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ビリー・チャイルズ(1957-)というピアニストのアルバム「The Winds of Change」を聴く。最近ジャズに関してはbandcampの情報から耳にすることが多い。これもその一つ。全く知らないピアニストで、何回か聴いているうちに馴染んできたので、ダウンロードした。5度のグラミー賞受賞歴を持つということだったが、不思議と筆者のアンテナには引っかからなかったようだ。メディアが注目しないし、ジャズというマイナーなジャンルだからこそ、自分でグラミー賞を見に行かないと情報が得られないのだ。顔がプロ野球の落合博光に似ている。レーベルがマックアヴェニューでbandcampではロスレスしか手に入らない。以前はハイレゾもあったように思うが、しばらく前からメジャーな配信元とbandcampでのファイルを差別化しているようで残念。おおかたメジャーな配信元からハイレゾなのに安いとはけしからんというクレームでも入ったのだろう。他のレーベルでは普通にハイレゾでリリースしているところもあるのに残念だ。まあ、ロスレスとはいえ高音質で、ハイレゾ化すると配信元からの正式なリリースとそれほど変わらない音質で聞けるのでも問題はない。プログラムはチャイルズのオリジナルが5曲、チック・コリアとケニー・バロンが一曲ずつという構成。オリジナルは影を帯びていて、日本人にはしっくりくる作風だろう。ブックレットによると『タイトル曲を含む多くは、フィルム・ノワール、ジェリー・ゴールドスミス、バーナード・ハーマン、ジョン・ウィリアムズといった偉大な映画作曲家からインスピレーションを受けた』という。ジャケ写が強面で、ちょっと抵抗があったが、音楽は重厚でリリカルなところもあり悪くない。最初の「The Great Western Loop」からぐいぐいと迫ってくるのは顔の迫力と同じ。打鍵はそれほど強くなく、低音もあまり響かせないが、アドリブはメロディックで歯切れがよい。アドリブの間の取り方も上手く、静謐でクリーンな感じがする。2007年セロニアス・モンク国際ジャズ・コンペティションの優勝者アンブローズ・アーキンムシーレ(1982-)の渋いトランペットとの相性もいい。「The Winds of Change」は10分ほどで、アルバムの中で最も長いトラック。抒情的な前半と都会的なしゃれた雰囲気の後半の二つの部分に分かれていて、エンディングは最初のリリカルな部分が帰ってくる。「The End of Innocence」は影を帯びて少し寂しげなメロディーがいい。「Master of the Game」もマイナーな曲で悪くないが、トランペットがバリバリ吹くタイプでないので、懸命なアドリブが却って痛ましく感じられてしまう。また、同じような調子の曲が続き、1曲くらいスカッと明るい曲があってもいい気がする。最後のバラード「I Thought I Knew」は思索的で、とても美しい。オリジナル以外の曲も悪くない。チックの「Crystal Silence」は透明感のある文字通りクリスタルな演奏だが、鳴らないトランペットがいまいち。個人的にはピアノ・トリオでの演奏が聴きたかった。他にケニー・バロンの「The Black Angel」が演奏されている。バックは超強力だが、控えめなプレイに終始している。スコット・コリーの美しいベースソロがいい。ということで、今さらの感はあるが、過去の作品も聞いてみたいと思わせる、アルバムだった。Billy Childs:The Winds of Change(Mack Avenue MAC-1200)16bit44.1kHz Flac1.Billy Childs:The Great Western Loop2.Billy Childs:The Winds of Change3.Billy Childs:The End of Innocence4.Billy Childs:Master of the Game5.Chick Corea:Crystal Silence6.Kenny Barron:The Black Angel7.Billy Childs:I Thought I KnewBilly Childs(p)Ambrose Akinmusire(tp)Scott Colley(b)Brian Blade(ds)Recorded at Henson Studios Hollywood, CA,May 14–16, 2022
2023年12月30日
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クリスマスが近ずくと、クリスマスに因んだ曲を聴くのが習慣になっている。筆者は、例年通り「ボエーム」とか「くるみ割り人形」もさらっと聞いたが、何故かほとんど聞いたことのないバッハの「クリスマス・オラトリオ」を聴いた。最初は手持ちのバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のものを聴いていたのだが、少し物足りなくなってカール・リヒターの古い録音がハイレゾ化されていることを知りダウンロードしてしまった。昨今の古楽による演奏とは全く違う、重厚で悠然としたテンポの演奏であるが、それほど古臭いという感じは受けなかった。長いので、聴きどころを調べて、そこを重点的に聞いた。この演奏ではヴンダーリッヒの歌唱が高く評価されているようで、とりわけ第42曲「コラール: イエスがわが始まりを正し 」は絶賛されていた。なるほど素晴らしい美声で、福音史家の歌唱と共に評価が高いことに頷けた。個人的にはクンドラ・ヤノヴィッツの歌唱に惚れてしまった。清純で可憐という形容でも足りないような素晴らしい歌声だった。また、モーリス・アンドレが加わったトランペットの輝かしさも比類のないものだった。合唱は大編成で、昨今の小編成の透明な響きには劣るのは仕方がない。この演奏に比べるとBCJの演奏はテンポが速く軽やかな演奏だが、第42曲などはせかせかして曲の良さがあまり感じられない。調子に乗ってガーディナーの演奏もダウンロード。こちらはまだあまり聞いていないが、結構ぐいぐいと攻めた演奏のように聞こえる。第42曲はBCJよりもさらに速い。第42曲についていうと、リヒターの演奏が曲の良さが一番引き出されていると思った。また、リヒターの演奏はテンポが遅いことで、クリスマスらしい華やかではあるが、のんびりとした気分が味わえる。ということで、雑感になってしまったが、聞けば聞くほどこの曲の面白さを感じるようになってきたので、もうすこし深堀をしてみようと思う。録音は思ったより悪くないが、テュッティではさすがに混濁が目立つ。Bach, J S: Christmas Oratorio, BWV248(Archiv 4795894)24bit 192kHz FlacChrista Ludwig (contralto)Franz Crass (bs)Fritz Wunderlich (t)Gundula Janowitz (s)Münchener Bach-Orchester, Münchener Bach-ChorKarl RichterRecorded: 1965-02-06,Residenz, Herkulessaal, Munich
