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「経営戦略考」の1月29日号に日経産業新聞の「ユニバーサルミュージックは会員組織を新設し、音楽ソフトの通信販売事業を本格展開する」という記事が取り上げられています。(以下概要)その記事では、「小売店での音楽ソフト販売が減速傾向にある中で、通販など特定ルート向けに企画・販売する特販商品は、レコード会社の売上高に占める比重が高まりつつある」と指摘している。●小売店で1枚ずつ売るのではなく、会員組織を立ち上げ、通信販売という売り方で売る。その新しい売り方(販売システム)での販売を伸ばそうというわけだ。●ユニバーサルミュージックが立ち上げる会員組織では、「クラシック音楽と、海外の音楽とゆかりの深い美しい風景をハイビジョン映像で収録した」という「音楽・夢紀行」なる商品を、「全24巻セットから1巻ずつ毎月届ける」のだそうだ。いわゆる頒布会方式の売り方だ。●ターゲット顧客は「普段は音楽ソフトの購入金額が少ない50~60代」の人たちとなる。事業の3要素のうち、「販売システム」を変えることで、「顧客」の潜在需要を顕在化させることができるわけだ。●「商品」についても、従来の音楽ソフトとは異なり、セットものとなる。事業の3要素のうち、「販売システム」の変更に伴い、「商品」も変更になっている。●「顧客」「商品」「販売システム」は、それぞれ独立した別個の存在ではなく、相互に依存している。考えてみれば当然のことだ。女性向けの商品を買うのは、主に女性であり、女性が好むお店も、ある程度は特定される。●業績を拡大する戦略を策定するにあたっては、冒頭で述べたとおり、「顧客」「商品」「販売システム」のうち、まずはいずれかの要素を変えることを考えてみると、ヒントを得られるだろう。●しかし実際に成果を上げるには、単純に1つを変えるだけでは不十分で、1つを変えることに伴い、残りの2つもアレンジしていくことが必要となる。結果として、3つの要素がそれぞれ、上手い具合に最適化されることになるわけだ。(引用終わり) かつて、コンサートホール・ソサエティという組織がありました。これは上記のような頒布会の組織です。私も会員だったことがあります。 その時の経験から言うと、まず良質なソースでなければならないということです。その点ユニヴァーサル・ミュージックなら問題は全くありあません。 次に、自分でソフトを自由に選択できるということも重要ではないかと思います。 今度のシステムはいわばお仕着せです。NHKの名曲アルバム見たいな感じで、音楽を楽しむというにはちょっと中途半端になってしまう可能性があります。 映像が主なのか音楽が主なのか、実物を見ないと何とも言えませんが、この記事からするとコンセプトが中途半端なような気がします。 また、ターゲットは「普段は音楽ソフトの購入金額が少ない50~60代」となっていますが、50~60代といっても、具体的にはいろいろあるわけで、普段音楽ソフトを買わない人をどうやって掘り起こすのかも分かりません。 音楽ソフトを買わないということは、関心がないかお金がないかどちらかで、関心がなくて、不況でお金がないとなったら、それを振り向かせることは並大抵のことではないと思います。 今も存続しているかどうかは分かりませんが、会員制のレコードクラブみたいなものは従来からソニーのファミリークラブみたいなものがありましたが、それが成功したという話は聞いたことがありません。 音楽ソフトを買わない方たちを振り向かせるためには、まずいろいろな選択肢が必要でしょうし、セットものならではの企画とお得感がなければなかなか消費者には興味を持ってもらえないと思います。 音楽ファンをターゲットにする場合には、それなりの方法があると思います。たとえば、小学館の「魅惑のオペラ」がヒットしているのは、一流の演奏家によるDVDと豪華な解説本がリーズナブルな価格で手軽に購入できるということが受けているのだと思います。 よくマーケティングで言われるのは、「新規顧客よりリピーターを増やせ」ですから、音楽ソフトを買わない人たちをターゲットにするのはかなり困難なことではないでしょうか。 ということで、個人的には否定的な感想になってしまいました。
2009年01月31日
