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自衛隊の音楽隊の演奏会が抽選で当たったので聴きに行った。少し前にyoutubeでこのバンドの定期演奏会がアップされていて、意欲的なプログラムだったこともあり、行く気になったことが原因。花巻は3年ぶりくらいらしいが、聴きに行ったのは初めて。陸自のコンサートはいつも知るのが遅く、応募できない状態が続いていたのでラッキーだった。メンバーはおそらく50人から60人でダブルリードも充実していた。会場はほぼ満員。開演前にサックスセクションのアンサンブル+パーカッションが2曲演奏された。音が太く大きくてびっくり。本編は第1部がオリジナル、第2部がポピュラーという構成。第1部の指揮は鈴木有紀3等陸尉。概ねテンポが速く、曲によっては速すぎるように感じることもある。最初のリードの「音楽祭のプレルード」はリードの索引としてはかなり古い部類に入るが、個人的には、いまだに演奏されていることを考えても彼の作品の中でも上位に入る名曲だと思っている。この曲はリタルダンドもほとんどしないで快速調の演奏。この曲は速い方が真価を発揮すると思うが、速すぎると演奏する法は大変だ。特に後半のユーフォニアムの3連符などかなりきつい。次の酒井格の「たなばた」は季節柄相応しい選曲だろう。この曲は今や吹奏楽の古典として親しまれている曲で、出版されたのは高校在学当時の1988年というから驚く。どの曲も童心に帰るような曲が多く、この曲も久しぶりに聴いたがいい曲だなと思った。和田信:シャロームは初めて聞く曲だがあまり印象居残っていない。最後はホルストの第2組曲。第1組曲に比べ演奏頻度は少ないと思っていた。全体にさっぱりした仕上がりで、ユーフォニアムなど所々に出てくるソロも悪くなかった。第2部は澤野隊長の指揮で、New Sounds In Brassのレパートリーを中心とした選曲。「ディズニー・メドレーⅢ」は、ディズニーでも古いムーディーな映画音楽が並んだ選曲で、ノスタルジックな気分が味わえた。天野正道の「きらきら星変奏曲」もシーズンを意識した選曲だろうか。第2部全体のムードからすると少し気真面目で、曲自体あまり面白くない。「スーパー・マリオ・ブラザース」はゲームのキャラクターが登場し、なかなか楽しませてくれた。音楽も電子音が加わり、ゲームの気分ののりだ。最後も真島氏の編曲によるカウント・ベイシーのメドレー。古い曲と新しい曲があり、個人的には「Wind Machine」が入っていたのが嬉しかった編曲にもよるが、おとなしい演奏で、強烈なドライブ感とド派手なトランペットのハイ・トーンを聞きたくなってしまった。「リル・ダーリン」でのおしゃれなミュート・トランペット、「パリの四月」のムーディーなトロンボーンなどソロは充実していた。「パリの四月」のエンディングは2回繰り返して、3回目はと思っていたら、なんとマリオ風のいでたちのパーカッション奏者の掛け声で始まり、ずっこけてしまった。アンコールの1曲目は宮沢賢治の「星めぐりの歌」。男性ヴォーカル付きという異色だが格調高い音楽だった。2曲目はアンコールではお馴染みのキングの「バーナムとベイリーのお気に入り」。気の利いた選曲で、聴衆を興奮のるつぼに叩き込んだ?楽しいエンディングだった陸上自衛隊東北方面音楽隊は技術的な破綻はなく、よく訓練されたバンドだと思う。ただ、音楽が些か平板なのが惜しい。なかでは、アルト・サックスとティンパニが光っていた。陸上自衛隊東北方面音楽隊演奏会第1部1.リード:音楽祭のプレリュード2.酒井格:たなばた3.和田信:シャローム4.ホルスト:吹奏楽のための第二組曲第2部1.ディズニー・メドレーⅢ(真島俊夫編)2.天野正道:きらきら星変奏曲3.スーパー・マリオ・ブラザース(星出尚志編)4.トリビュート・トゥ・カウント・ベイシー・オーケストラ(真島俊夫)アンコール1.宮沢賢治:星めぐりの歌2.キング:バーナムとベイリーのお気に入り陸上自衛隊東北方面音楽隊鈴木有紀3等陸尉(指揮 第1部)澤野展之2等陸佐(指揮 第2部)2024年6月22日 花巻市文化会館17列41番にて鑑賞
2024年06月23日
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ブログにはあまり上げていないが、メゾ・ソプラノのマグダレーナ・コジェナーのアルバムは結構聴いている。最近のアルバムは東欧の作曲家の作品を特集することが多いが、優れた演奏が続いている。今回は夫君のサイモン・ラトル指揮チェコ・フィルとの共演で、マルティヌー、ドヴォルザークらの歌曲が集められている。ディストリビューターによると、『母国チェコスロバキアを愛するコジェナーが、今この時代だからこそ世に訴えかけたい、メッセージ性の強いアルバム』とのこと。このアルバムの曲はすべて初めて聞いたが、思いもかけず素晴らしかった。気に入ったのはマルティヌーとクラーサ。筆者はマルティヌーの曲は殆ど聞いたことがないし、あまり関心がなかった。wikiを見ると『400作を残した大変に多作な作曲家』だそうだ。『ニッポナリ 』(1912年)は額田王や小野小町など日本の古代の詩からインスピレーションを得て創作した歌曲集。1910年プラハ音楽院を素行不良で退学させられ、故郷の小学校の教師についた時代の作品。和歌に触発されたと言っても日本的な風情は感じられず、ドビュッシーやラヴェルなどの印象派の影響が強い。ただ、共通のテーマが、美の儚さ、季節の移ろい、時間の経過なので、その雰囲気はよく出ていると思う。楽器編成は弦と木管主体の小さい編成だが、楽器の濃密な絡み合いが楽しめる。ハープの鮮烈なグリッサンドが、目立っていた。それほど濃厚な表情ではないが、「夢の中の人生」や「聖なる湖」は生の激烈な感情が表現されている。「雪のなかの足跡」は妙高山の雪の風景を描いたものだが、チェレスタやハープ、高音域を使った弦のサウンドがキラキラした雪の情景を思い浮かべる。20代初めの作品とは思えないほど熟達した作品だった。「1ページの歌曲集 H.294」は1820年代と30年代にフランティシェク・スシルが集めたモラヴィアの民謡を基にした作品。チェコののどかな風景が見えるような楽しい作品だ。原曲はピアノ伴奏だが、イジー・テムル(1935-)のオーケストラ編曲(1997)がはまっていて、大変好ましい。メッセージ性が感じられるのはハンス・クラーサ「声楽と管弦楽のための4つの歌曲」とギデオン・クラインギデオン・クラインの「 子守歌」だろうか。「声楽と管弦楽のための4つの歌曲」はリアリズムが感じられる詩で、全体にひんやりした感触の闇を感じさせる音楽。ヤナーチェックを思わせるモラビア風のところもある。第4曲「絞首刑の男の歌」死刑執行人の妻に切り落とされた頭が語りかけるというおぞましい情景を感じさせる音楽だが、ファゴットのおどけた表情など、柔らかな雰囲気が感じられる音楽が凄惨さをあまり感じさせない。「子守歌」は通常の優しいメロディーではなくクールな雰囲気が変わっている。ドヴォルザークの「夕べの歌」はイジー・ガムロット(1957-)による管弦楽伴奏版による演奏で、チェコの田園風景が見えるような、夢見るような演奏が美しい。バックと一体になったコジェナーの歌唱は、文句のつけようがない素晴らしい出来だった。オーケストラはドヴォルザーク以外は小編成で、筆者にはそれが大変好ましく思えた。全く期待していなかったのだが、これが大変優れたアルバムだった。多くの方に是非お聴きいただきたい。コジェナー、ラトル&チェコ・フィル/『チェコの歌曲集』(Pentatone PTC5187077)24bit96kHzFlac1.マルティヌー:ニッポナリ『日本の和歌による7つの歌』 H.68(1912) 第1曲『青い時間』 第2曲『老いた時』 第3曲『回想』 第4曲『夢を見ながら生きていく』 第5曲『雪の上の足跡』 第6曲『振り返ってみると』 第7曲『聖なる湖』8.マルティヌー:1ページの歌曲集 H.294(1943) orchestrated by Jiří Teml 第1曲『露』 第2曲『言葉で鍵を開け』 第3曲『最愛の馬に乗って』 第4曲『歩く道』 第5曲『母と家に』 第6曲『乙女の夢』 第7曲『ローズマリー』15.ドヴォルザーク:夕べの歌 Op.3より 第7曲『私が空を見たら』 第5曲『木の葉のざわめきも静まり』 第2曲『君の死んだ夢をみた』 第3曲『私はおとぎ話の騎士だ』 第4曲『神が愛に満ちた心になれば』16.ドヴォルザーク:歌曲集 Op.2より orchestrated by Jiří Gemrot 第2曲『ああ、それは金色に輝く素敵な夢だった』 第6曲『私の心はしばしば苦しみに沈む』22.クラーサ:声楽と管弦楽のための4つの歌曲 Op.1 第1曲『ヤギとアシナシトカゲ』 第2曲『いやだ!』 第3曲『ため息』 第4曲『絞首同盟員が処刑人の女中ゾフィーに贈った歌』26.クライン:子守歌マグダレーナ・コジェナー(ms)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団サイモン・ラトル(指揮)録音時期:2022年11月(ドヴォルザーク、クラーサ、クライン)、2023年2月(マルティヌー)録音場所:プラハ、ルドルフィヌム、ドヴォルザーク・ホール
2024年06月21日
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ギタリストのビル・フリーゼルがオーケストラとビッグ・バンドというふたつの団体と共演した2枚組アルバム「Orchestra」を聴く。ブックレットが付いていないので詳しいことは分からないが、二つとも2022年の9月24日の録音となっている。コンサートのライブだそうだが、拍手が入っている曲はわずかで、あまりコンサートの雰囲気はしない。オーケストラの共演はベルギーのデ・ベイロークでのライブ録音。どちらもフリーゼルのトリオとの共演で、1枚目は60人編成のブリュッセル・フィルハーモニック、2枚目は11人編成のウンブリア・ジャズ・オーケストラとの共演だ。本作について、フリーゼルは『「自分が知っているギリギリのところか、そこから外れて知らない領域に飛び込むということにいつもトライしているんだ。イマジネーションの赴くままにプレイしていたよ」と語っている。どちらもマイケル・ギブス(1937-)の編曲。オーケストラとの共演はオーケストラが伴奏に終始し、トリオをプッシュすることがなく、刺激に乏しい。全体に耽美的な表情が感じられるがオーケストレーションは色彩に乏しく単調だ。美しいが、それほど心に響かない。最初の「Nocturne Vulgaire」は武満を思い起こさせるようなサウンドで、アルバムの中では最も興味深く聴いた。個人的には、フリーゼルのギターが安っぽいサウンドで、バックと溶け合っていないように思う。切れ目なく「Lush life」に続く。ビッグバンドでも取り上げられていたロン・カーターの「Doom」はも少し暗めのサウンドで、リフが繰り返されるだけで変化に乏しい。フリーゼルのオリジナル「Rag」はそれまでとは異なる、メキシコのマリアッチ風の賑やかな曲だが、ごちゃごちゃしてあまり面白くない。「Throughout」は「Doom」と同系統の耽美的だが暗い色調の曲。この曲では管も入り変化もある。11人編成のウンブリア・ジャズ・オーケストラとの共演はウンブリア・ジャズ・フェスティバルでのライブ。ただし、ドラマーのルディ・ロイストンが出発直前にコロナに感染し、マイク・ギブスもスペインからイタリアに来る途中で濃厚接触者と判明し、ホテルから出られなくなってしまった。なので、コンサートはこの二人抜きで行われ、ドラムスはあとでオーバーダブしたとのこと。ビッグバンドとの共演も、どちらかというと静的な表情に終始していて、ビッグバンド特有のブラスの咆哮は聞かれないが、ヴォイシングが新鮮で楽しめる。ただ、どの曲も曲調が暗めのため、同じようなムードになっているのが惜しい。最初の「Lookout for Hope」はチューバが使われていて、ギル・エヴァンス風のサウンド。スパニッシュ風味のまったりとした音楽で悪くない。「Strange Meeting」は聞いたことのあるメロディーだった。多分フリーゼルの代表的な作品の一つなのだろう。バス・クラリネットやチューバのサウンドが心地よい。イントロにドラムソロの入った「Doom」は抒情的だが暗く、同じフレーズの繰り返しで気分が滅入ってくる。楽器の種類が少ないので、オーケストラに比べ単調になるのは仕方のないことかもしれない。「Electricity」は少しテンポが上がって明るい曲調だが、これも繰り返しが多く面白くない。「Monica Jane」はけだるいムードの感じられる曲。最後は何故か賛美歌「We Shall Overcome」が演奏される。曲の前におざなりな?拍手が入っているが、聴き手は正直だ。黒っぽいサウンドがフリーゼルに似つかわしくないが、少しやさぐれたゴスペル調のホーンのハーモニーは悪くない。結局、ビッグバンドでもバックは伴奏に終始していて、面白みがなかった。これでは宝の持ち腐れと言われても仕方がないだろう。ということで、フリーゼルの挑戦的な試みが感じられるものの、オーケストラやビッグバンドとの共演は刺激に欠け、明確な方向性が見えにくい作品になってしまった。フリーゼルのソロも、これはと思うようなパフォーマンスは聞かれなかった。Bill Frisell:Orchestras(Blue Note 5883733)24bit96kHz Flac1.Michael Gibbs: Nocturne Vulgaire2.Billy Strayhorn: Lush life3.Ron Carter: Doom4.Bill Frisell: Rag5.Bill Frisell: Throughout6.Bill Frisell: Electricity7.Michael Gibbs: Sweet Rain8.Bill Frisell: Richter 858, No. 79.Foster, S: Beautiful Dreamer10.Bill Frisell: Lookout for Hope11.Bill Frisell: Levees12.Bill Frisell: Strange Meeting13.Ron Carter: Doom14.Bill Frisell: Electricity15.Bill Frisell: Monica Jane16.trad.: We Shall OvercomeBill Frisell (e-g)Thomas Morgan(b)Rudy Royston(ds)Brussels Philharmonic(track 1-9)Alexander Hanson(cond track 1-9)Umbria Jazz Orchestra(track10-16)Manuele Morbidini(cond track10-16)Recorded: 2022-09-24,De Bijloke,Belgium (track 1-9)Nov.30th 2021-Jan.1st,Teatro Mancinelli,Teatro Mancinelli,Italy(track 10-16)
2024年06月19日
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先日偶然にブレーンでリリースしている21世紀の吹奏楽「饗宴」の昨年までの分がspotifyで聞けることを発見した。このシリーズ去年までで26回リリースされている。コロナ禍の期間を除き続いていることは誠に同慶に堪えない。筆者も行きたいと日頃思っていて、数年前にはチケットも買ったのだが、都合が悪くて行けず、それっきりになっている。このライブ録音は初回からブレーンがライブ録音していて、筆者も最初の10回までは購入して聞いていた。吹奏楽を離れてしまってからは、その習慣もなくなり、聴きたい曲があっても、品切れなどで、聴けずじまいのことも何回かあった。なので、配信されることになり、大変有難い。Xによると響宴XXIIIを除き配信されている。響宴XXIIIは権利の関係で配信はないそうだ。配信元はiTunes、Amazon Music、Spotifyなどだが、どうやら圧縮音源のようだ。また、ダウンロード販売も行われているが圧縮音源であることは同じだ。まあ、CDの半分近くの価格なので、音質に文句を言ってもしょうがない。いずれにせよ、ブレーンの英断?に拍手を送りたい。
2024年06月16日
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ジャニーヌ・ヤンセンの新作は9年ぶりの協奏曲集。共演はクラウス・マケラとオスロフィル。レコーディングが昨年なので、マケラが首席をしているパリ管でもおかしくないのだが、オスロ・フィルとは意外だった。理由は分からないが、北欧の音楽だからオスロフィルがより相応しいのかもしれない。とにかくヤンセンのヴァイオリンの音が凄まじくいい。楽器はヨーロッパの後援者から貸与されたシュムスキー=ローデのストラディヴァリ(1715)だそうだ。このヴァイオリンの威力が最大限に発揮されているのはプロコフィエフだろう。妖艶という形容がぴったりのサウンドで、曲の怪しげな魅力が十全に発揮されている。特に最終楽章の夢想するような雰囲気にぴったり。シベリウスも美しいのだが、曲が禁欲的なところがあり、ヴァイオリンの魅力が十全に発揮できているところまでは今一歩というところだろうか。マケラ指揮オスロ・フィルはシベリウスでの決然とした表情が素晴らしい。ボーナス・トラック的なシベリウスの小品「Water Drops」が最後についている。この曲はシベリウスが少年時代に書いた45秒ほどの曲で、本来はヴァイオリンとチェロのため言書かれたが、今回はヴァイオリン独奏で演奏されている。wikiなおCDには収録されていない。なお、ピエール・ローデ(1774~1830)は、ヴァイオリンの練習曲で有名なヴァイオリニスト。彼の名前がついているストラディヴァリで、オスカー・シュムスキーという有名なヴァイオリニストが弾いていた名器だそうだ。ブックレットが付いていて、二人の作曲家の面白いエピソードが書かれている。その中で、シベリウスがバイオリンの名手になることを夢見ていたが、ウィーン・フィルのオーディションに落ち、その夢は傷となって残った、というエピソードが興味深い。Janine Jansen:Sibelius - Prokofiev 1 - Violin Concertos(Decca 4854748)24bit 96kHz Flac1.Sibelius: Violin Concerto in D minor, Op. 474.Prokofiev: Violin Concerto No. 1 in D major, Op. 197.Sibelius:Water Droplets JS 216Janine Jansen(vn)Oslo Philharmonic Orchestra(track 1-6)Klaus Mäkelä(track 1-6)Recorded: 2023-06-07,Oslo Konserthus
2024年06月14日
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フッド・ハーシュのソロ・ピアノ集を聴く。ECMからは初のリーダー・アルバムで、ソロ・ピアノとしては「Songs From Home」(2020)以来3年ぶりになる。ECMへの録音としては、エンリコ・ラヴァとのデュオ「The Song Is You」に続くアルバム。前回のソロはコロナ禍という心に傷を負った大変な時期の録音だった。ECMからのソロデビュー作『Silent, Listening』を語るによると、プロデューサーのマンフレート・アイヒャーとの出会いが刺激となって、いい意味で彼自身が予想しなかった結果になったようだ。7曲がオリジナルで、4曲がスタンダードという構成。オリジナルには現代音楽風の曲もある。ハーシュはクラシックの作品もあり、ピアノ曲や室内楽を集めたアルバムもリリースされている。作風は彼のピアノ同様抒情的で穏やかなもの。なので、現代音楽というと、一般的には緊張を強いる曲が多いのだが、彼の作品は殆ど緊張を感じることがない。今回のアルバムでは沈黙が支配する曲が多いが、温かみがあり、親しみやすいのは大きな長所だ。エンリコ・ラヴァに捧げた「Little Song」のようなポピュラー・チューンみたいなメロディックな曲もある。スタンダードの中ではラス・フリーマンの「The Wind」がお初にお耳にかかった。ハーシュの曲に似た沈黙が支配する現代音楽風なアプローチ。オリジナルは典型的なバップチューンの実に泣けるバラード。汗臭い音楽が沈黙の支配する現代音楽風な曲になっているところに、ハーシュの真骨頂が発揮されて、まるで別な曲のように響く。1曲目はジョニー・ホッジスの名演で有名なエリントンの「Star-Crossed Lovers」。この曲は「Passion Flower : Fred Hersch」(1996)というノンサッチ移籍第一弾でも「Pretty Girl」として取り上げられていた。その時は普通のアプローチだったが、今回は雨だれのような連続する単音から始まる静かで実に詩的なアプローチ。メロディーをストレートに演奏するのではなく、あの曲だと思わせるしかけ。「Night Tide Light」は沈黙が支配し、低音が蠢くような不気味な曲。不思議と緊張感はない。弦をはじく場面も何か所かある。3曲目の「akrasia」はギリシャ語の「自制心がないこと」という意味。低音のリズミックだが不気味な連打と、高音の軽やかな旋律の対比が面白い。それが止むと、モノローグのような慰めに満ちた旋律が出てくる。タイトルチューンの「Silent,Listening」は現代音楽というか、シェーンベルクあたりの曲を思い起させる。「Starlight」も同じような肌触りだが、ほのかに甘い香りが漂う、控えめでありながらも甘美な曲だ。エンリコ・ラバに捧げられた「Little Song」は軽快で愛らしい曲。ウイットに富んだアドリブのある展開が聴き手を安心させる。「Volon」はドビュッシー風のイントロから始まる不協和音が支配する曲。「朝日のようにさわやかに」は、ぎくしゃくしたリズムと不協和音がコミカルな味を出していてユニーク。最後は無調的なイントロから始まり、しみじみとした情感を感じさせる「Winter of my Discontent」で締めくくられる。ステファノ・アメリオの録音はノイズ感の全くない透明感は程々で、温かみのあるサウンド。この録音がなければだいぶ印象は違っていたと思う。弱音が実に美しい。ということで、アイヒャーがプロデュースしたことにより、従来のハーシュのソロ・ピアノのイメージを変える、大変興味深いアルバムに仕上がった。プロデューサーの影響力をまざまざと感じさせるアルバム。老いたりとはいえ、アイヒャーおそるべし。Fred Hersch:Silent,Listening(ECM 5890962)24bit 96kHz Flac1.Billy Strayhorn, Duke Ellington:Star-Crossed Lovers2.Fred Hersch:Night Tide Light3.Fred Hersch:Akrasia4.Fred Hersch:Silent, Listening5.Fred Hersch:Starlight6.Fred Hersch:Aeon7.Fred Hersch:Little Song8.Russ Freeman:The Wind9.Fred Hersch:Volon10.Sigmund Romberg, Oscar Hammerstein II:Softly, as in a Morning Sunrise11.Alec Wilder, Ben Ross Berenberg:Winter of my DiscontentFred Hersch(p)Recorded May 2023,Auditorio Stelio Molo RSI, LuganoEngineer: Stefano Amerio
2024年06月12日
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すっかり忘れていたが、レコード芸術のクラウドファンディングが目標額達成されたそうだ。目標額1500万円に対し、839名の方々から目標の113%の1700万円が集まったという。筆者も協力しようと思っていたのだが、情報を知るのが遅く協力できなかったのが残念だ。4月10日開始で5月24日終了という短い時間ながら、これだけ集まったことに驚く。心の支え?にしていた方が多かったのだろう。Xに『レコード芸術ONLINE』創刊準備室のアカウントがありあり、そこで逐次準備状況を報告するようだ。9月2日の創刊まで3ヶ月。何事もなく創刊日を迎えられることを、ハラハラドキドキ?しながら待ちたい。
2024年06月10日
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川嶋哲郎の新作、高いのでペンディングにしていたのだが、この前のコンサートが良かったので、勢いで購入してしまった。Amazon Payで買うと、ギフトの残高があれば、ポイントが上乗せされるOTOTOYからダウンロードした。前作と似たような抒情的なムードが横溢している。風呂に浸かりながら聞いていたら、これはハードボイルド小説の世界だと思った。男の叙情が心に響く、感傷的ではない、男の美学が感じられるのだ。ジャズミュージシャンの場合、弦が入ると途端に猫のように大人しくなってしまう音楽が多い。襟をただす作用があるのだろうか。ところが、川嶋のテナーは普通のコンボと何ら変わらない逞しい音楽だ。そこに弦の慰めに満ちた旋律が寄り添う。川嶋の哀しみをぐっとこらえたような姿勢と少しぶっきら棒なところが聞き手の共感を呼ぶのだろう。こういう音楽は他のミュージシャンからは聞かれない、川嶋独特の世界だ。曲は全て川嶋のオリジナルで、顔に似合わず?、聴き手をほろっとさせるようなメロディが続き、聴き手の心も熱くなる。1曲目の「Dear Days」からして実に泣ける音楽だ。「Sunrise Flight」も悲しみを湛えながらも疾走する姿が美しい。タイトルが示すように、サスペンス・ドラマのテーマに使われてもおかしくない曲だ。4曲からなる「エモーション」も聴き手の琴線に触れる音楽だ。組曲だが、1つのテーマの変奏曲のような構成になっている。ちょっぴり感傷的だが、前向きな姿勢が感じられるテーマがいい。最初の「Desire」のチェロから、川嶋のインティメイトな世界に引き込まれる。第3曲「Modulation」では殆どが弦楽のみで、最後にテナーでテーマがそうされる。「Aspiration」は速いテンポのラテン的なダンスナンバー。リズムが入り、ちょっと中近東風の音楽になっているのがユニーク。弦のみだと鋭角に鳴りがちなところが木管アンサンブルがはいることで温かみのあるサウンドになっているのがいい。川嶋の男くさいテナーのアドリブが炸裂する。ヴァイオリン・ソロも雄弁だ。「Sunset Voyage」は弦の清冽なメロディーが聴き手の心が締め付けられるようだ。この曲では川嶋は殆ど吹きっぱなしだが、所々村があるのが惜しい。途中からテンポが速くなり、パーカッションも加わる。岡部洋一のパーカッションはあまり目立たないが、楽器の選択がいいのか、雰囲気が出ていて、すばらしい。エンディングの少し前に彼の東洋的なテイストのソロが出てくる。最後の「Llanos Wind」は川嶋の多重録音によるフルート・アンサンブルから始まる。が聞かれるが、川嶋のオーバーダビングによるもの。このタイトルはChatGPTによると、『一般的に、「Llanos」はスペイン語で「平原」を意味し、南米特にベネズエラとコロンビアの広大な草原地帯を指します。「Wind」は「風」を意味しますので、「Llanos Wind」は「平原の風」や「草原の風」をイメージさせる名前です。』とのこと。クラリネットを中心とした木管のハーモニーが実に美しい。チャカ・ストリング・カルテットは川嶋の音楽に寄り添った素晴らしい共演ぶり。骨太のサウンドでハーモニーが美しく、説得力が半端ない。川嶋の音楽への心からの共感があるからだろう。このアルバムの成功の一端は、彼らの功績によるものだろう。ということで、若干湿っぽいが、心から共感できる音楽として、ジャズ・ファンの方々に是非お聴きいただきたい。川嶋哲郎:ア・ウォーク・イン・ライフ(SPACE SHOWER NETWORK DDCB-13055)24bit 96kHz Flac1.Dear Days2.A Walk in Life3.Sunrise Flight4.Suite Emotion: Desire Pathos Modulation Aspiration8.Sunset Voyage9.Llanos Wind川嶋哲郎(ts,fl,cl,bcl)チャカ・ストリング・カルテット香月さやか(vn),景澤恵子(vn),山田那央(va),香月圭佑(vc)岡部洋一(perc.)