2023年12月28日
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ニューヨークで活躍している石黒晃の「BON」というアルバムを聞く。リリースそのものは知っていたが、Jaz.Inのレビューにも掲載されているので、真剣に?聴いてみたら、これが悪くない。ディスク・ユニオンからのリリースで筆者はbandcampからダウンロードした。しばらく前からディスク・ユニオンもbandcampに参加するようになった。ハイレゾが1600円ほどで買えるので、国内のサイトに比べると1000円ほど安くて助かる。このギタリスト、筆者の全く知らないミュージシャンだったが、高名な方らしい。石黒はホーム・ページを見るとひげを蓄えた野性味たっぷりの風貌をしていて、サッカー浦和レッズの興梠選手に似ていると思った。ディストリビューターによると『コロナ禍の孤独の中、音楽に安らぎを見出し、NYの自宅でひとり真摯に曲に向き合い書き上げたもの。伝統的なジャズのサウンドに現代的なグルーヴとハーモニーを取り入れた、可能性にあふれる自信作』とのこと。ジャズ、ロック、ブルースなどが混然一体となった音楽。総じて、ドラッグ的で病的な雰囲気が広がっているような、危険な香りのする音楽がぐいぐい迫ってくる。筆者の知っているミュージシャンは黒田卓也やクリスポッターなど数人だが、参加したミュージシャンが何と14人もいる。ギターを含めエレクトロニクスのサウンドが圧倒的で、ホーンの生音の旗色が悪い。ただし、所々で聞かれるサックスのアンサンブルの鄙びた味わいが、筆者には好ましかった。リズムが充実しているのも聴きものだ。巨大なスケールとエネルギーのみなぎった音楽は、日本人とは思えないエネルギッシュなものだ。ただ、音楽の愛想がいいわけではないため、聴き手には緊張を強いるようだ。リーダーのギターはメロディックだが、ワイルドなテイストが勝っている。気に入ったのはアップテンポの「1212」キャッチーなメロディーとブラス・ロック風なサウンドがいい。前半のギターとトランペットの掛け合い、後半のシンセのソロなど魅力的な構成。冒頭の「Brazil」は石黒流のブラジル音楽だろうか。それほど開放的ではないが、アルバム中最も楽し気なナンバーだ。「Lionel」はスネアの単純なリズムにギターが絡み、病的な美しさが感じられる。スピード感あふれる「Bon」圧倒的なサウンドの中でホーンのアンサンブルの鄙びたテイストが懐かしさを感じさせてわるくない。「Enchant」はサックス・ソリが心地よい。エンディングのサックスの咆哮もなかなかスリリングだ。テナー・ソロのバックで蠢くジョン・ハドフィールドのドラムスが超強力。「Align」ではサミュエル・ブライスのアルト・サックスが圧巻のプレイを披歴している。「Musashimaru」は日本的なのんびりした雰囲気を感じさせる曲。相撲の武蔵丸関を連想してしまうが、関係があるかどうかは不明。トランペット・ソロの鄙びた味わいがいい。この曲でも後半ギター・ソロが炸裂する。「Round patience」は穏やかな曲調だが、暗い雰囲気に終始してあまり面白くない。後半にギターが大暴れする。加藤真亜沙のピアノ・ソロがいい。録音は押し出しの強い太い音だが、高域の抜けがもう少し欲しい。とうことで、オリジナリティを感じさせるギタリストで、作編曲も優れていると思う。過去にもリーダーアルバムを6枚リリースしているので、今後それらも聴いてみたい。なおソロで「White Christmas」が配信されている。やはりスタンダードとして聞かれている音楽とは一味違ったワイルドなテイストがユニークだ。しいて言うとジョン・スコフィールドのテイストに近いかもしれない。Akira Ishigru:BON(SOMETHIN'COOL SCOL1068)24bit 48kHz FlacAkira Ishigru:1. Brazil2. Brain3. Monster4. 12125. Lionel6. Bon7. Enchant8. Align9. Musashimaru10. Round PatienceAkira Ishiguro(gt)Takuya Kuroda(tp)SergejAvanesov(ts)Chris Potter(ts)Samuel Blais(as)Martha Kato(p,keys)Henry Hey(keys)Brian Donohoe(synth)Jim Robertson(b)Peter Schwebs(b)John Hadfield(ds)Devin Collins(ds)Rodrigo Recabarren(ds)Keita Ogawa(perc)
2023年12月25日
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この前風呂に入っているときにspotifyから流れてきて気に入った一枚。ジョン・フィールド(1782–1837)というアイルランドの作曲家のノクターン集で、エリザベス・ジョイ・ロエという韓国系のアメリカ人の演奏。フィールドは夜想曲の創始者といわれる方で、ロシアで活躍した、筆者の全く知らない作曲家だった。グリンカの師でもある。知らない作曲家の曲が気に入っても、ラジオだと曲名が分からなかったりするが、ネットだとその時に気が付けば確認できるのは有難い。ネット様様だ。こういう仕組みになってから知った曲は相当あると思うし、個人的にもレパートリーが広がっている感覚はある。以前だったらまず聞かないようなジャンルの曲も聴けるし、あとでフォローすることもできるのはネット社会ならではだろう。閑話休題フィールドの作った夜想曲は全部で18曲あるらしい。ショパンのように華やかな曲はあまりないが、夜に聞くのに相応しい音楽だろう。全体に柔和な表情で、時折陰のある表情を見せるときもある。テンポはゆったりとして、激しい表情を見せることは少ない。聴き手を惹きつけるような旋律こそ多くないが、決して凡庸ではなく、心温まる時を過ごすことが出来る。何しろ気品と温かみがあり、ショパンが愛していたことも分かるような気がする。リストも「洗練された感情の真の傑作」と絶賛している。番号のつけ方にはいろいろあり、ここではシルマー版(リストによる改訂版で、J.Schuberth&Co、ライプツィヒ、1859年に初版)に従っている。全曲粒ぞろいで、内省的な作品が多いのも、じっくり聴くのに相応しい。気に入ったのは第15番の無言歌。メロディックで悪くない。第16番も少し悲し気で優しい楽想で夢心地になる。また、夜想曲というカテゴリーからは少しずれているが、遊び心や明るい要素を持つ「Noontide」と題された第12番もいい。録音はあまりよくない。音が前に飛び出てくるような圧迫感が感じられ、音自体も太い。なので、フィールドのひそやかな味わいが薄れているような気がする。この稿を書いているときに、佐藤卓史というピアニストがノクターンについて語っているyoutubeを見つけた。夜想曲第1番の演奏と夜想曲にまつわる話が語られています。大変興味深い内容で、この曲が書かれたのはショパンが2歳の時で、シューベルトはまだ作曲をしていない時期。フィールドの先進性がわかる話だと思う。それを考えると、ショパンと比べてどうのという比較は、時代背景を考えなければ何の意味もない。先生のクレメンティとピアノのセールスのために楽旅を行い、そのような環境のなかでこのような形式の曲を作らせたという話も面白い。是非ご覧になって頂ければと思う。Elizabeth Joy Roe John Field:Nocturnes Nos.1-18(Decca 4789672)24bit 96kHz FlacElizabeth Joy Roe(p)Recorded Potton Hall, Suffolk, 12–15 September 2015
