江戸こぼれ話 笑左衛門残日録

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旧岸総理邸 朽木一空と五林寺隆さん

2026年04月26日
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カテゴリ: 忍草  再演 26
  忍草 (しのぶくさ) 26-11
~忍草や 梟鳴きて 目覚めけり~
 白蛇に抱かれた奉行 2




たまげた駒下駄東下駄
  どうぞ叶えて暮れの鐘かい?
そうじゃねえ、
  八九間 空で屁をひる 火の見櫓の
  蜘蛛左が鳴らす半鐘の音でございますよ、

 神田弥平町にある伝蔵長屋(蛇抜け長屋)は貧乏人の吹き溜まりではあるが、
貧乏人は貧乏人らしく案外楽しく暮らしていた。
棒手振りの魚屋、太助は、顔が腐って溶けていく難病で長患いの母親の面倒を見ていた。
弱い者いじめを見捨てておけない性分だが、喧嘩っ早くて、喧嘩に弱いのがのが玉の疵だった。
粂次は傘貼りが生業だが、南町奉行の同心、間河長十郎の配下の下っぴきでもあった。
下層社会の情報集めに粂次のような、人間も必要だったのだ。粂次は利用されてるだけなのだが、
「おいら、お奉行様の下で働いてるんだい」と胸を張って見せるが、
お人好しで、あわてん坊で、
ちょいと、頭が足りない、どこか抜けているところもあったので憎めない。
傘張りの方は、もっぱら女房のおかなと六歳になる息子の淳之介の仕事になっていた。
熊さん八つぁんは、二人三脚の駕籠舁。体力があれば誰にでもできる下層の仕事だった。
店に属さない辻籠で、一本の棒の下に竹製の籠を載せただけの簡単な四手駕だった。
今日はあっち、明日はあっちと気楽な稼業だ、前と後ろの二人が息をぴったりと合わさなければ 駕籠が揺れる。
だから、熊さん八っさんはすこぶる仲のいい相棒だった。
お福とお萬は多摩の貧乏小作人の娘で、吉原の女郎屋に売られるところ、女衒の目を盗んで、
逃げだし、偶然通りかかった熊さん八っさんの駕籠に匿ってもらい、そのまま長屋まで駕籠に揺られてきて、お福とお萬は懇ろになり女房になった。
裏切っちまった、おかっさん、おっとさんのもとへも帰れない二人が
女衒の目から身を隠すのに蛇惚長屋はうってつけだったのかもしれない。
 「おいおい、熊さん、昨日は日本橋から品川、浅草今戸まで担いだから、肩が痛くて泣いてらあ、 ぐいっと一杯飲ってから、一仕事といこうか」
朝っぱらから酒を喰らう相談をしている。
「いいねえ、八っさん、おらあ、『瓢ひさご』のおきみちゃんの酌で飲みたいねえ」
八っさん、熊さん、ご機嫌だ。
おっとどっこい、そうはいかねえ、かかあ天下のお江戸でござる。
むんずと、襟首を掴まれたふたり、お福とお萬の太い腕が離さない。
「てやんでえ、こちっとら江戸っ子よ、銭がありゃあ酒を飲む、銭がなけりゃ水を飲むだけでぃ」
「まったく呆れるよ、熊さん、お福さんの腹にゃあんたの子が孕んでるんだよ!」
「どこの間男の子でえ、おらあ、自慢じゃねえが、かかあに乗っかちぁいねえよ」
「あら、熊さん、昨夜も、うっふんあっはん どたばたすっとん 励んでたんじゃないかい?
『馬鹿夫婦、春画を真似て、手をくじき』そのものだったよ、手が痛くないかい?」
九尺二間の長屋の境は杉板一枚、障子に耳ありどころか、隙間だらけで声は筒抜け節穴から隣は
丸見え、だから、長屋暮らしでは隠し事が通用しない。みんな、あけっぴろげで暮らしている。
長屋の端には、菊模様の着流しを粋に着こなす、歌舞伎役者顔負けの色男、遊び人の菊之介。
年中ぶらぶらふらふら、いい紐でもつかんでいるのか、お気楽者だと呆れられている。
隣には柳橋芸者のぽん吉姉さん。ついこの間までは辰巳芸者だったが、風俗取り締まりの手は、
深川一帯の岡場所、歓楽街にまで手が伸び、ぽん吉のいた。置屋『椿楼』も閉鎖の憂き目に合い、
