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アメリカ軍とイスラエル軍がイランを奇襲攻撃した直後にイラン軍は報復攻撃を開始、西アジアにあるアメリカ軍基地は大きなダメージを受けたことは早い段階から指摘されていている。その事実をCNNが5月1日に伝えた。イラン軍攻撃で被害を受けた基地は少なくとも16か所だとしている。 CNNはネオコンの広報機関とみなされているメディアだが、1998年6月にはアメリカ軍のMACV-SOG(ベトナム軍事援助司令部・調査偵察グループ)が1970年に逃亡米兵をサリンで殺害したと報じている。その作戦名はテイルウィンド(追い風)。CNNは軍関係者だけでなく有力メディアから攻撃され、調査を行ったふたりのプロデューサーは誤報だと認めるように要求されるが拒否、解雇された。そのひとり、エイプリル・オリバーによると、放送では示されなかった重要な情報をCNNは隠しているという。 その作戦に関する重要な証言をしたひとり、トーマス・ムーラー提督は1970年から74年まで統合参謀本部議長を務めた人物。それに対し、MACV-SOGは情報機関と特殊部隊が母体で、指揮系統は正規軍と別である。つまりムーラー提督はテイルウィンドと無関係であり、沈黙を守る必然性もなかった。 その放送の翌年、アメリカ陸軍の第4心理作戦群の隊員が2週間ほどCNNの本部で活動していたことも明らかになっている。「産業訓練」というプログラムの一環で、編集に直接はタッチしていなかったとしても、心理戦の部隊を受け入れると言うこと自体、報道機関としては許されない行為だ。アメリカ軍の広報担当だったトーマス・コリンズ少佐によると、派遣された軍人はCNNの社員と同じように働き、ニュースにも携わったという。 この事実を最初に報じたのはフランスのインテリジェンス・ニューズレターで、オランダのトロウ紙が2000年2月21日に後を追う。アメリカ軍の広報担当、トーマス・コリンズ少佐によると、派遣された軍人はCNNの社員と同じように働き、ニュースにも携わったという。(Trouw, 21 February 2000) アメリカとイスラエルによる奇襲攻撃を受けたイランはミサイルやドローンで反撃を開始、イスラエルのテルアビブやハイファといった都市を破壊し、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)に近い場所も攻撃した。 また、カタールにあるアル・ウデイド空軍基地、クウェートのアル・サレム基地、アラブ首長国連邦(UAE)のアル・ダフラ空軍基地、バーレーンのアメリカ軍第5艦隊基地、サウジアラビアのリヤドにあるプリンス・スルタン空軍基地なども攻撃。3月27日にはサウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地に駐機していたAWACS(早期警戒管制機)のE-3と2機のEC-130H電子戦機をイラン軍は破壊、KC-135空中給油機複数機も機能不全の状態にした。 イランは何年も旱魃で苦しんでいたのだが、アメリカ軍基地が攻撃された後、イランとその周辺では豪雨が発生、一部の地域では雪が降り、人びとを驚かせた。 西アジアの乾燥した地域で雨が降ることは珍しい。チグリス川とユーフラテス川の水量は増加し、砂漠には花が咲き、干上がっていた湖には水と生命が戻った。枯れていたダムは満水状態になり、放水を開始したという。 この劇的な気象の変化をもたらした原因はイラン軍がペルシャ湾岸諸国にあるアメリカ軍のレーダー施設全てを破壊したことにあると考える人が少なくない。ドップラー式気象レーダー網のNEXRADに疑惑の目が向けられている。 善良なる研究者などから「実現不可能」とされている気候工学だが、その共同プロジェクトをイスラエルとUAEは1990年代に開始した。そして2010年から15年あたりからイラン周辺の水問題が始まる。イランのマフムード・アフマディネジャド大統領は2011年に「彼らは我々の雨を盗んでいる」と発言した。勿論こうした「陰謀論」は相手にされないことになっている。ただ、イランがペルシャ湾岸のアメリカ軍基地を破壊した後、長期にわたって続いた旱魃は終息したことは確かだ。***********************************************楽天プログにアクセスしにくい場合、下記サイトへ【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.05.04
2020年代に入ってから「テクノ-ファシズム」の危険性が警告されるようになった。情報機関と結びついたIT(情報技術)企業が不特定多数の人びとを監視する収容所国家が築かれているということだが、この技術は遺伝子操作を含む生物工学と結びつき、人びとのロボット化という悪夢が浮上してきたのだ。ドナルド・トランプ政権はIT企業群の経営者たちと緊密な関係にある。 そうしたIT企業群の中で、現在、中心的な役割を果たしている企業はパランティア。2003年にCIAのベンチャー・キャピタル部門であるIn-Q-Telからの資金で創設された会社で、イスラエルの情報機関とも関係が深く、パランティアの共同創設者である現在会長のピーター・ティールはドナルド・トランプ大統領を支持、J・D・バンス副大統領のスポンサーとしても知られている。 同社はイスラエルを積極的に支援、イスラエル軍によるガザでの住民虐殺に絡んで軍事監視や航法システムを開発したという。アムネスティ・インターナショナルによると、パランティアはアメリカにおける人権侵害、イスラエルの軍や情報機関への人工知能製品やサービスの継続的な供給において、国際法や国際基準を露骨に無視してきた。 ピーター・ティールは決済サービス企業のペイパルを創業した人物でもあり、彼が重役を務めているカービンは緊急通報システムで知られる会社。カービンの重役は大半がイスラエルの電子情報機関である8200部隊の元将校だ。カービンの出資者にはイスラエル軍の情報機関アマンの局長を経て参謀総長、そして首相に就任したエフード・バラクが含まれる。バラクは同社の会長に就任した。 カービンの主要な資金源のひとりがジェフリー・エプスタイン。言うまでもなく彼は性犯罪の容疑で逮捕され、収監中に死亡した人物。エプスタインは未成年の男女を有力者に提供する一方、そうした関係を記録して有力者を脅して操っていたとされている。 パランティアの監視システムは大衆を24時間365日監視、彼らからプライバシーを奪うが、エプスタインの仲間が行ってきた富豪たちの「ソドムとゴモラ」的な行為は暗闇の中に隠されるはずだった。 エプスタインはバラクとビジネスの上でつながっていたのだが、バラクによると、彼をエプスタインに引き合わせたのは、イスラエル労働党の政治家で首相にもなったシモン・ペレス。その兄弟であるギデオン・ペルスキーが創設したスイス・イスラエル銀行から融資を受けていたブルース・ラッパポートはウイリアム・ケイシーの友人だ。(Whitney Webb, “One Nation Under Blackmail Vol. 1,” Trine Day, 2022) 8200部隊からスピンアウトした誕生した企業はアメリカの通信システムに「裏口」を組み込み、インターネットやコンピュータの分野で大きな影響力を持つ企業、例えばAlphabet、マイクロソフト、メタなどと結びついている。 対イラン攻撃でアメリカ軍はAIを活用したパランティアのミッション統制システム「メイブン・スマート・システム」を使い、攻撃開始から24時間に約1000カ所を攻撃、10日以内に攻撃目標は5000に達したとされている。 その際、イランの最高指導者だったアヤトラ・アリ・ハメネイ師のほか、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含むイランの要人を殺害した。 パランティアのシステムはパターンを分析し、次に何が起こるかを推測、戦争の全サイクルを網羅する統合システムを段階的に構築しているとも言われている。その推測に基づく軍事作戦でアメリカは簡単に勝てるとドナルド・トランプ大統領も信じていたのだろうが、目論見は外れた。IAEA(国際原子力機関)はイランに関する報告書を作成する際、パランティアのAIで作成したという。 パランティアは2019年11月、SOMPOホールディングスと共同で日本法人のパンティール・テクノロギーズ・ジャパンを設立、ヤマトホールディングスと提携。2020年11月に富士通はパランティア・ジャパンと戦略的なグローバル・パートナーシップの発展に向けた契約を締結したと発表している。また同社今年1月に小泉進次郎防衛相はワシントンDCのパランティアを訪問した。アメリカ国防総省のDARPAやDIUと関係の深い防衛装備庁のDISTIは富士通、Sakana AI、パランティアと密接な関係を築いている。こうした企業の背後にはイスラエルの電子情報機関が存在していると言える。 国内だけでなく地球規模で人びとを監視するシステムをアメリカやイギリスの情報機関が築き始めたのは1970年代のこと。そうした状況はアメリカの上院でも問題になり、1975年1月に「情報活動に関する政府の工作を調べる特別委員会」が設置され、76年5月には「情報特別委員会」が設立された。下院では1975年2月に「情報特別委員会」が設置され、この問題が議論されている。 上院の委員会で委員長に就任したフランク・チャーチ議員は1975年8月にネットワーク局のNBCで放送されていたミート・ザ・プレスという番組に出演、そこでアメリカ政府の通信傍受能力はアメリカ国民に向けられる可能性があり、そうなると人々の隠れる場所は存在しないと警鐘を鳴らした。 これは世界的な問題になるのだが、日本ではマスコミも学者も「市民活動家」も無視していた。個人的な経験で恐縮だが、その重要性を彼らに訴えても「聞く耳を持たない」という態度だった。ところが検察は違う。法務総合研究所はアメリカで開発された監視システムPROMISに関する報告を1979年3月と80年3月、概説資料と研究報告の翻訳として『研究部資料』に掲載している。PROMISを含む監視技術に関する話は拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』(三一書房、2005年)で説明した。2010年に出版が予定されていた続編でも新しい情報を加えて説明するつもりだったが、この出版計画は立ち消えになった。 テクノ-ファシズムは戦争や虐殺と結びついているが、ジョン・F・ケネディ大統領は1963年6月10日、アメリカン大学における卒業式でソ連との平和共存を訴えた。アメリカにとって都合の良い「平和」を軍事力で世界に押しつける「パックス・アメリカーナ」を否定することから始まり、アメリカ市民は「まず内へ目を向けて、平和の可能性に対する、ソ連に対する、冷戦の経過に対する、また米国内の自由と平和に対する、自分自身の態度を検討しはじめるべき」(長谷川潔訳『英和対訳ケネディ大統領演説集』南雲堂、2007年)だと語りかけたのだ。そのケネディは同年11月22日にテキサス州ダラスで暗殺された。 その後リンドン・ジョンソン、リチャード・ニクソン、ジェラルド・フォード、ジミー・カーター、ロナルド・レーガン、ジョージ・H・W・ブッシュ、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ドナルド・トランプ、ジョー・バイデンが大統領を務めている。緊張緩和を目指したニクソンはスキャンダルで辞職に追い込まれたが、それ以外の大統領は大同小異。国外では侵略戦争、国内では収容所化を進めて強者を富ませるシステムを築いてきた。 こうした政策は上位0.1%の富豪を富ませたものの、大多数の人びとを貧困化させ、不幸にしてきた。ドナルド・トランプを支持した人びとの多くはそうした政策を変えさせたかったのだろうが、その希望は叶わなかった。叶うわけがないのだ。こうした政策を推進している「悪党」を排除すれば人びとが幸せになるというわけではない。人びとを不幸にする政策は個人でなくシステムが生み出しているのである。 このシステムを築き、維持してきた人びとはいるが、個人を排除してもシステムが存在している限り、政策は基本的に変わらない。世界の大半を支配している現在のシステムは通貨を崇めるカルト集団によって作られたと主張した人もいる。 小説家のベンジャミン・ディズレーリはイギリス首相だった1875年にスエズ運河運河を買収している人物。そのディズレーリが書いた小説『コニングスビー』の中に、次のようなことが書いてある。「(ジョン・)ハムデン(オリバー・クロムウェルの従兄弟)による最初の運動から1688年の最後の最も成功した運動(名誉革命)に至るまで、イングランドにおけるホイッグ党指導者たちの最大の目的はベネチア共和国をモデルとした高貴な貴族制の共和国をイングランドに樹立することであり、当時のあらゆる思索的な政治家がそれを研究し称賛することだった。」 「ベネチア共和国をモデルとした高貴な貴族制の共和国」とは寡頭制にほかならない。オリガーキーだ。EUは寡頭制であることを隠していないが、「民主主義」なるタグをつけている西側諸国のシステムも寡頭制だ。民主主義体制ではない。民主的な政策が打ち出されたとしても、寡頭制という枠組みの中でのこと。儚い幻影だ。 1970年代以降、支配システムの中でエレクトロニクス技術が果たす役割が飛躍的に拡大、最近ではAIがその中心になりつつある。さらに遺伝子を人工的に操作する技術と一体化し、人間をコンピュータ・システムにおける端末のようにしようとしている。テクノ-ファシストには倫理観がない。彼らの技術が実用化されれば労働者も兵士もいらなくなる。いらない人間を食べさせる必要がないと彼らは考えているようで、そこから人口削減という話も出てくる。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.05.03
アメリカ政府にとってウクライナとイランは重荷になっている。両国で彼らは簡単に勝てると考えて戦争を始めたが、いずれも敗北しつつあるのだ。勝利を演出して泥沼から抜け出したいのだろうが、それもできないでいる。戦況が優勢なロシアやイランは降伏を求めるだろうが、それをアメリカは受け入れ難い。ギャンブルで一発逆転を狙うしかなさそうだが、成功する確率は小さい。 それでもアメリカはイランとの停戦にこぎつけ、次の戦闘に備えて戦力の増強を図り、イスラエルに対しては1日で6500トンのアメリカ製兵器を運び込んだ。2月28日以降、アメリカはイスラエルへ11万5600トン以上の装備を輸送したという。ドナルド・トランプ政権がイランに対する新たな攻撃の準備をしている可能性は高い。アメリカ海軍は西アジアにふたつの空母打撃群を配備している。 また、イスラエルはUAE(アラブ首長国連邦)に対し、小型ドローン探知システム「スペクトロ」、アイアンビーム・レーザー防衛システム、アイアンドーム・ミサイル防衛システムの供与を開始、両国の情報共有も始めたと伝えられている。 停戦はイスラエルとアメリカがイランに対する次の戦争を準備するための時間稼ぎにすぎないと見られているが、停戦発表から1週間が経過した後でもホルムズ海峡の通常航路は再開されず、イランによる航路管理とアメリカによる取り締まりの下での航行。アメリカ海軍は艦艇は攻撃されることを避けるため、イランの沿岸から200マイル(320キロメートル)沖合にいる。 停戦が発表される前日の4月7日には11隻の船舶がホルムズ海峡を通過したが、4月11日には17隻、封鎖が発表された4月12日には21隻、4月13日には17隻が通過した。4月14日には合計19隻の船舶が航行したが、そのうち外へ出た船は14隻、中へ入った船は5隻だった。 これからも封鎖を継続する可能性があるが、それでイランが屈服することは考えにくい。アメリカがホルムズ海峡の航行を妨害し続けるならば、イランは「懲罰的な対応」をするともいう。 トランプ政権にはベンヤミン・ネタニヤフ政権と協力してイランに対する新たな爆撃作戦を始めるか、「勝利」を宣言して撤退するという選択肢もある。どの道を進むかは不明だ。アメリカ中央軍はイランに対する「短期間で強力な」攻撃計画を準備しているとも言われているが、イランからの強烈な報復は避けられない。すでに西アジアのおけるアメリカ軍の基地やアメリカの石油施設はイランの攻撃でダメージを受けているが、イランは大規模な弾道ミサイル攻撃を実施すると警告している。そうした展開にアメリカは耐えられないかもしれない。 つまり、アメリカにとって最もリスクの小さい手段は経済戦争。トランプ政権はイラン封鎖を長期化させる準備をするように指示したと言われているが、イランが石油を積み込んだタンカーはアメリカの封鎖を突破できる。20隻程度のタンカーを同時に出航させた場合、アメリカが阻止できるのは1割程度にすぎない。イランあhカスピ海を経由してロシアとも繋がっているが、中国へイランから鉄道で石油を運ぶという案もあるようだ。 パキスタンはアメリカの封鎖を回避するため、イランとの間に6つの回廊を開設したというが、イランはそのパキスタンへ3段階の計画を伝えたという。交渉の第一段階は戦争の完全終結と国連の確かな保証、戦争終結後のホルムズ海峡の管理についての協議、そして核問題。イランは戦争が終結するまでアメリカと核開発計画について交渉する意思はないということだが、トランプ政権は核合意なしに戦争は終結しないと主張している。 そこでアッバス・アラグチ外相のロシア訪問が注目されている。その際、サンクトペテルブルクでセルゲイ・ラブロフ外相だけでなく、ウラジミル・プーチン露大統領と会談したのだ。イランはロシアと連携している。そして中国とも。トランプ大統領はイラン問題でロシアや中国も相手にしなければならない。 アメリカとイスラエルは2020年1月、IRGC(革命防衛隊)のクッズ軍を指揮していたガーセム・ソレイマーニーをバグダッド国際空港で暗殺した。そのソレイマーニーは2019年5月、今年のラマダン期間中にイランとアメリカの間で戦争が起こり、ホルムズ海峡が交渉の材料になると予言する演説を行なっていた。その映像が話題になっている。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.05.02
ロシア軍の元参謀総長で、国防副大臣を務めたこともあるユーリー・バルエフスキーはウラジミル・プーチン露大統領のウクライナを舞台として戦争への取り組み方を批判、話題になっている。プーチンのNATOに対する姿勢が弱腰で、そこをつけ込まれてロシアの未来を危うくしていると言うのだ。バルエフスキーだけでなく、モスクワのエリート層はウクライナ戦争終結のためにプーチン大統領が断固とした行動を取らなかったことに不満を抱いていると言われている。 こうした批判はアメリカの元政府高官などからも聞かれる。断固とした姿勢を見せないとネオコンは付け上がり、事態を悪化させるとしている。NATO諸国と合意が成立するとプーチン政権は考えているのかもしれないが、それは幻想に過ぎない。 プーチン大統領が断固たる行動に出ない理由のひとつは話し合いで解決したいという思いがあるのだろうが、アメリカ、イギリス、イスラエルといった類の国々には通用しないだろう。こうした国々がこれまでに行ってきたことを振り返れば明らかだ。交渉は時間稼ぎであり、合意を自分たちは守らず、相手には守らせる。騙し討ちも得意技だ。そうした手法でアメリカやイスラエルはイランの指導層は殺されてきた。 こうした国々を相手にしていれば、バルエフスキーのような主張をする人が出てきて当然だが、西側はそれを狙っている可能性がある。ロシア、中国、イランなどの指導部で内紛が起こることを西側は願っているだろう。西側の大手メディアはバルエフスキーの発言を利用したいはずだ。 しかし、プーチンの「甘い対応」がNATO諸国を戦争へと引き摺り込み、疲弊させているとも言える。ウクライナやイランでの戦争で欧米諸国やイスラエルの兵器は枯渇状態。「停戦」で態勢を立て直そうするものの、金融化が促進された西側諸国の生産能力はロシアや中国に比べて劣る。NATOが兵器や情報をウクライナ人に提供すればロシア人を弱体化せられ、その上で攻撃すればNATOは勝てると考えたのだろうが、そうした展開にはなっていない。ジハード傭兵やネオ・ナチでゲリラ戦を挑むのかもしれない。 西側メディアはNATOの軍事力は強大であり、ロシアのそれは弱いと本気で信じているかもしれないが、それは妄想に過ぎない。ウクライナでの戦争を見るだけでも明らかだ。1991年12月にソ連が消滅した後、米英の私的権力は致命的な失敗を犯した。ロシアやイランといった国と本当に戦争を始めてしまったのだ。その結果、彼らの幻術は効力をなくした。イギリスはアヘン戦争後、東アジア侵略の代理として日本を使ったが、現在の日本に中国に対抗するだけの戦力があるとも思えない。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.05.01
イギリス国王のチャールズ3世は4月28日、アメリカ下院本会議場で演説、その中で2001年9月11日の攻撃を持ち出した。ニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)に対する攻撃、いわゆる「9/11」だ。その直後にNATO(北大西洋条約機構)はNATO条約第5条に基づく緊急事態を宣言、一致団結したとチャールズは指摘、同じように今日、ウクライナを守るため、その揺るぎない決意が必要だと主張。NATOが一致団結してロシアとの戦争に突入しようと訴えたわけだが、アメリカの下院議員はそれに総立ちの拍手で応えた。 ウクライナを舞台にした戦争は、短期的に見ても、バラク・オバマ政権が2013年11月から14年2月にかけてキエフでクーデターを仕掛けたところから始まる。2010年の大統領選挙で勝利したビクトル・ヤヌコビッチを排除し、アメリカの傀儡体制を樹立しようとしたのだが、東部ドンバスの住民は反クーデター軍を組織して抵抗を開始、南部クリミアの住民はキエフの状況を素早く察知、ロシアに保護を求めた。 こうした事実はアメリカ軍の内部からも噴出してくるようになった。例えば、元デルタフォース指揮官のピート・ブレイバーがアメリカ国民にウクライナの犠牲について真実を語っている。彼によると、すでに約125万人のウクライナ兵士が死亡、ブチャでの「虐殺事件」はまるで冗談のような作り話だとしている。これは「事件」当時から明白だったのだが、それをデルタフォースの元指揮官が話っているのは興味深い。 ウクライナの情報機関員が凍ったトラックから遺体を引き出し、地面に横たえ、両手を縛っている様子を虐殺現場にいたフランス人記者が目撃したのだが、西側の大手メディアは報道しなかったとしている。確かにその通りだ。 ロシア軍が占領したどの都市でもロシア兵は解放者として歓迎されるとブレイバーも認めている。ロシア軍が到着すると人びとは外へ出てきて祝い、自分たちの街にウクライナ軍が駐留していたために自分たちが暮らしていた過酷な状況について語り合うとしている。 オバマ政権がクーデターの実行グループとして使ったのはネオ・ナチだが、そのネオ・ナチを操っていたのはMI6やCIA、つまりイギリスやアメリカの情報機関。それに対し、ウクライナの軍や治安機関に所属していた人の約7割はネオ・ナチ体制を嫌って離脱したと言われている。 クーデターでウクライナに米英の傀儡体制を築くひとつの目的はロシアの隣国をNATOの支配下に置くことでロシアに軍事的な圧力を加えることにあったが、ロシアとヨーロッパ諸国を分断して両者を弱体化させることも狙っていた。 ロシアとヨーロッパ諸国を結びつけていたのはロシア産の安価な天然ガス。ドイツをはじめとするヨーロッパ諸国の生産活動や社会生活はそのエネルギーによって支えられていた。ロシアから見るとヨーロッパ諸国は巨大マーケットであり、それを奪われるとロシア経済は崩壊すると見られていた。実際、ヨーロッパの生産活動は麻痺し、社会生活は崩壊した。 その2014年には香港でCIAとMI6が「佔領行動(雨傘運動)」なる反中国運動を展開、中国とロシアは接近、戦略的な同盟を結んだ。その関係を強化するために天然ガスを輸送するパイプライン、鉄道、道路などを建設し始め、中国のBRI(一帯一路)とロシアを中心とするユーラシア経済連合を連結させる動きがある。 イギリスやアメリカは海軍力でユーラシア大陸の周辺部を支配し、内陸部を締め上げようとしてきた。その戦略をハルフォード・マッキンダーという学者が1904年にまとめ、発表している。ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もその理論がベースになっている。 19世紀前半のイギリス政界に君臨していたヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)はロシアをイギリスにとって最大のライバルとみなし、「ウクライナ人はわれわれが反ロシア蜂起のストーブに投げ込む薪だ」と語り、ポーランドをロシアとドイツの間の障壁として復活させる計画を立てていた。これは現在も機能している。 また、パーマストン子爵は中国におけるイギリスの権益を守るためにチャールズ・エリオットを1836年に広東へ派遣、東インド艦隊の軍事行動の規制を緩めて清(中国)への軍事的な圧力を強化、1840年にはアヘン戦争を仕掛けている。彼の政策はセシル・ローズ、ナサニエル・ロスチャイルド、アルフレッド・ミルナー、ウィンストン・チャーチルらが引き継いだ。 その後、セシル・ローズもアングロ・サクソンが世界を征服するべきだと主張している。彼は1871年にNMロスチャイルド&サンの融資を受けて南部アフリカでダイヤモンド取引に乗り出して大儲けした人物で、1877年6月にフリーメーソンへ入会した後、彼は『信仰告白』を書いている。 その中で彼はアングロ・サクソンが最も優秀な人種だと主張、その優秀な人種が住む地域が増えれば増えるほど人類にとってより良く、大英帝国の繁栄につながると主張、秘密結社はそのために必要だとしている。この考えは帝国主義として現実化した。 作家で政治家でもあったベンジャミン・ディズレーリは小説の中でこうしたイギリス支配層について書いている。例えば1844年に出版された『カニングスビー』には、「(ジョン・)ハムデン(オリバー・クロムウェルの従兄弟)による最初の運動から1688年の最後の最も成功した運動(名誉革命)に至るまで、イングランドにおけるホイッグ党指導者たちの最大の目的はベネツィア共和国をモデルとした高貴な貴族制の共和国をイングランドに樹立することであり、当時のあらゆる思索的な政治家がそれを研究し称賛することだった」としている。 15世紀から17世紀にかけてポルトガルとスペインは世界を荒らし廻り、富を築いていた。1521年にエルナン・コルテスは武力でアステカ王国(現在のメキシコ周辺)を滅ぼして莫大な金銀を奪い、インカ帝国(現在のペルー周辺)ではフランシスコ・ピサロが金、銀、エメラルドなどを略奪しながら侵略を続けて1533年には帝国を滅ぼしている。 莫大な量の貴金属を盗んだだけでなく、ヨーロッパの侵略者は先住民を酷使して鉱山開発も行った。その象徴的な存在がボリビアのポトシ銀山。1545年に発見されたこの銀山だけで18世紀までに15万トンが運び出されたとされ、スペインが3世紀の間に南アメリカ全体で産出した銀の量は世界全体の80%に達したと言われている。 ただ、略奪の詳細は不明で、全採掘量の約3分の1は「私的」にラプラタ川を経由してブエノスアイレスへ運ばれ、そこからポルトガルへ向かう船へ積み込まれていたという。16世紀の後半にスペインはフィリピンを植民地化、銀を使い、中国から絹など儲けの大きい商品を手に入れる拠点として使い始めた。(Alfred W. McCoy, “To Govern The Globe,” Haymarket Books, 2021) そうした財宝を運ぶスペインの船を海賊に襲わせ、奪っていたのがイギリスにほかならない。エリザベス1世の時代にイギリス王室が雇った海賊は財宝を略奪しただけでなく、人もさらっていた。イギリスの海賊の中でもジョン・ホーキンス、フランシス・ドレイク、ウォルター・ローリーは特に有名だ。 ジョン・ホーキンスは西アフリカでポルトガル船を襲って金や象牙などを盗み、人身売買のために拘束されていた黒人を拉致、その商品や黒人を西インド諸島で売って金、真珠、エメラルドなどを手に入れてい他のだが、こうした海賊行為をエリザベス1世は評価、ナイトの爵位を彼に与えている。 フランシス・ドレイクは中央アメリカからスペインへ向かう交易船を襲撃して財宝を奪い、イギリスへ戻る。彼もホーキンスと同じように英雄として扱われた。女王はそのドレイクをアイルランドへ派遣して占領を助けさせるが、その際、ラスラン島で住民を虐殺したことが知られている。その後も海賊行為を働いたドレイクもナイトになっている。 ホーキンスやドレイクについで雇われた海賊のウォルター・ローリーは侵略者のイングランドに対して住民が立ち上がったデスモンドの反乱を鎮圧するため、アイルランドにも派遣された。ローリーも後にナイトの爵位が与えられている。(Nu’man Abo Al-Wahid, “Debunking the Myth of America’s Poodle,” Zero Books, 2020) チャールズ3世は今回、アメリカ議会で帝国主義の推進を宣言した。アメリカやイギリスは現在も同じ戦略に基づき、同じことをしていると言うべきだろう。アメリカやイギリスはすでにウクライナへ傭兵や兵器のオペレーターだけでなく、特殊部隊や情報機関員を派遣、さらに衛星からの情報を提供している。すでにロシアとの「代理戦争」という段階は過ぎ、直接的な戦いになっている。その戦いのため、NATO諸国は一致団結しろとイギリス国王は求めているのだ。ロシア側もNATOとの直接的な戦争が本格化すると覚悟しているだろう。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.30
イランのアッバス・アラグチ外相はアメリカ政府の代表団との会談を拒否してパキスタンとオマーンを訪問した後、ロシアを訪れ、サンクトペテルブルクでウラジミル・プーチン露大統領と会談した。 その席でプーチン大統領はイランの最高指導者であるモジュタバ・ハメネイ師から書面によるメッセージを受け取ったと語り、またイラン国民について国家主権を守るために「勇敢かつ英雄的に」戦っていると称賛した。ロシアを訪問したアラグチ外相がセルゲイ・ラブロフ外相だけでなく、プーチン大統領と直接会談したことに注目する人は少なくない。ロシアがイランとの緊密な関係を世界にアピールしていると言えるだろう。 モジュタバ・ハメネイ師が負傷している、死んだのではないか、あるいはイラン指導部の中で混乱が生じているといった噂が流れているが、根拠は示されていない。ハメネイ師については情報がなく、「殺したはずだ」と考えている人たちが探りを入れているようにも思える。指導部の混乱という推測は、イラン側の動きを見ると混乱しているようには思えず、間違い、あるいは嘘である可能性が高い。そもそも中枢がいなくなっても機能するように組織は設計されていると言われている。 イランの指導部が混乱しているとする主張はドナルド・トランプ米大統領が叫んでいる。「戦場で惨敗を喫している『強硬派』」と『穏健派』の間で内紛が起きているというのだ。こうした話の出所はイスラエルではないかと元CIA分析官のラリー・ジョンソンは推測している。 モジュタバ・ハメネイ師、イラン議会のモハマド・バゲル・ガリバフ議長、アラグチ外相、革命防衛隊(IRGC)のアフマド・バヒディ司令官、そしてマスード・ペゼシュキアン大統領は1980年から88年にかけてのイラン・イラク戦争でIRGCに所属していたとジョンソンは指摘、現在の指導部は共通の戦闘経験を持ち、結束している手強いチームだとしている。 アメリカ政府の代表がイラン政府の代表と会談できなかった事実、あるいはイランを攻撃できないことを誤魔化そうとしているのかもしれない。ちなみに、戦場で惨敗を喫しているのはアメリカ軍とイスラエル軍だ。西アジアのアメリカ軍基地やイスラエルの主要都市は攻撃で破壊されている。 そもそもアメリカ側の「交渉団」に参加している大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナー、中東担当特使のスティーブ・ウィトコフはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権と関係が深く、J・D・バンス副大統領のスポンサーは、パランティア・テクノロジーズのピーター・ティール。パランティアはアメリカ主導軍がイラクを攻撃した2003年にCIAのベンチャー・キャピタル部門であるIn-Q-Telからの資金で創設された会社で、イスラエルの情報機関とも関係が深い。この「交渉団」をイラン側が信頼するはずがなく、またトランプ政権はイラン側と何らかの合意を実現しようと思っているとも思えない。 トランプ大統領はまたイランに対する大規模な空爆を実施するのではないかと言われているが、中国やロシアからも緊張が伝わってくる。アメリカの中間選挙を中止させるような出来事を計画しているという噂もある。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.29
ジェームズ・オキーフが率いる調査グループの潜入記者に対してアメリカ陸軍の化学核安全保障を担当するアンドリュー・ハグが話す様子を撮影した映像を4月22日に公開した。その中でハグはウクライナの指導部が「援助金」を横領している事実、陸軍は依然としてサリンを含む化学兵器級の物質を保有し、軍所属の化学者が神経ガスへの曝露で死亡した事件についても語り、イランの最高指導者であるモジタバ・ハメネイがやり方を変えなければ殺されるだろうとも推測している。ピート・ヘグセス国防長官は記者会見でハグが今後、国防総省で働くことはないと語った。 ウクライナでの戦争はバラク・オバマ政権が2013年11月から14年2月にかけてキエフで仕掛けたクーデターから始まっている。クーデター後の体制はアメリカの影響下にあるのだが、その体制で汚職が蔓延していることをハグも指摘している。ハグによると、ウクライナ人はドバイ移住を夢見て窃盗を働いている。こうした実態をハグがオバマ政権に報告したところ、「気にしない」と言われたという。 ウクライナの腐敗については元デルタフォース司令官のピート・ブレイバーも明らかにしている。彼の人脈には現役の国務省官僚や情報機関員がいて、彼らは約125万人のウクライナ兵士が死亡したと話しているという。 現在、戦場ではロシア軍が圧倒的に優勢だが、そのロシア軍が占領したどの都市でも住民は彼らを解放者として歓迎、部隊が到着すると人びとは外へ出てきて祝い、自分たちの街にウクライナ軍が駐留していたために自分たちが暮らしていた過酷な状況について語り合うとしている。実際、こうした映像は現地に入って取材してジャーナリストが伝えていた。 日本でもマスコミが反ロシア宣伝に使っていた「ブチャにおける虐殺事件」については、その話が「あまりにも偽物臭く、まるで冗談のようだ」とし、「だからこそ、西側メディアは報道しない」と語っている。 彼によると、「ロシア人に射殺されたとされる人々が、泥の中に両手を後ろ手に縛られて横たわっているという話だが、実際には真っ白なネクタイで縛られている」と指摘、「虐殺現場にいた数少ない勇敢なフランス人記者が、ウクライナの情報機関員が凍ったトラックから遺体を引き出し、地面に横たえ、両手を縛っているのを目撃した。彼はその件で何度も尋問を受けた。」と語っている。 実際、そうした指摘は当時からあり、本ブログでも書いている。どのような肩書きであろうと、体制の中で安穏に生活していたい人びとはこうした事実を「陰謀論」という呪文で封印しようとしてきたが、それも限界にきているようだ。 ウクライナへ流入する資金にはCIAの工作資金も含まれている。NED(ナショナル民主主義基金)からUSAID(米国国際開発庁)、NDI(ナショナル民主主義研究所)、IRI(国際共和研究所)、CIPE(国際私企業センター)、国際労働連帯アメリカン・センターなどを経由してCIAの工作資金が流れ込んでいる。ウクライナはマネーロンダリングの舞台になったとも言われてきた。 また、アメリカの国防総省はウクライナで生物化学兵器の研究開発も行っていた。ロシア軍は2022年2月24日からウクライナに対する攻撃を始めたが、その初期段階でウクライナ側の重要文書の回収を進めている。その中にはドンバス(ドネツクとルガンスク)に対する攻撃計画、ロシア語を話す人びとの「浄化」、つまり大量虐殺に関する文書が見つかっている。 そのほか、ウクライナで進められてきた生物兵器の研究開発に関する資料も含まれていた。ロシア側はイゴール・キリロフ中将を中心とする部隊はアメリカ国防総省の内局であるDTRA(国防脅威削減局)にコントロールされた研究施設が30カ所あると発表している。生物兵器の研究開発はDTRAから資金の提供を受け、CBEP(共同生物学的関与プログラム)の下で進められたという。 ロシア国防省によると、ロズモント・セネカとジョージ・ソロスのオープン・ソサエティがウクライナにある生物化学兵器の研究開発施設へ資金を提供していることを示すものも含まれ、ロシアやウクライナを含む地域を移動する鳥を利用して病原体を広める研究もしていたという。 そのほか、国務省、USAID、USAMRIID(米国陸軍伝染病医学研究所)、WRAIR(ウォルター・リード陸軍研究所)、そしてアメリカの民主党が仕事を請け負い、さらに国防総省とメタバイオタ、ブラック・アンド・ビーチ、そしてCH2Mヒルが仕事をしている。 キリロフが記者会見でウクライナにおける生物兵器の問題について発表した翌日、2022年3月8日にアメリカの上院外交委員会で国務次官を務めていたビクトリア・ヌランドはウクライナの施設で研究されている生物化学兵器について語っている。マルコ・ルビオ上院議員の質問を受け、兵器クラスの危険な病原体がロシア軍に押収されるかもしれないと語ったのだ。つまり、ウクライナの研究施設で生物化学兵器の研究開発が行われていたことを否定しなかった。 2023年4月にはロシア議会が報告書を発表している。その中で、アメリカの研究者が人だけでなく動物や農作物にも感染でき、大規模で取り返しのつかない経済的損害を与える「万能生物兵器」を遺伝子組換え技術を利用して開発していたと指摘。そうした兵器を秘密裏に使い、「核の冬」に匹敵する結果をもたらすつもりだという。この特性は「レプリコン・ワクチン(自己増幅型COVIDワクチン)」と似ている。 長年医薬品業界で研究開発に携わってきたサーシャ・ラティポワはその前にCOVID-19と国防総省の関係を指摘していた。アメリカでは裁判所の命令で医薬品メーカーやFDA(食品医薬品局)が隠蔽しようとした文書が公開されたが、それを彼女は分析、バラク・オバマ大統領の時代から国防総省が「COVID-19ワクチン」の接種計画を始めたという結論に達していた。 今のところオキーフは活動を続けられているが、内部告発を支援する活動をしていたWikiLeaksのジュリアン・アッサンジは2019年4月11日にロンドンのエクアドル大使館で逮捕された。アメリカ当局から狙われていたアッサンジをエクアドルのラファエル・コレア大統領は政治犯だと認め、2012年に政治亡命を認めていた。そこで同国の大使館が保護していたのだが、次のレニン・モレノ大統領は亡命を取り消した。アッサンジの弁護団によると、アメリカからの引き渡し要請に基づくものだという。 彼が逮捕された理由のひとつはWikiLeaksが2010年の4月5日にWikiLeaksが公表した映像だと見られている。2007年7月にバグダッドでロイターの特派員2名を含む非武装の十数名をアメリカ軍の軍用ヘリコプターAH-64アパッチが銃撃、射殺する様子を撮影した映像だ。 その映像を見ると攻撃された人びとが武装しているようには見えず、ヘリコプターの乗組員が武装集団と誤認したとは考えられない。勿論、戦闘はなかった。 アメリカの司法当局はアッサンジをハッキングのほか「1917年スパイ活動法」で起訴していた。本ブログでは繰り返し書いてきたが、ハッキング容疑はでっち上げ。残るは「1917年スパイ活動法」だ。 日本では1985年6月、自民党に所属する議員が「スパイ行為を処罰する法律案」を国会に提出、廃案になっているが、その後も同じ試みが繰り返されてきた。高市早苗首相も同じ考え方のようだ。巷にも「スパイを取り締まる法律が必要だ」と声高に叫ぶ人たちがいる。 それに対し、かつて特務機関員として活動していた人物は1985年当時、そうした主張を笑っていた。「どのような法律があろうと情報を取るのがスパイであり、そのような法律は国民に向かうだけだ」というのだ。 アメリカでは一般国民を監視する仕組みが存在している。FBIは1950年代からCOINTELPROと名付けられた国民監視プログラムを開始、67年8月にはCIAが同じ目的でMHケイアスというプログラムを始めているのだが、電子技術の進歩により、監視能力は飛躍的に強化された。 拙著『テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない』(三一書房、2005年)でも書いたように、アメリカの場合、監視技術の開発は国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)が中心になっている。この機関で開発されていたTIA(総合情報認識)では個人の学歴、銀行口座の内容、ATMの利用記録、投薬記録、運転免許証のデータ、航空券の購入記録、住宅ローンの支払い内容、電子メールに関する記録、インターネットでアクセスしたサイトに関する記録、クレジット・カードのデータなどあらゆる個人データを収集、分析できた。(William D. Hartung, “Prophets Of War”, Nation Books, 2011) このプロジェクトが発覚した後、2001年9月にはMATRIXと名づけられた監視システムの存在が報じられていた(Jim Krane, 'Concerns about citizen privacy grow as states create 'Matrix' database,' Associated Press, September 24, 2003)が、その後、監視技術は飛躍的に「進化」している。 しかし、「スパイを取り締まる」という名目の法律は国民一般以上に、内部告発者を取り締まるために使われるのだろう。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.28