2023年12月23日
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有名な「Jazz At Massey Hall」のコンプリート盤がCraft Recordingからハイレゾで復刻された。録音70周年を記念してのリリースだそうだ。音楽は録音後何周年とかミュージシャンの生誕何周年とか、いろいろな記念日に因んでリリースできることは、メディア以外の産業ではまねのできないことだ。映画などでのリメークされることは多いが、経費がけた違いだ。この演奏は筆者もレコードやCDで所有しているが、演奏は一種の顔見世興行なので、それほど高く評価しているわけではない。世評が高い名盤と評されている理由がよく分からない名盤?だ。以前 The Jazz Factoryから出ていたコンプリート盤(2003)に比べると5曲も多い。ピアノトリオは変わらないが、クインテットのトラックが増えている。6曲目までがベースのオーバー・ダビングなしの音で、最後の6曲がオーバー・ダビングされた従来の録音。間にドラム・ソロとピアノ・トリオの演奏が続くという構成。オーバー・ダビング有り無しを比べると、なるほどベースの音が小さいのは分かる。そうかといって、オーバー・ダビングしたものがいいかというとベースの音がエコー過多で、明らかに加工したと思われる作為的な音で気に入らない。なので、ドキュメントとしてはオーバー・ダビングなしのほうが自然だし、好ましい。高域もオリジナルのほうが伸びていていて鮮明だ。トリオの演奏は録音状態がばらばらで、ノイズがひどく、同一機材で録音したとは到底思われない。音もホーン入りの曲よりも、かなり劣悪。パウエルは退役後の演奏なので、演奏も平凡。ベースはちゃんと聞こえる。全体的には、ガレスピーのキレキレのアドリブと輝かしいハイ・ノートが素晴らしい。パーカーはそれに次ぐ出来。借り物のプラスチックのサックスとは思えない素晴らしい音。マイク・アレンジがどうなっていたのか分からないが、この二人の音のでかさには恐れ入る。パウエルはクインテットではあまり聞こえないので損をしている。ソロでは結構聞こえるが、いまいち乗り切れていない状況。トリオではベースの音が大きく、ドラムスが聞こえない、というバランスの悪さ。ミンガスはしっかりとしたソロで、オーバー・ダビングしなくてもよく聞こえる場合がある。マックス・ローチのドラム・ソロはオフ・マイクではあるが、結構ヴィヴィッドだ。ということで、期待していたわけではないが、その通りの出来だった。このアルバムはこの演奏を初めて買う方向けで、以前の演奏をお持ちの方は、余程の好事家以外、敢えて買う必要はないと思う。 ところで、ガレスピーのお馴染みのMCを聴いていたら、パーカーの肉声を聴いたことがないことに気が付いた。どこかに残っていないものだろうかと思ってチェックしたら、どうやらロイヤル・ルーストでのライブでの終演後のやり取りが残っているらしいので、チェックしてみたい。出典:https://nobutateruyuki.web.fc2.com/sax_parker.htmlHot House: The Complete Jazz At Massey Hall Recordings(Craft Recordings CR06601)24bit 96kHz Flac1.Ervin Drake, Hans Lengsfelder, Juan Tizol:Perdido2.Kenny Clarke, John Gillespie:Salt Peanuts3.Thelonious Monk, Oscar Hammerstein II, Jerome Kern:All The Things You Are / 52nd Street Theme4.Denzil Best:Wee (Allen’s Alley)5.Tadd Dameron:Hot House6.Dizzy Gillespie, Frank Paparelli:A Night In Tunisia7.Max Roach:Drum Conversation8.Cole Porter:I’ve Got You Under My Skin9.George Gershwin, Ira Gershwin:Embraceable You10.Jerome Kern:Sure Thing11.Ray Noble:Cherokee12.Vincent Youmans:Hallelujah13.George David Weiss, George Shearing:Lullaby Of Birdland14.Ervin Drake, Hans Lengsfelder, Juan Tizol:Perdido15.Kenny Clarke, John Gillespie:Salt Peanuts16.Thelonious Monk, Oscar Hammerstein II, Jerome Kern:All The Things You Are / 52nd Street Theme17.Denzil Best:Wee (Allen’s Alley)18.Tadd Dameron:Hot House19.Dizzy Gillespie, Frank Paparelli:A Night In TunisiaWithout Bass Overdub(track 1-6)With Bass Overdub(track 14-19)Charlie Parker(as track 1-6,14-19)Dizzy Gillespie(tp track 1-6,14-19)Bud Powell(p except track 7)Max Roach(ds)Charles Mingus (b except track 7)Recorded 15th May,1953 at Massey Hall in Toronto
2023年12月21日
