる発言をしたのは興味深い。COVID-19の問題は「COVID-19ワクチン」と呼ばれる遺伝子操作薬の問題につながり、それは生物兵器である可能性が高い。その生物兵器を開発し、大規模な「治験」をしているグループはウクライナでネオ・ナチを利用したクーデターを成功させ、ロシアとの戦争を始めている。その戦争でネオコンはロシアに敗北したが、それだけでなくCOVID-19の闇にも光が当てられるかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.22
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日本で「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」が11月28日に承認され、その決定をメーカーもその事実を発表した。これは一種の人口ウイルスで、動物の種を超えて感染する可能性が指摘されている。「ワクチン」というタグがつけられているものの、実際は遺伝子導入剤。この薬剤の承認を「不名誉」だとする声が世界から聞こえてくるが、日本の専門家も危険性を具体的に指摘している。 承認申請したメーカーはMeiji Seikaファルマで、同社は武田薬品系のアルカリスと共同でmRNA技術を利用した製品の製造工場を建設福島県南相馬市に建設、そこでアルカリスが開発した遺伝子導入剤「ARCT-154」を作る計画だ。 アルカリスはアークトゥルスとアクセリードが共同で設立したmRNA医薬品CDMO(医薬品受託製造)会社であり、アクセリードは武田薬品の湘南研究所が2017年にスピンオフして誕生した。 武田薬品には興味深い人物が関係してきた。例えば山田忠孝はビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を経て同社へ入った人物で、父親の山田忠義は渋沢敬三の秘書などを経て1952年に八幡製鉄へ入社している。 戦争中の1940年代の前半、ヨーロッパから日本へ上海経由で神戸に辿り着いたユダヤ系の若者、ショール・アイゼンベルグを忠義は世話している。神戸へ着いた時、アイゼンベルグは19歳か20歳だった。その若者をなぜ日本の財界が面倒を見たのかは謎だ。 財界の大物たちに守られたユダヤ人難民のアイゼンベルグは大戦後、アメリカ第8軍のロバート・アイケルバーガー司令官に可愛がられる。そのコネクションを活かし、アイゼンベルグはペニシリンの販売で大儲けしたという。 その後、アイゼンベルグは日本から追い出されるが、イスラエルの情報機関モサドの幹部としてさまざまな秘密工作に関わり、イスラエルと中国を結びつけたと言われている。似た境遇にあったジョージ・ソロスと緊密な関係にあったことでも知られている。 山田忠孝と同じようにビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団を経由して武田薬品に入ったラジーブ・ベンカヤも興味深い人物だ。財団ではグローバル・ヘルス・プログラムのワクチン・デリバリー・ディレクターを務め、武田薬品ではグローバル・ワクチン・ビジネス・ユニットを率いた。 財団に入る前、ジョージ・W・ブッシュが大統領だった2002年から03年にかけての時期にホワイトハウス・フェローを務め、さらにバイオ防衛担当ディレクターを経て大統領特別補佐官およびバイオ防衛担当シニアディレクターとして活動、バイオ・テロリズム研究グループを率いている。 ホワイトハウス時代、ベンカヤはフランシス・タウンゼント国土安全保障担当補佐官の直属で、その時、ロックダウンを考え出したという。その一方、Gavi(ワクチンアライアンス)の理事を務め、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)やIAVI(国際エイズワクチン推進構想)の理事会メンバー。CFR(外交問題評議会)の終身会員でもある。なお、今年3月からアエイウム・セラピューティックのCEOに就任している。 医薬品業界で研究開発に関わってきたサーシャ・ラティポワによると、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動はアメリカ国防総省がバラク・オバマ政権の時代に始めた作戦だ。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。 アメリカの国防総省はウクライナで生物化学兵器の研究開発を行っていたことが判明している。ロシア軍のイゴール・キリロフ中将によると、ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)が管理する研究施設が約30カ所あり、生物兵器の研究開発を行っていた。 昨年2月24日からロシア軍はミサイルなどでウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを攻撃、その際に機密文書を回収。その中に生物化学兵器に関する約2000文書が含まれていた。そうした文書を分析するためにロシアは議会に委員会を設立、ロシア軍の放射線化学生物兵器防衛部隊と連携して分析、アメリカはウクライナで「万能生物兵器」を研究していたことが判明したという。 万能兵器とは、敵の兵士だけでなく動物や農作物にもダメージを与えることができる兵器だという。そうした病原体を拡散させることでターゲット国を完全に破壊し、民間人、食糧安全保障、環境にも影響を与えることを目的としている。アメリカの国防総省は人間だけでなく動物や農作物にも感染できる万能の遺伝子操作生物兵器の開発を目指しているのだ。レプリコン・ワクチンをWHOが言うところの「疾病X」だと考える人もいる。
2023.12.17
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ウクライナは11月19日、ロシアのブリャンスクに向かって6機の長距離ミサイルATACMを発射したという。ATACMSでロシア深奥部を攻撃することをジョー・バイデン政権が許可したとニューヨーク・タイムズ紙が伝えた2日後のことだ。長距離ミサイルの使用許可を国防総省へは伝えていなかった可能性が指摘されている。これらのミサイルをすべて撃墜したとロシア側は主張している。バイデン大統領はウクライナに対して対人地雷を供与するともいう。 長距離ミサイルで攻撃するためには、この兵器を扱えるオペレーターが必要であるだけでなく、兵器を誘導するための情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報などもなければならない。つまりアメリカやイギリスをはじめとするNATO諸国の支援なしにウクライナは長距離ミサイルを使うことはできないのだ。 ロシアのウラジミル・プーチン大統領は11月19日、最新版の「核抑止力の分野におけるロシア連邦の国家政策の基礎」に署名した。そこには核保有国の支援を受けた非核保有国によるロシアまたはその同盟国への侵略は共同攻撃とみなすと書かれている。ブリャンスクに対するウクライナのミサイル発射はアメリカとの共同攻撃ということだ。空中および宇宙ベースの攻撃システムの発射確認、ロシア国境への侵攻、ロシアやその軍隊に対する大量破壊兵器の使用なども核兵器使用の条件になっている。 ロシア軍は2022年2月にウクライナを攻撃し始めた後、破壊したウクライナの軍事施設や生物化学兵器の研究開発施設で機密文書を回収、それを分析した結果をロシア議会は報告書として2023年4月に発表した。その中で、アメリカがウクライナで「万能生物兵器」を開発していたと指摘されている。その生物兵器の特性は日本ですでに接種し始めた「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」と似ている。 ロシア議会が発表した報告書の180ページから181ページにかけて次のような記述がある。「アメリカは人間だけでなく動物や農作物も標的にできる普遍的な遺伝子操作生物兵器の開発を目指している。その使用はとりわけ敵に大規模で回復不可能な経済的損害を与えることを前提としている。」「避けられない直接的な軍事衝突の可能性を見越して、秘密裏に標的を定めて使用することで、たとえ他の大量破壊兵器を保有している相手であっても、アメリカ軍が優位に立てる可能性がある。アメリカ軍の戦略家によれば、ある特定の時期に、ある特定の地域で、異常な伝染病を引き起こす可能性のある生物学的製剤を、秘密裏に、かつ標的を定めて使用した場合の結果は核の冬に匹敵する可能性がある。」 製薬業界で25年以上にわたってデータ分析、臨床試験、技術に携わってきたサーシャ・ラティポワによると、COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動はアメリカ国防総省がバラク・オバマ政権の時代に始めた作戦だ。彼女は情報公開法によって入手した文書を分析、この結論に至ったという。日本の「ワクチン」政策は国防総省の命令に基づく可能性がある。 しかし、アメリカ国防総省がウクライナに建設した生物化学兵器の研究開発施設はロシア軍に破壊され、拠点は移動している。そのひとつが日本である可能性は否定できない。この推測が正しいなら、日本はロシアや中国にとって攻撃目標になる。ウクライナを見れば明白だが、攻撃されれば短期間に日本は壊滅する。 2022年2月以降、ウクライナ軍は一貫して劣勢。当初、兵士の数はロシア軍より多かったのだが、戦闘はロシア軍が優勢だった。ロシア側で重要な役割を果たしたのはワグナー・グループ。この会社のオーナー、エフゲニー・プリゴジンは料理人だが、周辺には有力な軍人が存在している。 ワグナー・グループはロシアの情報機関によって創設され、ロシア軍参謀本部の第1副本部長を務めているウラジーミル・ステパノビッチ・アレクセーエフ中将がその背後にいたと言われ、後にミハイル・ミジンチェフ上級大将が副司令官を務めていた。このミジンチェフが本当の司令官だと考える人もいた。 プリゴジンはセルゲイ・スロビキン上級大将やミハイル・ミジンチェフ上級大将とも友好的な関係にあった。スロビキンは2022年10月からドンバス、ヘルソン、ザポリージャの戦闘を指揮していた軍人であり、ミジンチェフはマリウポリを解放した作戦の指揮官だ。スロビキンが指揮するようになった頃からロシア軍は戦闘を本格化させていく。 国防相だったセルゲイ・ショイグやワレリー・ゲラシモフ参謀総長をプリゴジンは批判していたが、そのショイグは今年5月に安全保障会議書記へ移動、副首相を務めていた経済を専門とするアンドレイ・ベローゾフが後任に選ばれた。その後、ロシア政府はウクライナ問題を西側と話し合いで解決することを断念したと見られている。 昨年秋までにウクライナ軍は壊滅状態で、イギリスのベン・ウォレス前国防大臣は昨年10月1日、テレグラフ紙に寄稿した記事の中でウクライナ兵の平均年齢は40歳を超えていると指摘、もっと多くの若者を前線へ送り出せと要求している。それだけ兵士が死傷しているということにほかならない。この段階でウクライナ側の戦死者数は50万人から100万人、ロシア側はその1割程度だと見られていた。実際、ウクライナの街頭で徴兵担当者に拉致される男性の映像がインターネットで流されている。 すでにウクライナは降伏するか「総玉砕」するかという状況になっているのだが、ネオコンやEUのエリートはロシアを勝たせるわけにはいかないと主張、つまりウクライナを「総玉砕」させようとしている。 それでもダメならバイデンはドナルド・トランプの大統領就任式までに核ボタンを押すのではないかと懸念されている。大統領選挙でトランプの勝利が決定した後に民主党や有力メディアがおとなしいのは、そうした類のことを目論んでいるからではないかという人もいる。西側の好戦派に残された最後の切り札は核戦争による人類の死滅だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.21
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ジョー・バイデン米大統領はウクライナ政府に対し、長距離ミサイルのATACMSでロシア深奥部を攻撃することを許可したとニューヨーク・タイムズ紙が伝えたが、ウクライナは6カ月で自前の長距離弾道ミサイルを開発できるともしている。いずれの場合でも、こうした兵器を扱える兵士、兵器を誘導する情報を提供する衛星、さらに目標の選定や目標に関する情報なども必要であり、少なくとも現段階ではアメリカやイギリスをはじめとするNATO諸国の支援なしに長距離ミサイルを使うことはできない。 ロシアのウラジミール・プーチン大統領は今年9月、西側諸国がキエフに対してロシアを攻撃するために長距離兵器の使用を認めれば、それはNATOとロシアが戦争状態になることを意味すると宣言した。ニューヨーク・タイムズ紙の報道が正しいなら、ロシア政府はそれを自国に対する宣戦布告とみなすとも理解できる。ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官は、報道が事実ならば、それは劇的な軍事的なエスカレーションだとしている。 少なくとも現在のバイデン大統領がこうした問題について判断する能力があるとは思えないが、誰が判断したにしろ、アメリカ側がこうした軍事的な緊張を高める政策を打ち出した。そうした中、プーチン大統領は最新版の「核抑止力の分野におけるロシア連邦の国家政策の基礎」に署名した。それによると、核保有国の支援を受けた非核保有国によるロシアまたはその同盟国への侵略は、共同攻撃とみなすとされている。つまりNATO加盟国がロシアやその同盟国を侵略した場合、アメリカやイギリスを含むNATO全体の侵略とみなすということだ。 1990年8月にイラク軍がクウェートへ攻め込んだ。その前にイラクとクウェートは領土や石油の盗掘をめぐる問題で対立していたのだが、解決の見通しは立っていなかった。そうした中、アメリカ政府はイラク軍がクウェートへ侵攻することを容認するかのようなメッセージを出す。 PLOのヤセル・アラファト議長やヨルダンのフセイン国王はイラクのサダム・フセインに対し、これは罠の可能性があると警告するが、イラクは軍事力を行使したのだ。 イラクが侵攻すると、アメリカ下院の人権会議に「ナイラ」なる少女が登場、イラク軍の残虐性を涙ながらに告発、アメリカで好戦的な雰囲気を高めることに成功し、アメリカ軍は1991年1月にイラクを軍事侵攻した。 しかし、この「告発劇」は広告会社ヒル・アンド・ノールトンが演出したもので、主演の少女はアメリカ駐在クウェート大使の娘。つまり全くの作り話だった。 この戦争でイラクはダメージを受けるが、ジョージ・H・W・ブッシュ政権はフセイン体制を倒さない。ブッシュやその後ろ盾はイラクをペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤だと考えていたからだ。 それに対し、イラクに親イスラエル体制を樹立させ、シリアとイランを分断して個別の倒すという戦略を立てていたネオコンは怒るのだが、その経験からアメリカが軍事力を行使してもソ連軍は出てこないと考えるようになった。 それ以降、アメリカのどの政権でも大きな影響力を維持したネオコンは、ロシアも脅せば出てこないと信じている。今回、バイデン政権はウクライナに対してATACMの使用を許可したとされているが、バイデン大統領やその周辺の好戦派はロシア政府の警告をハッタリだと考え、ウクライナを解き放ってもロシアは反応しないと思い込んでいるようだ。彼らは「脅せば屈する」という信仰から抜け出せない。これを否定すると彼らの信仰体系が崩壊してしまうからだろう。 ロシアに対する挑発、あるいは長距離ミサイルによるロシア深奥部への攻撃を正当化するつもりなのか、アメリカ、韓国、ウクライナは、朝鮮軍がロシアへ兵士1万2000人を派遣していると評価しているのだが、例によって証拠は示されていない。もしそれだけの部隊が戦闘に参加しても戦況を変化させることはできない。 しかも、実際にそうした攻撃が行われた場合、それはアメリカをはじめとするNATOによるものだとロシアは判断する。いや、クリミアなどに対してはすでに使われているので、ロシアは自国をアメリカをはじめとするNATOが攻撃していると考えているはずだ。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は2022年2月にロシアがウクライナへの攻撃を始めた直後、ロシアのプーチン政権と停戦交渉を開始、ほぼ合意に達していたことが判明している。その交渉を潰したのがイギリス政府で、アメリカの政界も戦争を後押しした。 その2年前、ゼレンスキーはイギリスを公式訪問したのだが、その際にロンドンでイギリスの対外情報機関MI6のリチャード・ムーア長官と会談した。その際、ゼレンスキーの周辺から情報が漏れていると指摘され、ゼレンスキーの周辺にはイギリス人スタッフが配備されたという。 それ以降、ゼレンスキーはMI6のエージェントであり、ハンドラーはムーア長官だと考えられるようになった。ゼレンスキーの大統領就任は西側諸国の情報機関による綿密な計画に基づく作戦によるとも言われている。そう考えれば、ゼレンスキーがネオコンのためにウクライナを破壊し、ウクライナ人の大量死を招いた理由が理解できる。MI6の背後にはイギリスの金融界が存在している。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターによると、ゼレンスキーはウクライナをアメリカや西側諸国の新型兵器システム、ネオナチで編成された戦闘員、生物化学兵器の研究開発施設などのための実験場にした。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.20
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ドナルド・トランプ次期米大統領はロバート・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官(HHS)に任命、タルシ・ガッバード元下院議員を国家情報長官候補に指名、イーロン・マスクをニューヨークへ派遣してイランのアミール・サイード・イラバニ国連大使と会談させたという。 HHSを構成する部局の中にはCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で中心的な役割を果たしたCDC(疾病管理予防センター)やFDA(食品医薬品局)も含まれている。アメリカを支配している人たちは医療システムを支配の道具として利用、COVID-19騒動の背後に国防総省が存在しているので、HHSは重要な省だと言える。 国家情報長官は情報機関を統括する重要な役職だが、それだけに情報部門を支配しているネオコンがガッバードをすんなり受け入れることはないと見られている。 トランプは前回、国家安全保障補佐官にマイケル・フリン元DIA(国防情報局)局長を選んだのだが、この人物が局長だった当時のDIAは、バラク・オバマ政権が中東で進めていたアル・カイダ系武装集団への支援を危険だと指摘していた。 オバマ大統領はムスリム同胞団を使い、地中海沿岸国で体制転覆作戦を展開するため、2010年8月にPSD-11を承認。「アラブの春」はその結果だ。 その作戦ではムスリム同胞団だけでなくサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)も投入、リビアではNATOも連携させた。リビアのムアンマル・アル・カダフィ体制はその年の10月に倒され、カダフィ本人を惨殺された。 シリア軍はリビア軍と違って強く、アル・カイダ系武装勢力だけではバシャール・アル・アサド政権を倒せない。そこでオバマ政権はリビアから兵器や戦闘員をシリアへ移動させるだけでなく、新たな軍事支援を実行した。 DIAはオバマ政権が支援している「反シリア政府軍」の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと実態は同じだと指摘、その中心はサラフィ主義者やムスリム同胞団だと報告している。 報告書の中でDIAは、オバマ政権の政策によってシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域が作られると警告しているが、2014年にそれがダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実になった。そのダーイッシュは残虐さを演出してアメリカ/NATOの介入の口実を作ろうとしたが、2015年9月末にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していった。 トランプはこうした背景を持つフリンを国家安全保障補佐官に任命した人事をヒラリーを支えていたネオコンや戦争ビジネスは怒り、フリンに最も近い副補佐官とされていたロビン・タウンリーがNSC(国家安全保障会議)で働くために必要なセキュリティ・クリアランスの申請をCIAは拒否、フリンは2017年2月に解任された。ガッバードを国家情報長官に据えられるのか、長官に据えても仕事をできるのか、不明だ。 2015年の6月に欧米の一部支配グループはヒラリー・クリントンを次期大統領にすることを内定していたと言われている。この月の中旬にオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合へジム・メッシナというヒラリー・クリントンの旧友が出席していたからだ。 オバマ大統領は2015年12月にロシアの外交官35人の追放を命じ、アメリカとロシアとの関係を悪化させようとした。アメリカの大統領選挙に介入しようとしたからだとされているが、この「ロシアゲート」は民主党幹部がCIAやFBIと手を組んで仕掛けたでっち上げであることは明確になっている。 ヒラリー勝利の流れが変わったとする噂が流れ始めたのは2016年2月10日。この日、ヘンリー・キッシンジャーがロシアを訪問し、ウラジミル・プーチン露大統領と会談している。ドナルド・トランプが注目されるようになるのはその後だ。 その一方、3月16日にウィキリークスがヒラリー・クリントンの電子メールを公表、その中にはバーニー・サンダースが同党の大統領候補になることを妨害するよう民主党の幹部に求めるもの、民主党幹部たちが2015年5月26日の時点でヒラリー・クリントンを候補者にすると決めていたことを示唆するものもあった。こうした情報はサンダースを支持していた人びとを怒らせることになる。 オバマ政権で副大統領を務めていたジョー・バイデンはオバマと同じようにロシアとの関係を悪化させ、軍事的な緊張を高めた。2016年の大統領政権でヒラリーが勝利していたならオバマやバイデンと同じようにロシアとの軍事的な緊張を高めていただろう。もっとも、トランプもネオコンの好戦的な政策を変えることはできなかった。 トランプは今回、エリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツというシオニストを要職につけた。トランプがイスラエルと親密な関係にあることは否定できない。そこで注目されているのがマスクの動きだ。 トランプが大統領選挙で勝利した3日後、FBIはイラン系アメリカ人のファルハド・シャケリの話を発表した。ファルハド・シャケリがイランの革命防衛隊に指示されてトランプを暗殺しようと計画していたというのだが、ラリー・ジョンソンによると、この話はCIAの工作である可能性が高い。 シャケリは2019年にスリランカで逮捕された。92キロのヘロインを運ぼうとしていたのだが、この逮捕にはアメリカのDEAが協力、その後DEAはシャケリを情報提供者として採用、シャケリをイランの情報機関員だとする話に信憑性を持たせるため、彼をイランに移住させ、職を得るよう指示したという。シャケリの話を利用し、トランプが大統領に就任する前にイランを攻撃しようとしていた疑いが持たれている。 このストーリーはジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された際に使われたシナリオに似ている。当時、軍や情報機関の好戦派はソ連に対する先制核攻撃を計画、それを正当化するため、ソ連やキューバが暗殺の黒幕だとする話が流されていた。 シャケリの訴追が発表された後、マスクをイランの国連大使と会談させたのは、イランと間接的な協議しか行わなかったバイデン政権と対照的だ。マスクの派遣は好戦派のシナリオを潰すことが目的で、それは成功したのではないかと言われている。 少なからぬシオニストを抱えたトランプ次期大統領はイスラエルを支援すると見られているが、マスクの動きに関する分析が正しいなら、和平に向かう可能性もある。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.17