2024年06月08日
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presto musicで偶然見つけたアルバムで、吹奏楽を管弦楽団で演奏するというもの。管弦楽を吹奏楽で演奏するのは普通に行われているが、その逆はなかなかお目にかかれない。これを企画した方はなかなか目の付け所がいい。三曲が神奈川フィルのホルン奏者である大橋晃一氏による編曲で、その他はラヴェルを除いては、おそらく作曲者自身の編曲だろう。ラヴェルは編曲するはずがないし、原曲のソロをゲストのお二人が演奏した程度の小変更で、敢えてクレジットしていないのかもしれない。それほど期待していたわけではないが、なかなか興味深い演奏が並んでいた。曲により管弦楽に向いている曲とそうではない曲が分かれている。一番驚いたのは、最初の「アルバマー序曲」。スクールバンド向けのそれほど難しくない曲で、吹奏楽をやった方なら一度は吹いたことがある曲だろう。ところが管弦楽編曲がはまっていた。曲の品位がぐんと向上して、吹奏楽のちゃらちゃらした感じが薄れ、随分と立派な曲に聞こえる。最初テーマがチェロで出たところなどはぞくぞくする瞬間だった。エンディングもスケールアップして華やかになった。スパークの「パントマイム」は佐藤采香のユーフォニアムが実に立派。ビブラートは殆どかけないが、最初のアンダンテが実に美しく、後半の速いパッセージも難なくこなしていた。アンダンテでの冴え冴えとしたバックの弦も素晴らしく、この部分は管弦楽の方が上回っている。全体にティンパニの力演が目立つ。吹奏楽でこれほど叩くティンパニもあまり知らない。ところで、amazonのコメントで「トランペットが吹き散らかしている」というコメントが書かれていたが、筆者は全くそんなことは感じられなかった。むしろチューバの能天気な?演奏のほうが(微笑ましいという意味で)気になった。最もしっくり来ていたのは、狭間美帆の「サックス・ソナタ」だろう。曲自体もともとピアノとの二重奏用に書かれていたということもあり、吹奏楽に引きずられてない。筆者はこの曲は初めて聞いたが、クールな佇まいと新鮮なハーモニーで、とてもいい曲だった。イギリスあたりのプロオケで録音してもらいたいところだ。吹奏楽版は2018年狭間が当時コンサート・イン・レジデンスをしていたシエナ・ウインドの定期で初演されたが、ネットでは見つけることが出来なかったのが残念。保科洋の「風紋」の管弦楽版はだいぶ前に編曲されていたように記憶している。抒情的な曲想が弦と相性がいいが、リズミックなところは管弦楽だと重くなるのは仕方がないことだろう。リードのアルメニアンダンス・パート1もリズミックな部分は若干もたつくが、ハーモニーが美しくエンディングもヴァイオリンの細かい動きが分かるように響きが整理されていた。さすがプロオケの仕事だと思える奏だった。「ボレロ」が何故入っていたのか分からないが、本来の趣旨とは違っているように感じる。普通の吹奏楽曲の管弦楽編曲版は出来なかったのだろうか。お金と時間の問題だったのだろうか。ゲストのソロはテナーサックスパートをユーフォニアムが吹いていたようだ。他のソロはこれ見よがしなアゴーギクが多く、小細工も見受けられ、あまりいい印象ではなかった。「ディスコ・キッド」 も動きが鈍く、いまいち。クラリネット・ソロもフェイクがいやらしい。神奈川フィルはまあまあの出来だが、随所に甘いところが見受けられるのが惜しい。なお、presto musicではこの稿を書いている時点でカタログからは消えている。ところで、中学校の吹奏楽部の顧問の方のブログにこのアルバムの感想が書かれています。現場の指導者ならではの感想で『オケならでは麗しさが素晴らしく、爆音と揶揄される吹奏楽コンクール界において目指すべき1つの方向性のようにも感じる』というくだりは笑わせます。kmd-windorchestra’s diaryWind Ensemble in Orchestra(Sony SICC19076B00Z)24bit 96kHz Flac1.ジェイムズ・バーンズ(大橋 晃一 編曲): アルヴァマー序曲(管弦楽編曲版初演)2.保科 洋:管弦楽のための「風紋」(原典版) 3.フィリップ・スパーク(大橋 晃一 編曲): パントマイム(管弦楽編曲版)4.アルフレッド・リード(大橋 晃一 編曲):アルメニアン・ダンス・パート1(管弦楽編曲版初演)5.挾間 美帆:サクソフォン・ソナタ第1番「秘色の王国」 (管弦楽版)6.モーリス・ラヴェル: ボレロ 7.東海林 修: 管弦楽のための「ディスコ・キッド」 須川 展也(サクソフォン)(5-7)佐藤 采香(ユーフォニアム)(3,6,7)現田 茂夫(指揮)神奈川フィルハーモニー管弦楽団 録音:2023年11月4日、神奈川県民ホール 大ホール(ライヴ録音)
2024年06月05日
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以前何度かレビューしたダル・サッソ(1968-)率いるビッグ・バンドの新譜を聴く。今回はチック・コリアの「Three Quartet」をビッグ・バンドにアレンジしたアルバム。コルトレーンの「Africa Brass Revisited 」に続く「revisit」(再訪)シリーズ?の続編で、いつものbandcampから多分9.9€で入手。24bit44.1kHzを192kHz にアップコンバートしての試聴。高音がスカッと抜けのいい音で、とても気持ちよく試聴できる。アルバムは「スリー・カルテット」のオリジナルと、同じ日に録音され1992年の再発時に追加された「スリッパリー・ホエン・ウェット」と「フォーク・ソング」、最後にチックのデビュー・アルバム(atlantic)からタイトルチューンの「Tones For Joan’s Bones」が収録されている。ディストリビュータのコメントによると、『「スリー・カルテット」はバルトーク、ベートーヴェン、ベルクなどの古典的な弦楽四重奏曲をモデルにしたもの。リターン・トゥ・フォーエバーでフュージョンに専念した後の、アコースティック・ジャズへの回帰の転換点になった。』とのこと。この時期のアルバムはあまり聴いていなかったので、spotifyをあたったが、残念ながら配信されていないようだ。youtubeをチェックしたら2003年のブルーノートNYでのライブがアップされていたので参考までに視聴した。ところが、イントロを見ていたら、見覚えのあるロゴがあった。もしかしたらと思って、手持ちの10枚組のDVDをチェックしたら、同じ演奏があった。Youtubeより格段に優れている映像と音楽で、楽しめた。マイケル・ブレッカーの爆演と、それを強力にプッシュする脂の乘りきった(体も)チックの演奏が楽しめる。ダル・サッソのビッグ・バンドの演奏は、相変わらず優れている。フランスのバンドらしく重量感はそれほどでもないが、軽快でパリッとした胸のすくようなサウンドが心地よい。テュッティでも威圧することなく優しいサウンドは、フランスのバンドならではだろう。アンサンブル、ソロイストすべてが高い水準で、ビッグ・バンドを聴く醍醐味が満喫できる。編曲が大変優れていて、スリリングな瞬間があるのは、オリジナルのカルテットの演奏からは感じられないものだった。数人のアンサンブルで出る場面も多く、通常のビッグ・バンドのような単調さから免れている。フルートやバスクラリネットが多用されたヴォイシングも非常に巧みだ。マイケル・ブレッカーの役割を担う3人のサックス奏者、デヴィッド・エル・マレック、ステファン・ギョーム、リック・マーギッツァがソロをとる。最初の二人はブレッカーを彷彿とさせるプレイだが、爆進する第2番のパート2「コルトレーンに捧ぐ」のリック・マーギッツァはおとなしいプレイで、いまいち。この曲はチックの「Tap Step」に似たリズムの曲で、ドラム・ソロが出てくるがカール・ヤヌスカのソロは悪くなかった。第2番のパート1「デューク・エリントンに捧ぐ」はチックの演奏よりも、かなりエリントン色の濃厚なアレンジで、オーケストラでこそ真価を発揮することが分かった。ステファン・ギョーム?の骨太のフルート・ソロもかなりの存在感がある。このアルバム全体でもフルート・ソロは光っていた。「Slippery When Wet」はスピーディな進行だが、ミステリアスなムードで各楽器の複雑な動きが面白い。エンディングのフルート、2本のテナー・サックス、バスクラリネットのみの場面は木管アンサンブルの醍醐味が味わえた。愁いを帯びたトランペットソロから始まる「Folk Song」は、リック・マーギッツァが静かだが説得力のあるテナー・ソロを展開していて、宗教的な気分が味わえる。いろいろな楽器が絡みあう穏やかなイントロのアンサンブルも雰囲気がある。デヴィッド・エル・マレックのテナー・ソロをフィーチャーした「Tones For Joan’s Bones」はソフトながらもリズミカルで明るい曲調で、アルバムの締めくくりに相応しい一曲だった。全体にピエール・デ・ベトマンの清々しいピアノが光る。第3番でのデニス・レループ(1962-)のミュート・トロンボーンのソロもいい。ということで、オリジナルのサウンドが拡大されて、清々しくも色彩豊かなサウンドになっていて、今回も大成功のレコーディングになった。グラミー賞ラージ・アンサンブル部門にノミネートされてもおかしくない傑作だろう。ビッグ・バンドファンには絶対のおすすめ!Dal Sasso Big Band:Chick Corea: Three Quartets (Jazz & People JPCD824003)24bit 44.8kHz Flac1. Quartet No.1 Solo : Stéphane Guillaume(ts), Nicolas Folmer2. Quartet No.3 Solo : Pierre de Bethmann(p), Denis Leloup(tb), David El-Malek(ts)3. Quartet No.2, Part 1 (Dedicated to Duke Ellington) Solo : Pierre de Bethmann(p), David El-Malek(ts), Manuel Marches(b), Stéphane Guillaume(fl)4. Quartet No.2, Part 2 (Dedicated to John Coltrane) Solo : Pierre de Bethmann(p), Rick Margitza(ts)5. Slippery When Wet Solo : Pierre de Bethmann(p); David El-Malek(ts)、 Thomas Savy(bcl), Rick Margitza(ts),Stéphane Guillaume (ts)、Karl Jannuska(ds)6. Folk Song Solo: Rick Margitza(ts)7. Tones For Joan’s Bones Solo: David El-Malek(ts)Christophe Dal Sasso(arr,fl)David El-Malek(ts)Stéphane Guillaume(fl,ts,ss)Rick Margitza(ts)Thomas Savy(cl,bcl)Nicolas Folmer(tp,flh)Christian Martinez(tp)Denis Leloup(tb)Jerry Edwards(tb)Pierre de Bethmann(p)Manuel Marchès(b)Franck Agulhon(ds)録音 2023年9月25日~27日
2024年06月03日
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最近左目の視力が落ちている。片方の目だけで像が二重にも三重にも見える状態だ。このまえ、眼科に行ったら角膜がでこぼこしていると指摘された。本来球面のはずが、上が平らで、下の方が尖がっている(円錐角膜)し、所々小さい凹凸がある。おまけに白内障もあるようだ。右目はきれいな球面だった。去年は測った時は矯正視力が1.2あったのが0.6に悪化している。右は1.2のまま。コンタクトレンズをつけて視力を測ると視力が向上するので、間違いないようだ。ドライアイの話をされたので、最近寝ていて、痛くなることがあるということを伝えたら、取りあえず点眼液を処方された。コンタクトレンズは処方しないのかと聞いたら、ハードコンタクトで扱いが難しいので処方しないと言われた。取りあえず薬をつけて2週間後に来いということだった。病名を確認したら角膜不正乱視というもので、ウェブサイトをみたら、同じことが書かれてあった。治らないらしい。点眼液のデータを見たら、薬の名前が「ヒアルロン酸ナトリウム点眼液」というもので、効能が『角膜の傷の治りを促したり、目の乾燥を防ぐ薬です。』と書かれてある。どうやらドライアイで角膜に傷がつきそれが網膜の小さい点々になっているという診断だろうと想像した。なるほど、これで合点がいった。治らないと言われたのでどうしようと思ったのだが、少し希望が出てきた。薬をこまめにつけて、傷が修復されるよう努めたい。ところで、この円錐角膜調べてみたら、治療方法としては、下記のような方法があるようだ。①メガネで視力を矯正する方法②コンタクトレンズをはめて角膜の突出をおさえることで視力を矯正する方法③角膜内に半円弧型のリングを挿入して角膜の突出をおさえることで視力を矯正する方法病気の進行を止めることが出来ない場合は、角膜移植をせざるを得ない状況になるそうだ。角膜を移植しなくてもいい治療方法「コラーゲン・クロスリンキング」が20年ぐらい前にヨーロッパで開発され、ここ数年で世界に広く普及してきたそうだ。簡単にいうと、角膜を硬くすることで角膜の変形を防ごうとする治療で、日本では保険が効かないので15万円くらいで治療できるそうだ。筆者の場合、上記の②段階の手前くらいだろうと思うが、進行を止める方法があることが分かったので一安心だ。コラーゲン・クロスリンキング
2024年06月01日
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ユリウス・アザル(1997-)というドイツのピアニストのドイツ・グラモフォンからのデビューアルバムを聴く。ドメニコ・スクリャービンとスカルラッティを並べたアルバムで、何か意図があるのだろうが、ごちゃごちゃと並べられているという印象。ディストリビューターによると、『2人の作曲家を過去、現在、未来の時空を旅する旅行者に見立て、スクリャービンのソナタの終楽章(葬送行進曲)の 「Quasi niente」部分をプログラムのオープニングとクロージングに位置し、曲間をつなぐ自作の間奏曲(TRANSITION)を2曲収録』とのこと演奏はとても柔らかく、スクリャービンは夢心地で聴いてしまった。参考までに第1番のソナタをアムランとアシュケナージの演奏で聴いた。アムランの演奏はぎすぎすしていて、とても同じ曲とは思えなかった。思えば昔のアムランは今とは違ってそういう芸風だったことを思い出した。アシュケナージは普通の演奏で特に違和感はないが、アムランやアザールに比べると遅すぎる。なので、この曲に関してはアザールの演奏がぴったりくる。スカルラッティのソナタもロ短調K87は宗教的で瞑想的な気分に浸ることが出来た。スカルラッティのソナタでそのような気分になるなんて、思ってもみなかった。ヘ短調K.466も遅めのテンポで同じような気分になる。ハ短調K.58はバッハのように響くが、響きは暖かい。テンポの速いハ短調K.56はさすがにそういう気分にはならないが、ここでもタッチが柔らかく、フレーズが滑らかに流れていく。自作の「TRANSITION」は2曲あるが、Ⅱはスクリャービンの「12の練習曲」の第11番のモチーフを使っている。他のどのピアニストとも違う個性的なピアニストで、今後どのように成長していくか、とても楽しみだ。なおグラモフォンのステージ+というサイトで、アリス・沙良・オットとのクラブでのライブの模様を観ることが出来る。ただし、ログインするか、未登録の方は登録が必要だ。アルバムの中の曲も弾いているので、どういうピアニストか知りたい向きは、無料なのでご覧になっては如何だろう。Julius Asal:Scriabin.Scarllati(DGG 4865283)24bit96kHz Flac1.スクリャービン:PROLOGUE(ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調Op.6より第4楽章:Funebre)2. D.スカルラッティ:鍵盤のためのソナタ ヘ短調K.4663. スクリャービン:24の前奏曲Op.11より第20番ハ短調D.スカルラッティ:4. 鍵盤のためのソナタ ハ短調K.565. 鍵盤のためのソナタ ハ短調K.586.スクリャービン:ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調(第1楽章:Allegro con fuoco/第2楽章:Adagio/第3楽章:Presto/第4楽章:Funebre)10. D.スカルラッティ:鍵盤のためのソナタ ヘ短調K.23811.アザル:TRANSITION Iスクリャービン:12. 12の練習曲Op.8 より第11番変ロ短調13. 24の前奏曲Op.11より第21番変ロ長調14. D.スカルラッティ:鍵盤のためのソナタ変ロ長調K.54415. スクリャービン:5つの前奏曲Op.16より第4番変ホ短調16. アザル:TRANSITION IIスクリャービン:17. 24の前奏曲Op.11より第14番変ホ短調18. 5つの前奏曲Op.16より第1番ロ長調19. 24の前奏曲Op.11より第6番ロ短調20. D.スカルラッティ:鍵盤のためのソナタ ロ短調K.8721. スクリャービン:EPILOGUE(ピアノ・ソナタ第1番ヘ短調Op.6 より第4楽章:Funebre)ユリウス・アザル(ピアノ)録音 2023年4月17-19日、ベルリン、テルデックス・スタジオ
2024年05月30日
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ピアノの連弾を集めた「Passage Secret」(秘密の通路)というアルバムを聴く。アルファからのリリースだが、eclassicalでまだ半額セールが行われているので、購入してしまった。ロシア出身のリュドミラ・ベルリンスカヤと、フランス出身のアルトゥール・アンセルの夫婦によるピアノ連弾。彼らはメロディアを中心に8枚のデュオとソロを録音していたが、今回は初めてアルファからリリースすることになった。ロシアを含むヨーロッパで活躍していて、2015年にはリュドミラ・ベルリンスカヤが東京春音楽祭の「リヒテルに捧ぐ」シリーズに出演したそうだ。プログラムは彼らが録音していないオール・フランス・プログラムで、ビゼー、ドビュッシー、フォーレ、ラヴェル、オベールという子供向けに作られた曲の組み合わせ。全て管弦楽に編曲されているビゼーの「子供の遊び」、オベールの「イマージュの一葉」は筆者は初めて聞いた。もともと筆者が連弾を購入する機会は殆どない。理由はソロで有名なピアニストにしか興味がないからだ。最近、ラフマニノフを集めたダニール・トリフォノフとセルゲイ・ババヤンのアルバム(未聴)を購入したのが、その稀な機会だった。今回の演奏者はどちらも聴いたことのないピアニスト。結構癖があり、両者の個性のぶつかり合いも楽しめる。おそらくベルリンスカヤが主導権を握っているのだろう。概ねテンポが速く、時に乱暴に聞こえることもある。全般に表現が若干硬いのも、不満の一つ。なので、ゆっくりした曲よりは、速く技巧的な曲のほうが精彩がある。ビゼーの「子供の遊び」は12曲からなり1分から2分程度の曲の組曲。フランスの香気漂う楽し気な曲集で、ビゼーの天才ぶりが窺える。「馬飛び」や「ギャロップ」などの速い曲が精彩がある。また、第9曲「目隠し鬼ごっこ」は遅めのテンポで、しゃれたアゴーギクが鬼ごっこの雰囲気を感じさせ悪くない。第11曲「ままごと」も表情豊かに演奏されている。ドビュッシーの「小組曲」は、あまり期待しなかったが、なかなか面白かった。フレージングが角ばっていて、思わぬところでアゴーギクを効かせていて、この曲の優しいイメージとはちょっと違う。両者の積極的なアプローチで、さらさらと音が流れていくのではなく、引っかかる音楽なのがいい。特に第1曲「小舟にて」が刺激的だ。フォーレの「ドリー」は速めのテンポで、アゴーギクを効かせたアグレッシブな演奏。第2、第4、第6は突っかかるようなテンポで、勢いがあるというか少し攻撃的な演奏。普通の温い音楽に比べると面白いことは確かだが、ちょっと乱暴すぎやしないかと思ってしまう。この中では「スペインの舞曲」が活気のある演奏で悪くない。また第5曲「優しさ」は参考までに聞いたラベック姉妹(DECCA)の演奏よりも何と1分も速い。4分弱の曲でこれほど違うと曲の雰囲気がまるで違ってしまう。この演奏だけを聴いているとそれほど違和感はないのだが、しみじみとした情感はまるで感じられない。ラヴェルの「マ・メール・ロワ」も全体的に速めのテンポで、細かいニュアンスはあまり聴かれないが、もたれないのはいいところだろう。独特なアゴーギクも異彩を放っている。第2曲「親指小僧」のようなテンポが速い曲や第3曲「女王の陶器人形レドロネット」のエンディングのアチェレランドなどは、なかなかスリリングだ。ダニエル=フランソワ=エスプリ・オベール(1782 - 1871)はオペラで活躍したブルターニュ出身の作曲家だそうだ。「イマージュの一葉」はテンポは多分普通。spotifyで聞けるアレッサンドロ・ファジュオーリ 、 オリヴィエ・シャウズ (Grand Piano)の演奏のテンポとはあまり違わない。なので?他の曲で感じられる違和感はなく、落ち着いて聞くことが出来る。地味ではあるが、フランスのエスプリを感じさせる佳曲だ。気に入ったのは第3曲の「セレナーデ」。フランス人の気まぐれな気分が表れているようだ。第5曲「ぬいぐるみの熊の踊り」は副題が「茶目っ気があり重々しい」となっていて、突然強打が出て来て、なかなか楽しめる。録音は透明で潤いのあるサウンドで、ダイナミックスも申し分ない。ということで、知らない曲がてんこ盛りで、気の向いたときに耳を傾けるのに相応しいアルバムだろう。youtubeどこかの家の一室での演奏。幻想的なライティングの映像が美しく、ベルリンスカヤの楽し気な表情が窺える。Ludmila Berlinskaya, Arthur Ancelle :Passage Secret(Alpha ALPHA1024)24bit 96kHz Flac1.Bizet: Jeux d'enfants, Op.22 (1871) 13. Debussy: Petite Suite,L65 (1886-89) 17. Fauré: Dolly Suite, Op. 5623. Ravel: Ma Mère l'Oye,M.60 (1908-10)28. Aubert, L: Feuille d’images(1930) Ludmila Berlinskaya, Arthur Ancelle(Piano Four Hands)Recorded in April 2022 at Salle Colonne (Paris)
2024年05月28日