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1979年11月に最初のレコードを出してから、今年で30周年を迎えるシャンドス・レコードの「マイルストーンズ」と題されたアンソロジーが出ました。 私は、先月の前半HMVで見つけて、いろいろ探して英国のAMAZONに予約を入れました。ところが発売日のが1月3日なのに在庫切れで、送るのが2月に入ってからだという知らせが入りがっくりしました。ところが、そのCDが2月になる前に入りました。HMVだとマルチバイでも5400円あまりですが、英国AMAZONで購入したら、送料込みで34.4ポンドあまりです。1ポンド135円として計算しても、4600円あまりで、HMVよりもさらに安く、1枚当たり160円弱という価格です。 個人的にはシャンドスはあまり持っていないので、ダブりもレスピーギの「シバの女王ベルキス」が入った1枚だけで、ラッキーでした。 全体的には、器楽曲がほとんどなく、ロマン派以降のオペラもバラの騎士のハイライトしかも英語版が1枚で少し不満です。 古い音楽が比較的多く、現代曲もほとんどないのも不満です。この30枚組の狙いはどうなのか分かりませんが、おそらく今まで聞いたことのないファンにアピールするという狙いが大きいと思います。CDは紙ジャケに入っていて、ジャケットの裏に曲目と演奏者がクレジットされています。各々のCDにはコメントが付いていて、なぜそのCDが選ばれたかをうかがい知ることができます。ギブソンの「惑星」は1978年シャンドスの初めてのリリースで、デジタルPCM録音の走りだと書かれています。 曲目解説はなく、別に創業者であるブライアン・カズンズとエンジニアの息子ラルフの挨拶が載っている小冊子とシャンドスのカタログがついています。まあ、この価格なら仕方のないところですが、録音年月日くらいは欲しかったところです。 その、小冊子によると、ブライアンは仕事を始めたときには、写譜とアレンジを手掛けていたそうです。その後、フリーランスとしてプロデューサー、サウンド・エンジニアとしてRCA,EMI,DGGなどの著名レーベルの仕事をし、その後息子のラルフをスタジオに引き込んで、一緒に仕事をするようになったのだそうです。 また、オペラでは、キャストのクレジットはありますがナンバーのクレジットがないのも不親切です。 しかし、簡素ではありますが、ジャケットデザイン、レーベルデザインともこのボックスのために新たに版下をおこしたもので、手は抜いていないところはさすがだと思います。小冊子を見ていたらウエッブサイトですべてのCDのブックレットをPDFでダウンロードできると書かれてあるので、見に行きました。なるほど、可能なようです。これならコストもかからないし、賢いやり方です。 そういえば、シャンドスではこのサービスを結構前から行っていた気がします。 これであればポータルさえ作れば、既存のリソースをそのまま使えるので、賢いやり方だと思います。というかこれしか方法はないと思います。 しかし、PCを使っていない人はどうなるんでしょうか。そこらへんの配慮がほしかったと思います。 また、ケースの高さが通常のCDケースよ2センチは高く、同じ棚には置けないのは少々困りものです。これはカタログのサイズが大きいからで、なぜ同じ大きさにできなかったのか理解に苦しみます。 これから、ゆっくりと聞いていきたいと思いますが、全部聞くのがいつになるか分かりません。 なにしろ、去年買ったマイルスの「オン・ザ・コーナー」の完全版もバーンスタインのマーラーの交響曲全集のDVDもほとんど手つかずですから。私の場合には、こういう大部のものを買うと、あまり聞かないことが多いです。それは多分買ったことで満足してしまうからではないかと思います。 ところで、このボックスでは、英国やロシア物が多くを占めているため、今まで聞いたことのない作曲家の作品を聞くことができるのも楽しみの一つです。 たとえば、アレクサンダー・グレチャニノフというロシアの作曲家は聞いたことのない名前です。彼はリムスキー=コルサコフの弟子のようです。 また、フランスのリリー・ブーランジェの作品を集めたCD「ファウストとエレーヌ」もあります。 とりあえず、昨日から車で順に聞いていくことにしました。 まず、キングズ・シンガーズのデビュー・アルバムを昨日聞きました。 最近は全く聞かなくなりましたが、彼らが初来日して一時ブームになった時は、彼らのレコードをよく聞いていたものです。このCDは聞き覚えのある歌と懐かしい歌声でとても楽しむことができました。 今日は、ガンバの映画音楽集の中からヴォーン=ウイリアムズの第1集を聞き始めました。 ということで、これから先全部聞き通すのがいつになるか分かりませんが、楽しんでいきたいと思います。 ※Music Web internationalというサイトにシャンドス30周年にまつわる記事が載っていますのでご興味のある方はぜひご覧ください。ロブ・バーネットによる30周年の記事カズンズ父子のインタビュー
2009年01月30日