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ドナルド・トランプはホワイトハウスから新自由主義の信奉者を排除し、1973年頃のアメリカを復活させようとしていると言われているのだが、そうした話に反することも行われている。 トランプが嫌っているというこの経済イデオロギーを広めたのはミルトン・フリードマンやフリードリッヒ・フォン・ハイエク。一部の私的権力へ富を集中させることになるが、必然的に貧富の差が拡大、国は疲弊する。 ハイエクは1929年にアメリカの株式相場が暴落した後、1930年代に私的な投資を推進するべきだと主張、政府の介入を主張するジョン・メイナード・ケインズと衝突した学者だ。ハイエクの教え子にはデイビッド・ロックフェラーも含まれている。 フリードマンは1962年に出版された『資本主義と自由』の中で、企業の利益追求を制限する試みは「全体主義」へ通じていると主張、70年9月にはニューヨーク・タイムズ・マガジンで企業の経営者は社会的な責任を無視するべきだとしていた。この政策を推進すれば富はシステム上優位な立場にある一部の人びとに富が集中、政府を上回る力を持たせることになる。 1933年3月から45年4月までアメリカ大統領を務めたフランクリン・ルーズベルトは1938年4月、人びとが容認する私的権力が民主主義国家そのものより強くなると民主主義国家の自由は危うくなり、その本質はファシズムだと主張している。新自由主義はファシズムの別名だと言えるだろう。この経済イデオロギーはネオコン(新保守)と呼ばれる政治イデオロギーと結びついている。 ネオコンはシオニストの一派で、好戦的だ。ジェラルド・フォードが大統領だった1970年代に台頭した。フォードはリチャード・ニクソン大統領が失脚した後、1974年8月に副大統領から昇格した人物だ。 ネオコンが台頭する前からシオニストはアメリカの外交や安全保障分野を仕切っていた。シオニストと対立したジョン・F・ケネディ大統領も選挙期間中は慣例に従う姿勢を見せていた。 シオニストとユダヤ人を混同する人が少なくないが、シオニズムは16世紀の後半、エリザベス1世が統治するイギリスで広がったキリスト教のイデオロギー。その当時、アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じる人物が支配層の中に現れ、「ユダヤ人の国」を作らなければならないと信じるグループが現れた。ブリティッシュ・イスラエル主義だ。このカルトにはユダヤ教のエリートも加わったものの、一般のユダヤ教徒からは相手いされなかったようだ。 こうした話を信じた人の中には、スチュワート朝のスコットランド王ジェームズ6世(イングランド王ジェームズ1世)、そしてオリヴァー・クロムウェルの周辺も含まれていた。クロムウェルは1657年にユダヤ人がイングランドへ戻ることを認めている。こうした動くと連動する形でオカルトが支配層の内部で広がっていく。 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) シオニズムという用語はナータン・ビルンバウムなる人物が1893年に初めて使ったとされているが、近代シオニズムの創設者とされているのは1896年に『ユダヤ人国家』を出版したセオドール・ヘルツル。ユダヤ教に興味はなかったとされている。 ユーラシア大陸の周辺を海軍力で支配、内陸部を締め上げるという戦略を立てていたイギリスにとってスエズ運河は重要な意味を持つ。その運河近くにイギリスがサウジアラビアとイスラエルを作ることになる。 イギリス外務省アラブ局はエージェントを後のサウジアラビア国王でワッハーブ派のイブン・サウドに接触させ、1916年6月にアラブ人を扇動して反乱を引き起こした。トーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」もその部署に所属していた。オスマン帝国を解体し、中東を支配することが目的だ。 ローレンスが接触していたフセイン・イブン・アリにイギリスのエジプト駐在弁務官だったヘンリー・マクマホンは書簡を出し、その中でイギリスはアラブ人居住地の独立を支持すると約束した。フセイン・マクマホン協定である。このイブン・アリを追い出したイブン・サウドを中心として1932年に作られた国がサウジアラビアにほかならない。 その一方、イギリスのアーサー・バルフォア外相はロスチャイルド卿に宛てに出した書簡の中で「イギリス政府はパレスチナにユダヤ人の民族的郷土を設立することに賛成する」と約束している。1917年11月のことだ。 また、イギリスとフランスは石油資源に目をつけ、サイクス・ピコ協定を1916年5月に結んでいる。フランスのフランソワ・ジョルジュ・ピコとイギリスのマーク・サイクスが中心的な役割を果たしたことからそう呼ばれている。 イギリスは1919年、石油利権を手に入れるためにペルシャを保護国にし、その2年後に陸軍の将校だったレザー・ハーンがテヘランを占領する。そして1925年にカージャール朝を廃して「レザー・シャー・パーレビ」を名乗るようになった。 第2次世界大戦後、そのイランは独立の道を歩み始め、1951年4月には議会での指名を受けて国王が首相に任命したムハマド・モサデクがAIOC(アングロ・イラニアン石油、後のBP)の国有化を決める。それはイギリスにとって死活問題だったことからアメリカに頼み込み、クーデターを実行することになる。 米英やその属国がイスラエルと緊密な関係にあるのは、こうした歴史的な背景があるからだ。「ユダヤ人が世界を支配している」という見方は正しくない。「ユダヤ人」は欧米の私的権力、古い表現を使うならば帝国主義者がカモフラージュのために使ってきたと言うべきだ。 ユダヤ系シオニストはそうした帝国主義者の手先として活動してきたのだが、ここにきて問題が起こっているように見える。帝国主義者の手先だったイスラエル人の一部が暴走し始めている。 トランプは新自由主義や新保守主義者を排除するとしているが、アメリカの有力メディアはシオニストが政府に入ると伝えている。中でも注目されているのはエリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツ。 ステファニックは親イスラエルの下院議員で、国連大使のポストが提示され、受け入れたとされている。国務長官になると言われているルビオ上院議員はキューバ系アメリカ人で、シオニスト。出世欲はあるものの、外交面の能力はないとみなされている。ロシアや中国に対して好戦的な姿勢を見せてきたが、「風見鶏」とも言われている。国家安全保障補佐官に任命されると言われているウォルツは陸軍のグリーンベレーに所属していた経歴の持ち主で、好戦的。シオニストでもある。 トランプもシオニストから離れられないようだが、そのシオニストが作ったイスラエルからアムステルダムへ乗り込んだフーリガンは乱暴狼藉を働いた。有力メディアはそのフーリガンを被害者だと宣伝しているが、その嘘は現地の少年ユーチューバー、ベンダーが撮影した映像でもわかる。しかもフーリガンは何者かの指揮の下で行動、警官隊も連携しているように見える。フーリガンの一行にイスラエルの情報機関、モサドが同行していたことをエルサレム・ポストが紹介していたことは本ブログでも紹介した。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.13
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アゾフ海に面したマリウポリは戦略上、重要な港湾都市だ。2014年2月にバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターでキエフを制圧した後、ネオ・ナチ政権は戦車部隊をマリウポリに突入させて建造物を破壊、住民を殺傷している。その様子を撮影した映像を住民が世界に発信していた。 その後、マリウポリはクーデター軍に占領され、少なからぬ住民がロシアなどへ避難し、残った住民の一部はクーデター軍に拘束された。住民が避難したことから空いたスペースに親欧米派が多い西部から入植したが、クーデター体制が崩壊状態になったこともあり、避難していた住民の約30%が戻ったと伝えられている。 クーデターの後、4月12日にCIA長官だったジョン・ブレナンがキエフを極秘訪問、14日にはクーデター政権の大統領代行が東部や南部の制圧作戦を承認し、22日には副大統領だったジョー・バイデンもキエフを訪問、その直後から軍事力の行使へ急速に傾斜していった。そのタイミングでオデッサ攻撃についての会議が開かれたという。 ここにきてイスラエルのフーリガンがアムステルダムで乱暴狼藉を働いて問題になっているが、2014年5月2日にはウクライナ南部の港湾都市であるオデッサでもサッカー・ファンの暴力が引き金になって虐殺事件が起こっている。 その日の午前8時にフーリガンが列車で到着、赤いテープを腕に巻いた一団(UNA-UNSOだと言われている)が襲撃して挑発し、反クーデター派の住民が集まっていた広場へ誘導した。 広場に集まっていた住民は右派セクターが襲撃してくるので労働組合会館へ避難するように説得され、女性や子どもを中心に住民は建物の中へ逃げ込むのだが、その建物の中でネオ・ナチのグループは住民をそこで撲殺、さらに火を放って焼き殺した。皆殺しにするため、屋上へ通じるドアはロックされていたとも言われている。 このとき50名近くの住民が殺されたと伝えられているが、これは地上階で確認された死体の数にすぎず、地下室で惨殺された人を加えると120名から130名になると現地では言われていた。そして5月9日、住民が第2次世界大戦でドイツに勝利したことを祝っていたマリウポリにクーデター政権は戦車を突入させ、住民を殺し始めたのである。 オバマ政権はクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したのだが、マリウポリやオデッサを含む東部や南部はヤヌコビッチの支持基盤で、2010年の大統領選挙では有権者の7割がヤヌコビッチに投票していた。 クーデター直後、ウクライナでは軍人や治安機関メンバーの約7割は新体制を拒否、クリミアの場合は9割近い兵士が離脱したと伝えられている。離脱した軍人やメンバーの一部は東部ドンバス(ドネツクやルガンスク)の反クーデター軍に合流したとも伝えられている。 クーデターの状況をいち早く掴んだクリミアでは3月16日にロシアとの統合を求める住民投票を実施、80%以上の住民が参加した投票の結果、95%以上が加盟に賛成した。 クリミアは黒海に突き出た半島で、セバストポリは黒海艦隊の拠点。ロシアはこの拠点を確保するため、1997年にウクライナと条約を結び、基地の使用と2万5000名までのロシア兵駐留が認められていた。この条約に基づき、クーデター当時には1万6000名のロシア軍が実際に駐留していたのだが、ウクライナ軍の約9割が反クーデターだったことから、ロシア軍の存在には関係なく、クーデター政権はクリミアを制圧できなかった。 オデッサと同じで、戦略的に重要なマリウポリはネオ・ナチが制圧したのだが、2022年2月24日にロシア軍はウクライナに対する軍事作戦を開始、地下があった都市のひとつ、マリウポリを解放する。 マリウポリのほか、ソレダル、マリーインカ、そしてアブディフカにも地下要塞が存在、それらを結ぶ要塞線がドンバス周辺に2014年から8年かけて築かれた。 キエフ政権が送り込んだ親衛隊が敗走した後、人質になっていた住民が脱出、外部のジャーナリストと接触できるようになった。そうした住民はマリウポリにおける親衛隊の残虐行為を証言、映像をツイッターに載せていた人もいた。その人のアカウントをツイッターは削除したが、削除しきれていない。(例えばココやココ) その後も脱出した市民の声が伝えられている。現地で取材していいる記者がいるからで、その中にはフランスの有力メディアTF1やRFIのほか、ロシアやイタリア人の記者もいたという。ヨーロッパではそうしたジャーナリストに対する弾圧が続いている。 マリウポリにある産婦人科病院を3月9日に破壊したのはロシア軍だという話を西側の有力メディアは広げていたが、そうした「報道」でアイコン的に使われたマリアナ・ビシェイエルスカヤはその後、報道の裏側について語っている。 彼女は3月6日、市内で最も近代的な産婦人科病院へ入院したが、間もなくウクライナ軍が病院を完全に占拠、患者やスタッフは追い出されてしまう。彼女は近くの小さな産院へ移動した。最初に病院には大きな太陽パネルが設置され、電気を使うことができたので、それが目的だろうと彼女は推測している。 そして9日に大きな爆発が2度あり、爆風で彼女も怪我をした。2度目の爆発があった後、地下室へ避難するが、その時にヘルメットを被った兵士のような人物が近づいてきた。のちにAPの記者だとわかる。そこから記者は彼女に密着して撮影を始めた。彼女は「何が起こったのかわからない」が、「空爆はなかった」と話したという。 病院についてはオンライン新聞の「レンタ・ル」もマリウポリから脱出した別の人物から同じ証言を得ている。その記事が掲載されたのは現地時間で3月8日午前0時1分。マリウポリからの避難民を取材したのだが、その避難民によると、2月28日に制服を着た兵士が問題の産婦人科病院へやってきて、全ての鍵を閉め、病院のスタッフを追い払って銃撃ポイントを作ったとしている。 イギリスのBBCは3月17日、ロシア軍が16日にマリウポリの劇場を空爆したと伝えたが、それを伝えたオリシア・キミアックは広告の専門家だ。マリウポリから脱出した住民はカメラの前で、劇場を破壊したのは親衛隊だと語っている。 アゾフスタル製鉄所から脱出したナタリア・ウスマノバの証言をシュピーゲル誌は3分間の映像付きで5月2日に伝えたが、すぐに削除してしまった。親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難し、戻る場所はドネツクしかないとし、ウクライナを拒否する発言が含まれていたからだ。 シュピーゲル誌はこの映像をロイターから入手したとしているが、ロイターが流した映像は編集で1分間に短縮され、アメリカのジョー・バイデン政権やウクライナのゼレンスキー政権にとって都合の悪い部分が削除されていた。 親衛隊に占領されていた地域から脱出した住民はウスマノバと同じように親衛隊の残虐な行為を非難、ウクライナ軍の兵士も親衛隊を批判している。こうした証言を西側の有力メディアは隠していた。 こうした虐殺の後もクーデター軍はドンバスの住宅街を攻撃、約8年間に住民1万4000人が殺したと言われている。 クーデター軍を恐れて多くのウクライナ人がロシアへ避難、その中にも勿論子どももいたのだが、ICC(国際刑事裁判所)は子どもをウクライナから「強制移住」させたとしてロシアのウラジミル・プーチン大統領と子どもの権利オンブズマンであるマリア・リボバ-ベロバに対する逮捕令状を発行している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.16
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ドナルド・トランプ次期大統領がイーロン・マスクをニューヨークでイランのアミール・サイード・イラバニ国連大使と会談させたとニューヨーク・タイムズ紙が伝えたが、イラン外務省はこの報道を否定した。 同紙はこれまでアメリカ支配層の意向に沿う偽情報を流してきたので嘘だとしても驚きではないが、アメリカやイスラエルによるイランに対する攻撃が近いとする推測が流れる中での出来事だ。 ちなみに、トランプは大統領として2017年4月に巡航ミサイルのトマホーク59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、18年4月にはイギリスやフランスを巻き込み、100機以上のトマホークをシリアに対して発射したが、成功しなかった。 そして2018年5月にトランプ大統領はイラン核合意から自国を正式に離脱させ、20年1月にはイランのコッズ軍を指揮してきたガーセム・ソレイマーニーとPMU(人民動員軍)のアブ・マフディ・ムハンディ副司令官をバグダッド国際空港で暗殺している。 また、民主党に所属するふたりの上院議員、ジャック・リード上院軍事委員会委員長と外交委員会メンバーのジーン・シャヒーンはマスクがロシアの高官数人と連絡を取っていたという情報について調査するべきだと要求しているが、今後、こうした話を突破口にしてマスク攻撃を展開するつもりなのかもしれない。 トランプ政権が中東に対してどのような政策を打ち出すのか明確でないが、ロシアとの戦争を回避しようとしている可能性は高い。それに対し、一貫してロシアとの戦争に執着しているのがイギリスの支配層だ。 ロシア軍は2022年2月24日にウクライナ軍に対するミサイル攻撃を開始したが、その直後にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権はロシアのウラジミル・プーチン政権と停戦交渉を始めた。仲介役はイスラエルのナフタリ・ベネット首相とトルコ政府で、ほぼ合意に達していた。 停戦が内定したことを伝えるためにベネットは同年3月5日にドイツへ向かい、オラフ・シュルツと会うのだが、その日、ウクライナの治安機関SBUはキエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームに加わっていたデニス・キリーエフを射殺している。 そして4月9日、ボリス・ジョンソン英首相がキエフへ乗り込んで停戦交渉の中止と戦争の継続を命令、4月30日にはナンシー・ペロシ米下院議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ゼレンスキー大統領に対してウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。 2022年10月8日にクリミア半島とロシア本土を結ぶクリミア橋(ケルチ橋)が爆破された。ロシアのFSB(連邦保安庁)によると、容疑者は12名。そのうち8名が逮捕されたという。トラックに積まれた建設用のフィルム・ロールに偽装したプラスチック爆弾で、爆破工作を計画したのはウクライナ国防省のGUR(情報総局)だとされたが、計画の黒幕はイギリスの対外情報機関SIS(通称MI6)だとする情報もあった。この情報機関はイギリスの金融界、通称「シティ」との関係が深い。 このクリミア橋爆破を含む工作にイギリスの退役した軍人や情報機関のメンバーで組織された一団をイギリス国防省は組織し、「プロジェクト・アルケミー」と呼ばれるようになった。この計画を作り出したのはイギリス軍のチャーリー・スティックランド中将だとされている。このスティックランドがプロジェクト・アルケミーの最初の会議を招集したのは2022年2月26日だという。 イギリスの情報機関は第2次世界大戦の終盤、アメリカの情報機関と共同で「ジェドバラ」なるゲリラ部隊を組織した。メンバーにコミュニストが多かったレジスタンスに対抗するためだとされている。 大戦後、アメリカではジェドバラの一部メンバーは軍へ移動してグリーン・ベレーをはじめとする特殊部隊の創設に関わり、一部は極秘の破壊工作部隊OPCの中核メンバーになった。またヨーロッパでは「ソ連の軍事侵攻に備える」という名目で破壊工作機関のネットワークが構築された。 NATOが組織されると、そのネットワークは吸収され、メンバー国には秘密部隊が作られている。その中で最も有名な組織はイタリアのグラディオだろう。こうしたグラディオのような組織がウクライナでも作られたという。 ウクライナは2014年2月22日、アメリカのネオコンが仕掛けたクーデターでビクトル・ヤヌコビッチ政権が倒され、ネオ・ナチが主導権を握る体制が築かれた。 ネオ・ナチを率いてきたひとりがドミトロ・ヤロシュ。この人物はドロボビチ教育大学でワシル・イワニシン教授の教えを受けたことが切っ掛けになってOUN-B(ステパン・バンデラ派)系のKUN(ウクライナ・ナショナリスト会議)に入るが、この人脈はソ連消滅後に国外からウクライナへ戻り、活動を始めている。2007年にヤロシュはKUNの指導者になり、そのタイミングでNATOの秘密部隊ネットワークに参加したとされている。 プロジェクト・アルケミーのメンバーはウクライナにおける代理戦争を長引かせ流ことでプーチン大統領に対するロシア内外の信頼性を失わせ、NATOと戦う能力を低下させることができると考えた。ドンバスでロシア軍が敗北すればプーチン政府崩壊の引き金になってロシアを西側が支配する金融秩序へ吸収でき、ロシアが敗北すればロシアの安い天然ガスや穀物を手に入れられる。おそらく、ヨーロッパ諸国はその「おこぼれ」にあずかれると思ったのだろう。 アルケミーはICC(国際刑事裁判所)にあらゆる可能な支援を提供するよう提案、イギリスの著名な弁護士はICTY(旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所)に類似した組織を設立しようと目論んでいたとも言われている。マックス・ブルーメンタールによると、イギリスはカリム・カーンのICC主任検察官任命で重要な役割を果たしたとされている。 そのカーンは2023年3月にプーチン大統領と子どもの権利オンブズマンであるマリア・リボバ-ベロバに対する逮捕令状を発行、5月にはロシア当局がカーンに対する逮捕令状を発行した。ICCは2024年6月にロシアの元国防大臣セルゲイ・ショイグとロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長に対する逮捕状も発行した。 こうした西側の妄想はロシアがウクライナで軍事的に劣勢にならなければ成立しないのだが、実際はロシアの軍や経済の強さを明らかにすることになっている。西側は窮地に陥った。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.18
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このブログは読者の皆様に支えられています。ブログを存続させるため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。【振込先】巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦 ドナルド・トランプが次期アメリカ大統領に選ばれました。世界を支配してきた「ディープ・ステート」、つまりシティやウォール街を拠点にする金融資本を中核とする強大な私的権力に彼が挑戦してくれると期待する人も少なくないようですが、革命家でない彼が支配構造そのものを壊すことはないでしょう。 ロバート・ケネディ・ジュニアが保健福祉省の長官に、またトゥルシー・ギャバードが国家情報長官に指名され、これによって政策の民主化は期待できるかもしれませんが、支配構造自体が民主化されるとは思えません。勿論、ケネディやギャバードに対する利権集団の攻撃は予想できます。 ハリウッド映画も「政府機関の悪事」を描くこともありますが、それは悪い個人やグループによるものであり、システムは健全だとされています。最後には自浄作用が働き、「正義が勝つ」ということになっています。こうした自浄作用のひとつとしてトランプの勝利を見る人も少なくありません。 問題の本質は支配構造の腐敗にあるのですが、そこへ人びとが目を向けないように情報を操作しているのが有力メディアや「権威」と呼ばれる人びとです。そうしたプロパガンダに対抗し、事実を伝える人びとがインターネット上にはいますが、西側ではそうした情報を封印しようと言論統制を強めています。こうした統制と戦うため、皆様の御支援をお願い申し上げます。櫻井 春彦【追加】 ジョー・バイデン大統領はウクライナ政府に対し、長距離ミサイルのATACMSでロシア深奥部を攻撃することを許可したとニューヨーク・タイムズ紙が伝えている。ウクライナで米英を中心とする西側諸国が続けてきたロシアとの代理戦争を終わらせるとしているドナルド・トランプの大統領就任が2カ月後に迫っている中でのことだ。 ATACMSでロシアの深奥部を攻撃しても戦況に変化はないが、こうした兵器を使用するためには兵器を扱える兵士、兵器を誘導する衛星からの情報、ターゲットの選定やその情報なども提供する必要がある。つまりアメリカ/NATOがロシアに対する攻撃に直接タッチしなければならないということだ。 ロシアのウラジミール・プーチン大統領は9月、西側諸国がキエフに対してロシアを攻撃するために長距離兵器の使用を認めれば、それはNATOとロシアが戦争状態になることを意味すると宣言している。バイデンがATACMSによるロシア深奥部への攻撃を許可したという情報が正しいなら、ロシア政府はそれを自国に対する宣戦布告とみなすということだ。実際、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、報道が事実ならば、それは劇的な軍事的なエスカレーションだとしている。 これまでアメリカでは国防総省が長距離ミサイルの使用を許可しないようにブレーキをかけていたようだが、国務省や安全保障部門、あるいはイギリス政府はウクライナに長距離ミサイルでロシアの深奥部を攻撃させようとしていた。 バイデン大統領やその周辺のネオコンたちは任期が2カ月になった時点でロシアに対して事実上の戦線布告をし、戻れない一線を超えるつもりなのだろう。
2024.11.19
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シリアのアル・マシア丘の頂上にあるレーダー施設がイスラエル軍から2度の攻撃を受けた11月9日、ロシア国防省は同国の航空宇宙軍とシリアの空軍がシリア領内で合同演習を実施したと発表した。 11月11日にアメリカ中央軍はシリア領内の標的に対して攻撃を実施したことを明らかにし、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)で報道官を務めているヤヒヤ・サリーは11月12日、彼らはアラビア海でアメリカ海軍の空母「エイブラハム・リンカーン」をミサイルで攻撃したと主張している。ガザやレバノンで住民が虐殺しているイスラエルをイエメンは攻撃、そのイスラエルを支援しているアメリカの軍艦を攻撃したことになる。 11月13日にはロシア大統領の中東担当特使アレクサンダー・ラブレンチェフはイスラエルに対し、シリアの基地付近への攻撃を避けるように要求したと語った。 ドナルド・トランプはジョー・バイデンやカマラ・ハリスと同じようにイスラエルと緊密な関係にあり、次期政権の要職にシオニストを配置すると見られている。 中でも注目されているのはエリース・ステファニック、マルコ・ルビオ、マイケル・ウォルツで、親イスラエルの下院議員であるステファニックは国連大使のポストが提示され、国務長官になると言われているルビオ上院議員もシオニスト。国家安全保障補佐官に任命されると言われているウォルツは陸軍のグリーンベレーに所属していた経歴の持ち主で、好戦的なシオニストだ。 トランプを資金面から支えていたシェルドン・アデルソンはユダヤ系の富豪で、アメリカのラスベガス(ネバダ州)、ベスレヘム(ペンシルベニア州)、さらにマカオ(中国)、マリナ湾(シンガポール)でカジノを経営、日本にもカジノを作らせるように要求していた。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とも親しく、2013年にはイランを核攻撃で脅すべきだと語っていた。2021年1月11日に非ホジキン・リンパ腫で死亡、遺体はイスラエルに埋葬されたが、アデルソンの人脈は今も生きている。 大統領選挙でドナルド・トランプの勝利が確定した後、イスラエルはこれまで以上に好戦的な姿勢を見せ、ロシア軍のシリアにおける拠点とされるフメイミム空軍基地の近くにある倉庫を空爆、ロシアを威嚇、あるいは挑発している。これまでロシアはアメリカやイスラエルとの関係を配慮してシリアやイランに対する支援を抑制してきたが、それを逆手に取っている。 これまでアメリカの外交や安全保障分野の政策は基本的にシオニストが取り仕切ってきた。トランプ政権も例外ではないだろうが、アメリカやイスラエルの軍事力や経済力の優位が失われた現在、そうしたこれまでの仕組みが機能しなくなっている。イスラエルも現状を打破するためにロシアを頼るかもしれない。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.14