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古野光昭フルノーツのコンサートを観に行った。このコンサートは以前お伝えしたように、ギターの渡辺香津美が長期療養のため、箏奏者のLEOに変更になっていた。ところが会場に行ったら、なんとリーダーの古野が体調不良のため出演できなくなったとのこと。代演に彼の弟子の坂井紅介が出ることになったが、リーダーがいなくなってしまって、どうなるかと思った。コンサートの二日前に同じ会場で学校行事のコンサートがあり普通に出演していたので、急に体調が悪くなったのだろう。コンサートはその時に古野がピアノと演ったジブリの「君をのせて」の映像を最初に上映し、その後演奏に入った。MCは川嶋が担当したが、手慣れたもので問題なかった。坂井は、コンサート当日の午前に到着したようだ。まあ、ジャズの場合にはよほど込み入った曲でない限り、簡単な打ち合わせでことが済むので、それが幸いした。川嶋も初めて会った人と演奏できるのは、ジャズだけだと言っていた。坂井のベースはアンプを通しているがなかなかいい音で、ソロもそつなくこなしていた。何曲かフリーの曲もあったが全く問題なかった。川嶋いわく、ジョー・ヘンダーソンのバンドにいた人だと紹介していたのも納得。プログラムはスタンダードを中心に、Leoの選曲した曲も交えて楽しませてくれた。1曲目はフルノーツの本来のベース、テナー、ドラムスの編成で、コンサートでは、いつもやる「Yesterdy」。川嶋の骨太のテナーが曲と若干ミスマッチの気はするし、あまり熱の入っていないような気がした。2曲目はピアソラの「オブリビオン」。普通はリリカルなテーマを生かした抒情的な演奏なのだが、今回の演奏は骨太でかなり変わっている。川嶋は途中まではフルートで、このフルートが以前聞いたときよりも表現力が大幅に向上して説得力が増していたのは収穫。目立っていたのは大坂昌彦のドラムス。最初出てきた時に革靴でスーツをびしっと着たどこかのビジネスマンのような風体で、びっくりしてしまった。プレイは普通のドラマーとはかなり違う。普通だとスネアドラム、シンバル、バスドラという感じだが、大坂はシンバルはあまり使わずタムタムを多用していた。それからリムショットも多用していた。とにかく引き出しが多く、音楽の幅が広がったような感じだった。大坂のプレイをいつ聞いたか忘れてしまったが、こういうプレイは独特のものだろう。バンドネオンで楽器をたたいて音を出すことがあるが、ドラムスでも似たような音を出していてびっくり。この曲の後半、マーチ風なリズムに乘ってテナーが咆哮する場面は、ぞくぞくする瞬間だった。3曲目はスペシャルゲストの山下洋輔が登場し、題名は不明だがモンク風の曲を演奏した。山下はプレイが丸くなって、力強さもあまり感じられない。さすがに年を感じさせる。4曲目は川嶋も加わってエリントンの「In A Sentimental Moo」。川嶋の、豪壮でありながらブルージーな演奏にしびれる。エンディングのカデンツァは圧巻。山下もさすがのバッキング。前半最後の曲は、箏のLeoが登場した。曲はリチャード・ロジャースの「私のお気に入り」。Leoの好きな曲らしい。最初は箏に合わせて、さらさらと進む。アンプを通しているとはいえ、箏の音が鋭くクリアだったのは意外だった。箏とテナーがテーマをユニゾンすることが多い。いざソロになると、川嶋がフリーキーなトーンを連発して盛り上げ、エンディングはカオス状態になっていた。山下と川嶋がいればこうなるのも想像がつくが、Leoも面食らったことだろう。後半の最初はLeoの推薦した「さくらさくら」。曲が曲だけに神妙な演奏で、山下のソロがあった。2曲目は山下のソロで多分、即興。お決まりの進行だったが、音の切れがいまいち。3曲目はラヴェルの「ボレロ」。川嶋はフルートからテナー持ち替え。大坂が最後までステディーなリズムを刻み、山下や川島のソロが入り、最後は山下の肘うちも入り白熱した演奏だった。4曲目はLeoの選曲による「6段の調べ」。曲の進行は他の曲と同じだが、箏のソロも入りなかなか新鮮だった。最後は童謡「七つの子」。なかなか味のある演奏で、童謡を得意にしている?山下や川嶋ならではの演奏だろう。アンコールは川嶋の提案で「俳句」の5-7-5のリズムを使った即興。さすがによく分かったメンバーの演奏なので爆笑のうちに終演した。ということで、最初からトラブル続き立ったが、実力者たちの楽しいコンサートで、聴きに行って良かった。キャンセルを受け付けていたようだが、キャンセルした人は惜しいことをしたと思う。古野光昭フルノーツ with 山下洋輔・LEO前半1.レノン=マッカ-トニー:Yesterday2.ピアソラ:オブリビオン3.曲目不詳4.エリントン:In A Sentimentl Mood5.リチャード・ロジャーズ:私のお気に入り後半1.日本古謡 さくらさくら2.山下ピアノ・ソロ3.ラヴェル:ボレロ4.八橋検校:筝曲「6段の調べ」5.童謡「七つの子」アンコール俳句のリズムによる即興川嶋哲郎(fi,ts)大坂昌彦(ds)坂井紅介(b)guest:山下洋輔(p)Leo(箏)2024年5月25日キャラホール・都南公民館大ホール 1階8列30番で鑑賞
2024年05月26日
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ロリンズの有名なヴィレッジヴァンガードでのライブのコンプリート盤がBlueNoteからハイレゾ化されたので早速入手した。もともとはケヴィン・グレイのマスタリングによるBlue Noteの「Tone Poet Vinyl」のシリーズの一つとしてリリースされたもの。その一環としてCDとハイレゾもリリースされたということらしい。今回の売りは初めて7.5ipsのマスターテープからマスタリングされたものであることだ。以前のものはマスターからコピーされたテープなどからマスタリングされたもので、その差は歴然としている。もともと評価の高い録音ではあるが、ここまで違うと評価もだいぶ変わってくるように思う。CDでは最初は1枚、後に2枚組となってリリースされていた。手持ちのコンプリート盤のCD(1999)を見ると、曲目数は変わっていないが、曲順は若干変わっているようだ。録音が失敗したという昼のギグ4曲も含まれている。また午後のギグでの録音は1枚目のCDのトップの「A Night In Tunisia」のみがクレジットされていて、残りの3曲は特にクレジットされていない。今回は残りの3曲も午後のギグと明記されているのは良かった。前述のCDを24bit、192kHzにリッピングしものと今回のハイレゾを比較してみた。全く別ものと言ってもいいほど、違いは大きい。CDもかなりいいのだが、ハイレゾに比べると埃っぽく、詰まったような音に聞こえる。また音の透明度、立ち上がりともハイレゾが優れている。なので、ロリンズのテナーの艶のあるサウンドと、いつもの豪放なプレイとは異なる鬼気迫るような演奏が聴き手に迫ってくる迫力は半端ない。エルヴィンのドラムもCDでは詰まり気味で、ハイレゾの鮮烈な音とはだいぶ違うとはだいぶ落ちる。ただ、鮮明過ぎて、シンバルがうるさく聞こえるが、この方が実演に近いのだろう。夜に比べると昼の音はやや落ちるかもしれないが、ヴァンゲルダーの言うような失敗テイクとは思はなかった。それがマスタリングのためなのかどうかは分からない。昼の部のドラムスのピート・ラロッカは録音当時デビューしたてだが、なかなか頑張っている。ベースはウイルビー・ウエアより昼のドナルド・ベイリーのほうがよく聞こえる。ということで、この演奏に親しんでいる方にこそお勧めしたいアルバムだ。Sonny Rollins:A Night at The Village Vangurd Complete Masters(Blue Note 6512251)24bit 96kHz Flac1.Sonny Rollins:Introduction 12.Burton Lane, Edgar "Yip" Harburg:Old Devil Moon3.Sigmund Romberg:Softly as in a morning sunrise (from The New Moon)4.Sonny Rollins:Striver's Row5.Sonny Rollins:Sonnymoon For Two6.Dizzy Gillespie, Frank Paparelli:A Night In Tunisia7.Vernon Duke, Ira Gershwin:I Can't Get Started8.Dizzy Gillespie, Frank Paparelli:A Night In Tunisia9.Cole Albert Porter:I've Got You Under My Skin10.Sigmund Romberg:Softly as in a morning sunrise (from The New Moon)11.Cole Albert Porter:What Is This Thing Called Love12.Jerome Kern:All the things you are (from Very Warm for May)13.Sonny Rollins:Introduction 214.Dizzy Gillespie:Woody 'n' You15.Miles Davis:Four16.Gene de Paul:I'll Remember April17.Ted Koehler, Harold Arlen:Get Happy18.Ted Koehler, Harold Arlen:Get HappySonny Rollins(ts)Wilbur Ware(b)Elvin Jones(ds)Donald Bailey(b track 3,6,9); Pete La Roca(track 3,6,9)Recorded November 3, 1957 at The Village Vangurd,NYC
2024年05月24日
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以前から気になっていたディーリアスの「ハッサン」の劇付随音楽の全曲を聴く。期待していたわけではないが、これがことのほか面白い。もしかしたら、ディーリアスの最高傑作かもしれない。ディーリアスの音楽は美しいが退屈なところや微温的なところがあり、好悪が分かれると思う。筆者はディーリアスの演奏はビーチャームやバルビローリの演奏で親しんでいた。全体にムーディで親しみやすいが、つまらない曲も多く、規模の大きい曲でも箱庭的な世界だと思っていた。今回の「ハッサン」も「間奏曲」と「セレナーデ」をビーチャムの管弦楽編曲版で聞いていた。ところが全曲版は予想とはまるで違っていて、短い曲が多いが、コミカルな曲が多く退屈しない。重々しい音楽の場面でも、どことなくユーモラスだ。オリエンタル趣味の音楽はストラヴィンスキーやリムスキー=コルサコフを思い出させるところもあり、物語と一体になっていて、音だけでもとても楽しい。編成はナレーター、混声合唱、管弦楽で、弦は3,3,2,2,1、管は一本ずつ(ホルンのみ2本)で、打楽器とピアノ、ハープが加わるという小編成。ナレーターがキングズ・イングリッシュで物語を格調高く進行し、演技も交えて盛り上げている。その存在が曲の印象を大きく変え、ナレーターの重要性を感じた。音楽を聴いていると、古い映画を観ているような気分になる。出番は少ないが、所々に入る合唱も悪くない。ディストリビューターによると、『「ハッサン」は、ジェームズ・エルロイ・フレッカーの詩「サマルカンドへの黄金の旅」に基づいた音楽付き戯曲で、1923年9月20日にロンドンで初演され、281回の上演回数を誇り、ディーリアスのキャリアにおける最大の成功作となった。この作品は、カリフと恋多き菓子職人ハッサン、そして若い恋人ペルバネとラフィの物語が交錯する二重構造を持つ。フレッカーの詩は、19世紀の英訳や当時の人種的、階級的な考え方に基づいており、専制的な東洋の宮廷とその残酷なまでの蛮行が描かれています。』とのこと。ジェイミー・フィリップス指揮のブリテン・シンフォニアは響きが透明でディーリアスの埃っぽいところがなく、大変聴きやすく、音楽も立派に聞こえる。彼は20歳の時にハレ管弦楽団のアシスタントコンダクターとなり以後、イギリスやヨーロッパか吉のメジャーオケと共演して実績を積んでいる。生年は確認できなかったが、おそらく今年32歳くらいだと思う。写真を見ると、少し剥げかかっている。他人事ながら心配だ。ジェイミー・フィリップス ディーリアス: 劇付随音楽 《ハッサン》(全曲) (Chandos CHAN20296)24bit 96kHz Flac) ゼブ・ソアネス(ナレーション)ブリテン・シンフォニア・ヴォイシズブリテン・シンフォニアジェイミー・フィリップス(指揮)録音 ライヴ:2022年11月11日、サフロン・ホール(エセックス、イギリス)
2024年05月22日
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壺阪健登というジャズ・ピアニストのデビュー・アルバムを聴く。慶大卒業後にバークリー音楽院を首席で卒業、コロナ禍のために日本に帰国後、小曽根真が主宰する若手音楽家の育成プロジェクト「From Ozone till Dawn」に籍を置くという経歴だ。このデビューアルバムは小曽根のプロデュースでユニバーサルからのリリース。なので、いつものpresto musicからダウンロードした。一聴カプースチンを思わせるような作品とサウンドが聞こえてくる。また、プーランクやサティのフランス印象派の音楽のテイストも感じられる。全曲壺阪のオリジナルで、平易でメロディックな曲が多い。前半やたらと強打する場面が多く、そこまでガンガン弾かなくてもと思ってしまう。途中のバラード「Ballad in A-Flat Major」から彼の良さが発揮されている。「暮らす喜び」はフランス風のコミカルなテイストを持つ曲。子供がいたずらでピアノを弾いているような面白さがある。録音は重くダークなサウンド。悪くはないがオフマイクで、ジャズの録音というよりはクラシックに近い音作りだろう。また、エッジが丸く、壺阪の繊細な音楽には合っていないように感じる。録音は所沢市民文化センターのマーキーホールというところ。大ホールは行ったことがあるが、中ホールは行ったことがない。写真を見ると、内部が円筒型で座席がぐるりとステージを取り囲んでいるという、日本では珍しい構造だろう。ということで、デビューアルバムとしての水準は高いと思うが、クラシックに片足を突っ込んだような状態で、ジャズとしてはいまいち。いずれにせよ、才能があることは確かなので、今後どのように成長していくのか楽しみなピアニストだ。壺阪健登:When I Sing(Decca 6533752)24bit 96kH z Flac1. When I Sing2. With Time3. こどもの樹4. Departure5. Ballad in A-Flat Major6. 暮らす喜び7. Prelude No. 1 in E Major8. Kirari9. さいなら Adios壷阪健登(p)録音 2024年1月24日、25日 所沢市民文化センター ミューズ マーキーホール
2024年05月20日
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フランスの作曲家フローラン・シュミットの黙劇「サロメの悲劇」付随音楽をルティノグル指揮フランクフルト放送交響楽団の演奏で聴く。フランス人指揮者が録音することが多いと思うが、ドイツの楽団にアルメニア人の指揮者というのも変わった組み合わせだ。フローラン・シュミットといえば吹奏楽業界では「ディオニソスの祭り」で有名だが、クラシック界ではあまり知られていないと思う。ただ、この曲何故か吹奏楽用に森田一浩が編曲したセレクションがあり、結構演奏されているようだ。まあ、日本の吹奏楽業界に特有の現象だろが、吹奏楽に編曲されて、原曲も広まることは悪いことではない。筆者も「サロメの悲劇」の名前は知っていたが、曲を聴いたのはこれが初めて。因みにストラヴィンスキーに献呈されているそうだ。サロメと聞くとR・シュトラウスのオペラを思い出すが、あちらがオスカー・ワイルドの戯曲を基にしているのたいし、同年にパリ初演が行われたリヒャルト・シュトラウスの楽劇『サロメ』はオスカー・ワイルドの戯曲に基づいているが、シュミットの作品はロベール・デュミエールの詩に基づく2幕7場の黙劇。『新約聖書』の「サロメ」や『旧約聖書』の「ソドムとゴモラ」のエピソードが取り混ぜられ、神の怒りによる天変地異で幕を閉じるというもの。(wiki)R・シュトラウスのオペラに比べると規模が小さく、こじんまりまとまっている感じで、オリエンタルムードこそ感じられるものの凄惨さは感じられないところがフランス音楽らしい。アラン・アルティノグル(1975-)の名前は知らなかったが、コンサートやオペラで世界的に高い評価を得ているアルメニア系フランス人とのこと。「サロメの悲劇」は1907年のオリジナル版を使っている。編成はFl&Picc、Cl、Ob、Eh、Fg、Tp、2Hr、2Tbと打楽器3名、弦五部とハープというもの。弦のみ30人以上に増員しているそうだ。ジュリアン・マスモンデ指揮アンサンブル・レザパッシュ が同じ版を使っているが、彼らは22名で音はかなり細身だ。ただ、小回りが利いている。それに対しアルティノグルの演奏は恰幅こそいいものの、少し鈍重に感じてしまう。また、殺伐とした雰囲気はマスモンデ盤のほうがよく出ている。曲はフランスの香りがする音楽で、メロディックで親しみやすいが、ちんまりとまとまっていて、最後もあっさり終ってしまうのが物足りない。また、例えば第11曲の「Tres Lent」後半の急速調の上下降する細かいフレーズなどに「ディオニソスの祭り」を感じさせる。第12曲「AIeaの歌」ではソプラノが加わっている。遠くから聞こえてくるような感じで、気になったので、マスモンデ盤もチェックしたが同じような感じだった。おそらく遠くから聞こえるように指定されているのかもしれない。フランクフルト放送交響楽団は上手いが、もう少し軽くても良かった。最後にチェロをフィーチャーした「エレジー」という曲が入っている。原曲はチェロとピアノのために書かれているが2011年に作曲者自身がチェロと管弦楽に編曲している。哀しみを湛えたチェロが美しく、バックも濃厚で色彩豊か。後半の劇的な盛り上がり方も半端でない。フィリップ・シュテムラーはヤルヴィのフランツ・シュミットの交響曲全集でもフィーチャーされていた。フランクフルトの首席だろうか、朗々としたサウンドで好演。アルティノグル フローラン・シュミット:劇付随音楽「サロメの悲劇」(Alpha ALPHA941)24bit 48kHz Flacフローラン・シュミット(1870-1958):1.劇付随音楽『サロメの悲劇』 Op. 50(1907年オリジナル版)23. 悲歌 Op. 24(チェロと管弦楽版)アンバー・ブライド(s track19)フィリップ・シュテムラー(vc track23)フランクフルト放送交響楽団アラン・アルティノグル(指揮)録音:2021年1月22(サロメの悲劇)、2022年6月23フランクフルト放送ゼンデザール
2024年05月18日
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オーストラリアのジャズ・ヴォーカリストであるキンバ・グリフィスの近作を聴く。今回はプライベートでもパートナーであるライアン・グリフィスとのデュオ。彼らの4枚目のスタジオアルバムだそうだ。ミュージカルなどの古いスタンダードを集めたアルバムで、これが実に素晴らしいでき。深夜にブランデーでもなめながら聴くのに最適な音楽だろう。インティメイトな雰囲気の温かみのある音楽が何とも心地よい。今回はキンバの外連味のないヴォーカルも素晴らしいが、ライアンのギターに惹かれた。殆どがスローテンポの曲で正統的なアプローチだが、音楽の説得力が半端ない。彼らの実力が相当のものであることが分かる。「Body And Soul」や「Early Autumn」などのヴォーカリーズも実に美しい。特に「Early Autumn」はヴォーカル版では、かなり上位にくる演奏だろう。少しテンポの速い「What'll I Do」はギターにエコーを効かせてムード満点だ。最後のアップテンポの「What A Little Moonlight Can Do」(月光のいたずら)ではトラペットの物まねまで飛び出して、軽快に終わる。ロケーションはオーストラリアのヴィクトリア州にあるパーク・オーチャード・スタジオ。小ぶりながらアットホームな雰囲気のスタジオで、見るからに暖かい音が取れそうなスタジオだ。今回はほぼ全曲がブースやオーバーダブを使わずにライブで録音されたとのこと。実際の音も歪みのない暖かいサウンドで、今回のアルバムに相応しい雰囲気を醸し出している。特にギターがいい音で録れているのが嬉しい。ということで、ジャズ・ヴォーカル好きの方々には是非聞いて頂きたい逸品として絶対のお勧め!Kimba Griffith & Ryan Griffith:Turn Up The Quiet 24bit 48kHz Flac1.Tommy Wolf;Fran Landesman:Spring Can Really Hang You Up the Most2.Paul Williams:Love Dance3.Richard Rodgers;Oscar Hammerstein II:It Might As Well Be Spring4.Rafael Hernández:Silencio5.Irving Berlin:Let's Face The Music And Dance6.Johnny Green;Edward Heyman;Robert Sour;Frank Eyton:Body And Soul7.Irving Berlin:What'll I Do8.Guy Wood;Robert Mellin. :My One And Only Love9.Sammy Fain;Lew Brown:That Old Feeling10.Ralph Burns;Woody Herman;Johnny Mercer:Early Autumn11.Harry Warren;Mack Gordon:This Is Always12.Harry M. Woods:What A Little Moonlight Can DoKimba Griffith(vo)Ryan Griffith(g)Recorded at Park Orchards Studio,Melbourne, Australia
2024年05月16日