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今日帰宅したら、子どもがPCに座っています。どうやらiTuneにCDを入れているようです。 しばらくして、いなくなったので見たらばCDの入った袋が転がっています。「CDをかたずけろ」といったのですが、「オレのじゃない」という返事。 その会話を聞いていた母が、置いたのは自分だと言います。なにやら、引出しの中にあったものを持ってきたとか。見ると、ほとんどはレコード芸術の付録で私が捨ててしまったと思っていたものでした。見てみると1997年と書かれています。 その中に1枚だけ8cmCDが入っています。 レーベル面を見ると、山口百恵の歌が3曲入ったものでした。記録面は汚れで汚くなっていますが、興味本位で聞いてみました。 タイトルは「山口百恵」としか書いてありません。 曲は「秋桜」、「いい日旅立ち」そして「さようならの向こう側」です。発売されたのは1977年~1980年で3つ目の曲は引退前に発売された最後のシングルでした。 とても懐かしく聞きました。特に「いい日旅立ち」は個人的には昔カラオケでよく歌っていたものです。 普通だと、この手の音楽を聞くと古いなと思ってしまうのですが、このCDに限って言えば、いつも古臭いと思う伴奏が、編曲のためかそれほど古いとは思えませんでした。それにしても、昔の歌を聴いていると、当時感じていたののとはまるで違った感じ方になるようです。 山口百恵シングル曲一覧というサイトがあって、それによると「秋桜」が46万枚、「いい日旅立ち」が53.6万枚、「さよならの向こう側」が37.6万枚と書かれています。 またオリコンのシングル総売上ランキングは2008年5月19日付のデータでは11,418,030枚で24位となっています。 昔は、山口百恵は歌が上手いと思っていたのですが、改めて聞いてみると、一部音程が怪しげなところが何箇所かあります。 でも、歌そのものにも古臭さは感じられず、改めて彼女の歌の素晴らしさを再確認したような次第です。 この8cmCD、ケースがなかったのですが、iTuneにいれてネットでアートワークを探していたら、なんとありました。 正式のアルバム名は「秋桜 / いい日旅立ち / さよならの向う側」で、曲名をつなげただけというそっけないもの。発売が1993年10月ですがまだカタログに生きているようでびっくりしました。いまだに需要があるんでしょうか?やはり、いいものは時代を超えて生き続けるということでなのかもしれません。山口百恵:秋桜/いい日旅立ち/さよならの向う側(SONY SRDL3715)1.秋桜2.いい日旅立ち3.さよならの向こう側
2009年01月28日
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1950年代一世を風靡したボンデージ・モデルの草分けベティー・ペイジがメディアから忽然と消えるまでを描く映画。テネシー州ナッシュビルに生まれたベティーは高校で主席だったのに、たった1教科がA-だったために、奨学金をもらって大学に行くことができなかった。そのため、教員養成所に行くことになったが、あまり好きではなかった。卒業後、短期間英語の教師を務めるが、ほどなくニューヨークに移住する。そこで、俳優養成所で学ぶ。授業料稼ぎのために、ヌードモデルを始める。写真家アービング・クロウと出会い、そこで好事家向けのSM系の写真やフィルムに多く出演する。それと並行して、ヌードモデルとして多くの雑誌の表紙を飾る。得意の絶頂と思われたが好事魔多し!。大統領のイスを狙うエステス・キーホーバーに彼女の写真が目をつけられることになり、彼女は思わぬ運命に翻弄されることになる。。。。■グレッチェン・モルが実物とそっくり顔は美人ですが個性的です。しかし、スタイルは抜群です。実物のインタビュー「13th Floor」を見ると映画よりもはるかに美人で、細面で癖がない顔立ちです。髪もブロンドです。映画では意識的に実物に似せていたと思いますが、それにしてもすごい技術です。本物は顔立ちが少しきつい感じですが、やはりスタイルは抜群です。当時は、SM的な写真は性的な興奮をあおるということで、禁止されていたようです。デビッド・ストラザーン扮するエステス・キーホーバーが開いたテネシー州の議会で、ベティのボンデージ写真に影響されて、ベティーのような格好をしたために青年が死んだと父親が訴えていました。今考えるとそういうことはあり得ないわけですが、当時はそういう写真自体が許せなかったのだろうと思います。ある意味、何でもありの現在が果たしていいのか悪いのか考えさせられる場面だったと思います。また、本屋で客の求めに応じて、引出しから出物を出す件は、どこの国も同じだなと思わず笑ってしまいました。このあたりのいかがわしさは、昔、ビニール本が流行した時の日本の本屋さんとよく似ています。■今昔の感あり映画ではアンダーヘアーが移る場面がありますが、今はR15指定だけで済んでいます昔ヘアーが映った映っていないと大騒ぎした時代があったことを思うと今昔の感があります。また、バニー・イェーガーの撮影明2匹の豹と撮影した有名な写真のシーンも出ていました。ただし、ヌードがいっぱい出てくるとはいえ、映画の作りは至極まっとうで、卑猥に感じる描写はありませんでした。最後の場面で表舞台から去ったベティ・ペイジが聖書を朗読する場面は、グレッチェン・モルの朗々とした発声と姿がとても崇高に見えました。■1950年代にぴったりの音楽音楽はクリフォード・ブラウンの「ジュードゥ」やアート・ペッパーの「Blue In」、ルロイ・アンダーソンなどで映画にぴったりでした。中でもエンドロールで流れるジュリー・ロンドンの「風と共に去りぬ」は圧巻でした。なお、ベティー・ペイジは昨年の12月にロサンゼルスで85歳で亡くなっています。 公式サイト