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情報を不特定多数の人びとへ伝える手段の発達には情報操作という闇の側面もある。こうしたことはマスメディアが登場した当時からあっただろうが、1970年代後半から闇の部分が急速に広がっていることも確かだ。 その闇の側面の一端をアムステルダムでの出来事は明らかにした。アムステルダムでは11月7日にサッカーの試合、マッカビ・テルアビブ対アヤックスが開催されたのだが、イスラエルから来たフーリガンが市街で乱暴狼藉を働き、反撃された。フーリガンは地元住民の家と思われる建物に飾られていたパレスチナ国旗を引きずり下ろした上で引き裂き、燃やし、通りかかったタクシーを襲撃、アムステルダムの市民と衝突したのだ。 それを西側の政府や有力メディアは正しく伝えない。例えば、オランダのディック・シューフ首相は「容認できない反ユダヤ主義の攻撃」だと主張している。また同国のデービッド・ファン・ウィール安全保障相は、例によって証拠を示さず、人びとがユダヤ人だということを理由に攻撃され、脅迫されたのは事実だ主張した。アメリカのジョー・バイデン大統領とアントニー・ブリンケン国務長官は公式声明で、この暴力行為の爆発は「反ユダヤ主義的」だと直ちに宣言している。 事件直後、イギリスのスカイ・ニュースはマッカビ・テルアビブのフーリガンが襲撃したことを伝え、パレスチナの旗を引き裂く様子を流していたのだが、「スカイニュースのバランスと公平性の基準を満たしていなかった」として再編集、視聴者がイスラエルの暴徒に同情的するような内容へ変えられている。 また「マッカビのファンが地元住民を攻撃しているのが見られ、パトカーが通り過ぎるのが見られる」という説明は削除され、「ソーシャルメディアに投稿された動画には、フードをかぶった大勢の男たちが黒い服を着て通りを走り、人々を無差別に殴っている様子が映っている」というように変更され、その夜の出来事と西側諸国の政治家がどのように反応したかの要約もカットされた。 こうした嘘を暴いたいのは市民にほかならない。そうしたひとりが10代の少年ユーチューバー。別の目撃者も画像と共にインターネットで実際に何があったのかを証言している。西側世界のプロパガンダ機関に市民が立ち向かっている構図だ。 アメリカでは第2次世界大戦の後、情報を操作するためのプロジェクト「モッキンバード」がスタートしたと言われている。ジャーナリストのデボラ・デイビスによると、プロジェクトの中心にいたのはワシントン・ポスト紙の社主を務め、戦争中は陸軍の情報部に所属していたフィリップ・グラハム、大戦中からアメリカの破壊活動を指揮していたアレン・ダレス、破壊工作を担当する秘密機関OPCの局長でダレスの側近だったフランク・ウィズナー、やはりダレスの側近で後にCIA長官に就任するリチャード・ヘルムズだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) この4名は金融界との関係が深い。ダレスとウィズナーはウォール街の弁護士であり、ヘルムズの祖父であるゲイツ・マクガラーは国際的な投資家で、BIS(国際決済銀行)理事会の初代議長、フィリップ・グラハムの妻、キャサリンの父、ユージン・メイヤーは世界銀行グループの初代総裁で、FRB(連邦準備制度理事会)の議長も務めた。 メイヤーは1933年に競売でワシントン・ポストという倒産会社を競り落とし、自分自身の人脈を利用してこの新聞社を「一流紙」と呼ばれるように作り上げた。 フィリップはキャサリーンと離婚して再婚し、ワシントン・ポスト紙を自分ひとりで経営すると友人に話していたが、1963年6月に精神病院へ入院、8月に自殺する。新聞社はキャサリンが引き継いだ。フィリップと親しくしていたジョン・F・ケネディが暗殺されたのはその3カ月後のことだ。 1970年代の半ばにアメリカの議会では情報機関の秘密工作に対する調査が進められたが、それに対抗して情報機関やその後ろ盾である私的権力は情報統制を強化、メディアの集中支配を可能にするために規制を緩和、今では有力メディアの大半を少数のグループが支配している。 2019年にはCOMCAST(NBCなど)、ディズニー(ABC、FOXなど)、CPB(NPR、PBSなど)、Verizon(Yahooニュース、ハッフィントン・ポスト)、ナショナル・アミューズメンツ(VIACOM、CBS、MTVなど)、AT&T(CNN、TIME、ワーナー・ブラザーズなど)、グーグル、ニューズ・コープ(FOXニュース、ウォール・ストリート・ジャーナルなど)というようになっている。 日本でも1980年代にマスコミの統制が強化された。その直前、毎日新聞の西山太吉記者は沖縄返還協定の背後に密約が存在する事実をつかんで報道するのだが、ライバルのメディアは何者かに操られているかのように情報の収集方法を問題にし、密約自体は曖昧なまま幕引きになった。その出来事で毎日新聞は攻撃の矢面に立たされて経営が悪化している。日米支配システムのタブーに触れると巨大メディアも潰れてしまうことが示されたとも言える。 また、1987年5月には朝日新聞の阪神支局が散弾銃を持った人物に襲われ、ひとりが射殺され、別のひとりが重傷を負った。この襲撃事件で縮み上がったマスコミ関係者は少なくない。 そして1991年。「新聞・放送・出版・写真・広告の分野で働く800人の団体」が主催する講演会の冒頭、むのたけじは「ジャーナリズムはとうにくたばった」と発言した。(むのたけじ著『希望は絶望のど真ん中に』岩波新書、2011年)**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.15
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アメリカ政府は世界規模で軍事的な緊張を高めようとしている。すでにユーゴスラビアを爆撃、アフガニスタンやイランへ軍事侵攻、リビアやシリアへジハード傭兵を送り込んで国を破壊してきたが、思惑通りには進んでいないようだ。ロシアや中国は勿論、アメリカの占領下にあるイラク、アメリカの属国と化しているEUも言いなりにならなくなっている。それでもアメリカ政府はシリアでの軍事作戦を続け、イランを侵略する姿勢を見せているが、アメリカ軍の内部からも無理だという声が聞こえてくる。 イラク、シリア、そしてイランを殲滅する計画をネオコンが立てたのは遅くとも1991年のこと。ネオコンはイスラエルを作り上げた勢力と近い関係にあり、シオニストの一派。サウジアラビアもその勢力によって作られた。今、イランを中東支配の上で目障りな存在だと考えているのはこのイスラエルとサウジアラビア。この2カ国の意向に従ってアメリカ政府は動いていると言われている。 しかし、現在のアメリカ大統領、ドナルド・トランプをネオコンと呼ぶことはできない。トランプもシオニストを後ろ盾にしているが、ネオコンとは違う派閥だと考えられるからだ。 2016年の大統領選挙でトランプへ最も多額の寄付をしたのはシェルドン・アデルソン。アメリカのラス・ベガスとペンシルベニア、東南アジアのマカオとシンガボールでカジノを経営、日本にもカジノを作らせるように要求していた人物で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しい。 ネタニヤフは1976年にマサチューセッツ工科大学を卒業してからボストン・コンサルティング・グループで働いているが、このときの同僚の中にミット・ロムニーがいた。 1978年にネタニヤフはイスラエルへ戻るが、82年へ外交官としてアメリカへ渡る。その時に親しくなったひとりがフレッド・トランプ、つまりドナルド・トランプの父親だ。 一方、ネタニヤフの父親、ベンシオン・ネタニヤフは1940年にアメリカへ渡り、「修正主義シオニズム」の祖であるウラジミル・ジャボチンスキーの秘書を務めた。ジャボチンスキーは1940年に死亡する。第2次世界大戦後にはコーネル大学などで教鞭を執った。 ネオコンはロシア制圧を目標にしているに対し、ジャボチンスキー系の人びとは今でも大イスラエル、つまりユーフラテス川とナイル川で挟まれている地域を支配しようとしている。 イスラエルではゴラン高原に続いてヨルダン川西岸を併合しようとする動きがあるが、それは序の口にすぎない。イスラエルの支配地域をイラク、シリア、イラン、レバノン、エジプトに広げると公言している活動家もいる。サウジアラビアもターゲットに含まれているはずだ。つまり、どこかの時点でイスラエルとサウジアラビアの利害が衝突する。 アメリカは東シナ海や南シナ海では中国を軍事的に威圧しているが、中国はロシアの戦略的な同盟国であると同時にイランを支援している国でもある。ネオコンにとってもジャボチンスキー派にとっても敵になった。 この両派にとって産油国のベネズエラは手に入れたい国。トランプ政権のクーデター工作にネオコンも賛成、従って有力メディアも支援している。 ネオコンは自分たちのターゲットであるロシアとの関係を絶とうとしてきたが、大イスラエルを目論むネタニヤフは盛んにロシアを訪問してきた。ロシアに出てきてほしくないからだろう。 ジャボチンスキー派と近いキリスト教系カルトのマイク・ポンペオ国務長官は5月14日にソチでロシアのウラジミル・プーチン大統領と会談したが、この訪問の目的もネタニヤフと同じだろう。ロシアをおとなしくさせるために何かを約束したかもしれないが、アメリカが約束を守らないことをプーチンは理解しているはず。 アメリカとロシアの関係を改善することで両国は合意したというが、それでロシアが譲歩する可能性はない。2011年2月にアメリカなどがリビアへの侵略を開始、3月17日には国連の安全保障理事会でリビア上空に飛行禁止空域を設定することを認める決議が採択された。 これはアメリカ、イギリス、フランスなどリビア侵略を狙う国が制空権を握りやすくすることが目的だということは明らかだったが、中国やロシアは決議で棄権している。このときのロシア大統領、ドミトリー・メドベージェフはアメリカとの関係回復を優先したのだが、その決定を知った当時の首相、ウラジミル・プーチンは激怒したという。アメリカが何を狙っているか誰でもわかるだろうとプーチンは考えたはずだ。今回、プーチン大統領がトランプ政権に譲歩するとは思えない。
2019.05.16
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ロバート・マラーが7月24日にアメリカ下院の司法委員会と情報委員会に出席、いわゆる「ロシアゲート」について議員から質問を受けた。この疑惑が事実であることを示す証拠が存在しないことはマラーが特別検察官として4月18日に発表した報告書でも認めているが、何とか巻き返しを図りたい民主党はマラーの発言に期待していたのだろう。その期待は砕け散った。 現在、FBIによる「ロシアゲート」に関する捜査の経緯をコネチカット州の連邦検事だったジョン・ドゥラムが調べているのだが、その結果ではマラーやFBI長官だったジェームズ・コミーらが刑事罰の対象になる可能性がある。 そもそも、マラーが特別検察官に任命された段階で「ロシアゲート」が作り話であることはわかっていた。アメリカの電子情報機関NSAの技術部長を務め、通信傍受システムの開発を主導し、NSA史上最高の数学者にひとりと言われている内部告発者のウィリアム・ビニーが指摘しているように、NSAはすべての通信を傍受、保管している。もし疑惑が事実ならFBIは必要な証拠をすべて手にすることができたのだ。 民主党が流したシナリオによると、ロシア政府が民主党のサーバーをハッキングさせたことになっているのだが、コンピュータの専門家、例えばIBMでプログラム・マネージャーを務めていたスキップ・フォルデンは転送速度など技術的な分析からインターネットを通じたハッキングではないとしている。インターネットから侵入したにしては、データの転送速度が速すぎにのである。つまり、内部でダウンロードされている。 この「疑惑」の出発点はヒラリー・クリントンの電子メール。2016年3月にウィキリークスは民主党の幹部やヒラリー・クリントンの不正行為を明らかにする電子メールを公表、7月にはヒラリーを起訴するに十分な証拠を公表していくとジュリアン・アッサンジが発言、実際に発表することになる。 それに対して民主党はサーバーがGuccifer 2.0にハッキングされ、その黒幕はロシアの情報機関だと主張した。それがウィキリークスへ渡されたというシナリオだ。 その当時、すでに民主党の候補者選びでバーニー・サンダースへの支持が強まっていた。民主党の大統領候補はサンダースになる可能性が高くなったということである。そうした中、民主党の幹部はヒラリー・クリントンを支援するかのような行動をとり、それが批判されていた。 そうした中、7月10日にDNC(民主党全国委員会)のスタッフだったセス・リッチが射殺される。警察は強盗に遭ったと発表するが、それに納得できないリッチの両親は元殺人課刑事の私立探偵リッチ・ウィーラーを雇って調査を始めた。 この探偵によると、セスはウィキリークスと連絡を取り合い、DNC幹部の間で2015年1月から16年5月までの期間に遣り取りされた4万4053通の電子メールと1万7761通の添付ファイルをウィキリークスへ渡したとしている。この発言はウィラーが雇い主に無断で行ったことから問題になり、その後、探偵から情報は出なくなった。 結局、選挙ではトランプが勝利するが、腹心で国家安全保障補佐官だったマイケル・フリンは民主党や有力メディアだけでなくトランプ政権の内部からも攻撃を受け、2017年2月に辞任させられる。 その翌月、アダム・シッフ下院議員が下院情報委員会で前年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を出し、「ロシアゲート」なる茶番劇の幕が上がった。 シッフが主張の根拠にしたのはイギリスの対外情報機関MI6(SIS)の元オフィサー、クリストファー・スティールが作成した報告書。根拠が薄弱だということはスティール自身も認めている代物だ。このスティールに調査を依頼したのはフュージョン、そのフュージョンを雇ったマーク・エリアス弁護士はヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の法律顧問を務めていた。 こうした流れを考えると、マラーはハッキングされたというサーバーを調べ、リッチ殺害について捜査、ウィキリークスのジュリアン・アッサンジやスティールから事情を聞く必要がある。が、こうしたことは行われなかった。 大統領選挙が展開されている段階でFBIの内部にトランプを引きずり下ろすための工作が始まっていたことが明らかにされている。そこで2013年9月から17年5月までFBI長官を務めたコミーの責任が問われるという話だ出ているわけだ。 特別検察官になったマラーが胡散臭い人物だということは本ブログでも指摘したこと。彼は1988年にパンナム103便の爆破事件で主席捜査官を務め、リビア政府に責任が押しつて「リビア制裁」の口実を作ったが、実際はCIAが実行したのではないかと疑われている。 またBCCIという銀行のスキャンダルの捜査を司法省で指揮した。この銀行はCIAがあるガニスタンで行っていた秘密工作の資金をロンダリングしていたことで知られているが、その真相を隠蔽したのだ。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとアーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された当時はFBI長官。この攻撃の背後にサウジアラビアとイスラエルが存在している疑いが濃厚だったのだが、これも封印した。 もうひとつ注目されているのが結婚相手。1966年にアン・キャベル・スタンディッシュと一緒になったのだが、この女性は1953年4月から62年1月までCIA副長官を務めたチャールズ・キャベルの一族。 チャールズやダレスは統合参謀本部議長だったライマン・レムニッツァーや空軍参謀総長だったカーティス・ルメイらと一緒にキューバ侵攻を目論んでいる。 また、ダレスの側近のひとりで1959年1月から62年2月にかけてCIAの破壊工作(テロ)部門を統括していたリチャード・ビッセルはマラーの親戚だ。 マラーがFBI長官だったのは2001年9月から13年9月までの機関だが、その間、08年にFBIはジェフリー・エプシュタインを情報屋として雇っている。最初に起訴された時期と重なる。この時は「寛大な処分」ですんだ。この事件を地方検事として担当したアレキサンダー・アコスタによると、エプシュタインは「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたという。 ロシアゲート話と小児性愛ネットワークは地下で結びついている可能性があり、CIAやMI6の影も見える。ヒラリーは上院議員時代から軍需産業のロッキード・マーチンを後ろ盾とし、巨大金融資本とも結びついている。漏洩した彼女の電子メールの中には投機家のジョージ・ソロスが政策的な指示を彼女に出していることを示すものが含まれていた。 また、彼女はバラク・オバマと同じようにロシアとの関係を悪化させ、軍事的な緊張を高めようとしていた。1992年に作成されたウォルフォウィッツ・ドクトリンの前提条件、ロシアの属国化を再び実現しようとしているが、これは全面核戦争を覚悟しなければ不可能だ。そのロシアとの関係修復を訴えたトランプ大統領と側近のフリンが攻撃されたのは必然だった。
2019.07.27
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ロシア軍は昨年2月24日から巡航ミサイルなどでウクライナの軍事基地や生物化学兵器の研究開発施設などを攻撃、機密文書を回収した。その中に生物化学兵器に関する約2000文書が含まれていたが、その分析を終えた。その結果、アメリカはウクライナで「万能生物兵器」を研究していたことが判明したという。 敵兵だけでなく、動物や農作物にもダメージを与えられる生物兵器を開発しているのだという。ロシア軍による攻撃でウクライナ東部にあった研究施設は破壊されたが、西部地域の施設では研究開発がまだ行われているとされている。アメリカ国防総省はそうした拠点をケニア、シンガポール、タイなどへも新たに建設しているようだ。日本に作られていないとは言えないだろう。 回収文書の分析を指揮してきたロシア軍のイゴール・キリロフ中将によると、ウクライナにはアメリカのDTRA(国防脅威削減局)が管理する研究施設が約30カ所あり、生物兵器の研究開発を行っていた。ロシア国防省が発表したスライドによると、アメリカの民主党を病原体研究の思想的な支柱とし、その思想を実体化させる役割を負っているのが国防総省やCDCを含むアメリカの政府機関だ。 研究開発のための資金はアメリカ政府の予算からも出ているが、ビル・アンド・メリンダ・ゲーツ財団、クリントン財団、ハンター・バイデンのロズモント・セネカ・パートナーズ、ジョージ・ソロスのオープン・ソサエティ財団、ロックフェラー財団、エコヘルス同盟などもスポンサー、つまり私的権力からも提供されている。 こうした研究開発と「SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)」は関係していると考える人も少なくない。SARS-CoV-2はCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)を引き起こすとされているのだが、感染の実態は不明だ。 COVID-19騒動の幕開きは2019年12月、中国の湖北省武漢の病院でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が発見されたところから始まる。患者から回収されたサンプルが「上海市公共衛生臨床中心」の張永振へ送られて検査したところ、すぐに「新型コロナウイルス」が発見され、そのウイルスが病気の原因だと断定されたとされている。 中国で伝染病対策の責任者を務めている疾病預防控制中心の高福主任は2020年1月22日、国務院新聞弁公室で開かれた記者会見の席上、武漢市内の海鮮市場で売られていた野生動物から人にウイルスが感染したとする見方を示した。この仮説を有力メディアは世界へ拡げた。 高福は1991年にオックスフォード大学へ留学して94年に博士号を取得、99年から2001年までハーバード大学で研究、その後04年までオックスフォード大学で教えている。また、NIAID(国立アレルギー感染症研究所)の所長を務めてきたアンソニー・ファウチの弟子とも言われている。 翌年の2月4日、横浜港から出港しようとしていたクルーズ船の「ダイヤモンド・プリンセス」でも似たような症状の患者が見つかり、人びとを恐怖させることになるが、その後、「SARSと似た重症の肺炎患者」が街にあふれ、死者が急増するという事態にはなっていない。 それにもかかわらずWHO(世界保健機関)がパンデミックを宣言できたのは、2009年1月から10年8月にかけて「新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)」が流行する直前、パンデミックの定義が変更されていたからだ。定義から「病気の重大さ」、つまり死者数が多いという条件が削られていたのだ。 それでも死者が多い印象を広める必要があると考えたのか、WHOやCDC(疾病予防管理センター)は2020年4月、医学的な矛盾がなく、明白な別の死因がないならば、あるいは適度な確かさがあるならば、死因をCOVID-19としてかまわないと決めた。 アメリカ上院のスコット・ジャンセン議員によると、実際、病院は死人が出ると検査をしないまま死亡診断書にCOVID-19と書き込んでいたという。その実態を告発する看護師も少なくなかった。患者数は大幅に水増しされたということだ。 また、患者数を大きく見せるためにPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)も仕掛けとして使われた。これは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する分析のための技術だが、増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、ウイルス自体を見つけることはできない。 増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になり、偽陽性も増える。偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならず、35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。2020年3月19日に国立感染症研究所が出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だ。 アメリカでは検査のため、CDCがFDA(食品医薬品局)に「2019年新型コロナウイルス(2019-nCOV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」のEUA(緊急使用許可)を発行させ、使用していたが、CDCは2021年7月、このパネルを同年12月31日に取り下げると発表した。この診断パネルはインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、区別できないことを認めざるをえなくなったようだ。 要するに、感染の実態はわからないのだが、パンデミックを口実にして世界的に接種された遺伝子操作薬の危険性は明白になっている。自己免疫疾患を引き起こすだけでなく、mRNAを人間の細胞内へ送り込むために使われる有害なLNP(脂質ナノ粒子)、あるいは体内を傷つける可能性が高いグラフェン誘導体が含まれている。その一方で人間の免疫力が低下、エイズ状態になる。エイズ状態になれば、通常なら問題のない微生物でも病気になり、癌も増える。この遺伝子操作薬にアメリカの国防総省が関係している疑いがある。
2023.04.19
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世界の有力者に未成年の女性を提供、行為の様子を隠し撮りしておどしの材料に使っていたジェフリー・エプスタインの亡霊が今でも徘徊している。名前が出てきた人物には、「COVID-19ワクチン」でも注目されているビル・ゲイツ、バージン・グループを創設したリチャード・ブランソン、JPモルガンのジェイミー・ダイモン、ノルウェーの首相、王族なども含まれている。体制に批判的な学者として知られているノーム・チョムスキーもエプスタインと親しく、イスラエルで首相を務めたエフード・バラクとも会っていたと伝えられている。 バラクは首相に就任する前、イスラエル軍の情報機関AMANの局長を経て参謀総長になっているが、AMANの命令でエプスタインは活動していたという。世界の有力者を脅す材料をイスラエルの情報機関に提供していたということだ。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) エプスタインのパートナーだったギスレイン・マクスウェルの父親はミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェル。ロバートは第2次世界大戦の際、チェコスロバキアからイギリスへ亡命、ミラー・グループなどを買収、言論界に君臨することになる。彼とイスラエルの情報機関との関係は有名だが、ギスレインとエプスタインも1980年代後半からAMANの仕事をしていたと言われている。 イスラエルには「8200部隊」という電子情報機関があり、私企業として企業を創設している。そのひとつである監視システムの会社「カービン」にバラクも出資、同社の会長になった。その会社にエプスタインも出資していた。 このエプスタインは2019年7月6日に逮捕され、翌月の10日に房の中で死亡した。自殺とされているが、他殺だと考える人が少なくない。 エプスタインはその前にも同じ容疑で摘発されたことがある。2005年にひとりの女性がフロリダのパームビーチ警察を訪れ、14歳になる義理の娘がエプスタインの自宅で猥褻な行為をされた訴えたのだ。そこから内偵捜査が始まり、その11カ月後に家宅捜索している。 捜査の過程でエプスタインが有力者へ少女を提供、その行為を秘密裏に録音、撮影して恐喝の材料に使っていたことが浮かび上がる。エプスタインは有罪を認め、懲役18カ月の判決を受けるのだが、州刑務所へは入っていない。 この事件を地方検事として事件を担当したアレキサンダー・アコスタはドナルド・トランプ政権で労働長官に就任するが、彼はその当時、エプスタインについて「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたとしている。 2006年の摘発でエプスタインが盗撮していた映像を警察は押収、それを保安官補だったジョン・マーク・ドーガンが保有していた。エプスタインの軽い刑罰が決まった2008年にドーガンは退職を強いられた。FBIは2016年にドーガンの自宅を家宅捜索、コンピュータなどを押収している。 エプスタインの知り合いには大物が少なくない。そのひとりがリン・フォレスター・ド・ロスチャイルドだ。夫はNMロスチャイルド銀行の取り仕切ってきたエベリン・ド・ロスチャイルドである。ふたりは1998年に開かれたビルダーバーグ・グループの会議でヘンリー・キッシンジャーに紹介されて知り合い、2000年に結婚している。 リン・フォレスターはエベリンと結婚する前、マンハッタンにある自分のアパートをギスレイン・マクスウェルに使わせていた。エプスタインが保有していたプライベート・ジェットの搭乗者名簿にはリン・フォレスターの名前も記載されている。
