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「異種移植」に成功 ウシ腎臓をサルに 世界初 独協医大チーム ウシの腎臓をサルに移植する「異種移植」に、国内の研究チームが世界で初めて成功したことが二十七日、分かった。サルは、ほかの動物の臓器を移植すると、激しい拒絶反応が出て、臓器が機能せず、壊死(えし)してしまう。今回の研究では、移植した腎臓が機能したことが確認された。人でも激しい拒絶反応は起こり、人の異種移植への応用が期待される。研究成果は、新潟市内で開かれる日本移植学会総会で三十日に発表される。(前川健次) サルとウシの異種移植に成功したのは、独協医大(栃木県壬生町)第二外科(窪田敬一主任教授)を中心とする研究チーム。独協医大の沢田登起彦助教授によると、人とサル(一部の原始的なサルを除く)以外の動物は、「アルファガラクトース(αGal)」と呼ばれる異種抗原を持っている。一方、人とサルはαGalに対する抗体(自然抗体)を持っているため、サル以外の動物の臓器を人に移植すると、この自然抗体が、αGal抗原に結合して臓器が機能しなくなる超急性拒絶反応が起きる。 サル以外の動物の臓器を人に移植する異種移植は、これまで行われていなかった。 研究チームは、六年間かけて遺伝子情報が同じ生物がつくれるクローン技術を応用した。クローンウシの作成中、ウシの細胞培養段階でαGalをつくり出す酵素の遺伝子をなくすノックアウト操作を施した。この細胞をウシの子宮に戻すことを繰り返す方法で、完全にこの遺伝子を欠いたノックアウトウシを誕生させることに成功した。 このウシは昨年十二月に誕生したが、発育が悪く、間もなく死亡した。しかし、細胞は凍結保存され、いつでも同じクローン牛がつくれる。 研究チームは、このウシの死後に腎臓を摘出。茨城県三和町の動物実験施設で、カニクイザルに腎移植する手術を十二月十六日に実施した。午後五時から手術を始め、午後七時に移植したウシの腎臓の血流を再開すると、通常のウシの臓器を移植した場合に起きる超急性拒絶反応は起こらず、尿管から尿が出た。腎臓が移植手術後も機能していることが証明された。 腎臓を移植されたサルは手術後も生存していたが、翌日午前八時に観察したときには死亡していた。北海道でウシの腎臓を摘出後、搬送に丸一日以上かかり、腎臓が傷んでいたことがサルの死を予想以上に早めたらしい。 沢田助教授は「今後はサルに移植する実験を繰り返し、どのような副作用が起きるかも検証していく必要がある。人への応用に向け、研究を進めていきたいが、早くても五年以上はかかるだろう」と話している。 日本移植学会の太田和夫元理事長「異種移植を臨床応用するうえで画期的な研究で、わが国の基盤技術として確立する必要がある。移植医療に限らず、ウシを用いた遺伝子ノックアウト技術は、畜産分野やバイオ領域にも応用できる。ただし、遺伝子をノックアウトした個体作成の効率が低い点や、サルが翌日死亡したことは改善しなければならない」 ◇ 【異種移植】人やサル、ウシなど違う種の動物の細胞や臓器を、ほかの種の体内へ移植すること。欧米では1960年代から研究が進み、1992年には米国のピッツバーグ大学で、ヒヒの肝臓を人に移植した。患者は2カ月間、生存したが、このケースでは問題の超急性拒絶反応は起きない。日本では平成9年、日本異種移植研究会が発足。厚生労働省は14年6月、異種移植で未知の感染症が広がることを防ぐため、臓器提供動物の管理を規定する指針を作成した。(産経新聞)
2005年10月28日