遊女たちは逃げるように、柳橋界隈へ住み替えとなった。ぽん吉姉さんも柳橋に流れてきた。
ぽん吉というふざけた名前も男勝りの辰巳芸者の時の名残である。
「芸は売っても色は売らない」気風の良さと、粋が自慢でもあった辰巳芸者。
ぽん吉姉さんも、べらんめえ調で、男羽織を引っ掛けて座敷に上がり、軟な男は相手にしない。
そんなところが、気に入られ、贔屓の旦那も多かった。
「土産だよっ!」といっては、日本橋の杵屋の饅頭を買ってきて、長屋の連中に配る。
ぽん吉がいると、ぱっと花が咲いたように明るくなる。じめじめした蛇抜け長屋の華でもあった。
夜泣き蕎麦屋の喜助は夜のお勤めができない隙に、間男に嬶(かかあ)を取られ、父娘暮らし。
「毛饅頭が喰いてえよぅ」と嘆く夜。豆腐のおからみてぃだと、長屋の連中に笑われている。
娘のお加代はよろず引き受け、長屋の洗濯、子守、裁縫、雑用で健気に凌いでいる。
大工の甚八は博打が飯より好きで、女房のおときと、しょっちゅう夫婦喧嘩。
長屋中がてんやわんやの大騒ぎになることもあるが、博打だけに、負けているばかりでもない。
「ツキが廻ってきてよ、お天道様も見捨てちゃいねぇってことよ、ほら、喰いねえ、飲みねえ」
宵越しの銭は持たねえよっ。七輪で鍋を煮て、団扇をバタバタさせて、いい匂いをさせ、
長屋の連中に気前よく振舞う。遠慮はいらねえ、ご相伴に預かる。年に一二回のことだったが。
外から見れば、貧乏で、汚らしくて、気持ちの悪くなるような長屋に見えたが、
口喧しく思うこと叶わねばこそ浮世とは、なやまない、くやまない、くさらない、ねたまない、
さばさばした明るい絶望を抱えていながら、遠慮もせずに、他人の家にもずかずかと入り込み、
なんだかんだと云いながらも、その日暮らしを、結構楽しく暮らしていた。
えっ、明日のことかい?
『明日ありと、思う心の仇桜、夜半に嵐の吹かぬものかは』て、よっ!
そして、この蛇抜長屋には「草」と呼ばれる、下層の忍者が紛れ込んで住み着いていた。
忍者の正体を悟られぬよう隠して、市井の中に埋もれて、普段は庶民と同様の暮らしをしていた。
 だから長屋の中でも、誰が草であるのか誰もがわからなかった。
みな偽名である。素性も、生い立ちも全部作りものの嘘で固めている。
隠しごとのできない長屋暮らしで、仮の姿に化けて溶けこんで暮らしているのが「草」である。
本当の自分は殺している。生きているのは自分ではなかった。
 六尺を超える白蛇が住んでいる気味の悪い長屋には
 棒手振りさえ近づかなかったのが<草>にとっては都合がよかった。
誰かに怪しまれたら、下忍としての役目は終わる。そして、それは死を意味していたのだ。
草は、目には見えない上忍から常に見張られてもいたのである。
黒田九鬼流斎を始末した水猿こと、鰻捕りの名人鯉兵衛も蛇抜け長屋の住民だった。
忍者だとはおよそ思えない。いくらか腰の曲がった老人で、動作はゆっくりとしていた。
酒の臭いの消えない、鼻の頭を赤くした顔でいつもにこにこ笑っている。
三十も歳下の十人目の女房、若いお鮒と暮らしている。女癖が悪い訳ではない、
草の役目を悟られないよう、怪しまれる前に女房を変えている。悲しい宿命でもあった。
子の刻になると、長屋が揺れる。お鮒の歓喜の悲鳴が聴こえる。毎晩のことだ。
鰻の肝を吸う、酒好きの助平爺。そうでもしなけりゃ息が続かない、
水猿と呼ばれた下忍の仮の姿でもあった。
  蛇惚長屋のみんな、大家兼務の木戸番の蜘蛛佐はお見通しだよ。
          つづく
        朽木一空





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最終更新日  2026年04月26日 00時00分13秒
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