ドナルド・トランプ大統領は繰り返しイランに勝利したと宣言しているが、イランからイスラエルや西アジアにあるアメリカ軍基地に対するミサイルとドローンによる攻撃は弱まらない。最近ではアメリカの大手メディアもイランが西アジアのアメリカ軍基地に与えた被害はアメリカ政府が公式に認めている以上に深刻だと認めている。イランに対する新たな軍事攻撃はアメリカ軍にとって大惨事になる。 4月25日時点でイランがホルムズ海峡を通過させたのは同国が許可した中国の石油タンカーやギリシャの貨物船など5隻だけで、アメリカの制裁対象になっているイラン船籍のばら積み貨物船もトランスポンダーを作動させた状態で中国に向けて海峡を抜けたと伝えられている。 アメリカ海軍はこの地域へ空母エイブラハム・リンカーンと空母ジェラルド・R・フォードを派遣していたが、空母ジェラルド・R・フォードは船内で大規模な火災が発生して離脱、修理には1年以上かかると言われている。そこで空母ジョージ・H・W・ブッシュを代わりに派遣した。 空母エイブラハム・リンカーンは3月にイラン南部沿岸から約340キロメートルの地点まで接近したものの、イラン軍のミサイルとドローンによる攻撃を受け、イラン沿岸から約1100キロメートルの地点まで離れざるをえなくなった。 それに対し、イラン革命防衛隊(IRGC)はホルムズ海峡で大型コンテナ船2隻、パナマ船籍のフランチェスカとリベリア船籍のエパミノンダスを拿捕、イラン領海まで移動させたという。IRGCはこれらの船舶はイスラエルと関係があると主張している。 ホルムズ海峡の航行をコントロールしているのはIRGCであり、アメリカ軍ではないと見られているが、ここにきて海峡の海底にあるケーブルが注目されている。海峡の海底には主要なものだけで7本のケーブルが敷設され、膨大な量のデータを伝送しているが、イランはこれらのケーブルへの依存度が低い。もしイランがこの海底ケーブルを切断した場合、ペルシャ湾岸諸国はインターネットから遮断され、銀行業務は停止、データセンターは機能しなくなり、金融危機を引き起こし、経済を破綻させる。 こうした状況を生み出したのは2月28日にアメリカとイスラエルが実行したイランに対する奇襲攻撃だ。イランの最高指導者を務めていたアヤトラ・アリ・ハメネイ師のほか、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含むイランの要人が殺害されている。 その「斬首攻撃」でイランは屈服するとトランプ大統領は信じていたのだろうが、そうした展開にはならず、イスラエルとアメリカは窮地に陥っている。西側の大手メディアはそうした実態を伝えないが、イランが勝利しているという事実は変えられない。 イスラエルとアメリカを戦争へと向かわせた西側の勢力はウクライナでロシアとの戦争を始めた勢力と重なる。この勢力はユーラシア大陸の周辺部を支配し、内陸部の中国とロシアを締め上げて世界を征服するという長期戦略を持っている。 その手段のひとつがエネルギー資源の支配。バラク・オバマ政権がキエフでクーデターを実行した理由のひとつはロシアから西ヨーロッパへ天然ガスを運ぶパイプラインを抑えることにあった。ロシアから市場を奪い、ヨーロッパから安価なエネルギー資源の供給源をなくすということだ。イランとの戦争はホルムズ海峡の封鎖を招き、世界、特に東アジアへ石油供給を断ち切ることになる。ベネズエラの指導部を買収して同国の油田を奪ったことも目的は同じ。アメリカは石油と天然ガスを今のところ自給できる。 イランの体制転覆はシオニストが計画してきた大イスラエル構想ともつながる。西アジア全域をイスラエルが支配するということで、これはヨーロッパの帝国主義国、イギリスとフランスが結んだサイクス・ピコ協定と重なる。 この協定の存在はロシア十月革命で成立したウラジミル・レーニンを中心とするソ連が明らかにした。1917年11月ことだが、その月にアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出してイスラエル建国への道を切り開いた。いわゆる「バルフォア宣言」だ。1948年5月にイスラエルの建国が宣言された後、イスラエルが西側勢力が西アジアを支配する拠点になる。 現在、イスラエルを支配しているのは、ウラジミール・ジャボチンスキーが創設した「修正主義シオニスト世界連合」の一派。その系譜に属すベンヤミン・ネタニヤフはナイル川からユーフラテス川に至る大イスラエルを創設するという「歴史的かつ精神的な使命」を宣言した。その勢力を支えているのはアメリカのキリスト教シオニスト。キリスト教原理主義者、聖書根本主義者、福音派とも呼ばれている。この宗派はネオコンと同じく1970年代に台頭した。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.27
イランのアッバス・アラグチ外相は4月24日から少人数のチームを率いてパキスタン、オマーン、そしてロシアを歴訪中だ。最初の訪問先であるイスラマバードでアラグチ外相はパキスタンのアシム・ムニール陸軍参謀総と会談したが、アメリカ政府の代表と会う予定はないという。 次の訪問国であるオマーンのバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディ外相はイランとアメリカによる会談の経緯を知っていた。同外相によると、9カ月の間に2度、アメリカとイランはイランの核開発計画について協議し、合意まであと一歩のところまで迫っていたのだが、最も実質的な協議からわずか数時間後、アメリカとイスラエルはイランを攻撃したとしていた。アメリカがイランを騙し討ちしたことを知っていたわけであり、交渉に何らかの形で関わっていたと言えるだろう。 そしてロシア。イランに対する支援は強化されている。アメリカやイスラエルが手を出せないカスピ海を利用し、ロシアは輸送機や船舶で物資をイランへ運びつつある。その物資とは生活物資のほか、防空システムや砲弾が含まれているのではないかと見られている。欧米諸国は停戦を態勢を立て直す時間稼ぎとして使うが、ロシアもイラン人の生活を支え、その戦力を増強している可能性が高い。 ロシア駐在イラン大使のカゼム・ジャラリによると、「もし彼ら(アメリカやイスラエル)が戦争を望むなら、われわれは戦争する準備ができている。もし協議が行われるのであれば、それは公正で、永続的な平和の実現を目指し、イランの正当な権利を認め、損害を補償し、新たな侵略に対する保証がなければならない。その場合、我々は交渉の準備ができている」と述べたが、アメリカにイランの要求を受け入れる意思が見られない。 ジャラリ大使はホルムズ海峡の通行料徴収でイランはロシアを含む複数の友好国に例外措置を設けているとジャラリ大使は語っているが、同時にホルムズ海峡を西側諸国に対する地政学的な報復の手段になるとしている。ホルムズ海峡の海底には通信ケーブルが存在、それもイランは脅しの材料になる。 2月28日にアメリカとイスラエルがイランを奇襲攻撃して最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含むイランの要人を殺害した。その「斬首攻撃」でイランは屈服するとトランプ大統領は信じていたのだろうが、そうした展開にはならなかった。 ちなみに、トランプがイスラエルの要請に基づいてイランを攻撃したことを示す文書「エピック・フューリー作戦と国際法」が4月21日、リード・D・ルービンスタイン法務顧問によって国務省のウェブサイトに掲載されている。その覚書によると、アメリカが国連憲章第51条を根拠にして、「同盟国であるイスラエルの要請に基づき、かつイスラエルの集団的自衛のために」戦争に従事しているとしている。 イランとアメリカ/イスラエルはミサイルとドローンで攻撃し合い、アメリカ/イスラエルは敗北した。アメリカとイスラエルはミサイルやドローンが枯渇したが、イランには余力がある。ドナルド・トランプ政権が停戦を望んで理由にひとつはそこにあるのだろう。兵器を補充したいのだが、西アジアにおけるアメリカ軍の主要な基地はイランの攻撃で破壊された。重要なレーダーも使えない。 イランとの戦争で勝つ見込みはないとアメリカの軍や情報機関は判断していたとされているが、それらをトランプ大統領は無視、イスラエルの主要都市は瓦礫の山が築かれ、西アジアのアメリカ軍基地も大きな損害を受けている。 多くの人はイスラエルがトランプ大統領を操っていると考えている。操る仕組みのひとつとされているものがジェフリー・エプスタインに関するファイルだ。アメリカの司法省が保有する約600万ページのファイルのうち、約300万ページは公開されたが、残りの約300万ページは未公開。しかも公開されたファイルは加害者などの名前が黒く塗られている。 公開されたファイルによると、人身売買に伴う性的サービス、拷問行為、胚や臓器の取り引き、人肉食などが行われていた。必然的に人が殺されている。凶悪犯罪だが、捜査機関の動きは鈍い。削除された資料には、トランプ大統領が未成年者を含む複数の女性と性的な関係を持ったとする当事者やその関係者の証言が含まれていたという。削除された文書のひとつはトランプが人身売買に関与していた主張しているとされている。それ以上に衝撃的な事実が未公開のファイルには記録されているのかもしれない。財務省もエプスタインに関するファイルを持っているようだ。 それら以上に重要なファイルがあるとも言われている。フロリダ州パームビーチの警察は2005年からエプスタインに対する捜査を開始したのだが、捜索令状が執行される直前にエプスタインはライリー・キラリー私立探偵事務所を使い、コンピュータ、映像、写真、文書などを6つの保管庫へ運び込んだ。保管料はエプスタインの会計士が支払っているという。 言うまでもなく、エプスタインがこうした活動を個人で行なっていたわけではない。1970年代にイスラエル軍の情報機関ERD(対外関係局)に所属、87年から89年にかけてイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたアリ・ベンメナシェによると、エプスタインはギレーヌ・マクスウェルや彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルと同じように、イスラエル軍の情報機関、つまりアマンのために働いていた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) ビル・クリントンもエプスタインと親しかったが、クリントンによると、彼が接触していたのはギレーヌ・マクスウェル。ギレーンはエベリン・ド・ロスチャイルドとその妻リンと非常に親しい関係にあったからだという。 ギレーヌによると、イギリス王室の一員だったアンドリュー王子(現在はアンドルー・マウントバッテン-ウィンザー)をエプスタインに紹介したのはエべリン・ド・ロスチャイルドの妻、リン・フォスター・ド・ロスチャイルド。リン・フォスターはエプスタインの友人である。 つまり、トランプを操るために使われているとされているエプスタイン・ファイルを管理していたエプスタインやギレーヌはイスラエル軍の情報機関の指揮下にあるだけでなく、ロスチャイルド家とも親しい。トランプが始めた対イラン戦争の背後にもこうした人脈が存在しているのだろう。 そうした人脈にはトランプが顧問弁護士として雇っていたロイ・コーンも含まれる。この人物は禁酒法時代に密造酒で大儲けしたルイス・ローゼンスティールの子分。ふたりは「親子のように」親しかったとされている。ローゼンスティールの妻だったスーザン・カウフマンによると、彼女の元夫はCIAの秘密工作にも協力していたユダヤ系ギャングのメイヤー・ランスキーとも親しくしていた。 コーンは弁護士資格をとった後、ニューヨークの犯罪組織、ガンビーノ・ファミリーのメンバー何人かの法律顧問にもなっている。そのひとりがジョン・ゴッチ。1953年から54年にかけては「赤狩り」のジョセフ・マッカーシー上院議員の法律顧問を務めた。マッカーシーの黒幕はFBIのJ・エドガー・フーバー長官だったが、そのフーバーとローゼンスティールは繋がっていた。(Jonathan Marshall, “Dark Quadrant,” Rowman & Littlefield, 2021)**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.26
パキスタン政府筋の話として、イランのアッバス・アラグチ外相が4月24日に少人数のチームを率い、アメリカとの新たな和平交渉を念頭に置いた事前協議のためにパキスタンのイスラマバードを訪問、さらにオマーンとロシアを訪問すると伝えられている。 すでにホルムズ海峡の通行が制限され、世界における原油やガスの供給量が減って価格が高騰、肥料の供給も混乱しているが、ここにきて通信ケーブルの問題も浮上してきた。イランは状況次第でケーブルを切断するという話が出てきている。 ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、戦乱で大きな被害を受けたアラブ首長国連邦はアメリカに対して財政支援を要請、もし支援がなければ石油やガス製品を人民元で売却せざるをえないと語った。 ロシア駐在イラン大使のカゼム・ジャラリによると、「もし彼ら(アメリカやイスラエル)が戦争を望むなら、われわれは戦争する準備ができている。もし協議が行われるのであれば、それは公正で、永続的な平和の実現を目指し、イランの正当な権利を認め、損害を補償し、新たな侵略に対する保証がなければならない。その場合、我々は交渉の準備ができている」と述べた。 ロシア国防省国際軍事協力総局のイェフゲニー・イリイン第一副局長はイラン軍について、「確固たる決意」と、新たな脅威に対し「適切かつ相応の」対応を行う用意があることを示したと述べた。そして、揺るぎない意志と勇気を示し、国家の独立と安定の「信頼できる保証人」となったとしている。 本ブログでも繰り返し書いてきたが、イランが戦争を終結させる条件として求めている項目は一貫している。ホルムズ海峡の通行をイランが管理し、イランの同盟勢力に対する軍事行動を停止、西アジア地域からアメリカ軍は撤退し、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定を策定、イランが被った損害を全額補償、すべての制裁および国際決議を撤廃、凍結されたイラン資産を返還、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認することだ。 アメリカとイスラエルがイランに対して始めた戦争の戦況はイランが優勢。戦いが長引けば長引くほどイランは優位になる。イランがこうした要求をするのはそのためだが、アメリカ政府は戦闘で負けているにも関わらず、イランに降伏を要求、イランの提示した条件をドナルド・トランプ政権が呑もうとしない。そもそもイスラエルやその背後の勢力が認めないのだろう。 イスラエルは「停戦」期間中もレバノンを攻撃、南レバノンの街は瓦礫と化した。ジャーナリストも殺害されている。そのイスラエルにレバノン政府は従属、戦っているのはヒズボラにほかならない。イスラエルやアメリカはそのヒズボラを壊滅させようと必死だ。 ところで、イスラエルは先住民であるアラブ系の人びとを暴力的に追い出し、作られた国である。シオニストがイスラエルの「建国」を宣言したのは、1948年5月14日のことだった。そのシオニストとはエルサレムの南東にあるシオンの丘へ戻ろうという「シオニズム運動」の信奉者で、ユーフラテス川とナイル川で挟まれている地域はユダヤ人の所有物だと考えていた。 シオニズムはエリザベス1世時代(1593年から1603年)のイングランドに「ブリティッシュ・イスラエル主義」として出現した。イングランドの支配層の間で、アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じ、人類が死滅する最後の数日間にすべてを包括する大英帝国が世界を支配すると予言されているという妄想が広まったのだ。この妄想は現在に至るまで存在している。 シオニズムという用語を1893年に初めて使用したのはウィーン生まれのナータン・ビルンバウム。近代シオニズムの創設者とされている人物は1896年に『ユダヤ人国家』という本を出版したセオドール・ヘルツルだが、その背後にはイギリスの強大な私的権力が存在していた。 イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。 1868年2月から12月、74年2月から80年4月までの期間、イギリスの首相を務めたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収したが、その際に資金を提供したのは友人のライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) ディズレーリは1881年4月に死亡、その直後からフランス系のエドモンド・ジェームズ・ド・ロスチャイルドがテル・アビブを中心にパレスチナの土地を買い上げ、ユダヤ人入植者へ資金を提供しはじめる。 イギリスは第1次世界大戦(1914年7月から18年11月)の最中にフランスと「サイクス・ピコ協定」を結んでいる。オスマン帝国を解体し、両国で分割することを決めていたのだ。これは秘密協定だったが、ロシアの十月革命で成立したボルシェビキ政権によって明るみに出されたのである。 協定が結ばれた翌月の1916年6月にイギリス外務省アラブ局はアラブ人を扇動して反乱を起こさせた。その部署にはトーマス・ローレンス、いわゆる「アラビアのロレンス」も所属していた。その当時、イギリスはエージェントを後のサウジアラビア国王でワッハーブ派のイブン・サウドに接触させている。 パレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われる書簡をアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出したのは1917年11月のこと。これがいわゆる「バルフォア宣言」だ。 イギリスは1920年から1948年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強める。 そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。この組織はIRA(アイルランド共和国軍)を制圧するために設立され、殺人、放火、略奪など残虐さで有名だった。そして1936年から39年にかけてパレスチナ人は蜂起。アラブ大反乱である。 1938年以降、イギリス政府は10万人以上の軍隊をパレスチナに派遣する一方、植民地のインドで警察組織を率いていたチャールズ・テガートをパレスチナへ派遣、収容所を建設する一方、残忍な取り調べ方法を訓練した。イギリス軍はパトロールの際、民間のパレスチナ人を強制的に同行させていたともいう。 委任政府は外出禁止令を出し、文書を検閲、建物を占拠、弁護人を受ける権利を停止する一方、裁判なしで個人を逮捕、投獄、国外追放している。この政策はイスラエル政府の政策につながる。 反乱が終わるまでにアラブ系住民のうち成人男性の10パーセントがイギリス軍によって殺害、負傷、投獄、または追放された。植民地長官だったマルコム・マクドナルドは1939年5月、パレスチナには13の収容所があり、4816人が収容されていると議会で語っている。その結果、パレスチナ社会は荒廃、1948年当時、イスラエルの「建国」を宣言したシオニストの武装組織に対して無防備な状態となっていた。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.25
日本人は「歴史小説」を好むが、歴史は嫌いだという声を聞く。これは事実だろう。旧日本軍も自衛隊も情報を軽視するという共通項がある。勿論、日本のマスコミも情報を集め、分析することができなくなっている。 現在、自衛隊だけでなく日本政府は情報をアメリカに依存しているのだが、これにはふたつの問題がある。ひとつはアメリカが日本に渡す情報は日本に信じさせたい話だということ、もうひとつはアメリカの情報分析能力がなくなっているということだ。 孫子には「彼を知りて己を知れば、百戦して殆うからず」だが、「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし」とある。後者は現在のアメリカだ。 アメリカの情報機関CIAには分析部門があり、能力は高かったが、その分析はソ連を核攻撃しようと目論んでいたネオコンにとって都合が悪かった。そこでCIA内部にチームBというプロパガンダ部門を設置するのだが、その中にはポール・ウォルフォウィッツも含まれていた。 1950年代にCIAの内部へ破壊工作チームが入り込み、徐々に組織を侵食していく。バラク・オバマ政権でCIA長官を務めたジョン・ブレナンは分析局に所属する分析官と作戦局に所属する作戦担当官をハイブリッド・ミッションセンターに統合したのだが、その目的は分析官を作戦部門に従属させることにあったと考える人もいる。現在、CIAで情報を分析している人びとは大統領が望む話を伝えるだけになったようだ。日本に「国家情報会議」を創設しても情報分析の面で向上するとは思えない。アメリカ政府の間違った情報を受け取るだけだろう。 アメリカではFBIが1950年代からCOINTELPROと名付けられた国民監視プログラムを開始、67年8月にはCIAが同じ目的でMHケイアスというプログラムを始めた。FBIは当初、コミュニストをターゲットにしていたが、途中でその矛先を平和運動に向けている。 MHケイアスを指揮していたのはCIAで防諜部長を務めていたジェームズ・アングルトン。この人物はアレン・ダレスの側近で、秘密工作で中心的な役割を果たし、イスラエルとの関係が深かった。アングルトンは監視プロジェクトの責任者としてリチャード・オバーを指名、その下に50名とも60名とも言われるメンバーがいた。 CIAの秘密工作担当副長官(DDP)だったトーマス・カラメシネスはアングルトンに対し、反戦運動と外国との関係を調べるために特殊工作グループ(SOG)を設置するように命令。秘密工作部門の幹部を務めていたコード・メイヤーによると、反戦運動の活動をしていたアメリカ市民25名をSOGは1969年10月から72年7月までの期間にエージェントとして雇っている。(Michael Holzman, “James Jesus Angleton,” University of Massachusetts Press Amherst, 2008)ターゲットの団体へ潜入していた工作員の人数は最も多いときで52名だったという。(Tom O’Neill, “Chaos,” William Heinemann, 2019) MHケイアスはCIAの内部でも秘密にされ、盗聴されることを恐れて中央情報局本部の地下に特別室を作って活動していた。CIAの内部でも限られた人間以外はそこに近づけなかったと言われている。すでに日本は自衛隊も兵器産業もアメリカ国防総省の指揮下にあるようだ。 日本では1952年4月に内閣調査室が創設された。初代の室長に就任したのは国警本部警備第1課長を務めていた村井順。後に綜合警備保障を創設する人物だ。 その村井は1953年9月から3カ月の予定で国外に出ているのだが、その名目はスイスで開かれるMRA(道徳再武装)大会への出席だった。この団体はCIAの別働隊で、村井が国外へ出た本当の理由は西ドイツのボンに滞在していたアレン・ダレスCIA長官に会い、新情報機関に関する助言を得ることにあったとされている。 しかし、ボン空港に到着すると間もなく村井はイギリスの情報機関員と思われる人物につきまとわれ、ロンドンの税関では腹巻きの中に隠していた闇ドルを発見されている。 この内閣情報室には調査能力がなく、情報機関とは言いがたい存在。そこで実際の調査は下請けに出していた。ところが調査を請け負っていた団体や個人の多くはCIAともつながり、内閣調査室に提出される報告書より詳しい内容の報告書をCIAへ渡していたと当時の関係者は証言している。 旧日本軍が無謀な侵略戦争で敗北した一因は情報の軽視にあったが、同じことをネオコンは行っている。CIAでは作戦部門の失敗を分析部門が指摘できなくなり、作戦は成功しているとする話だけが伝えられるようになった。ウクライナを舞台にした戦争でNATOが敗北、EUが崩壊へと向かっているが、その一因はそこにあるだろう。 ネオコンはアメリカの軍事と外交をコントロールしてきたと言われている。そのネオコンは1991年12月にソ連が消滅した際、自国が唯一の超大国になり、自分たちに逆らう国は存在しなくなったと認識、傍若無人な振る舞いが許されるようになったと考えた。 その考えに基づき、1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界征服プロジェクトが作成された。いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。 このドクトリンの最優先事項は新たなライバルの出現を防ぐことなのだが、ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に統合し、民主的な「平和地帯」を創設する、つまりドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、アメリカの支配地域を広げるということも謳われている。このドクトリンを日本が受け入れたのは1995年のことだった。 小泉純一郎政権以降、日本は着々とアメリカの戦争マシーンとして仕組みを築いてきた。そして2024年3月には陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊を一元的に指揮する常設組織として統合作戦司令部が編成された。これにより、自衛隊はアメリカ軍の指揮下に入ったと考える人は少なくない。 その7カ月後、防衛装備庁の下に防衛イノベーション科学技術研究所(DISTI)という機関が設置された。DISTIのモデルはアメリカ国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)と国防イノベーション・ユニット(DIU)で、DIUとは協力関係を推進していくという。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.24
高市早苗政権は4月21日に「防衛装備移転三原則」と「運用指針」を改訂、全ての防衛装備品の移転を可能にした。武器輸出の制限を緩和したのだ。すでにアメリカはウクライナにおけるロシアとの戦争や西アジアにおけるイランとの戦争でミサイルやドローンが枯渇、戦場で圧倒される事態になっている。工業製品の生産能力が不足しているからで、その不足を日本に補わさせようということだろう。今後、日本は侵略戦争を続けているアメリカやイギリスをはじめとする国々に対し、殺傷能力のある兵器を輸出することになる。 日本では防衛装備を担当する部署として2015年10月に防衛装備庁が設置された。その下に防衛イノベーション科学技術研究所(DISTI)という機関が設置されたのは2024年10月のこと。DISTIのモデルはアメリカ国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)と国防イノベーション・ユニット(DIU)で、DIUとは協力関係を推進していくようだ。 2001年9月11日以降、DARPAは「医療」関連の技術開発に注力、ウクライナにおいて実施された生物兵器の研究開発も行なっていたことが判明している。そうした研究開発には「COVID-19ワクチン」も含まれていたようだ。その薬剤に関連したファイザー社の文書をFDA(食品医薬品局)は75年間、封印しようとしていたが、一部の専門家が情報の開示を求める訴訟を起こし、迅速な公開を裁判所が命じて文書は明らかにされた。 そうした文書を分析したサーシャ・ラティポワは「COVID-19ワクチン」について、アメリカ国防総省のプロジェクトだと発表する。つまり騒動は軍事作戦の結果であり、医薬品メーカーは国防総省の契約企業ということになる。そうした企業は情報を公開する必要がなく、免責だ。 ところで、DISTIが設置される7カ月前、つまり2024年3月に陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊を一元的に指揮する常設組織として統合作戦司令部が編成された。この司令部を設置することで「自衛隊とアメリカ軍の部隊連携をより円滑にする」というのだが、自衛隊がアメリカ軍の指揮下に入ったのだと理解すべきだ。この司令部編成とDISTIの設置が無関係だとは思えない。 DISTIは今年3月、民間企業2社と契約を結んだ。その企業とは富士通とSakana AIだ。富士通は著名な日本企業であり、説明する必要はないだろう。もうひとつのSakana AIは2023年7月にデイビッド・ハ、リオン・ジョーンズ、伊藤錬が設立した会社。 デイビッド・ハは香港生まれのカナダ人で、ゴールドマン・サックスの日本法人でキャリアをスタートさせている。後に研究者として働いたGoogleブレインはGoogleの人工知能研究チーム。リオン・ジョーンズもGoogleで働いていた人物で、生成型人工知能の中核をなす研究論文「トランスフォーマー」の共著者として知られている。もうひとりの伊藤錬は外務省北米局に所属していた外交官で、在米日本大使館の二等書記官も務めている。北米局はアメリカ政府の日本支局的な存在で、伊藤とアメリカ支配層との関係が窺える。 富士通は2020年11月、パランティア・ジャパンと戦略的なグローバル・パートナーシップの発展に向けた契約を締結したと発表している。パランティアは2003年5月にCIAのベンチャー・キャピタル部門であるIn-Q-Telからの資金を得て創設された。 パランティアはイスラエルの情報機関とも関係が深く、共同創設者のひとりで現在会長を務めているピーター・ティールは決済サービス企業のペイパルを創業した人物。彼が重役を務めるカービンは緊急通報システムで知られる会社で、同社の重役は大半がイスラエルの電子情報機関である8200部隊の元将校。同社の出資者にはイスラエル軍の情報機関AMANの局長を経て参謀総長、そして首相になったエフード・バラクが含まれ、同社の会長に就任している。ティールはドナルド・トランプ大統領を支持、J・D・バンス副大統領は彼の弟子的な存在だ。 カービンの主要な資金源のひとり、ジェフリー・エプスタインは性犯罪の容疑で逮捕され、収監中に死亡した。この人物は未成年の男女を有力者に提供する一方、そうした関係を記録して有力者を脅して操っていたとされている。エプスタインはバラクとビジネスの上でつながっていたのだが、バラクによると、彼をエプスタインに引き合わせたのは、イスラエル労働党の政治家で首相にもなったシモン・ペレス。その兄弟であるギデオン・ペルスキーが創設したスイス・イスラエル銀行から融資を受けていたブルース・ラッパポートはウイリアム・ケイシーの友人だ。(Whitney Webb, “One Nation Under Blackmail Vol. 1,” Trine Day, 2022) 8200部隊からスピンアウトした誕生した企業はアメリカの通信システムに「裏口」を組み込み、インターネットやコンピュータの分野で大きな影響力を持つ企業、例えばAlphabet、マイクロソフト、メタなどと結びついている。 対イラン攻撃でアメリカ軍はAIを活用したパランティアのミッション統制システム「メイブン・スマート・システム」を使い、攻撃開始から24時間に約1000カ所を攻撃、10日以内に攻撃目標は5000に達したとされている。その際、イランの最高指導者だったアヤトラ・アリ・ハメネイ師のほか、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含むイランの要人を殺害した。 パランティアのシステムはパターンを分析し、次に何が起こるかを推測、戦争の全サイクルを網羅する統合システムを段階的に構築しているとも言われている。その推測に基づく軍事作戦でアメリカは簡単に勝てるとドナルド・トランプ大統領も信じていたのだろうが、目論見は外れた。IAEA(国際原子力機関)はイランに関する報告書を作成する際、パランティアのAIで作成している。 パランティアは2019年11月、SOMPOホールディングスと共同で日本法人のパンティール・テクノロギーズ・ジャパンを設立、ヤマトホールディングスと提携している。今年1月には小泉進次郎防衛相はワシントンDCのパランティアを訪問した。 アメリカ国防総省のDARPAやDIUと関係の深い防衛装備庁のDISTIは富士通、Sakana AI、パランティアと密接な関係を築いている。こ右下企業の背後にはイスラエルの電子情報機関が存在していると言える。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.23