2023.06.01
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BioNTech/ファイザー製「Covid-19ワクチン」の最大30%はプラセボ(偽薬)である疑いがあるという。これはデンマークで行われた研究の結果だ。接種は2020年12月下旬に始まるが、その直後からロットによって副作用の出かたが違うことは指摘されていた。そうした指摘をしたひとりがファイザーで副社長を務めていたマイク・イードンだ。 デンマークで使用されたバッチは基本的に3つのグループに分かれ、グラフでは青、緑、黄に色分けされている。青で表示されたバッチは高いレベルの「有害事象」を引き起こし、緑は中程度、黄は「有害事象」がほとんど見られない。青の場合、報告された重篤な「有害事象」の発生率は10回に1件、緑は約400回につき1件。ロット数の比率が最も高いには緑で、60%以上だとされている。プラセボが30%とすると、非常に危険なロットは10%程度ということになる。「ワクチン関連死亡者」の50%近くが青ロットだともいう。 COVID-19のパンデミック騒動は2019年12月に中国の湖北省武漢でSARS(重症急性呼吸器症候群)と似た重症の肺炎患者が見つかったところから始まる。翌年の2月には、横浜港から出港しようとしていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でも似たような症状の患者が見つかり、人びとを恐怖させることになった。ハリウッドが制作してきたパンデミック映画を連想、「SARSと似た重症の肺炎患者」が街にあふれ、死者が急増すると信じた人もいるだろう。 中国ではSARSで効果があったインターフェロン・アルファ2bを使ったところ、2019年のケースでも効果があり、早い段階で沈静化させることに成功。駆虫薬として知られているイベルメクチンが有効だということはメキシコの保健省と社会保険庁が実際に使って確認した。また抗マラリア薬のクロロキンがコロナウイルスに対して有効だとする論文が2005年8月22日にウイルス・ジャーナルというNIH(国立衛生研究所)の公式刊行物に掲載されている。 WHO(世界保健機関)が2020年3月11日にパンデミックを宣言してからCOVID-19騒動は始まるが、その当時、死亡者が続出しているわけでもない。そもそもCOVID-19なる伝染病が蔓延している証拠はなかった。風邪やインフルエンザのような症状の患者をCOVID-19感染者と見做しただけである。 その後、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)で陽性になった人を感染者と見做すようになるが、これは特定の遺伝子型を試験管の中で増幅する分析のための技術で、診断に使うことは想定されていない。この技術を開発し、1993年にノーベル化学賞を受賞したキャリー・マリスもPCRを病気の診断に使うべきでないと語っていた。 増幅できる遺伝子の長さはウイルス全体の数百分の1程度にすぎず、増幅の回数(Ct値)を増やしていけば医学的に意味のないほど微量の遺伝子が存在しても陽性になるだけでなく、偽陽性を排除するためにはCt値を17以下にしなければならない。35を超すと偽陽性の比率は97%になるとも報告されている。ちなみに、国立感染症研究所が2020年3月19日に出した「病原体検出マニュアル」のCt値は40だ。 PCRで陽性になっても病気だとは言えないのだが、パンデミックを演出するためには感染者数を爆発的に増やさなければならない。そこで現れたタグが「無症状感染者」だ。 アメリカではCOVID-19の感染を調べるため、「2019年新型コロナウイルス(2019-nCOV)リアルタイムRT-PCR診断パネル」を採用、EUA(緊急使用許可)を発行していた。 しかし、CDC(疾病予防管理センター)は2021年7月にこのパネルを同年12月31日に取り下げると発表する。この診断パネルはインフルエンザA型とインフルエンザB型も検出できるとされていたが、コロナウイルスとインフルエンザウイルスを区別できないようだ。「旧型」コロナウイルスと「新型」コロナウイルスの区別もできないのだろう。 コロナウイルスであれ、インフルエンザウイルスであれ、人間の免疫システムは対応できる。インターフェロン・アルファ2bはリンパ球を刺激して免疫能力を高める働きがあるとされ、吉林省長春に製造工場がある。イベルメクチンも有効だとされているが、それ以外でも免疫力を高める薬は存在する。 こうした薬を使わせず、「ワクチン」というタグをつけた遺伝子操作薬をWHOをはじめとする医療利権は接種させてきた。副作用の爆発的な発症は隠しきれなくなり、大半の国は2022年に入ると接種をやめている。そうした中、例外的に接種を進めた国が日本だ。 その日本では昨年10月13日、「マイナンバーカード」と健康保険証を一体化させる計画の概要を岸田文雄内閣が発表した。それにともない、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止するという。マイナンバーカードで遺伝子操作薬の接種歴、ロット番号、そして接種後の治療歴もわかるはずで、「COVID-19ワクチン」プロジェクトを進めてきたアメリカ国防総省にとって貴重なデータになる。岸田は命令に従うしかない。
2023.07.01
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次期アメリカ大統領に選ばれたドナルド・トランプが11月7日にロシアのウラジミル・プーチン大統領と電話でウクライナにおける戦争について話し合ったとワシントン・ポスト紙が10日に報じたが、ロシア政府のドミトリー・ペスコフ報道官はそれを否定、トランプの広報担当スティーブン・チュンもこのやりとりを認めていない。またウクライナ外務省は、キエフがトランプとプーチン大統領の電話会談について事前に知らされていたという報道は誤りだと述べた。 ワシントン・ポスト紙を含む西側の有力メディアは支配層が人びとを操る道具にすぎないことは明確になっている。今回の記事を書いた記者は「ロシアゲート」なるフィクションを宣伝していたひとりでもある。有力メディアは人びとに幻影を見せ、支配層が望む方向へ国を進めるのが役割であり、ワシントン・ポスト紙が事実を伝えると考えることはできない。 トランプがプーチンに対してウクライナ戦争をエスカレートさせないよう助言、アメリカがヨーロッパにかなりの軍事力を有していることを思い起こさせたと同紙は伝えているのだが、現在、ウクライナ軍は戦死者の山を築きながら後退している状況。ロシア軍は進撃のスピードを速めていると伝えられている。またロシア軍と戦うだけの戦力はヨーロッパに配備されていない。「エスカレート」なる表現が入り込む余地はないのが実態。 ウクライナで戦争を始めたネオコンは「膠着状態」を演出したかったのか、8月6日に1万人から3万人の兵力でロシアのクルスクへ軍事侵攻した。国境警備隊しか配置されていないクルスクを狙ったのかもしれないが、ロシア軍はすぐに航空兵力などで反撃を開始、さらに予備部隊が投入されてウクライナ軍は壊滅的な打撃を受けている。増援部隊を投入しようとしたとも言われているが、成功しなかったようだ。 この軍事作戦には虎の子の「精鋭部隊」が投入されているが、兵士の数が圧倒的に足りないため、アメリカ、イギリス、フランス、ポーランド、コロンビアなどから特殊部隊や傭兵が参加、東アジアからもウクライナ側へ兵士が派遣されているとする噂もある。 この作戦でウクライナ側はすでに3万1000人以上が死亡したとも言われている。戦死者の遺体交換でロシアは563体をウクライナ側へ引き渡し、ウクライナは37体をロシア側に引き渡したとも言われ、こうしたことからウクライナ軍の戦死者数はロシア側の10倍以上だと見られている。ネオコンはウクライナ兵に「玉砕攻撃」を繰り返させ、ロシア兵の死傷者を増やそうとしたようだが、成功したとは言えない。 プーチンはアメリカ側と話し合う用意があるとしているが、西側に対する信頼を失っているロシア政府は軍事力で解決するしかないと覚悟しているはずで、米英が得意とする「幻術」は通用しない。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーはイギリスの情報機関、イギリスの対外情報機関SIS(通称MI-6)のエージェントで、MI6長官のリチャード・ムーアがハンドラーとして操っているとスコット・リッターは自身が作成した2部構成のドキュメント「エージェント、ゼレンスキー」の中で指摘した。(パート1、パート2)イギリス、あるいはシティは厳しい状況に陥っている。 リッターはアメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官。調査にはフランスの元情報機関員エリック・デネーゼが協力している。**********************************************【Sakurai’s Substack】
2024.11.12
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ドナルド・トランプ米大統領は速攻を仕掛けているようだ。バラク・オバマ第44代大統領の「チェンジ」が口先だけだったのとは違って速いペースで「チェンジ」を実行、ヒラリー・クリントンを担いでいたネオコンなどの勢力は慌てているだろう。 ヒラリーの周辺にはマデリン・オルブライト(ズビグネフ・ブレジンスキーの弟子)、ビクトリア・ヌランド(ネオコンで、ロバート・ケイガンの妻)、フーマ・アベディン(サウジアラビアで育ち、母親はムスリム同胞団の幹部。元夫のアンソニー・ウェイナーはネオコン)がいる。オバマ政権で国家安全保障担当補佐官を務めたスーザン・ライスの母親はオルブライトの友人で、スーザン自身、オルブライトから学んでいる。ヒラリーは上院議員時代、巨大軍需企業ロッキード・マーチンの代理人とも呼ばれるほど戦争ビジネスと近い関係にあることでも有名だ。 外部に漏れ出たヒラリーの電子メールを見ると、リン・フォレスター・ド・ロスチャイルド(エベリン・ド・ロスチャイルドの妻)と頻繁に連絡を取り合っていることがわかる。国務長官時代にジョージ・ソロスの指示に従って政策を決めていたことも明らかにされた。 このソロスはナイル・トーベを介してジェイコブ・ロスチャイルドにつながり、そのジェイコブも所属する金融機関N・M・ロスチャイルドにリチャード・カッツを通じてつながる。このN・M・ロスチャイルドにはエベリン・ド・ロスチャイルドもいる。またジョージ・カールワイツによってソロスはエドモンド・ド・ロスチャイルド・グループとつながっている。 こうした背景を持つヒラリーは遅くとも2015年6月の段階でオバマの次の大統領に内定していたと言われている。この年の5月26日の時点で民主党の幹部がヒラリー・クリントンを候補者にすると決めたことを示唆する電子メールが存在しているほか、6月11日から14日かけてオーストリアで開かれたビルダーバーグ・グループの会合にヒラリーの旧友であるジム・メッシナが参加しているからだ。 その流れが変化したと言われたのは昨年2月。ヘンリー・キッシンジャーが2月10日にロシアを訪問、ウラジミル・プーチン露大統領と会談し、22日にはシリアで停戦の合意が成立した。そこで、アメリカ支配層の一部がロシアと協調する道を選んだ可能性があると考えられたのである。 キッシンジャーはネルソン・ロックフェラーと親しいことで知られているが、デイビッド・ロックフェラーと親しいズビグネフ・ブレジンスキーもアメリカが地球規模の帝国ではなくなったと認めるようになる。アメリカを唯一の超大国と位置づけ、潜在的なライバルを単独で先制攻撃するとした1992年2月のDPG(通称ウォルフォウィッツ・ドクトリン)を軌道修正しようとしているように見える。 このドクトリンは名前の通り、ポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)が中心になって作成され、その後もネオコンの基本戦略になってきた。このウォルフォウィッツが1991年の段階で、シリア、イラン、イラクを5年から10年で殲滅すると口にしたという。欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官だったウェズリー・クラークがそのように話している。 クラークによると、2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントンにある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたてから10日後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺では攻撃予定国のリストが作成され、イラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが載っていたという。 2003年3月にジョージ・W・ブッシュ大統領は国防総省内の反対意見を押し切り、約1年遅れでイラクを先制攻撃、サダム・フセイン体制を倒した。その後も軍事作戦は続き、破壊と殺戮は今でも続いている。 そして2007年、調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュはニューヨーカー誌で、アメリカ(ネオコン)、イスラエル、サウジアラビアは手を組み、シリアやイランをターゲットにした秘密工作を開始、ヒズボラが拠点にしているレバノンを攻撃すると書いた。イランにもアメリカの特殊部隊JSOCが潜入して活動中だとしている。 そうした秘密工作は「スンニ派過激派」つまりアル・カイダ系武装集団の勢力拡大につながるとハーシュは指摘するが、サウジアラビアなどは「スンニ派過激派」をイランよりましだとしている。少なくともその後にネオコンも同じ考え方をするようになった。 ネオコンは1980年代からイラクのフセイン体制を倒すべきだと主張していたが、それはヨルダン、イラク、トルコの親イスラエル国帯を築いてイランとシリアを分断、両国を倒す、あるいは弱体化するためだった。ジョージ・H・W・ブッシュなど石油資本に近いグループはフセイン体制をペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤と位置づけていたので、ロナルド・レーガン大統領の時代にはネオコンと対立している。
2017.01.31
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マイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が2月13日に辞任した。事実上の解任だ。ヒラリー・クリントンを担いでいたネオコンなど好戦派はロシアとアメリカのと関係改善、いわは「デタント」を推進すると公言していたドナルド・トランプを憎悪、その背後にいたフリンを排除しようと必死だった。 前回も書いたようにフリン攻撃の拠点のひとつはCIAだが、首席戦略官のスティーブ・バノンも同じ立場で、反フリンの波はトランプ政権の内部にも押し寄せていた。そうした波を侵入させるルートのひとつだと考えれているのが大統領の娘イバンカ。彼女が結婚したジャレッド・クシュナーは大統領の顧問を務め、その父親でドナルド・トランプの同業者でもあるチャールズは上級顧問になっているのだが、ユダヤ系なのだ。ユダヤ系の影響力という点では、多額の選挙資金を寄付したカジノ経営者、シェルドン・アデルソンも忘れてはならない。 今回の辞任劇はワシントン・ポスト紙が先陣を切った。トランプが大統領に就任する1カ月ほど前、フリンがセルゲイ・キスリャクと話をし、その中でアメリカがロシアに対して行っている「制裁」を話題にしたことが問題だと報じたのだ。 この「制裁」とはキエフのクーデター政権がクリミアにあるセバストポリの基地を制圧に失敗したことなどに対する腹いせだと言えるだろう。1997年にウクライナとロシアとの間で締結された協定でロシアはこの基地を20年間使え、さらに25年間の延長が認められていた。それに伴ってロシア軍は2万5000名の駐留が可能になり、実際は1万6000名のロシア兵が駐留していた。クーデター直後、西側の政府やメディアは「侵略軍」だと宣伝していたのはこの駐留軍だ。 クーデターを拒否する住民が多かったクリミアでは3月16日にロシアの構成主体になることの是非を問う住民投票が実施され、80%の有権者が参加、その95%以上が加盟に賛成し、すぐに防衛体制に入った。 この住民投票では国外から監視団が入り、公正なものだったことが確認されているが、その投票結果を認めるわけにはいかない西側の支配層は投票に不正があったと宣伝している。ネオ・ナチが憲法の規定を無視して実権を握ったキエフの暫定政権を正当だとする一方、クリミアの「民意」は認めないというわけだ。 このクーデターは2013年11月21日にキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)で始まったが、その前日、議会ではオレグ・ツァロフ議員がクーデター計画の存在を指摘していた。ツァロフ議員によると、ウクライナを内戦状態にするプロジェクトをアメリカ大使館はジェオフリー・パイアット大使を中心に準備、NGOがその手先として動くことになっていたという。 抗議活動が広がる中、EUは話し合いでの解決を模索するのだが、それに激怒していたのがビクトリア・ヌランド国務次官補。2014年2月4日にYouTubeへアップロードされたヌランドとパイアットとの会話では次期政権の人事について話し合われ、ヌランドはアルセニー・ヤツェニュクを強く推していたが、その一方で「EUなんかくそくらえ(F*ck the EU)」と口にしている。ちなみに、ヤツェニュクは実際、クーデター後、首相に就任した。 その音声が公開された後、2月18日頃からネオ・ナチが前面に出て来て暴力が激しくなる。棍棒、ナイフ、チェーンなどを手にしながら、石や火炎瓶を投げ、ピストルやライフルで銃撃を始めたのだ。 当時、広場をコントロールしていたのはネオ・ナチの幹部として知られているアンドレイ・パルビー。この人物はソ連が消滅した1991年にオレフ・チャフニボクと「ウクライナ社会ナショナル党(後のスボボダ)」というネオ・ナチ系の政党を創設、クーデター後には国家安全保障国防会議(国防省や軍を統括する)の議長に就任、2014年8月までその職にあった。同年9月にはヤツェニュクたちと新たな政党「人民戦線」を組織して議員になる。 広場では無差別の狙撃があり、少なからぬ犠牲者が出た。西側の政府やメディアは狙撃をビクトル・ヤヌコビッチ政府側によるものだと宣伝したが、スナイパーがいたのはパルビーの管理下にあったビル。2月25日にキエフ入りしたエストニアのウルマス・パエト外相は事実が逆だと報告している。 反大統領派で医師団のリーダー格だったオルガ・ボルゴメツなどから聞き取り調査をした結果で、その内容を26日にEUの外務安全保障政策上級代表(外交部門の責任者)だったキャサリン・アシュトンへ電話で報告する。 「全ての証拠が示していることは、スナイパーに殺された人びと、つまり警官や街に出ていた人たち双方、そうした人びとを同じスナイパーが殺している。同じ筆跡、同じ銃弾。実際に何が起こったかを新連合(暫定政権)が調査したがらないほど、本当に当惑させるものだ。スナイパーの背後にいるのはヤヌコビッチでなく、新連合の誰かだというきわめて強い理解がある。」 勿論、この報告はアシュトンにとって都合の悪い事実で、封印してしまった。 クーデター後、アメリカの傭兵会社、アカデミ(旧社名はブラックウォーター。2009年からXe、10年から現社名)系列のグレイストーンは400名の戦闘員を派遣、アカデミはウクライナ政府の要請で射撃、市街戦、接近戦、兵站などの訓練をしたようだ。また、アメリカ政府は訓練のためにCIAやFBIの専門家数十名を顧問として派遣、国防総省は戦略と政策の専門家チーム、つまり軍事顧問団をキエフへ送り込んでいる。2014年4月23日には第173空挺旅団をポーランド、エストニア、ラトビア、リトアニアへ派遣した。 空挺団が派遣される11日前、4月12日にジョン・ブレナンCIA長官がキエフを極秘訪問し、4月22日にはジョー・バイデン米副大統領がキエフを訪問、それにタイミングを合わせるようにしてオデッサでの工作に関する会議が開かれている。この会議に出席したのは大統領代行、内相代行、SBU(情報機関)長官代行、そしてユーロマイダンの惨劇を演出したパルビー、さらにオブザーバーとしてドニエプロペトロフスクの知事で三重国籍のシオニスト、イゴール・コロモイスキー。 オデッサで反クーデター派の住民が虐殺されのは会議の10日後。その数日前にパルビーは数十着の防弾チョッキをオデッサのネオ・ナチへ運んでいる。その装具を受け取ったミコラ・ボルコフは虐殺の当日、労働組合会館へ向かって銃を発射、状況をキエフの何者かに報告する様子が映像に残っている。 虐殺は午前8時に「サッカー・ファン」を乗せた列車が到着したところから始まる。赤いテープを腕に巻いた人びとがフーリガンやネオ・ナチを抗議活動が行われていた広場へ誘導したのだ。誘導した集団は「NATOの秘密部隊」だと疑われているUNA-UNSOだと言われている。 虐殺を仕掛けたグループは、住民を労働組合会館の中へ誘導、そこが殺戮の舞台になった。殺戮の現場を隠すことが目的だったとも推測されている。48名が殺され、約200名が負傷したと伝えられているが、これは確認された数字で、住民の証言によると、多くの人びとが地下室で惨殺され、犠牲者の数は120名から130名。虐殺の調査をキエフ政権は拒否、その政権の後ろ盾になってきた西側も消極的で、実態は今でも明確になっていない。 オデッサの虐殺から1週間後の5月9日、ソ連がナチスに勝ったことを記念する戦勝記念日にキエフ軍の戦車がドネツク州マリウポリ市に突入、住民が殺された。記念日を狙ったのは心理的なダメージを狙っただけでなく、住民が街頭に出てくることを見越してのことだったと言われている。5月11日に予定されていた住民投票を止めさせることも目的だっただろうが、予定通りに投票は行われ、独立の意思が明確になった。 それに対し、6月2日にデレク・チョレット米国防次官補がキエフ入りし、そのタイミングでキエフ軍はルガンスクで住宅街を空爆、建物を破壊し、住民を殺し始めた。民族浄化作戦の始まりだ。この戦乱は今でも終結せず、ここにきてNATOがロシアとの国境近くで威嚇的な演習を実施、キエフ軍によるドンバスへの攻撃は激しくなっている。 ロシアを制圧するというアメリカ支配層の目論見は崩れ、その報復として行っているのが「制裁」なのだが、この「制裁」はロシアを助けることになっていると指摘する人もいる。ロシア経済に対する西側巨大資本の影響力を弱め、生産活動を活性化させたというのである。「制裁」の解除をロシア政府は歓迎しないだろうともいう。フリンがこの「制裁」についてロシア側と話し合ったことを問題にするのは、「制裁」がロシアにダメージを与えているという妄想に基づいている。そうした様子を見ている世界の人びとがアメリカに見切りをつける可能性も小さくない。
2017.02.15
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アメリカとイランとの間の軍事的な緊張が高まり、アメリカ軍は空母エイブラハム・リンカーンを中東へ派遣した。イランに圧力を加えようとしているわけだが、イラン側は戦闘になればミサイルで撃沈すると警告している。 すでに空母が海軍の主役である時代は過ぎ去った。新しい時代の到来を告げる戦闘は1982年のフォークランド戦争。この戦いではイギリスの艦隊がアルゼンチンのエグゾセに苦しめられている。その後、ミサイルの性能は格段に向上、今回のイランによる警告を単なる脅しと考えるべきでない。イランはカデルやヌールといった対艦ミサイルを保有している。 フォークランド戦争の場合、イギリスのマーガレット・サッチャー首相はフランスのフランソワ・ミッテラン大統領に対し、ミサイルを無力化するコードを教えるように強く求めたとも伝えられている。教えなければブエノスアイレスを核攻撃すると脅したのだという。 この情報の信頼度は不明だが、エグゾセにはそうした仕組みがあったとしても、イランの場合はコードで無力化することはできないだろう。ロシアの高性能ミサイルが供給されている可能性もないとは言えない。 アメリカ軍はカタールに複数のB-52爆撃機を派遣しているようだが、空母を撃沈した場合はテヘランを核攻撃するという脅しなのだろう。空爆を試みた場合、イランの防空システムに撃墜されることもありえる。 第1次世界大戦が終わって間もない1919年にイギリスは石油利権を手に入れるためにペルシャを保護国にする。その2年後に陸軍の一将校にすぎなかったレザー・ハーンがテヘランを占領、25年にカージャール朝を廃して「レザー・シャー・パーレビ」を名乗るようになる。 第2次世界大戦後にイランは独立の道を歩み始め、1951年4月には議会での指名を受けて国王が首相に任命したムハマド・モサデクはAIOC(アングロ・イラニアン石油、後のBP)の国有化を決める。 当時、イランの石油利権はイギリスを支える重要な柱になっていた。1951年10月にウィンストン・チャーチルが首相に返り咲くとイギリスはクーデターに向かって加速していく。クーデターを実行するためにチャーチルが再登場したとも言える。 しかし、イギリスには自力でモサデクを排除することができない。そこでアメリカの力を借りることにし、ウォール街の大物、アレン・ダレスに接近する。1953年にドワイト・アイゼンハワーがアメリカの大統領に就任、クーデターを実行するための環境は整った。 アメリカのCIAやイギリスのMI6はエージェントをイランへ送り込み、モサデク側の軍幹部を殺していく。そして1953年6月にジョン・フォスター・ダレス国務長官はモサデク政権を転覆させる準備の許可を弟のアレンCIA長官に出している。そして作られたクーデター計画が「エイジャクス作戦」。作戦遂行のための資金を動かしていたのは、後にロッキード事件でも名前が出てくるディーク社だ。 このクーデターは成功、外国の巨大資本と結びついたパーレビ体制が復活した。その体制を守るためにSAVAKという組織がCIAやイスラエルのモサドの協力を得て創設される。拷問や尋問のテクニックはモサドから学んだのだという。 1979年1月、ムハマド・レサ・パーレビ国王が王妃とともに国外へ脱出して王制は倒れる。アメリカなどが最も恐れたのはムジャヒディン・ハルクのようなマスクス主義勢力の体制ができること。そこでイスラム勢力と西側支配層は接触している。 この年の11月に「ホメイニ師の路線に従うモスレム学生団」を名乗るグループがテヘランのアメリカ大使館を占拠、機密文書を手に入れる一方、大使館員など52名を人質にとった。 アメリカでは1980年に大統領選挙が予定されていたが、人質が解放されるかどうかは選挙結果に影響する可能性がある。そこで共和党側(ロナルド・レーガン陣営やジョージ・ブッシュ陣営)はイランの革命政権に対し、人質の解放を遅らせるように働きかけた。その代償は資産凍結の解除と武器の提供。選挙ではレーガンが勝利、ブッシュは副大統領に就任した。 イランの王制が倒された際、イスラム勢力に負けたムジャヒディン・ハルクのメンバーはイラクへ逃れ、それまでのイデオロギーを放棄する。マスード・ラジャビとマリアム・ラジャビの下、禁欲や睡眠制限などが強制され、既婚者は離婚させられるようになるなどカルト色を強めていく。現在、この組織はアメリカやイスラエルの手先として動いている。 1980年9月にイラク軍はイランの南部を攻撃、イラン・イラク戦争が始まる。イスラム革命直後で体制がまだ安定していないころのことだ。イランはアメリカから武器を受け取っていたが、その一方でアメリカの情報機関はイラクへ軍事情報を提供していた。アメリカの支配層はイランとイラクを戦わせて両国を疲弊させようとしていたと見られている。そうした中、イランはシリアとの関係を深めていく。 1980年代にネオコンはイラクのサダム・フセイン政権を倒して親イスラエル体制を築こうとしていた。そこで、フセインをペルシャ湾岸産油国の防波堤と見るアメリカ支配層の一部と対立することになる。この対立はイラン・コントラ事件やイラクゲート事件が発覚する原因になった。 ネオコンはイラクを親イスラエル国にしてシリアとイランを分断、個別撃破しようと目論んでいた。当時、トルコもヨルダンも親イスラエル国と見なされていた。 1991年、国防次官だったポール・ウォルフォウィッツはこの計画について口にし、2001年9月11日の攻撃で主導権を握ったネオコンはレバノン、リビア、ソマリア、スーダンを加えた7カ国を殲滅する計画を立てている。この計画通りにネオコンは侵略を進めてきた。 サダム・フセインに対する見方がネオコンと同じ勢力がサウジアラビアには存在する。1979年から2001年9月1日まで総合情報庁長官を務めたトゥルキ・アル・ファイサル、ブッシュ家と近く、2005年から15年まで国家安全保障会議の議長を、また12年から14年まで総合情報庁長官を務めたバンダル・ビン・スルタンたち。オサマ・ビン・ラディンはトゥルキの下で働いていた人物だ。バンダルもアル・カイダ系武装集団などを操っていた。