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ラトル=LSOのコールス版によるブルックナー・シリーズの第3弾交響曲第7番を聴く。先に第4番を聴いていたが、配列が独特で、違う版の楽章やら、断片など一切合切集めていたので、聴くのが煩雑で、あまり集中して聴けていなかった。今回はそういうことがないため、余計なことを考えなくて済む。ブックレットによると、コールス版は、ブルックナー自身が演奏で何度も耳にした「初版」を中心資料として、ブルックナーの手稿譜などに基づいて構成されているとのこと。きびきびしたテンポと透明なサウンド、厚ぼったくならないハーモニーなど、現在の筆者の好みにあった演奏だ。あざとい表現もなく、余計なことを考えなくて済む。普通だと、ここぞというところで、ためを作ったりするものだが、それもあまり感じられない。なので、素っ気ない演奏かというと、そういう感じでもない。流れが渋滞するところもないので、精神衛生上良い。艶やかな弦、濁りのない透明なサウンドの金管などいうところがない。コールス版を使ったことで普通のハースやノヴァーク版とどう違うかは分からないが、おやと思うところは少しある。第2楽章のテュッティになる前の管の進行が少しぎこちなくなるところが一番大きいだろうか。第2楽章のクライマックスではティンパニとシンバルは使われているがトライアングルが使われているかは分からなかった。ロンドン交響楽団は特に突出するパートも見当たらず、良く揃っている。第2楽章のコーダのワーグナー・チューバとホルンのハーモニーも素晴らしい。ということで、強烈に主張する演奏ではないかもしれないが、水準は高く、版の違いがあるにしても、楽しめる演奏であることは間違いない。Bruckner: Symphony No. 7 in E Major Version 1881-83; Cohrs A07(LSO Live LSO0887)24bit 192kHz Flac1 I. Allegro moderato2 II. Adagio. Sehr feierlich und langsam - Moderato3 III. Scherzo. Sehr schnell - Trio. Etwas langsamer - Scherzo da capo4 IV. Finale. Bewegt; doch nicht schnell London Symphony OrchestrSir Simon RattleRecorded live in DSD 256fs on 18 September & 1 December 2022 in the Barbican Hall, London
2024年05月14日
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イタリア生まれでイギリスで活躍しているジェルマナ・ステラ・ラ・ソルサという長ったらしい名前の歌手のリーダーアルバム「Primary Colours」(原色)を聴く。ラ・ソルサは2021年に33 Jazz Recordsからデビュー・アルバム『Vapour』(2021)をリリースしている。バックはハモンドオルガンのサム・リーク、ドラムのジェイ・デイヴィス、ギターのトム・オーレンドルフで、ギター以外は前回の録音のメンバー。3者の実力が揃っていて、トリオとしての水準は高いと聴いた。全曲彼女の作曲で「色」に因んだ曲が集められているが、あまりメロディックではなく、それほど優れているとは思わなかった。ヴォーカルは透明な声とスキャットを駆使しているが、あまりジャズを感じさせない。それに絶叫型で、繰り返し聴いていると鼻につく。オルガントリオでは、ジェイ・デイヴィスのドラムスの活きのいいドラミングが目立っていた。ハモンドオルガンは通常だとアーシーなテイストが強いものだが、サム・リークはその匂いは少なく、ニュートラルなテイスト。ギターのトム・オーレンドルフはバッキングではあまり表に出てこないが、ソロはフレージングが滑らかで立派。特に「Primary Colours」での長いソロは清新な気分が感じられた。ゲストにオーストラリアのハープ奏者、テラ・ミントンが「Blue」と「White」で加わる。「Blue」は柔らかなタッチのボサノバで、ハモンドオルガンはお休み。ハープが入ることで雰囲気がガラッと変わるのが面白い。「White」はハープとのデュオで、2分弱のスキャットが繰り広げられる。のどかな気分が感じられ悪くない。最後の「Refraction」はドラムスとスキャットのデュオで、お遊びのトラックのため、あまり面白くない。演奏時間が30分余りで、いまいちの出来だったのが残念。youtubeGermana Stella La Sorsa:Primary Colours(33 Jazz 33JAZZ299)16bit 44.1kHz Flac1.Black2.Yellow3.Blue4.Red5.White6.Primary Colours7.RefractionGermana Stella La Sorsa(vo)Sam Leak(Hammond Organ)Tom Ollendorf(g)Jay Davis(ds)Tara Minton (harp tracks 3 and 5)Recorded in May 2023
2024年05月12日
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以前から気になっていたラファエル・ピションのシューベルトにまつわるコンセプトアルバム「私の夢」をeclassicalから入手。シューベルトの心の闇を知ることが出来る好企画だろう。心がざわざわするような劇的な表現満載で、大変刺激的なアルバムだ。それが、これでもかと続くので、少しやりすぎ感はある。プログラムの順番をもう少し考えてもらえば少しは、平静に聴けるかもしれない。ウエーバーのオペラからのアリアが2曲演奏されている。実に切れ味鋭い演奏で、この二つのオペラは録音も少なく、是非全曲の録音をお願いしたいほどだ。ピグマリオンのざらざらとしたサウンドがアルバムコンセプトに相応しい。合唱は生き生きして、いつもながらのすばらしさが味わえる。「アルフォンソとエストレッラ」からの「狩りへ」の鮮烈な響き、「ラザロ」からの「やさしく静かに('Sanft und still')」も柔らかなハーモニーどちらも素晴らしい。シューマンも2曲演奏されている。女声のための6つのロマンス第1 集より「人魚」は無伴奏女声合唱のための曲。3分ほどだが清澄な響きが美しい。「ファウストからの情景」第3部のアリア「ここは見晴らしがよく」はドゥグーの格調高いバリトン独唱とぴたりと寄り添うピグマリオンのバックが静かな感動を呼ぶ。独唱陣も充実している。ステファヌ・ドゥグーの深みのある声、ユディット・ファの清純な歌唱もいい。「アヴェ・マリア」はハープのみの伴奏で、ザビーヌ・ドゥヴィエルの清純な声とベストマッチ。ただ、普通の演奏のように流れるようなフレーズでないところは、何か理由があるのだろう。未完成は速めのテンポだが、弦の荒々しい刻みなど、アルバムコンセプトに相応しいシューベルトの心の深淵をうかがわせる、彫の深い劇的な演奏だ。音楽評論家の故宇野巧芳流に言えば「切れば血の出るような」演奏が聴ける。あまり話題になっていないかもしれないが、これは最近の演奏の中でも出色の演奏だろう。最後の「神はわたしの羊飼い」は合唱とハープの演奏。天井から降り注ぐような合唱が実に清々しい。生々しい録音も、アルバム・コンセプトに相応しい。タイトルの「Mein Traum(私の夢)」とは、フランツ・シューベルトの兄フェルディナント・シューベルト(1794-1859)がフランツが1822年7月3日に書いた文章につけたタイトルで、その全文がブックレットに掲載されている。それによると、フランツは父と仲が悪く、若くして家を出たが、、母親の死を契機として再会し、和解したということが書かれている。シューベルトの生涯は全く知らなかったので、複雑な家庭の事情が彼の音楽にも反映されていることを知り興味深かった。ということで、知らない曲が多いがどれも興味深く、考え抜かれた選曲と優れた演奏で、楽しく聴くことが出来た。ラファエル・ピション/私の夢(Harmonia Mundi HMM905345)24bit 96kHz Flac1. シューベルト (1797-1828):レチタティーヴォとアリア「私はどこに・・・力ある者よ、塵の中に ('Wo bin ich… O konnt' ich')」(「ラザロ」D 689 第2幕より)2. 合唱「狩りへ'Zur jagd'」(「アルフォンソとエストレッラ」D 732 第1幕より)3. レチタティーヴォ&アリア「'O sing mir Vater… Der Jager'」(「アルフォンソとエストレッラ」D 732 第2 幕より)4. シューベルト/リスト編曲によるオーケストラ版:影法師(「白鳥の歌」D 957より)5. シューベルト:交響曲第7番 ロ短調「 未完成」D 759より第1楽章Allegro moderato6. カール・マリア・フォン・ヴェーバー (1786-1826):「おお!海の上に浮かぶのはなんと心地よいことか'O wie wogt essich schon auf der Flut'」(オベロン、第2 幕より)7. シューベルト:交響曲第7 番 ロ短調 「未完成」D759より第2 楽章Andante con moto8. R.シューマン(1810-1856):人魚Meerfey op.69-5(女声のための6 つのロマンス第1 集より)9. ヴェーバー:レチタティーヴォ&アリア"どこに隠れよう・・・そして、私は復讐の力に身を捧げる"(抜粋) (歌劇『オイリアンテ』より)10. シューベルト:序奏~アルフォンソとエストレッラ D732 第3 幕より11. シューベルト/ブラームス編:タルタロスの群れ D58312. シューベルト:アヴェ・マリア(エレンの歌 第3 番) D839, op.52, no.613. シューベルト:合唱「やさしく静かに('Sanft und still')」~「ラザロ」D 689 第2幕14. R.シューマン:アリア"ここは見晴らしがよく('Hier ist die Aussicht frei')" 「ゲーテのファウストからの情景」WoO 3より第3部第5場15. シューベルト:「神はわたしの羊飼い」D 706ステファヌ・ドゥグー(Br track 1, 3, 4, 9, 11, 14)ユディト・ファ(s track3, 6)ザビーヌ・ドゥヴィエル(s track 12)ラファエル・ピション(指揮)ピグマリオン(合唱、管弦楽)録音 2020年12月,フィルハーモニー・ド・パリ
2024年05月10日
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ローレンス・フィールズ(1983-)というセントルイス生まれのピアニストのデビュー・アルバムを聴く。最初の「Parachute」のイントロのカデンツァからしてキレキレで、若い頃のチック・コリアを思い出させるような、才能のひらめきを感じさせるピアニストだ。40歳過ぎでからのリーダーアルバムは、遅すぎるように思うが、ジョー・ロヴァーノ、クリス・ポッターなど有名ミュージシャンとの共演も数多くあるようだ。透明で肉厚のサウンドで、打鍵は強力だ。個人的には音符の音数が少し多すぎるように感じられる。ベースは東京都出身でシアトル育ちの中村恭士、ドラムスはコーリー・フォンヴィルという布陣で、彼らのプレイも強力で、トリオとしてのスケールが大きく、水準はかなり高い。フィールズとフォンヴィルはクリスチャン・スコットの「AXIOM」に参加していた。最初の「Parachute」や次の「New Season Blues」からリズムが際立ち、一貫して力強く進む曲が多い。ただ、それが続くとやや単調に感じてしまうのが惜しい。華麗なカデンツァから始まる「Moving On」はミディアムテンポのクールなテーマがいい。途中からテンポを速め、ピアノのアドリブがもたらす熱狂は実に見事だ。「L.B.F.」のようなゆったりとした曲も透明な叙情を感じさせ悪くない。タイトルチューンの「To The Surface」はドラムが暴れまくり、負けじとピアノがダイナミックなソロを展開する力感溢れる演奏。テンポの速い「Yasorey」は重戦車が驀進しているような趣の重量級のサウンドが聞かれる。残念ながら、この曲もフェイドアウトしてしまうところが惜しい。なお、タイトルの「Yasorey」は「Yasushi」と「Corey」を半分ずつ繋げた造語。スタンダードの「I Fall In Love Too Easily」は透明感があり悪くないが、ブラシの音が少しうるさい。2分に満たない「Sketches」はフェイドイン・フェイドアウトの曲で、メロディーらしきものは聞こえない。無駄なトラックのような気がした。最後の「The Lookout 」はリズミックで軽妙な表情を見せる。録音はジャズに相応しく前面に出るものだが、少し騒々しく、聴き疲れしてしまう。ということで、力強い打鍵と創造的な閃きを持つピアニストを擁する重量級のトリオとして、注目していきたい。Lawrence Fields:To The Surface(Rhythmnflow Records 8001)24bit96kHz FlacLawrence Fields:1.Parachute2.New Season Blues3.Moving On4.L.B.F.5.To the Surface 6.Yasorey7.Vision8.Jule Styne:I Fall In Love Too Easily9.Sketches10.The Lookout Lawrence Fields(p)Yasushi Nakamura(b)Corey Fonville(ds)
2024年05月08日
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2022年のヴァン・クライバーンコンクールで史上最年少の18歳で優勝した韓国のイム・ユンチャンのデッカ第一弾のショパンの練習曲集を聴く。難曲を難曲と感じさせない技巧の見事さと、流れのスムーズさ、抒情的な曲での美しいカンタービレなど、実に見事な仕上がり。難しい曲をそうと感じさせないで弾くことは、大変な技巧を持っているからだろうと思う。今までのこの曲でのスアンダードと言えば、先ごろお亡くなりになったポリーニ盤だろうが、当時は難しい曲を鮮やかな技巧で弾いて、聴き手を唖然とさせていたと思う。当時のレビューも演奏の完璧性に焦点が当たっていたと思う。今回の演奏を聴くと、そのような段階を超えた演奏のように感じられる。今思えばポリーニ盤に感じられた剛直性がイム・ユンチャンには微塵も感じられない。フレーズの端々に感じられる神経の行き届いた丁寧な処理も清潔感をもたらす。個人的には煌びやかな技巧の曲もさることながら、抒情的な表現にこそ彼の特質があるように思う。また、技巧的な曲であっても、ダイナミックスの繊細な変化を通じて、しばしば単調になりがちな楽曲にも表現の豊かさが感じられることが多い。まあ、それだけ演奏に余裕があるということなのだろう。ニューヨーカー誌が言うように『驚異的な技巧と解釈の深さを兼ね備えた、世代を超えた一流のピアニストになること』を期待したい。話は変わるが、以前聴いたベアトリーチェ・ラナのベートーヴェンの演奏に感じた革新的な感覚を、今回の表面的には決して派手ではない演奏で再び感じた。ピアノの世界が新しい時代に突入していると実感する今日この頃だ。Yunchan Lim Chopin: Études, Opp. 10 & 25(DECCA 4870122)24bit 96kHz FlacChopin: Études (12), Op. 10Chopin: Études (12), Op. 25Yunchan Lim (p)Recorded 2023-12-20,Henry Wood Hall, London
2024年05月06日
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ピアノのミッシェル・カミロとギターのトマティートのデュオの新作が出た。ディストリビューターによると『スペイン・フォーエヴァー』(2016) から8年ぶりのようだ。筆者は彼らのデュオ・アルバムを昔から愛好していたので、忘れかけていた友人に思いもかけずに再開したような気分になった。両者とも相変わらずのテクニシャンぶりを発揮している。今回もラテンの名曲とジャズメンのオリジナルが主だが、最後に「アランフェス協奏曲」の全曲が演奏されているのが嬉しい。その「アランフェス協奏曲」だが、多分全曲を省略なしで演奏している。テンポはやや速めで、クラシックらしく格調高く演奏している。原曲の魅力を十分に伝えた編曲も優れているが、重量感も原曲では聴かれないものだった。控えめであるはアドリブも入っていている。トマティートのギター演奏は、メリハリが効いており、表情豊かで、クラシックのギタリストには見られない独自の魅力がある。第2楽章中間部での力強いカデンツァも見事だ。ポピュラー肌のミュージシャンがクラシックを演奏するような違和感がなく、楽しめる。ただ、音が切り詰められていて、他の曲のようなリラックスした気分はあまり感じられない。最初の名曲「アルフォンシーナと海」から聴き手をぐっと惹きつける。チューチョー・バルデスの「Mambo Influenciado」は切れ味抜群、アップテンポでぐいぐいと迫ってくる。メセニーの「Antonia」は原曲とほぼ同じテンポで端正に演奏されるが、中間部でギターのグリッサンド一閃、ギターとピアノが凄まじいアドリブを展開する。カミロの「Remembrance」はラテンの抒情が心に染み入る。マイルス・デイヴィスの名曲「Nardis」も彼らが演奏すると、ラテンの香り高い名品になってしまうところが面白い。カマロン・デ・ラ・イスラの「カマロン・デ・ラ・イスラ」は初めて聞いたがアップ・テンポの情熱的な曲で楽しめる。フラメンコ史上最高最高の歌手と言われるエル・カマロン・デ・ラ・イスラの「La Leyenda Del Tiempo」はアップ・テンポの熱狂的な演奏。原曲の熱とは比べられないのは、デュオの限界だろうか。アドリブの応酬が始まると、フェイドアウトしてしまうのが何とも悔しい。因みにトマティートはカマロンのバンドに長期間参加していて、『La Leyenda Del Tiempo』は彼らの最初のレコードとのこと。ということで、新鮮味こそないとはいえ、熟達したテクニックと情感あふれる表情で、大満足だった。特にトマティートのギターの魅力にすっかり引き込まれてしまった。彼の前には、カミロはちょっと分が悪かったようだ。Michel Camilo &Tomatito:Spain Forever Again(Decca 5878680)24bi8t 96kHz Flac1.Ariel Ramirez:Alfonsina y el Mar2.Chucho Valdés:Mambo Influenciado3.Pat Metheny:Antonia4.Michel Camilo:Remembrance5.Miles Davis:Nardis6.Ricardo Pachón Capitán, Federico García Lorca:La Leyenda Del Tiempo7.Joaquin Rodrigo:Aranjuez: 1. Allegro Con Spirito8.Joaquin Rodrigo:Aranjuez: 2. Adagio9.Joaquin Rodrigo:Aranjuez: 3. Allegro GentileMichel Camilo (piano)Tomatito (guitar)
2024年05月04日
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ロシアのピアニストのニコライ・ルガンスキーがリリースしたワーグナーの楽劇のトランスクリプション集を聴く。Spotifyで少し聴いて良かったので、丁度eclassicalから10ドルちょっとで配信されたので、速攻でダウンロードしてしまった。曲目は「ニーベルンクの指輪」からの名場面のハイライトと「パルシファル」の第一幕の場面転換の音楽、「トリスタンとイゾルデ」の「イゾルデの愛の死」というラインアップ。こういう企画はゲテモノ扱いされるものだ。おまけにワーグナーの複雑極まりないオペラのトランスクリプションなので、原曲に比べると、聴き劣りすること甚だしいと予測されるものだ。実際に聞いてみると、さすがにミニチュア感は感じられるものの、立派な音楽で、ゲテモノとは全く感じられない。何よりもルガンスキーの音楽に対する真摯な取り組みが感じられる。ブックレットには曲の解説と共に、ルガンスキー自身のワーグナー体験について書かれている。それによると、『18歳か19歳の時に海外に行った時に、僅かな所持金の中からセル・クリーブランド管の「ニーベルンクの指輪」のハイライトを当時出回り始めていたCDで購入したところからワーグナー体験が始まり、以来ワーグナーの魅力にどっぷりと嵌ってしまった。』とのこと。『ワーグナーのような創造力とあふれるエネルギーを持った他の芸術家を、歴史上私は知りません』と言っているほどで、ワーグナーに対する傾倒ぶりが半端でないのだろう。「ニーベルンクの指輪」からの最初の2曲はルイ・ブラッサン(1840 - 1884)というベルギー人のピアニストによる編曲で、「パルシファル」は指揮者のフェリックス・モットルの編曲による第1幕の場面転換の音楽とゾルタン・コチシュによる終幕の音楽をつなげたもの。「神々の黄昏」からの音楽は、すべてルガンスキーの編曲で、これが最も聴きごたえがあった。最初に聴いたセルのアルバムの影響があるのか、「神々の黄昏」の編曲はセルの演奏を彷彿とさせる音楽だ。「ラインの旅」でのルバートなどもオペラを彷彿とさせる演奏だ。「ジークフリートの葬送行進曲」は、ジークフリートの死という悲しみを、これほど切々と訴えかける演奏は、原曲でも出会ったことはない。テンポが遅く、スケールも巨大で重量感にも不足しない。エンディングも実に感動的だ。「パルシファル」は美しく宗教的な気分は出ているが、少し硬く、ダイナミックスが不足しているので、オペラを聴いている気分にはならない。どうも編曲に起因すると思われる。最後にリスト編曲による「イゾルデの愛の死」が演奏される。ルガンスキー:ピアノによるワーグナー名場面集(Harmonia Mundi HMM902393)24bit96kHz Flac1.『ラインの黄金』~ヴァルハラへの神々の入場(ブラッサン、ルガンスキー編)2.『ワルキューレ』~魔の炎の音楽(ブラッサン編)3.『神々の黄昏』~ブリュンヒルデとジークフリートの愛の二重唱(ルガンスキー編)4.『神々の黄昏』~ジークフリートのラインの旅(ルガンスキー編)5.『神々の黄昏』~ジークフリートの葬送行進曲(ルガンスキー編)6.『神々の黄昏』~ブリュンヒルデの告別の歌(ルガンスキー編)7. 『パルジファル』~場面転換の音楽と終幕(モットル、ルガンスキー、コチシュ編)8. 『トリスタンとイゾルデ』~イゾルデの愛の死(リスト編)ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)録音 2023年9月,パドヴァ、慈愛同信会
2024年05月02日