アメリカ海軍は4月19日にイランの商船である「トゥスカ」をオマーン湾の公海上で拿捕、それに対してイランはホルムズ海峡に数千個の新型対艦機雷を配備したと伝えられている。アメリカ艦船がドローンで攻撃されたとも伝えられている。 アメリカ軍とイスラエル軍は2月28日にイランを攻撃、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含むイランの要人を殺害、これでイランの体制は倒れると考えていたのだろうが、そうした展開にはならなかった。 アメリカとイスラエルはこの攻撃以外にもイランの要人を殺害する作戦を実行してきた。たとえば3月17日にイスラエルがイランの国家安全保障最高評議会のアリ・ラリジャニ事務局長らを暗殺、昨年6月にはアメリカ軍とイスラエル軍がモハメド・バゲリ参謀総長を含むイランの要人を殺害しているのだが、マスード・ペゼシュキアン大統領、アッバス・アラグチ外相、イラン革命防衛隊(IRGC)のクッズ部隊を指揮していたイスマイル・カーニは無事だ。 ペゼシュキアンが大統領に就任したのは2024年7月のこと。前任者のエブラヒム・ライシは同年5月にアゼルバイジャンからベル212ヘリコプターで帰国する途中、そのヘリコプターが墜落し、同乗していたホセイン・アミール-アブドラヒヤン外相らと共に死亡した。濃い霧で視界が悪かったことが原因だとされているが、同行していた2機のロシア製ヘリコプターは問題なく帰還している。 こうした「斬首作戦」でイランの体制を転覆させることはできなかった。そこでドナルド・トランプ大統領は2026年4月7日、「今夜、ひとつの文明が滅びる」と宣言、「イランのすべての橋」と「すべての発電所…を…燃やし、爆発させ、二度と使えないようにする」とイランを脅した。確かにアメリカやイスラエルはイランを猛攻してきたが、イランは両国に報復、西アジアの主要アメリカ軍基地は壊滅、イスラエルのテル・アビブやハイファなどの都市は瓦礫の山になっていると伝えられている。 ここにきてアメリカ軍は少なからぬ輸送機を西アジアへ飛ばしているが、これはイランを攻撃する準備だと見られている。例によってアメリカは停戦を戦力増強に時間稼ぎに使っているのだろうが、イランも戦力を増強している。アメリカやイスラエルが手を出せないカスピ海を利用してロシアが物資をイランへ運びつつある。その物資とは防空システムや砲弾ではないかと見られている。2月28日に始まった戦闘で勝利したのはイランだと考える専門家が多いが、ミサイルの保有数はアメリカ軍が約4000発、イラン軍は約45万発だと推定されている。停戦前、アメリカやイスラエルのミサイルやドローンは枯渇していたが、イランには余裕があった。しかもロシアから供給されているようで、アメリカ軍はこれまで以上の大惨事になりそうだ。 こうした無謀な作戦をトランプ大統領が強行するのは「認知症」が進んでいるからだと言う人もいるが、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と同じウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」を進歩しているからだと主張する人もいる。 そのジャボチンスキーに傾倒していた学者のレオ・ストラウスはネオコンの思想的な師であり、「ユダヤ系ナチ」だとシャディア・ドリュリーは主張する。(Shadia B. Drury, “Leo Strauss and the American Right”, St. Martin’s Press, 1997)***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.22
パキスタンのイスラマバードで開かれる予定だった和平協議に参加しないとイランは4月19日に発表した。ドナルド・トランプ政権は戦争に勝利しているイランに対して降伏を要求、立場を繰り返し変更、矛盾した発言、そして停戦協定違反などを理由としている。アメリカ海軍が同日、イランの商船「トゥスカ」を公海上で拿捕したことで状況はさらに悪化した。 イラン革命防衛隊(IRGC)は報復を宣言、アメリカ艦船がドローンで攻撃されたと伝えられている。イランは「モスキート艦隊」と呼ばれる探知が困難で小型高速攻撃艇群を保有、洞窟からアメリカの艦船を攻撃しているようだ。アメリカ軍がイラン海軍の大半を破壊したという主張は間違い、あるいは嘘だ。 ホルムズ海峡を航行できる船舶は商船でなければならず、軍艦は航行でき図、船舶および積荷は敵対国と関係があってはならないとないとイランは定めている。また船舶はイランが指定した航路を通らなければならず、航行するためにはイラン軍と調整する必要がある。この条件は現在も有効だ。 すでにイラン軍はアメリカ軍のF-35戦闘機、F-15戦闘機、A-10攻撃機、E-3早期警戒管制機、KC-135空中給油機、MC-130J輸送機、ヘリコプターのHH-60ペイブホークとMH-60Mブラックホーク、監視用ドローンのMQ-4C、無人攻撃機のMQ-9などを撃墜した。またアメリカ軍が使用しているフェーズド・アレイ・レーダー、THAAD用のAN/TPY-2レーダーも破壊されたり損傷を受けたりしている。 アメリカ政府やその広報機関である大手メディアを無批判に信じている人でないかぎり、「アメリカとイランが大筋で合意に達した」とは思わなかっただろう。イラン政府はドナルド・トランプ大統領の発言を否定している。アメリカの空母が「火災」やイランからの攻撃で西アジアから離れているものの、アメリカ軍は地上部隊を増強、何らかの軍事作戦を準備している可能性は高い。 本ブログでも繰り返し書いてきたことだが、トランプ政権がイランと真剣に話し合おうとしていないことは明らか。オマーンのバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディ外相によると、9カ月の間に2度、アメリカとイランはイランの核開発計画について協議し、合意まであと一歩のところまで迫っていたというが、それはアメリカのトラップだった。 大詰めの協議から数時間後、最高指導者だったアヤトラ・アリ・ハメネイ師を含むイランの要人が集まるのを見計らって攻撃、殺してしまった。犠牲になったのはアリ・ハメネイ師のほか、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニなどだ。マスード・ペゼシュキヤン大統領、アッバス・アラグチ外相、IRGCのクッズ部隊を指揮していたイスマイル・カーニは生き残っている。 トランプ大統領はイランとの戦争はすぐにでも終わるかのように発言してきた。たとえば、ホルムズ海峡は開放されており、イランは二度とホルムズ海峡を閉鎖しないことに同意したと述べ、またイランはアメリカの支援を受けて全ての機雷を撤去しつつあり、アメリカとイランは協力してイランの高濃縮ウラン(HEU)を採掘するとも主張している。これらは全て嘘だった。 そこでトランプ大統領は妄想の中で生きていると考える人もいるが、原油相場や株式取引を操作することが目的だとする人もいる。イラン外相が4月17日にホルムズ海峡開放すると発表する約20分前、ブレント原油の先物取引で7990ロットを売却した人物がいたと伝えられている。この取り引きをした「投資家」は大儲けした。インサイダー取引を疑う人は少なくない。 こうした如何わしい動きがある一方、トランプ大統領はイランを攻撃する準備を進めているが、現在の戦力でアメリカ軍がイラン軍に勝てる可能性は小さい。この無謀な戦争をアメリカ大統領が行おうとしているのは、イスラエル軍の情報機関の下で働いていたジェフリー・エプスタインのファイルを恐れているからだと言う人もいる。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.21

イランとアメリカは4月17日にレバノンにおける停戦で合意したが、翌日にドナルド・トランプ米大統領は交渉が100%完了するまでイランの全港を封鎖すると発言、それに対してイランはアメリカによるイランの港湾封鎖を解除するまでホルムズ海峡を閉鎖しつづけ、アメリカ側の姿勢によっては紅海への入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡を閉鎖する可能性を示唆した。レバノンにおける停戦合意が成立した直後、トランプ大統領はイランを激怒させる発言をしたのだ。 そもそもトランプにイランとの交渉で問題を解決する意思があったとは思えない。イランが戦争を終結させる条件として求めている項目は一貫している。 その要求とは、ホルムズ海峡の通行をイランが管理、イランの同盟勢力に対する軍事行動の停止、西アジア地域からのアメリカ軍撤退、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定の策定、イランが被った損害に対する全額補償、すべての制裁および国際決議の撤廃、凍結されたイラン資産の返還、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認すること。 トランプ政権がこうした項目を呑まないかぎり、イラン政府は合意しない。イランはアメリカがウクライナなどで行ってきた手口を理解している。交渉による解決が可能であるように思い込ませ、停戦を実現、その間に次の軍事作戦を始める準備をするのだ。アメリカにとって停戦は時間稼ぎに過ぎない。そうした展開にならないような要求をイランはしている。 こうしたことはアメリカ側も理解していたはず。つまり両国が協議しても戦争を終結させることができないことをトランプ政権は承知していた。パキスタンのイスラマバードで開かれた会議は外交努力をしているように見せる演出にすぎない。実際、その間、アメリカ軍は西アジアにおける戦力を増強していた。 そうした中、イランのアッバス・アラグチ外相は「レバノンでの停戦合意に基づき、イランの港湾海事機構が既に発表した調整ルートに従い、停戦期間中は全ての商船のホルムズ海峡の航行を完全に開放する」とX(ツイッター)で発表したが、これはイランが求めていたことを否定しているように見えた。これは中国外務省の意向を反映していると考える人もいる。 しかし、本ブログでも書いてきたように、イラン議会の国家安全保障委員会で委員長を務めるイブラヒム・アジジによると、イランへ通行料を納め、軍参謀本部の許可を得た商船のみが指定された航路を通過することが認められるだけ。イラン側はトランプ大統領のメッセージを否定していた。イラン側交渉団のメンバーであるマフムード・ナバビアン議員もトランプ大統領による海峡の完全開放宣言を拒否、イランのタスニム通信はアラグチ外相の投稿を非難した。 アメリカやイスラエルは交渉が順調に進んでいるかのように装い、イランの最高指導者だったアヤトラ・アリ・ハメネイ師を含む多くの要人を殺害してきたが、マスード・ペゼシュキアン大統領と同じように、アラグチ外相は生き延びた人物だ。 ホルムズ海峡の封鎖は石油、天然ガス、尿素、ヘリウムなどの供給が止まり、世界的なサプライチェーンの混乱を招き、相場が高騰する。エネルギー資源の影響は言うまでもなく、尿素の供給不足は農業に大きな悪影響を及ぼし、ヘリウム不足は半導体製造、MRIスキャナー、光ファイバー、溶接、航空宇宙産業などにとっても大きなマイナス要因だ。 特に東アジアが大きなダメージを受け、中国や日本も例外ではない。中国は同盟関係にあるロシアから相当量のエネルギー資源を入手できるが、日本はアメリカからの圧力でロシアとの関係を悪化させてきた。日本は安全保障上、致命的な間違いを犯したと言える。 戦争が終結しても回復までに長い年月が必要だ。ホルムズ海峡を通らず、サウジアラビア経由でイスラエルのハイファまで運ぶという案もあるが、昨年6月の戦闘でイランはハイファ港を攻撃、使うことは困難だろう。それだけでなくペルシャ湾岸にある製油所、貯蔵タンク、パイプライン、油田、ガス田、それらに関連する施設がイランに攻撃されている。今後、戦闘が再開されれば被害は拡大する。 イランによる海峡封鎖だけでなく、国際的な保険市場の問題もある。戦争の激化に伴って保険料が急騰、さらに保険契約が解除されるという事態になった。保険契約を結ばずにタンカーが運行されるということは通常ない。 イランでは2025年10月にアヤンデ銀行が破綻した後、小口預金者が抗議のためにデモを始め、同年12月28日にはアメリカ政府がイランの通貨リアルを暴落させて経済を混乱させ、反政府デモを煽った。こ その上で、経済状況に抗議していたデモに潜入していたアメリカやイスラエルを含む国々の情報機関のメンバー、あるいはその協力者はデモを暴力的なものへ変化させ、銃撃を始めている。 トランプ大統領は今年4月5日、FOXニュースに対し、「ワシントンは1月のイランでの抗議活動中、イランのクルド系反体制派グループに武器を供与した」と認めているが、これは2011年春のリビアやシリアでのジハード傭兵による軍事侵略、14年2月にキエフでバラク・オバマ政権が仕掛けたクーデターでも同じことが行われた。デモの最中に数人の狙撃兵が屋上からデモ参加者や警官隊の双方に向けて発砲、両陣営は互いを殺人者とみなすようになり、「内戦」に発展するというシナリオ。これをCIAは「ドッグファイト」戦略と呼ぶ。 イランの場合、デモをコントロールするため、トランプ政権は約5万台のスターリンク端末をイランに密輸、政権転覆工作のために編成したグループに資金と共に渡したとされている。スターリンクのシステムを通じ、アメリカやイスラエルの情報機関からイランの治安部隊がどのように動いているかを知らせ、指示していたのだが、イラン政府はスターリンクを遮断することに成功して事態は沈静化した。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.20
アメリカとイスラエルが2月28日にイランを奇襲攻撃して始まった戦争は治っているように見える。停戦期間中、ホルムズ海峡は「完全に開放されるとイランのアッバス・アラグチ外相は投稿、ドナルド・トランプ米大統領はイランとの戦争がほぼ終結した、あるいは迅速な解決に近づいているとするメッセージを投稿したり発言したりしている。 ところが、停戦が発表された後、アメリカ政府はイランに関連するすべての船舶の海上封鎖を発表した。イランとの交渉が100%完了するまで、イランに関する限り、海上封鎖は引き続き有効だというのだ。 それに対し、イランはアメリカによるイラン港湾封鎖が解除されるまで、ホルムズ海峡を閉鎖しつづけ、アメリカによる封鎖が続く場合、紅海への入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡を閉鎖する可能性を示唆した。 また、イラン議会の国家安全保障委員会で委員長を務めるイブラヒム・アジジによると、イランへ通行料を納め、軍参謀本部の許可を得た商船のみが指定された航路を通過することが認められるだけ。イラン側はトランプ大統領のメッセージを否定している。イラン側交渉団のメンバーであるマフムード・ナバビアン議員もトランプ大統領による海峡の完全開放宣言を拒否、イランのタスニム通信はアラグチ外相の投稿を非難した。 トランプ大統領はイランの濃縮ウランに関する合意は事実上成立したと主張、イランの濃縮ウランを回収し、それをアメリカへ持ち帰れるとしているが、イラン外務省のイスマイル・バガイ報道官はこの主張を否定、イランは濃縮ウランを移転しないと語った。 トランプ大統領の事実に反する発言は、株式相場や石油相場を操縦することが目的だと考える人が少なくない。実際、株式相場は急騰し、石油相場は暴落したのだが、船舶はイラン革命防衛隊(IRGC)と連携する必要があり、IRGCはイラン政府が敵対国とみなす国の船舶を阻止する権限を有しているとされている。4月17日の時点でペルシャ湾にアメリカの軍艦は見当たらない。アメリカが「完全開放」を実現したと言える状態にはなく、その原因のひとつはアメリカによる合意違反にあるとイランは主張している。 イランは一貫してホルムズ海峡の通行をイランが管理し、イランの同盟勢力に対する軍事行動の停止し、西アジア地域からアメリカ軍は撤退し、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定の策定し、イランが被った損害に対する全額補償をし、すべての制裁および国際決議を撤廃し、凍結されたイラン資産の返還することなどを要求、さらにこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認することを求めている。 少なくとも現時点でこの要求をドナルド・トランプ政権が呑むとも思えず、イランとの間で交渉が成立するはずがない。トランプ大統領は何とかして「勝利」を演出しようとしているのか、「イランが約束を守らなかった」と主張して4月末までにイランに対する新たな攻撃を始めるだろうと推測されている。現在、多数のアメリカ軍輸送機が中東に向かっている。 イスラエルもレバノンへの侵略やイランの体制転覆を諦めていない。自力で実現できないため、アメリカ軍に実行させようとしているが、それだけでなくバブ・エル・マンデブ海峡を挟んでイエメンの対岸にあるソマリランドに部隊を派遣した。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.19

イランがアメリカとの交渉に応じる前提条件はいくつかあるが、そのひとつはイスラエルによるレバノンに対する攻撃を中止すること。イスラエルとヒズボラの戦闘を終結させられなければイランとアメリカとの交渉は始まらないとされていた。 アメリカ国務省は4月16日、そのイスラエルとヒズボラの停戦についての声明を発表した。アメリカはイスラエルに対し、「いつでも自衛のために必要なあらゆる措置を講じる権利を保持する」ことを認めている。これまで通り、たとえ脅威が存在しないことが明らかであっても、何らかの脅威への対応だとしてイスラエルはレバノンを攻撃できると解釈されている。 アメリカ/NATOが支援してきたウクライナのキエフ政権もふたつの停戦合意、2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」を守っていない。それが2022年2月のロシア軍によるウクライナへの軍事作戦に繋がった。 イスラエルとヒズボラの停戦をひとつの進展だと解釈することもできるが、ドナルド・トランプ政権はイランに対する新たな制裁を発表、その一方で西アジアにおけるアメリカ軍の戦力を増強している。兵員を1万名増やして5万名へ増強、何らかの攻撃を準備していると見られている。 しかし、100万名の兵士がいるとされるイラン軍の前には無力だ。保有するミサイルやドローンはイランがアメリカやイスラエルを圧倒しつつある。レーダーの戦いもイランが優勢だ。アメリカ軍が宣伝しているホルムズ海峡の封鎖も機能していない。アメリカが制裁対象にしている5隻のタンカーを含む9隻がオマーン湾からインド洋へ向かったと伝えられている。アメリカ軍の艦船はホルムズ海峡へ近づくことができないでいる。ホルムズ海峡をコントロールしているのはイランだ。 ところで、ジョージ・W・ブッシュ政権が2003年3月にイランを先制攻撃して以来、ネオコンの計画は計算間違いの連続である。この攻撃でネオコンはイラクに親イスラエル体制を樹立するつもりだったが、イランとイラクとの結びつきは強まり、アメリカ軍が占領し続けなければならない状況だ。ネオコンの戦略は破綻しているのだが、その事実を隠蔽するためにハリウッド仕込みの作り話を広めてきたが、それも限界に達しているようだ。 バラク・オバマ大統領は師であるズビグネフ・ブレジンスキーが編み出した「ムジャヒディン」を使う手法を使い始めた。これはブレジンスキーがアフガニスタンで始めた秘密工作の一環として使い始めたものだ。イギリスの外務大臣を1997年5月から2001年6月まで務めたロビン・クックは05年7月、「アル・カイダ」についてCIAの訓練を受けた「ムジャヒディン」の登録リストだと説明している。アル・カイダのイコンとして使われたがオサマ・ビン・ラディンはその登録リストに載せる人間を募集していたとされている。 オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を承認、ムスリム同胞団を使った体制転覆作戦を始動させる。そして引き起こされたのが「アラブの春」にほかならない。その流れの中でアメリカ、イギリス、フランスを含む国々がリビアやシリアに対する軍事侵略を始めた。 2011年2月に侵略戦争が始まったリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は同年10月に倒され、カダフィ本人はその際に惨殺されている。その際にアル・カイダ系武装集団のLIFG(リビア・イスラム戦闘団)とNATO軍の連携が明らかになった。反カダフィ勢力の拠点だったベンガジでは裁判所の建物にアル・カイダの旗が掲げられていた。 リビアが破壊された後、アメリカは戦力をシリアへ集中させると同時に、ジハード傭兵としてダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国などとも表記)を使い始める。 ダーイッシュがデビューしたのは2014年のこと。その年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧された。その際にトヨタ製小型トラック、ハイラックスの新車を連ねたパレードが行われ、その画像が世界に流された有名になったのだが、こうした戦闘集団の動きをアメリカの軍や情報機関は知っていたはず。偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などで監視しているからだ。ところが反応しなかった。 そうした武装集団の出現をアメリカ軍の情報機関DIAは2012年8月の時点でホワイトハウスに警告していた。オバマ政権が支援している反シリア政府軍の主力はアル・カイダ系武装集団のAQI(イラクのアル・カイダ)で、アル・ヌスラと実態は同じだと指摘、その中心はサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団だとしているのだ。2012年当時のDIA局長はマイケル・フリン中将である。 報告書の中で、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告、それがダーイッシュという形で現実になった。 そのダーイッシュは残虐さを演出、アメリカ/NATOの介入を誘ったのだが、2015年9月にシリア政府はロシア政府に軍事介入を要請、ロシア軍がダーイッシュなど傭兵部隊を一掃していく。ダーイッシュにはサダム・フセイン時代の兵士も参加していると言われているが、アメリカに雇われた傭兵だということは共通だ。 理由は不明だが、ロシア軍はイドリブへ逃げ込んだアル・カイダ系武装勢力にとどめを刺さなかった。その戦闘集団をアメリカやトルコが支援していたようだ。その後、シリアのバシャール・アル・アサド政権は経済戦争で疲弊、昨年11月27日にHTSがシリア軍を奇襲攻撃すると、呆気なく倒されてしまう。そして作られたアフマド・アル-シャラア(アブ・モハメド・アル-ジュラニ)の暫定政権はシーア派やキリスト教徒を虐殺してきた。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.18
2月28日にイランを奇襲攻撃したアメリカ軍とイスラエル軍は簡単に相手が屈服すると考えていたようだが、イラン軍の反撃で軍事的には劣勢だ。すでにイスラエルの主要都市は瓦礫の山が築かれ、西アジアのアメリカ軍基地も大きな損害を受け、両国の敗北は明白だが、アメリカ軍は「停戦」を利用して再攻撃の準備をしたようだ。再攻撃して勝利を宣言して撤退するつもりだと見られている。 そうした中、イランはパキスタンのイスラマバードでアメリカとイランの代表団と交渉している。イランに軍事情報を提供していると言われている中国も戦争の早期終結の望んでいると言われているが、イランは10項目の要求を取り下げていない。 その要求とは、ホルムズ海峡の通行をイランが管理、イランの同盟勢力に対する軍事行動の停止、西アジア地域からのアメリカ軍撤退、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定の策定、イランが被った損害に対する全額補償、すべての制裁および国際決議の撤廃、凍結されたイラン資産の返還、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認すること。少なくとも現時点でこの要求をドナルド・トランプ政権が呑むとも思えない。何とかして「勝利」を演出しようとするだろう。 現在、イランに負けているアメリカやイスラエルだが、「停戦」を実現して戦力を回復、再びイランを攻撃しようと目論んでいるはずだ。ベンヤミン・ネタニヤフ首相も言っていることからもわかるように、彼らの最終目標はイランをガザやリビアと同様、「石器時代」にし、西アジア全域を「イスラエル」にすることだろう。 すでにイランはホルムズ海峡を通過する船舶を制限、敵国と見なされた国のタンカーは通れなくなっている。そこでアメリカはイランの友好国の船舶も通さないと宣言した。それなりの影響はあるだろうが、アメリカの空母や駆逐艦が海峡に近づくことはできない。さらにイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はアデン湾から紅海へ入るために通過しなければならないバブ・エル・マンデブ海峡の通過を規制する動きを見せている。 ホルムズ封鎖の影響を最も大きく受けるのは日本を含む東アジア諸国だが、ヨーロッパ諸国がトランプ政権の海峡封鎖を批判している。東アジアの経済が麻痺すれば製品が生産されず、世界の経済が麻痺する。アメリカにはエネルギー資源があるというものの、エネルギー相場は上昇し、アメリカ国内の経済も麻痺させる。 バラク・オバマ政権がキエフでクーデターを成功させた後、ジョー・バイデン政権は誕生直後からロシアに対する軍事的な挑発を開始、2022年になると反クーデター派が支配するドンバスに対する砲撃を激化させた。ロシアがウクライナに対するミサイル攻撃を始めたのはその直後のことだ。 オバマ政権がウクライナ支配を目論んだのは、ロシアとヨーロッパの結びつきを強めていた天然ガスの流れを止めることにあった。ロシア産天然ガスをバルト海経由でドイツへ運ぶ「ノードストリーム(NS1)」と「ノードストリーム2(NS2)」が2022年9月に爆破される。西側ではウクライナが行ったと宣伝されているが、能力的に見ても状況を見てもアメリカやイギリスが中心になって実行された可能性が高い。 アメリカやイギリスの強大な私的権力はヨーロッパ諸国がロシア産の安価な天然ガスを入手できないようにしたのだが、ヨーロッパ諸国は唯々諾々として従った。今回、日本がアメリカの命令におとなしく従っているのと同じだ。 イランはミサイルなどの兵器を地下に隠しているだけでなく、生産工場も地下に建設、長期戦に備えているが、簡単に勝てると考えていたアメリカやイスラエルはミサイルやドローンが枯渇し、レーダーは破壊されて防空システムは機能しなくなっている。レバノンからイスラエルを攻撃しているヒズボラのミサイルも防げていないようだ。戦争が長引けば長引くほどアメリカやイスラエルは苦しくなる。 アメリカ政府は4月5日、同国空軍に所属するF-15E戦闘機のパイロットと兵器担当士官を救出する作戦を成功させたと発表したが、それにしては投入された航空機が多すぎる。数十人の特殊部隊員を乗せたC-130輸送機がイスファハン近くに着陸した数分後に2機目のC-130輸送機が接近してきたが、それをイラン軍が攻撃、積まれていた特殊車両や数機のMH-6ヘリコプターも破壊された。さらにブラックホーク・ヘリコプター2機も到着したが、これも格好の攻撃目標になり、A-10攻撃機も破壊された。その現場が核施設に近いイスファハンだったことから、アメリカの特殊部隊は核物質を盗み出そうとしていて失敗したと見られている。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.17

ドナルド・トランプ米大統領はイスラエル政府の言いなりで、正気と思えないような政策を打ち出し、苦境に陥っている。ホワイトハウスのスタッフは何をしているのかという疑問が生じるが、それに対する答えを提示した大手メディアが存在する。ニューヨーク・タイムズ紙だ。 同紙のジョナサン・スワンとマギー・ハーバーマンによると、2月11日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がホワイトハウスを訪問し、シチュエーション・ルームでトランプ大統領やその側近と秘密裏に会議を開いたという。 会議のテーマはイランで、壁に設置された大型スクリーンにはイスラエルの対外情報機関モサドのダビッド・バルネア長官やイスラエル軍関係者が映し出されていた。アメリカ側の出席者はスージー・ワイルズ首席補佐官、マルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグセス国防長官、ダン・ケイン統合参謀本部議長、ジョン・ラトクリフCIA長官、ジャレッド・クシュナー大統領補佐官、そしてスティーブ・ウィトコフ中東担当特使だという。ワイルズは2020年の選挙でネタニヤフのために働いた経験があり、ルビオ、ヘグセス、ラトクリフ、クシュナー、ウィトコフは親イスラエル派だ。 その会議の翌日、2月12日にはシチュエーション・ルームでアメリカの情報機関による分析結果が大統領の側近たちに示され、ラトクリフCIA長官はイスラエル側のシナリオを「茶番」と表現、ケイン統合参謀本部議長は大統領に対してイスラエルはアメリカが必要なので、強引に売り込んでいるのだと説明している。 こうした懸念を大統領は無視、2月27日にエアフォースワンの機内で「エピック・フューリー作戦を承認する。中止は認めない。幸運を祈る」と命じたというのだが、親イスラエル派でトランプに忠誠を誓っている側近がそのような懸念を表明したとする主張には疑問がある。責任をトランプやイスラエルに被せ、逃げようとしているようにも見える。 ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺された後、アメリカの軍事や外交はシオニストの一派であるネオコンが主導権を握ってきた。そのネオコンはソ連が消滅した直後の1992年2月、アメリカが冷戦に勝利して「唯一の超大国になった」という前提でアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)の草案として世界制覇プロジェクトを作成した。この草案がニューヨーク・タイムズ紙にリークされたことから最終的には穏健な内容へ変更されたものの、ネオコンの本心はその草案にある通りだろう。 DPG草案を作成する際に中心的な役割を演じた人物は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツ。そのため、この指針は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 本ブログでは繰り返し書いてきたが、ネオコンの思想的な支柱と言われている人物はウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」に傾倒していたレオ・ストラウス。アメリカの西アジア政策を指揮しているエリオット・エイブラムスもストラウス人脈だ。ベンヤミン・ネタニヤフの父親はジャボチンスキーの秘書を務めたことがあり、ベンヤミン自身もジャボチンスキーの信奉者である。 トランプ大統領を迷走させている原因はジェフリー・エプスタインのファイルだと考える人も少なくない。司法省が保有するエプスタイン・ファイル約600万件のうち公開されたのは半分ほどで、しかも黒塗りだらけ。そのほか財務省関係のファイルもある。そのうえエプスタインはライリー・キラリー探偵事務所を雇い、自宅にあったコンピュータ、映像、写真、文書などを少なくとも6つの保管庫へ移動させたとされている。当局はまだ手をつけていないようだ。 1970年代にイスラエル軍の情報機関ERD(対外関係局)に所属、87年から89年にかけてイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたアリ・ベンメナシェによると、エプスタインは内縁関係にあったギレーヌ・マクスウェルや彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルと同じようにイスラエル軍の情報機関、つまりアマンのために働いていた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) つまり、イスラエルの情報機関はトランプを含む世界の要人の弱みを握っている。イスラエルはイギリス、フランス、アメリカの富豪によって作られた国であり、エプスタイン・ファイルはそうした人びとの手にもわたっている可能性が高い。 ウクライナでクーデターを実行したときと同様、ネオコンはイランを簡単に屈服させられると考えていたようだが、その見通しは間違っていた。いずれもアメリカの敗北が決定的である。米英の支配層に従属することで富と地位を得てきた日本の「エリート」はその事実を隠すために幻影を広めているが、事実が幻影を消し去ろうとしている。幻影が消え去ったならば、自分たちが君臨してきた支配システムも消え去る。彼らに残された現実の兵器は核ミサイルだけかもしれない。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.16