2019.05.12
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ドナルド・トランプ米大統領がエアフォース・ワンで5月25日に羽田空港へ到着した。そこから駐米大使公邸へ向かい、トヨタ自動車の豊田章男社長やソフトバンク・グループの孫正義会長など日本の企業経営者らとの会合に出席したという。アメリカ軍の横田基地ではなく羽田空港だったということは、今回の来日目的が威圧ではないということだろう。 本ブログでは何度か書いたが、日本の大企業はアメリカ支配層の政策に動揺している。明治維新以来、日本で支配者面している人びとはイギリスやアメリカの支配層に従属することで自分の地位と富を確保してきた。アングロ・サクソンの支配者に逆らうことは自らの地位と富を失うことを意味している。 しかし、中国とのビジネスなしに企業を存続させられない日本企業の経営者としてはロシアや中国が進める計画に乗る必要がある。ロシアは2015年から毎年ウラジオストックでEEF(東方経済フォーラム)を開催、ビジネスを通じて各国との関係を強化してきた。日本の経済界もロシアや中国との関係を悪化させたくないはず。そうした動きと日本企業のスキャンダル発覚は無縁でないだろう。 中国が進めている一帯一路をロシアのシベリア横断鉄道などにつなぐほか、北極海を経由してヨーロッパへ向かう航路も計画されている。北極海ルートはロシアの沿岸を進むことになるが、マラッカ海峡、スエズ運河、パナマ運河に比べてアメリカによる妨害を受けにくく、注目されている。 また、ロシアは天然ガスを運ぶパイプラインの建設にも熱心で、2014年以降、ヨーロッパ向け以上に中国への輸送に力を入れている。 極東地域の鉄道やパイプラインを延長、朝鮮半島を南下させようという計画もある。この計画にとって最大のネックは朝鮮だった。ソ連の大統領だったミハイル・ゴルバチョフに見捨てられた朝鮮は1990年代に統一教会から多額の資金を受け取る関係になっている。つまり朝鮮はCIAの影響下に入った。 その朝鮮を説得するため、2011年夏にロシアのドミトリ・メドベージェフ首相がシベリアで朝鮮の最高指導者だった金正日、つまり金正恩の父親と会っている。 その際、メドベージェフ首相は金正日に対し、110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにするだけでなく、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると提案している。ロシア政府は鉄道を南下させ、鉄道と並行してパイプラインを建設しようとしていたはずだ。 ところが、2011年12月に金正日が急死してしまう。朝鮮の国営メディアによると、12月17日に列車で移動中に車内で急性心筋梗塞を起こしたというが、韓国の情報機関であるNIS(国家情報院)の元世勲院長(2009年~13年)は暗殺説を唱えていた。 その後、後継者の金正恩はミサイルの発射実験を行ったり核兵器の開発をアピール、少なくとも結果として、東アジアの軍事的な緊張を高めることになった。ロシアの計画を進めにくい情況ができあがったわけである。(つづく)
2019.05.28
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エクアドル大使館の内部でイギリスの警察当局に逮捕されたジュリアン・アッサンジに対する司法手続がスウェーデンで再開された。6月3日にはスウェーデンの裁判所がアッサンジを審問する予定になっている。ところがアッサンジは健康状態が悪化してまともに会話できない状態で、病院で手当を受けていると報道されている。 未確認情報だが、すでにアッサンジは精神病の治療を施されていると伝えられていた。アメリカ空軍の退役中佐でNSAの仕事をしていたこともあるカレン・クワイトコウスキーが得た情報によると、そうした症状が出たのはイギリスとアメリカの当局者から尋問を受けた後だという。 アッサンジを尋問しているアメリカ人は国防総省、FBI、CIAに所属、BZ(3-キヌクリジニルベンジラート)という薬物が使用されているようだ。これを使うと幻覚を生じさせ、現実と幻覚を混乱させるほか、昏睡、物忘れなどを含む意識障害、あるいは運動失調症を引き起こすとされている。 言うまでもなく、この薬物を利用して情報を手に入れることはできない。そうした目的の薬物ではない。現在、CIAの長官を務めているジーナ・ハスペルは拷問を指揮してきた人物で、「血まみれジーナ」とも「薬物ジーナ」とも呼ばれている。BZはそのハスペルが拷問に使っていた薬物のひとつだともいう。 これが事実ならアッサンジは何らかの形で証言できない状態にさせられようとしているのかもしれない。アッサンジの起訴理由が認められるなら権力犯罪の追及は重罪だということになる。つまりジャーナリズムの否定であり、言論の自由の否定でもある。 そうした批判を回避するためなのか、アメリカではウィキリークスへ情報を提供したブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)を脅している。 マニングは2010年5月に逮捕されて懲役35年を言い渡されたが、2017年5月に釈放された。ところが今年(2019年)3月、アッサンジに対する弾圧を正当化する証言をマニングが拒否したことから裁判所は再収監を命令した。外へ出られたのは5月9日。 ところが、裁判所は再びマニングに証言を要求、それを拒否したことから刑務所へまた入れられた。服役中、60日までは毎日500ドル、それ以降は1000ドルの罰金も課せられる。アメリカの裁判システムはマニングに偽証を強要している。 安倍晋三政権に限らず、歴代の日本政府は日本とアメリカは共通の価値観を持っていると公言してきた。すでに大手の新聞、雑誌、放送局などは事実の追求を放棄、支配層の発表を垂れ流すだけになっているが、細々と事実を追い求め、発表することも難しくなるかもしれない。
2019.05.30
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アメリカのジョン・ボルトン国家安全保障補佐官が6月22日にイスラエルを訪問、23日にベンヤミン・ネタニヤフ首相とイランを巡る問題について話し合い、24日と25日にはボルトンのほかイスラエルで国家安全保障担当の顧問を務めるメイア・ベン・シャバトやロシアのニコライ・パトルシェフ安全保障会議長官が会合を開く。 その直前、6月13日にオマーン沖で日本の国華産業が運行する「コクカ・カレイジャス」(パナマ船籍)とノルウェーのフロントラインが所有する「フロント・アルタイル」(マーシャル諸島船籍)が攻撃され、6月20日にはアメリカ海軍の無人偵察機MQ-4C トライトン(RQ-4 グローバルホークのアメリカ海軍向けドローン)がイランの防空軍に撃墜されている。 タンカーが攻撃された直後、アメリカ中央軍は「コクカ・カレイジャス」から機雷を除去している「イランの船員」の様子を撮影したとする映像を公開したが、国華産業の堅田豊社長6月14に開かれた記者会見で攻撃の際に乗組員が「飛来物」を目撃していたことを明らかにし、「間違いなく機雷や魚雷ではない」と発言、「イランによる攻撃」というアメリカ側の偽旗作戦は不発に終わった。 ドローンが撃墜された後、イラン側は徐々に詳しい情報を明らかにしている。22日にはジャビアド・ザイフ外相がドローンの詳しい航跡図を公表、撃墜地点がイランの領海内だということを強調、同時に回収された残骸も明らかにした。 偽旗作戦の失敗を受け、ボルトンとネタニヤフは次の一手について協議したかもしれないが、世界の目は冷たい。ロシアのアメリカに対する姿勢も厳しくなった。 2014年2月のウクライナでバラク・オバマ政権がネオ・ナチを使ったクーデターを実行した後、ウラジミル・プーチン大統領の姿勢は変わり、15年9月にはシリア政府の要請で同国へ軍事介入したが、それ以降もロシアのアメリカに対する姿勢は厳しくなっている。 アメリカの属国である日本もイランの問題ではアメリカに同調しきれていない。アメリカの支配層に従うことで自らの地位と財産を維持している日本のエリートたちだが、イランの問題ではアメリカに従うと自らの地位と財産が揺らぐ可能性がある。腐敗したエリートが支配的な位置から陥落した場合、落ちていく先は刑務所だ。
2019.06.24
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安倍晋三政権が韓国に対する半導体の製造に必要な材料の輸出規制を強化、日本と韓国との関係がこれまで以上に悪化する様相を見せている。韓国政府はアメリカと話し合いを始めたようだが、元徴用工の問題と同じように、今回の問題も震源地はアメリカだろう。日本政府が独断でできるようには思えない。 フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の輸出許可手続きを厳密化、輸出先として信頼できる国のリストから韓国を外す手続きを安倍政権は進めているのだが、その結果、韓国のサムスン(三星)電子、SKハイニックス、LGディスプレイといったメーカーはダメージを受けているのだろうが、同時にそうした企業と取り引きしてきた日本企業にとっても痛手になる。 元徴用工の問題と半導体の問題はつながっていると韓国では見ているようだが、そう思われても仕方はない。その元徴用工の問題が注目されるようになったのは昨年(2018年)10月のこと。韓国の大法院(最高裁)が新日鉄住金に対して元徴用工へ損害賠償合計4億ウォンを支払うように命じる判決を出したのである。 この問題に関係している日本企業はこうした展開になることは予想していたはずで、訴えられた企業は和解の道を探っていた。今後のビジネスを考えても、それが得策だ。その動きを安倍政権は潰したと言われている。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、明治維新から現在に至るまで日本の支配構造は基本的に変化していない。その連続性を象徴する人物がウォール街の中枢から大使として日本へ派遣されていたジョセフ・グルーだ。第2次世界大戦の前、グルーが所属するウォール街は親ファシストで、ニューディール派を敵視していた。そのため、フランクリン・ルーズベルトが大統領に当選すると、クーデターを計画したわけだ。 関東大震災以降、グルーと緊密な関係にあるJPモルガンが日本に大きな影響力を及ぼしていた。この巨大金融資本は親ファシズムだ。この問題と向き合わないようにするため、「軍国主義」というタグが使われているのではないだろうか。 このJPモルガンはロスチャイルドから派生した。明治維新はそのロスチャイルドを含むイギリスの支配層から強い影響を受けていた。清(中国)を侵略するためにイギリスはアヘン戦争を仕掛けたのだが、本ブログでも指摘したように、大陸を支配するための戦力がなかった。イギリスが日本の軍備増強を支援した理由はそこにある。傭兵にしようとしたのだ。そして作り出されたのが天皇制官僚国家。これが日本の国体だ。 イギリスの手先として日本は琉球を併合、台湾へ派兵、江華島で軍事的な挑発、日清戦争、日露戦争と大陸侵略を進めていく。モスクワが革命で揺れていたとはいえ、戦争が長引けば日露戦争で日本が勝つことは難しかった。そこで、棍棒外交で有名なシオドア・ルーズベルト米大統領が仲裁のために登場してくるわけである。 日清戦争で日本が勝利した1895年、日本の三浦梧楼公使たちは朝鮮の閔妃(明成皇后)を含む3名の女性を惨殺した。その際、性的な陵辱を加えているのだが、筆者個人の経験では、そうした日本側の行為に憤っている韓国のエリートは今でもいる。なお、暗殺に加わった三浦公使たちを日本の裁判官は「証拠不十分」で無罪にしている。その後、三浦は枢密院顧問や宮中顧問官という要職につく。 日本でどのような教育や宣伝がなされても、少なからぬ韓国人は日本に支配されていた時代を忘れてはいない。何かの切っ掛けで、そうした感情は噴出する。今回、韓国で日本製品の不買運動が始まっているようだが、当然の結果だ。 元徴用工の問題も日本による支配の中で生じたのであり、安倍政権の言動はそうした感情を噴出させることが目的だったとしか思えない。安倍政権には中国との関係を破壊しようとした菅直人政権と同じものを感じる。 ロシアや中国との関係を強める韓国を引き戻すために脅しているのかもしれない。日本に脅させ、アメリカが「白馬の騎士」として登場するつもりかもしれないが、安倍政権の行動は韓国の自立を促進、ロシアや中国へ追いやる可能性がある。そうしたことがロシアや中国でも起こった。
2019.07.17
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香港で大規模な抗議活動が続いているが、その背後でアメリカとイギリスが蠢いていることは本ブログでも指摘してきた。前にも書いたように、3月や5月には活動の指導者、例えば李柱銘(マーチン・リー)がアメリカを訪れ、マイク・ポンペオ国務長官やナンシー・ペロシ下院議長らと会談している。 2014年9月から12月まで続いた「佔領行動(雨傘運動)」の際、李柱銘はワシントンDCを訪問、NEDで物資の提供や政治的な支援を要請している。そのほかの指導者には香港大学の戴耀廷(ベニー・タイ)副教授、陳日君(ジョセフ・ゼン)、黎智英(ジミー・ライ)が含まれ、余若薇(オードリー・ユー)や陳方安生(アンソン・チャン)も深く関与していた。黎智英はネオコンのポール・ウォルフォウィッツと親しいとも言われている。NEDはCIAの工作資金を流すための組織だ。 中国政府が新自由主義路線を修正しようとしていた1989年に学生による抗議活動があった。その背景として同年1月にアメリカ大統領となったジョージ・H・W・ブッシュの存在を忘れることはできない。 この人物はジェラルド・フォード政権の時代、1976年から77年にかけてCIA長官を務めている。同政権のデタント派追放の一環でウィリアム・コルビーがCIA長官を解任されたことにともなうものだ。 当時、ブッシュを情報活動の素人だとする人が少なくなかったが、実際はエール大学時代にCIAからリクルートされていた可能性が高い。その辺の事情は本ブログでも説明した。 ブッシュが親しくしていたCIA高官のジェームズ・リリーもエール大学の出身。そのリリーをブッシュは1989年4月に中国駐在大使に据える。 ちなみに、その前任大使であるウィンストン・ロードもエール大学の出身で、3人とも学生の秘密結社スカル・アンド・ボーンズのメンバーだったと言われている。 リリーが大使に就任する5日前に胡耀邦が死亡、それを切っ掛けにして天安門広場で大規模な抗議活動が始まる。その活動には投機家のジョージ・ソロスから中国改革開放基金などを通して資金が流れ込み、リリーをはじめとするCIA人脈が関係していたことがわかっている。 そうした活動の指導グループには方励之、柴玲、吾爾開希などが含まれていたが、こうした人びとは抗議活動が沈静化した後、イエローバード作戦(黄雀行動)と呼ばれる逃走ルートを使って国外へ脱出している。 その際、中継地になったのが香港。そこからフランスを経由してアメリカへ逃れた。このルートを運営していたのはアメリカのCIAとイギリスのSIS(通称MI6)だ。1989年の抗議活動から今回の香港での活動まで、その主体は基本的に変化していない。 今回の抗議活動で隠れた形になっているが、アヘン戦争の象徴的な存在でもあるHSBC(香港上海銀行)のCEOだったジョン・フリントが解任され、約4000名が解雇されるという。理由は不明である。 香港の混乱の背景には中国と米英の対立があるわけだが、アメリカは中国に対して経済戦争を仕掛けてきた。それに対して中国はアメリカ産農産物の輸入規制を打ち出し、アメリカは通貨戦争を始めた。 そのアメリカでイスラエルのモサドやアメリカのFBIと関係していると伝えられているジェフリー・エプシュタインが逮捕された。小児性愛の有力者に子どもを提供していたと言われ、その様子を録音、録画して脅しの材料に使っていたと考えられている。 エプシュタインは10年ほど前にも摘発されているが、そうした事情からその時の判決は「寛大」なものだった。その時に地方検事として事件を担当したアレキサンダー・アコスタによると、エプシュタインは「情報機関に所属している」ので放っておけと言われたという。 このエプシュタインの経歴を調べていくと、FBI長官を長く務めたJ・エドガー・フーバーに近く、レッド・パージで重要な役割を演じ、ドナルド・トランプの顧問弁護士を務めたロイ・コーン、さらに禁酒法時代に大儲けした大手酒造業者のルイス・ローゼンスティールなどの名前が出てくる。 つまり、通常ならエプシュタインの事件はもみ消されるか有耶無耶にされる。エスタブリッシュメントを揺るがすことになりかねないからだ。そのエプシュタインが逮捕され、厳罰に処される可能性が出てきたのはなぜか? アメリカと中露との対立だけでなく、アメリカ支配層の内部での対立が強まっている可能性がある。
2019.08.06
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今から96年前、1923年の9月1日午前11時58分に東京周辺は巨大地震に襲われた。被災者は340万人以上に及び、死者と行方不明者を合わせると10万5000名以上、損害総額は55億から100億円に達していたと言われている。 その直前、8月24日に加藤友三郎首相が死亡、山本権兵衛が組閣している最中だったことから政府は機能していない。そうした中、水野錬太郎内相と赤池濃警視総監が震災対策の責任者になる。両者は朝鮮の独立運動を弾圧したコンビだ。 1日の夕方になると「社会主義者や朝鮮人の放火が多い」、「朝鮮人が来襲して放火した」、「不逞鮮人が来襲して井戸への投毒・放火・強盗・●姦をする」といった流言蜚語が飛び交いはじめ、2日夜に警視庁は全国へ「不定鮮人取締」を打電して戒厳令も施行された。 こうした雰囲気が社会に蔓延、少なからぬ朝鮮人が虐殺されている。どういうプロセスでこうした流言蜚語が広まったのかは不明だが、その結果として数千人の朝鮮人や中国人が殺されたと言われている。さらに社会主義者やアナーキストが虐殺されているが、そうした犠牲者のひとりがアナーキストの大杉栄だ。彼は妻の伊藤野枝や甥の橘宗一とともに憲兵大尉だった甘粕正彦に殺されたのである。地震当時、東京に住んでいた人の話では、焼き殺された朝鮮人もいたようだ。実行者は日本の庶民にほかならない。 その時、千駄ヶ谷では伊藤圀夫という日本人が朝鮮人に間違われ、殺されそうになっている。伊藤は後に俳優や演出家として活躍することになるのだが、その時には「千駄ヶ谷のコリアン」をもじり、「千田是也」と名乗った。 地震は日本の経済も揺るがした。そこで山本内閣の井上準之助蔵相は銀行や企業を救済するために債務の支払いを1カ月猶予し、「震災手形割引損失補償令」を公布している。すでに銀行が割り引いていた手形のうち、震災で決済ができなくなったものは日本銀行が再割引して銀行を救済するという内容だ。 銀行は地震に関係のない不良貸付、不良手形をも再割引したために手形の総額は4億3000万円を上回る額になる。しかも銀行の貸出総額の4割から7割が回収不能の状態だった。 そこで復興資金を調達するため、日本政府は外債の発行を決断、それを引き受けることになったのがJPモルガン。この巨大金融機関と最も強く結びついていた日本人のひとりが井上準之助である。1920年に対中国借款の交渉をした際にこの巨大金融機関と親しくなったという。 必然的にJPモルガンは日本に対して大きな影響力を持つようになり、緊縮財政と金本位制への復帰を求めてくる。1929年7月に誕生した浜口雄幸内閣がこの要求を実現、日本の経済状況を悪化させ、庶民は塗炭の苦しみをなめさせられることになった。その時の大蔵大臣は井上だ。 JPモルガンは1932年から33年にかけての頃、ニューディール派のフランクリン・ルーズベルト大統領を倒してファシズム体制を樹立する目的でクーデターを計画した。 この計画はアメリカ海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラー退役少将が阻止、議会でクーデターについて詳しく証言している。そのバトラー少将によると、ウォール街は金本位制に執着していた。 日本では金本位制へ復帰した結果、1932年1月までに総額4億4500万円の金が日本から流出、景気は悪化して失業者が急増、農村では娘が売られるなど一般民衆には耐え難い痛みをもたらすことになる。 そうした政策の責任者である井上は「適者生存」、つまり強者総取りを信奉、失業対策に消極的で労働争議を激化させることになる。こうした社会的弱者を切り捨てる政府の政策に不満を持つ人間は増えていった。 ルーズベルトを大統領にした選挙は1932年に実施されたが、その年にハーバート・フーバー大統領は駐日大使としてジョセフ・グルーを日本へ派遣する。この人物のいとこにあたるジェーン・グルーはジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア、つまりJPモルガンの総帥の妻だ。 グルーは日本の支配層に太いパイプがあり、秩父宮、近衛文麿、松平恒雄、徳川家達、幣原喜重郎、樺山愛輔、牧野伸顕、吉田茂、岸信介などと昵懇にしていた。その中で最も親しくしていた人物は松岡洋右。1941年12月に日本軍がハワイの真珠湾を攻撃、翌年の8月にグルーは日本を離れるが、最後にゴルフをした相手は岸だった。ちなみに、松岡の妹が結婚した佐藤松介は岸信介や佐藤栄作の叔父にあたる。 1932年に日本は「満州国」をでっち上げているが、そこで権勢を振るった「二キ三スケ」の中に松岡(スケ)と岸(スケ)は含まれている。そのほかのメンバーは東条英機(キ)、星野直樹(キ)、そして鮎川義介(スケ)だ。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、戦後日本のあり方を決めたジャパン・ロビーの中心にはジョセフ・グルーがいた。戦前レジームと戦後レジームはつながっている。(注)●は「強」
2019.09.01