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最近庭木の剪定をしていて、利き腕に与えるダメージが多くなった。ばね指の手術後ということもあるが、握力が弱くなったことも考えられる。それで、しばらく考えていた電動の剪定鋏を買うことにした。基準はマキタのバッテリーが使えること。何種類かあったが、安い中国製の物を購入した。MunikindというところのDJ500という製品だ。 バッテリーなしで6000円は安い。先日から何回か使っている。スペースに余裕がある場合はいいが、狭いところでは使えない。それでも、切るのに時間がかからないので、作業時間が短縮できる。一番良かったのは、切った後、ゴミとして出すことができるように、既定サイズに切断する時間が大幅に短くなったこと。バッサバッサと切ることが出来るので大助かりだ。調子に乗って自分の指まで切ってしまわないようにしなければならないことが、唯一の注意事項だ。こうなると、狭い所でも使えるような電動の剪定鋏が欲しくなる。人間の物欲にはキリがない。
2023年12月19日
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サラ・マッケンジーのアルバムが寺島レコードから出ていたことをどこかで知ったので、早速ネットでダウンロード音源を検索。Qobuz usでハイレゾがリリースされているが、少し高い。国内ではどうかと思ったら、OTOTOYでロスレスが1500円台でリリースされていた。発売元は寺島レコード。ついに、寺島レコードでも配信を始めたのかと、少しびっくり。寺島さんは頑固だがいざ行動を起こすと早いことが思いだされる。ジャケ写が海外と国内では違うが、個人的には海外のジャケ写のほうが好み。で、ファイルの画像は海外を使った。例によって192kHzにアップ・コンバートしての試聴。他の曲を聴いてから切り替えたら音圧が凄くて、慌ててヴォリュームを下げてしまった。アップ・コンバートしているとはいえ、エネルギー感が半端なく、迫ってくる。さすが音に定評のある寺島レコードだけあると納得してしまった。ボサノヴァ特集だそうだ。確か寺島さんはボサノヴァは嫌いだと言っていたと思う。ガラティのアルバムをリリースしたころから認識が変わったのだろうか。ここでも寺島さんなりの潔さが垣間見える。こういう日本人が少なくなったと思うのは、最近の政治家の不祥事での弁明のだらしなさを見せられているからだ。閑話休題ボサノヴァ特集と言っても、殆どがジョビンの曲で、ルイス・ボンファが一曲、マッケンジーのオリジナルが4曲という構成。有名な曲が並んでいると、かえって潔さを感じる。全体に軽い仕上がりで、気持ちよく聴くことが出来る。ただ、彼女の英語の発音が粘っこく、ボサノバのテイストを損なっているような気がするのは気のせいだろうか。オリジナルも他の有名曲とそれほど遜色なく、彼女の優れた作曲能力を示している。特にタイトル・チューンが他の名曲とそれほど遜色ない。軽快でユーモアのある「Quoi, Quoi, Quoi」も悪くない。これはインパルス盤以来の再録のようだが、インパルス盤に比べ多少ウエットで起伏のある仕上がり。スタンダードではジョビンの「Dindi」がしっとりとした仕上がりで気に入った。オブリガートのチェロもいい感じだ。「イパネマの娘」は流麗な表現で、おしゃれな仕上がり。サイドマンは凄腕ミュージシャンが並んでいて壮観だ。フルートとギターの優しいサウンドがボサノバに相応しく、ジャズらしい重厚なサウンドになっていないところが面白い。特にホメロ・ルバンボのギターが実に味わい深い。プロデュースが誰であるかは不明だが、ここまでの名手を集めているとは凄いネットワークだ。Sarah Mckengy:Without You(寺島レコード TYR1117)16bit 44.1kHz1.Luiz Bonfá;Matt Dubey:The Gentle Rain2.Antônio Carlos Jobim:Corcovado (Quiet Nights)3.Sarah McKenzie:The Voice of Rio4.Sarah McKenzie:Mean What You Say5.Antônio Carlos Jobim:Fotografia6.Sarah McKenzie:Quoi, Quoi, Quoi7.Antônio Carlos Jobim:Once I Loved8.Sarah McKenzie:Without You9.Antônio Carlos Jobim:Wave10.Antônio Carlos Jobim:Dindi11.Antônio Carlos Jobim:The Girl from Ipanema12.Antônio Carlos Jobim:Chega de Saudade13.Antônio Carlos Jobim:Bonita14.Antônio Carlos Jobim:ModinhaSarah Mckenzie (vo, piano)Jaques Morelenbaum (vc)Romero Lubambo (g)Pter Erskine (ds)Geoff Gascoyne (b),Rogerio Boccato (perc.)Bob Sheppard (fl, sax)
2023年12月17日
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今日は元WBC監督である栗山英樹監督の文化講演会を聞きに行った。花巻東高校主催のイベントだが、市民も参加できるようになっていた。開場前に到着したが、既に多くの人たちが入場していた。最終的には満席で、消防法に引っかからないか心配してしまった。栗山元監督は元々テレビで活躍していたことから、話術が巧みで、人を引き付ける内容でとても面白かった。マスコミでは報じられていない話がたくさんあり、出だしから聞きたいことを学生に直接質問するなど、非常に型破りな講演会だった。用意したパワーポイントをあまり使わず、巧妙なアドリブで進行した。かつて熱闘甲子園という番組で活動していたことから、菊池雄星の時代から花巻東に出入りしていたそうです。監督としての仕事もその頃から学んでいたようだ。興味深い話が多かった中で、特に大谷に焦点を当てた内容が中心でした。大谷の考え方が常人とはまったく異なることと、それを実現するために努力し続ける才能が、現在の高みにいる理由のの一つであることがよく理解できた。講演では様々なエピソードが紹介されたが、特に驚いたのは、栗山監督に送られたクリスマスのメールに添付された動画の内容。それは2016年12月24日の午前1時に鎌ヶ谷の練習場でのバッティング練習を収めたもので、普通のプロ野球選手がオフで休んでいる時に、クリスマス・イブの夜中にバッティング練習するなど、非常に異例の行動だった。これは今のためではなく、将来のために行っているとのことで、試合の遠征でも朝のルーティンを必ず守っているそうだ。ある時監督が大谷に女性との食事に行くことが楽しいかどうか尋ねた際、大谷の返事は将来のためでないことには興味がないというものだった。今だけ、カネだけ、自分だけといった風潮が広がる中で、大谷の姿勢には頭が下がる。最後にはWBCの準決勝メキシコ戦のエピソードも語られ、村上に代打を出すか悩んでいるシーンや、周東が代走に出た理由などが細かく明かされた。周東がレギュラーのバッティング練習を見ていて、村上の打球が伸びることに気づいたため、打球が上がった途端にスタートしたとのこと。プロの仕事のプロ意識を感じさせるエピソードでした。講演終了後の質疑応答での、学生の鋭い質問にも驚かされた。ということで、滅多に聴くことのできない話を、大谷の入団会見の日に聞くことができて大満足だった。2023年12月15日 花巻市総合体育館アネックスにて受講