パキスタンのイスラマバードでアメリカとイランの代表団が協議している最中、4月11日にアメリカ海軍の駆逐艦2隻、マイケル・マーフィーとフランク・E・ピーターセン・ジュニアにホルムズ海峡を通過しようとしたが、イラン海軍に追い返された。2隻の駆逐艦はイラン海軍の巡航ミサイル・システムに捕捉され、その上空にはイランのドローンが飛行、イラン海軍から30分以内に立ち去るように警告され、その指示に従うしかなかった。その一方、4月14日には中国のタンカーがホルムズ海峡を通過している。ホルムズ海峡をコントロールしているのはイランであり、アメリカによる海上封鎖という話はハッタリにすぎない。 その前、4月5日にドナルド・トランプ政権はアメリカ空軍に所属するF-15E戦闘機のパイロットと兵器担当士官を救出する作戦を成功させたと発表した。この戦闘機が撃墜された数時間後、イランのメディアは機体の垂直尾翼の残骸を撮影した画像を公開している。その残骸はイスファハンの近郊にある仮設飛行場とイランの濃縮ウラン数百ポンドの一部が保管されていると考えられているナタンツ核施設付近に散乱していた。 イランのメディア、プレスTVによると、アメリカ軍のイスラエル軍はイスファハンにある核施設の一つに潜入し、核物質を盗み出すことを計画、実行に移したのだが、イラン軍の反撃で失敗に終わったという。破壊された航空機のある場所がイスファハンに近かったことから、こうしたことを推測する人は少なくなかった。作戦が失敗した後、トランプ大統領は発電所や橋梁を含む民間インフラを標的にするとイランを脅迫している。 アメリカ軍は数日にわたる偵察飛行を行った後、数十人の特殊部隊員を乗せたC-130輸送機をイスファハン近くに着陸させたが、イラン軍は反応しない。その数分後に2機目のC-130輸送機が接近してきたところでイラン軍は攻撃を開始した。2機目の輸送機には特殊車両や数機のMH-6ヘリコプターなどが積まれていた。 さらにブラックホーク・ヘリコプター2機も到着したが、これも格好の攻撃目標になった。この時、A-10攻撃機も破壊されている。後に伝えられたところによると、この作戦失敗でアメリカ陸軍のデルタフォースに所属する約20名が戦死したという。F-15戦闘機の乗員救出作戦とは、イスファハンから核物質を盗みに行った特殊部隊員を救出する作戦だった。 イスファハンから核物質を盗み出す目的は「アメリカの勝利」を演出し、イランから撤退することにあったのだが、失敗、まだ撤退できずにいる。 すでにアメリカやイスラエルは防空システムが機能せず、攻撃用のミサイルも枯渇。巡航ミサイルのトマホークを日本へ配備する予定が遅れるというが、つまり、日本に配備されるトマホークは同じように日本の艦船から大陸に向かって発射されるのだろうが、当然、中国から反撃される。 昨年11月7日に高市早苗首相は衆院予算委員会で「台湾有事」について問われ、「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と発言した。高市首相も「ひとつの中国」を受け入れているようなので、中国で内戦が始まれば日本は参戦するということになる。日本が参戦すれば日本にある軍事施設だけでなく重要なインフラも破壊されると考えねばならない。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.15
アメリカとイスラエルがイランに対して始めた戦争で負けていることは明らかであり、地上戦を始めると言いながらこれまで実行していないのはアメリカにとって大惨事になることをドナルド・トランプ大統領も理解していたからだろう。 イスラマバードで開かれたアメリカとイランの協議で合意に達するためにはアメリカ政府が敗北を認めるしかなかったが、トランプ大統領がそうしたことをするはずはなく、イスラマバードの協議で合意に達することができるとアメリカ政府はは考えていなかっただろう。例によって時間稼ぎだった可能性が高い。 結局、協議は決裂、ホルムズ海峡のイラン政府による航行規制は継続することになったが、それに対してトランプ大統領はアメリカ海軍がホルムズ海峡の封鎖を開始、イランの港湾へ向かう、またはイランの港湾から出港する船舶を制限すると発表した。ホルムズ海峡の航行規制はアメリカが主導権を握っているというイメージを広めたいのかもしれないが、イランに対する脅迫にはならない。 アメリカ海軍が西アジアへ派遣していた空母ジェラルド・R・フォードは船内で大規模な火災が発生したとして離脱、修理に1年以上かかるようだ。空母エイブラハム・リンカーンは3月にイラン南部沿岸から約340キロメートルの地点まで接近したが、イラン軍のミサイルとドローンによる攻撃を受け、イラン沿岸から約1100キロメートルの地点まで離れざるをえなくなった。この状態でホルムズ海峡の航行を規制することは困難だと見られている。今後、ペルシャ湾から出航するタンカーにはMANPADS(携帯型地対空ミサイル)で武装した警備チームが乗船するかもしれない。アメリカ海軍がホルムズ海峡の封鎖を開始するという宣言は最初から破綻していると言えるだろう。 現在、トランプ大統領はイランを征服、あるいは破壊しようとしているが、これは彼が始めたことではない。本ブログでは繰り返し書いてきたことだが、欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めた経験のあるウェズリー・クラークによると、2001年9月11日の攻撃から10日ほど後、彼は統合参謀本部で攻撃予定国のリストを見たと語っている。そのリストにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが記載されていた。(ココやココ) その予定通りにアメリカは侵略戦争を実行してきたと言えるが、ネオコンは1980年代にイラクのサダム・フセイン政権を倒して親イスラエル体制を築いてイランとシリアを分断、その3カ国をイスラエルの支配下に置こうとしていた。サウジアラビアやペルシャ湾岸の産油国はイスラエルと同じようにイギリスが作り上げた国であり、親イスラエルだ。 そのイスラエルでリクードが台頭したのは1970年代。その背後にはキリスト教シオニストがいた。その時期にリチャード・ニクソン大統領がウォーターゲート事件で失脚、ジェラルド・フォードが大統領に就任したが、その政権でネオコンは台頭した。 そのネオコンの思想的な支柱と言われているレオ・ストラウスはウラジミール・ジャボチンスキーの「修正主義シオニスト世界連合」に傾倒していた人物で、シカゴ大学の教授を務めている。ジャボチンスキーの系譜に属すベンヤミン・ネタニヤフがイスラエルで実権を握った背後にはストラウスを信奉するひとり、エリオット・エイブラムスがいた。 イスラエルでリクードと結びつき、影響力を及ぼすようになったフェデラリスト・ソサエティはロナルド・レーガン政権時代にアメリカの法曹界を支配し始め、新自由主義を法的に正当化していく。この団体は1980年代の初めに出現、議会に宣戦布告の権限があるとする憲法や73年の戦争権限法はアナクロニズムだと主張し、プライバシー権や市民権の制限、企業に対する政府の規制緩和を目指し、自分たちにとって脅威になりそうな国だと思えれば、先制攻撃できるとも主張してきた。レーガン以降、そうした考え方にホワイトハウスは支配されている。 フェデラリスト・ソサエティの理論家であるリチャード・エプスタインは財産を自然法、すなわち神によって定められたものであると主張、経済活動に対するあらゆる規制は特定の所有者の行動様式を制限することにほかならず、あらゆる規制は補償を必要とするとした。この法律解釈により、レーガン大統領は既存のあらゆる経済規制を解体している。 この法律家集団は国際条約を国内法に適用することを拒否する。他者の行動を厳しく裁く一方で、自分たちが同じことをしても原則免責。いかなる国際的な司法機関が自国の内政に関与することも拒絶する。アメリカやイスラエルは特別な存在だというわけだが、これは選民思想にほかならない。 イスラエルでは2003年にエリオット・エイブラムスがエルサレムで会議を主催、イスラエルがパレスチナ人の要求を潰すまで、世界に平和は訪れないと主張した。それ以降、ヨルダン川西岸でユダヤ系入植者によるパレスチナ人襲撃が目立つようになる。ガザでの虐殺もその延長線上にある。 ジャボチンスキーの修正主義シオニスト世界連合はシオニズムの一派だが、その思想は16世紀にはイギリスで現れた。海賊行為で富を蓄積していたエリザベス1世の時代(1593年から1603年)、イングランドに出現した「ブリティッシュ・イスラエル主義」だ。 最初のキリスト教シオニストは16世紀に生きた司祭のギヨーム・ポステルだとも言われている。彼はフランス国王に聖地の再征服、ローマ教皇制の腐敗の終焉、そして黄金のモスクの跡地に第三神殿の再建を求めた。それが実現すれば、すべての隠された事柄が明らかになり、世界にはカバラという一つの宗教だけが存在するようになるというのだ。 当時、イングランドの支配層の間でアングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だと信じる人が現れ、人類が死滅する最後の数日間にすべてを包括する大英帝国が世界を支配すると予言されているという妄想が広まった。 イギリスや西側世界にシオニズムを広めた人物としてブリティッシュ外国聖書協会の第3代会長を務めた反カトリック派のアントニー・アシュリー-クーパー(シャフツバリー伯爵)が知られているが、17世紀初頭にイギリス王として君臨したジェームズ1世も自分を「イスラエルの王」だと信じていたという。 その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、その革命で中心的な役割を果たしたオリヴァー・クロムウェルをはじめとするピューリタンも「イスラエルの失われた十支族」話を信じていたとされている。クルムウェルはユダヤ人をイングランドへ入れることを許可したが、稼ぎ方を海賊行為から商取引へ切り替えるためだったとされている。ユダヤ人は商取引や金貸しに長けていた。 アメリカでリクードを支えてきたのはテレビ宣教師。その主張はユダヤ教徒が改宗する必要がないほどユダヤ教的であり、キリスト教徒がキリスト教から離脱し、ユダヤ人と同じ理念を支持するようになったとも言われている。シオニストはキリスト教に浸透し、ユダヤ教を支配しようとしたカバラの一派だという人もいる。 カール・マルクスは『ユダヤ人問題に寄せて』の中で、「キリスト教徒はもともとは、教義を重視するユダヤ人だった。だからユダヤ人は実利的なキリスト教徒であり、実利的なキリスト教徒はふたたびユダヤ人になった」(中山元訳『ユダヤ人問題に寄せて/ヘーゲル法哲学批判序説』光文社、2014年)と主張している。 シオニズムは帝国主義と一体化し、世界を地獄に変えてきた。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.14

イスラマバードで開かれたパキスタンを仲介役とするアメリカとイランの協議は合意に達しなかった。月曜日に株式相場や原油価格がどのような動きをするかが注目されている。 戦況が優位なイラン側はアメリカやイスラエルに対し、イランを侵略しないこと、今後もイランがホルムズ海峡の管理を続けること、ウラン濃縮を容認すること、全ての制裁を解除すること、イランへ賠償金を支払うこと、アメリカ軍の戦闘部隊が西アジアから撤退すること、イスラエルやアメリカはレバノンを含む西アジア地域での戦争を停止することを含む10項目の要求を突きつけていたが、そうした要求をアメリカやイスラエルが呑むとは思えなかったからだ。 戦争に勝っているイランがアメリカやイスラエルの降伏要求を呑むはずもなく、核兵器の開発をしていないイランが核兵器開発を放棄しないというアメリカ側の主張はシオニストの戯言にすぎない。それでもイランが交渉の席に着いたのはロシアや中国からの圧力があるからだろう。 イスラマバードでの協議後、ロシアのウラジミル・プーチン大統領はイランのマソウド・ペゼシュキアン大統領と電話で会談、戦争の政治的/外交的な解決に向けた努力をさらに促進し、西アジアにおける公正かつ永続的な平和の実現に向けた仲介努力を行う用意があることを強調したという。 ドナルド・トランプ大統領は今回、アメリカの利益を犠牲にしてイランを攻撃、窮地に陥った。アメリカ政府がイスラエル政府に操られているかのように見えるわけだが、そうしたことになる理由はいくつか存在する。 ひとつはジェフリー・エプスタインで知られるようになった情報機関による未成年の男女を利用した美人局システム。トランプはエプスタインと親しい。エプスタイン・ファイルに怯えているアラブ世界の指導者もいるようだ。 エプスタインの場合、黒幕はイスラエル軍の情報機関(アマン)。彼と内縁関係にあったと言われているギレーヌ・マクスウェル、彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルと同じだが、この3人はシステムの一部を構成しいているにすぎない。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) 有力者の弱みを握り、操り、自分たちの利益を図る仕組みは昔から存在していた。その仕組みを利用していたひとりが禁酒法時代に密造酒で大儲けしたルイス・ローゼンスティールだと言われている。ローゼンスティールと「親子のように」親しかったロイ・コーンなる弁護士は犯罪組織ガンビーノ・ファミリーのメンバー、例えばジョン・ゴッチの法律顧問にもなっていた。 コーンはコロンビア法科大学院を卒業後、親のコネを使ってマンハッタンの地方検事だったアービン・セイポールの下で働き始めたが、この検事はコミュニストの摘発で有名。1950年にソ連のスパイとして逮捕されたジュリアス・ローゼンバーグとエセル・ローゼンバーグの夫妻の裁判でコーンが重要や役割を果たしたことも知られている。 コーンは1950年代にジョセフ・マッカーシー上院議員の法律顧問として活動、反ファシスト派の粛清でも重要な役割を果たした。この粛清劇は「マッカーシー旋風」や「レッド・バージ」とも呼ばれている。マッカーシーの黒幕はFBI長官だったJ・エドガー・フーバーで、コーンはマッカーシーとフーバーの間に入っていた。 化粧品で有名なエステイ・ローダーもコーンが親しくしていたひとりで、エスティの息子であるロバート・ローダーはドナルド・とペンシルベニア大学時代からの友人。ベンヤミン・ネタニヤフと親しく、「世界ユダヤ人会議」の議長だ。1973年にコーンはトランプの法律顧問になり、AIDSで死亡する85年までその職にあった。このコーンの後継者ではないかと疑われているのが2019年7月に性犯罪の容疑で逮捕され、同年8月に房の中で死亡たジェフリー・エプスタインにほかならない。自殺とされているが、他殺と考える人が少なくない。 ロバート・ローダーの前に「世界ユダヤ人会議」の議長を務めたエドガー・ブロンフマンも密造酒の家系で、父親のサミュエル・ブロンフマンはローゼンスティールの仲間。エドガーの弟、チャールズが1991年に創設した「メガ・グループ」はイスラエル・ロビーとされているが、イスラエルの情報機関と緊密な関係にあると言われている。エドガー・ブロンフマンの関係でイスラエルの情報機関へ引き込まれたひとりがエプスタインだ。 エプスタインたちは未成年者への性的な虐待だけでなく、幼児を殺害し、人肉を食してきたとも言われている。世界の要人たちに禁忌を犯させてきたのだが、それによって社会から切り離され、「仲間」は罪悪感によって強い絆を生み出す。自分たちが人間を超越した存在だと思うようになるかもしれない。 イスラエルの基盤になっているシオニズムはユダヤ教徒の世界より前にプロテスタントの世界で広がった。これは本ブログでも繰り返し書いてきた通り。またイスラエルはイギリスの帝国主義者やアメリカの後継者にとって西アジアを支配するための航空母艦としても機能してきた。その航空母艦を守ることをトランプも求められている。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.13

イスラエルは単独でイランと戦う能力はなく、アメリカを利用しようとしているのだが、そのアメリカにもイランに勝つ戦力はないことが実際の戦闘で明らかになった。 アメリカとイスラエルはイスラマバードでイランと戦争を終結するために協議するというが、イランはアメリカとイスラエルを信じていないはず。ミサイルやドローンが枯渇しているアメリカとイスラエルは停戦期間中に兵器を補充、兵員を次の作戦に向けて配置しているだろうが、イランも兵器を補充している可能性が高い。 アメリカの軍事や外交をコントロールしてきたネオコンは1991年12月にソ連が消滅した時点でアメリカが唯一の超大国になり、他国に気兼ねすることなく、好き勝手に行動できる時代がきたと思った。1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として作成された世界制覇計画はそうした認識に基づいている。 ネオコンやイスラエルはイランを奇襲攻撃で簡単に潰せると考えていたのだろうが、そうした展開にはならなかった。ネオコンは対ロシア戦争を睨み、ウクライナでクーデターを実行したが、ロシア文化圏の東部や南部では反クーデター派の住民が立ち上がり、南部のクリミアはロシアと一体化、東部のドンバスでは武装抵抗が始まった。現在、ウクライナ軍は壊滅状態で、NATO諸国は情報機関員や特殊部隊員だけでなく通常の兵士も送り込んでいるようだが、ロシアの勝利は決定的。アメリカがウクライナから離れようとしているのは、そのためだろう。 イランに対する戦争やウクライナでのクーデター、そして東アジアでの軍事的緊張の高まりは19世紀から続くアングロ・サクソンの長期戦略の結果。ユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配、内陸部を締め上げるという長期戦略をまとめた人物がハルフォード・マッキンダーという学者だが、ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーの理論がベースになっている。日本は中国を侵略するための兵員供給地であり、兵站の拠点。イギリスの私的権力は明治維新を仕掛け、天皇を中心とするカルト体制を築き、明治体制の軍事力を強化したが、その理由はそこにある。ロシアの逆サイドでイギリスに利用された国がドイツだ。イギリスが絶対に阻止しなければならなかったのは、ドイツと日本がロシア/ソ連と手を組むこと、そしてロシア/ソ連と中国が同盟を結ぶことだろう。 スエズ運河がなければユーラシア大陸を包囲することができない。イギリスの首相を務めたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収したが、その買収資金を提供したのは彼の友人だったライオネル・ド・ロスチャイルドだ。(Laurent Guyenot, “From Yahweh To Zion,” Sifting and Winnowing, 2018) ディズレーリが1881年4月に死亡した後、エドモンド・ジェームズ・ド・ロスチャイルドがテル・アビブを中心にパレスチナの土地を買い上げ、ユダヤ人入植者へ資金を提供しはじめ、1917年11月にアーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ出した書簡はパレスチナに「ユダヤ人の国」を建設する第一歩と言われている。 この「ユダヤ人の国」はスエズ運河を管理する上で重要な位置にイギリスが作ったのだ。その隣にあるサウジアラビアもイギリスが作った国である。シオニストの一部はナイル川からユーフラテス川に至る大イスラエルを創設しようとしているが、その目的もアングロ・サクソンの世界征服戦略の一環だ。アメリカやオーストラリアと同じように、先住民を殲滅して全く新しい国を築こうとしている。 イギリスは1920年から1948年の間パレスチナを委任統治、ユダヤ人の入植を進めたが、1920年代に入るとパレスチナのアラブ系住民は入植の動きに対する反発を強める。 そうした動きを抑え込むため、デイビッド・ロイド・ジョージ政権で植民地大臣に就任したウィンストン・チャーチルはパレスチナへ送り込む警官隊の創設するという案に賛成、アイルランドの独立戦争で投入された「ブラック・アンド・タンズ」のメンバーを採用した。イギリスは帝国主義国の実態を隠しながら西アジアを支配するために「ユダヤ人の国」を建国したわけであり、その国を利用して世界を支配する仕組みを築いてきた勢力も存在する。その仕組みを批判する人びとは「反ユダヤ主義者」だと非難される。 こうしたアングロ・サクソンの戦略に対抗し、内陸部の国々は鉄道を建設してきた。シベリア横断鉄道もそのひとつであり、中国が進めているBRI(一帯一路)の目的も同じだ。ウクライナでクーデターが引き起こされ、香港で反中国政府の佔領行動(雨傘運動)が実行された2014年以降、ロシアと中国は急接近したが、両国を結びつける仕掛けのひとつが天然ガスのパイプラインだ。だからこそ、米英はBRIやパイプラインを戦乱で破壊しようとしている。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.12

イスラマバードでアメリカとイランの政府代表が協議するというが、イラン側は一貫して10項目の要求をアメリカやイスラエルに突きつけている。その中にはイランを侵略しないこと、今後もイランがホルムズ海峡の管理を続けること、ウラン濃縮を容認すること、全ての制裁を解除すること、イランへ賠償金を支払うこと、アメリカ軍の戦闘部隊が西アジアから撤退すること、イスラエルやアメリカはレバノンを含む西アジア地域での戦争を停止することが含まれている。 こうした項目をイスラエルやアメリカが呑むとは思えず、したがって戦争が終結するとも思えない。イランには米英金融資本の影響下にある富豪が存在しているが、革命防衛隊(IRGC)には約束を守らないアメリカやイスラエルとの交渉を拒否する人も少なくないようだ。アメリカが求めている停戦は、おそらく、例によってイランを攻撃する態勢を整えるための時間稼ぎだろう。ウクライナでもロシア政府を騙し、8年かけてキエフのクーデター政権を増強している。 戦闘でアメリカやイスラエルを圧倒しているイランやその同盟組織はこのまま進めれば良いのだろうが、追い詰められているアメリカやイスラエルは違う。ドナルド・トランプ米大統領は「今夜ひとつの文明が滅び、二度と復活することはないだろう」と宣言したが、これは核兵器の使用を意味していたと推測した人も少なくない。アメリカ軍の将校がそれを拒否したのかもしれない。 アメリカ政府は自分たちが望みを実現するため、核兵器を利用してきた。例えばドワイト・アイゼンハワーは大統領に就任してまもない時期にハリー・トルーマン政権が始めた朝鮮戦争を休戦させようと考え、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は同年7月に実現した。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) アイゼンハワー政権で副大統領を務めていたリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、アイゼンハワーを真似している。カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながら核兵器で北ベトナムを恫喝したのだ。(前掲書) 1973年10月、エジプトのアンワール・サダト大統領は同国とシリアの領土を支配していたイスラエル軍に対して奇襲攻撃を仕掛けた。サダトの背後にはヘンリー・キッシンジャーがいて、1972年7月にはソ連の軍事顧問団をエジプトから追い出していた。キッシンジャーはそのサダトをアラブ世界の英雄に仕立て上げようと考えたという。 戦争は当初、キッシンジャーの思惑通り、エジプト側が優勢なまま進むが、ジェームズ・シュレシンジャー国防長官やトーマス・モーラー統合参謀本部議長などはこうした展開を懸念、統合参謀本部ではイスラエルを助ける方法を探りはじめる。 そうした動きをキッシンジャーは阻止、イスラエルのゴルダ・メイア首相がリチャード・ニクソン大統領と会うことも妨害したという。後にネオコンの中心的な存在になるリチャード・パールやポール・ウォルフォウィッツはこの時のキッシンジャーの動きに激怒している。(Len Colodny & Tom Shachtman, “The Forty Years War,” Harper, 2009) イスラエルの敗北が濃厚になるとメイア首相の執務室では核兵器の使用について議論があり、その際、モシェ・ダヤン国防相は核兵器を選択肢として見せる準備をするべきだと発言したという。ソ連の情報機関は早い段階からイスラエルが核弾頭を使う準備をしている疑いを抱き、その情報をエジプトのモハメッド・アブデル・ガーニー・エル・ガマシ参謀長に伝え、さらにアメリカ政府へもイスラエルが核兵器を使う準備をしていると警告していた。(William Colby, “Honorable Men”, Simon & Schuster, 1978) 結局、この時はイスラエルの機動部隊がスエズ運河を越えてエジプト軍の背後へ回り込み、エジプト陸軍の第3軍が窮地に陥り、戦況は逆転したとされている。今回はイスラエル軍に代わってアメリカ軍がイランを壊滅させようとしたのだが、失敗した。アメリカ政府は自分たちの戦力とイランの戦力を見誤り、無謀な戦争を始めてしまった。 1991年12月にソ連が消滅した時、アメリカにおいて軍事や外交をコントロールしていたネオコンはアメリカが唯一の超大国になり、他国に気兼ねすることなく、好き勝手に行動できる時代がきたと思った。そうした気持ちを具体的なプランにした文書が1992年2月にアメリカ国防総省のDPG(国防計画指針)草案として作成された世界制覇計画にほかならない。 当時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、そして作成の中心は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツ。そのため、この指針は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 今のところ、トランプ政権はこのドクトリンを放棄していないが、その背後には19世紀から続くアングロ・サクソンの世界征服プロジェクトが存在している。そのプロジェクトを始動させたのは反ロシアで有名なイギリスの政治家、ヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)だろう。 彼は戦時大臣、外務大臣、内務大臣を歴任した後、1855年2月から58年2月まで、そして59年6月から65年10月まで首相を務めている。ビクトリア女王にアヘン戦争を指示したのもパーマストン卿。この時期にシオニズムと帝国主義が一体化した。イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設。その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査している。 イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。そして1917年11月、アーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出してイスラエル建国への道を切り開く。いわゆる「バルフォア宣言」だ。 ディズレーリが書いた小説『コニングスビー』の中に、次のようなことが書いてある:「(ジョン・)ハムデン(オリバー・クロムウェルの従兄弟)による最初の運動から1688年の最後の最も成功した運動(名誉革命)に至るまで、イングランドにおけるホイッグ党指導者たちの最大の目的はベネツィア共和国をモデルとした高貴な貴族制の共和国をイングランドに樹立することであり、当時のあらゆる思索的な政治家がそれを研究し称賛することだった。」**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.11

アメリカはウクライナでの戦争でロシアに敗北、イランとの戦争でも劣勢にある。その結果、科学技術や軍事力の分野でアメリカが世界を圧倒しているという幻影は消え始めた。アメリカに服従、その威を借りて傍若無人な振舞いを続けてきた人びとの心中穏やかでないだろう。そうした人びとは必死に「アメリカが勝っている」と主張している。 しかし、アメリカがウクライナでもイランでも窮地に陥っていることは明確。イランとの戦争でドナルド・トランプ大統領はパキスタンを代理人としてイラン政府に停戦交渉を持ちかけ、合意したと伝えられたのだが、数時間で破綻したようだ。 イランはアメリカに対し、10項目の要求を提示していた。ホルムズ海峡の通行をイランが管理、イランの同盟勢力に対する軍事行動の停止、西アジア地域からアメリカ軍の撤退、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定の策定、イランが被った損害に対する全額補償、すべての制裁および国際決議の撤廃、凍結されたイラン資産の返還を要求、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認することも求めている。 イラン当局者によると、アメリカはこうした原則を受け入れたというが、それが事実ならアメリカは降伏したということになる。つまりアメリカはイランの要求を受け入れない。イスラエルはレバノンの中部と南部を爆撃、住民虐殺を続けている。アメリカとイランの間で合意されたとされる停戦が破綻することは必然だった。 アメリカの外交や軍事をコントロールしてきたネオコンは1991年12月にソ連が消滅するとアメリカが唯一の超大国になったと認識、他国に気兼ねすることなく世界侵略を始められると考えた。そこで1992年2月、ジョージ・H・W・ブッシュ政権で国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツが中心になり、ONAで室長を務めていたアンドリュー・マーシャルの考え方に従い、DPG(国防計画指針)草案として世界制覇プランが作成された。 この文書は国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツが中心になって作成されたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。新たなライバルの出現を防ぐことが最優先事項で、ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に統合し、民主的な「平和地帯」を創設する、つまりドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、アメリカの支配地域を広げるということも謳われている。 それに対し、1993年8月に成立した細川護煕政権は国連中心主義を打ち出して抵抗するものの、94年4月に崩壊。1994年6月から自民党、社会党、さきがけの連立政権で戦ったが、押し切られている。 日本側の動きをネオコンのマイケル・グリーンとパトリック・クローニンはカート・キャンベル国防次官補(当時)に報告、1995年2月になると、ジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表してアメリカの政策に従うように命令した。そのレポートには10万人規模の駐留アメリカ軍を維持し、在日米軍基地の機能を強化、その使用制限は緩和/撤廃されることが謳われている。 沖縄ではこの報告に対する人びとの怒りのエネルギーが高まるが、そうした中、3人のアメリカ兵による少女レイプ事件が引き起こされ、怒りは爆発する。日米政府はこの怒りを鎮めようと必死になったようだ。 こうした中、1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれ(松本サリン事件)、95年3月には帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布された(地下鉄サリン事件)。松本サリン事件の翌月に警察庁長官は城内康光から國松孝次に交代、その國松は地下鉄サリン事件の直後に狙撃された。1995年8月にはアメリカ軍の準機関紙と言われているスターズ・アンド・ストライプ紙に85年8月12日に墜落した日本航空123便に関する記事が掲載された。この1995年以降、日本はアメリカの戦争マシーンへ組み込まれた。 その翌年、1996年にネオコンのリチャード・パール率いる研究グループは『完全な決別:国家安全保障のための新戦略』なるネタニヤフ宛ての文書を発表している。 その中でネオコンは労働シオニズムを批判して和平プロセスを否定。そしてイスラエルが北部国境沿いの戦略的主導権を握り、レバノンにおける侵略の主役であるヒズボラ、そしてシリアやイランと交戦し、イラクのサダム・フセイン体制を倒すことを望み、トルコやヨルダンと協力してシリアを弱体化、封じ込め、さらには後退させることで戦略環境を整えることができるとしていた。「誇り高く、豊かで、堅固で、強いイスラエルは、真に新しい平和な中東の基盤となる」とネオコンは考えている。西アジア全域をイスラエルが支配するということだろう。 ネオコンはウクライナでビクトル・ヤヌコビッチが大統領に就任することを阻止するため、2004から05年にかけて「オレンジ革命」を仕掛け、ビクトル・ユシチェンコを大統領に据えるのだが、彼の新自由主義的な政策は国民の大半を貧困化、人気は急速に低下した。 そのため2010年の大統領選挙ではヤヌコビッチが勝利、その政権を倒すため、バラク・オバマ政権は2013年11月から14年2月にかけてキエフのユーロマイダン(ユーロ広場、元の独立広場)でクーデターを開始、ヤヌコビッチは排除された。 2022年に入るとキエフのクーデター軍は東部ドンバスに対する砲撃を激化させ、開戦は不可避だと考える人が少なくなかった。そして2月にロシア軍が機先を制す。ウクライナをミサイルなどで攻撃しはじめたのだ。当時、投入されたロシア軍の戦力はウクライナ軍の数分の1だったとされている。 キエフ政権はすぐにロシア政府と停戦交渉を開始するが、ウクライナの治安機関SBU(ウクライナ保安庁)はその交渉を潰しにかかる。交渉を仲介していたひとりのナフタリ・ベネットは当時、イスラエル首相。彼によると、2022年3月5日にモスクワへ飛んでプーチン大統領と数時間にわたって話し合い、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を殺害しないという約束をとりつけることに成功、その足でベネットはドイツへ向かってオラフ・ショルツ首相と会った。SBUはその3月5日、キエフの路上でゼレンスキー政権の交渉チームで中心的な役割を果たしていたデニス・キリーエフを射殺している。 2022年4月9日にはイギリスの首相だったボリス・ジョンソンがキエフへ乗り込んでゼレンスキー大統領に対し、戦争継続を命令(ココやココ)、4月30日にはアメリカ下院のナンシー・ペロシ議長が下院議員団を率いてウクライナを訪問、ウクライナへの「支援継続」を誓い、戦争の継続を求めた。またペロシは同年8月2日、台湾を訪問して中国を挑発し、後にイスラエルによるガザでの虐殺に抗議する人びとを批判している。アメリカの政治家は民主党も共和党も大半がイスラエル・ロビーに支配され、血に飢えている。人びとを虐殺し、世界経済を破壊しようとしているのだ。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.10
アメリカ軍とイスラエル軍が2月28日にイランを奇襲攻撃した結果、世界経済は破綻の瀬戸際まで追い詰められている。この無謀な戦争へドナルド・トランプ政権が動き出したのは2月11日のようだ。 西側を支配する私的権力の影響下にあるメディアのひとつ、ニューヨーク・タイムズ紙のジョナサン・スワンとマギー・ハーバーマンによると、2月11日にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がホワイトハウスを訪問、シチュエーション・ルームへ入り、トランプ大統領やその側近と秘密裏に会議を開いた。テーマはイランだ。壁に設置された大型スクリーンにはイスラエルの対外情報機関モサドのダビッド・バルネア長官やイスラエル軍関係者が映し出されていたという。アメリカ側の出席者はスージー・ワイルズ首席補佐官、マルコ・ルビオ国務長官、ピート・ヘグセス国防長官、ダン・ケイン統合参謀本部議長、ジョン・ラトクリフCIA長官、ジャレッド・クシュナー大統領補佐官、そしてスティーブ・ウィトコフ中東担当特使だ。 戦争計画は秘密で、ほかの政府高官は会合の開催を知らされず、J・D・バンス副大統領も欠席していた。財務長官のスコット・ベセントやエネルギー長官のクリス・ライト、そして国家情報長官のタルシ・ギャバードは排除されていた。 モサドは会議の中で、イラン国内において再びデモが始まり、イスラエル諜報機関の扇動で暴動や反乱が引き起こされ、激しく爆撃すれば体制を転覆させられると説明、イランの弾道ミサイル計画を数週間以内に破壊でき、体制の弱体化でホルムズ海峡を封鎖することは不可能になるともしていた。 さらに、クルド人の戦闘員がイラクから国境を越えて北西部へ攻め込んでイラン軍の戦力を分散させるともしている。イラクのクルド人は以前からイスラエルの支配下にあり、その指導者はモサドだと言われている。そのプレゼンテーションにトランプ大統領は感銘を受け、「いい考えだ」とネタニヤフ首相に告げたという。 2月12日にはシチュエーション・ルームでアメリカの情報機関による分析結果が大統領の側近たちに示された。ラトクリフCIA長官はイスラエル側のシナリオを「茶番」と表現、ケイン統合参謀本部議長は大統領に対し、イスラエルはアメリカを必要としているので、強引に売り込んでいるのだと説明している。こうした懸念を大統領は無視、2月27日にエアフォースワンの機内で「エピック・フューリー作戦を承認する。中止は認めない。幸運を祈る」と命じた。 アメリカ軍とイスラエル軍は2月28日にイランを攻撃、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含むイランの要人を殺害した。 オマーンのバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディ外相によると、9カ月の間に2度、アメリカとイランはイランの核開発計画について協議し、合意まであと一歩のところまで迫っていたという。ところが最も実質的な協議からわずか数時間後、アメリカとイスラエルはイランを攻撃したのだ。核開発計画に関する協議はアメリカがイランを油断させ、要人を一箇所に集めるための罠だったのだろう。 イラン軍は奇襲攻撃の直後に反撃を開始、イスラエルや中東のアメリカ軍基地をミサイルやドローンで攻撃しはじめる。イスラエルではテルアビブやハイファといった都市は破壊され、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)に近い場所も攻撃され、カタールにあるアル・ウデイド空軍基地、クウェートのアル・サレム基地、アラブ首長国連邦のアル・ダフラ空軍基地、バーレーンのアメリカ軍第5艦隊基地、サウジアラビアのリヤドにあるプリンス・スルタン空軍基地なども攻撃された。 アメリカ軍の航空機が墜落したり撃墜されているとする情報が流れている。イラン南西部、イスファハンの近くで撃墜されたF-15E戦闘機の兵装システム士官を救出したとする発表がトランプ大統領からあったが、これは作り話だされている。イスファハンはイランの核関連の重要施設に近い。 墜落地点の問題もあるが、兵装システム士官を救出するためにAH-6「リトルバード」を2機ずつ搭載した2機のC-130J輸送機が投入されていることに疑問を持つ人が少なくない。C-130Jにはそれぞれ3人の乗員が搭乗、そのほかヘリコプターの要員4名が乗っていたと推測されている。 また、海軍の特殊部隊SEALチーム6の隊員が作戦に参加していたとされている。C-130JはAH-6のほか戦闘装備を積んだ8から12名の隊員を輸送できる。つまり2機のC-130Jは16名から24名の特殊部隊員も乗せられる。 ひとりの兵装システム士官を救出するためにこれだけの人員を投入するのは不自然。兵装システム士官のいる場所がわかっているなら、そこへヘリコプターを派遣すれば良い。 イスファハンはイランの核関連の重要施設に近く、救出作戦ではイラン軍との銃撃戦があり、死傷者が出たとアメリカは発表しているが、イラン軍はこの出来事について、複数のアメリカ軍機の参加した失敗した侵攻作戦だとしている。イランの核開発計画などを標的とした攻撃を実施するための偵察、あるいはイランが保有する核物質を回収するための作戦だったのではないかというのだ。事実は不明だが、アメリカ軍とイスラエル軍の作戦が予定通りに進んでいないことは確かだろう。 窮地に陥ったアメリカ政府はイラン政府に対して停戦交渉を持ちかけていたが、過去の騙し討ちに懲りているイランは応じなかったが、パキスタンを介して10項目の要求を提示した。ホルムズ海峡の通行をイランが管理、イランの同盟勢力に対する軍事行動の停止、西アジア地域からのアメリカ軍撤退、イランの役割を明記したホルムズ海峡における安全保障協定の策定、イランが被った損害に対する全額補償、すべての制裁および国際決議の撤廃、凍結されたイラン資産の返還、そしてこれらの条件を拘束力のある国連安全保障理事会決議として正式に承認することだ。イラン当局者によると、パキスタンはアメリカがこれらの原則を受け入れたと伝えたという。イスラエルとアメリカが攻撃を停止するならば、イランは報復攻撃を行わない。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.09