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権力は情報と資金が流れる先に生まれ、強大化していく。新自由主義が世界を席巻していた1980年代、「トリクル・ダウン」なる政策が推進され、強者はより強く、弱者はより弱くなった。富裕層へ資金を流せば貧困層へも流れていくはずはないのだ。権力を握るためには資金と同じように情報を握ることも重要だ。支配者は情報を入手する仕組みを築く一方、被支配者が情報を入手できないようにする。 日本で導入された住民基本台帳ネットワークやマイナンバー制度は個人情報を集中管理するためのものだが、その情報は日本政府を経由してアメリカの私的権力へ伝えられるはずだ。 岸田文雄内閣は昨年10月13日、「マイナンバーカード」と健康保険証を一体化させ、現在使われている健康保険証を2024年の秋に廃止する計画の概要を発表したが、これは「カード取得の実質義務化」であるだけでなく、政府が接種を推進してきた「mRNAワクチン」の副作用を調べるためにも便利な制度だ。治験結果を集め、分析するためにもマイナンバーカード付きの健康保険証は必要なのだろう。 政府や自治体は個人情報を集め、保管しているが、銀行、クレジット会社、交通機関など私企業にも情報は存在している。それらを集めて一括管理、そして分析するシステムを米英の情報機関は開発してきた。おそらく中国やロシアでも研究されているだろう。 1970年代にアメリカではPROMISと名付けられたシステムがINSLAW社によって開発された。不特定多数のターゲットを追跡、情報を収集、蓄積、分析することができ、アメリカやイスラエルの情報機関だけでなく日本の検察も関心を持っていた。追跡するターゲットは反体制派、環境保護派、労働組合、ジャーナリスト、政敵、カネ、プルトニウム、あるいは全国民、全人類でもかまわない。 検察の人間でINSLAW社に接触したのは敷田稔。後に名古屋高検の検事長に就任する。敷田の上司だった原田明夫は後の検事総長。駐米日本大使館の一等書記官だった当時、原田もこのシステムを調べている。法務総合研究所は1979年3月と80年3月、このシステムに関する報告を概説資料と研究報告の翻訳として、『研究部資料』に公表している。 アメリカでは国防総省もそうしたシステムの研究開発を進めてきた。その中心であるDARPA(国防高等研究計画局)が開発したTIAは、個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータを含むあらゆる個人データが収集、分析されている。(William D. Hartung, “Prophets Of War”, Nation Books, 2011)2001年9月にはMATRIXと名づけられた監視システムの存在が報じられた。(Jim Krane, 'Concerns about citizen privacy grow as states create 'Matrix' database,' Associated Press, September 24, 2003) MATRIXを開発、運用していた企業はフロリダ州を拠点とするシーズント社で、同州知事でジョージ・W・ブッシュ大統領の弟、ジェブ・ブッシュも重要な役割を演じたとされている(Jennifer Van Bergen, "The Twilight of Democracy," Common Courage Press, 2005)が、ACLU(アメリカ市民自由連合)によると、シーズント社はスーパー・コンピュータを使い、膨大な量のデータを分析して「潜在的テロリスト」を見つけ出そうとしていた。 どのような傾向の本を買い、借りるのか、どのようなタイプの音楽を聞くのか、どのような絵画を好むのか、どのようなドラマを見るのか、あるいは交友関係はどうなっているのかなどを調べ、個人の性格や思想を洗い出そうとしたのだ。図書館や書籍購入の電子化、スマートテレビの普及などと無縁ではない。勿論、インターネット上でのアクセス状況も監視される。 かつて封書が通信の中心だった時代もあるが、電話の時代も過ぎ、最近はインターネットが利用されている。電子メールやそれに類する手段が一般的になっているが、このインターネットの前身は、ARPA(後のDARPA)が1969年に開発したARPANET(高等研究計画局ネットワーク)だ。ネットワーク局NBCのフォード・ローワンは1975年にARPANETがアメリカ人を監視するために使われていると伝えた。(Yasha Levine, “Surveillance Valley,” Hachette Book Group, 2018) 電話やインターネットのような電子技術を利用した通信手段を傍受する情報機関が存在する。アメリカのNSAやイギリスのGCHQが代表格である。この2機関は連携、UKUSAという連合体を編成、地球規模の通信傍受システムECHELONを開発した。1988年、この通信傍受システムの存在をダンカン・キャンベルは明るみに出したが、このジャーナリストは1970年代にGCHQの存在も明らかにしている。 カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの電子情報機関もUKUSAに加わっているが、NSAやGCHQの下で活動しているだけ。米英の機関と同等の立場で連携しているのはイスラエル軍の8200部隊だと言われている。この部隊はイスラエル軍の情報機関AMAN(イスラエル参謀本部諜報局)のSIGINT(電子情報)部門だ。 8200部隊は少なからぬ「民間企業」を設立、その一つであるカービンはあのジェフリー・エプスタインと関係が深い。カービンの重役は大半が8200部隊の「元将校」だ。エプスタイン自身もAMANのエージェントだったと言われている。 個人情報を収集するセンサーは人間の体内へ入ろうとしている。国連でも推進されているデジタルIDはチップ化され、それを体内にインプラントする計画があるのだ。 例えば、WEFのクラウス・シュワブは2016年1月にスイスのテレビ番組に出演し、そこでマイクロチップ化されたデジタル・パスポートについて話している。チップを服に取り付けるところから始め、次に皮膚や脳へ埋め込み、最終的にはコンピュータ・システムと人間を融合、人間を端末化しようと考えているようだ。 人間をサイバー・システムの一部にしようということだろうが、シュワブたちは、そのサイバー・システムにコンピュータ・ウィルスを蔓延させ、「パンデミック」を引き起こそうとしている疑いがある。
2024.05.07
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国連総会での演説で、シリアのワリド・アル・モアレム外相は安全保障理事会には「テロリズム」を支援している国が存在していると非難した。昨年の春からアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、カタール、サウジアラビアなどの国々がシリアの反政府軍を支援していることは本ブログで何度も書いたこと。反政府軍へは対空ミサイルや対戦車ミサイルも提供されている。 ウェズリー・クラーク元欧州連合軍最高司令官によると、アメリカのネオコン(新保守/親イスラエル派)は、1990年代の初頭から旧ソ連圏の国々、シリア、イラン、イラクを掃除するとポール・ウォルフォウィッツ国防次官(当時)は話していたという。クラーク大将はこの当時、ユーゴスラビア破壊プロジェクトに参加していたので、仲間と考えて本心を語ったのかもしれない。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターやバージニア州の国防総省本庁舎が攻撃された直後、ジョージ・W・ブッシュ政権はアフガニスタンに続き、イラク、イラン、シリア、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンへ軍事侵攻することを決めていたともクラーク大将は語っている。 シリアの場合、アメリカの情報機関員や特殊部隊員、あるいはイギリスとフランスの特殊部隊員がトルコ領内にある米空軍インシルリク基地でFSA(シリア自由軍)を訓練、サウジアラビアやカタールは公然とシリアの反政府軍への軍事支援を語っている。 アメリカ政府は武器を湾岸産油国経由で提供、イギリス、カタール、アメリカ、フランス、ヨルダン、トルコなどの国々は自国の特殊部隊をシリアへ潜入させているとも推測されている。 シリアと同じようにブッシュ・ジュニア政権が攻撃リストに載せていたリビアでは、アル・カイダ系武装集団のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)が地上軍の主力だった。リビアでムアンマル・アル・カダフィ体制を倒した後、こうした武装集団はシリアへ移動している。その際、マークを消したNATOの輸送機が武器をリビアからトルコの基地まで運んだとも伝えられている。 そして今、アメリカ政府はシリアの反政府軍、実態はアメリカ、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビア、カタール、イスラエルなどに雇われた武装勢力に対し、新たに4500万ドルを提供すると報道されている。 ジョージタウン大学のハイララー・ダウド教授によると、反政府軍のうちシリア人が占める割合は5%にすぎず、残りの95パーセントは外国人傭兵だとしている。アル・カイダを傭兵と考えているのだろうが、こうした見方をする人は少なくない。傭兵と考えれば、アメリカと手を組んだと思うと、次の瞬間には敵対するという理由も理解しやすい。 この反政府軍傭兵主力説を主張を裏づける証言もある。例えば、反政府軍に拘束されたフリーランスのフォトジャーナリストによると、連れて行かれたキャンプにシリア人は見当たらず、少なくとも6名はロンドンやバーミンガムの地域で使われている発音をしていて、その中には強いロンドン南部訛りのある人物が含まれていたと語っている。 今回も、東方カトリックの修道院長の言葉で閉めたい:「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は、地上の真実と全く違っている。」
2012.10.02
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アメリカ政府が仕掛けたベネズエラのクーデターは失敗に終わった。ドナルド・トランプ大統領は乗り気でないようで、推進しているのはマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官、ジョン・ボルトン国家安全保障補佐官たち。大統領がシリアからの撤兵を命じたときに抵抗、命令を阻止したトリオだ。 シリアを含む中東から北アフリカにかけての地域で展開されてきた政権転覆プロジェクトやウクライナでのネオ・ナチを手先に使ったクーデターを支援していたアメリカの有力メディアはベネズエラでも侵略の応援団。 例によって「民主化」を求める人びとが「独裁者」を追い詰めるという西側の「リベラル派」が喜びそうなストーリーを有力メディアは流しているのだが、事実との乖離が大きい。ワシントン・ポスト紙は大規模な政府支持デモの参加者を約500人と主張したが、映像を見れば明らかに嘘。自らの信頼度を下げることになっている。 アメリカ政府がベネズエラの「暫定大統領」に任命したフアン・グアイドは4月30日に軍事蜂起を呼びかけたが、「笛吹けど踊らず」。グアイドと同様、反政府派の象徴になっているレオポルド・ロペスはスペイン大使館へ逃げ込み、クーデターに参加した兵士25名はブラジル大使館へ逃げ込んでいる。 ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は航空機でキューバへ逃げようとしていたポンペオ国務長官はメディアに説明、失笑を買った。ポンペオもワシントン・ポスト紙もクーデターは成功すると信じていた、あるいはベネズエラ政府から偽情報をつかまされていたのかもしれない。 おそらくアメリカ側は政府の要人や軍の幹部を買収することに失敗したのだろうが、次はアメリカ軍の侵攻というを政府の好戦トリオや有力メディアなどは考えているかもしれないが、戦争になれば泥沼化は必至で、数十年は戦闘が続くと考えられている。統合参謀本部は軍事侵攻に乗り気ではないだろう。 イラク、シリア、イランへ軍事侵攻するというプランをポール・ウォルフォウィッツがフォート・アーウィンの司令官だったウェズリー・クラーク准将(当時)に語ったのは1991年。ソ連の消滅を見通し、アメリカは好き勝手に軍事力を行使できると主張していたという。当時、ウォルフォウィッツは国防次官を務めていた。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後、クラークは統合参謀本部を訪れる。欧州連合軍最高司令官を経て2000年に退役していた。退役時は大将だ。 そこでクラークは国防長官の計画を知らされる。イラク、シリア、イランに加え、レバノン、リビア、ソマリア、そしてスーダンを攻撃するというのだ。この計画を教えた軍人は苦悩の表情を見せていたという。アメリカ軍の幹部の中にはネオコンの軍事作戦を愚かだと考える人が少なくなかった。(自衛隊の幹部は違うが。) ベネズエラへの軍事侵攻が無謀だという意見がある中、トランプ政権で教育長官を務めるベッツィ・デボスの弟で、傭兵会社のブラックウォーター(2009年にXE、11年にアカデミへ名称変更)を創設したエリック・プリンスは傭兵5000名を投入できればベネズエラの政権転覆に貢献できると発言したという。 プリンスは海軍の特殊部隊SEALの元メンバー。特殊部隊は歴史的にCIAと近い関係にある。
2019.05.03
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CNNは5月6日付けの報道でフアン・グアイドを選挙で選ばれたベネズエラの大統領だと伝えた。勿論、間違いだ。アメリカ支配層はベネズエラの石油利権をアメリカの巨大企業へ渡すと公言しているグアイドを「暫定大統領」に指名しているが、勿論、本当の大統領はニコラス・マドゥロである。日頃、偽報道を続けているCNNだったことから、「またやった」と笑われていたが、今回はさすがにすぐ訂正した。 現在、ドナルド・トランプ政権はエリオット・エイブラムズにベネズエラの政権転覆工作を指揮させている。ウーゴ・チャベスが大統領選挙だった2002年にもアメリカ政府はクーデターを仕掛けたが、このときの黒幕はオットー・ライヒ、ジョン・ネグロポンテ、そしてエイブラムズだ。 エイブラムスは1980年代からラテン・アメリカでの秘密工作に加わっている人物。当時、CIAはニカラグアの革命政権を倒そうとしていたが、その工作資金を調達するためにコカインの密輸に手を出していた。 ニカラグアだけでなく、エル・サルバドルでも秘密工作、いわゆる「汚い戦争」を展開し、その中でCIAの手先だった軍人や警官が1980年3月にカトリックのオスカル・ロメロ大司教を暗殺、その年の12月にはカトリックの修道女ら4名を惨殺している。1981年12月にはエル・モソテ村で住民900名から1200名を殺した。この村民虐殺についてエイブラムズはコミュニストのプロパガンダだと主張、偽証に問われることになる。 そのエイブラムズが仕掛けているクーデターは今のところ失敗。グアイドが大統領になることは困難だろう。そこで噂されているのがグアイド暗殺。それを利用してアメリカ主導軍がベネズエラへ攻め込むのではないかというわけだ。 アメリカ軍の幹部は賛成しそうにないが、好戦的な文民はやりかねない。イラクの時もリビアの時もシリアの時もそうだった。 アメリカの場合、有力メディアはこぞってアメリカ支配層が望むストーリーを流している。CNNはそのひとつだが、かつてCIAと特殊部隊が東南アジアで行った秘密工作に切り込んでいる。 ベトナム戦争でCIAと特殊部隊は住民を皆殺しにしたり、都市部でテロ活動を行うフェニックス・プログラムを実行していた。 この作戦は1967年5月にリンドン・ジョンソン大統領の腹心だったNSCのロバート・コマーがDEPCORDSとしてベトナム入りしたところからスタートする。そのコマーが中心になり、MACVとCIAは秘密プログラムのICEXを始動させる。これはすぐフェニックス・プログラムに名称が変わる。 このプログラムを一時指揮、1973年9月から76年1月までCIA長官を務めたウィリアム・コルビーは議会証言で、1968年8月から71年5月までの期間に2万0587人のベトナム市民が犠牲になったとしているが、別の推計では4万1000人近く。 1968年3月、ソンミ村のミ・ライ地区とミ・ケ地区で住民がアメリカ軍の部隊に虐殺される。犠牲者の数はアメリカ軍によるとミ・ライ地区だけで347人、ベトナム側の主張ではミ・ライ地区とミ・ケ地区を合わせて504人だという。この虐殺はフェニックス・プログラムの一環だった。 事件が発覚したのは、たまたま上空にいたアメリカ軍のヘリコプターのヒュー・トンプソンという兵士が虐殺を止めたからである。この事件を何人かの兵士が告発しているが、従軍記者や従軍カメラマンは報道しなかった。そうした告発があることを知ったシーモア・ハーシュが記事にしたのは1969年11月になってからである。 CNNは1998年6月、アメリカ軍のMACV-SOGが1970年に逃亡米兵をサリンで殺害したと報じた。その作戦名はテイルウィンド(追い風)。CNNは軍関係者だけでなく有力メディアから攻撃され、調査を行ったふたりのプロデューサーは誤報だと認めるように要求されるが拒否、解雇された。そのひとり、エイプリル・オリバーによると、放送では示されなかった重要な情報をCNNは隠しているという。 その放送の翌年、アメリカ陸軍の第4心理作戦群の隊員が2週間ほどCNNの本部で活動していたことも明らかになっている。「産業訓練」というプログラムの一環で、編集に直接はタッチしていなかったとしても、心理戦の部隊を受け入れると言うこと自体、報道機関としては許されない行為だ。アメリカ軍の広報担当だったトーマス・コリンズ少佐によると、派遣された軍人はCNNの社員と同じように働き、ニュースにも携わったという。
2019.05.08
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アメリカのドナルド・トランプ大統領は中国製品に対する関税引き上げを決めた。それに対抗して中国の習近平国家主席も関税の引き上げを決めたが、それだけでなく農産物の購入を中止する可能性があるという。ブラジルやEUからの輸入で穴埋めできるようである。 2014年にバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使い、ウクライナでクーデターを実行したが、戦略的に重要なクリミアを制圧することに失敗した。そこでアメリカはEUに対してロシアへの「制裁」に同調するように要求、EUは呑んだが、その結果、乳製品をロシアへ売れなくなり、だぶついている。中国が買うならEUは売るだろう。 世界的に注目されていたのは石油。昨年10月に中国はアメリカからの石油輸入を止めると発表、今年3月まで実際に輸入は止まった。同じことをするのではないかと見られていたのだが、今回は見送られたようだ。 しかし、その一方でイランからの石油輸入は増えている。アメリカのイランに対する制裁は無視されているわけだ。すでにロシアからエネルギー資源を運ぶパイプラインの建設が進んでいるので、アメリカやサウジアラビアに石油や天然ガスを依存する必要性は今後、さらに低下していく。 このエネルギー資源の輸送ネットワークにはロシアと中国だけでなく韓国や朝鮮も参加するだろう。アメリカに逆らえない日本はコストの高い石油や天然ガスを買わざるをえなくなりそうだ。 現在、ロシアや中国はアメリカからの影響を排除するため、ドル離れを進めている。今後、中国がサウジアラビアに対してドルでなく人民元で決済することを求めてくることは不可避。それをサウジアラビアが呑んだ場合、ドル体制は大きく揺らぐことになる。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカは1970年代から生産を軽視、多国籍企業は工場を国外へ移転させてきた。そうした多国籍企業のカネ儲けに海兵隊をはじめとするアメリカの軍隊は奉仕してきたと第2次世界大戦の前に告発していたのがスメドリー・バトラー少将だ。 現在のアメリカは基軸通貨であるドルを発行する特権で生きながらえている国。発行したドルを実社会から回収しないと新たに発行することが困難になり、システムは破綻する。 ドルをアメリカへ還流させるひとつの仕組みが石油取引を利用したもの。つまり産油国に決済をドルに限定させ、産油国に集まったドルを財務省証券や高額兵器の購入といった形でアメリカへ戻すわけだ。 アメリカ系の多国籍企業は工場を中国へ移転させた。労働者は多く、教育水準も低くないためだ。日本の企業からも21世紀に入った頃から学生の質は日本より中国やインドの方が高いという声を聞くようになった。日本やアメリカでは公教育が政策として破壊されたが、その影響が出たということだろう。 結果としてアメリカは商品を中国から買うことになるが、中国はアメリカの高額兵器を買わない。財務省証券の保有額をみるとほぼ横ばい、つまり買い増していない。アメリカへ還流していないということで、ドル体制は危険な状態になっている。もし中国がロシアと同じように手持ちの財務省証券を大量に売却した場合、金融市場はパニックになるかもしれない。 中国から輸入される製品に対する関税の引き上げはアメリカでの課税を回避しているアメリカ系企業から税金を取る立てることになるが、アメリカが抱えてる経済システムの問題を解決することはできない。
2019.05.14
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いわゆるロシアゲートの第2幕目が始まった。CIA出身のウィリアム・バー司法長官がロシアゲートの捜査が始まった経緯を捜査するためにコネチカット州の連邦検事、ジョン・ドゥラムを任命したのだ。FBIゲートの捜査が始まったとも言える。 これまでドゥラムはFBI捜査官やボストン警察が犯罪組織を癒着している疑惑、CIAによる尋問テープの破壊行為などを調べたことで知られている。 ロバート・マラー特別検察官のロシアゲートに関する捜査ではジュリアン・アッサンジのような重要人物から事情を聞くこともなく、ハッキングされたという民主党のサーバーも調べていない。結局、新しい証拠を見つけられなかった。疑惑に根拠があるかのような主張もしているが、事実の裏付けがない。つまり「お告げ」や「御筆先」の類いにすぎないのだ。 マラーが特別検察官に任命されたこと事実がロシアゲート事件がでっち上げであることを示しているという指摘があった。 アメリカの電子情報機関NSAの不正を内部告発したことでも知られているウィリアム・ビニーによると、ロシアゲートが事実なら、そのすべての通信をNSAは傍受、記録している。そのNSAから傍受記録を取り寄せるだけで決着が付いてしまい、特別検察官を任命する必要はないということだ。 ビニーは1970年から2001年にかけてNSAに所属、技術部門の幹部として通信傍受システムの開発を主導、NSA史上最高の数学者にひとりと言われている人物。退職後、NSAが使っている憲法に違反した監視プログラムを告発、2007年にはFBIから家宅捜索を受けているが、重要文書を持ち出さなかったので刑務所へは入れられなかったという。 ロシアゲートの核心部分は、ウィキリークスが公表したヒラリー・クリントンやDNC(民主党全国委員会)の電子メール。いくつもの不正行為がそこには含まれていた。例えば、クリントンは3万2000件近い電子メールを消去、つまり証拠を消している。全てのメールはNSAが記録しているので容易に調べられるのだが、そうした捜査をFBIは行っていない。DNCのサーバーも調べていない。 ビニーを含む専門家たちはそうした電子メールがハッキングで盗まれたという主張を否定する。そうした専門家のひとりでロシアゲートを調査したIBMの元プログラム・マネージャー、スキップ・フォルデンも内部の人間が行ったとしている。転送速度など技術的な分析からインターネットを通じたハッキングではないというのだ。 ロシアゲートが作り話であることは特別検察官も理解していただろう。この疑惑を事実だとするためにはトランプの周辺にいる人物を別件で逮捕、司法取引でロシアゲートに関して偽証させるしかなかったと推測する人もいる。ところがその工作に失敗したようだ。 ロシアゲートの開幕を告げたのはアダム・シッフ下院議員。2017年3月に下院情報委員会で、前年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を出したのだ。何も証拠は示さなかったものの、その年の5月にマラーが特別検察官に任命されたのである。 シッフの主張は元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーのクリストファー・スティールが作成した報告書だが、根拠薄弱だということはスティール自身も認めている。 スティールに調査を依頼したのはフュージョンなる会社、そのフュージョンを雇ったマーク・エリアス弁護士はヒラリー・クリントン陣営や民主党全国委員会の法律顧問を務めていた。 フュージョンを創設したひとりであるグレン・シンプソンによると、同社は2016年秋にネリー・オーなる人物にドナルド・トランプの調査と分析を依頼している。その夫であるブルース・オーは司法省の幹部で、このオーとシンプソンは2016年11月に会っていた。その直後にブルースは司法省のポストを失い、フュージョンはスティールに調査を依頼することになる。 ロシアゲートという作り話の中心にいるのは、2013年3月から17年1月までCIA長官を務めたジョン・ブレナンだと見られている。このブレナン、2010年8月から17年1月まで国家情報長官を務めたジェームズ・クラッパー、あるいはFBIの幹部たちが今後、捜査の対象になる。FBIにはバラク・オバマ政権のためにドナルド・トランプ陣営をスパイしていた疑惑も浮上している。 2001年9月11日にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されてからアメリカ支配層の内部で主導権を握ったネオコンだが、ここにきて権力バランスに変化が生じている可能性もある。
2019.05.17
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アメリカ、イギリス、フランスの3カ国は2018年4月14日にシリアを100機以上の巡航ミサイルで攻撃した。ロシア国防省の説明によると、そのうち71機をシリア政府軍は撃墜したという。 この攻撃を正当化するため、攻撃側は政府軍がドゥーマで4月7日に化学兵器を使用したと宣伝していた。その情報源はSCD(シリア市民防衛/通称白いヘルメット)やアル・カイダ系武装集団のジャイシュ・アル・イスラム。 この武装集団はCIAの影響下にあり、アル・カイダ系のアル・ヌスラと連携(タグの違い)、イギリスの特殊部隊SASやフランスの情報機関DGSEのメンバーが指揮しているとも報告されている。 ミサイル攻撃の直前、国連の専門機関であるWHO(世界保健機関)は化学兵器の使用で多くの犠牲者が出ているとする声明を出したが、その情報源はWHOがパートナーと呼ぶ団体。その中に含まれているMSFはSCDを訓練している。独自の調査をしたわけでなく、アル・カイダ系勢力の宣伝をそのまま主張しただけだ。攻撃はOPCW(化学兵器禁止機関)の調査チームが現地へ入る直前でもあった。 OPCWは今年、ドゥーマで化学兵器が使用されたが、武装勢力によるものだということを示す証拠は見つからなかったと報告している。 しかし、ここにきてOPCWで専門家の中心的な存在であるイラン・ヘンダーソン名義の文書が表に出てきた。この文書が本物であることは確認されている。その中で、化学物質が入っていた筒状の物体は航空機から投下されたのではなく、証拠は人の手で地面に置かれていたことを示唆している。つまり、SCD、あるいはジャイシュ・アル・イスラムが化学兵器を使ったことを示している。この事実をOPCWの上層部は隠したわけだ。 ドゥーマでシリア政府軍が化学兵器を使ったというアメリカ政府などの主張を西側の有力メディアは垂れ流していたが、当初から疑問の声が挙がっていた。そうした疑問は有力メディアの中からも出ている。 イギリスのインディペンデント紙が派遣していたロバート・フィスク特派員は攻撃があったとされる地域へ入り、治療に当たった医師らを取材、その際に患者は毒ガスではなく粉塵による呼吸困難が原因で担ぎ込まれたという説明を受けている。毒ガス攻撃があったことを示す痕跡はないという。 また、アメリカのケーブル・テレビ局OANの記者も現地を調査し、同じ内容の報告をしている。ロシア系のRTは西側の有力メディアが化学兵器の被害者だとして報道した子どもとその父親を取材、やはり化学兵器が使用されたという話を否定している。 化学兵器が使われたと宣伝する際にSCDが使った映像がでっち上げであることを否定できなかった西側の有力メディアだが、それでも政府軍による化学兵器の攻撃はあったと主張していた。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ政府が軍事侵攻を正当化する口実として化学兵器を言い始めたのは2012年8月のこと。シリアに対する直接的な直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だとバラク・オバマ大統領が宣言したのだ。 この頃、アメリカ軍の情報機関DIAからシリア情勢に関する報告書がホワイトハウスへ提出されている。その中にはシリアの反政府軍の主力がサラフ主義者やムスリム同胞団だと記述されていた。また武装組織としてアル・カイダ系武装集団のAQI(アル・ヌスラと実態は同じだと指摘されていた)の名前が挙げられていた。当時、オバマ大統領は反政府軍のうち「穏健派」を支援していると主張していたが、そうした集団は存在しないことを伝えていたのだ。 それだけでなく、DIAはオバマ政権の政策がシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。ダーイッシュの出現を見通していたわけだ。それはオバマ政権の作戦だったとも言える。 2012年12月になると、国務長官だったヒラリー・クリントンがシリアのバシャール・アル・アサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語る。 そして2013年1月29日付けのデイリー・メール紙には、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦をオバマ大統領が許可したという記述がイギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールの中に書かれているとする記事が載った。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された) その後、シリア政府軍が化学兵器を使ったとする話を西側の政府や有力メディアは何度か主張するが、本ブログでも指摘してきたように、いずれも嘘が明らかにされてきた。今回、明らかにされた文書もアメリカの影響下にある国際機関の実態を暴くものだと言えるだろう。
