――でもその子どもはなかなか良かったね。その子は舗道を歩かずに、車道を歩いていた。舗道の縁のすぐわきのところを歩いていたんだけどさ。彼はまっすぐな一直線をたどって歩こうと必死にがんばっていた。そういうのって小さな子どもがよくやるじゃないか。そしてそのあいだずっと唄を歌ったり、ハミングをしたりしているんだ。何を歌っているのか知りたくて、ぼくはその子の近くに寄ってみた。その子の歌っているのは、「ライ麦畑をやってくる誰かさんを、誰かさんがつかまえたら(If a body catch a body coming through the rye)」という歌だ。(村上春樹訳P191より)