イスラエルや中東にあるアメリカ軍基地が攻撃される一方、アメリカ軍やイスラエル軍はイランを攻撃している。イランのメディアが4月7日に伝えたところによると、アメリカ/イスラエル軍はテヘランにあるシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)を「完全に破壊」した。狂信的なシオニストが支配するベンヤミン・ネタニヤフ政権はイスラム教徒やキリスト教徒を弾圧、パレスチナ人に「テロリスト」というタグをつけて処刑できる法律を制定したが、ユダヤ教徒も攻撃している。 シオニストは1933年8月、ユダヤ系ドイツ人をパレスチナへ移住させることでナチス政権と合意した。「ハーバラ合意」だ。弾圧されたユダヤ人をパレスチナへ向かわせることができるとシオニストは考えたようだが、ユダヤ教徒の多数派はパレスチナへ向かわない。生活環境がヨーロッパに近いアメリカやオーストラリアへ逃れた。 1938年11月にドイツではユダヤ系住民が襲撃されはじめて多くの人が殺され、収容所へ入れられ始めるが、この「水晶の夜」以降もユダヤ教徒はパレスチナでなく、アメリカやオーストラリアへ逃れた。第2次世界大戦後、パレスチナへユダヤ人が運ばれるが、イラクに住むユダヤ教徒をシオニストは襲ってパレスチナへ誘導した。シオニストは自分たちの計画を実現するためならユダヤ教徒も攻撃対象にするわけだ。 ネタニヤフ首相はウラジミール・ジャボチンスキーが1925年に結成した「修正主義シオニスト世界連合」の流れを汲む。この団体は第2次世界大戦中、イギリスの対外情報機関MI6や破壊工作機関のSOEから訓練を受けている。 ウクライナでヤボチンスキーは独立運動を率いていたシモン・ペトリューラと連携しているが、この人物はロシア革命の直後、1918年から21年にかけて大統領を名乗り、3万5000人から10万人のユダヤ人を虐殺したという。(Israel Shahak, “Jewish History, Jewish Religion,” Pluto Press, 1994) ジャボチンスキーは1940年にニューヨークで死亡、その当時、彼の秘書を務めていたベンシオン・ネタニヤフはベンヤミン・ネタニヤフ首相の父親である。ジャボチンスキーの後継者に選ばれた人物はメナヘム・ベギンだ。 修正主義シオニスト世界連合と密接な関係にあるネオコンの思想的な支柱はシカゴ大学の教授だったレオ・ストラウス。この学者は1899年にドイツのヘッセン州で熱心なユダヤ教徒の家庭に生まれ、17歳の頃にジャボチンスキーの運動へ接近している。 ストラウスは1932年にロックフェラー財団の奨学金でフランスへ渡り、中世のユダヤ教徒やイスラム哲学について学んだ後、プラトンやアリストテレスの研究を始めている。カルガリ大学のジャディア・ドゥルーリー教授に言わせると、ストラウスの思想は一種のエリート独裁主義で、「ユダヤ系ナチ」だ。(Shadia B. Drury, “Leo Strauss and the American Right”, St. Martin’s Press, 1997) 1934年にストラウスはイギリスへ、37年にはアメリカへ渡ってコロンビア大学の特別研究員になる。教授として受け入れられた1944年にはアメリカの市民権も獲得した。1949年から73年までシカゴ大学で教えている。その間、1954年から55年にかけてイスラエルのヘブライ大学で客員教授にもなっている。ポール・ウォルフォウィッツはシカゴ大学における彼の教え子だ。 国防総省のONAで室長を務めていたアンドリュー・マーシャルの考え方に従い、1992年2月にはDPG(国防計画指針)草案(ウォルフォウィッツ・ドクトリン)が作成された。その中心になったのは国防次官を務めていたウォルフォウィッツだ。その時の大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニーだ。そのため、この指針は「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。2001年9月11日、このドクトリンは本格的に始動した。 ネオコンのリチャード・パール率いる研究グループは1996年に『完全な決別:国家安全保障のための新戦略』なるネタニヤフ宛ての文書を発表している。その中で労働シオニズムを批判、和平プロセスを否定。そしてイスラエルが北部国境沿いの戦略的主導権を握り、レバノンにおける侵略の主役であるヒズボラ、そしてシリアやイランと交戦し、イラクのサダム・フセイン体制を倒すことを望み、トルコやヨルダンと協力してシリアを弱体化、封じ込め、さらには後退させることで戦略環境を整えることができるとしていた。こうした計画は実行されたと言えるだろう。「誇り高く、豊かで、堅固で、強いイスラエルは、真に新しい平和な中東の基盤となる」とネオコンは考えている。 このネオコンをアメリカで支えているのが福音派、キリスト教原理主義者、聖書根本主義派、キリスト教シオニストなどと呼ばれている勢力だ。彼らの教義によると、キリストに従う「善の軍勢」と反キリストの「悪の軍勢」が「ハルマゲドン」で最終戦争を行い、人類の歴史は幕を閉じ、その時に再臨するキリストによって自分たちは救われるのだという。 ジェリー・フォルウエルなど有名なテレビ説教師の大半がこの説を信じていて、「四千万を超えるといわれる聖書根本主義者たちは、聖書に書かれた神の都シオンと現代のシオニズム国家イスラエルを中心に信仰体系を打ち立てている」のだ。この信仰体系を天啓的史観と呼ぶ。(グレース・ハルセル著、越智道雄訳、「核戦争を待望する人びと」、朝日選書、1989年) マザー・ジョーンズの2002年9月/10月号に掲載されたレポートによると、聖書根本主義派はエド・マクティールを中心に活動していた。ジェリー・フォルウエルをロナルド・レーガン、ジェシー・ヘルムズ上院議員、そして現司法長官のジョン・アシュクロフトと引き合わせたのもこの人物だ。ネオコンのウォルフォウィッツはパレスチナ人に与えられた土地をイスラエルは再占領すべきだと公言していた。(MOTHER JONES, September / October 2002) 現在トランプ政権の「ホワイトハウス信仰に基づく地域連携局」でスピリチャル顧問を務めるポーラ・ホワイト-ケインも福音派のテレビ宣教師。ジョージ・W・ブッシュ政権時代には倫理顧問を務めていた。ブッシュ政権で首席倫理顧問を務めたリチャード・W・ペインターは彼女が「詐欺」と「ポンジ・スキーム(ネズミ講的な投資詐欺)」を行っていると示唆していたが、とりあえず立場上、天啓的史観の持ち主だ。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.08
UAE(アラブ首長国連邦)のアブダビに建設された巨大AIデータセンター「Stargate UAE」が今年、稼働する予定だった。このプロジェクトにはUAEが支援するG42のほか、OpenAI、Nvidia、Oracle、Cisco、SoftBankなどが参加している。そのStargate UAEを破壊すると発言するIRGC(イラン革命防衛隊)のイブラヒム・ゾルファガリ報道官の映像が公表された。 西側の巨大IT企業は金融業界と同じように中東を拠点にしつつあったが、そうした拠点をイランは攻撃している。例えばUATとバーレーンにあるアマゾンのデータセンターがドローンに攻撃された。巨大IT企業はUAEを中東におけるAI大国にする予定だったようで、マイクロソフトは150億ドルを投資している。 中東ではイスラエルがエレクトロニクスの分野で有名。その中心には電子情報機関8200部隊(ISNU)がある。軍の情報機関AMAN(イスラエル参謀本部諜報局)のSIGINT部門で、アメリカのNSAやイギリスのGCHQと連携して活動している。NSAとGCHQはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドの電子情報機関とUKUSA(UK + USA)を編成しているが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは配下の組織だ。 8200部隊は部隊の「出身者」が「私企業」を設立していることでも知られている。こうした企業は8200部隊のフロント企業であり、情報活動の一端を担っている。 そうした企業のひとつが緊急通報システムの分野で知られているカービン。このシステムは監視にも使われ、過去の言動などから犯罪の予測も行うとされている。2014年にテルアビブでリポーティとして設立されたが、その出資者にはAMANの局長を経て参謀総長、そして首相になったエフード・バラクが含まれ、同社の会長に就任している。カービンの重役は大半が8200部隊の元将校で、同社の創設者には決済サービス企業のペイパルを創業したピーター・ティールも含まれている。 ティールはドナルド・トランプ大統領を支持、J・D・バンス副大統領は彼の弟子的な存在。ティールも共同創設者のひとりとして名を連ねているパランティアは2003年にCIAのベンチャー・キャピタル部門であるIn-Q-Telからの資金を得ている。 カービンの主要な資金源のひとり、ジェフリー・エプスタインは性犯罪の容疑で逮捕され、収監中に死亡した。この人物は未成年の男女を有力者に提供する一方、そうした関係を記録して有力者を脅して操っていたとされている。エプスタインはバラクとビジネスの上でつながっていたのだが、バラクによると、彼をエプスタインに引き合わせたのは、イスラエル労働党の政治家で首相にもなったシモン・ペレス。その兄弟であるギデオン・ペルスキーが創設したスイス・イスラエル銀行から融資を受けていたブルース・ラッパポートはウイリアム・ケイシーの友人だ。(Whitney Webb, “One Nation Under Blackmail Vol. 1,” Trine Day, 2022) 8200部隊からスピンアウトした誕生した企業はアメリカの通信システムに「裏口」を組み込み、インターネットやコンピュータの分野で大きな影響力を持つ企業、例えばAlphabet、マイクロソフト、メタなどと結びついている。 イラン攻撃ではパランティアのAIが標的の特定に使われた。同社も支援している国防総省のプロジェクト・メイブンが中核的な役割を果たしているとも言われ、パランティアのMOSAICプラットフォームはパターン分析に基づく予測推論、つまりパターンを分析し、次に何が起こるかを推測する。同社はデータの収集から攻撃まで、戦争の全サイクルを網羅する統合システムを段階的に構築しているとも言われているが、実際の戦争でパランティアのAIが無能だということが判明した。 アメリカ政府はイランの経済を混乱させるため、昨年12月28日に同国の通貨リアルを暴落させた。その混乱を利用して反政府デモを誘発、そのデモ隊の中へ潜り込ませた工作員には資金と共にスターリンクを渡されている。スターリンクを利用して治安部隊の動きを知らせ、どのように行動すべきかを指示していたのだが、そのためにドナルド・トランプ政権は事前に約5万台のスターリンク端末をイランへ密輸していた。 アメリカやイギリスはインターネットを利用して反政府デモに衛星画像を提供し、作戦を伝えてきた。イランではイーロン・マスクのスターリンクを使ったわけだが、そのスターリンクをイラン政府は遮断、カラー革命を防ぐことに成功した。 IRGCが西側の巨大IT企業を狙うのは必然である。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.07
イラン南西部で4月3日に撃墜されたアメリカ空軍のF-15E戦闘機の兵装システム士官を救出したとドナルド・トランプ大統領は発表した。作戦には数百名のアメリカ兵が参加、その中には海軍の特殊部隊SEALチーム6、あるいは陸軍のデルタ・フォースも含まれているようだ。 それに対し、イラン側は地元の住民やIRGC(イスラム革命防衛隊)の部隊が拘束しようと動き、銃撃戦があったとも伝えられている。イランのハタム・アル-アンビヤ中央司令部はアメリカによるF-15戦闘機の乗員救出の試みは失敗、自らの大敗北を隠蔽しようとしていると主張している。アメリカ軍機は撃墜され、その痕跡をなくすためにアメリカ側が爆破したともしている。 今のところ、どちらの主張が正しいかは不明だが、アメリカ軍が乗員の救出に成功したとしても航空を安全に飛ばすことが困難な状況だということは間違いなく、アメリカが制空権を握ったとは言えない。 イラン軍の保有するミサイルが枯渇するようには思えず、イスラエルやアメリカ軍基地に対するミサイルやドローンによる激しい攻撃が続いている。イスラエルのテルアビブやハイファといった都市は破壊され、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)に近い場所も攻撃されている。 さらにアメリカ軍が駐留しているカタールのアル・ウデイド空軍基地、クウェートのアル・サレム基地、アラブ首長国連邦のアル・ダフラ空軍基地、バーレーンのアメリカ軍第5艦隊基地を含む基地を攻撃されている。イスラエルのハアレツ紙によると、イスラエル国内におけるイランのミサイルの命中率は80%に達し、迎撃されていない。イスラエル軍は兵員不足で崩壊寸前だ。 住民のために建設されていた橋をアメリカ/イスラエル軍は破壊、さらにブーシェフル原子力発電所から数メートルの地点にミサイルを撃ち込んだ。ウクライナと同じように、原発への攻撃で相手を脅そうとしている。 ウクライナではドニエプル川東岸にあるザポリージャ原子力発電所に対するドローン攻撃が続いている。西側ではロシア軍による攻撃だと主張する人もいるが、この原発はロシア軍が警備、管理、ロシアが攻撃するはずがない。偽情報を流し続けてきた西側の大手メディアも追い詰められているだろう。 イランによる攻撃でイスラエルの主要都市や重要な機関が破壊されている。そのイスラエルではパレスチナ人に「テロリスト」というタグをつけ、そうしたタグをつけているパレスチナ人を処刑できる法律が議会(クネセト)で制定された。ユダヤ人はテロを行わないという前提でパレスチナ人を恣意的に処刑できる法律だ。パレスチナ人を皆殺しにすることを合法にしたのだ。崩壊寸前のイスラエルは暴走している。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.06
4月3日、アメリカ空軍のF-15E戦闘機がイラン南西部で撃墜された。パイロットは救助されたものの、兵装システム士官は行方不明。また捜索救助活動を支援中のA-10地上攻撃機もイラン軍の攻撃を受けて損傷を受けてペルシャ湾に墜落したが、パイロットは救助されたという。捜索救助任務中だった2機のHH-60Gも被弾し、そのうち1機は国境を越えてイラク領内に不時着して乗員は全員が救助された。テル・アビブ付近ではKC-135Rが、イラク国境に近いサウジアラビアではF-16がそれぞれ緊急事態を示すスコーク7700を発信している。 アメリカ軍のF-15Eが3月1日に撃墜された。とクウェート空軍の「誤射」によるとされている。3月12日にはイラク西部上空で2機のKC-135空中給油機が空中衝突、うち1機が墜落して乗員6名が死亡。3月19日にはF-35戦闘機がイラン軍の地上砲火を受けたものの、アメリカ軍の基地へ着陸している。 そして3月27日にはサウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地に駐機していたAWACS(早期警戒管制機)のE-3と2機のEC-130H電子戦機がイラン軍によって破壊され、KC-135空中給油機複数機も機能不全の状態になったという。 ドナルド・トランプ米大統領によると、イランはアメリカに敗北して壊滅状態にある。対空兵器は存在せず、レーダーは100%破壊されているというが、そのイランによってアメリカの軍用機が撃ち落とされたわけだ。これが「制空権」の実態であり、戦況はイランが優勢だ。数週間でアメリカが戦争に勝利するとは考えられない。イランがアメリカとの交渉に応じるとは思えない。本ブログで繰り返し書いているように、アメリカやイスラエルは攻撃用ミサイルも防空ミサイルもや枯渇しつつある。その一方でイランはストックが十分にあり、停戦交渉に応じるような状態ではないのだ。 アメリカをはじめとする欧米諸国にとって「停戦」が劣勢になった時の「時間稼ぎ」に過ぎない。今年2月28日にアメリカとイスラエルはアヤトラ・アリ・ハメネイ師を含むイランの要人イランを奇襲攻撃で殺害した。 この攻撃ではハメネイ師のほかアブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニが殺されている。マスード・ペゼシュキヤン大統領やイラン革命防衛隊(IRGC)のクッズ部隊を指揮していたイスマイル・カーニは生き残った。 オマーンのバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディ外相によると、アメリカとイランはイランの核開発計画について協議し、合意まであと一歩のところまで迫っていたという。大詰めの協議から数時間後、イランの要人は殺害されたわけだ。合意が見通せたからこそイラン側は要人が集まったのだろうが、アメリカやイスラエルはイランと合意する意思はなかった。こうした騙し討ちをした相手とイラン側が話し合うはずがない。 欧米諸国はウクライナでの戦争でも同じ手を使った。バラク・オバマ政権は2014年2月にキエフでクーデターを実行、ビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒すことに成功したが、東部や南部では反クーデター派の住民が多く、ドンバスでは武装抵抗が始まった。クーデター直後、軍や治安機関では約7割がクーデター政権を拒否して離脱、その一部はドンバスの反クーデター軍に合流したと言われている。 そうしたこともあり、キエフのクーデター政権は劣勢。そこで西側諸国は停戦を持ちかけ、ウクライナ、ドネツク、ルガンスク、ロシアは停戦で合意している。2014年9月のミンスク1と15年2月のミンスク2だ。それがクーデター政権の戦力を増強するための時間稼ぎに過ぎなかったことはアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領が認めている。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.05
ドナルド・トランプ大統領は軍の粛清を進めている。軍の幹部がイランとの戦争に反対、地上戦への抵抗が強いようだ。ピート・ヘグセス国防長官から辞任するように求められた将軍には、ランディ・ジョージ陸軍参謀長、陸軍変革訓練司令部のデビッド・ホドニ司令官、従軍牧師長のウィリアム・グリーン・ジュニア少将が含まれている。統合参謀本部のダン・ケイン議長や中央軍のブラッド・クーパー司令官もイランへの攻撃に反対していた。大惨事になることが確実だと考えているからだ。このまま進むと核兵器を使わざるをえなくなるだろう。 キリスト教シオニストのヘグセス長官はネオコンのスージー・ワイルズ大統領首席補佐官と連携。ジョン・ラトクリフCIA長官はイスラエルの情報機関モサドの影響下にあり、昨年8月まで中央軍司令官を務めてめていたマイケル・クリラ大将も親イスラエルだった。そうしたグループと対立、イラン攻撃に消極的だったのはトゥルシ・ギャバード国家情報長官やジョー・ケント国家テロ対策センター長(3月17日に辞任)は会議から排除されていた。 トランプ大統領はパム・ボンディ司法長官を解任したが、ギャバード長官、カシュ・パテルFBI長官、ダニエル・ドリスコル陸軍長官、ロリ・チャベス・デレマー労働長官も政権から離脱する可能性があると伝えられている。 ジョージ・W・ブッシュ政権は2003年3月にイラクを先制攻撃しているが、その時にもネオコンと軍幹部の対立があった。例えば攻撃前にエリック・シンセキ陸軍参謀総長が議会でドナルド・ラムズフェルド国防長官の戦略を批判、グレグ・ニューボルド海兵隊中将は2002年10月に統合参謀本部の作戦部長を辞している。そのニューボルド中将は2006年4月、タイム誌に「イラクが間違いだった理由」というタイトルの文章を書いてブッシュ政権を批判した。(Greg Newbold, “Why Iraq Was a Mistake”, TIME, April 9, 2006) その記事が出る直前、アンソニー・ジニー元中央軍司令官もテレビのインタビューで国防長官を批判した。このほか、同年3月にはポール・イートン少将、4月に入るとジョン・バチステ少将、チャールズ・スワンナック少将、ジョン・リッグス少将もラムズフェルド長官を批判していた。こうした軍の批判により、イラクへの攻撃は半年ほど延びたという。無謀な戦争を推進するネオコンと軍幹部の対立と言う構図は今でも続いているようだ。 イランはすでに報復攻撃としてイスラエルのテルアビブやハイファなどの都市、テルノフ、パルマヒム、ベン・グリオン空港を含む重要な空軍基地、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)に近い場所を攻撃している。イスラエル軍は兵員不足で崩壊寸前のようだ。防空システムは事実上、機能していない。 中東にあるアメリカ軍基地もターゲットで、カタールのアル・ウデイド空軍基地、クウェートのアフメド・アル・ジャベル基地とアリ・アル・サレム基地、そしてサウジアラビアのアル・ハルジ基地、アラブ首長国連邦のアル・ダフラ空軍基地、バーレーンのアメリカ軍第5艦隊基地などが攻撃されてきた。多くの基地が居住できな状態になり、将兵は近くのホテルなどへ移動したとされている。 アメリカやイスラエルは攻撃用ミサイルも防空ミサイルもや枯渇しつつある一方、イランはストックが十分にあるようだ。アメリカやその同盟国のレーダーと衛星端末は少なくとも12カ所で機能不全になった。アメリカ側はF-35、F-15、F-16といった戦闘機、AWACS(AEW&C、早期警戒管制機)のE-3、EC-130H電子攻撃機、KC-135空中給油機などが破壊され、艦船の被害も出ている。アメリカ中央軍はこうしたことを否定しているが、映像は存在している。今のところトランプ政権は隠しているが、少なからぬ将兵が死傷しているとも言われている。 空中戦でアメリカ/イスラエルはイランに圧倒され、勝利を演出するためにトランプ大統領は地上戦を行おうとしているようだが、そうした作戦はこれまで以上の惨事になる。だからこそ軍の幹部は反対しているのだが、トランプ政権はアメリカ兵の犠牲を気にしていないようだ。イスラエル軍はイランへ地上部隊を派遣しないと言われている。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.04
ドナルド・トランプ米大統領は4月1日夜、イランとの戦争に関して演説した。何か重要な発表があるのではないかと考える人も少なくなかったが、中身はTruth Socialで彼が投稿してきた主張と同じ。イランの海軍や空軍を壊滅させ、核開発できないように破壊、ミサイルやドローンは枯渇していると主張していたが、その瞬間にもイランはイスラエルや中東のアメリカ軍基地などを攻撃している。 アメリカ軍は泥沼から抜け出そうともがいているが、トランプ大統領はそうした状況を気にしていないようだ。演説するトランプについて映画『レインマン』でダスティン・ホフマンが演じたキャラクターを連想させるという人もいるが、大統領は『裸の銃を持つ男』の世界へ入り込んでいるようにも見える。 バラク・オバマ政権は2014年2月にキエフでクーデターを成功させたものの、クーデターを拒否する国民が多く、欧米諸国はクーデター体制の戦力を増強させなければならなかった。そこでドイツやフランスが仲介する形で停戦合意が成立。2014年の「ミンスク1」と15年の「ミンスク2」だ。この停戦がクーデター政権の戦力を増強する時間稼ぎにすぎなかったことは、後にアンゲラ・メルケル元独首相やフランソワ・オランド元仏大統領が認めている。 NATOはウクライナ人とロシア人を戦わせ、ロシアを疲弊、あわよくば倒そうとしたのだが、ロシアの軍事力と生産力は欧米を圧倒、ロシアの勝利は確定的だ。 アメリカ、イギリス、フランスなどは情報機関員や特殊部隊員だけでなく正規軍も送り込まざるをえなくなり、死傷者数が膨らんでいる。欧米諸国はロシアとの戦争に勝利し、ウクライナやロシアにおける利権を奪うという妄想で戦争を始めた。「損切り」できるアメリカとは違い、ヨーロッパ諸国は手を引けずにもがいている。ヨーロッパ諸国はロシアとの戦争でアメリカに見捨てられる形になった。そのアメリカがイランとの戦争ではヨーロッパ諸国に助けを求め、拒否されている。 トランプ大統領は勝利を演出して逃げようとしているが、イスラエルやペルシャ湾岸諸国は許さない。イランを破壊しようと長年計画してきたイスラエルは勿論、イランの勝利を恐れる湾岸諸国もアメリカに戦争の継続を望んでいるのだ。 オマーンのバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディ外相によると、9カ月の間に2度、アメリカとイランはイランの核開発計画について協議し、合意まであと一歩のところまで迫っていたという。 ところが、大詰めの協議から数時間後、最高指導者だったアヤトラ・アリ・ハメネイ師を含むイランの要人イランをアメリカとイスラエルは奇襲攻撃して殺害してしまう。核開発計画に関する協議はアメリカがイランを油断させ、要人を一箇所に集めるるための罠だったと見られている。イランは2度と交渉に応じないだろう。 この攻撃ではハメネイ師のほかアブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニが殺されているが、マスード・ペゼシュキヤン大統領やイラン革命防衛隊(IRGC)のクッズ部隊を指揮していたイスマイル・カーニは犠牲者の中に含まれていない。 カーニの前任者であるガーセム・ソレイマーニーは2020年1月、イラクで活動している人民動員軍(PMU)のアブ・マフディ・アル・ムハンディス副議長と共にバグダッド国際空港で暗殺された。イラクの首相を務めていたアディル・アブドゥル-マフディによると、その日にソレイマーニーはサウジアラビアからのメッセージに対するイランの返書を携えていた。 ペゼシュキヤン大統領の前任者であるエブラヒム・ライシーは2024年5月19日、アゼルバイジャンからアメリカ製のベル212ヘリコプターで帰国する際、そのヘリコプターが墜落、同乗していたホセイン・アミール-アブドラヒヤン外相らと一緒に死亡した。 ペゼシュキアンの大統領就任式が同年7月28日に実施され、ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤも出席したのだが、7月31日にイランの首都テヘランにあるゲスト・ハウスでイスラエルの攻撃を受けて護衛と共に暗殺された。この事件に絡み、情報機関や軍の高官、ゲストハウスの職員など20名以上が逮捕されたとされている。 2024年7月30日にはベイルートでヒズボラのフアド・シュクルが殺され、9月17日と18日にはレバノンやシリアでトランシーバーやポケベル(ページャー)が遠隔操作で爆破されるテロ攻撃があった。9月27日にはベイルートでヒズボラ幹部による秘密会議が地下施設で開かれたのだが、その場所がイスラエル軍によって空爆され、ハッサン・ナスララ書記長も殺害されている。 ヒズボラの秘密会議にはカーニも出席していたのだが、予定より早く席を立ち、助かった。2025年6月にはIRGCの本部がイスラエル軍に攻撃され、数名のイラン人将校が死亡しているが、カーニは直前にその場から立ち去っていた。今年2月28日にイランの最高指導者アリー・ハメネイ師の邸宅が攻撃された際に、カーニは攻撃の5分ほど前に退席していたという。 そのカーニは2024年当時からスパイ容疑がかけられていたが、失脚はしていなかったが、今回、モサドのスパイだということが判明、処分されたと言われている。彼がスパイだということは中国軍の情報機関によるCIA高官とイスラエル参謀本部幹部との通信傍受で判明したという。 今年2月の奇襲攻撃後、生き残ったペゼシュキアン大統領とカーニがイランを率いることになっても不思議ではなかったが、そうした展開にはならなかった。現在、ペゼシュキアン大統領は政策決定に関与できていないようだ。 戦況はイランが優勢で、アメリカやイスラエルの内部で核兵器の使用が議論されても不思議ではない。イスラエルは1973年10月に勃発した第4次中東戦争で戦況が悪化、ゴルダ・メイア首相の執務室で核兵器の使用が議論されている。その際、モシェ・ダヤン国防相は核兵器を選択肢として見せる準備をするべきだと発言したというが、この時はソ連が動いて核兵器の使用は回避された。 また、1953年から大統領を務めたドワイト・アイゼンハワーは大統領に就任して間もない時期に朝鮮戦争を休戦に持ち込もうと考え、中国に対して休戦に応じなければ核兵器を使うと脅したとされている。休戦は1953年7月に実現した。アイゼンハワー政権で副大統領を務めていたリチャード・ニクソンはベトナム戦争から抜け出すため、アイゼンハワーを真似している。カンボジアに対する秘密爆撃を実行しながら核兵器で北ベトナムを恫喝したのだ。(Daniel Ellsberg, “The Doomsday Machine,” Bloomsbury, 2017) トランプ大統領やベンヤミン・ネタニヤフ首相が核兵器でイランを脅す可能性はある。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.03
ドナルド・トランプ大統領が始めた対イラン戦争でアメリカとイスラエルは敗北しつつある。窮地に陥った同大統領はイランが合意に同意するかどうかにかかわらずアメリカはイランでの軍事作戦を終了すると発言しているが、イラン政府はアメリカに対し、戦争による破壊の賠償、すべての制裁の解除、ペルシャ湾におけるアメリカ軍基地の撤去という要求が満たされるまで降伏も停戦も受け入れないという姿勢を維持している。アメリカに従属していれば好き勝手にできると言う時代は終わった。 イランによると、アメリカやイスラエルと交渉は行われていないわけで、合意できるとは思えない。交渉に関するトランプ大統領の発言は原油価格や金利を安定させるための作り話である可能性が高い。トランプ政権は強引に勝利を宣言し、送り込んだアメリカ軍を中東地域からの撤退させ、あとは放置するつもりなのかもしれない。イランとの戦争はバラク・オバマ大統領がウクライナで始めた対ロシア戦争におけるNATOの敗北に続く大惨事だ。 現地からの映像や報告によると、アメリカとイスラエルはイランのテヘランのほか、カラジ、シャフリヤール、アフヴァーズ、シーラーズ、アバデ、イスファハン、バンダルアッバスなどを攻撃、それに対してイランはイスラエルのテルアビブやハイファ、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)に近い場所を攻撃し、さらにアメリカ軍が駐留しているカタールのアル・ウデイド空軍基地、クウェートのアル・サレム基地、アラブ首長国連邦のアル・ダフラ空軍基地、バーレーンのアメリカ軍第5艦隊基地を含む基地を攻撃されている。イスラエルのハアレツ紙によると、イスラエル国内におけるイランのミサイルの命中率は80%に達し、迎撃されていない。イスラエル軍は兵員不足で崩壊寸前だともいう。 アメリカとイスラエルがイランと戦争を始めた結果、世界の原油取引量のうち約3分の1が運ばれていたホルムズ海峡と通過することが困難になっている。イランは敵対していない船舶が安全保障規則を完全に順守し、イラン当局と連携するという条件で海峡を通過することはできるものの、アメリカやイスラエルのほか侵略に何らかの形で参加している国の船舶は無害通航、または非敵対通航の対象とはならないという。制限の中には石油取引の決済を中国の人民元で行うことも求めているようだ。 それだけでなく、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はイランとアメリカ/イスラエルとの戦争に参戦すると発表、アデン湾から紅海へ入るために通過しなければならないバブ・エル・マンデブ海峡が封鎖される可能性がある。紅海へ入れなければ、スエズ運河から地中海へ抜けることができない。 アメリカではイランとの戦争に批判的な声が高まり、トランプ大統領はイランとの戦争を止めようとしているが、イスラエルだけでなくペルシャ湾岸産油国も戦争を継続し、イランの現体制を破壊するように求めている。 2月28日に実施された最初の攻撃でイスラエル軍はミナブ女子小学校を攻撃、168名から180名を殺した。その大半は7歳から12歳の少女。攻撃は数度あり、最初の攻撃で生徒たちが避難した礼拝堂も狙われている。最初の攻撃で人びとを一カ所に集め、救助隊もろとも殺す計画だった可能性が高い。いわゆる「ダブルタップ攻撃」だ。この殺害はカルト的な「儀式」で、生徒たちは生贄になったとする人もいる。 イスラエルでは昨年6月、クネセト(国会)で数人の女性が未成年時代に宗教儀式の一環として受けた性的虐待について証言した。被害者のひとりであるヤエル・アリエルによると、彼女は5歳から20歳まで儀式的な虐待を受け、ほかの子どもたちに危害を加えることを強要されたという。 警察に被害届を出しても却下され、彼女が自分の体験を明かにすると脅迫を受けたという。こうした被害を受けたのは彼女だけでなかったようだ。別の被害者であるヤエル・シトリットによると、人身売買は全国で行われていた。薬物も使用され、レイプを含むサディスティックで残酷なことも行われ、その行為は撮影されていたとされている。被害者がそうしたことを証言しても荒唐無稽の話だと思われ、信じてもらえなかったという。 被害者たちによると、聖書の物語を模倣した虐待を受けたともいう。例えば、加害者がイサクの縛りを真似て被害者の女性を縛り付け、間に合わせの割礼の儀式を行うという儀式に強制的に参加させられたと複数の女性が証言している。 ジェフリー・エプスタインが主催していた要人集団は性的な虐待のほか、拷問、殺害、そして人肉を食べるという行為も行な割れていた疑いがあり、犠牲者の中には幼児も含まれていたと言われている。イスラエル議会における証言と重なる部分がある。そのエプスタインはイスラエル軍の情報機関に使われていた。必然的にアメリカやイギリスの情報機関も関与してくる。ミナブ女子小学校の生徒や教師が生贄にされたという主張を無視することはできない。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.02
次に攻撃するのはキューバだとドナルド・トランプ米大統領は発言しているが、すでに経済封鎖は実施している。その結果、エネルギー資源が枯渇して生活に支障が出ているのだが、そのキューバのマタンサスにロシアの石油タンカー「アナトリー・コロドキン」が3月30日に到着したと伝えられている。 こうした石油の輸送についてトランプ大統領は、「気にしないし、他国からのキューバへの石油供給にも反対しない」としている。同大統領によると、キューバ政府は「崩壊した」ため、他国がキューバを支援するかどうかはもはや重要ではないのだという。トランプはイラン政府も「崩壊した」と考えているようだ。 トランプ政権によるキューバに対する経済攻撃の激化に伴い、停電が深刻化した。手術や授業が中止され、交通システムや市民への給水に支障が乗じている。トランプ大統領は1月31日、大統領令でキューバをアメリカの国家安全保障に対する「異例かつ極めて重大な脅威」であると宣言し、キューバに燃料を販売する国に対し20%の制裁を科すと脅した。 キューバへ石油を供給していたベネズエラに対してアメリカ軍の特殊部隊デルタフォースが攻め込んだのは1月3日のこと。ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を誘拐、その際に夫妻を警護していたキューバの治安関係者32名を殺害している。 その際、アメリカ軍はDEW(指向性エネルギー兵器)を利用したとも言われている。電磁波エネルギーか音波エネルギーが使われ、警護兵の体の自由を奪った上で射殺したというのだ。西側諸国では、こうした兵器を国内の反乱を鎮圧するために開発してきたのだが、NATOはウクライナで戦闘用の兵器として実験している。 誘拐作戦に使用されたヘリコプターは自由に飛行、つまりベネズエラ側の防空システムが機能せず、MANPADS(携帯式地対空ミサイル)も使用されていない。ベネズエラ政府の中枢に「裏切り者」がいた可能性は大きい。マドゥロの周辺で買収されていなかったのはキューバ人だけだったのではないかと言う人もいる。 マドゥロ大統領は石油インフラを破壊したまま放置し、再建しようとしなかったと批判されてきた。アメリカが仕掛けた経済戦争のため、インフレ率は高く、国民の生活は厳しいのだが、マドゥロが適切な対策を講じなかったとも言われている。そうしたこともあり、マドゥロはチャベスを支持していたグループとの関係は悪化していた。そうしたチャベス支持者のひとりが副大統領のデルシー・ロドリゲスデルシー・ロドリゲスにほかならない。 買収はアメリカの得意技だ。まず買収、それが失敗したら脅迫、暗殺、クーデター、軍事侵攻へと進む。ジェフリー・エプスタインはイスラエル軍の情報機関のために各国の要人に近づき、弱みを握り、脅していた。 ソ連が消滅する際にもアメリカは買収している。ソ連のミハイル・ゴルバチョフはペレストロイカ(建て直し)を打ち出し、ソ連を消滅させることになるが、その政策を考え出したKGBのフィリップ・ボブコフをはじめとするKGBの幹部はジョージ・H・W・ブッシュを中心とするCIAのネットワークに買収されていたとされている。「ハンマー作戦」だ。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018) ジョージ・H・W・ブッシュの息子であるジョージ・W・ブッシュが大統領だった2003年3月、アメリカ主導軍がイラクを先制攻撃した。その際、CIAはイラクの将軍たちに賄賂を贈り、操っていたと言われている。 マドゥロ政権の崩壊を望んでいた現国務長官のマルコ・ルビオも麻薬取引に関係している。彼の姉が結婚した相手のオーランド・セシリアは1987年に麻薬取引の容疑で逮捕されているのだ。セシリアは1983年にペット・ショップで働き始め、マルコもそこで雑用を任されていた。ルビオも働いていたそのペット・ショップは麻薬業者のフロント企業で、セシリアは1989年に懲役35年の判決を受けているが、ルビオは問題にされなかった。 ルビオと同じネオコンのエリオット・エイブラムズはオットー・ライヒやジョン・ネグロポンテと同様、ベネズエラの体制転覆を目論んでいた。ベネズエラで1998年に実施された選挙で勝利したウゴ・チャベスはアメリカが支配する仕組みを壊した。その時代に副大統領だったのがニコラス・マドゥロにほかならない。 そこでジョージ・W・ブッシュ政権はチャベス政権を倒すための秘密工作を開始、その中心にはイラン・コントラ事件に登場したエイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたライヒ、そして1981年から85年までのホンジュラス駐在大使を務め、2001年から04年までは国連大使、04年から05年にかけてイラク大使を務めたネグロポンテがいたわけだ。その人脈にルビオも含まれている。 かつてキューバのハバナはユダヤ系ギャングが支配するギャンブルの街だった。そのギャングの中でも中心的な存在だった人物がメイヤー・ランスキー。現在のベラルーシで1902年に生まれたランスキーは母や弟とオデッサから1911年にアメリカへ渡っている。 暗黒街へ足を踏み入れたランスキーはアメリカの情報機関とも緊密な関係を築く。やはりCIAの秘密工作に協力していたサント・トラフィカンテ・ジュニアもキューバに君臨していたギャングのひとりだ。 ランスキーの幼馴染にはイタリア系のギャング、ラッキー・ルチアーノ(本名、サルバドーレ・ルカーニア)もいる。ふたりはユダヤ系ギャングのアーノルド・ロステインの配下に入った。1920年代にアメリカで麻薬の違法取引を取り仕切っていたのはこのロステインだ。ランスキーやルチアーノは第2次世界大戦の終盤、アメリカのONI(海軍情報局)に協力している。 ルチアーノは近代ファミリーの創設者と言われ、1931年から57年まで「ルチアーノ・ファミリー」を率いていた。その後継者がビトー・ジェノベーゼ。そのジェノベーゼが率いるファミリーと親密な関係にあったフレッド・トランプはドナルド・トランプの父親だ。トランプ・タワーやトランプ・プラザの建設でもジェノベーゼ配下の労働者が使われている。フレッドは1980年代にベンヤミン・ネタニヤフと親しくなった。 ランスキーはキューバを支配していたフルヘンシオ・バティスタと手を組み、カジノやとナイトクラブを開設、八百長や不正行為を禁止して観光客を呼び込む下地を作った。 しかし、キューバでは1959年1月にフィデル・カストロたちの革命が成功、ランスキーはカストロがハバナへ入城する前日にキューバを離れた。市民は街頭に出てカジノを破壊、犯罪組織のメンバーは摘発される。革命政府はマフィアが所有する資産を国有化していく。ホテル・カジノの国有化は1960年10月だった。 トランプ大統領はキューバを再び犯罪の島にしたのだろうか。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.04.01
ドナルド・トランプ大統領にイランを攻撃させたのはネオコンとイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相だ。その政策によってトランプ政権どころがアメリカを中心とする支配システムが揺らいでいる。ネオコンに服従、「首なし鶏」状態の日本の政治家や官僚は、日本がそうした状態にあることを理解できていないように見える。 もっとも、トランプに限らず、ジョー・バイデンにしろ、バラク・オバマにしろ、ジョージ・W・ブッシュにしろ、外交や軍事の分野はシオニストの一派であるネオコンがコントロールしてきた。戦略の基本構造は変化していない。その戦略の中における政策の違いにすぎない。オバマやバイデンはロシアとの直接的な戦争へ突き進み、トランプは選挙期間中、ロシアとの関係修復を訴えていたものの、大統領に就任してからその公約は放棄したようだ。 ネオコンは1980年代からイラクのサダム・フセイン体制を倒して親イスラエル体制を樹立、イランとシリアを分断して両国を征服するという計画を立てていた。フセインはペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤だと位置付けていたジョージ・H・W・ブッシュ、ジェームズ・ベイカー、ロバート・ゲイツを含む勢力と対立、それが「イラン・コントラ事件」の発覚に繋がった。 2001年9月11日の攻撃から10日ほど後、欧州連合軍(現在のNATO作戦連合軍)の最高司令官を務めた経験のあるウェズリー・クラークは統合参謀本部で攻撃予定国のリストを見たのだが、そこにはイラク、シリア、レバノン、リビア、ソマリア、スーダン、そしてイランが記載されていた。アメリカは計画通りに攻撃している。(ココやココ) アメリカとイスラエルがイランを攻撃している理由はイランの「核開発」だとされているが、イラクを先制攻撃した際の「大量破壊兵器」と同じように、これは違う。イランを征服し、中東全域をイスラエルの支配下に置くことが目的だろう。「大イスラエル」構想だ。その背後にはイスラエルを作ったイギリスやアメリカの帝国主義者がいる。ネオコンはその手先だと言える。 ネオコンの思想的な支柱はシカゴ大学で教授を務めていたレオ・ストラウス教授。この人物は1899年にドイツのヘッセン州で熱心なユダヤ教徒の家庭に生まれ、17歳の頃にウラジミール・ジャボチンスキーのシオニスト運動へ接近、1932年にはロックフェラー財団の奨学金でフランスへ渡る。そこで中世のユダヤ教徒やイスラム哲学について学んだ後、プラトンやアリストテレスの研究を始めている。(The Boston Globe, May 11, 2003) 1934年にストラウスはイギリスへ移動、37年にはアメリカへ渡ってコロンビア大学の特別研究員になる。教授として受け入れられた1944にはアメリカの市民権も獲得、49年から73年までシカゴ大学で教えている。ただ教授を務めたのは1968年まで。その間、1954年から55年にかけてイスラエルのヘブライ大学で客員教授にもなっている。 ストラウスと同じようにシカゴ大学の教授を務めたアルバート・ウォルステッターもネオコンを支えたひとり。冷戦時代、同教授はアメリカの専門家はソ連の軍事力を過小評価していると主張、アメリカは軍事力を増強するべきだとしていたが、その判断が間違っていた、あるいは嘘だったことはその後、明確になっている。 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の父親であるベンジオン・ネタニヤフはポーランドで生まれ、アメリカへ渡った。アメリカ時代、彼は「修正主義シオニスト世界連合」を創設したジャボチンスキーの秘書を務めた経験がある。 2003年3月にイラクを先制攻撃した際、大手メディアは「ショックと畏怖」という用語を使っていた。軍事攻撃などでターゲット国の人びとを恐怖に陥れ、アメリカの戦争マシーンに対する抵抗は無益であり、屈服するべきだと確信させるということのようだ。 日本の場合、明治維新より前、「刀狩り」後も日本の農民は武装、自立していた。だからこそ安藤昌益のような思想家が生まれたのだが、維新後の農民をはじめとする庶民は洗脳される。庶民は無力であり、強者に屈服してその暴力に耐えるだけだと思い込まされてきた。これも一種の「ショックと畏怖」だろう。 そうした洗脳に映画やテレビが重要な役割を果たしてきたが、天皇制官僚システムというカルト体制そのものが基盤になっている。そのシステムを構築、国民をカルトの信者にすることで操ってきたと言えるだろう。その天皇制官僚システムを構築したのは明治維新を仕掛けたイギリスの麻薬業者と金融資本。アヘン戦争で儲けた私的権力だ。 イギリスの金融資本は俗にシティと呼ばれる。そのシティで最も大きな影響力を持っていると考えられている一族がロスチャイルド。 シティが金融危機に襲われた1857年当時、ジョージ・ピーボディーとジュニアス・モルガンが経営する銀行の業績が悪化、倒産寸前になったのだが、そのときにピーボディーに救いの手を差し伸べたのがロスチャイルド一族。そのピーボディーは1864年に引退、ジュニアス・モルガンが引き継いだ。 その息子であるジョン・ピアポント・モルガンは1899年にロンドンで開かれた金融機関の会議に出席、その後、ロスチャイルド系金融資本のアメリカにおける代理人になる。ここからモルガン財閥の歴史は始まるわけである。(Gerry Docherty & Jim Macgregor, “Hidden History,” Mainstream Publishing, 2013) 関東大震災以降の日本はウォール街に君臨していたJPモルガンの影響下に入るのだが、その背後にはロスチャイルドが存在していた。1933年から34年にかけてJPモルガンを中心とするウォール街の大物たちは32年の大統領選挙で勝利したフランクリン・ルーズベルトの政権を倒すためにクーデターを計画した。それを阻止したのが海兵隊の伝説的な軍人、スメドリー・バトラー退役少将である。 JPモルガンたちはファシズム体制の樹立を目指していた。そのJPモルガンが日本を支配、その代理人と言える人物が駐日大使だったジョセフ・グルーである。グルーのいとこの結婚した相手がジョン・ピアポント・モルガン・ジュニア、つまりJPモルガンの総帥にほかならない。戦後日本の形を作ったジャパン・ロビーの中心人物もジョセフ・グルーだった。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.31