2019.05.18
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このブログは読者の方々に支えられています。世界情勢を分析し、情報を発信するため、カンパ/寄付をお願い申し上げます。 民主主義を実現するためには正確な情報を知ることが不可欠であり、「秘密保護」ではなく「情報公開」が必要です。残念ながらプロパガンダ機関化している有力メディアに情報を頼るわけにはいかないため、独自に調査し、分析しなければなりません。 支配層が人びとに知られたくない情報が内部告発という形で明らかにされることがあります。以前から内部告発者は弾圧されてきましたが、21世紀に入ってから処罰が厳しくなりました。 内部告発を支援する活動をしてきたウィキリークスのジュリアン・アッサンジは正規の法的手続を経ず、今年4月11日にエクアドル大使館でロンドン警視庁の捜査官によって逮捕されました。 ウィキリークスにアメリカ軍の不正行為を明らかにする情報を提供したブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)は2013年7月に懲役35年を言い渡されましたが、17年1月に外へ出ることができました。 しかし、アッサンジの逮捕が視野に入ったアメリカの司法システムはマニングに証言させようとします。アッサンジをアメリカへ移送し、有罪にする口実を作りたいのでしょうが、その証言をマニングは拒否、3月8日に再び収監されました。5月9日に再び刑務所を出ますが、再び司法当局は証言を要求、再び拒否したことから5月16日にまた収監されてしまいます。 マニングはイラクでアメリカ軍のヘリコプターが非武装の人びとを銃撃して死傷させる様子を撮影した映像を含むイラク戦争の実態などを内部告発、それをアッサンジたちは公表したのです。 アメリカを中心とする西側世界では現在、そうした告発を「犯罪」と見なし、それを有力メディアは受け入れているのです。かつて「大本営発表」を垂れ流していたことへの反省は微塵も感じられません。 アメリカ支配層はドルという基軸通貨を発行する特権を使って世界の経済を支配、監視システムを強化し、報道の統制で自分たちにとって都合の良い幻影を人びとに信じさせようとしています。そうした状況を打破するためにも事実を伝える必要があります。「櫻井ジャーナル」が活動を続けるため、支援をお願い申し上げます。櫻井 春彦振込先巣鴨信用金庫店番号:002(大塚支店)預金種目:普通口座番号:0002105口座名:櫻井春彦
2019.05.22
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ジュリアン・アッサンジに対する追加起訴があった。アメリカ政府が秘密にしていた情報を違法に入手し、公表したことが「1917年のスパイ活動法」に違反するという主張で、すべてが有罪になると最大懲役175年になる。 アッサンジが創設者のひとりであるウィキリークスは内部告発を支援する活動を続けてきた。内部告発とは政府というより支配層の暗部を明るみに出す行為。ウィキリークスの場合、イラクやアフガニスタンにおける戦争の実態、2016年の大統領選挙における不正を明るみに出した民主党とヒラリー・クリントンの電子メールなどを公表している。 公表された情報には映像も含まれている。2010年4月に公開された映像はアメリカ軍の戦闘ヘリコプターから撮影されたもので、そのヘリコプターが非武装の人びとを銃撃しているようすが記録されてしる。犠牲者の中にはロイターの取材チームが含まれていた。 この映像を含むイラク戦争の実態を明らかにする情報をウィキリークスへ提供したのはブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)特技兵。2010年5月に逮捕された。その前にアメリカの当局がアッサンジを起訴していたことが明らかになっている。 そのアッサンジが2010年8月にスウェーデンで事件の容疑者になる。ベッドの上でのトラブルが原因で逮捕状が出され、その事実をスウェーデン警察がタブロイド紙にリーク、そのタブロイド紙がセンセーショナルに伝えた。 これが「レイプ事件」の始まりだが、その翌日には主任検事が令状を取り消してしまう。事件性はないと判断したのだが、その決定を検事局長が翻して捜査を再開を決めた。 しかし、アメリカの当局はすでにアッサンジを秘密裏に起訴している。アメリカ側から命令を受けなくても、その意向を忖度すれば拘束しなければならない。つまり、捜査の再開は政治的な判断だったと見られている。 そうした中、9月27日にアッサンジはスウェーデンを離れてロンドンへ向かう。スウェーデン当局は11月にアッサンジを国際手配するが、2017年に捜査を打ち切った。冤罪だと言うことを認めたのである。 イギリスの警察当局はスウェーデン当局の要請を受けてという形でアッサンジを逮捕しようとするのだが、ヨーロッパの場合、裁判所の発行した令状でなければ無効とされている。アッサンジのケースでは検察官が出したもの。つまり無効なのである。それをイギリスの裁判所は有効だと認めた。超法規的な決定だと言えるだろう。 言うまでもなく、これまでイギリスの警察がアッサンジを逮捕できなかったのはエクアドル大使館で保護されていたからである。エクアドルはアッサンジの亡命を認めていた。その決定を新大統領のレニン・モレノが取り消し、4月11日にアッサンジは大使館内で逮捕されたのである。 これまでもアメリカの支配システムは内部告発者を厳しく取り締まってきた。自分たちの悪事が露見することを極度に恐れている。悪事が知られても決定的な証拠がでなければ「謀略論だ」と言って逃げることも可能だが、それが出てきたら大変なことになる。証拠の大半は廃棄しているだろうが、完全に行うことは難しい。 内部告発を公にすることは本来、ジャーナリストの仕事である。そのジャーナリストが1970年代の後半から急速に減ってしまった。有力メディアのプロパガンダ機関化が徹底し、ジャーナリストの居場所がなくなってきたのだ。 有力メディアは巨大資本に飲み込まれ、支配層に選ばれた記者や編集者は支配システムへ組み込まれていく。BAPはその一例だ。記者や編集者に情報を提供、その条件として守秘義務を負わせるということもあるようだ。必然的に某情報機関の協力者になる。 飴と鞭で記者や編集者は取り込まれ、有力メディアは支配システムの宣伝部門になってしまった。そうした中、登場してきたのがウィキリークスだ。 アメリカの当局者はアッサンジをジャーナリストだと認めていないが、それは自分たちの影響下にないからだろう。誰でもそう名乗ればジャーナリストだ。支配層の承認はいらない。アメリカの支配システムは言論の自由を公然と否定するステージに入ったと言える。
2019.05.24
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しかし、ここにきて情況が大きく変化している。ロシア、中国、韓国に朝鮮も加わったのだ。アメリカの恫喝は朝鮮に通用しなくなった。現在、アメリカ政府は中国を経済的に攻撃しているが、中国がその気になればアメリカ人の生活は成り立たない。レアアースの輸出禁止も噂になっている。 日本人の中には中国の技術水準を過小評価している人が少なくないが、日本企業の管理職の話によると、すでに若い世代では中国は日本より勝っている。 2011年2月、バラク・オバマ米大統領(当時)はアップルのスティーブン・ジョブスCEO(同)に対し、同社のiPhoneをアメリカで生産しないかともちかけたところ、アメリカへ戻ることはないと言われたという。中国では必要な組立工やエンジニアを集めることが容易で、生産規模を柔軟に変更でき、供給ラインが充実しているうえ、労働者の技術水準が高いことが理由だと説明されたようだ。 中国の技術力が向上していることはアングロ・サクソン系諸国の情報機関も認めている。2018年7月にカナダ東部のノバスコシアでアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの情報機関トップがカナダのジャスティン・トルドー首相と会談している。 そして中国のエレクトリニクス技術を安全保障上の脅威だとして取り引きを規制し始め、12月1日にバンクーバーの空港でカナダ当局が中国の大手通信機器メーカー、ファーウェイ・テクノロジーズのCFO(最高財務責任者)である孟晩舟を逮捕した。 アメリカ政府の命令でグーグルはこのファーウェイとの契約履行を中断、半導体や通信機器会社のクアルコム、半導体素子メーカーのインテルなどもグーグルに同調しているようだ。重要な部品を入手できなくなる可能性があるのだが、中国側もこうしたことは想定していただろう。 今話題になっている5G(第5世代移動通信システム)の開発ではアメリカ系企業よりファーウェイは進んでいると言われている。ファーウェイをアメリカ政府が攻撃している大きな理由はここにあると考えている人は少なくない。それだけの技術力をすでに中国企業は持っているということだ。 今回、トランプ大統領は安倍晋三首相とイランについても話し合ったという。アメリカ政府はイランとの間で軍事的な緊張を高めているが、これはマイク・ペンス副大統領、マイク・ポンペオ国務長官、そしてジョン・ボルトン国家安全保障補佐官が進めてきた。その背後にはイスラエルとサウジアラビアの現体制がある。 しかし、イランとの戦争はアメリカ軍の上層部も反対している。2003年のイラク侵略では約31万人が投入されたが、ドナルド・ラムズフェルド国防長官は10万人で十分だと主張、それに対してエリック・シンセキ陸軍参謀総長(当時)は占領して治安を保つためには80万人が必要だとしていた。結局、31万人では足りなかった。 そのイラクの人口は約2600万人であるのに対し、イランは8100万人。つまりイランを占領するためには240万人を動員しなければならないのだが、アメリカ軍は予備役を含めても214万人。つまり戦力が足りない。 しかも、イラクの場合は少数派のスンニ派が多数派のシーア派を支配する国だったが、イランは多数派のシーア派が実権を握っている国であり、同じシーア派の国になったイラクも黙ってはいないだろう。サウジアラビアのシーア派も潜在的に大きな力を持っている。 核攻撃で一気に壊滅させるという手段はあるが、今のロシア政府はそうしたことを容認しないだろう。核戦争になる可能性がある。そうならなくても戦乱は中東全域に広がり、石油の供給は難しくなる。世界はパニックだ。 日本がイランとアメリカの仲介をするという話もあるが、日本政府がアメリカ支配層の操り人形だということは広く知られている。しかもイラン外相はイランがアメリカと話し合いに入るという報道を否定している。朝鮮と同じようにイランもアメリカ政府を相手にしていない。 脅せば屈すると信じているアメリカ、イスラエル、サウジアラビアの好戦派の妄想に引きずられたアメリカは窮地に陥った。(了)
2019.05.28
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安倍晋三首相がイランの最高指導者アリー・ホセイニー・ハメネイと会談した6月13日、2隻のタンカーがオマーン沖で攻撃を受けたという。日本の国華産業が運行する「コクカ・カレイジャス」(パナマ船籍)とノルウェーのフロントラインが所有する「フロント・アルタイル」(マーシャル諸島船籍)で、前者は魚雷、後者は磁気機雷によるもので、タンカーの乗組員44名はイランの救助隊に救助され、ジャースク港に移送されたと伝えられている。 イランを安倍首相が訪問した主な目的はドナルド・トランプ米大統領のメッセージをイラン側へ渡すことにあったのだろうが、ホルムズ海峡を経由して運ばれる石油への依存度が高い日本の懸念も伝えたようだ。 1908年にペルシャ(現在のイラン)で石油が発見されるとイギリス支配層はAPOC(アングロ・ペルシャ石油)を創設、利権を手にした。1919年にイギリスはペルシャを保護国にする。 1921年にはレザー・ハーンがテヘランを占領、その4年後にカージャール朝を廃して王位についた。これがパーレビ朝のはじまりである。この新王朝を介してイギリスはペルシャを支配した。 1935年に国名がペルシャからイランへ変更、それにともなってAPOCはAIOC(アングロ・イラニアン石油)になる。名称に関係なく、イギリスの支配層がイランの石油で儲けるための会社だ。 イギリスはパーレビ朝を利用してペルシャの石油を支配したのだが、その仕組みが第2次世界大戦後、1950年代に入ると揺らぐ。イギリスによる収奪に対する不満が高まり、1951年にムハマド・モサデクが首相に選ばれた後、議会ではAIOCの国有化を決める。その直後にアバダーン油田が接収された。 しかし、イギリスの圧力でモサデクは翌年に辞任するが、庶民の怒りを買うことになって5日後にはモサデクが再び首相になった。その間、AIOCは石油の生産と輸送を止めて抵抗している。 現在、トランプ政権は似たようなことを実行している。イラン産原油の輸送を止めるため、消費国に買うなと命令したのだ。が、それが困難な国も存在する。そこで日本、韓国、トルコ、中国、インド、台湾、イタリア、ギリシャに対してアメリカ政府は猶予期間を設定したが、それが時間切れになる。中国はイランからの石油輸入を続けそうだが、他の国はアメリカからの圧力に抗しきれないかもしれない。 今回のタンカーに対する攻撃についてマイク・ポンペオ国務長官はイランが実行したと非難したが、例によって証拠は示していない。単なる「お告げ」だ。 この攻撃はネオコンの拠点と言われるブルッキングス研究所が2009年に出した報告書に基づいていると指摘する人もいる。アメリカ軍による空爆を正当化するイランによる挑発を示せれば良いのだが、この報告にも書かれているように、世界の人びとに気づかれず、イランにそうした行為をさせるよう仕向けることは非常に難しい そうした難しい工作は2015年に合意されたJCPOA(包括的合意作業計画)から始まるとする見方がある。アメリカ大統領だったバラク・オバマがこの作業計画に参加したのは、アメリカがイランの核開発を巡る対立を平和的に解決しようとしているとアピールするためだというのだ。 オバマはポール・ウォルフォウィッツが口にしていた侵略計画に基づき、2011年春にリビアとシリアを侵略する。使われたのはサラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする傭兵(アル・カイダ系武装グループ)。 ウォルフォウィッツを含むネオコンが1980年代から考えていた計画はイラクのサダム・フセイン体制を倒して親イスラエル国を築いてシリアとイランを分断、次にシリア、最後にイランを制圧するというものだ。 2001年9月、ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された直後、ドナルド・ラムズフェルド国防長官の周辺ではイラク、シリア、イランのほか、リビア、レバノン、ソマリア、スーダンが攻撃予定国に加えられる。 リビアが狙われた理由として石油利権が指摘されているが、それ以上に大きな理由は、ムアンマル・アル・カダフィがアフリカを欧米から独立させるために独自の通貨(金貨)を導入する計画を立てていたことにあると言われている。 オバマはネオコンの計画に従って動いていた。そのネオコンはロシアを再支配するだけでなく、イラン制圧を予定していたのだ。6月13日のタンカー攻撃が誰の利益になるかは明白だろう。
2019.06.14
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ロシアのニュースサイト「メドゥーサ」の記者、イワン・ゴルノフに対するに刑事訴追を同国の内務省が証拠不十分だとして6月11日に取り消した。ゴルノフは6月7日に麻薬取引の容疑でモスクワ市警察に逮捕され、欧米の有力メディアで話題にされていた。 このケースについて書くだけの情報を持っていないが、ジュリアン・アッサンジが逮捕された際の有力メディアが冷淡だったこととの対比も話題になっている。 アッサンジは4月11日、エクアドル大使館の中でロンドン警視庁の捜査官に逮捕された。アメリカの支配層が隠しておきたい情報を明らかにしてきたウィキリークスを創設したひとりであるだけでなく、看板的な役割も果たしていた。 その彼をアメリカの当局が秘密裏に起訴したのは2010年4月から11年初めにかけての時期だった。2010年4月にウィキリークスはアメリカ軍がイラクで行っている殺戮の実態を明らかにする映像を含む資料を公開している。 その中にはロイターの特派員2名を含む非武装の人びとをアメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターに乗っていた兵士が銃撃、十数名が殺される映像も含まれていた。 こうした情報をアメリカなど西側の有力メディアで働く記者や編集者は明らかにしたがらない。 例えば、1968年3月に南ベトナムのカンガイ省ソンミ村のミライ集落とミケ集落において住民がアメリカ軍の部隊によって虐殺された際、そうした行為を目にしたはずの従軍記者、従軍カメラマンは報道していない。 この虐殺が発覚したのは内部告発があったからである。虐殺の最中、現場近くを通りかかった偵察ヘリコプターのパイロット、ヒュー・トンプソン准尉が村民の殺害を止めたことから生き残った人がいたことも一因だろう。 そうした告発を耳にし、調査の上で記事にしたジャーナリストがシーモア・ハーシュ。1969年11月のことだ。本ブログで繰り返し書いてきたが、この虐殺はCIAが特殊部隊と組んで実行していたフェニックス・プログラムの一環だった。 この秘密作戦を指揮したひとりであるウィリアム・コルビーはCIA長官時代に議会でこれについて証言、自身が指揮していた「1968年8月から1971年5月までの間にフェニックス・プログラムで2万0587名のベトナム人が殺され、そのほかに2万8978名が投獄された」と明らかにしている。解放戦線の支持者と見なされて殺された住民は約6万人だとする推測もある。 ソンミ村での虐殺はアメリカ陸軍第23歩兵師団の第11軽歩兵旅団バーカー機動部隊第20歩兵連隊第1大隊チャーリー中隊の第1小隊によって実行された。率いていたのはウィリアム・カリー中尉。虐殺から10日後、ウィリアム・ウエストモーランド陸軍参謀総長は事件の調査をCIA出身のウィリアム・ピアーズ将軍に命令する。ピアーズは第2次世界大戦中、CIAの前身であるOSSに所属、1950年代の初頭にはCIAの台湾支局長を務めていた。事件を揉み消すために人選だろう。 第23歩兵師団に所属していた将校のひとりがコリン・パウエル。ジョージ・W・ブッシュ政権の国務長官だ。2004年5月4日にCNNのラリー・キング・ライブに出演した際、彼は自分も現場へ入ったことを明らかにしている。 ジャーナリストのロバート・パリーらによると、パウエルはこうした兵士の告発を握りつぶし、上官が聞きくない話は削除する仕事をしていたという。その仕事ぶりが評価され、「異例の出世」をしたと言われている。 この当時から組織としてのメディアは支配層の宣伝機関にすぎなかった。これも本ブログで繰り返し書いてきたが、そうした機能を推進するためにモッキンバードと呼ばれるプロジェクトを第2次世界大戦が終わって間もない段階で始めている。 日本ではウォーターゲート事件を調査、「大統領の陰謀」を明らかにしてリチャード・ニクソンを辞任に追い込んだワシントン・ポスト紙を崇める人が今でもいるようだが、モッキンバードの中枢にいた4名はアレン・ダレス、フランク・ウィズナー、リチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムである。 ウォーターゲート事件はワシントン・ポスト紙の若手記者ふたりが中心になって取材したが、ボブ・ウッドワードは少し前まで海軍の情報将校で記者としては素人に近く、事実上、取材はカール・バーンスタインが行ったという。 そのバーンスタインは1977年に同紙を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。CIAが有力メディアをコントロールしている実態を暴露したのだ。ウォーターゲート事件の裏側を明らかにしたとも言えるだろう。(Carl Bernstein, “CIA and the Media”, Rolling Stone, October 20, 1977) その記事によると、それまでの20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していたジャーナリストは400名以上に達し、そのうち200名から250名が記者や編集者など現場のジャーナリスト。1950年から66年にかけてニューヨーク・タイムズ紙は少なくとも10名の工作員に架空の肩書きを提供しているとCIAの高官は語ったという。 1970年代の半ばには議会でも情報機関の不正行為が調査されているが、それに危機感を抱いた人びとは情報の統制を強化する。そのひとつの結果が巨大資本によるメディア支配。気骨あるジャーナリストは追放されていった。 ドイツの有力紙、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出している。 彼によると、ドイツだけでなく多くの国のジャーナリストがCIAに買収されている。人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開、人びとをロシアとの戦争へと導き、引き返すことのできない地点にさしかかっているというのだ。2017年1月、56歳のときに心臓発作で彼は死亡する。出版されたはずの英語版は市場に出てこなかった。 情報機関がジャーナリストをコントロール下に置く手法はさまざまだが、一緒にコーヒーを飲むようなところから始まることが少なくない。スクープに飢えている記者の鼻先に情報をぶら下げ、秘密保護の誓約書にサインさせる。そうなると情報機関の協力者だ。ワシントンDCあたりの特派員になると、そうした誘惑が待っている。 勿論、それ以上の接待もあり、接待を受けている場面が隠し撮りされて弱みを握られるということもあるようだ。企業にしろ情報機関にしろ犯罪組織にしろ、見返りを期待せずに接待することはない。このようにして取り込まれた記者や編集者にとってウィキリークは目障りな存在だろう。
2019.06.20