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アイスランド出身のソングライター、レイヴェイ(1999-)のアルバムを聞く。本名はLaufey Lin Jónsdóttirでアイスランド人と中国人のハーフだそうだ。これは彼女のデビュー第2作のグラミー賞アルバム「Bewitched」に4曲の新曲を追加したデラックスバージョン。一応ジャズ・ポップスというジャンルに分けられているが、典型的なジャズ・ヴォーカルの様なフェイクが聞かれるのはスタンダードのみで、総じてジャズという感じではない。殆どが彼女のオリジナルで、ノスタルジックな衣装をまとった古いポピュラー・ソング集という感じだ。all musicのコメントでは『やや時代錯誤ながらも洗練されたボーカルスタイルで、第二次世界大戦を彷彿とさせるエレガントでわずかに型破りなアダルトポップ』と評されている。8曲目の「Nocturn」のみピアノ・ソロ。多くの曲で共作しているスペンサー・スチュワートは作曲家であり、このアルバムのプロデューサーだそうだ。最初「Dreamer」聞いたときは、そのノスタルジックなサウンドに引き込まれたのだが、強烈な個性があるわけではなく、個人的には映画「Shape Of Water」の作曲家アレクサンドル・デスプラの音楽に近いような感じがした。甘ったるい曲と、時として生の感情が出るヴォーカルは、聴き手には過剰と感じることもある。「Letter To My 13 Year Old Self」や「Bewitched」は傷心の心をそっと癒してくれる、癒しの音楽だろう。特にオーケストラ入りの「Bewitched」はなかなかゴージャスな雰囲気で、映画音楽でも聴いているような気分になる。アルバム全体が変化に乏しいので、通しで聴くのではなく、少しずつ聴くのがいいようだ。ギターとの相性がいいようで、「Second Best」は心温まる歌だった。「Lovesick」は前向きな恋心を歌ったフォークソングで、珍しく爽やかだ。また、ボサノヴァの「From The Start」はリズミックでまずまずだが、肝心のリズムが重い。スタンダードも何曲か歌っている。「Misty」は歌自体は悪くないが、唐突感がある。「It Could Happen To You」はリズミックで、スキャットもあり普通のジャズヴォーカルとして楽しめた。ピアノのぎしぎしというアクションの音が聞こえるトラックが何曲かあり、少し気になる。ということで、彼女の美しいメロディーを作りだす才能は大したものだが、古臭く、筆者には物足りない。録音は透明度が低く、ヴォーカルが歪みっぽく肥大したサウンドで、聴き手を圧迫する。ハイレゾではなくラジオから流れてくるようなレンジの狭い音で聴くと、しっくりくるような気がする。Laufey Bewitched :The Goddess Edition(AWAL LAULP003CDX)24bit 48kHz Flac1.Laufey & Spencer Stewart:Dreamer2.Laufey & Spencer Stewart:Second Best3.Laufey & Spencer Stewart:Haunted4.Laufey, Freddy Wexler & Max Wolfgang:Must Be Love5.Laufey & Spencer Stewart:While You Were Sleeping6.Laufey & Spencer Stewart:Lovesick7.Laufey:California and Me (feat. Philharmonia Orchestra)8.Laufey:Nocturne (Interlude)9.Laufey & Dan Wilson:Promise10.Laufey & Spencer Stewart:From The Start11.Erroll Garner & Johnny Burke:Misty12.Laufey & Spencer Stewart:Serendipity13.Laufey:Letter To My 13 Year Old Self14.Laufey & Spencer Stewart:Bewitched15.Laufey & Spencer Stewart:Bored16.Laufey, Dan Wilson & Spencer Stewart:Trouble17.Jimmy Van Heusen Johnny Burke:It Could Happen To You18.Laufey:Goddess
2024年04月30日
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昭和ウインド・シンフォニーの新譜が出ていることを知り、昭和音大のウエッブサイトから購入。今回は近作を纏めて4枚購入した。ここの通販は購入枚数が多くなると割引が適用される。4枚の場合は3割引きだ。おまけに、そのうち2枚は1000円で、全部で5000円弱。送料が1000円ほどかかったが、トータルでも6000円、一枚あたり1500円ほどと、お得だ。その中から最新版の「原色のパッサカリア」を取り上げてみたい。アンコールを除く全7曲のうち6曲が日本初演で、期待に応えてくれる選曲だ。このバンドのメンバーは殆どが学生だけだが、技巧的に安定していて、安心して聴くことが出来る。今回は4年ぶりにコーポロンが指揮したコンサートで、コーポロンが6曲、残りの3曲を福本信太郎が指揮している。1曲目は最近耳にする機会が多くなりつつある、フランスの作曲家リリ・ブーランジェ(1893 - 1918)の「春の朝に」。原曲はヴァイオリン・チェロ、ピアノのための曲(1918)で2009年にフランソワ・F.ブランシァールにより吹奏楽に編曲された。ポール・フォーシェの交響曲(1926)のようなウットリするようなフレンチ・サウンドが堪らない。ポール・ドゥーリィ(1983-)の「エリトラ~堅き前翅(まえばね)~」はテンポの速いスピーディな展開で楽しませてくれる。後藤洋氏の解説によると、アメリか海軍バンドの委嘱作品で、戦闘機のテクノロジーからインスピレーションを得た。その後、蛍、テントウムシ、カブトムシらの昆虫の前羽が固くなったものである「前翅(ぜんし)」または鞘翔(さやばね)」にそのメカニズムを見出したとのこと。曲はその虫たちの高速で羽を動かしながら飛ぶさまを表している。中間部では樹の根にもぐりこんだカブトムシが再び飛び立つ前に鳴く様がイメージされている。大変よくできた曲で、終わった後でブラーボーが出ていることも頷ける。ヴェトナム系アメリカ人のヴィエット・クオンの「モクシィ ~不屈の精神~」もなかなか面白い。ブックレットによるとクオンの吹奏楽作品はオーケストラの作品を管・打のアンサンブルに編曲したものが多く、この「モクシィ」もその一つだという。上述のように鍵盤楽器を含むパーカッションが多用されている。最初から高速テンポが持続し、パーカッションが鳴り響くところに管のグリッサンドが繰り返し出てくる。重音や、微分音も含まれていて、東洋的なテイストが感じられる何とも不思議なサウンドが聞かれる。後半には、指を変えずに息の圧力で変化する倍音が連続するフルートが経験したことのないサウンドを聞かせてくれる。ヴィオラ奏者兼作曲家のジェシカ・メイヤーの「プレス オン」はパーカッションの活躍するエネルギッシュな作品だが、暴力的な難解な作品で、筆者の好みではない。イントロのティンパニの強打に続く、「ジー」というハムノイズのような音を伴ったサウンドからして不快だ。委嘱元のアメリカ海兵隊バンドの録音もあるようなので聴いて理解を深めたい。メキシコ系アメリカ人のイヴァン・トレヴィーノ(1983-)の「煌めきに駆ける」は二人の打楽器奏者をソリストとする協奏曲。パワフルな曲だが単調で、色彩にも乏しい。録音の抜けが悪いのも印象が良くない原因の一つかもしれない。アルバム・タイトルのドアティ(1954-)の「原色のパッサカリア」は、原曲が「 FIFTEEN-SYMPHONIC FANTASY ON THE ART OF ANDY WARHOL for Orchestra」という長ったらしい名前のオーケストラ曲の第5楽章。ヴァイブ?で提示される聖歌風の主題と30程の変奏からなる。ダイナミックでスケールも程々大きく、ドハティ特有の毒もしっかりと含まれている。拍手の中でコーポランと思しき声が聞こえる。アンコールは2曲で、フリーラーの「トワリング・エイムレスリー」が冗談音楽っぽいコミカルな曲(エンディングの不協和音が効いている!)で気が利いている。ライブ録音だがノイズの聞こえない優れた録音で、ライブのハンデは感じられない。もう少し抜けが良ければいうことがない。ということで、面白い曲が多く、大いに楽しませていただいた。それにしても、このような知られていない曲を探してくるスタッフの方々のご苦労には、頭が下がる。昭和ウインド・シンフォニー:原色のパッサカリア(Brain Music OSBR-40002)16bit 44.1kHz1.L.ブーランジェ(arr.F.ブランシァール):春の朝に2.P.ドゥーリィ:エリトラ~堅き前翅(まえばね)~ 〈日本初演)3.F.ティケリ:月を超えて 〈日本初演〉4.V.クオン(arr.M.シダトール):モクシィ ~不屈の精神~ 〈日本初演〉5.J.メイヤー:プレス オン 〈日本初演〉6.I.トレヴィーノ:煌めきに駆ける 〈日本初演〉 7.M.ドアティ :原色のパッサカリア 〈日本初演〉~アンコール~8.J.フリーラー:トワリング・エイムレスリー/9.T.J.ウェラー:メトロ・ダンス昭和音楽大学吹奏楽団 昭和ウインド・シンフォニー指揮:ユージーン M.コーポロン(track 1-3,6-8)、福本信太郎(track 4,5,9)収録:2023年6月1日-3日,昭和音楽大学[テオトロ・ジーリオ・ショウワ]
2024年04月28日
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少し前に本屋で音楽雑誌を立ち読みしていた時に、オスカー・ピーターソン(1925-2007)のドキュメンタリー映画が公開されていることを知った。既にほとんどの映画館での公開は終わっていたし、地元での公開はなかった。ところがamazonのプライム・ビデオでアマゾンのプライム会員は無料で見ることが出来ることを知り、早速試聴した。この類のドキュメンタリーの例にもれず、関係者のインタビューを中心にした構成。変わっているのはバックで何組かのピアノ・トリオが演奏していることぐらいか。オスカーの演奏も含まれているが、有難いのは彼自身の肉声がたくさん含まれていたこと。オスカーがモデルにしていたのがテディ・ウイルソンとナット・コールで、ナット・コールとのピアノと歌の分業?の約束は有名な話だが、テディ・ウイルソンからはどのような影響を受けたのかは特に言及されていなかった。演奏にショックを受けたというアート・テイタムとの関係も興味深い。ハービー・ハンコックが出てきたことには驚いた。ピーターソンとはどういう関係だったのだろうか。クインシー・ジョーンズ(1933-)との関係も分からないが、クインシーはだいぶ老けてしまっていたのが残念。アンドレ・プレヴィンと対話している場面も出てきたのは嬉しかった。またビリー・ジョエルはオスカーの大ファンで、いつも「この人を聴かないとダメだ!」と言っているそうだ。ピーターソンの歌も流れていたが、ナット・コールによく似た声で大変上手い。なるほど、彼らの約束も納得がいった。4番目の妻ケリーもたびたび出て来て、彼の人となりを詳しく話してくれた。ピーターソンが亡くなる時のことも語ってくれていたのも貴重な証言だ。娘のセリーヌがオスカーが亡くなったことが信じられなかったが、愛犬のブルドックがオスカーの手や顔をなめ、最後に35kgの体重をオスカーに載せたことで、オスカーが亡くなったことをやっと納得したという裏話もリアルだ。オスカーを発見した時のエピソードをノーマン・グランツが語っているのも貴重な証言だ。カナダは黒人に対する差別は少ないが、オスカーがアメリカに渡ってからの差別の様子も描かれていた。彼の愛用したピアノがベーゼンドルファーだったことも新たな発見だった。テレビをアンプにつないで視聴したが、音はあまりよくなかった。ということで、オスカーの人となりや音楽について深く知ることが出来て、筆者にとっては有益な時間を過ごすことが出来たと思う。このドキュメンタリーを観終わってから彼の演奏が聴きたくなって、NASにあったMPS時代のハイレゾ音源を聞いた。記憶とは違って、思ったより音が良くなくて少しがっかりした。
2024年04月26日
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フィンランドのヘルシンキ出身のフランク・カールバーグの新譜を聴く。例によってbandcampからの紹介で知ったアルバム。彼は、いろいろなグループで活動を行い、ニューイングランド音楽院でも教えているそうだ。彼は長年モンクの研究を行っていて、以前も「Monk Dreams, Hallucinations And Nightmares 」(1989)を発表し、ダウンビート誌で5つ星評価を得ている。彼はモンクの大編成での演奏活動に注目し、研究していて、その成果がこの「Elegy for Thelonious」に反映されているそうだ。全曲彼の作編曲だが、かなり実験色の濃いアルバムだ。アルバムは『モンクの楽曲を再構築し、再解釈することで、モンクの音楽の普遍性と革新性を示している」とのこと。モンクの音楽がストレートに出てくるわけではない。なので、聴き手を選ぶアルバムだが、モンクの音楽を良く知っている聴き手には楽しめるアルバムだろう。18人編成で、ヴォーカル(と語り)が二人加わっているのが珍しい。クラリネット族の多用が目立ち、金管のワウワウミュートもなかなかユニーク。タイトルチューンの「Elegy for Thelonious」はピューリッツァー賞を受賞しているアメリカの詩人ユセフ・コムニャカアの詩の一節をクリスティーネ・コレアが朗読している。この言葉で検索するとヒットするのでご興味のある方は参照して頂きたい。簡単にいうとモンクが亡くなった時の詩人の、幾分やけくそ気味になった心情風景を詠ったもののようだ。モンクは1982年2月17日にアメリカのニュージャージー州で亡くなっている。当時の凍てついた灰色の風景が見えるよう気分になる。バス・クラリネットやクラリネットに先導されて曲が始まる。トロンボーンのワウワウミュートのプレイが目立ち、モンクというよりはミンガスを思い起こさせるような混沌とした音楽。モンクの「CrepuscuェWith Nellie」のメロディーが聞こえる。途中から賛美歌「Abide With Me」(「Monk's Music」収録)が流れ、その後ジェノヴェーゼのシンセによる奇怪なソロが続く。1曲目の「Spooky Rift We Pat」はスタンダードの「Tea for Two」とモンクの「Skippy」のアナグラムで、音楽もこの2曲が混然となっている。この曲でも最初にインクリスティーネ・コレアの讃美歌のようなヴォーカルが入る。テンポが上がると、下降音型のフレーズが何度も出てくるが、これがジェットコースターのような気分を味合わせてくれる。「Out of Steam」はコミカルなリズムと複雑なハーモニーのイントロに始まり、ヴォーカルのゴスペルのような短いフレーズが、何度も出てくる。このフレーズが陳腐で、おまけに奇怪なシンセの効果音が出て来て、あまり聞きたくない音楽になっているのが理解不能。アルト・サックスのソロは素晴らしいが、バックのため台無しになってしまった。ただ、狂気じみたエンディングは一聴の価値がある。「Wanting More」は1960年に短期間モンク・バンドに参加していたサックスのスティーブ・レイシーに対してモンクがアドバイスした言葉をの一節だそうだ。参考長くなるが、その部分を下に示す。『Don’t play everything (or every time); let some things go by. Some music just imagined. What you don’t play can be more important that what you do.Always leave them wanting more.』(訳)全てを演奏する(またはいつも演奏する)必要はない;何かを通り過ごしてみよう。ある音楽は単に想像されるだけのもの。演奏しないことが、演奏することよりも重要になることがある。常に彼らにもっと欲しがらせておけ。要するに、空間を音で埋めるのではなく、音と音の間を生かすことが重要だと言っている。モンクのピアノ・スタイルそのものを表しているような言葉だ。曲はタイトルから連想されるようなものではなく、ダークな雰囲気の中、トランペット・ソロが延々と続き、そこにいろいろな楽器が絡む。70年代のマイルス・バンドのような雰囲気が感じられる。後半リズムの反復が止むあたりから俄然盛り上がるが、それまでは単調。「Scallop's Scallop」はモンクのオリジナル「Galop's Galop」に因んだ曲。「Wanting More」と同じようなダークな空間にトランペット・ソロが響くフリーフォーム的で混沌とした音楽。5分過ぎからのテュッティでの上昇グリッサンドが狂気じみた凄味を感じさせる。「Wrinkle on Trinkle」は「Trinkle Tinkle」に因んだ曲だろう。無機的な変拍子のリズムが圧倒的な迫力で迫ってきて、モンクの特異性を強調しているように感じられる。最後の「Brake Tune」はモンクの「Brake's Sake」を再構築したもの。原曲の楽し気は雰囲気はまるでなく、すっかり変容してしまっているが、カールバーグの編曲能力の凄さを、まざまざと感じることが出来る。イントロからヘリー・パスのハーモニックス粗野なテナー・サックス・ソロが続く。ソロの途中で入るバックの鋭い一撃が鮮烈だ。その後の原曲の短いフレーズが執拗に繰り返される部分は、もはや狂気の世界だ。後半に入るジェノヴェーゼの奇怪なシンセ・ソロは、入っている理由が分からない。ということで、カールバーグの高度な作編曲能力、強固なアンサンブル、素晴らしいソロと3拍子揃った完成度の高いアルバム。ただ、筆者を含め、聴き手にはハードルが高いと思われる。録音はノイズのない、ビッグバンドらしい厚みとスケールを持ったサウンドが楽しめる。Frank Carlberg:Elegy for Thelonious(SUNNYSIDE RECORDS SSC 1716)24bit 96kHz FlacFrank Carlberg:1.Spooky Rift We Pat2.Out of Steam3.Wanting More4.Elegy for Thelonious5. Scallop's Scallop6.Wrinkle on Trinkle7.Brake TuneFrank Carlberg(cond,composer)Sam Hoyt, John Carlson, David Adewumi, Kirk Knuffke(tp)Brian Drye, Chris Washburne, Tyler Bonilla, Max Seigel(tb)Nathan Reising, Jeremy Udden, Adam Tolker, Hery Paz, Andrew Hadro(woodwinds)Leo Genovese(p,key)Kim Cass(b)Michael Sarin(ds)Christine Correa(vo track 1, 3, 4)Priya Carlberg(vo track 2, 3, 4)All compositions and re-compositions by Frank CarlbergText on Wanting More by Thelonious MonkText on Elegy For Thelonious by Yusef KomunyakaaRecorded at Big Orange Sheep, Brooklyn, on May 10th and 11th, 202
2024年04月24日
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ディストリビューターのコピーによると『ロト&ギュルツェニヒ管のブルックナー真打!作品イメージを覆すほどに圧倒的な第9番オーケストラの能力をフル開放して巧みに音楽を生成していく驚異の大演奏』なのだそうだ。筆者はこのシリーズ第4番から参戦?している。アプローチが新鮮で従来の重苦しいブルックナー象を払拭してくれているところに注目している。前作の交響曲第3番は初稿版で、注目の第2楽章が不発だったため、あまりまともに聴いていなかった。今回は第9番でロトの芸風から行くと8番と共にあまり合わない曲だと予想していた。一般的な演奏と同じ傾向であれば、あまり面白くないのだろうが、これが聞いたことのないようなアプローチでびっくりした。まず、テンポがかなり速い。そう言ってもヴェンツァーゴのようにびっくりするほど速い、という感じではないので、抵抗感は少ない。因みに第1楽章が約1分、第2楽種が30秒ヴェンツァーゴが速い。第3楽章は逆に10秒ほどヴェンッァーゴが遅いが、20分のうちの10秒なので、違いはあまり感じられない。それにヴェンツァーゴはフレージングが粘っこく、ためを作るところもある。なのでヴェンツァーゴはテンポ以外は従来の解釈の延長線上にあり新鮮味はない。従来の重苦しい演奏はあまり聞きたくない当方としては、ロトの演奏は歓迎すべき方向であるのも確か。速くてもヴェンツァーゴのように、せっつかれる感じがないのもいい。ためは殆どないので、聴き手がここはじっくり歌ってほしいというようなところでは、あっさりとパスされてしまうことがあるのが残念。全体的に引き締まって透明感のあるサウンドが新鮮。第1楽章は出だしのホルンのテーマからして力強いがそれほど重々しくない。テンポが速いため表現が凝縮されて、劇的で緊張感に満ちたものになっている。爆発的なテュッティがいい例だ。第2楽章が独特のアプローチで他の演奏とはまるで違う演奏。金管やティンパニの重く荒々しいアクセントやチューバの思いもかけない強奏など、テンポが速いのと相まって、この楽章がダイナミックな音楽だと初めて思い知らされた気がする。トリオも表情が濃い。第3楽章もテンポは速くテーマも全く粘らないあっさりしたもので、悲壮感の感じられるしみじみとした味わいには不足しているかもしれない。練習番号163からのオーボエやクラリネットの刻みがテヌートで刻まれるところが変わっている。エンディングに向かうところでは、思いもかけず得も言われぬ清々しい気分に浸ることが出来た。ということで、従来のブルックナーを是とする聴き手にはかなり抵抗のある演奏だろうが、従来の重苦しいブルックナーをあまり聞きたくない者としては、こういうアプローチは歓迎したい。ギュルツェニヒ管は金管が突出する場面も少なく、弦とのバランスも良かった。艶のある弦のサウンドが素晴らしい。録音はそれほど透明度は高くないが、重くなく、聴き手にぐいぐいと迫ってくる。François-Xavier Roth Bruckner: Symphony No. 9 (original Version)(Myrios MYR034)24bit 192kHz FlacGürzenich-Orchester KölnFrançois-Xavier RothRecorded: 2022-09-21,Kölner Philharmonie
2024年04月21日