2023年12月15日
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マリーナ・スタネヴァというブルガリア出身の若手ピアニストのモンポウ作品集を聴く。筆者がモンポウを聴き始めたのはヴォロドスの演奏(2017)を聴いてからだ。ドビュッシーとの近似性や、その控えめな表情が気に入っていた。このアルバムでは大作「ショパンの主題による変奏曲」と「歌と踊り」、それに「風景」の全曲などが収められている。心静かに耳を傾けられる音楽だ。「ショパンの主題による変奏曲」(1938-1957)はバレエ音楽「レ・シルフィード」として知られる前奏曲7番の主題による変奏曲。ショパンのような華やかさはなく、地味ではあるが、心に沁みわたる音楽。印象派風のしゃれた味わいも感じられる。第10変奏では胸を締め付けられるような美しい旋律が出てくる。続いてショパンの「幻想即興曲」の中間部の主題が出てくるところも感動的だ。第12変奏のギャロップとエピローグはモンポウにしては躍動的な曲想で締めくくられる。モンポウの代表作「歌と踊り」は全15曲のうち12番までが演奏されている。個人的には「踊り」よりも「歌」の部分に惹かれた。多くはカタルーニャ地方の民謡に基づくが、オリジナルも何曲かある。気に入ったのはアルトゥール・ルービンシュタインへ献呈された第5曲「Cantabile espressivo」の「歌」の部分。躊躇いがちに演奏される物悲しい旋律が、心に沁みわたる。「踊り」の部分も一見華やかそうだが、「歌」の気分を引き継いで、どこか悲しげだ。これもオリジナルの第10曲「Larghetto molto cantabile」荘厳な気分を感じさせる。原曲がカタルーニャ民謡の曲では第9曲「サヨナキドリ」の「歌」が清々しさが感じられるいい曲だった。「踊り」も悪くなかった。最後の第12曲「Molto cantabile」の「歌」の部分も情感あふれる曲想で心に染み入る。やはり原曲がいいと聴き映えがする。「風景」は3曲からなる組曲。第1曲「泉と鐘」の第1主題はどこかで聞いたことのあるような旋律。第2主題が悲しそうな歌で惹きつけられる。鐘が低音で時々鳴らされる。最後の「子供の情景」の第5曲「庭のおとめたち」もドビュッシーを思わせる曲。民謡を思わせるようなゆったりとしたメロディーに、時折上下降する短いモチーフが閃光のように光る。全5曲9分ほどの組曲だが、全曲を聴いてみたい。マリーナ・スタネヴァのピアノは抑制された美しさと静けさが感じられる優れたもの。透明感もあり、じっくりと味わうのに相応しい滋味あふれる演奏だ。ただ、落ち込んでいるときに聞く音楽ではないことを痛感した。Marina Staneva Mompou:Piano Works(Chandos CHAN20276)24bit 096kHz Flacモンポウ:1.風景(1942 – 1960)4.ショパンの主題による変奏曲(1938 – 1957)17.歌と踊り(1921 – 1962)29.子供の情景 第5曲 庭のおとめたち[Bonus Track]マリーナ・スタネヴァ(ピアノ)Recorded 1 and 2 April 2023,Potton Hall, Dunwich, Suffolk,UK
2023年12月13日
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今年もリマスターのヴィレッジバンガードの2枚を含め、ビル・エヴァンスの旧譜のリリースが続いているが、今回はゼフ・フェルドマンの発掘したコペンハーゲンでのライブ。Jaz.Inで特集されていて、思わず買ってしまった。ウエス・モンゴメリーのハーフノートでのライブ(Resonance)も興味をそそるのだが、高いので今のところペンディング。このアルバムは二つの録音とボーナストラックからなる。7曲目までは国営デンマーク放送協会の「ラジオハウス」というところでのライブ、8曲目から10曲目までがテレビ・シティというオランダ放送での録音だ。前者は放送用の録音で、後者は聴衆を入れたテレビ放送用のライブという違いがある。「I Didn't Know What Time It Was」は残された唯一の録音で、初のリリースなそうだ。全体にリズミックで活気にあふれた演奏だ。テンポの速い曲が多いが、スピードに乗ったノリのいい演奏が続く。ラリー・バンカー(1928-2005)の精彩のあるドラミングがいい。チャック・イスラエル(1936-)のリズミックで輪郭のはっきりしたベースも、悪くない。ブックレットが付いていてCDと同等のデータを見ることが出来るのが嬉しい。特にチャック・イスラエルのインタビューが有難い。彼は既発の「トリオ'65 」に比べて、今回の演奏のほうがいいと言う。理由はトリオ'65 ではグループ結成後間もない時期の録音で、今回のライブは数十回のライブを経て音楽への理解度やグループとしてのまとまりが格段に高まったからだという。筆者はトリオ'65は聞いたことがないので、彼が話題にしていた「My Foolish Heart」を聴いてみた。確かに今回の演奏に比べるとインパクトに欠ける感じはする。なるほど、イスラエルの言ったことは頷ける。また、イスラエルよりもドラマーのほうが音楽を理解していた、との言葉は、氏の素直な性格を表していると思う。初公開の「I Didn't Know What Time It Was」は軽快でスインギーなテイストで悪くない。ベース・ソロも好演。「ラウンド・ミッドナイト」はエディー・ゴメスとマーティー・モレルのコンビでの1969年のモノ録音を24ビットのステレオ化したものだそうだ。昔の疑似ステを思い出すが、現在ではステレオにするのも簡単にできるのだろう。ただしテープヒスが多く、音は輪郭がぼやけていて、いまいち。これが何故入っているのか分からなかったが、以前リリースされたやはりコペンハーゲンでの演奏を集めた「Treasures」の中に未収録だったことからのようだ。エンディングが突如としてアップテンポになる激しい演奏に驚かされる。ボーナストラック以外の録音はノイズの聞こえないさっぱりとしたものだが、全体に音が細身で軽い感じがする。ラジオ・ハウスでの音は輪郭がはっきりしているが、やや硬質な音。それに対しテレビ・シティでの4曲は、音に潤いがあり、SNも後者の方がいい。残念なのは、この4曲のバックでシャリシャリと聞こえるノイズ。これがなければ文句なしの録音だけに、実に惜しい。ところで、毎度おなじみの曲が続く中で、新たに発掘された音源が次々とリリースされる理由について考えてしまうセールスが見込めるからと言ったら身もふたもないが、ほかにも要因があるのかもしれない。筆者にもよく分からない。