対イラン攻撃 アメリカ海兵隊の第31海兵遠征部隊(MEU)が中東に到着したとアメリカ中央軍(CENTCOM)が発表した。この部隊はディエゴガルシア島に駐留していると言われていた。到着している海兵隊員は2200名から2500名だと報道されている。さらに第11MEUが4月6日か7日着くという。 しかし、第11MEUと第31MEUの派遣は陽動作戦にすぎず、地上攻撃が本当に実施されるならば、ふたつのレンジャー大隊と第82空挺師団の支援を受けたSMU(特殊任務部隊、通称ティア-1)が実行する可能性が高いと元CIA分析官のラリー・ジョンソンは推測している。 いずれにしろ、アメリカ軍は100万人のイラン軍と戦うことになるのだが、アメリカ軍の退役将校やCIAの元分析官は「大惨事」になると見通している。それでも地上部隊を侵攻させるとするならば、ドナルド・トランプ大統領にアドバイスしている人たちが愚かなのか、それでもイランに攻め込まなければならない理由があるのだろう。少なからぬ人はトランプをイスラエルが動かしていると考えている。そのイスラエルはサウジアラビアと同じように、イギリスの支配層が作り上げた国だ。 すでにイランはホルムズ海峡の通行を制限している。イランに敵対していない船舶は安全保障規則を完全に順守するならイラン当局と連携してホルムズ海峡を安全に通過できるが、イランを侵略している当事国のアメリカやイスラエルのほか、侵略に何らかの形で参加している船舶は無害通航または非敵対通航の対象とはならないという。制限の中には石油取引の決済を中国の人民元で行うことも求めているようだ。 そうした中、イエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はイランとアメリカ/イスラエルとの戦争に参戦すると3月28日に発表した。この勢力はイスラエルによるガザ住民の虐殺を止めるため、イスラエルを攻撃していた。ガザでの虐殺を傍観している他のイスラム諸国とは違う。アンサール・アッラーはバブ・エル・マンデブ海峡の船舶通過を制限することになりそうだ。つまり紅海からスエズ運河を抜けて地中海へ向かうことができなくなる。 レバノンでは壊滅したとされていたヒズボラがイスラエルに対する攻撃を開始した。イスラエル軍はレバノンへ地上部隊を侵攻させたのだが、ヒズボラ側はイスラエルのメルカバ戦車や装甲兵員輸送車を75両から100両、破壊したと主張している。 イスラエル軍の地上部隊は2006年7月から9月にかけてレバノンへ軍事侵攻したが、その際、ヒズボラに敗北している。その時にメルカバ戦車が破壊されている。その結果、イスラエルはレバノンへ地上部隊を侵攻させなくなった。 2024年にイスラエルはヒズボラの幹部を暗殺した。例えば7月30日にはフアド・シュクルがベイルートで殺され、9月17日と18日にはレバノンやシリアでトランシーバーやポケベル(ページャー)が遠隔操作で爆破されるテロ攻撃があった。 9月27日にはベイルートでヒズボラ幹部による秘密会議が開かれていた地下施設がイスラエル軍によって空爆され、ハッサン・ナスララ事務総長も殺害されている。これでヒズボラは壊滅したとアメリカやイスラエルは考えたのだろうが、今回、すでに復活していることが判明した。 すでにアメリカ軍のF-35、F-15、F-16といった戦闘機、F/A-18戦闘攻撃機、KC-135空中給油機をイラン軍は破壊、あるいは損傷を与えたと伝えられているが、3月27日にはサウジアラビアのプリンス・スルタン空軍基地に駐機していたAWACS(AEW&C、早期警戒管制機)のE-3が破壊された。 アメリカとイスラエルは追い詰められている。タッカー・カールソンとのインタビューではクネセト(イスラエル議会)で議長を務めた経験のあるアブラハム・ブルグは、イスラエルが1967年以降、いわゆる「第三神殿」を建設してメシアを呼び戻すため、アル・アクサ・モスクと岩のドームの破壊を5回以上試みたと話している。こうした側面からもイスラエルやアメリカが核兵器を使う可能性はある。第三神殿 ユダヤ教徒の中には、キリスト教徒を利用してエルサレムをイスラム教徒から奪還し、メシア到来を予言する政権を樹立すると構想している人がいる。その起源と言われているのはギヨーム・ポステル。16世紀の人だ。そのほかカバラ主義者のダビド・ルベニとソロモン・モルチョがいる。ポステルは世俗の権力が第三神殿を建設することを望んでいた。 プロテスタントの一派は新約聖書の最後の部分、「ヨハネの黙示録」を重要視するのだが、黙示録にはふたりの人物、つまり原著者と編集者によって書かれた文章が混在。ギリシャ語の能力が全く違い、思想も正反対であることから容易に区別できる。原著者は初歩的な文法についてしっかりしているのに対し、編集者の語学力は低く、知っている単語や表現をまるで無秩序に並べ立てるだけだというのだ。(田川健三訳著『新約聖書 訳と註 第七巻』作品社、2017年) 後から書き込んだ人物は狂信的なユダヤ民族主義者で、ユダヤ民族以外はすべて殺しつくされるべしだと繰り返す。世界中の異邦人が滅ぼしつくされ、殺しつくされ、ユダヤ人、あるいはユダヤ主義キリスト信者のみ救われることを願っている。キリスト教徒に大きな影響を及ぼしているのは後から書き込まれた部分だ。 エルサレムには、キリストが十字架上で亡くなり、復活した場所に建つ最も神聖な聖墳墓教会、イスラム教徒にとって重要なアル・アクサ・モスクもあるが、現在ユダヤ教徒が支配、教会やモスクは閉鎖されている。シオニズム 16世紀にはイギリスでシオニズムが現れた。海賊行為で富を蓄積していたエリザベス1世の時代(1593年から1603年)、イングランドに出現した「ブリティッシュ・イスラエル主義」だ。イングランドの支配層の間で、アングロ-サクソン-ケルトは「イスラエルの失われた十支族」であり、自分たちこそがダビデ王の末裔だとする信じ、人類が死滅する最後の数日間にすべてを包括する大英帝国が世界を支配すると予言されているという妄想が広まったのだ。 イギリスや西側世界にシオニズムを広めた人物としてブリティッシュ外国聖書協会の第3代会長を務めた反カトリック派のアントニー・アシュリー-クーパー(シャフツバリー伯爵)が知られているが、17世紀初頭にイギリス王として君臨したジェームズ1世も自分を「イスラエルの王」だと信じていたという。 その息子であるチャールズ1世はピューリタン革命で処刑されたが、その革命で中心的な役割を果たしたオリヴァー・クロムウェルをはじめとするピューリタンも「イスラエルの失われた十支族」話を信じていたとされている。クルムウェルはユダヤ人をイングランドへ入れることを許可したが、稼ぎ方を海賊行為から商取引へ切り替えるためだったとされている。ユダヤ人は商取引や金貸しに長けていた。 エリザベス1世が統治していた時代、イングランドはアイルランドを軍事侵略、先住民を追放し、イングランドやスコットランドから入植者をアイルランドのアルスター地方へ移住させた。好ましくないと判断した人びとを排除し、好ましいと考える人びとを移住させたわけだが、その後、そうした手法を彼らは繰り返す。 ピューリタン革命の時代にもアイルランドで先住民を虐殺している。クロムウェルは革命で仲間だったはずの水平派を弾圧した後にアイルランドへ軍事侵攻して住民を虐殺したのだ。 侵攻前の1641年には147万人だったアイルランドの人口は侵攻後の52年に62万人へ減少。50万人以上が殺され、残りは「年季奉公」や「召使い」、事実上の奴隷としてアメリカなどに売られたと言われている。 ダブリン出身でプリマス・ブレザレンを創設したジョン・ネルソン・ダービー牧師は1830年代から宗教活動を始めたが、彼はキリストの千年王国がすべての文明を一掃し、救われるのは選ばれた少数のグループだけだと考えていた。 19世紀のイギリス政界では反ロシアで有名なヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)が大きな影響力を持っていた。彼は戦時大臣、外務大臣、内務大臣を歴任した後、1855年2月から58年2月まで、そして59年6月から65年10月まで首相を務めている。ビクトリア女王にアヘン戦争を指示したのもパーマストン卿だ。 このように始まったシオニズムは19世紀に帝国主義と一体化し、パレスチナ侵略が具体化してくる。イギリス政府は1838年、エルサレムに領事館を建設し、その翌年にはスコットランド教会がパレスチナにおけるユダヤ教徒の状況を調査、イギリスの首相を務めていたベンジャミン・ディズレーリは1875年にスエズ運河運河を買収。そして1917年11月、アーサー・バルフォアがウォルター・ロスチャイルドへ書簡を出してイスラエル建国への道を切り開く。いわゆる「バルフォア宣言」だ。シオニズムと帝国主義によってイギリスは世界を侵略していった。 ピューリタンはアメリカへも渡り、先住民である「アメリカ・インディアン」を大量虐殺し、ヨーロッパ系移民が入れ替わった。同じことを中東でも行おうとしている人がいるように見える。アラブ人やペルシャ人を殲滅し、「大イスラエル」を作ろうとしているように見える。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.30
サウジアラビア上空を飛行していたアメリカ軍のF-16戦闘機がイラン軍の攻撃で損傷、緊急着陸したとイランの通信社が伝えている。この報道をアメリカ軍は否定、真相は不明だが、アメリカ軍のF-35、F-15、F-16といった戦闘機やKC-135空中給油機が、原因はともかく、破壊されたことは確かなようだ。アメリカ/イスラエルは劣勢だ。 イラン領内でアメリカ軍やイスラエル軍に攻撃された地域を見ても、両軍は制空権を握っていないことは明白。イスラエルやペルシャ湾岸の産油国ではイランによる攻撃の実態を撮影すると懲役刑に処せられるようだが、それでも破壊された街の様子は伝わってくる。 イランも被害を受けているが、弾道ミサイルは発射し続けている。イランにミサイルが残っていることは明白だ。アメリカ軍が確実に破壊できたミサイルを保管している兵器庫は3分の1程度にすぎないとされている。ミサイル、ドローン、発射装置は地下の施設に保管され、それらの製造装置も地下にある。アメリカ軍やイスラエル軍が攻撃しているのは地上にある学校や病院を含む民間施設、あるいはエネルギー関連の施設や製鉄所が中心だ。戦況がイランに有利なのは明らかである。 対イラン攻撃を主導したと言われているイスラエルのエヤル・ザミール参謀総長によると兵員不足は深刻で、兵役法、予備役法、そして義務兵役期間延長法を制定する必要があるとしている。レバノンでは壊滅したとされていたヒズボラがイスラエルに対する攻撃を開始、イスラエル軍はレバノンへ地上部隊を侵攻させたのだが、ヒズボラ側はイスラエルのメルカバ戦車や装甲兵員輸送車を75両から100両、破壊したと主張してている。正確な台数は不明だが、相当数のメルカバ戦車が破壊されたことは確かなようだ。 イスラエル軍の地上部隊は2006年7月から9月にかけてレバノンへ軍事侵攻したが、その際、ヒズボラに敗北している。その時にメルカバ戦車が破壊されている。その結果、イスラエルはレバノンへ地上部隊を侵攻させなくなった。 そして2024年7月30日、ヒズボラのフアド・シュクルがベイルートで殺され、同年9月17日と18日にはレバノンやシリアでトランシーバーやポケベル(ページャー)が遠隔操作で爆破されるテロ攻撃があり、9月27日にはベイルートでヒズボラ幹部による秘密会議が開かれていた地下施設がイスラエル軍によって空爆され、ハッサン・ナスララ事務総長も殺害された。この時の攻撃でヒズボラは壊滅したと言われてきたが、今回、すでに復活していることが判明したわけだ。 ナスララ殺害の時も言われたが、機密情報がアメリカやイスラエルへ漏れていると言われ、イラン政府の内部にスパイがいるのではないかと考える人もいた。今年、そのスパイはイラン革命防衛隊(IRGC)に所属するクッズ部隊を指揮していたイスマイル・カーニだということが判明、処分されたと言われている。彼がモサドのスパイだということは中国軍の情報機関によるCIA高官とイスラエル参謀本部幹部との通信傍受で判明したようだ。 イランとの戦争でアメリカとイスラエルが劣勢になる中、ドナルド・トランプ米大統領は沖縄のキャンプ・ハンセンを拠点にしているアメリカ海兵隊の第31海兵遠征部隊(MEU)に所属する2500名やアメリカのフォート・ブラッグを拠点とする第82空挺師団の約3000名を中東へ派遣すると発表していた。第31MEUはディエゴガルシア島に駐留しているようで、4月6日か7日には第11MEUが到着するともいう。 しかし、元CIA分析官のラリー・ジョンソンは、第11MEUと第31MEUの派遣は陽動作戦にすぎず、地上攻撃が本当に実施されるならば、ふたつのレンジャー大隊と第82空挺師団の支援を受けたSMU(特殊任務部隊、通称ティア-1)によって実行されるだろうと推測している。これらの部隊はすでにヨルダンとイスラエルの基地にいるとされている。そうした部隊がイランの島や本土へ侵攻したとしても、そこでは100万人というイランの戦闘員が待ち受けている。 イラン軍は当初、旧式のミサイルやドローンで攻撃、アメリカ軍やイスラエル軍の防空ミサイルを使わせた。すでに枯渇、攻撃を中断したのは兵器を補充するためだったと考える人もいる。駆逐艦や潜水艦のような艦艇に搭載されていたトマホークのような攻撃用ミサイルはすでに打ち尽くしたとみられるが、イランによるミサイルとドローンを使った攻撃に対応するため、再装填のために港へ戻ることができない。 それに対してイランには十分な数のミサイル、ドローン、そうして発射装置が存在、さらにロシアはドローンの改良型シャヘドをイランへ供与していると伝えられている。ロシアの技術者はイランのドローンを改良し、カメラ、AIコンポーネント、ジェットエンジンを追加し、航行性能と電子戦防御能力を向上させたという。ロシアは偵察衛星で得た情報をイランへ提供しているようだ。 しかも、ここにきてイエメンのアンサール・アッラー(フーシ派)はイランとアメリカ/イスラエルとの戦争に参戦すると発表している。イエメンは紅海からスエズ運河へ抜ける航路を封鎖できる位置にある。イランがホルムズ海峡を、アンサール・アッラーが紅海への入り口であるバブ・エル・マンデブ海峡をそれぞれ封鎖してエネルギー資源などの動きをコントロールするようになれば、ペトロダラーの仕組みが壊れる可能性がある。この仕組みが壊れたなら、米英金融資本が主導してきた支配システムも崩壊する可能性がある。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.29
アメリカ軍はキューバのグアンタナモを占領、そこに収容所を建設している。そこでは刑法にも戦争法にも縛られないとアメリカ政府は主張し、拷問も行われてきた。 CIAの対テロセンターで情報分析官を、またアメリカ上院外交委員会で主任調査官も務めた経験のあるジョン・キリアクーは2007年12月、CIAがウォーターボーディング(水責め)と呼ばれる拷問を行っているとCIAの同僚から聞いたと発言し、CIAの怒りを買う。そして2013年1月、彼は懲役30カ月の判決を受け、刑務所へ入れられた。 そのキリアクーが3月24日、ジョン・F・ケネディ大統領暗殺に関するファイルのうち約1万件を未だに公開していないと指摘、そこにはイスラエルに関する記述が含まれていると述べた。ケネディ大統領暗殺に関するファイルを全て公開することを義務付ける連邦法が存在するのだが、守られていないわけだ。 約1万件が未公開だということは、ケネディ大統領暗殺に関するファイルからイスラエルの情報機関に関する資料を全て削除しろというCIAの要求が拒否されたということでもある。本ブログでは書いてきたことで繰り返しになるが、イスラエルはイギリスの帝国主義者が中東を支配するために作り上げた国であり、シオニズムもその帝国主義者が作り上げたのである。「ユダヤ人」はカモフラージュのための幻影だ。 ケネディ大統領には敵が多かった。ソ連に対する先制核攻撃を目論んでいた軍や情報機関の好戦派、経済政策をめぐって対立していた大手鉄鋼会社、大統領令11110号を出して大統領が銀証券を発行する権限を財務長官に委任したことから巨大金融資本とそれぞれ対立していた。西側世界では、イスラエル、資本主義、貧困格差に批判的な人が権力を握ることは許されない。 またケネディ大統領はイスラエルの核兵器開発にも厳しい姿勢で臨み、1948年の「イスラエル建国」によって難民になったパレスチナ人の帰還権も認めていた。大統領はCIA(中央情報局)の解体を目論み、その代わりにDIA(国防情報局)を設置している。 テキサス大学のジェームズ・ガルブレイス教授によると、統合参謀本部のライマン・レムニッツァー議長やSACの司令官だったカーティス・ルメイなどは1963年の後半にソ連を奇襲攻撃る予定だったという。その頃になればアメリカはICBMを配備でき、しかもソ連は配備が間に合わないと見ていた。楽勝できると思っていたのである。 ケネディ大統領はアメリカ軍をベトナムから撤退させることを決断、1963年10月にはNSAM(国家安全保障行動覚書)263を出した。アメリカ軍の準機関紙であるパシフィック・スターズ・アンド・ストライプス紙は「米軍、65年末までにベトナムから撤退か」という記事を掲載している。 しかし、この決定はケネディ大統領の暗殺で実行されていない。新大統領のリンドン・ジョンソンは1963年11月26日付け、つまり前任者が殺されて4日後にNSAM273を、また翌年3月26日付けでNSAM288を出し、ケネディのNSAM263を取り消してしまったのだ。(L. Fletcher Prouty, "JFK," Carol Publishing Group, 1996) ジョンソンのスポンサーはシオニストの富豪、アブラハム・フェインバーグだった。この人物はシオニストの富豪で、彼が経営していたアメリカン・バンク・アンド・トラストはスイス・イスラエル銀行の子会社である。(Whitney Webb, “One Nation Under Blackmail Vol. 1,” Trine Day, 2022) イスラエルの核兵器開発は欧米の富豪が資金を提供していた。そのひとりがハリー・トルーマン大統領のスポンサーでもあったフェインバーグである。ケネディ大統領はイスラエルのダビッド・ベングリオン首相と後任のレビ・エシュコル首相に対し、半年ごとの査察を要求する手紙を送りつけ、核兵器開発疑惑が解消されない場合、アメリカ政府のイスラエル支援は危機的な状況になると警告している。(John J. Mearsheimer & Stephen M. Walt, “The Israel Lobby”, Farrar, Straus And Giroux, 2007) ケネディ大統領暗殺の1カ月後にイスラエルのディモナにある原子炉は臨界状態に達し、その後、順調に核兵器の開発は進んだ。1986年10月5日付けのサンデー・タイムズ紙に掲載された内部告発者のモルデカイ・バヌヌの話よると、イスラエルが保有する核弾頭の数は生産のペースから推計して150から200発で、水爆の製造に必要なリチウム6やトリチウム(三重水素)の製造もバヌヌは担当、別の建物にあった水爆の写真を撮影している。さらにイスラエルは中性子爆弾の製造も始めていたという。(The Sunday Times, 5 October 1986)なお、ジミー・カーター元米大統領の推測によると、イスラエルの保有する核弾頭の数は150発以上、最も多い推計値は400発だ。 ケネディ大統領の弟であるロバート・F・ケネディ司法長官が率いる司法省は1962年、AIPACの前身であるアメリカ・シオニスト評議会がイスラエル・ユダヤ人機関から資金提供を受けていると主張し、同評議会に外国代理人として登録するよう命令したが、これは66年にジョンソン政権がひそかに撤回、67年にはアメリカ・シオニスト評議会のフロント組織が、外国代理人として登録することなく、AIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)となった。 1963年11月22日のケネディ大統領暗殺で中心グループのひとりと言われている人物がジェームズ・ジーザス・アングルトン。父親のヒュー・アングルトンと同じようにアレン・ダレスの側近として活動、CIAの秘密工作に深く関与している。 ジェームズ・アングルトンはイスラエルの情報機関とも緊密な関係にあり、オペレーション・レッドキャップを通じてリー・ハーヴェイ・オズワルドと直接つながっていたことが明らかになっている。ケネディ大統領を暗殺したとして逮捕され、警察署の地下駐車場で殺害されたオズワルドだ。アングルトンはイスラエルの核兵器開発にも協力していた。 この作戦はソ連国外にあるソ連政府施設を標的とした浸透および亡命勧誘作戦。若い軍人を募集し、ソ連の情報機関の餌としてソ連に送り込んでいた。オズワルドもそのひとりだったという。ソ連滞在中にアメリカの市民権を放棄したオズワルドは1962年6月にアメリカへ戻ったが、その際に拘留も逮捕もされなかった理由もそこにあるとされている。 ところで、ドナルド・トランプ政権は司法省が保有するジェフリー・エプスタインに関する約600万件の文書や映像、いわゆる「エプスタイン・ファイル」のうち約300万件を公開していない。しかも公開されたファイルは黒塗りだらけだ。それだけでなく財務省関係のファイルも公開していない。しかもエプスタインがライリー・キラリー私立探偵事務所を使い、自宅から6つの保管庫へ運び込んだコンピュータ、映像、写真、文書などを捜査当局は調べていないという。 エプスタインはロスチャイルド家をはじめとする世界の富豪と親しくしていたが、その裏ではイスラエルの情報機関の仕事をし、世界の要人の弱みを握って脅していた。 1970年代にイスラエル軍の情報機関ERD(対外関係局)に所属、87年から89年にかけてイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたアリ・ベン-メナシェによると、エプスタインはギレーヌ・マクスウェルや彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルと同じようにイスラエル軍の情報機関、つまりアマンのために働いていた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019) エプスタインやギレーヌは幼児を含む未成年の女性を世界の要人に提供、さらに拷問、殺害、そして人肉を食べるというようなことも行われていた。彼らはその様子を撮影などで記録し、用人を脅すために使っていた。すでに世界的な著名人の名前が出ているが、隠されたファイルの中にはそれ以上の重要人物がいるのだろう。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.28