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以前、友人にホルンを譲るために準備をしているという話に触れた。結論から言うと、価格で折り合いがつかず、友人は断念してしまった。友人には楽器屋さんに話を聞いてもらったりして、余計な手数をかけさせてしまった。それが無駄骨となり、今となっては大変申し訳ないと思っている。筆者はというと、楽器を吹いても思うように吹けず、これからトレーニングする気力もなく、結局ウインナ・ホルン共々委託販売をお願いすることにした。最初にフレンチ・ホルンをお願いしたのだが、へこみ等が多数あり、修理代が高くつきそうだった。取りあえず筆者の希望価格を伝え、その価格内でできる修理のみをお願いすることにした。ウインナ・ホルンの方は、別な楽器店にお願いした。理由は、フレンチと同じような面倒なことになりたくかなかったからだ。こちらの方はケースがないというハンデがありながら、楽器の状態が比較的よく、楽器店に写真を見てもらった時よりも高く売れそうで、すんなりと価格が決まった。購入価格はフレンチ・ホルンの1/3なのに、新しいとはいえ委託の値段があまり違わなかったのは、嬉しさも半分という複雑な気分だ。フレンチ・ホルンは友人と親戚に貸してしていたのだが、結局は墓穴を掘ってしまったようだ。自分が使っていた時には、それほどへこみがあるとは思っていなかったので、あとで使った人の扱いが雑だったのだろう。いまさら文句を言うのもどうかと思うし、結局は自分が悪かったと思うしかない。ところで、アレキサンダーが新品で250万、状態の良い中古で150万もする理由を聞いた。理由は3つほどあって、円安、金材料の高騰、運賃の高騰だそうだ。後の二つはウクライナ戦争による影響とのこと。結局工業製品から農業製品まで、戦争の影響を受けない製品など、殆どないのだろう。生活が苦しくなるのも無理はないと今更ながら実感してしまった。もっとも、売り手は少し高く売ることが出来るというメリットもあるのだが。。。その後ウインナ・ホルンが売れたという連絡をもらった。楽器を送ってから1ヶ月と、予想外に早く売れてしまったのに驚いた。しかも、ウインナ・ホルンという好きものしか買わないと思われる楽器なだけに、驚きも一層だ。不景気とはいえ、こういう商品が売れるということは、日本人の購買能力がまだ依然として高いということかもしれない。
2024年04月19日
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昔は殆どビッグバンドなど聴かなかったものだが、何故か最近ビッグバンドのアルバムに触手が動く。年を取ってコンボの小難しい音楽が肌にあわなくなったのかもしれない。というか理解するのがしんどくなってきたのかもしれない。ヴォーカルもよく聴くようになったのも、多分同じ理由だろう。その割にはクラシックは古楽や現代ものなども積極的?に開拓しているので、矛盾しているかもしれない。このアルバムはイスラエル生まれのドラマー、ダン・プガック(Dan Pugach)?(1983-)が率いるビッグ・バンドのアルバム。ダン・プガックは2006年にアメリカ合衆国に移住し、バークリー音楽大学でテリー・リン・キャリントン、ハル・クルック、ジョー・ロバーノから学び、人文学系修士号をニューヨーク市立大学で取得している。現在ニューヨークのブルックリンとコネチカットの両方に在住している。メンバーは全員白人のようだ。エッジの効いたキレキレのアンサンブルと、アタックのビシッと決まった、硬質でありながら素晴らしく鳴るサウンドが実に爽快。パワーにも不足はない。ヴォーカル・ナンバーを除いて、すべて彼のオリジナル。明るくスインギーで、力のこもった作品が揃っていて、とても楽しめる。アレンジがいいのだろう、実によく鳴るサウンドで、ビッグバンド・サウンドを聴く醍醐味が味わえる。「Masa」ではテーマにコーラスが重ねられているのも洒落ている。ソロはだぶりもなく、メンバーが満遍なくフィーチャーされていて、水準も高い。リーダーのドラム・ソロは所々で聞かれるが、短めで押しつけがましさがないのがいい。ニコール・ツレイティスによるヴォーカルのナンバーが2曲(track 6,7)入っている。彼女は先ごろ「How Love Begins」でグラミー賞の最優秀ジャズ・ヴォーカル・アルバムを受賞したばかりだ。スキャットを含むエネルギッシュなヴォーカルは白人とは思えないような圧倒的な迫力で迫ってくる。ただ個人的には全部インスト・ナンバーにしてほしかった。曲はツレイティスのオリジナル「Travel」とヴァン・ヘイレンの「Dreams」(1986)。「Dreams」ではエレキ・ギターの熱のこもったソロもフィーチャーされている。ということで、高度なアンサンブルで、曲も良く、ビッグ・バンドを聴く醍醐味が最高度に発揮された傑作アルバムだ。是非多くの方にお聴きいただきたい。Tolerance Dan Pugach Big Band:Bianca(Outside In Music OUIA24012)24bit 96kHz Flac1.Dan Pugach:Tolerance(Mike Fahie - tb, Patrick Cornelius - as) 2.Dan Pugach:Bianca (Eitan Gofman - ts, Stuart Mack - tp)3.Dan Pugach:Bella the Bear(Jasim Perales - tb) 4.Dan Pugach:Masa(Dave Adewumi - tp, Jeremy Powell - ts, Dan Pugach - ds)5.Dan Pugach:Schleppin’(Sam Weber - b, Nitzan Gavrieli - p, Alan Ferber - tb)6.Nicole Zuraitis:Travel(Jeremy Powell - ts, Nicole Zuraitis - vo, Stuart Mack - tp)7.Van Halen:Dreams(Pete McCann - g)8.Dan Pugach:Discourse This!(Dave Smith - tp, Andrew Gould - as, Dan Pugach - ds)Dan Pugach Big Band:ww:Andrew Gould,Patrick Cornelius,Jeremy Powell,Eitan Gofman,Andrew Hadrotp:Sam Hoyt,David Smith,Stuart Mack,Dave Adewumitb:Mike Fahie,Alan Ferber,Jasim Perales,Jen HinkleNicole Zuraitis(vo)Nitzan Gavrieli(p)Pete McCann(g)Sam Weber(b)Dan Pugach(ds)all composed by Dan Pugach(except track6,7)Recorded at The Bunker Studio Brooklyn, NY on February 12&13 2023
2024年04月17日
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香港出身のイギリスの若手作曲家のダニ・ハワード(1993-)の管弦楽曲集を聴く。例によってpresto musicで紹介されていて、spotifyで聞いたところ良かったので、一番安いと思われるHigresaudioからダウンロード。基本的にはポスト・ミニマル・ミュージックなのだろう。ジョン・アダムズのような明快な作風で親しみやすい。さしずめミニ・アダムズ?。管弦楽だが管が優勢なオーケストレーションで、吹奏楽アレンジでもいけそうな気がする。ハーモニーは分厚いが、見通しがよく爽やかで、きびきびとした運動性にも欠けていない。ただ、似たような楽想の曲が多く、すぐ区別がつかないところが難点だろう。トロンボーン協奏曲と最後の「アーチ」は2管編成で他は3管編成の管弦楽。小鳥のさえずりや大自然の脅威を感じさせるような楽想が頻出するのが特徴だろうか。ラテン語で銀の意味の「Argentum」(アルゲントゥム)はイギリスのクラシック専門放送局Classic FM創立25周年の委嘱作品を祝う6分ほどの曲。明るく軽快な曲調だがティンパニや金管の一撃で曲の剛直性が露になる。所々にブリテンなどのイギリス音楽の影響が垣間見られるのが面白い。トロンボーン協奏曲はロンドン交響楽団首席のピーター・ムーアのソロ。明るく豊かなサウンドで、この楽器にしては細かな音符の続く曲を凄まじい勢いで演奏している。第2楽章は小鳥のさえずりや風、雷などの自然の風景を思わせる楽章でトロンボーンが悠然と歌う。またトロンボーンでは珍しい重音奏法が出てくるところも、聴きどころの一つだ。決然とした意志を感じさせるような第3楽章「Illumination」16分音符が連続する困難なパッセージが続くが、ムーアは鮮やかなテクニックで楽々乗り切る。エンディングのダイナミックでエネルギッシュなサウンドは実に興奮させる場面だ。革新的なトロンボーン協奏曲の誕生を思わせる、すぐれた作品。「Arches」は彼女の最初の管弦楽作品。音楽大学卒業当初は管弦楽曲の書き込みの多さから、大規模なオーケストラ作品を手掛けることにしり込みをしていたという。曲は、穏やかな楽想のイントロ後、弦の16音符の刻みに管のモチーフの断片がちりばめられて進行する。やや明るい楽想でドラマチックな表現もあり、あまり深刻にならずに済む。題名は初演されたロンドンのセント・ジョンズ・スミス・スクエアの建物の大胆で広大な「アーチ」に触発されたもの。所々にゆったりとした田園風景を思い起こさせるような部分があり、一息つくことが出来る。鳥の鳴き後を思わせるフルートのフラッター・タンギングも効果的。「Ellipsis」は全曲にわたって刻まれる執拗なリズムに乘って、小鳥のさえずりや大自然の脅威を思わせる凶暴な金管のサウンドが延々と続く。ただ、リズムを刻むのがいろいろな楽器に橋渡しされるので単調さから免れている。中間部でテンポが遅くなり、ハープなどのゆったりとした楽想が流れるところに救われる。また、エンディングの壮大な表現には戦慄を覚える。音楽だけではなく、映像があれば理解が深まるような気がする。「Coalescence」は「複数のものが一つに結合する」ことを意味する言葉で、作曲者は舗装された道路の金属の柵の中で成長する直径1mの木から人間と自然の相互作用についてのインスピレーションを得たという。約12分の音楽で、変化に富んでいて、アルバム中随一の聞き物だろう。この曲では最初のテュッティが終わった後の、静かだが緊迫した場面が印象的だ。いろいろな楽器のサウンドの断片が散りばめられていて、弦のソロも入る。教会の鐘?が鳴ると再び激しいリズムが刻まれる。後半は他の曲と同じようなサウンドで、違いがよく分からなくなる。暴れまくるティンパニやトロンボーンの荒々しいペダルトーンを含むテュッティが出現して突如として終わる。ところでこのアルバムを聞いていたら、気分があまりよくない。ChatGPTでミニマル・ミュージックが原因ではないかと思って調べてみたら、下記のような五つの答えが返ってきた。「単調性」「予測可能性」「感情の不足」「環境への適合性」「個人の好み」まあ、最後の個人の好みには笑ってしまうが、筆者にとって、抽象的で情報量が少ないため、感情的なつながりや表現が不足しているー「感情の不足」が当てはまるような気がする。この結果から、どうやら筆者にとってミニマルミュージックは心理的にあまりよくない影響を与えているようだ。なお、このアルバムのすべての作品は彼女のサイトで聞くことが出来る。Dani Howard Orchestra Works(Rubicon RCD1125)24bit 96kHz Flac1.Argentum(2017)2.Trombone Concerto(2021) I. Realisation II. Rumination III. Illumination5.Ellipsis(2021)6.Coalescence(2019)7.Arches(2015)Peter Moore(tb track 2-4)Royal Liverpool Philharmonic OrchestraMichael Seal(track 1-4)Pablo Urbina(track 5-7)Recording: Liverpool Philharmonic Hall, 14 May 2022 (Argentum, Trombone Concerto) & 11 October 2022 (Ellipsis, Coalescence, Arches)
2024年04月15日
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ニューヨークを拠点に活動し、グラミー賞に何度もノミネートされたトロンボーン奏者のアラン・ファーバー(1975-)率いる”NONET” による通算 5 枚目の最新作を聴く。ディストリビューターによるとアラン・ファーバーは『リー・コニッツ秋吉敏子ビッグバンド、ロニー・スミスから、ジェラルド・ウィルソン、ザ・ナショナル、ポール・サイモンなどと多岐にわたるグループに参加した』そうだ。編成はフロントが5人、リズム・セクションがギターを含む5人。全体に柔らかなサウンドが特徴で、アメリカ西海岸の都会的な洒落たセンスが感じられる音楽だ。9曲のうち5曲がリーダーのオリジナル。キャッチーなメロディーを持つ曲も多く、親しみやすい。その他の曲はジャズメンのオリジナルなどで、ノラ・ジョーンズとジョニ・ミッチェルの曲が異彩を放っている。ホーンが5人もいるのでビッグバンド並みのサウンドとハーモニーが楽しめる。欲を言うと低音がもう少し欲しいところか。タイトルチューンの「Up High, Down Low」からリラックスした音楽が流れる。リーダーのトロンボーンは、柔らかなサウンドで温かみのある表現が好ましい。「Brimstone Boogaloo」はリズミックでミステリアスなムードの都会的な音楽。ミュート・トランペットやフルートなどのヴォイシングがそのムードを一層助長する。オルガンやフルートのソロもいい感じだ。コンガもいいアクセントになっている。「Ambling」はミディアム・テンポのバウンズ感の感じられるリラクゼーションに満ちた演奏。けだるいムードを感じさせるアルト・ソロがいい。ギターのバッキングが落ち着きをもたらしている。古いスタンダードの「The More I See You」は急速テンポで、スイング感あふれるアレンジが爽快だ。ソロはジョン・ゴードンのアルト、スコット・ウェンドホルトのトランペット、デヴィッド・クックのピアノ、マーク・ファーバーのドラムスの順で、共に快調なソロを展開している。ミディアムテンポの「In Hindsight」ジョニ・ミッチェルの「Cherokee Louise」は凝ったアレンジではなく平凡な出来。原曲の荒涼たる風景を思い起こさせるようなムードは感じられない。なお原曲のソプラノ・サックスのソロはウエイン・ショーターだそうだ。「Violet Soul」はファーバーが20歳代の頃作曲した曲を改題したもので、ジョン・ゴードンのアルト・サックスをフィーチャーしている。後半に出てくるファーバーのワウワウミュートのプレイが異彩を放っている。ノラ・ジョーンズの「Day Breaks」でもイントロにトランペットとトロンボーンのワウワウミュートによるプレイが聞かれるが、これは原曲のギターのワウ・ペダルを使ったプレイをホーンに置き換えたもの。チャールズ・ピローのアルト・ソロはジョン・ゴードンとは異なりアーシーなテイストが持ち味。バス・クラリネットやバリトン・サックスのサウンドもこの曲の持つカントリー・テイストにスンなりとはまっている。最後はクリス・チーク(1968-)の「Ice Fall」。煽り立てるようなドラムスのせいで、原曲のフュージョン系ののんびりムードとは異なる、少し緊迫した雰囲気を感じさせる演奏。後半のラージ・アンサンブルならではの胸のすくようなテュッティが爽快。作曲者のバリトン・サックス・ソロがいい。原曲はソプラノ・サックスだったので変えたのだろうが、バリトン・サックスの重量感のあるサウンドが妙にはまっている。ニア・フェルダーのギター・ソロも悪くない。というわけで、地味な印象のアルバムだが、ラージ・アンサンブルの醍醐味を感じさせるサウンド1が堪能できる。Alan Ferber Nonet:Up,High,Down,Low(Sunnyside SSC 1694)24bit 96kHz Flac1.Alan Ferber :Up High, Down Low2.Alan Ferber, :Brimstone Boogaloo3.Alan Ferber :Ambling4.Harry Warren,Max Gordon:The More I See You5.Alan Ferber :In Hindsight6.Joni Mitchell:Cherokee Louise7.Alan Ferber :Violet Soul8.Norah Jones,Peter Remm:Day Breaks9.Chris Cheek:Ice FallAlan Ferber(tb,arr.)Scott Wendholt(tp.flh)John Ellis (ts)Chris Cheek(br-s)Jon Gordon (as) (tracks: 1, 3-7, 9)Charles Pillow (as, alto fl,cl,bass cl tracks: 2, 8)David Cook (P, Org, Key)Matt Clohesy(b)Mark Ferber(ds,perc.)Nir Felder(g)Daniel Diaz(perc.)Recorded July 5 & 6, 2022 at Big Orange Sheep, Brooklyn, NY
2024年04月13日
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先日叔父の弔問に行って来た。亡くなったのが3/20日で連絡が来たのは次の週の後半。葬式もすでに終わっていた。母の兄弟だが、筆者とは一回りしか違わない。昔大変にお世話になった。弔問に行ったのは筆者の妹と、叔父の兄の家族の叔母さんと従弟三人。それだけ人が集まると、いろいろな話が聞けて大変面白かった。びっくりしたのはビートルズの全録音を集めたボックスがあったこと。筆者も持っているので、音楽とは無縁と思っていた叔父がビートルズを聴いていたことに驚いた。亡くなった叔父の奥さんが言うには、家にはCDが沢山あったが処分したとのこと。そういえば、昔グループ・サウンズにザ・テンプターズというグループがあり、そこのドラマーの大口広司が川口出身で、実家が「貝坂」という屋号の肉屋さんだったことを思い出した。叔父はその店に勤めていて、大口さんのドラムを運んだことがあるという話を聞いたことがある。詳しい話はこちらに書かれている。なので、音楽と無縁だったわけではなかったのだ。母の兄弟には音楽好きの人が結構いて、筆者がクラシックに親しむようになったのも、別な叔父の影響だ。筆者の母も音楽が大好きで、仕事をしながらよく歌を歌っていたことを思い出す。亡き叔父の知らなかった側面を教えてくれた、誠に得難い機会だった。
2024年04月11日
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イタリア生まれのフランチェスカ・デゴ(1989-)によるヴァイオリン協奏曲集を聴く。風呂に入っている時にSpotifyで流していたら、その情熱的な演奏にすっかり参ってしまった。取り敢えずその時は高かったのでグラモフォンで録音していたストラヴィンスキーのアルバムをダウンロードして楽しんでいた。しかし、ある日偶然にもeclassicalで半額で購入できることがわかり、迷うことなくダウンロードしてしまった。調子に乗って、鈴木優人のバッハの平均律第1巻までダウンロードしてしまった。デゴのヴァイオリンは細身だが、とにかく音が素晴らしく美しい。作る音楽も明快で、作為的なところがなく、聴き手の耳にすんなりとはいってくる。難解と思われるブゾーニの音楽もスカッとして精神衛生上まことに良い。速い第3楽章も歯切れがよく、とんでもない速さのエンディングもすいすいと進みしかも爽やかだ。ブラームスは前述のとおり情熱的だが、聴き手の心に沁みわたる演奏だ。表情は濃厚ではないのだが、表現が的確で違和感は全くなし。腑に落ちる演奏とはこういうことを言うのだろうか。速めのテンポの第3楽章もラプソッディックな気分が横溢していて、ワクワクする。ブラームスは第1楽章のカデンツァの前でティンパニがドロドロ鳴って、風景が一変してしまった。びっくりして調べたら、ブゾーニのカデンツァだった。この曲の録音の大半のカデンツァがヨアヒムのもので、例外はクレーメルが使ったレーガーくらいだと思っていたのだが、我々が耳にする機会がないだけでけっこうな数のカデンツァが存在するようだ。こちらによると16種類もある。ここにも書かれているが、それだけこの曲には魅力があるということなのだろう。ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 15の作曲家によるカデンツァ聴きたいが残念ながら廃盤らしい。ブゾーニは初めて聞いた。シゲティが初演したそうだが、大変な難曲のようで、彼のyoutubeの演奏でもそれが感じられる。バックはウクライナ生まれで5歳にフィンランドに移住したというダリア・スタセフスカ(1984-)の指揮するBBC交響楽団もデゴの演奏に倣ったのか、粘らず清々しい。ただ、一部表現が固かったり、響きが整理されていないように感じられるところがあるのが惜しい。スタセフスカの芸風としては、ヒンデミットの剛直な音楽のほうがあっている気がする。ということで、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を買ったのは本当に久しぶりだったが、耳タコの曲のはずなのだが、新鮮な気持ちで聞くことが出来た。ブゾーニもなかなか楽しい曲で、これも爽やかだった。シゲティのブゾーニFrancesca Dego:Brahms & Busoni: Violin Concertos(Chandos CHSA5333)24bit96kHz Flac1.Busoni: Violin Concerto, Op. 35a4.Brahms: Violin Concerto in D major, Op. 77Francesca Dego (violin)BBC Symphony OrchestraDalia StasevskaRecording venue Phoenix Concert Hall, Fairfield Halls, Croydon; 4 and 5 July 2023
2024年04月09日