Bill Evans - Tales - Live in Copenhagen (1964)(Elemental Music EM599044)24bit 44.1kHz Flac1.Bill Evans:Waltz For Debby ()2.Ned Washington-Victor Young:My Foolish Heart3.Earl Zindars:How My Heart Sings 4.Gus Arnheim-Jules LeMare-Harry Tobias:Sweet And Lovely5.Richard Rodgers-Lorenz Hart:I Didn't Know What Time It Was6.Bill Evans:Five [Theme]7.Ned Washington-Victor Young:My Foolish Heart #28.Earl Zindars:How My Heart Sings #29.Gus Arnheim-Jules LeMare-Harry Tobias:Sweet And Lovely #210.Bill Evans:Five [Theme] #211.Thelonious Monk-Bernie Hanighen-Cootie Williams:'Round MidnightBill Evans (p)Chuck Israels (b track 1-10)Larry Bunker(ds track 1-10)Eddie Gomez (b track11)Marty Morell(ds track11)Recoded Danish Radio, Radiohuset, Copenhagen, August 10, 1964(track 1-6)TV-City, Copenhagen, August 25, 1964.(track 7-10)Stakladen, Aarhus, Denmark, November 21, 1969(track 11)
2023年12月11日
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岩手県民会館コンサートサロンの最終回は小林愛実ピアノ・リサイタル。会場はほぼ満員。開場前から長い行列ができている。さすがはショパン・コンクールの威力というところだろうか。小林愛実のピアノは録音でも聞いたことがない。ショパンの前奏曲がワーナーから出ているのは知っているが、購入までには至っていなかった。なので、演奏を聴くのは今回が初めて。前半はシューベルトの即興曲で後半はショパンというプログラム。即興曲は晩年に作曲された4曲。シューベルトの即興曲は最近聴く機会が多い。この間もピアノ・フォルテのブラウティハムの演奏(BIS)を聴いたばかりだ。従来のイメージとはかなり違う、激しい演奏に驚いたものだ。そのイメージが残っているためか、今回の演奏は全体的に穏やかな表現。やたらとアコーギクが多用され、テンポが崩れる寸前まで行っている場面もある。強弱のニュアンス付けはあまりなく、物足りない。ダイナミックスの幅も狭い。スケールはさほど大きくないが、ウォームな肌触りは悪くない。ただ、フォルテが少しぞんざいな気がする。第3曲のロザムンデの主題による変奏曲は、各変奏はくっきりと引き分けられていて悪くなかった。第4番は少しテンポが速く、ぎくしゃくしたハンガリー風のリズムに多少違和感があった。後半は前半の即興曲に引っ掛けたのか即興曲が2曲入っている。前半と同様にフォルテでの力感がなく、印象が弱い。最初の「幻想ポロネーズ」は相変わらずアゴーギクを多用しているが、曲の深みがあまり感じられない。最後の変イ調の和音が弱音だったのが意外。スコアを確認してみたがffになっている。この解釈は聞いたことがなかったので、その理由が知りたいところだ。即興曲第3番は今回の演奏会では気に入った演奏の部類にはいる。穏やかな曲調が現在の小林の心境にフィットしているのかもしれない。幻想即興曲は普通は華麗な演奏になると思うが、小林の演奏はここでも地味だ。中間部の穏やかな部分がなかなか聴かせる。最後の「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」は筆者が嫌いな曲。特に後半のポロネーズのメロディーが安っぽい。まあ技巧をひけらかせて聴き手を驚かすような悪趣味の部分があると思っているので、このような感想になってしまう。小林は華麗なテクニックで聴き手を驚かすような芸風ではないので、なぜこの曲を選んだのか疑問が残る。これでいい意味でのショーマンシップがあれば、大分違うと思うのだが。。。ここでもダイナミックレンジが狭く、といってルバートを見せつけるようなところもなく、地味な出来だった。後半を通じて細かい音符も小手先で弾いているような感じで印象が悪い。ただ、技巧は安定していて、ミスもほとんど聞かれなかった。気になったのは速いパッセージで、幾分混濁するところくらいか。前半と後半、どちらも開始のベルが鳴ってからも調律を行っていたのは見たことがない。よほどピアノの調子が悪かったのだろうか。個人的にはぼやけた音で、ピアニストにとっては、あまりいいコンディションではなかったように思う。この施設が開館したのが1973年で今年が50年目になる。ピアノの寿命は約60年といわれているらしいので、そろそろ寿命が近くなってきているのかもしれない。 ところで、今日プールに行ったら、あとから入ってきた顔見知りの女性の方から、この演奏会に行ったかと聞かれた。なんでも客席で後ろを振り返ったら筆者が目に留まったらしい。意外なことにびっくりしてしまった。良かったですねと言われたので、微妙と言ってしまった。後から「出産したばかりで体調が悪かったのかも」、とフォローしておいたが、気を悪くされたかもしれない。実際9月~10月の演奏会は見合わせていたらしい。コンディションのいいピアノで体調のいい時に、また聴くことが出来ればと思う。小林愛実ピアノ・リサイタル前半シューベルト:即興曲集 D935 Op.142後半ショパン:1.幻想ポロネーズ 第7番 変イ長調「幻想」2.即興曲第3番 Op.513.幻想即興曲 嬰ハ短調 Op.664アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22アンコール1.ショパン前奏曲集より(多分17番)2.シューマン:トロイメライ2023年12月8日 岩手県民会館中ホール 6列21番にて鑑賞
2023年12月09日