陸上自衛隊は3月31日、熊本市にある健軍駐屯地に射程距離1000キロメートルという「12式地対艦誘導弾能力向上型」を配備するという。勿論、このミサイルは中国大陸の沿岸部が射程圏内に入る。射程距離は「当初計画」の5倍になったとされているが、最初から1000キロメートル以上を予定していたのだろう。 自衛隊や在日アメリカ軍が保有する兵器について議論する場合、日本では「防衛」や「反撃」を前提にするが、先制攻撃で使う可能性もある。少なくとも周辺国はそう考えるだろう。 何しろアメリカ軍は先制攻撃が基本。「自衛隊とアメリカ軍の部隊連携をより円滑にする」ため、2024年3月には陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊を一元的に指揮する常設組織として統合作戦司令部が編成された。自衛隊をアメリカ軍の指揮下に入れることが目的だとも考えられている。自衛隊もアメリカ軍の先制攻撃に加担することになるだろう。 自衛隊は2016年、与那国島にミサイル発射施設を建設、それに続いて19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させた。与那国島を除く3島へASCM(地上配備型対艦巡航ミサイル)部隊とSAM(地上配備型地対空ミサイル)部隊の配備が重要だとアメリカ国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が2022年4月に発表した報告書は説明している。アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしている。 RANDの報告書が発表されたのは2022年だが、与那国島に施設が建設された2016年には中国を中距離弾道ミサイルで包囲するという計画は始動していたはずである。同じことをアメリカはヨーロッパでロシアに対して行っている。アメリカはこうしたミサイルを配備する国として支配下にあるオーストラリア、フィリピン、韓国、タイ、そして日本を想定しているが、アメリカの案に同意する可能性がある国は日本だとしている。 2022年10月になると「日本政府がアメリカ製の巡航ミサイル『トマホーク』の購入を米政府に打診している」と報道されている。核弾頭を搭載でき、亜音速で飛行、最大射程距離2500キロメートルの巡航ミサイルを日本政府は購入するというのだ。中国に対する戦争を準備していると見られても仕方がない。 日本は中国と地理的に近く、アメリカが中国に対するミサイル能力を強化するために進めている取り組みと整合性があるとしているが、政治的な困難を認識している。アメリカにとって日本へのミサイル配備は「防衛」のためではないということだ。 RANDの報告書は日本が独自に長距離攻撃能力を追求することは国内で大きな反発を招き、中国、朝鮮、韓国が反対すると見通し、日本が運用するASCMシステムを共同開発するか、FMS(対外有償軍事援助)を通じて販売することを推奨している。日本には専守防衛の建前と憲法第9条の制約があるためASCMの開発や配備で日本に協力することにしたのだろう。 南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。こうした動きも日本におけるミサイル配備と連携している。 高市早苗首相は昨年11月7日、衆院予算委員会で「台湾有事」について問われ、「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と発言した。歴代の日本政府と同じように高市首相も「ひとつの中国」を受け入れているので、中国で内戦が始まった場合、日本は中国に対して宣戦布告するということになる。さらに、同首相は11月11日、衆院予算委員会で「核を保有しない、製造しない、持ち込まない」という非核3原則を堅持するかどうかという質問に対して明言を避けた。こうした高市首相の発言を「失言」で片付けようとする人もいるが、質疑の流れから考えても確信犯である。自衛隊の動きともリンクしているだろう。つまり、アメリカ支配層の命令で日本が中国と戦争を始める可能性もある。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.27

沖縄のキャンプ・ハンセンを拠点にしているアメリカ海兵隊の第31海兵遠征部隊(MEU)に所属する2500名に続き、アメリカのフォート・ブラッグを拠点とする第82空挺師団の約3000名を中東へ派遣する準備が進められていると伝えられているが、この程度の戦力でハールク島やイラン本土に上陸するのは無謀だ。 ドナルド・トランプ米大統領は3月23日、イラン側との協議に基づいてイランへの攻撃を5日間停止すると発表、これを受けて石油価格は低下しているが、イラン政府はアメリカと直接的にも間接的にも協議した事実はないとしている。ベネズエラの場合と同じように1、2時間の戦闘で目的地を占領、月曜日に石油の取り引きが始まる時には作戦を終了させられると考えているのかもしれないが、それは無理だろう。 アメリカの外交や軍事をコントロールしているネオコンは1990年8月から91年2月にかけての湾岸戦争以降、アメリカが軍事力を行使してもソ連/ロシアは動かないと主張してきた。ロシアであろうと中国であろうと、脅せば屈するというわけだ。 バラク・オバマ政権は2011年春にムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を利用してリビアやシリアの体制を転覆させる作戦を開始、その年の10月にムアンマル・アル・カダフィ体制は倒され、カダフィ本人はその際に惨殺された。2013年11月から14年2月にかけてはウクライナでクーデターを実施、成功させている。この時の手先はネオ・ナチだ。 ソ連消滅後、ボリス・エリツィン時代のロシアでオリガルヒとして同国の資産を略奪していたミハイル・ホドルコフスキーはロシアの石油会社ユーコスを所有していた。 ホドルコフスキーはユーコスの発行済み株式のうち25から40%をアメリカの巨大石油会社、エクソン・モービルとシェブロンへ売り渡そうとしたが、ウラジミル・プーチンに阻止された。プーチンの動きが少しでも遅れればロシアは米英支配層の植民地になっていた可能性が高い。2003年10月、ホドルコフスキーはノボシビルスクの空港で横領と税金詐欺の容疑で逮捕された。(Natylie Baldwin & Kermit Heartsong, “Ukraine,“ Next Revelation Press, 2015) ホドルコフスキーは2024年5月22日、ユーコスの「保護者」はジェイコブ・ロスチャイルドだと語っている。「保護者」とは、誰に支配権を渡すかを決定する人物で、事実上、会社はその人物に支配されている。ソ連消滅後、耕作地や石油を含む資源は西側の巨大資本が支配しようとしていた。つまりロシアは西側を拠点とする私的権力の植民地になるところだった。その私的権力の中心にいたのがジェイコブ・ロスチャイルドということになる。ネオコンもロスチャイルド家の影響下にある。 ウクライナはロシアの隣国であるだけでなく、歴史的に両国は緊密な関係にある。そのウクライナをNATOの支配下に置き、ロシアに軍事的な圧力を加えるだけでなく、チャンスがあればロシアの体制を転覆させて植民地化を完成させようとしていた可能性が高い。NATOの東への拡大はナチ時代のドイツが1941年6月22日に始めた「バルバロッサ作戦」の再現にほかならない。 2014年2月のウクライナにおけるクーデターはそれだけ重要だったのだが、ロシアは表立って動かなかった。そこでネオコンは、アメリカが軍事力を行使してもソ連/ロシアは動かないという思い込みを強めることになったようだ。 しかし、その思い込みは2015年9月末の壊れる。アメリカの統合参謀本部議長がマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへ交代した5日後にロシア軍がシリア政府の要請で軍事介入、ダーイッシュ(IS、ISIS、ISILなどとも表記)を蹴散らした。また2022年2月にはロシア軍がウクライナへ軍事攻撃を開始、国境近くに集結していたウクライナ軍を粉砕している。 そして今、アメリカとイスラエルはイランからの報復攻撃に苦しんでいる。イラクの主要としは瓦礫の山と化し、中東にあるアメリカ軍基地も激しい攻撃にあっている。ネオコンはイランの戦力や工業力も過小評価していた。 もしロシアを植民地化できていれば、ホルムズ海峡の封鎖によって中国を締め上げることができたが、ロシアと中国が手を組んでいる現状ではアメリカを含む西側世界が窮地だ。 アメリカの騙し討ちで酷い目にあったイランやロシアは勿論、中国もアメリカとの交渉には消極的だろう。ネオコンはウクライナでロシアに敗北したが、イランとの戦争でも戦況は不利。トランプ政権は勝利を演出して逃げることも難しい。海兵隊や空挺部隊でイランを攻撃するば、傷口は広がる。送り込まれた部隊は全滅すると推測する人が少なくない。イスラエルが核兵器を使えばロシアが報復するかもしれないが、その前にイランがイスラエルの核兵器発射施設を破壊する可能性もある。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.26

ドナルド・トランプ米大統領はTruthへの投稿で、アメリカとイランは「過去2日間、中東における敵対行為の完全解決に関して非常に良好かつ建設的な協議を行った」と主張、イランの発電所に対する攻撃を5日間延期するよう国防省に命じたと発表した。トランプによると、彼が協議した相手はイランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師ではなく、正体不明の人物だという。 それに対し、イラン外務省はそうした協議が行われた事実はないと否定、そうした発言はエネルギー価格を引き下げ、軍事計画を実行するための時間稼ぎが目的だとしている。イラン側の主張はおそらく正しい。少なくとも軍事作戦の実行を先送りにした。 トランプをイランへの戦争へと導いたのは義理の息子であるジャレッド・クシュナーだと言われている。彼の父親であるチャールズ・クシュナーはトランプと同じ不動産デベロッパーで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と親しい。チャールズもネタニヤフと同様、考え方のベースにはトーラー(旧約聖書の最初の5書)があり、その記述をイスラム教徒虐殺を正当化するために利用している。 トーラーの中には、ユダヤ人と敵だとされている「アマレク人」が登場する。そのアマレク人を家畜と一緒に殺し、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたというのだ。アマレク人を皆殺しにするという宣言である。ネタニヤフやチャールズはアマレク人をアラブ人やペルシャ人に重ねている。このふたりはそうした御伽話の中に生きている。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。こうしたことこそが、ガザやイランにおいてネタニヤフたちが行っていることにほかならない。 ネタニヤフ首相の父親であるベンジオン・ネタニヤフはポーランドで生まれ、アメリカへ渡った。アメリカ時代、彼は「修正主義シオニスト世界連合」を創設したウラジミール・ジャボチンスキーの秘書を務めていた経験がある。 チャールズ・クシュナーの両親もポーランドで生まれで、アメリカへ移住している。生まれ育った環境が似ている。そうした環境が似た考え方を育み、彼らをイスラム教徒虐殺へと導いたのかもしれない。 ドナルド・トランプの父親であるフレッドはベンヤミン・ネタニヤフと1980年代に知り合っている。その当時、ネタニヤフはイスラエルの国連常駐代表を務めていた。 しかし、フレッドがユダヤ系の人びとと繋がったのは1950年代だと伝えられている。彼はブルックリンに土地を所有していたのだが、そこにあったアパートの地下駐車場でポーランドから移住してきたユダヤ教のラビ、イスラエル・ワグナー師は宗教的な集まりを主宰していた。そのワグナー師は地主のフレッドと親しくなり、フレッドはシナゴーグを建てるための土地を寄贈し、建設費も寄付したという。フレッドは息子のドナルドにユダヤ人への敬意を教え込んでいたようで、大統領になった現在でもその影響は残っている。ドナルドの娘イバンカはユダヤ教の律法に従って改宗、クシュナーと結婚している。 ドナルドは個人的にユダヤ教の影響を受けているわけだが、アメリカの政界へは以前からイスラエルのネットワークが入り込んでいた。その一端が1980年代に発覚している。 当時、イラクのサダム・フセイン政権をどうするかでジョージ・H・W・ブッシュ、ジェームズ・ベイカー、ロバート・ゲイツを含む勢力とネオコン(シオニスト)が対立していた。フセインについて前者はペルシャ湾岸の産油国を守る防波堤だと認識していたのに対し、ネオコンはフセイン政権を倒してイラクに親イスラエル体制を樹立、イランとシリアを分断して両国を制圧しようと考えていた。そこでブッシュたちとネオコンが対立、暴露合戦が始まり、「イラン・コントラ事件」も明るみに出た。その際、イスラエルの「スリーパー(情報機関の潜伏エージェント)」も見つかっている。 例えば、上院議員だったジョン・タワー。議員時代、彼はブッシュに近いと見られていた。タワーは1985年に議員を引退、ロバート・マクスウェルの会社で働き始める。マクスウェルはミラー・グループを率いていた人物だが、その一方でイスラエル軍の情報機関の下で活動していた。この頃、マクスウェルや娘のギスレイン・マクスウェルはジェフリー・エプスタインと知り合っている。 1986年にタワーは国家安全保障会議やそのスタッフとイラン・コントラ事件の関係を調べる特別委員会(タワー委員会)の委員長に就任、89年には国防長官就任が内定したのだが、長官就任は上院で拒否された。アルコールや女性の問題が原因だとされたが、本当の理由は彼がイスラエルのスリーパーだということが発覚したからだと言われている。 ロバート・マクスウェルはソ連を消滅させる西側情報機関の秘密工作(ハンマー作戦)にも関係していたが、ソ連が消滅する直前の1991年4月にタワーは搭乗していた近距離定期便がジョージア州ブランズウィック空港付近で墜落して死亡、同じ年の11月にマクスウェルはカナリア諸島沖で自身のヨット「レディ・ギスレイン」の船上から消え、死体となって発見された。 ドナルド・トランプ大統領は現在、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の意向に沿う形でイランを攻撃、反撃されて窮地に陥っている。日本の経済も危機的な状況で、飢餓の恐れもあるのだが、高市早苗総理大臣はトランプの周りではしゃいでいる。絶望的だ。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.25

ドナルド・トランプ米大統領は3月21日、イランがホルムズ海峡の封鎖を48時間以内に解くように要求、もし解かなければイランの発電所を破壊すると脅迫したが、イランは報復を予告している。条件付きで通過が許されているホルムズ海峡を完全に封鎖し、破壊された施設が再建されるまで再開させないとIRGC(イラン革命防衛隊)は警告。さらにイスラエルの発電所、エネルギー関連施設、通信関連施設を標的にし、アメリカ系企業も攻撃するとしている。 現在、イスラエルのミサイル迎撃率は5%程度で、イランの攻撃に対応することは不可能だ。アラブ首長国連邦、サウジアラビア、クウェート、カタールなどにはイランを攻撃するために使われているアメリカ軍基地が存在しているが、それらに対する攻撃も続く。裏道で喧嘩に明け暮れているチンピラのような手法はイランにも通じない。 トランプ政権が始めたイランとの戦争により、すでに世界の経済は麻痺し始めている。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動で破壊しきれなかったサプライ・チェーンがイランに対する攻撃で危機に瀕している。 トランプ大統領はアメリカ軍の作戦によってイラン空軍とその防空システムを完全に破壊し、イランは「防空能力を一切失った」と宣言したが、イランのミサイルがアメリカ軍のF-35、F-15、F-16などに命中しているようだ。アメリカの「無敵神話」はウクライナですでに崩壊しているが、F-35の「ステルス神話」も崩れ去った。アメリカ軍とイスラエル軍の戦闘機がイラン上空を飛行する頻度が急速に減少しているとも伝えられている。 ホルムズ海峡を通過するタンカーは世界へ供給されている石油の20%を占める。化学肥料の製造に不可欠な尿素の場合、海峡が封鎖されると30%が供給されなくなってしまい、世界の人口の4割以上が影響を受けるという。トランプ政権の恫喝戦術は事態を悪化させるだけだ。 そこでトランプ大統領はTruthへの投稿で、アメリカとイランは「過去2日間、中東における敵対行為の完全解決に関して非常に良好かつ建設的な協議を行った」と主張、イランの発電所に対する攻撃を5日間延期するよう国防省に命じたと発表したが、イラン外務省はそうした協議が行われた事実はないと否定した。そうした発言はエネルギー価格を引き下げ、軍事計画を実行するための時間稼ぎが目的だと述べている。 確かにアメリカをはじめとする西側諸国の「交渉」は新たな攻撃を準備するための時間稼ぎに過ぎないことはウクライナにおける戦争でも明確になっている。 トランプ政権のイラン攻撃はすでに破綻している。アメリカやイギリスの影響下にあるオマーンで外務大臣を務めているバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディはイギリスのエコノミスト誌にエッセイを寄稿、アメリカの友好国はアメリカを不法な戦争から救い出すために支援しなければならないと主張している。ロスチャイルド家の雑誌と言われているエコノミスト誌にそうした意見が掲載されたのだ。米英の金融資本もイランとの戦争を終了させたがっているのだろう。 戦争を継続したがっているのはアメリカのキリスト教シオニストやイスラエルの「修正主義シオニスト世界連合」だけのように見える。このふたつは1970年代から手を組み、勢力を伸ばしてきた。トランプ政権の「ホワイトハウス信仰に基づく地域連携局」でスピリチャル顧問を務めるポーラ・ホワイト-ケインもそうした一派のひとりだ。 彼らの掲げる教義によると、キリストに従う「善の軍勢」と反キリストの「悪の軍勢」が「ハルマゲドン」で最終戦争を行い、人類の歴史は幕を閉じる。その際、再臨するキリストによって自分たちは救われるのだという。ジェリー・フォルウエルなど有名なテレビ説教師の大半がこの説を信じている。ポーラ・ホワイト-ケインもテレビ説教師である。 「四千万を超えるといわれる聖書根本主義者たちは、聖書に書かれた神の都シオンと現代のシオニズム国家イスラエルを中心に信仰体系を打ち立てている」。この信仰体系は天啓的史観と呼ばれている。(グレース・ハルセル著、越智道雄訳、「核戦争を待望する人びと」、朝日選書、1989年) イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2023年4月に警官隊をイスラムの聖地であるアル・アクサ・モスクへ突入させ、ガザにおける住民大虐殺の下地を作った。同年10月3日にはイスラエル軍に保護された832人のイスラエル人が同じモスクへ侵入してイスラム教徒を挑発。ハマスなどの武装集団がイスラエルを陸海空から攻撃したのはその後、10月7日のことだ。 この攻撃では約1200名のイスラエル人が死亡したとされたが、イスラエルのハーレツ紙によると、イスラエル人を殺害したのはイスラエル軍。同軍は侵入した武装グループを壊滅させるために占拠された建物を人質もろとも砲撃、あるいは戦闘ヘリからの攻撃で破壊している。イスラエル軍は自国民の殺害を命令したというのだ。いわゆる「ハンニバル指令」である。 その攻撃から間もなく、ネタニヤフ首相は「われわれの聖書(キリスト教における「旧約聖書」と重なる)」を持ち出し、パレスチナ人虐殺を正当化している。聖書の中でユダヤ人と敵だとされている「アマレク人があなたたちにしたことを思い出しなさい」(申命記25章17節から19節)という部分を彼は引用、「アマレク人」をイスラエルが敵視しているパレスチナ人に重ねたのである。 その記述の中で、「アマレク人」を家畜と一緒に殺した後、「イスラエルの民」は「天の下からアマレクの記憶を消し去る」ことを神は命じたというわけだ。「アマレク人」を皆殺しにするという宣言だが、このアマレク人をネタニヤフたちはアラブ人やペルシャ人と考えている可能性がある。 サムエル記上15章3節には「アマレクを討ち、アマレクに属するものは一切滅ぼし尽くせ。男も女も、子供も乳飲み子も牛も羊も、らくだもろばも打ち殺せ。容赦してはならない。」と書かれている。これこそがガザでイスラエルによって行われていることだと言えるだろう。ネタニヤフによると「われわれは光の民であり、彼らは闇の民」なのである。ネタニヤフ政権はパレスチナ人だけでなく家畜も皆殺しにした上、彼らの存在を歴史から抹殺すると言っているのだ。 ネタニヤフのイラン攻撃はこの延長線上にある。おそらく、彼は中東に住むすべてのイスラム教徒を虐殺しようとしている。そのために彼はあらゆる手段を講じる。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.24

イラン軍は3月21日、ディモナにあるシモン・ペレス・ネゲブ原子力研究センター(ディモナ原子炉)に近い場所をミサイルで攻撃した。そこにはディモナ原子炉で働く科学者が避難するための地下施設があると言われている。この攻撃はイスラエルがイランのナタンズ核施設を攻撃した数時間後に実施された。アメリカ軍、あるいはイスラエル軍が発射したミサイルが3月17日、稼働中のブシェール原子力発電所から数メートルの地点に着弾している。 ディモナ原子炉では核兵器が製造されている可能性が高い。ここで技術者として働いていたモルデカイ・バヌヌの告発が1986年10月5日付けのサンデー・タイムズ紙に掲載されたが、それによると、イスラエルが保有する核弾頭の数は生産のペースから推計して150から200発。水爆の製造に必要なリチウム6やトリチウム(三重水素)の製造もバヌヌは担当、別の建物にあった水爆の写真を撮影したという。それだけでなく、イスラエルは中性子爆弾の製造も始めていたとしている。(The Sunday Times, 5 October 1986) ジャーナリスト、セイモア・ハーシュは『サムソン・オプション』の中で、バヌヌのディモナに関する話はイギリスのマスメディアを経由してイスラエル政府に伝わり、拉致に繋がったという。 イスラエル軍情報局のERD(対外関係部)に所属、イツハーク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたこともあるアリ・ベン-メナシェによると、イスラエルの情報機関はバヌヌがサンデー・タイムズ紙へ持ち込む前の段階で調査を開始している。 バヌヌにディモナの話を記事にしないかと持ちかけたのは、オーストラリアで知り合ったジャーナリストのオスカー・ゲレロ。まず地元のシドニー・モーニング・ヘラルド紙やザ・エイジ紙に持ち込んだが、掲載を断る。そのうえで同紙はオーストラリアの対内情報機関ASIOに通報し、その情報はさらに対外情報機関のASISへ伝えられ、そこからイスラエルへ知らされた。アングロ・サクソン系国とイスラエルの情報機関は密接に繋がっている。 次にゲレロはイギリスへ渡り、デイリー・ミラー紙に接触するが、同紙を所有していたロバート・マクスウェルはイスラエル軍の情報機関のために働いていた。ベン-メナシェによると、同紙の国外担当編集者のニコラス・デービスもイスラエルの情報機関のエージェントだ。 ゲレロとバヌヌがデイリー・ミラー紙の前にサンデー・タイムズ紙へ持ち込まなかったなら、記事は掲載されていなかった可能性が高い。モサドのロンドン支局長はイギリスの治安機関MI5に協力を要請、工作をはじめていたのだ。MI5はイギリスで政治的、あるいは外交的問題を引き起こさないという条件で協力を約束した。 モサドはバヌヌを拉致することにしたが、MI5との約束があるため、イギリスでは実行できない。そこで彼をイタリアのローマにおびき出すことにした。そして登場してくるのが「シンディ・ハニン・ベントフ」なる女性だ。 まずシンディは散歩中のバヌヌに何気なく話しかけ、パブに誘う。そうしたデートを何回か重ねた後、バヌヌはローマへ旅行しないかと持ちかけられ、彼はローマ行きを承知してしまう。ローマで彼を待ちかまえていたのはモサドのエージェント3名。ローマで大きな箱に押し込められたバヌヌは船でイスラエルのアシュドッドに運ばれた。外交特権で箱が調べられることはなかった。サンデー・タイムズが記事の掲載を決定したのは1986年10月5日、バヌヌが拉致された数日後のこと。バヌヌは1988年3月に懲役18年の判決を受けている。 バヌヌの告発はアメリカの情報機関にとっても驚きだったという。彼らはイスラエルの保有する核弾頭数を24から30だと推測していたからである。バヌヌが告発した後、イスラエルが保有する核兵器の数は増えているはずだが、ジミー・カーター元米大統領はその数を150発以上だとしている。中には400発だとする人もいる。実際の保有数が不明な理由のひとつはディモナを詳しく調べられないからだ。ジョン・F・ケネディ大統領は調べようとしたが、1963年11月22日に暗殺された。 イスラエルがイランの核開発についてとやかく言うのはおかしいのだが、アメリカとイスラエルがイランを爆撃している理由がそこにあるとは思えない。ガザのようにして、中東全域をイスラエルにしたいのだろう。「大イスラエル」だ。 イスラエルはアメリカやイギリスにとって中東を支配するための航空母艦だと考えることができる。北アメリカやオーストラリと同じように先住民を虐殺し、自分たちの領土にしたいのだろう。大イスラエルを荒唐無稽の話だと考える人は歴史を学び直すべきだ。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.23