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ホセ・ジェイムズの新作「1978」を聴く。これは2008年の「The Dreamer」以来12枚目のスタジオアルバムで、自身のレーベルRainbow Blondeからのリリース。普通なら自主製作レーベルだと価格が高くなることが多いが、bandcampのRainbow Blondeではどのアルバムも価格が抑えられていて、とても助かる。リリース元の情報によると今回のアルバムは『ジェームズの深いジャズとヒップホップへの愛情を、R&Bの偉大なヒーローであるクインシー・ジョーンズ、マイケル・ジャクソン、レオン・ウェアへの曲作りやプロダクションのオマージュと融合させた瞬間の名盤』とのこと。名盤と言い切っているところが自信の表れだろうか。近年のレコーディングやツアーでお馴染みの強力なバンド・メンバーに加え、ブラジルのシンガー・ソング・ライター、シェニア・フランサ(1986-)や、コンゴ系ベルギー人のラッパー/映画監督バロジ(1978-)がフィーチャーされている。実際聞いてみると、ジェイムズのあくの強さが薄れ、かなり聴きやすくなっている。音楽そのものはダンス系の音楽だが、かなり完成度が高く、アレンジもヴァラエティに富んでいて、ノリがいい。アルバムの狙いが『自身の誕生年である1978年に因んで、マーヴィン・ゲイ、プリンス、スティーヴィー・ワンダーといった70年代後期のソウル・ミュージックを、ジェイムズなりの現代的解釈で表現したもの』なのも頷ける。また弦が入っている曲はなかなか新鮮だ。6曲目の「Dark Side of The Sun」ではバロジのラップがフィーチャーされている。野太い声でぐいぐいと迫ってくる。バロジと対比すると、ジェイムズの声が上品に聞こえるのも面白い。バックの弦との絡みもなかなかいい。7曲目の「Place of Worship」はフォークロアのようなテイストで、フランサのヴォーカルが力強く美しい。ジェイムズはわざと野卑に歌っているような感じだ。「For Trayvon」は珍しくバラード。トレイボンとは2017年に起きたトレイボン・マーティン射殺事件の被害者のことだろうか。哀しみを帯びたメロディーが胸を打つ。バックで目立っているのはマーカス・マチャドのアコースティック・ギター。ヒップホップ系の音楽でも合うのは意外だった。録音はサーフェイスのイズみたいなサーというノイズが聞こえるのが気になる。また分離もあまりよくなく、お団子状態だ。リバーブもかけすぎでエレキ・ベースの音がうるさい。また「38th & Chicago」は埃っぽい音。他の曲とは別なセッションだったかもしれない。その割にはコンガの音がリアルに響くのが意外。ところで、気になったのは「38th & Chicago」の画像がアルバムの画像と一致していないこと。bandcampからリリースされた他のミュージシャンのアルバムでも、先行リリースされた曲のアートワークがそのままアルバムに残っていることがある。修正できる場合はいいが、そうでない場合、ユーザーにはストレスになるだけだ。そのため、もう少し細かな配慮が欲しかった。José James:1978(Rainbow Blonde BLONDE065C)24bit96kHz Flac1.Talia Billig:Let's Get It2.Isis & Osiris3.Scott Jacoby;Talia Billig:Planet Nine4.José James, Kaveh Rastegar;Talia Billig:Saturday Night (Need You Now)5.Talia Billig:Black Orpheus (Don't Look Back)6.Baloji;Talia Billig:Dark Side of The Sun (feat. Baloji)7.Talia Billig;Xênia França:Place of Worship (feat. Xênia França)8.For Trayvon9.38th & ChicagoJosé James(vo)Jharis Yokley(ds)David Ginyard(e-b)Marcus Machado(g)Chad Selph(synth)Xênia França(vo track7)Pedrito Martinez(congas track 9)Jharis Yokley(ds track 9)David Ginyard(e-b track 9)Marcus Machado(g track 9)Chad Selph(p track 9)Tia Allen(va track 1,8)Francesca Dardani(vn track 1,8)Maria Im(vn track1, 8)
2024年04月07日
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フランスのメゾソプラノのサンドリーヌ・ピオー(1965-)の新作「Reflet」を聴く。彼女のアルバムはアルファからしか出てないので、なかなか手を出しにくい。このアルバムは珍しくeclassicalからもリリースされていたので、ダウンロードした。このサイトでは最近価格決定の基準が変更になり、秒単位で価格を決めているようだ。いわば従量制で決めているようなもので、アルバム単位での値決めをするこの業界においては、他のサイトでは考えられないことだ。この業界での価格破壊のようなもので、このサイトの英断に拍手を送りたい。閑話休題フランスの作曲家たちに何故かブリテンが入っているというプログラム。シャルル・ケクランの歌曲が取り上げられているのが珍しい。ピオーはどの曲でも上手さが際立っていて実に素晴らしい。フランスでは同世代のヴェロニク・ジャンス(1966-)も「Paysage」というアルバムをアルファからリリースしたばかりだ。筆者は以前はジャンスのほうがうまいと思っていたが、この二つのアルバムを比べると、ピオーの柔らかなディクションに比べるとジャンスはちょっときつく、ピオーのほうがフランス歌曲に相応しいと思う。聞いたことのない歌が多いが、その中ではケクランの「エドモン・アロークールによる4つの詩Op.7」からの2曲と「3つの歌 Op. 17」の第3曲 「顕現節」が繊細な伴奏と共にしみじみとした情感を感じさせる。因みに「顕現節」とは、東方の三博士がベツレヘムに誕生したキリストを訪問し、キリストが神の子として公に現れたことを記念する日(顕現日)に対応する時節のことだ。最後のブリテンの「4つのフランスの歌」はタイトル通りフランス風な曲で、他のフランス人作曲家の並んでいても全く違和感がない。微妙なサウンドのグラデーションが美しく、ブリテンの腕の冴えを感じさせる。管弦楽のみの短い曲が2曲入っていたが、ドビュッシーの割には主張が強く、厚ぼったいサウンドなこともあり、あまり面白くない。その中では短いながらも躍動的な「古代のエピグラフ」の第6曲「朝の雨に感謝するために 」が彼らの芸風に合っている。バックの「ヴィクトル・ユーゴー・フランシュ・コンテ管弦楽団」という団体は初めて聞いた。クラリネット奏者でもあるジャン=フランソワ・ヴェルディエは2010年からこの楽団の音楽監督を務めている。フランスらしい軽さと雰囲気が持ち味だが、歌に寄り添うというよりはぐいぐいと迫ってくるような、よく言えば積極的な伴奏で、悪く言うと圧迫感を感じるため好悪が分かれそうだ。ラヴェルの「マラルメの3つの詩」は室内楽編成なので、おしつけがましさがなく、そこはかとなく感じられる東洋趣味とクールな雰囲気が悪くなかった。ピオーの歌はオーケストラに全く負けていないのだが、個人的には、伴奏はもう少し控えめな方が好ましかった。録音は前に出てくるサウンドでこの録音も圧を感じる原因かもしれない。残念なのは、3曲目の2分30秒から2分50秒付近まで、何かが振動しているようなゴーという音が聞こえること。とても容認できるようなレベルではない。私の聞いている音源だけだろうか。とうことで、伴奏について注文を付けてしまったが、アルバム全体としてはかなりハイレベルな仕上がりで、ピオーの歌を堪能できる。年齢的にも最盛期だろうから、今のうちに出来るだけ多くの録音を期待したいところだ。Sandrine Piau:Reflet(Alpha ALPHA1019)24bit96kHz1.Hector Berlioz:Les nuits d'été, H 81: No. 2, Le spectre de la rose2.Henri Duparc:Chanson triste(1868)3.Henri Duparc:L’invitation au voyage(1870)4.Charles Koechlin:4 Poèmes d'Edmond Haraucourt, Op. 7 2, Pleine eau(1897) 4, Aux temps des fées(1896)6.Charles Koechlin:3 Mélodies, Op. 17: No. 3, Epiphanie(1900)7.Debussy, Claude:Suite bergamasque, L. 75: No. 3, Clair de lune8.Morice Ravel:3 Poèmes de Stéphane Mallarmé, M. 64(1913) 1, Soupir 2, Placet futile 3, Surgi de la croupe et du bond11.Debussy, Claude:6 Épigraphes antiques, L. 131: VI. Pour remercier la pluie au matin12.Benjamin Britten:Quatre Chansons françaises (1928) 1, Nuits de juin 2, Sagesse 3, L'enfance 4, Chanson d'automneSandrine Piau (s)Orchestre Victor HugoJean-Francois VerdierRecorded in November 2022 at Auditorium de la Cité des arts, Besançon.
2024年04月05日
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ジャズギタリストの渡辺香津美(1953-)が入院されたことをYoutubeで知った。2月27日に自宅で倒れられたそうだ。意識障害を伴う脳幹出血で重篤な状態のようで、今年いっぱいは活動を休止するとのこと。https://x.com/kw50_kazuminews/status/1774270403567038621?s=61&t=FZ7-4A_MAspdr8yzVzx9RA5月のベーシストの古野光昭の盛岡でのコンサートに、ゲスト出演される予定だった。。ゆっくり療養して、また元気なプレイを見せて欲しいと願っているが、後遺症が心配だ。何事もなく治って欲しい。
2024年04月03日
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先週、ノートパソコンが動かなくなったことをブログに書いた。今日メーカーから連絡があり、再現しないとのこと。ただ自己診断でバッテリーが劣化しているという。バッテリーを外してACで給電しても動作するので、取敢えずそのまま返却してもらうことにした。再現しないというのが1番厄介なのだが、仕方がない。バッテリーの交換の提案をされたが、2万円も取られるし、作業も難しくはないので自分でやることにした。マザーボードの交換でソフトを再インストールしてデータがなくなることを危惧していたが、そうならなくてよかった。この際、心を入れ替えて?OSの更新とバックアップもやろうと思う。めでたしめでたし?
2024年04月01日
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以前紹介いたONTOMO MUKKUレコード・アカデミー賞で紹介されていたティボー・ガルシア(1994-)のバリオス作品集を聴く。ガルシアはフランスの天才ギタリストだそうだ。筆者はカウンター・テナーのジャルスキーとのデュオを前にダウンロードしていたことをすっかり忘れていて、お初だったと思ってしまった。殆ど聴いていないので、記憶にないのも当たり前かもしれない。演奏はノイズが少なく、潤いのあるサウンドが心地よい。音楽も無理のない表現と歌心で、バリオスの作品が楽しめる。天才肌のミュージシャンは表現が時としてエキセントリックになりがちだが、この方は落ち着いていて,そのような雰囲気は毛ほども感じさせない。また、ショパン、ベートーヴェン、シューマンのピアノ曲の編曲が含まれている。原曲が矮小化されていることもなく、ルバートや弱音の使い方なども絶妙な表現だ。筆者の好きな「ワルツ第3番」のくすぐるような絶妙なルバートや弱音の使い方など、この曲の魅力が十全に表されている。「蜜蜂」のような速く技巧的な曲でもテクニックの制約を感じさせない音楽の流れだ。「大聖堂」はエラートへの2枚目のアルバム『バッハ・インスピレーションズ』に収録されていたトラック。筆者はこのアルバムは聞いていないので、今回収録されたのは有難い。最後にバリオス自身の演奏で「カアサパ」が収録されている。スクラッチのイズも聞かれ、さすがに古いと感じるが、ガルシアの洗練された演奏とは一味違う、土いきれの感じられる演奏はまた格別だ。ということで、バリオスのギター曲の魅力満載のアルバムで、ブランデーでも飲みながら心静かに楽しみたい。エル・ボエミオ~ギター作品集 ティボー・ガルシア(Erato 5419772617)24bit 96kHzFlacバリオス:1. 森に夢みる2. サンバの調べ3. マズルカ・アパッショナートショパン:4. 24の前奏曲 Op.28~第20番(バリオス編)バリオス:5. 神様のお慈悲に免じてお恵みを6. マシーシ7. パラグアイ舞曲 第1番8. ヴィダリータ(オルランド・ロハスによる詩「エル・ボエミオ」の朗読付き)ベートーヴェン:9. ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 Op.27-2『月光』~第1楽章:Adagio sostenuto(バリオス編、イ短調)バリオス:10. 蜜蜂11. フリア・フロリダ12. クリスマスの歌13. ワルツ Op.8-314. ワルツ Op.8-415. 告白(ロマンサ)16. 悲しみのショーロ17. オルランド・ロハスによる詩「信仰告白」(朗読のみ)バリオス:18. 前奏曲 ハ短調シューマン:19. トロイメライ Op.15-7(バリオス編)(ボーナス・トラック)バリオス:20. 大聖堂21. カアサパ(アグスティン・バリオス自身による演奏)ティボー・ガルシア(ギター:1-16,18-20)オルランド・ロハス(朗読:8,17)アグスティン・バリオス(ギター:21)録音: 2023年2月11-13日 フランス、ルーアン、Chapelle Corneille(1-19)/ステレオ(デジタル) 2018年3月23-26日 フランス、アラス、Salle des concerts de Arras(20)/ステレオ(デジタル) 1928年5月10日 ブエノスアイレス、Estudios Odeon(21)/モノラル
2024年03月30日
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久しく聞いていなかったスペインのジャズ・ヴォーカリストのカルメ・カネラをbandcampでチェックしていて見つけたアルバム。録音は2004年だが、配信されたのは昨年6月。配信されなかったら知らないで終わってしまっていただろう。配信で聴くことができるのもネット社会のおかげだ。「マイルスの宇宙」というタイトルが示すように、マイルス・デイヴィスの1960年頃までの愛奏曲を集めたアルバム。こういったアルバムは過去沢山作られてきただろうが、ピアノとヴォーカルというフォーマットを抜きにしても、過去の同系統のアルバムの中でも上位にランクされるアルバムだろう。殆どがスタンダードで、大方のジャズファンが気に入るであろう選曲も的を得ている。「You're Under Arrest」(1985)で取り上げられていたマイケル・ジャクソンの「Human Nature」(1982)のみリズミックで異彩を放っている。作曲されてから3年足らずで録音されていたとは、マイルスのフットワークの良さに驚く。バラードが多いが、じとっと湿った歌でなく、適度にリズミカルなところもいい。「My Funny Valentine」のラテンタッチのアプローチはユニーク。最後の「Blue in Green」はア・カペラで歌い始めるが、滑らかさが足りず、いまいち。バルセロナ生まれのピアニストのルイス・ヴィダルはbioを見るとピアニストとしてだけではなく、作編曲や大規模なフェスティバルなどで指揮など重要な役割を担っているようだ。包容力のあるピアノで、ヴォーカルを優しく包み込んでくれる。Carme Canela & Lluis Vidal:Miles Universe(Fresh Sound FSNT183)16bit44.1kHzFlac1.Old Devil Moon2.My Ship3.Someday My Prince Will Come4.Love for Sale5.I Fall in Love Too Easily6.My Man's Gone Now7.Stella by Starlight8.My Funny Valentine9.Human Nature10.Blue in GreenCarme Canela(vo)Lluis Vidal(p)Recorded in Barcelona, May 31 & June 1, 2004ところで、一昨日パソコンが壊れてしまった。メーカーとチャットでやり取りしたが、修理が必要であることがわかった。今日業者が引き取りに来たが、一応チェックが終わるのが2、3日。修理が必要な場合は2週間程かかるようだ。筆者はノートパソコンとiPadを使っていて、ブログの執筆やファイルのダウンロードはパソコンを使っている。ブログは取り敢えずiPadでもやれないことはない。また、ネットワークプレイヤーの駆動もiPadのアプリで何とか出来る。問題なのは、新たに購入したハイレゾファイルをiPadでダウンロードするのが面倒なこと。一番問題なのは今のところ「ファイル」アプリでNASにアクセス出来ないこと。購入したもののダウンロードできていないアルバムが2個あり、早急になんとかしたいところだ。iCloudに余裕があるので、取り敢えずiPadにファイルアプリでファイルをダウンロードした。ところが、ノートパソコンで使っていたHDDはiPadでは書き込みができないことが分かり、そこで中断してしまった。どうやらWindowsのPCが治らないと先に進まない感じだ。CPUが第8世代で、OSの更新もまだなので、故障が軽症でない限り、ミニPCの導入も考えなければならない。しばらくは悩ましい日々が続きそうだ。
2024年03月28日
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出典:ルツェルン新聞この前百田尚樹氏のyoutubeのサムネを観たらピアニストのマウリツィオ・ポリーニ氏(1942–2024)が亡くなられたことが書いてあった。少し見てから、Xを覗くと凄い量の投稿がアップされている。今更ながら20世紀後半を代表する偉大なピアニストであったことを実感する。最近は体調を崩すことが多く、最後の演奏会は昨年10月にチューリッヒで行われた演奏会あったらしい。書き込みによると、譜めくりの人と舞台上で口論し、演奏もボロボロだったらしい。筆者も何回か氏の最近の演奏が不調であることについて書いたことがあるが、体調が悪かったことも原因の一つだったのかもしれない。年のせいにしていたが、体調が悪かったら仕方がないと思う。悪く書いたことに対し、お詫びをしなければならない。こちらの記事によると2022年の夏のザルツブルクからキャンセルが続き、チューリッヒでのリサイタルが回復してから初のリサイタルだったらしい。それがこんなことになって、何ともお気の毒だ。多分、演奏が不出来だったことと、体調が思わしくないことが重なったための出来事だったのかもしれない。ルツェルン新聞月刊音楽祭関連記事に彼の生い立ちから業績までがまとまって書かれていて参考になる。筆者も例にもれず昔から彼の演奏に親しんでいたものだ。もっぱら独奏のアルバムを聞くことが多かった。残念ながら生を観ることはなかった。協奏曲はアバドと共演したいくつかを除き聞いたことがない。よく聴いたのは、ご多分に漏れずショパンの「練習曲集」、シューマンの「交響的練習曲」、シェーンベルクの「ピアノ曲集」など。バルトークの協奏曲もよく聴いたものだ。彼の演奏は、それまでの概念を超えるような革新的な演奏が多かったと思う。個人的にはシェーンベルクのピアノ曲に開眼?したのはポリーニの演奏のおかげだ。それまでもグールドの演奏などがあったが、数がもともと少なく、難解な演奏が多かったのが馴染めなかった理由だろう。ポリーニの音楽は明快な表現で、難解さが薄れ、理解しやすいものになっていた。残念なのは晩年の衰え。あれほど完璧な音楽を演奏していた方だからこそ、無念だっただろう。これで同年代の大物はアルゲリッチ(1941-)くらいしかいなくなってしまった。せめて彼女には長生きして演奏を聴かせてもらいたいものだ。
2024年03月26日
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大分前に入手していたシャクティの新作を聴く。ディストリビューターによると『ジョン・マクラフリンが率いるSHAKTI結成50周年。70年代にたった3枚のアルバムをのこした あの伝説的グループ46年ぶりの新作が完成!!』とのこと。このグループ、マクラフリン繋がりで耳にしたのだが、癖の強いヒンドスタン音楽ためか、最初なかなか馴染めなくて、放置してた。ところがしばらくぶりで聴き返したら、以前よりはだいぶ耳に入ってくる。どうやらメンバーのクレジットを見て、Konokol(コナックル)という楽器が何か調べたことが切っ掛けになったようだ。youtubeで解説を観ているうちにわかってきた。こちらには楽譜も載っていて、このテクニックがいかにすごいかが分かる。簡単にいうとヴォイスパーカッションの一種類なのだろうが、これはインドで古くから使われている演奏方法のようだ。所謂話しながら太鼓をたたくトーキングドラムの一種らしい。ところがこれが猛烈な速さでやる超絶技巧でそれも変拍子。とても普通の人にはできない程の活舌だ。自分でやってみたが短い時間ならできそうだが、長くなったら全然ダメ。恐るべき超絶技巧だ。さすがゼロを見つけた民族だと、何故か関心してしまった。wikiによると、マクラフリンはこの技法を作曲に利用しているとか。最初はコナックルの超絶技巧にばかり目を奪われていたが、ガネーシュ・ラジャゴパランのヴァイオリンも一癖も二癖もある濃厚な演奏。シャンカル・マハデーヴァン(1967-)のヴォーカルの存在感も半端ない。インドのミュージシャンの存在感が圧倒的で、マクラフリンは少し影が薄い。彼らのバランスがいいのは、キャッチーなテーマの「Changay Naino」だろうか。曲毎の違いや特徴がつかめず、ただ「凄い」としか言えないところが何とも情けない。今のところ、民族音楽を聴くようなスタンスで、何回か聴き続けて理解するしかないようだ。音楽に陽気な要素があるところが、救いになるかもしれない。Shakti:This Moment(Abstract Logix ABLX068V)16bit44.1kHz Flac1.John McLaughlin,Shankar Mahadevan,Selvaganesh Vinayakaram,Zakir Hussain:Shrini’s Dream2.Shankar Mahadevan:Bending The Rules3.John McLaughlin:Karuna4.Selvaganesh Vinayakaram:Mohanam5.Shankar Mahadevan,Carnatic Traditional,U. Srinivas:Giriraj Sudha6.John McLaughlin:Las Palmas7.Zakir Hussain:Changay Naino8.John McLaughlin:Sono MamaJohn McLaughlin, Shakti:John McLaughlin (g,g-Synth)Zakir Hussain (Tabla, Konokol)Shankar Mahadevan (Vo,Konokol)Ganesh Rajagopalan (vn, Konokol)Selvaganesh Vinayakram (Kanjira, Mridangam, Ghatam, Konokol)Recorded at Mediastarz Studio, Monaco by Jean-Michel AubletteRecorded at Swara Yogo Studios, Covington, WA, USA and Offbeat Music Ventures, Chennai by Aditya SrinivasanRecorded at Lambodara Studios, Navi Mumbai by Ameya Mategaonkar
