Duke三郎物語

Duke三郎物語

2026年03月16日
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人生には、不思議な瞬間というものがある。

私の家内は、少し前まで医者から
「余命半年かもしれない」
と言われていた。

すい臓の病気だった。

医者の話を聞いたとき、私は頭の中が少し真っ白になった。
長く生きていると人の死には何度も立ち会うが、
やはり身近な人のことになると話は別である。

家内とは長い時間を一緒に生きてきた。

若い頃から苦労も多かったし、
海外での生活もあった。

私よりずっと強い女で、
どんな状況でも淡々と現実を受け止める人だ。

それに比べると、私は弱い男である。
ついあれこれ考え込んでしまう。

医者の話を聞いたあと、
私はしばらく落ち着かない日々を過ごしていた。

ところが人生というものは、
ときどきこちらの予想を裏切る。

検査の結果、
癌ではない可能性が高いという話になった。

その知らせを聞いたとき、
私はほっとしたというより、
むしろ少し不思議な気持ちになった。

まるで夢から覚めたような感じだった。

人間というのは、
悪いことが起きる覚悟はしていても、
良いことが起きる覚悟はあまりしていないらしい。

その日から、私の毎日は少し変わった。

特別なことが起きているわけではない。

家内はいつものように生活しているし、
私は相変わらず麻雀を打ったりしている。

ただ、同じ日常なのに、
どこか景色が違って見える。

普通の一日というのは、
実はとてもありがたいものだったのだと気がついた。

朝起きること。
一緒に食事をすること。
何でもない会話をすること。

そういうことは、
失いかけて初めて価値がわかる。

私は特別に立派な人間ではないが、
ひとつだけ思うことがある。

人生はときどき
「延長戦」
をくれることがある。

その時間をどう使うかは、
その人次第なのだろう。

私の場合は、
こうして少しずつ文章を書きながら、
人生について考えてみようと思っている。

もしこの話を読んだ人が、
今日という一日を少しだけ大切に思ってくれたなら、
それだけで十分である。

人生というものは、
案外そんなものかもしれない。






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最終更新日  2026年03月16日 23時27分19秒 コメントを書く
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