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きれいごとでは片付かない
医療現場のリアル
――正常ってなんですか?
私は、関東地方Ⅹ県にある精神科救急病院で10年以上勤務している精神科医だ。
かつて外科医だったころ、精神科は死からもっとも遠い診療科だと考えていた。
いくら心を病んだとしても、それが直接心肺機能を止めることはないからだ。
しかし、それは思い違いだった。
20~30代の死因の1位は自殺だ。その大半が、自殺直前に精神科を受診すれば何かしらの診断が下る精神状態だとされる。つまり、精神科は若者の死をもっとも身近で経験する診療科なのだ。
実際に十数年に及ぶ精神科勤務の中で何名もの患者の自死に接してきた。
私の勤める精神科病院は、重症患者の入院施設を併設する。わかりやすくいえば閉鎖病棟だ。
朝から晩まで奇声をあげ続ける統合失調症の人、数十年にわたって入院し意思疎通が困難になった認知症の人、アルコール依存症、双極性障害、うつ病……ここにいるのは、いずれも重症の患者ばかりだ。
本書では、彼ら彼女らとのやりとりを中心に、精神科のきれいごとでは済まないリアルを描く。
医療現場の問題は正論だけで片付けられないし、精神疾患に無力感を突き付けられることも多い。
そこには最近流行っている精神科マンガでは語られることのない、生々しい現実がある。
目次
第1章 閉鎖病棟は戦場だ(住所は病院:4半世紀を見つめるレジェンド/只今、神と交信中:「悪霊がついております」 ほか)
第2章 のがれのがれて精神科(医者がうつになりまして:同期の笑顔が消えた日/「逃げる」コマンド:精神科医になったワケ ほか)
第3章 診られる側も、診る側も(オソマ:深夜の食事は命取り/熱心な家族:「あなたには精神科医の資格がない」 ほか)
第4章 正常ってなんですか?(妄想エンターテイメント:精神科医は統合失調症がお好き/発達障害は育て方のせい?:その子らしさってなんだ ほか)
著者情報
駒木爽(コマキソウ)
1980年代生まれ。大学卒業後、外科医を志すも挫折し、精神科医の道へ。30代のころには、離婚をきっかけに自らもアルコール依存を経験。現在は精神科救急病院に勤務。救急の最前線であらゆる精神疾患に向き合う現役精神科医である


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