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イギリスの作曲家、ピアニストであるニッキ・アイルス(1963-)の60歳記念のアルバム「Face to Face」を聴く。例によってbandcampの新譜案内で知ったアルバム。名前は聞いたことがなかったが、これが思いのほか良い。wikiによると、このアルバムが9枚目のリーダーアルバムで、初のビッグバンドでの演奏のようだ。さらっとした作風で抵抗感なく聴くことが出来る。ドイツの名門NDRビッグバンドのサウンドは音の厚みはそれほどではないが、切れのいいサウンドだ。このバンドのサイトの" トップページにはアイルスが指揮とアコーディオン弾いている写真が載っている。中身を見るとアイスルは本年度のNDRビッグバンドのコンポーザー・イン・レジデンスいわゆる座付き作曲家に任命されていて、作品の委嘱、制作、および放送用のコンサートでの演奏が含まれているようだ。なので、今後このコンビによる彼女の新作がレコード化されるかもしれない。ギターと木管のユニゾンやメロディーラインは、ジョージ・ラッセルのハーモニーやヴォイシングの影響を感じさせる。全曲、彼女の作編曲で、都会的な雰囲気のノリがよく親しみやすい曲が並んでいる。アイルスの連れてきた数人のイギリスのメンバー(tp,fl,g,ds)が参加している。ビッグ・バンドにしてはギター・ソロが多いのもこのアルバムの特徴だろうか。youtubeを見ると眼鏡をかけた白い顎ひげの中年男で、ギターを弾きながら歌っているのか、口をパクパクさせているのが目立つ。調べたらマイク・ウォーカー(1962-)という方で、アイルスが連れてきたメンバーの一人。リーダー・アルバムも数枚出しているようだ。ビッグ・バンドのギターとしては、ファンキーで、饒舌なプレイだ。時々出てくるトランペット・ソロも彼らの一員のパーシー・パーズグローヴ(Percy Pursglove 1981-)というトランぺッターのようだ。全体的に、イギリスからのメンバーが参加することにより、演奏の水準が向上したようだ。快適なテンポの「Misfits」はリズミックで、アメリカ西海岸のバンドのような爽やかなサウンド。ギター・ソロが力演。アフロ・ロック的な「Red Ellen」は粘っこいサウンド。熱いトランペット・ソロ、後半にはギターのソロが入る。タイトル・チューンの「Face to Face」はトランペットをフィーチャーしたバラード。晩秋を思わせる、しみじみとした情感が感じられる佳曲。ピアノ・ソロは清潔なフレージングで印象深い。キャッチーなメロディーを持つ「Wild Oak」は、ドラムスを含むアフリカン・テイストのパーカッションの活躍が目立つ。中間部のピアノ・ソロは線が細く、バックに負けているのが残念。ソウル風味の「Big Sky」はプランジャー・ミュートをつけたトロンボーン・ソロはいいが、あまり面白くない。「The Caged Bird」はミステリアスなムードから一変、哀愁を感じさせながらも、ぐいぐいと進んでいく様が魅力的だ。バリトン・サックスの楽器に似つかわない機敏なソロもいい。アルバムのジャケットに描かれた鳥かごは、この曲に因んだものだろう。フルートのアンサンブルから始まる「Hush」はミディアム・テンポのクールなナンバー。バス・クラリネットを含む木管アンサンブルが美しい。荒々しいテナーサックス・ソロを経て、熱っぽいギター・ソロと続く。その後のテュッティの盛り上がりは非常に印象的で、この曲のハイライトと言えるだろう。アルバム全体で最も素晴らしい演奏。最後の「Awakening」はダンサブルで、重量感があり、ぐいぐいと迫ってくる。NDRビッグバンドは粘っこいサウンドで、重量感はそれほどでもないが、安定した演奏。サウンド的には、トランペットの強烈なハイトーンなどのスリリングな場面が少ないのが物足りない。ピアノの存在感が大きいのが意外。ということで、彼女の特徴のあるサウンドに、すっかりはまってしまった。過去のアルバムもチェックしてみたい。なお、こちらでは彼女たちの2時間にわたるコンサートの全貌を見ることが出来る。アイルスがアコーディオンを弾く場面も出てくる。Nikki Iles, NDR Bigband: Face to Face(Edition Records EDNDA1231)24bit 96khzFlacNikki Iles:1.Misfits2.Red Ellen3.Face to Face4.Wild Oak5.Big Sky6.The Caged Bird7.Hush8.AwakeningNikki Iles, NDR BigbandRecorded Hambur,2021
2023年12月07日
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この前まで開催されていたpresto musicのDGGのハイレゾのmp3価格でのセールで購入した一枚。このセールで、ドゥダメルの音源をいくつか購入したが、ロス・フィルの上手さに感心した。そうしたら、ネットの記事でこの楽団が世界最高のオーケストラ10選に入っていることを知った。現在の実力は音楽監督のドゥダメルの功績が大きいのだろうが、そのさっぱりとして清潔感のあるサウンドは筆者にはとても魅力的に聞こえる。メータがリヒャルト・シュトラウスなどを指揮して次々とレコードを発売していた頃(1962-1977)も、もてはやされたものだが、当時は少し粗いが馬力のあるオーケストラという印象だった。その後もジュリーニ、プレヴィン、サロネンなど著名な指揮者を迎えていたが、筆者はそれほど関心がなかった。サロネンのCDはルトスワフスキーの交響曲全集など数枚持っているが、線が細くそれほど印象に残っていない。アダムズの「シティ・ノワール」は、ディストリビューターによると『1940年代末〜50年代初めにかけてロサンゼルスで制作されたフィルム・ノワール(暗黒映画)特有のムードにインスピレーションを受けて、この時代の美学へのオマージュが反映されている。』とのことだが、具体的にどうなのかは分からなかった。フィルム・ノアールというくらいなので、暗く殺伐とした雰囲気が全編に漂っている。多数の打楽器やピアノ、ハープを含む4管編成の交響曲。3楽章に分かれているが、続けて演奏される。ブックレットによると、この曲は、アメリカの歴史家ケヴィン・スターの「City Noir』は、私がケヴィン・スターの「The Great Depression in California」の第3巻「Embattled Dreams」の「Black Dahlia」の章からヒントを得ているという。このブラックダリアの殺人事件は1947年に起きた猟奇事件で、現在も未解決。ブライアン・デ・パルマ監督により2006年に映画化されている。映画をご覧になった方ならわかるであろうが、身の毛もよだつような恐ろしい映画だ。この音楽を聴いて身の毛がよだつような気分にはならないが、心がザワザワし、聴き手のドキドキ感はかなりのものだ。第1楽章と第3楽章の荒々しくも巨大な暴力的な表現に圧倒される。第3楽章はさながらハリウッドの大作の気分を感じさせてくれる。第2楽章は静けさが支配する夜の音楽で、アルトサックスがフィーチャーされ、聴き手の緊張も和らぐようだ。演奏は実に素晴らしい。全編に漂うクールな雰囲気、アメリカの楽団らしいスタミナとジャズの香り、第3楽章のエンディングの圧倒的な盛り上がり、どれも素晴らしく、終わった後の観客の歓声も頷ける。オーケストラは文句のつけようがないが、弦の艶やかなサウンドが特に印象に残った。この音源は配信のみのようだが、広く知られて欲しい演奏だ。John Adams:City Noir(LA Phil Live 4794373)24bit 96kHz FlacJohn Adams: City Noir(2009)1.The City and its Double2.The Song is for You3.Boulevard NightLos Angeles PhilharmonicGustavo DudamelRecorded: 2009-10-10,Walt Disney Concert Hall, Los Angeles