2024年03月24日
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先ごろ亡くなったジャズ・ピアニストのチック・コリアが最晩年に作曲したトロンボーン協奏曲の録音が出た。ニューヨーク・フィルのジョセフ・アレッシ(1959-)の委嘱作品で、アレッシとチックの橋渡しをしたのが同じスライド・モンスターズのメンバーである中川英二郎というのはよく知られた話。原曲は多分オーケストラ伴奏のはずだが、今回の録音は吹奏楽の伴奏。もともと高かったのでペンディングにしていたのだが、prostudiomastersが安いのが分かり購入した。この作品のクレジットを見ると、コリア、アレッシのほかにジョン・ディクソンという作曲家の名前が入っている。この方が吹奏楽版の編曲をされたようだが、管弦楽版でもアレンジを手掛けている。全体にスパニッシュ・フレーバーの横溢した楽しい作品で、ラテンの乾いた砂漠を思い出させるような雰囲気も感じられる。全体的にチックの作品らしく屈託のない表情が感じられるような作品だ。一寸シリアス・ムードなのは間奏曲的な第3楽章くらいなものだろうか。ブラスの扱いもブラス・アンサンブルを聴いているようなところもあり、ブラス・ファンとってもなかなか興味深い作品だ。打楽器やピアノ、ハープなども使われていて、色彩的な作品になっている。チューバが結構聞こえるのも珍しい。最終楽章は普通なら力の入った曲になるものだが、変拍子でマラカスが活躍するエキゾチックな楽章になっているところがチックらしい。トロンボーン・ソロは超絶技巧は聞こえないものの、聞かせどころ十分で、アレッシのメロウなハイ・トーンと共に楽しめる。インタビューでは第4楽章のコーダの部分で自分の最高音であるF?が出るところがあると話されていたので注目してほしい。一応クラシック作品なのだが、チックが元気な頃のクラシック系の作品に感じられる気負いがなく、ある意味練れた作品だろう。筆者はモートン・グールドの作品のムードに近いものを感じた。おそらくは今後も演奏されていくに違いない、チック晩年の傑作!。後半はJorge Machainの作品。マシャインはメキシコ生まれのトランぺッター、作編曲家で、現在ラスベガスで活躍しているそうだ。作曲はクラシックとジャズ、映画音楽など多岐にわたるようだ。「Five Cities」は、ブラス・クインテットとウインドバンドのための協奏曲で、このアルバムの指揮者トーマス・G・レスリーがボストン・ブラスのために委託した15分ほどの作品。吹奏楽にジャズのスインギーなテイストの加わった、なかなかしゃれた作品。第1曲はファンファーレ的な曲。第2曲は「City Of The Sea」と題された静かな曲。波を思わせるような金管のアルペジオが聞こえる。「City of The Forest」と題されたブラス・アンサンブルのためのカデンツァは、トランペットのハートンで度肝を抜かせる。最後の「City Of Mankind」はカデンツァからのムードを惹き付いてバック共々熱気のある演奏が続く。スインギーでハイ・トーンを駆使したトランペット・ソロが光る。他にホルヘ・マシャインのオリジナル「Her Name is Nessa」と彼が編曲したスタン・ケントンの「Fanfare for the New」が収録されている。録音は悪くないが、くすんだ音色でもう少し透明度が欲しかった。オーケストラ版全曲25分ADDA·SIMFÒNICA ALICANTEJosep Vicentアレッシのインタビュー1分47秒からチックが登場する場面もある。インタビューの対訳UNLV Wind Orchestra Joe's Tango: Concerto for Trombone & Other Works(Navona Records NV6572)24bit 96kHz Flac1.Hugo Montenegro: Fanfare for the New(arr. For Wind Ensemble by Jorge Machain)2.Corea: Concerto for Trombone(arr. for Tronbone & Wind Ensemble by John Dickson)6.Jorge Machain: Her Name is Nessa7.Jorge Machain: Five CitiesJoseph Alessi(tb track 2-5)Boston Brass (track7-9)Hugo Montenegro, Jorge MachainUNLV Wind OrchestraThomas G. Leslie
2024年03月22日
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21歳で夭折したというオースティン・ペラルタ(1990-2012)というアメリカのピアニストの「Endless Planets」というアルバムがCDとLPで再発され、ダウンロードもリリースされた。Deluxe EditionにはBBC Maida Vale Studiosでのライブが収録されている。いつものprestomusicで紹介されていて、spotifyで聞いたらいい感じだったので、bandcampからダウンロード。ホーンはテナーとアルトの二管編成。全体にごつごつとした肌触りで、すんなりと馴染む音楽ではない。最初の「The Lotus Flower」は、宇宙空間を浮遊しているような不思議な感覚を覚える。ホーンはソプラノ・サックスのみで、テナー・サックスも入るとこの感覚にはならないだろう。「Capricornus」は速いテンポの刺激的なフレーズがホーンから出て、続いて力強いピアノ・ソロが続く。かなりフリーっぽいタッチで、荒々しさもある。ホーンのソロもフリー系で、ハードタッチの演奏は2000年代の録音にしては珍しい。Zach Harmonのドラムスが暴れまくる。「The Underwater Mountain Odyssey」は2ホーンによる激しい感情の表出が感じられるイントロ。ダークなムードのピアノ・ソロ、同じカラーのテナーサックスの咆哮、と有無を言わせぬ迫力に圧倒される。「Ode To Love」は甘さを排した硬質なバラード。ソプラノ・サックスのソロが入る。ピアノのパーカッシブでアグレッシブなバッキングが目立つ。「Algiers」はアルジェリアの首都アルジェのこと。その名の通りアラビア風の音楽で、とても白人の作った音楽とは思えない土着風の音楽で、アルバム随一の聞きもの。ベースのオスティナートに乗ってホーンが躍動する。ここでもピアノのバッキングが鋭い音でホーンを挑発する様な動きをする。ペラルタの独特な個性が発揮されたナンバーだ。フェイドアウトすると思うと、シンセのどーんとした音が被さり、ムードが一変する。風を模したような音とレコードをトレースするようなぱちぱちというノイズが混入するという訳の分からないエンディング。「Epilogue: Renaissance Bubbles」は2分に満たない音楽。イギリスのニュージャズ・電子音楽グループであるザ・シネマティック・オーケストラとそのメンバーであるハイジ・ヴォーゲルのヴォーカルが入る。このトラックの存在理由がよく分からない。ホーンはどちらも太い音で荒々しいプレイ。バシバシとブっ叩くドラムス、ぐいぐいと迫ってくるベースともかなり過激なプレイ。ドラムスはライブで見ればかなりの迫力を感じるだろう。BBCでのライブは4曲で、最初は本編でも演奏されていた「Algiers」。本編のような乾いたテイストではなく、ウエットでエネルギッシュな演奏。ベース・ソロはなく4分ほど短い。他の3曲は本編では演奏されていない。どの曲もソプラノ・サックスと男性ヴォーカルのユニゾンが入ったメローなバラードだ。どの曲も浮遊感の感じられる不思議な音楽。「DMT Song」は男性ヴォーカルの入った、1分半ほどのメローなバラード。「Eclipses」はピアノとドラムスの激しいプレイとサックスとヴォーカルのユニゾン「Garden」はエレクトリック・ピアノが使われている。ユニゾンはおなじようなフレーズが延々と繰り返され、そこにシンセによる効果的なエフェクトが挿入される。エレクトリック・ピアノの効果だろうか、夢心地な気分になる。サックスもディレイが使われている。スタジオ録音は押し出しの強い録音だが、広がりがあまりなく、多少歪みっぽい。またホワイトのイズがちょっと気になる。ライブはさらに音が悪く、ベースの音も大きすぎる。ということで、オースティン・ペラルタの特異な個性が発揮されたアルバム。これを聴くと、僅か21歳で早逝されたのが何とも惜しまれ、その独自の才能がいかに貴重であったかが分かる。Austin Peralta:Endless Planets (Deluxe Edition) (Brainfeeder BF014)16bit44.1kHz Flac1. Introduction: The Lotus Flower2. Capricornus3. The Underwater Mountain Odyssey4. Ode To Love5. Interlude6. Algiers7. Epilogue: Renaissance Bubbles8. Algiers (Jondy BBC Maida Vale Session)9. DMT Song (Jondy BBC Maida Vale Session)10. Eclipses (Jondy BBC Maida Vale Session)11. The Garden (Jondy BBC Maida Vale Session)Austin Peralta(p)Zane Musa(as)Ben Wendel(ts)Hamilton Price(b)Zach Harmon(ds)Strangeloop(Electronic Manipulation)Tracks 1-6 recorded live at Drum Channel: Oxnard, CA on August 2nd, 2009; track 7: recorded at W Studios: Brooklyn, NY on October, 18th, 2009
2024年03月20日
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ドロシー・ハウエル(1898 - 1982)というイギリスの女流作曲家の管弦楽曲集。presto musiで紹介されていて、spotifyで聞いたところ、なかなかいいので、prostudiomastersから¥1600で入手。wikiによるとドロシー・ハウエルはバーミンガムで生まれ、殆どの作品が未出版。交響詩「ラミア」やバレエ音楽「クン・シー」が知られているそうだ。アルバムは7枚ほどで、すべて2000年代に入ってからのレコーディング。ディストリビューターによると『批評家のジョゼフ・ホルブルックが1921年に出版した現代英国作曲家ガイドに、エセル・スマイスとレベッカ・クラークと並んで、彼が重要だと考えた、たった3人の女性作曲家の1人として紹介された』とのこと。上記の二人も筆者が最近知った作曲家で、スマイスはシャンドスの交響曲集、クラークは「ライオネル・ターティスに捧ぐ」というティモシー・リダウトのアルバムで聞いたばかりだ。ハウエルは「ラミア」で成功を収めたものの、1940年以降はその曲が軽視され、2010年のプロムスシーズンで復活するまで待たねばならなかった。実際このアルバムの5曲のうち「ラミア」以外は初録音だ。ハウエルは、生前、「イングリッシュ・シュトラウス」と呼ばれていたそうだ。一瞬して聴き手の心をつかむような力はないが、映画音楽を聴いているような分かりやすく生気に富んだ音楽だ。物語を思わせるような明快な作風で、色彩豊かなオーケストラもよく鳴っているが、シュトラウス流の金管が豪壮に鳴るとうことはない。メロディー・ラインがディーリアス風で、田舎の雰囲気を思い起させる。涼やかな弦のサウンドが印象的だ。「ユーモレスク」はオリエンタル風味満点のファゴットのソロから始まるイギリス人らしいウイットに富んだ音楽だろう。洗練されたサウンドでスカッとする。序曲「ザ・ロック」は速いテンポの明るく快活な曲で、ここでも豊かなサウンドが聞かれる。テンポを落とした中間部では東洋風なモチーフやディーリアスを思い出させる旋律が出てくる。「3つのディヴェルティスマン(1940年)」はハウエルの最後の大規模な管弦楽作品だが、初演は戦争のため1950年まで待たなければならなかった。コミカルでカスタネットが印象的な第1楽章、ゆったりとした時が流れる第2楽章、管楽器の活躍する第3楽章からなる。第3楽章のへんてこなテーマが異彩を放っている。イギリスのロマン派を代表する詩人ジョン・キーツ(1795‐1821)の詩による交響詩「ラミア」は14分ほどの作品。女性に変身したラミアという蛇が、美青年リュキウスに恋をし、結婚するが、詭弁学者のアポローニアスはレイミアが蛇の怪である事を見抜き、これを祓う。ラミアは消え去り、リュキウスは死ぬという物語。イギリス人らしからぬ濃厚な表現とストーリーテラーぶりで、イギリスのシュトラウスと形容された理由にも納得できる。「クーン・シー」はハウエル唯一のバレエのための音楽で演奏時間は21分。17世紀の中国を舞台に、裕福な官僚の娘クーン・シーと官僚の簿記係であるチャンの悲恋の物語。彼らが愛し合うことを知った官僚がちゃんを殺し、それを知ったクーン・シーが家を焼き払うが、神々が二人を憐れんで彼らを永遠に一緒に過ごすために鳩にするという物語。原色的で異国情緒満点の音楽が楽しめる。指揮者のレベッカ・ミラーはアメリカ、カリフォルニア出身の女流指揮者。劇的な表現に長けており、ハウエルのアニメ的な魅力を余すところなく表現していた。BBCコンサート・オーケストラは悪くないが、所々限界が感じられる。録音はあまり抜けがよくない。こういう知られていない曲を聴くときに、ブックレットが付いていないのは痛い。他社では付いているので、付いていない理由を知りたいところだ。ドロシー・ハウエル: 管弦楽作品集 (Signum SIGCD763)24bit96kHz Flac1.ユーモレスク(1919)2.序曲「ザ・ロック」(1928)3.3つのディヴェルティスマン(1950)6.交響詩「ラミア」(1919)7.Koong Shee(1921)レベッカ・ミラー(指揮)BBCコンサート・オーケストラ録音:2022年6月、セント・ジュード教会(ロンドン)追伸念のためリリース元に問い合わせたら、もともとブックレットはなくて、いろいろなところを探しまくって送ってくれた。何か悪いことをしてしまったようで申し訳なかった。
2024年03月18日
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偶然見つけた1枚。名盤の誉れ高い宮間利之とニューハードの「4つのジャズ・コンポジション」がハイレゾ化されていることを知った。presto musicでは昨年6月のリリースで早速ダウンロード。1970年の録音だが、サウンドがリアルで、とても50年以上前の録音とは思えない。レンタルCDをリッピングして楽しんでいたのだが、比較する前にファイルを削除してしまったのが痛い。このCDは2016年のリイシューで、今回ハイレゾ化した音源は昨年Lighthouse Musicからリリースされた音源によるもののようだ。とにかくノイズが聞こえない。ヴォリュームを上げても聞こえてこない。そこから立ち上がりの鋭い音がバシバシ聞こえてくる。CDの音の印象がだいぶ薄れてしまったが、これほどのインパクトは感じなかったはず。衝撃度はCDの比ではない。内容についてはこちらでレビューしているので、繰り返さないが、良くも悪くも昔の日本のビッグバンドのサウンドが懐かしく感じられる。今聴くと、前田憲男の「生霊」はミンガスからの影響がかなり強いことが分かる。筆者はA国のサイトからのダウンロードだが、日本からのアクセスでも国内価格より1,000円ほどお買い得だ。Toshiyuki Miyama & New Hard Orchestra:Four Jazz Compositions -Based On Japanese Classical Themes(DECCA 5551588)192kHz Flac1.佐藤允彦:無明頌2.高見弘:白拍子3.前田憲男:生霊4.山木幸三郎:千秋楽宮間利之とニューハード
2024年03月16日
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約20万枚のベスト・セラーになったというルノー・カピュソンのアルバム「シネマに捧ぐ」の続編で、フランス人作曲家の作品集。原題は「Les choses de la vie」。前作はちょい聞きで、それほどでもないと思い、保留にしていた。今回は気に入ったナンバーがいくつかあり、レ・シエクルが共演していることも理由でダウンロード。いつものpresto musicからのダウンロードで、ワーナーがk国よりも安いM国が見つかったので、そこからのダウンロード。ブックレットにこのアルバムについてのカピュソンの言葉が載っている。『このアルバムの狙いは、ジョルジュ・ドルリュー、フィリップ・サルド、ミシェル・ルグラン、モーリス・ジャール、ジョゼフ・コスマ、フランソワ・ド・ルバイユ、ジャン=クロード・プティ、ウラジミール・コスマ、フランシス・ライ、ガブリエル・ヤレド、フィリップ・ロンビ、アレクサンドル・デプラといったフランス映画の最も優れた作曲家たちの作品によるアルバムを制作すること。彼らの音楽を通して、映画に出演していたロミー・シュナイダー、ミシェル・ピコリ、イヴ・モンタン、フィリップ・ノワレ、ルイ・ド・フュネスなどの魔法の瞬間を蘇らせることができれば幸いだ。』とのこと。地味な曲が多いが、全体にフランス音楽らしい麗しい、しゃれた雰囲気がして、悪くない。ただ、あまり突っ込んだ表現はされていないので、曲によっては物足りないこともある。するりと交わされたような気になる曲もある。カピュソンのヴァイオリンは艶やかな音色の華やかで詩的な雰囲気満点の演奏。気に入ったのは「枯葉」。実に詩的で、しみじみとした余韻の残る演奏。ヴァースから始めていて、イブ・モンタンの歌を思い出してしまった。spotifyでモンタンの歌を聞いたら、今回と同じような雰囲気がしている。フランシス・レイの「ある愛の詩」が入っているのも嬉しい。この曲、最近はめっきり聞くことがなくなってしまったが、改めて聞くといい曲であることを再認識。2分ほどの少し速めのテンポで、もう少しじっくりと演奏してほしかった。筆者は聞いたことがなかったが、フランスの最高の映画音楽作曲家といわれているジョルジュ・ドルリュー(1925-1992)の曲が7曲も入っているのが目立つ。ミシェル・ルグランでもなく、フランシス・レイでもないところがみそだ。wikiによるとフランソワ・トリュフォーの主要な映画作品で音楽を担当したとのこと。このアルバムもトリュフォーの映画は『終電車』他数曲が演奏されている。ここに収録されている曲を聴く限り、ウエットで悲しげな表情が特徴のようだ。その中では優雅な「ベスト・フレンズ」や「終電車」、「わたしたちの宣戦布告のRadioscopie」など格調高いクラシカルな作品が良かった。「サン・スーシの女」の情感漂う演奏も心に沁みわたる。総じてあまり明るい曲がなく、同じ調子の曲が続くので後半はちょっと尻すぼみ気味。その中では映画『追想』~クララ1939のスインギーで夢見るような表情がいい。「アラビアのロレンス」が入っているのもアルバム全体のカラーから行くとちょっと異質な気がする。最後は作曲者自身のアレンジによる『ニューヨーク←→パリ大冒険』のお祭り騒ぎで、なんとか帳尻を合わせている感じだ。編曲は主にシリル・レーンという方が行っているが、ばらつきが多い。カピュソンの演奏はもっと濃い表情をつけてほしいところもあるが、こんなものかもしれない。この団体は古楽器とはモダン楽器を使い分けているらしいので、今回はモダン楽器を使っているのかもしれない。レ・シエクルはサウンドに厚みと気品があり、フランスの香気が漂ってくるようなサウンドで、この楽団の起用は成功したと思う。筆者としては古楽器のサウンドで映画音楽がどのように響くのか是非聞きたかったところだ。直近のサン=サーンスの「動物の謝肉祭」のアルバムを聴くと、古臭さが目立ち、昔の無声映画のような感じになっていたので、却って逆効果になってしまっていたかもしれない。録音は悪くないがテュッティで混濁気味になるところが惜しい。ルノー・カピュソン:すぎ去りし日の...(Erato 5419779905)96kHz Flac1.ジョルジュ・ドルリュー:映画『ベスト・フレンズ』(1981)2.ミシェル・ルグラン:映画『華麗なる賭け』~風のささやき(1968)3.ジョルジュ・ドルリュー:映画『愛と戦火の大地』~別れのコンチェルト(1992)4.ジョゼフ・コズマ:映画『夜の門』~枯葉(1946)5.ジャン=クロ-ド・プティ:映画『愛と宿命の泉』(1986)6.ジョルジュ・ドルリュー:映画『終電車』(1980)7.フィリップ・サルド:映画『すぎ去りし日の…』~エレ-ヌの歌(1971)8.フランソワ・ド・ルーベ:映画『追想』~クララ1939(1975)9.ジョルジュ・ドルリュー:映画『わたしたちの宣戦布告』~Radioscopie(2012)10.ジョルジュ・ドルリュー:映画『メモリーズ・オブ・ミー』(1988)11.カブリエル・ヤレド:映画『イングリッシュ・ペイシェント』~アズ・ファー・アズ・フローレンス(1996)12.ジョルジュ・ドルリュー:映画『サン・スーシの女』(1982)13.フィリップ・サルド:映画『フォート・サガン』(1984)14.フランシス・レイ:映画『ある愛の詩』(1970)15.フィリップ・ロンビ:映画『戦場のアリア』~無のテーマ(ロンビ編)(2005)16.ジョルジュ・ドルリュー:映画『親愛なるルイーズ』(1972)17.アレクサンドル・デスプラ:映画『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)18.モーリス・ジャール:映画『アラビアのロレンス』(1962)19.ウラジミール・コスマ:映画『ニューヨーク←→パリ大冒険』(コスマ編)(1973)Cyrille Lehn arrangements (1, 2, 4–14, 16–18)ルノー・カピュソン(vn)レ・シエクルダンカン・ウォード2023年3月27-29日、アルフォールビル、ONDIF Studio
2024年03月14日
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