沖縄のキャンプ・ハンセンで訓練中のアメリカ海兵隊の第31海兵遠征部隊(MEU)に所属する2500名と佐世保海軍基地を母港とする強襲揚陸艦トリポリとその強襲揚陸艦群(強襲揚陸艦サンディエゴとニューオーリンズ)は3月13日から中東へ向かっているという。 アメリカ軍とイスラエル軍は2月28日にイランを奇襲攻撃、最高指導者のアヤトラ・アリ・ハメネイ師、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、イラン革命防衛隊(IRGC)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含むイランの要人を殺害した。 オマーンのバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディ外相によると、9カ月の間に2度、アメリカとイランはイランの核開発計画について協議し、合意まであと一歩のところまで迫っていたという。ところが最も実質的な協議からわずか数時間後、アメリカとイスラエルはイランを攻撃したのだ。核開発計画に関する協議はアメリカがイランを油断させ、要人を一箇所に集めるるための罠だったのだろう。イランは2度と交渉に応じないと見られている。 ドナルド・トランプ米大統領は3月14日にイランのハールク島を爆撃させた。この島はイランの原油輸出の約9割を扱っている重要な場所。イランの原油輸出の約9割を扱っている同島の石油輸出ターミナルはこの攻撃でダメージは受けなかった。また、爆撃後もハールク島の防空システムは機能している。 このハールク島に対する上陸作戦をトランプ政権は考えていると言われ、そのために第31MEUが派遣されたというのだが、日本の駐留しているアメリカ軍部隊がイランに対する攻撃に参加するとなると、日本もイランにとって敵国ということになる。中東にあるアメリカ軍基地はイランやその同盟組織からの攻撃で破壊されているが、日本にあるアメリカ軍基地が攻撃されることもありえるということになるだろう。 上陸作戦が成功する可能性は高くないが、もし成功して占領した場合はイラン軍からの集中攻撃を受けることになり、捕虜になるか戦死することになる。アメリカ政府もそうした展開になることは理解しているはずで、海兵隊員を生贄にして核攻撃するつもりではないかと危惧する人もいる。イランに勝利することが困難になっているイスラエルが核兵器を使っても不思議ではない。 アメリカ軍の内部にはイスラエルのために命をかけたくないという将兵も少なくないが、イランを核攻撃したいと考える将兵もいる。2007年8月29日にアメリカのノースダコタ州マイノット空軍基地でW80-1可変出力核弾頭を搭載したAGM-129 ACM巡航ミサイル6発が行方不明になるという出来事があった。しかもミサイルの紛失は報告されず、マイノットとバークスデール両基地で36時間にわたり航空機に搭載されたままだったという。 間違ってB-52H重爆撃機に搭載され、ルイジアナ州バークスデール空軍基地へ輸送されたということになっているが、核兵器を扱うための手順を考えると、少なくとも軍の幹部が核弾頭を搭載しミサイルの移動に関係している可能性が高い。アメリカ国内での核テロを計画していたのか、イランを独断で核攻撃しようとしたグループがいるのではないかと言われていた。現在トランプ政権を動かしている人びとの一部が核攻撃を目論んでいても不思議ではない。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.22
高市早苗首相は3月19日にホワイトハウスを訪問、彼女を出迎えたドナルド・トランプ大統領の胸に飛び込んでハグを交わすという触れ合いからふたりの再会は始まった。それを微笑ましいと捉えるか、醜態だと捉えるかは人それぞれだろう。イランに対する奇襲攻撃やジェフリー・エプスタインとの関係で追い詰められているトランプ大統領にとって気の休まる時間だったかもしれない。 アメリカやイスラエルによる攻撃で始まったイランとの戦争はホルムズ海峡の封鎖という事態になり、エネルギー資源や肥料の流れが止まってしまった。これは日本にとっても重大なことで、「事態を一刻も早く沈静化させ、ホルムズ海峡における航行の安全、エネルギーの安定供給を確保することの重要性を確認しました」などという出来の悪い評論家的なことを言って済む状況ではないのだ。 高市は「世界中に平和と繁栄をもたらせるのはドナルドだけ」だと発言したようだが、トランプ大統領を持ち上げているのはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と高市首相くらいだろう。 現在、トランプ大統領の愚かな行為のため、世界は経済危機へ突入しつつあり、核戦争の可能性も高まった。イランのミサイルやドローンを使った反撃でテル・アビブやハイファのようなイスラエルの主要都市や軍事施設は壊滅的な打撃を受けている。 イランを攻撃しているアメリカ軍に基地の使用を認めることは侵略への加担になるとイラン政府は主張、そうした基地のあるペルシャ湾岸の「親米国」は攻撃のターゲットになっている。戦争が長期化すると重要度が高まりそうなディエゴガルシア島は今のところイギリス領ということになっている。そこで、イランはイギリスにも矛先を向けている。日本にあるアメリカ軍基地がイラン攻撃に使われるような事態になれば、日本も攻撃対象と見做されるだろう。 また、ここにきてイラン領空に侵入していたアメリカ軍のF-35戦闘機にイランの防空ミサイルが命中したが、その前に複数のKC-135空中給油機が破壊され、イランの極超音速ミサイルによる攻撃を受けたアメリカ海軍の空母エイブラハム・リンカーンは現在、イランから1100キロメートル離れたオマーン沖に停泊。船内で大規模な火災が発生した空母ジェラルド・R・フォードは修理のため、クレタ島へ向かったと伝えられている。 アメリカやイスラエルによる攻撃を想定して報復の準備を進めていたイランにはまだ余裕があるが、数日でイランは屈服すると考えていたアメリカやイスラエルは窮地に陥っている。長期戦の準備ができていないのだ。こうした事態をアメリカの軍や情報機関は予見し、イラン攻撃を思いとどまるよう大統領にアドバイスしていたようだが、それは拒否された。 アメリカのNCTC(テロ対策センター)の長官を務めていたジョー・ケントは3月17日、「良心に照らして、現在進行中のイラン戦争を支持することはできない」として辞任した。 ケントは辞任後、タッカー・カールソンのインタビューに応じ、その中でイランはアメリカに差し迫った脅威を与えていなかったと主張、「この戦争はイスラエルとその強力なアメリカロビーからの圧力によって始まったことは明らかだ」と語っている。ケントによると、昨年6月までトランプは中東での戦争について、「アメリカから愛国者の尊い命を奪い、国の富と繁栄を枯渇させる罠であることを理解していた」という。 すでにトランプ大統領が始めたイランとの戦争は核戦争の危機を高めているだけでなく、世界経済を破壊し始め、アメリカに住む人びとにもその痛みが及び始めている。オマーンのバドル・ビン・ハマド・アル・ブサイディ外相はエコノミスト誌に寄稿したエッセイの中で、アメリカの友好国はアメリカを不法な戦争から救い出すために支援しなければならないと主張している。 アル・ブサイディによると、9ヶ月の間に2度、アメリカとイランはイランの核開発計画とそれが兵器開発計画になりえるというアメリカの懸念について、真の合意まであと一歩のところまで迫っていたという。 アメリカとイスラエルがイランを奇襲攻撃したのは最も実質的な協議からわずか数時間後のことだったともしている。その協議内容を検討するためにアヤトラ・アリ・ハメネイ師をはじめとするイランの指導者たちが集まり、トランプ政権とネタニヤフ政権それを狙って攻撃したのだろう。 イランが隣国領内のアメリカ軍基地を報復攻撃の対象にすることは遺憾だが、避けられないものだったとアル・ブサイディ外相は判断している。「イスラム共和国の終焉を目的とした戦争」に直面したイランの指導部にとって、報復攻撃はおそらく唯一合理的な選択肢だったというのだ。 こうした常識的な意見をオマーンのような親米国の外務大臣が書いたことは興味深いが、それだけでなく、意見を表明したエコノミスト誌がロスチャイルド家の雑誌だということも注目されている。ウラジミール・ジャボチンスキーが創設した「修正主義シオニスト世界連合」を信奉する人びとからトランプとネタニヤフの戦争は支持されるのだろうが、それ以外の人びとは苛立っているようだ。そのトランプに高市はホワイトハウスで媚を売った。**********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.21
イスラエルの情報機関はテヘランの交通監視カメラをハッキングし、最高指導者だったアヤトラ・アリ・ハメネイ師の自宅を監視、イラン人の動きを追跡していたと伝えられている。ハッキングにはBriefCamというイスラエルを拠点とするBriefCam社が開発した映像解析ソフトウエアが使われたと伝えられている。フィナンシャル・タイムズ紙は、最高指導者の暗殺はイスラエル諜報機関が長年にわたって収集したデータによって可能になったと報じている。 そのソフトウェアをロシアの民間企業が2010年代から使用していたことが発覚した。ロシア科学アカデミー理論実験生物物理学研究所を含む著名な機関、企業、建造物の多くがこの監視システムを使用しているという。 そこでロシアのラジオ局RBCの記者がイスラエル軍のアンナ・ウコロワ報道官に対し、イスラエルはロシアの交通監視カメラにアクセスできるのかと質問したところ、ウコロワ報道官は「ハメネイ師の暗殺は、われわれの能力が相当なものであることを示すものだ」回答、「われわれに危害を加えようとする者は誰であろうと容赦しない」と恫喝。さらに彼女は「モスクワが今、イスラエルに敵意を抱いていないことを願っています」と付け加えた。ロシアの当局者がイスラエルに「敵意」を抱けば「排除」の対象となる可能性があるというわけだ。 BriefCam社は2007年にイスラエルのヘブライ大学で設立された会社で、AIを活用して数時間分の動画を数分に要約して確認でき、要約した映像はさまざまな条件で検索できる。顔認識機能があり、対象の性別、年齢、服装、動きのパターン、特定の場所での滞在時間などでフィルタリングが可能だ。世界をパレスチナ化する技術だ。 この会社は2004年にキヤノン・グループのマイルストーン・システムズに吸収され、その後、BriefCamはマイルストーンのビデオ監視システムに統合された。なお、2022年にマイルストーンのロシアにおける事業は終了している。 イスラエルではこうした分野の会社は情報機関、つまりモサドや電子情報機関の「8200部隊(ISNU)」と関係が深い可能性が高い。必然的にイギリスの対外情報機関MI6や電子情報機関GCHQ、そしてアメリカのCIAやNSAともつながるだろう。そうした背景を持つBriefCam社の親会社が日本企業のキヤノンだ。 アメリカ軍は2月28日にイスラエル軍と共同でイランの主要都市をミサイルとドローンで攻撃し、アリ・ハメネイ師のほか、アブドルラヒム・ムサビ参謀総長、アジズ・ナシルザデ国防相、IRGC(イラン革命防衛隊)のモハメド・パクプール司令官、そして最高安全保障委員会の事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含む人びとを殺害したが、これらの人びとが集まる日時と場所をイスラエルへ知らせたのはクッズ部隊を2020年1月から率いていたイスマイル・カーニで、すでに処分されと言われている。2024年の段階でカーニは疑惑を持たれていたが、アリ・ハメネイ師が殺されるまで要職についていた。 クッズ部隊はIRGCを構成する5部隊のひとつで、非正規戦と軍事情報活動を担当。カーニがモサドのスパイだということは、中国軍の情報機関によるCIA高官とイスラエル参謀本部幹部との通信傍受で判明したと伝えられている。カーニは西側諸国に対し、イランを引き渡すと約束していたという。 3月16日にはイランの最高国家安全保障会議で事務局長を務めていたアリ・ラリジャニが娘の家で、息子のモルテザ・ラリジャニや副事務局長のアリレザ・バヤットらと共に殺害された。 ラリジャニは普通の家に住み、地下施設に隠れるようなことはしていなかったので、居場所は容易に特定できたはずだ。この人物は穏健派と言われ、アメリカなど西側諸国との話し合いに前向きの人物だったが、その人物を殺害してしまった。イスラエル政府やアメリカ政府はイラン政府と話し合うつもりがないようだ。 BriefCamにかぎらず、日本企業はイスラエルの監視技術を導入してきた。例えば電力会社は原子力発電所の監視をイスラエルのディモナに拠点を置くマグナBSP社に任せている。マグナBSP社の社長によると、同社は日本国内のすべての原子力発電所の警備を提供するという基本合意を結んでいた。 2011年3月11日の東電福島第一原発の炉心溶融事故でマグナBSP社の存在は注目された。マグナBSP社と監視カメラを炉心の周辺に設置する契約を結んでいたのだ。同社の社長はエルサレム・ポスト紙の取材に対し、同社のサーマル・イメージング・カメラは大気中の放射性雲の存在を検知する能力も持っていると述べている。 また、ハーレツ紙によると、事故の約1年前にマグナBSP社は原発の施設に警備システムを設置していた。そのシステムにはカメラと警報システムが含まれ、施設の警備員は敷地内への侵入や境界フェンスの損傷を試みる人物を監視できる。セキュリティ・システムはテロ攻撃に利用するために放射性物質を奪おうとする勢力から原発を守るために設計されたという。マグナBSP社の社長はハーレツ紙に対し、高所に設置された同社のセキュリティ・システムのカメラは損傷を受けていないため、地震後の爆発や津波の影響を捉えていた可能性が高いと語っていた。 パレスチナは事実上、イスラエルが建設した強制収容所であり、日常的に虐殺が行われてきた。そこで培った技術を日本は導入している。監視技術の分野における日本とイスラエルの関係は強いようだ。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.20
イランの最高国家安全保障会議で事務局長を務めていたアリ・ラリジャニが3月16日に娘の家が爆撃され、息子のモルテザ・ラリジャニや副事務局長のアリレザ・バヤットらと共に殺害された。ラリジャニはイランだけでなくアメリカにとっても重要な人物だったが、その彼が死んだからといってイランの政策が変化する可能性は小さい。 アメリカ政府は昨年12月28日にイランの通貨リアルを暴落させて経済を混乱させ、その混乱を利用して反政府デモを誘発させた。デモ隊の中に潜り込ませた工作員には資金と共にスターリンクを渡している。スターリンクを利用して治安部隊の動きを知らせ、どのように行動すべきかを指示していたのだが、そのためにドナルド・トランプ政権は事前に約5万台のスターリンク端末をイランへ密輸していた。 アメリカやイギリスはインターネットを利用して反政府デモに衛星画像を提供し、作戦を伝えてきた。イランではスターリンクを使ったわけだが、そのスターリンクをイラン政府は遮断、反政府運動を沈静化させることに成功。2月28日にアメリカとイスラエルがイランを奇襲攻撃した際、イラン国内は安定していた。 この攻撃でイランの最高指導者だったアヤトラ・アリ・ハメネイ師、参謀総長のアブドルラヒム・ムサビ、国防大臣のアジズ・ナシルザデ、イラン革命防衛隊(IRGC)司令官のモハメド・パクプール、そして最高安全保障委員会(SNSC)事務局長でハメネイ師の顧問を務めていたアリ・シャムハニを含む政府の要人が殺害され、同時にミナブ女子小学校も攻撃されて168名から180名の生徒が殺されたものの、体制転覆には至らなかった。 アメリカやイスラエルは敵対勢力に交渉を持ちかけ、その敵の要人が集まる状況を作った上で爆撃するという手法を使う。つまり交渉に応じることは危険だということだ。こうした手法はウクライナでもロシアを相手に使っている。ロシアやイランが交渉に応じないのはそのためだ。ラリジャニもそのように認識していたが、アッバス・アラグチ外相も同じように考えている。戦場で決着をつけ、中東からアメリカ軍を追い出そうということだ。 トランプ政権が少なからぬ軍事や情報に関する専門家だけでなく自国の情報機関や軍の警告を無視してイランを軍事攻撃したのはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に命令されたからだという人もいるが、もうひとつの要因としてパランティア・テクノロジーズのAIがある。 イラン攻撃ではパランティアのAIを用いて標的は特定され、同社も支援している国防総省のプロジェクト・メイブンが中核的な役割を果たしているとも言われ、パランティアのMOSAICプラットフォームはパターン分析に基づく予測推論、つまりパターンを分析し、次に何が起こるかを推測する。同社はデータの収集から攻撃まで、戦争の全サイクルを網羅する統合システムを段階的に構築しているとも言われている。 パランティアはアメリカ主導軍がイラクを攻撃した2003年にCIAのベンチャー・キャピタル部門であるIn-Q-Telからの資金で創設された。イスラエルの情報機関とも関係が深く、共同創設者のひとりで現在会長を務めているピーター・ティールはドナルド・トランプ大統領を支持、J・D・バンス副大統領は彼の弟子的な存在だ。 2003年3月のイラク戦争でアメリカ軍は指導部や指揮系統を短期的な空爆で壊滅させた。中央集権的な指揮系統に対してこの戦法は有効なため、イランは指揮系統をモザイク構造に作り変えた。この構造は今回のアメリカ/イスラエルによる奇襲攻撃に対して有効だった。 2003年に創設されたパランティアのAIも短期集中型の空爆を前提としていたが、それに対してイラン側は長期戦を選択、それに備える準備を整えてきた。長期戦になれば、石油や天然ガスなど資源の流れが滞るため、西側諸国はこの面でも苦しくなる。 現在、アメリカ/イスラエルはミサイルの枯渇に苦しんでいるが、イランは潤沢にある。これまでにイランが発射した弾道ミサイルやドローンは2012年や13年に製造された旧式のもので、相手に防空ミサイルを使わせることが目的。新型ミサイルを含む高性能兵器は温存されている。アメリカ/イスラエルはイランの技術水準と生産力を過小評価、窮地に陥った。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.19
アメリカFCC(連邦通信委員会)のブレンダン・カー委員長は3月14日、イラン戦争に関する「フェイク・ニュース」を放送する報道機関の放送免許を停止する可能性があると警告した。同じことをドナルド・トランプ大統領は昨年4月に主張している。 カーの発言は、親イスラエル勢力の指示に従うトランプ政権はイスラエルと共同でイランを奇襲攻撃、イランによる反撃でイスラエルや中東にあるアメリカ軍基地などが攻撃したが、予定通りに進んでいない。その実態について報道することを許さないということだろう。 カーの矛先はジャーナリストのタッカー・カールソンにも向けられている。カールソンは3月14日、CIAが彼の通信を傍受し、司法省に彼の刑事告発を準備させていると語った。 西側世界における言論弾圧は珍しくない。例えば、内部告発を支援してきたWikiLeaks(ウィキリークス)は2010年4月5日、アメリカ軍のAH-64アパッチ・ヘリコプターがイラクのニューバグダッド郊外で非武装の十数名を殺害さする様子を撮影した映像を公開した。この銃撃事件は2007年7月の出来事だ。犠牲者の中にはロイター通信の記者ふたりと救助隊員、またふたりの子どもも含まれていた。 その映像を見れば攻撃された人びとが武装しているようには見えず、ヘリコプターの乗組員が武装集団と誤認したとは考えられない。勿論、戦闘はなかった。 この映像をWikiLeaksへ渡したアメリカ軍特技兵のブラドレー・マニング(現在はチェルシー・マニングと名乗っている)は2010年5月に逮捕され、軍事法廷は懲役35年を言い渡された。 一方、アメリカの司法当局はWikiLeaksの象徴的な存在だったジュリアン・アッサンジを起訴、2019年4月11日にロンドンのエクアドル大使館において、ロンドン警視庁の捜査官によって逮捕された。アメリカの司法当局はアッサンジをハッキングのほか「1917年スパイ活動法」で起訴したが、ハッキングがでっち上げであることは間も無く発覚、スパイ活動法だけが残った。これも無茶な罪状だが、懲役175年が言い渡される可能性があった。 アッサンジが「1917年スパイ活動法」について有罪を認めるという条件で司法取引が2024年6月24日に成立、アメリカ司法省はアッサンジが身柄引き渡しを待つ間に服役していた62カ月の刑を求刑、イギリスのベルマーシュ刑務所から釈放された。 そこからアッサンジは弁護士と駐英オーストラリア高等弁務官を伴ってチャーター機でサイパン島へ向かい、北マリアナ諸島連邦地方裁判所に出廷。そこでアッサンジはスパイ活動法に基づき、国家防衛情報の入手および開示を共謀した罪で有罪を認め、判事はその答弁を受け入れ、懲役62カ月を言い渡し、釈放された。 この事件でアメリカの司法は言論の自由を行使することがスパイ行為にあたると宣言したわけで、タッカー・カールソンのジャーナリストとしての活動は犯罪だとされる可能性がある。こうした言論弾圧はトランプ政権だからということではない。 現在の日本でも新聞、雑誌、放送、出版社など言論を生業とする人びとは言論の自由を放棄しているが、その日本でスパイ防止法の制定と国家情報局の創設を推進しようとする動きがある。これは言論弾圧の仕組みを強固なものにするためだろう。 オノレ・ド・バルザックが『幻滅』で描いたように、昔から「ジャーナリズム」は権力者と結びついたカネ儲けという側面があり、権力者はそれを利用して情報を操作、庶民を操ってきた。アメリカでは1948年から組織的な情報操作プロジェクトが始められている。「モッキンバード」だ。 このプロジェクトを指揮していた人物はCIAのコード・メイヤー。実際の活動で中心的な役割を果たした人物は4名いて、ひとりは情報機関に君臨していたアレン・ダレス、ダレスの側近だったフランク・ウィズナーとリチャード・ヘルムズ、そしてワシントン・ポスト紙の社主だったフィリップ・グラハムだ。(Deborah Davis, “Katharine The Great”, Sheridan Square Press, 1979) ウォーターゲート事件の調査で有名になったカール・バーンスタインは1977年にワシントン・ポスト紙を辞め、ローリング・ストーン誌に「CIAとメディア」という記事を書いている。その記事によると、20年間にCIAの任務を秘密裏に実行していた「ジャーナリスト」は400名以上に達し、そのうち200名から250名が記者や編集者など現場のジャーナリスト。現在はさらにネットワークが強化されているだろう。 また、フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(FAZ)紙の編集者だったウド・ウルフコテは2014年2月、ドイツにおけるCIAとメディアとの関係をテーマにした本を出版、その中で多くの国のジャーナリストがCIAに買収されていて、そうした工作が危険な状況を作り出していると告発している。CIAに買収されたジャーナリストは人びとがロシアに敵意を持つように誘導するプロパガンダを展開し、ロシアとの戦争へと導いて引き返すことのできないところまで来ていると彼は警鐘を鳴らしていた。この警告はすでに現実になっている。 体制に異を唱えるキャラを維持しつつ社会的な成功も望む人は体制に「騙して欲しい」と願っているかもしれないが、社会的な成功を願わずに権力者と対峙しようという変わり者もいる。そうした変わり者をFCCのカー委員長も潰そうとしているのだろう。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.18

ドナルド・トランプは平和を訴えて大統領選挙で勝利したが、イランへの奇襲攻撃から中東全域を戦火で燃やし尽くそうとしている。世界を戦争へと導いている点で、イラクを先制攻撃したジョージ・W・ブッシュ政権、そしてロシアとの戦争へ突入、シリアやリビアをジハード傭兵を利用して侵略したバラク・オバマ政権やジョー・バイデン政権と同じだ。 ソ連が消滅した直後の1992年2月、アメリカの国防総省はDPG(国防計画指針)草案を作成した。当時のアメリカ大統領はジョージ・H・W・ブッシュ、国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツ。草案作成の中心がウォルフォウィッツだったことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。 その最優先事項は新たなライバルの出現を防ぐことだが、ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に統合し、民主的な「平和地帯」を創設すると書かれている。要するにドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込むということ。 世界征服を目指して侵略戦争を始めると読めることから政権の内部でも危険視する人がいたようで、ニューヨーク・タイムズ紙にリークされて大きな問題になり、最終的には穏便な表現に変えられたが、彼らの計画に変化はなかった。その計画を真剣に考えなかったビル・クリントンはスキャンダル攻勢に苦しむ。 クリントン政権の第1期目に戦争へ向かわなかったのは、国務長官を務めていたウォーレン・クリストファーが戦争を嫌っていたからだと言われている。その国務長官が第2期目にマデリーン・オルブライトへ交代した。オルブライトはズビグネフ・ブレジンスキーの教え子で、好戦的な人物。ヒラリー・クリントンやビクトリア・ヌランドと親しいことでも知られている。クリントン大統領は政権の終盤、1999年3月にユーゴスラビアを空爆した。 ウォルフォウィッツ・ドクトリンが本格的に始動するのは2001年9月11日に引き起こされた「9/11」の後。ジョージ・W・ブッシュ政権は2003年3月にイラクへ軍事侵攻、バラク・オバマ政権は2011年春にジハード傭兵を利用してリビアとシリアに対する軍事作戦を開始、14年2月にはウクライナでクーデターを成功させ、ロシアとの戦争へ突き進んだ。オバマ政権で副大統領を務めたジョー・バイデンも大統領に就任すると、ロシアとの戦争へ向かう。そしてトランプはイランを攻撃している。 2016年に実施されたアメリカ大統領選挙で民主党の候補者だったヒラリー・クリントンはオバマ政権を引き継いでシリアやロシアとの戦争へ向かっていたが、そうした政策を批判し、ロシアとの関係修復を訴えて勝利したのがトランプにほかならない。 選挙期間中の2016年7月10日、民主党全国委員会(DNC)でデータ分析を担当していたセス・リッチがワシントンD.C.のブルーミングデール地区で背中を2発撃たれ、運ばれた先の病院で死亡した。彼の財布、携帯電話、腕時計は盗まれていなかったのだが、警察は強盗犯に撃たれたとしている。 リッチが撃たれてから12日後の2016年7月22日、内部告発を支援していたウィキリークスは民主党を揺るがし、大統領選の行方を一変させることになる約2万件のDNCメールを公開した。そのメールの中に、民主党幹部がヒラリー・クリントンを候補者とするため、支持者が増えていた対立候補のバーニー・サンダースを落とそうとしていることが明らかになった。 それに対し、民主党幹部はCIAやFBIと共同で、ウィキリークスが公開したメールはロシア政府による陰謀だと主張しはじめ、2017年3月にアダム・シッフ下院議員は下院情報委員会で「ロシアゲート」の開幕を宣言した。2016年の大統領選挙にロシアが介入したとする声明を出したのだが、証拠は何も示していない。 シッフの主張は元MI6(イギリスの対外情報機関)オフィサーのクリストファー・スティールが作成した報告書だが、根拠薄弱だということはスティール自身も認めている。 アメリカの電子情報機関NSAの不正を内部告発したことでも知られているウィリアム・ビニーも指摘しているように、ロシアゲートが事実ならすべての通信を傍受、記録しているNSAからその傍受記録を取り寄せるだけで決着が付く。特別検察官を任命する必要はない。特別検察官を任命した大きな理由はトランプの周辺にいる人物を逮捕、司法取引で偽証させることにあったと推測する人もいる。 ところが、ロシアゲートはヒラリー・クリントン陣営を中心とする民主党幹部、CIA、FBIがイギリスの対外情報機関の元エージェントの協力を得て、西側の有力メディアが広めた作り話であることが判明してしまう。ヒラリーが当選していれば、こうした工作は隠蔽できただろうが、落選したため、そうしたことができなかった。 大手メディアが総がかりで宣伝したロシアゲート疑惑の影響もあり、トランプは第2期目の選挙でジョー・バイデンに敗北、バイデンはウラジミル・プーチン露大統領を人殺し呼ばわりし、ロシアとの戦争へ向かうのだが、この政策は破綻、トランプの復活につながった。 ところが、そのトランプも戦争へと突き進む。そのトランプは義理の息子であるジャレッド・クシュナーに操られていると主張する人物がいる。一時期はクシュナーと親しかったラッパーで音楽プロデューサーでもあるカニエ・ウエストだ。FOXニュースのホストを務めていたタッカー・カールソンに対し、彼はクシュナーを傲慢で金銭欲が強く道徳観念に欠ける人物だと語っている。ウエストによると、ジャレッドと弟のジョシュアはトランプを操るハンドラーのような存在だと思うようになったという。 トランプは若い頃からジェフリー・エプスタインの親友で、ラスベガスなどでカジノを経営していたシオニストのシェルドン・アデルソンやその妻ミリアム・アデルソンから多額の選挙資金を受け取ってきた。本ブログでは繰り返し書いてきたが、エプスタインはイスラエル軍の情報機関アマンのために働き、ロスチャイルド家にもつながっていた。こうした人脈によってトランプは操られているわけだが、その指示をトランプに伝える人物はクシュナーなのだろう。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.17

ドナルド・トランプ米大統領がイランに対して仕掛けた奇襲攻撃は最高指導者を務めてアヤトラ・アリ・ハメネイ師を含む要人の殺害に成功したものの、体制の転覆には失敗、イラン軍の反撃でアメリカ/イスラエル軍は窮地に陥っている。「われわれは勝っている」というトランプ大統領の「マイク・パフォーマンス」で状況を変えることはできない。 そこでアメリカやイスラエルは「偽旗作戦」を実行するのではないかと言われているのだが、イランの最高国家安全保障会議で事務局長を務めるアリ・ラリジャニは、ジェフリー・エプスタイン人脈が「9/11同時多発テロ」に類似した出来事を引き起こし、イランに責任を負わせようとする動きがあると語っている。イラン側によると、キプロス、アゼルバイジャン、リヤドを標的とした攻撃はイスラエルによって実行されたという。 この同時多発テロとは、2001年にニューヨークの世界貿易センターとバージニア州アーリントンの国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃された出来事を指し、少なからぬ人がショックで思考停止状態になったようだ。アメリカでは憲法が機能不全になり、国内の収容所化が進み、国外では戦略戦争を始まった。 世界貿易センターでは1993年2月26日、ノース・タワーにある地下駐車場に仕掛けられていた爆弾が遠隔操作で爆破されている。ノース・タワーを倒し、サウス・タワーも破壊する計画だったが、建造物で最も弱いはずの地下を破壊してもノース・タワーはびくともしなかった。言うまでもなく、サウス・タワーも倒れていない。 ノース・タワーでは地下駐車場が爆破された後、1994年から2000年にかけてACEエレベーターが貿易センターのエレベーター・システムの改良工事を実施(George W. Grundy, “Death of a Nation,” Skyhorse, 2017)、ストラテセク社は1996年から2000年にかけてビルの治安システムを導入するための工事を実施した。大工事だ。 2001年の9/11ではサウジアラビアとイスラエルに疑惑の目が向けられていた。オサマ・ビン・ラディンの兄弟のひとりであるシャフィグは9月11日にジョージ・H・W・ブッシュやジェイムズ・ベイカーと会っていたほか、後にサウジアラニアの情報機関である総合情報庁を率いることになるバンダル・ビン・スルタンはアメリカ駐在大使として赴任中で、2005年9月までその職についていた。バンダルの後任大使、トゥルキ・ビン・ファイサル・アル・サウドは2001年8月31日、つまり9/11の11日前まで総合情報庁の長官を務めていた。 9月11日には140名のサウジアラビア人を乗せたチャーター機がアメリカを飛び立っているが、その中には24名のビン・ラディン家の人間も乗っている。その航空機の搭乗者のひとり、アーメド・ビン・サルマンは9/11を事前に知っていたと後に語っているが、2002年7月に43歳の若さで心臓発作のために急死してしまう。 9/11の前後に「イスラエル人美術学生」が逮捕されていることも話題になった。イギリスのテレグラフ紙によると、攻撃の前に140名のイスラエル人が逮捕され(Telegraph, March 7, 2002)、ワシントン・ポスト紙によると、事件後に60名以上が逮捕されている。(Washington Post, November 23, 2001)合計すると逮捕者は200名に達し、その中にはモサドのメンバーも含まれていた。後に全員が国外追放になる。 こうしたことが知られるようになったこともあり、9/11に関する政府の公式見解を信じない人が増えている。アリ・ラリジャニの発言は意味深長。また彼は偽旗作戦の実行する可能性のあるグループとしてエプスタイン人脈を口にした。 1970年代にイスラエル軍の情報機関ERD(対外関係局)に所属、87年から89年にかけてイツァク・シャミール首相の特別情報顧問を務めたアリ・ベンメナシェによると、エプスタインはギレーヌ・マクスウェルや彼女の父親でミラー・グループを率いていたロバート・マクスウェルと同じように、イスラエル軍の情報機関、つまりアマンのために働いていた。(Zev Shalev, “Blackmailing America,” Narativ, Septemner 26, 2019)イスラエルの情報機関の管理下にあったということは、アメリカやイギリスの情報機関、つまりCIAやMI6とも繋がっていたはずだ。 ギレーンはエベリン・ロスチャイルドとその妻リンと非常に親しい関係にあることが知られている。ギレーヌによると、イギリス王室の一員だったアンドリュー王子(現在はアンドルー・マウントバッテン-ウィンザー)をエプスタインに紹介したのはエべリン・ド・ロスチャイルドの妻、リン・フォスター・ド・ロスチャイルドだという。リン・フォスターはエプスタインの友人である。 ビル・クリントン元米大統領は宣誓供述で、ロスチャイルド家との親密な関係ゆえに、ジェフリー・エプスタインよりもギレーン・マクスウェルとより親密であったとしている。ギレーンはクリントンの娘チェルシーと休暇を過ごし、彼女の結婚式にも出席した。ギレーンとエプスタインはクリントン大統領の時代にホワイトハウスへ何度も招待されている。 トランプ政権はイランを奇襲攻撃する前、昨年12月28日にイランの通貨リアルを暴落させて経済を混乱させている。その混乱を利用して反政府デモを誘発させ、その中に工作員を潜り込ませている。 アメリカやイスラエルはスターリンクを利用して工作員に対して治安部隊の動きを知らせ、行動を指示していた。トランプ政権は事前に約5万台のスターリンク端末をイランへ密輸、政権転覆工作のために編成したグループに資金と共に渡したとされているが、イラン政府はスターリンクを遮断することに成功する。その遮断には中国とロシアが協力したと言われている。その結果、デモは沈静化、トランプ政権が望んだような社会の不安定化は起こらなかった。 それにもかかわらずトランプ政権はイランに対する軍事作戦を強行した。イスラエルからの圧力ということもあるが、アメリカには切り札があった。クッズ部隊を2020年1月から率いていたイスマイル・カーニである。クッズ部隊はイラン革命防衛隊(IRGC)を構成する5部隊のひとつで、非正規戦と軍事情報活動を専門とする。カーニは西側諸国に対し、イランを引き渡すと約束していたと伝えられている。それが発覚したということだ。カーニがモサドのスパイだということは、中国軍の情報機関によるCIA高官とイスラエル参謀本部幹部との通信傍受で判明したと伝えられている。 トランプ政権はスターリンクを利用した工作員のネットワークだけでなく、カーニという切り札も失った。ミサイルやドローンの戦いではイランが圧倒しはじめている。しかも、イランは石油取引の決済を中国の人民元で行うことを求めるようだ。アメリカの支配システムを支えてきた「ペトロダラー」を壊しにかかるつもりのようだ。***********************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2026.03.16
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