2023年12月05日
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サウンド・オブ・ミュージック60周年記念リリースだそうだ。CDのデラックス版は46曲入り。通常のCDは16曲入り。ダウンロードも通常盤は16曲なのに、presto musicやprostudio mastersではデラックス版は何と84曲も入っている。qobuzではデラックス版はなく通常版のみだが27曲入りだ。craft recordingでは84曲にドルビーアトモスの16曲がついている。40曲が未発表でオルターネイトテイクも11曲というのも恐れ入る。その中にはギターが結構目立つアレンジがあり、マリアの楽器であるギターを意識していると思ったのは筆者の印象。また、「独りぼっちの羊飼い」を使った「The Laendler (Quintet) 」などもある。この曲はレントラー舞曲の形式を活かした小規模なアンサンブルで、ウィーンの雰囲気を満喫できる。61曲目以降は歌のないインスト曲。それぞれの作品は2分に満たないが、巧みにまとめられ、映画が終わった後も余韻に浸ることができるようだ。ただしこれらはあまり録音がよくない。聞いたことのない曲とリプライズや続編みたいな曲もあり、映画の雰囲気が伝わってくる度合いはまるで違う。とくに「私の好きなもの」に続いてパート2が演奏されているのが嬉しかった。(track12)おそらく音楽の部分は全て出したのではないかと思われる。それらは殆どが短いトラックなのだが、それらを含めて映画のサウンド・トラックとしては完璧だろう。主役のジュリー・アンドリュース(1935-)のイギリス訛りの歌は昔から記憶に残っていたが、改めて聞いても素晴らしかった。マージェリー・マッケイ(1925-)の「すべての山に登れ」の堂々たる歌唱も素晴らしい。この映画は子供が主役だが、彼らの合唱や教会の場面など合唱が活躍する場面が多く、なかなか楽しい。セリフも適度に入っていて、映画を思い起こさせる。ロバート・ワイズ(1914-2005)監督と作曲家のリチャード・ロジャーズ(1902-1979)、それに長女リーズル役のシャーミアン・カー(1942-)のインタビューも含まれていて、まさに盛り沢山。カーはいくつかのナンバーでソロも歌っている。舞台となったザルツブルクに因んだ「Sarzburg Montage」という「私の好きなもの」をアレンジした楽しいインスト・ナンバー他インストナンバーが多数あり楽しい聴き物だ。筆者は公開時、学校の行事で観に行っており、この音楽を聴いていると映画の場面が思い出される。オーケストラは流石に古めかしい音だが、ノスタルジー満点。トランペットの細かいビブラートなど、さすがに古いと感じられる。録音は音が前に出てくるようなリマスターだが、ノイズはかなり抑えられている。混濁が激しく、高音が雑味のある音なのが惜しい。いかにもスタジオでの録音という感じなのだが、「Morning Hymn and Alleluia」など合唱曲はクラシック風の結構いい音で録れているので、ロケーションが異なるのかもしれない。年代から考えると古臭いサウンドだが、大部分の曲の残響が少ないことが影響しているのかもしれない。トータル3時間半余りで、映画の世界が十分に堪能出来て、とても満足した。The Sound Of Music(Craft Recordings CR03383)24bit 96kHz Flacrecorded 1964
2023年12月03日
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イギリスの日系ギタリストであるショーン・シベの新作は南米の作曲家の作品を集めたアルバム。最近録音の目立つヒナステラのソナタが収録されているのが嬉しい。南米の音楽と言っても華やいだ雰囲気はなく、清澄で落ち着いた演奏で直向きさも感じられる。最後のヒナステラのソナタは難曲として知られる。シベの演奏はバリオスやビラロボスのひそやかな趣とは段違いの大迫力。ただ、音の粒立ちがはっきりしていて、むき出しの野蛮な音にはなっていないところがユニーク。多分マイクアレンジも異なっているのだろう。ただし、南米の息苦しい空気を感じたい向きには不満の出る演奏だろう。バリオスは上品で控えめな気品漂う演奏。なので南米のにおいはあまり感じられず、録音と相まって荘厳な気分が感じられる。舟唄「フリア・フロリダ」もしみじみと心に染み渡る。筆者はヴィラ=ロボスの12の練習曲はあまり馴染みがない。昔々のイエペスのドイツ・グラモフォンを所有していることを思い出したが、演奏は全く覚えていない。これもバリオス同様あまり南米の香りがしない。激しいところでも抑え気味で品位が保たれている。シベの演奏を聴いていると、これが単なる練習曲ではなく、香り高い名品であることが伝わってくる。第12曲は、ギターの弦の上を指で滑らせたときに出るキュッキュッという音を効果音として積極的に出させる曲なのだが、シベはこれを派手にやっている。因みにこれはイタリア語で「滑る」や「滑走」を 意味する「scrivo」または、「scivolo」という表情記号が使われるそうだ。他の演奏も何種類か聞いてみたが、これほど派手に出している演奏は見つけられなかった。ブックレットは楽曲の作曲された当時の背景なども含め大変充実している。中でも、ギタリストのセゴビアとバリオス、セゴビアとビラロボスとの良好ではなかった関係について言及されていて、大変興味深かった。彼らの関係が円滑でなかった背景として、セゴビアの態度が対等な人間同士の関係ではなく、宗主国(セゴビア)と植民地(バリオス、ヴィラロボス)とのようなものであったことが挙げられている。この描写は、高慢なセゴビアの態度を連想させる。まあ、優れた演奏家であるからといって、必ずしも良い人間関係が築けるわけではない。残念ながら...。録音は多分いつもの教会。雰囲気は出ているのだが、オフマイクの上に残響が少し多めなので、奏者から少し離れたところで聴いているような、もどかしさが感じられる。一度近接マイクで彼のプレイを聴いてみたいものだ。また、無音の状態でブーンというハム音がかすかに聞こえるのが残念。とはいえ清新な魅力に溢れたラテン・アルバムとして、ギター・ファンの方には是非お聞き頂きたい。Sean Shibe:Profesion(Pentatone PTC5187054)24bit 96kHz Flac1.Barrios Mangoré: La Catedral4.Barrios Mangoré: Julia florida5.Villa-Lobos: Estudos (12) for guitar, W23517.Ginastera: Guitar Sonata, Op. 47Sean Shibe (guitar)Recorded in April and August 2023 at Crichton Church, Scotland.
2023年12月01日
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