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ネオコンの影響下にあったバラク・オバマ大統領は2011年春にサラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団を主力とする傭兵をシリアやリビアへ送り込んで体制を転覆させようとする。リビアはその年の10月に目的を達成したが、シリアには手こずる。 オバマ政権はリビアで戦わせていた戦闘員を武器/兵器と一緒にシリアへ運び、2012年には「穏健派」を助けるとして軍事的な支援を強化する。それを批判する報告書を出したのがアメリカ軍の情報機関DIAだ。 DIAが2012年8月にホワイトハウスへ提出した報告書には、シリアで政府軍と戦っている武装勢力の主力はサラフ主義者やムスリム同胞団で、アル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)という名称も書かれている。2012年当時のDIA局長はマイケル・フリン中将だった。 さらに、オバマ政権の武装勢力支援策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。その警告は2014年にダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)という形で現実なる。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、アメリカ政府が軍事侵攻を正当化する口実として化学兵器を言い始めたのはDIAが報告書を出した2012年8月。シリアに対する直接的な直接的な軍事介入の「レッド・ライン」は生物化学兵器の使用だとバラク・オバマ大統領が宣言したのだ。 2012年12月になると、国務長官だったヒラリー・クリントンがシリアのバシャール・アル・アサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語る。 そして2013年1月29日付けのデイリー・メール紙には、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦をオバマ大統領が許可したという記述がイギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールの中に書かれているとする記事が載った。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された) その後、シリア政府軍が化学兵器を使ったとする話を西側の政府や有力メディアは何度か主張してきたが、いずれも嘘が明らかにされている。それでもアメリカ政府は同じシナリオを繰り返し、有力メディアはそれを垂れ流している。 こうしたオバマ政権の作戦を察知したのか、ロシア政府のアドバイスでシリア軍は生物化学兵器を廃棄していた。その作業は公開されている。そのため、アメリカ側の宣伝は説得力がなくなっていた。 そして2014年1月に出現したのがダーイッシュ。この武装勢力はイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国を宣言し、6月にモスルを制圧する。その際にトヨタ製小型トラック「ハイラックス」の新車を連ねた「パレード」を行い、その様子を撮影した写真が世界に伝えられて広く知られるようになった。 こうしたパレードは格好の攻撃目標。偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などでアメリカの軍や情報機関は武装集団の動きを知っていたはずだが、攻撃していない。それどころか、ダーイッシュ的な集団の出現を警告していたフリンは2014年8月にDIA局長のポストを追われた。ダーイッシュの出現はオバマ政権の政策だったと言われても仕方がない。 2015年に入るとオバマ政権は戦争体制を整える。シリアに対する直接的な軍事介入に慎重な姿勢を見せていたチャック・ヘーゲル国防長官やマーチン・デンプシー統合参謀本部議長が排除されるのだ。ヘーゲルは2015年2月に解任、デンプシーは同年9月に再任が拒否されている。 ヘーゲルの後任長官に選ばれたアシュトン・カーターは2006年にハーバード大学で朝鮮空爆を主張、ダンフォードの後任議長のジョセフ・ダンフォードはロシアをアメリカにとって最大の脅威だと主張する軍人だ。 オバマ政権はシリアへアメリカ軍、あるいはNATO軍を軍事侵攻させようとしていたのだろうが、それを不可能にする出来事が統合参謀本部議長が交代した直後、2015年9月30日にあった。ロシア軍がシリア政府の要請で介入してきたのだ。これで戦況は一変、オバマ政権が送り込んだ傭兵は敗走、支配地域は急速に縮小していった。 アメリカも参加したJCPOA(包括的共同作業計画)が公表されたのは、オバマ政権がシリアに対する戦争の準備を整えつつあった2015年7月だ。ネオコンの戦略を考えると、シリアに対する軍事侵略はイランへの攻撃に結びついている。JCPOAへ参加したからといって、オバマ政権がイランの体制転覆を諦めたと判断することはできない。 オバマ政権の中東戦略はアメリカのシンクタンク、ブルッキングス研究所が2009年に出した報告書に基づいていると考える人がいる。報告書のプランと実際の政策が似ているからだ。 その報告書には、イランを空爆する前にイランからの挑発を引き出す必要があるとしている。勿論、都合良くイランがそうした挑発をする可能性は小さい。世界に気づかれることなく、アメリカがイランによる挑発を演出すれば良いということになる。オバマ政権が核問題を話し合いで解決しているように思わせるためにJCPOAを利用したと考えることもできるということだ。オバマ大統領の言動を見聞きしていると、その可能性は小さくないように思える。 ちなみに、9/11の前年、2000年にネオコン系シンクタンクのPNACが発表した報告書「アメリカ国防の再構築」には、「革命的な変革」を迅速に実現するためには「新たな真珠湾」のような壊滅的な出来事が必要だとする記述があった。(了)
2019.07.02
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ジェフリー・エプシュタインなる人物が7月6日に性犯罪の容疑で逮捕された。同時に家宅捜索も受けているのだが、その際に金庫から猥褻な少女の写真が発見されたと発表されている。 この事件が表面化する切っ掛けは、2005年にフロリダの警察を訪れた女性の話。14歳になる義理の娘がエプシュタインの自宅で猥褻な行為をされたというのだ。そこから内偵捜査が始まり、11カ月後に家宅捜索している。 捜査の中でエプシュタインが有力者へ少女を提供、行為を秘密裏に撮影して恐喝の材料に使っていたことが捜査で浮かび上がる。エプシュタインは有罪を認め、懲役18カ月の判決を受けるのだが、刑務所へは入っていない。寛大な処置と言えるだろう。 有力者への少女提供が大がかりなものだった可能性もある。ある人物がエプシュタインの自宅から少なからぬ有名人の連絡先が書かれた「黒い手帳」を持ち出し、5万ドルで売ろうとして情報が漏れたのだ。2009年のことである。その人物は手帳について、「小児性愛ネットワーク」を解き明かすものだとしていた。 2016年に実施されたアメリカ大統領選挙の投票日の直前、ひとりの女性がドナルド・トランプから13歳の時にレイプされたと訴え出た。ヒラリー・クリントン陣営は喜んだようだが、この話はクリントン陣営にとっても好ましくなかった。そのリストの中にはビル・クリントンも含まれていたのだ。 リストにはトランプやクリントンのほか、イスラエルの首相だったエフード・バラク、ハーバード大学のアラン・ダーショウィッツ教授、イギリスのアンドリュー王子の名前も含まれ、エプシュタインの事件を掘り下げることは難しいだろうという見方もあった。実際、エプシュタインは軽い処罰で終わっている。 ダーショウィッツは法律の専門家で、エプシュタインの弁護団に名を連ねていたが、イスラエルを批判する人物を激しく攻撃してきたことでも知られている。中でも有名な犠牲者がイスラエルによるパレスチナ弾圧を批判していた研究者のノーマン・フィンケルスタイン。 デポール大学で働く任期制の教員だったフィンケルスタインが終身在職権を得ることが内定した際、ダーショウィッツは反フィンケルスタインのキャンペーンを数カ月に渡って展開、大学に圧力をかけて彼との雇用契約を打ち切らせてしまったのである。ダーショウィッツのようなシオニストはフィンケルスタインのようなユダヤ人を「自己憎悪」という用語を使って批判する。 さらに、フィンケルスタインの著作が世に出ると聞くとダーショウィッツ教授はカリフォルニア大学出版やカリフォルニア州の知事だったアーノルド・シュワルツネッガーに働きかけて出版を止めさせようとしている。 有力者を相手にした「小児性愛ネットワーク」が存在するという話は1988年にも浮上している。偽情報だということになっているが、事実だとする見方は消えていない。2016年の大統領選挙で「ピザゲート」が話題になったのも、こうした権力犯罪がもみ消されてきたと少なからぬ人が思っているからだろう。 勿論、日本でそうしたことが行われていないとは言えない。
2019.07.09
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竹島(独島)の近くをロシア軍に所属するTu-95戦略爆撃機2機とA-50早期警戒管制機、中国軍に所属するH-6戦略爆撃機2機とKJ-2000早期警戒管制機が飛来、そのうち1機のロシア軍機と2機の中国軍機が韓国の設定する防空識別圏の中に入ったため韓国軍の戦闘機F-16とF-15が緊急発進、照明弾を落とし、警告射撃を行ったと韓国の国防省は発表していた。 それに対しロシア国防省は韓国側の対応を批判。飛行ルートは予定通りで、領空は侵犯していないと主張、当該海域には国際的に認められた防空識別圏はないとしている。無線でコンタクトせずにロシア軍機の前を韓国軍機は横切るなど危険な行為をしたものの、銃撃はなく、もし銃撃があればロシア側は「応じた」としている。銃撃し返したということだろう。中国は防空識別圏と領空は違うとしている。 軍用機の接近もさることながら、今回の出来事で目を引くのはロシア軍と中国軍が共同で「パトロール」していたこと。韓国軍やアメリカ軍へのメッセージのように見える。 竹島近辺での出来事は7月23日のことだが、20日にアメリカのジョン・ボルトン国家安全保障補佐官はアメリカから日本へ向かった。日本と韓国の対立を緩和し、イランとアメリカの対立でアメリカへ協力させることが目的だとされている。 そして23日にボルトンは韓国へ到着。同じことが話し合われたのだろうが、朝鮮半島の緊張緩和を目指し、ロシアや中国と経済的な関係を強めている韓国をアメリカ側へ引き戻すことが目論まれているようにも思える。 アメリカ軍と韓国軍は来月に合同軍事演習を実施する予定、朝鮮を刺激している。朝鮮との対話を進めつつある韓国の文在寅政権としては好ましくない流れだ。今後、韓国の軍や情報機関の動きにも注意する必要がありそうだ。
2019.07.24
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アメリカのドナルド・トランプ大統領はINF(中距離核戦力全廃条約)を破棄すると昨年(2018年)10月に表明、今年2月にロシアへ破棄を通告し、8月2日に失効した。それを受け、ロシアも条約義務の履行を停止している。 少なからぬ人が指摘しているように、アメリカがINFを廃棄した最大の理由はロシアに対する先制攻撃の恫喝。戦争が始まればEUも戦場になり、そこに存在している国々は消滅すると見られている。そのEUからアメリカの属国と化しているイギリスは離脱しようとしている。 ロッキード社(現在はロッキード・マーチン)でトライデント(潜水艦発射弾道ミサイル)の設計主任をしていたロバート・オルドリッジは自分の仕事が先制第1撃を目的にしていると考えていたが、遅くとも第2次世界大戦の直後からこれはアメリカの一貫した方針である。自分たちが圧勝できると考えた時点でその方針が前面に出てくる。 1991年12月にソ連が消滅した際、ネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと認識、単独で行動することができるようになったと考え、国連も無視するようになった。残されたアメリカへの従属度の低い体制を軍事力で潰していくことにしたわけだ。まず旧ソ連圏の国々、ついでイラク、シリア、イランが想定されていた。 ところが、21世紀に入り、彼らの想定していなかったことが起こる。ウラジミル・プーチンを中心とする勢力がロシアを不十分ながら再独立させたのだ。 それでもボリス・エリツィン時代にロシアは破壊され、敵ではないとアメリカ側は考えた。そうした見方を論文という形で発表したのがキアー・リーバーとダリル・プレスだ。 フォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号に掲載されたふたりの論文は、アメリカが近いうちにロシアと中国の長距離核兵器を先制第1撃で破壊する能力を持てると主張している。ロシアや中国と全面核戦争になっても圧勝できると信じているのだ。両国を甘く見ていた。 その判断が間違っていることはすぐに判明する。2008年8月に北京で夏季オリンピックが開催されているが、その開幕に合わせてジョージア軍が南オセチアを奇襲攻撃、ロシア軍の反撃で粉砕されてしまったのである。 この攻撃を「無謀だった」と後講釈する人もいたが、2001年からイスラエルの軍事会社はジョージアへ武器を提供、それと同時に軍事訓練を行ってきた。これはイスラエル政府の政策だ。それと同時にアメリカからも支援があった。 それだけでなくジョージアはイスラエル軍に基地を貸していた。その基地もロシア軍は攻撃、そこへ航空機を着陸させてジョージア軍を攻撃したという。(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Progressive Press, 2019) その後、ロシア軍の強さはシリアでの戦闘でも確認された。巡航ミサイル、防空システム、電子戦、いずれもアメリカを上回る性能があることが確認されたのである。これを見た各国はアメリカを以前のようには恐れなくなった。そうした国のひとつが朝鮮だろう。(つづく)
2019.08.07
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がロシアを訪問、8月27日にウラジミル・プーチン露大統領と会見した。2016年から接近しはじめたロシアとトルコだが、それ以前の経緯もあってシリアの西部地域であるイドリブの問題で両国は対立していた。そのイドリブから武装勢力を排除し、地域を正常化することで両国は合意したようだ。 トルコはすでにロシアから防空システムS-400を配備しているが、さらなる導入も表明された。この取り引きへの「制裁」としてアメリカ政府はF-35戦闘機の売却を中止すると警告しているが、これは欠陥戦闘機であり、たいした脅しにはならないだろう。今回の訪問でロシア製のSu-35やSu-57を調べている。 アメリカの武器/兵器を導入するリスクはイラクにおけるイスラエル軍の攻撃で明らかなっている。この攻撃の際、アメリカはイラク軍のレーダーを止めてしまったとする話がイラク軍の上層部から流れている。トルコが懸念している自体が実際に起こっているということだ。 トルコは2011年3月からシリア侵略に参加、配下の傭兵を送り込んでいた。この侵略はトルコのほか、アメリカ、イスラエル、サウジアラビアの3国同盟、イギリスとフランスのサイクス・ピコ協定コンビ、パイプライン建設でシリアと対立したカタールなどによって実行された。トルコやカタールは2016年に入ってから侵略グループから離脱している。戦争の長期化による経済への悪い影響が深刻化したことが大きい。 ネオコンは1980年代からイラク、シリア、イランの殲滅を計画していた。まずイラクのサダム・フセイン体制を倒してイスラエルの属国に作り替えてシリアとイランを分断、そしてシリアとイランを潰そうとしたのだ。この3カ国が消えればイスラエルに刃向かう可能性のある国は中東から消える。 1991年1月から2月にかけてアメリカ主導軍はイラクを攻撃したが、ジョージ・H・W・ブッシュ(シニア)政権はフセインを排除しなかった。ブッシュ大統領たちはフセイン体制をペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤だと考えていたのでフセイン体制を残したのだろうが、ネオコンは激怒した。 アメリカが属国軍を率いてイラクへ軍事侵攻するのは2003年3月。ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された後のことだ。 イラクへの軍事侵攻でフセイン体制は倒したものの、親イスラエル体制の樹立には失敗、イラクとイランを接近させることになる。そこでアメリカの支配層はフセイン体制を支えていたスンニ派と手を組み、武装勢力を編成してサウジアラビアの情報機関にコントロールされていたアル・カイダ系のグループと合流させている。ちなみに、フセイン政権はアル・カイダ系武装集団を人権無視で弾圧していた。 スンニ派を中心とする武装勢力を傭兵として使う手法は1970年代の終盤にズビグネフ・ブレジンスキーが始めたもの。サウジアラビアが戦闘員と資金を提供、その戦闘員をCIAが訓練して武器/兵器を提供、イスラエルも協力していた。アメリカ軍が使える現地の武装勢力を選んだのはパキスタンの情報機関である。 イラクでこの仕組みが復活するのだが、そうした動きは遅くとも2007年に始まっている。その年に調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュがニューヨーカー誌に書いた記事によると、ジョージ・W・ブッシュ(ジュニア)政権はシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラを最大の敵だと定め、スンニ派の過激派と手を組むことにしたという。その過激派の中心はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団である。 2009年1月にアメリカの大統領はブッシュ・ジュニアからバラク・オバマに交代、新大統領は傭兵の主力をムスリム同胞団に決める。そして2010年8月にPSD-11を出し、「アラブの春」が始まる。その流れの中でリビアやシリアも侵略された。リビアへの侵略ではNATOがアル・カイダ系のLIFGと連携していることが発覚している。シリアでも基本的に同じことが行われたが、ロシアがNATOの軍事介入を阻止。傭兵の大半は2015年9月に軍事介入したロシア軍が殲滅した。
2019.08.28
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インドのナレンドラ・モディ政権がロシアから防空システムのS-400を購入すると決めて以来、アメリカから取り引きを破棄するように圧力が加えられてきた。その圧力を跳ね返し、インド政府は購入代金を支払い始めたと伝えられている。5システムを54億ドルで購入、2023年までに引き渡される予定だ。 両国ともSCO(上海協力機構、上海合作組織)のメンバー国であり、この取り引きが成立するのは必然のように見えるのだが、モディ首相がイスラエルと緊密な関係にあり、アメリカにとって戦略上、重要な国でもある。 アメリカはイギリスと同じようにユーラシア大陸の沿岸部を支配して内陸部にプレッシャーをかけ、中国やロシアを支配するという長期戦略を採用、2018年5月にはアメリカ太平洋軍をインド・太平洋軍へ名称変更した。勿論、名称を変更しただけでないだろう。 太平洋の拠点は日本、インド洋の拠点はインド、ふたつをつなぐ役割をインドネシアが担うという構図を描いているようだが、ディエゴ・ガルシア島も重要な役割を果たすことになるはず。 ディエゴ・ガルシア島はイギリスが不法占拠、それをアメリカが使っている。ICJ(国際司法裁判所)はディエゴ・ガルシアを含むチャゴス諸島をイギリスはモーリシャスへ返還するようにと勧告しているが、無視されている。アメリカやイギリスに国際ルールを守るという意思はない。 こうした米英の戦略をインドのロシア接近は危うくする。こうした動きはインド以外の国でも見られる。NATO加盟国であるトルコではすでにS-400の搬入が始まり、新たにロシア製戦闘機のSu-35やSu-57を購入する可能性が出てきた。 アメリカとしては対立を煽り、そのターゲットをコントロールしようとするだろう。インドの場合は中国やパキスタンを利用しようとするだろうが、ロシアと中国は戦略的な同盟国。アメリカの思惑通りに進まない可能性は小さくない。
2019.08.30
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資本主義体制のリーダー達は12月8日、「バチカンを含む包括的資本主義会議」を発足させた。WEF(世界経済フォーラム)と連携、その創設者であるクラウス・シュワブが言ったようにCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)を利用して資本主義を大々的に「リセット」するつもりなのだろう。 この会議を創設するうえで中心的な役割を果たしたのはリン・フォレスター・ド・ロスチャイルド。ロンドンを拠点とするNMロスチャイルド銀行の取り仕切ってきたエベリン・ド・ロスチャイルドの3番目の妻だ。エベリンは今年の8月で90歳になったが、リン・フォレスターは66歳。ふたりは1998年のビルダーバーグ・グループの会議でヘンリー・キッシンジャーに紹介されて知り合い、2000年に結婚、新婚旅行の際にクリントン夫妻からホワイトハウスへ招待されている。 リン・フォレスターはエベリンと知り合う前、ジェフリー・エプスタインのプライベート・ジェットに乗った記録が残っている。言うまでもなく、エプスタインは未成年の少女を世界の有力者に提供、接待の様子を記録して脅しに使っていた人物。妻のギスレインや義父のロバート・マクスウェルと同じようにイスラエル軍の情報機関、つまりAMAMに所属していた。 このロバート・マクスウェルに対し、リン・フォレスターは1991年頃、マンハッタンにある自身の住宅を自由に使わせていた。マクスウェルはその年の11月、カナリア諸島沖でヨットから行方不明になり、しばらくして膨張した裸の死体が発見された。マクスウェルの下で仕事をしていたジョン・タワー元米上院議員は同じ年の4月、搭乗していた近距離定期便がジョージア州ブランズウィック空港付近で墜落して死亡している。ふたりはイスラエルの情報機関の仕事をしていた。 ロスチャイルド人脈が「バチカンを含む包括的資本主義会議」で中心的な役割を果たしているのだろうが、ロックフェラー財団やフォード財団も関係、そしてローマ教皇庁が加わった。目指しているのは資本主義の「リセット」、つまり破綻した資本主義から私的権力が直接統治するファシズム体制への移行だ。そのために邪魔なロシアと中国を潰すため、あらゆる手段を講じてくるだろう。アメリカは日本も自分たちの戦争マシーンに組み込んでいる。2021年から世界を舞台とした「超限戦」が本格化する可能性が高い。そのための準備はCOVID-19を利用して進められている。
2020.12.25
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ロシアの気候問題特使を務めていたアナトリー・チュバイスが辞任、国外へ出たという。イギリスやアメリカの金融資本によるロシア経済支配の中核人物がロシアを去ったと言うことだ。 チュバイスは1992年11月にボリス・エリツィンが経済政策の中心に据えた人物で、エリツィンの娘であるタチアナの利権仲間。HIID(国際開発ハーバード研究所)なる研究所と連携していたが、ここはCIAの工作資金を流していたUSAIDからカネを得ていた。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,” Next Revelation Press, 2015) エリツィン時代にチュバイスはエゴール・ガイダルと同じようにラリー・サマーズの命令で動いていた。サマーズは1983年に28歳でハーバード大学の教授になった人物。世界銀行の主任エコノミスト、財務次官、財務副長官、財務長官、ハーバード大学の学長を歴任した。ロシア工作のためにサマーズが雇ったデイビッド・リプトンとジョナサン・ヘイはCIAのエージェントだ。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) 先日、ウラジミル・プーチン大統領がエルビラ・ナビウリナ中央銀行総裁の続投を決めた際には落胆の声も聞かれたが、チュバイスの辞任はロシア経済を自立させるためにプラスだろう。今後、プーチンのブレーンであるセルゲイ・グラジエフが注目されることになりそうだ。 2014年2月にバラク・オバマ政権はネオ・ナチを使ったクーデターでウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領を排除した。その際、東部のドンバスや南部のクリミアの制圧に失敗、オバマ大統領は退任の直前までロシアとの関係を悪化させることに力を注いた。その時の副大統領がジョー・バイデンだ。 オバマ政権のジョン・ケリー国務長官は査証の発給禁止、資産凍結、貿易面での制裁などを検討する考えを示したが、その直後にグラジエフは「個人的な意見」として、経済制裁が発動された場合、貿易の決済に使う通貨をドルから別のものに変更、「西側」の金融機関から受けている融資の返済を拒否する可能性を示していた。SWIFTに替わるSPFSをすでに稼働、23日にプーチン大統領は非友好国へ天然ガスを売る場合、ルーブル決済に限定させるように指示したと報道されている。 グラジエフは2014年6月、ナチスに焚き付けられた強大な軍事力がロシアとの戦争を狙っていると指摘し、まずドンバス、次にクリミアを奪いにくると主張している。ビクトリア・ヌランドがオデッサでウクライナのエージェントがロシアと戦争することを望んでいると語ったともしている。クリミアへは約50万人が攻め込んでくると想定していた。実際、アメリカ/NATOはウクライナで戦争の準備を進め、ロシアに対する恫喝、挑発を繰り返してきた。ロシアの残された選択は「戦争か不名誉か」だともしている。 こうした展開を予想していたであろうプーチン大統領は2018年3月1日、連邦議会における演説でロシアやその友好国に対する攻撃には反撃すると宣言、同時に保有する最新兵器を明らかにした。核戦争のリスクを減らすため、アメリカとロシアの戦争になるとアメリカの本土も攻撃されると警告したわけだ。
2022.03.24
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ウクライナ北東部のハリコフ州にあるイジュムでロイターをはじめとする西側の有力メディアが戦時プロパガンダを展開している。「集団墓地」を発見したというのだが、集団墓地関して5月に別の説明がなされていた。戦死したウクライナ兵の遺体をウクライナ軍が引き取らないため、ロシア軍がやむなく集団墓地に埋葬したというのだ。その際の映像もアップロードされている。ロシア軍に埋葬させるのはアメリカ/NATOの戦略なのかもしれない。 イジュムの件でロイターは集団墓地で掘り起こされた死体の首にロープが巻きついていたと主張、ロシア軍に殺されたことを示唆、それを西側の有力メディアは広めたのだが、数時間後にその「報道」をロイターは取り消している。最初に伝えた話で少なからぬ人びとがイメージを作り上げたので、その段階で目的は達成したとも言える。 ロイターはマリウポリの件でも偽情報を流している。この年は2014年2月のクーデター直後からネオ・ナチで編成されたアゾフ特殊作戦分遣隊(通称アゾフ大隊)に占領されていたが、ロシア軍によって解放された。 解放された住民は異口同音にネオ・ナチで編成された親衛隊の残虐な行為を告発していた。そうした告発は本ブログでも繰り返し紹介してきた。そうした住民のひとりがアゾフスタル製鉄所から脱出したナタリア・ウスマノバ。5月2日にシュピーゲル誌は3分間にわたる彼女の証言を伝えたが、すぐに削除されてしまった。証言の中で彼女は親衛隊の残虐な行為を告発、ロシアへ避難すると発言、戻るならその場所はドネツクしかないとしていた。 この証言はアメリカ/NATOやキエフ政権にとって都合が悪い事実である。その前にロイターもウスマノバの証言映像を流していたが、それは約1分間。シュピーゲル誌は映像をロイターから入手したとしているので、ロイターは編集で事実を捻じ曲げ、ロシア軍を批判しているかのように編集していたのだ。戦況が悪化してからの「大本営発表」だ。 勿論、こうしたプロパガンダを西側の有力メディアは以前から行っていた。2001年9月11日の出来事、アフガニスタンやイラクに対する先制攻撃でも偽情報が流されていたが、2011年春にリビアやシリアを攻撃した際には西側の有力メディアが伝える「報道」から事実を探し出すことが難しくなった。この時もハリウッド的な手法を使われている。 何度も引用しているが、シリアに対する侵略戦争が始まってから1年ほど後の2012年5月にシリア北部のホムスで住民が虐殺されたが、その出来事を現地で調査したメルキト東方典礼カトリック教会修道院長のフィリップ・トルニョル・クロは西側の有力メディアが事実に反する話を伝えていることに気づく。そして「もし、全ての人が真実を語るならば、シリアに平和をもたらすことができる。1年にわたる戦闘の後、西側メディアの押しつける偽情報が描く情景は地上の真実と全く違っている」と報告している。こうした状況は改善されないどころか悪化している。
2022.09.18
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