2004/12/26
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テーマ: 社交ダンス(8417)
カテゴリ: 下町人情物語
四谷怪談で有名な、東京四谷に、聖イグナチオ教会という、大きな教会があります。ここでは、毎年クリスマスを祝う キャンドルサービス


私が高校1年の時、クリスマスの近いある日、テレビで、「ブラザー・サン、シスター・ムーン」という映画を見ました。13世紀のイタリアに実在した聖フランシスコの物語です。

裕福な家庭に生まれ育った彼は、騎士として戦争に行きますが、病気になって生死の間をさまよい、それがきっかけで魂の目覚めを体験します。富と名誉に結びついた教会を否定し、雪の原野に一人、石を積んで教会を建て始めるのです。初めはばかにしていた友達も、彼の澄んだ瞳を見て、自然の中に生きる喜びを知り、一人、また一人、仲間が増えていきます。

私はこの映画に、いたく感動しました。「これだ!」と、思っちゃったわけです。といっても、何が出来るわけでもなく、とりあえず、貯めていたお小遣い全てを、大した額ではありませんが、歳末助け合いに寄付しました。もっと、なにか出来ることはないか、と思っていると、冒頭でお話しした、聖イグナチオ教会のキャンドルサービスの記事を見つけたわけです。

親には「友達とでかける」といって、その年のクリスマスイブ、四谷まで行きました。もちろん、本当は一人です。教会にはもう、大勢の人が集まっていました。長めの白いロウソクのまわりを、紙で四角く囲って、炎が風で消えないようにしてあって、その4面に賛美歌が書かれていました。

夕方5時頃、そのキャンドルに次々と火がリレーされて、私のキャンドルにも灯がともりました。もうすっかり暗くなった教会に、たくさんの小さな明かりが星のように揺らめき、それは美しい光景でした。そのキャンドルをもった長い行列は、教会を出発して、街を静かに進んでいきます。リーダーの方が、次に唄う賛美歌の番号を指示されると、みんなが次々に唱和し、冬のキーンと冷えた空気の中に厳かな歌声が広がります。

私は、というと、このにわか造りの「ナンチャッテ・クリスチャン」ですから、賛美歌なんて知りません。でも黙ってると変なので、「クチパク」で、参加してるふりをしていました。繰り返しその4曲を歌うので、そのうち覚えて、だんだん調子に乗ってきました。

しかしそれよりも、ちょっとした心配事がありました。私のもらったキャンドルは、ちょっと作りが悪くて、グラグラしていたのです。ロウソクを囲んでいるその賛美歌の紙を、しっかり押さえておかないと、火が燃え移りそうでした。



「あちっ!」

思わず、手を放してしまって、燃え上がったキャンドル台は聖イグナチオ教会の乾燥した芝生に火をつけました。周りにいた人たちも、あわてて、消化に参加して、みんな燃え広がらないように、芝生と火元のキャンドルを足でバフバフ踏ん付けました。

「すみません、すみません」

と、みんなに謝りまくりながら、ボロボロになった、キャンドルの残がいを拾い集めました。焦げた芝生はどうしたらいいんでしょう。まずいです。これは、非常にまずいです。

クリスマスでよかった、と思ったのは、すべてのクリスチャンがこの日ばかりは、一年で一番慈悲の心に満ちあふれ、どんな罪でも許しましょう、というモードになっていることです。周りの方々も、リーダーの方も、みんな、何かを許したくてしょうがない気分だったのではないでしょうか。私の罪は許されました。しかし、エデンの東へと追放されたカインのように、もう2度とそこに参加することはありませんでした。

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Last updated  2008/05/05 09:15:32 PM コメント(10) | コメントを書く
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