2009年01月27日
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宋文洲のメルマガ第114号(1/23日号)に興味深い内容が載っていたのでご紹介いたします。題して「能率と効率の違い」(引用開始)トヨタ式の導入の第一人者である若松義人さんの話です。先日、久しぶりに若松義人さんとランチしながら雑談しました。なんと彼は「トヨタは職人に頼らない。誰でも作れるようにするのがトヨタの強みだ」と言い切ったのです。そういえばそうです。トヨタ自動車が世界のトップメーカーになっている現在、その従業員も工場も市場も殆ど日本以外にあります。名実共に日本発のグローバル企業で日本の誇りですが、日本の職人に頼ったら今日はあり得ないのです。反対に衰退の一途を辿っているGMは職人に頼っているそうです。単一の車を生産する工場が多く、その工場の中で単一の作業に特化した工員も多いそうです。結局良い時はいいのですが、変化が必要な時には対応が遅れてしまいます。トヨタの工場では同じ生産ラインでも様々な車を生産することができます。また工員はなるべく多数の工程と作業を経験するように経営側が促しています。市場の変化に柔軟に対応できるようになるだけではなく、工員達が常に頭を使い、飽きないようにする工夫でもあるそうです。「職人」はなぜいけないか。この質問を若松さんにぶつけたたら面白い答えが返ってきました。「職人は能率を求めるが、経営は効率を求める」と。私のような外国人がもちろん、多くの日本人も「能率」と「効率」の区別ははっきり付かないと思います。若松さんは「能率は職人の能力で部分最適化であるが、効率は経営の能力で全体最適化だ」と言い切りました。若松さんが紹介してくださった広州トヨタの事例が面白いと思いました。広州トヨタの従業員の平均年齢は23歳です。当然皆、経験の浅い従業員ですが、生産ラインの直行率(完成車の合格率)は98%に達しているそうです。なんと日本の工場でも96%にしかいかないので広州トヨタは世界一の品質に到達していることになります。ちなみに倒産寸前のGMの直行率は60%台です。(中略)トヨタの改善は作業の改善ではなく「標準」の改善だそうです。トヨタ式においてはどんな作業にも必ず標準があり、どんな社員も必ずその標準に沿って仕事をするのです。改善とはその標準への改善であり、標準が変わった以上、誰が作業してもその標準を保証しなければなりません。作業毎、工程毎の標準が保証される仕組みがあるから、最終的な直行率が自然に保証されるのです。(引用終わり) 「能率は職人の能力で部分最適化であるが、効率は経営の能力で全体最適化だ」という発言はなかなか刺激的な発言です。 ちなみに大辞林第2版によると、能率は「一定の時間内にすることのできる仕事の割合。仕事のはかどり具合。効率。」、効率は「(費やした労力に対する)仕事のはかどりぐあい。能率。」と書かれています。 ということは、能率が高いとは仕事がはかどっていることで、効率が高いとは同じ仕事量で労力が少ないことを意味していると思います。これは、生産性に通じるということになります。 これからいうと、部分最適化と全体最適化がそのまま当てはまることになります。 通常「職人技」というといいことのように考えられます。しかし、こと効率を考える場合、職人芸が効率が良いことにつながるわけではないことが特に大量生産の場合には言えるようです。 また、通常トヨタ式の「KAIZEN」というとかんばん方式に代表される製造ラインの改善を思い浮かべてしまいます。しかし、この話を読むと違うんですね。作業の改善ではなく「標準」の改善という件は、目からうろこが何枚も落ちる感じがします。 それにしても、「標準の改善が改善だ」と言い切っているということは、標準がすべての作業を決めているという仕組みの裏付けを背景にした発言だと思います。 通常だと、標準はあるが必ずしもそれに100%従っているわけではなかったり、標準で規定されていないで、個人の裁量に任されている部分があると思います。特に間接業務はそうだと思います。こうしてみると、世の中の会社はトヨタに比べてまだまだ甘いとしか言いようがありません。しかし、世の中の産業すべてにこれが当てはまる訳ではないように思います。たとえば、深絞りという日本での未発達した技術は職人間の最たるものです。この技術がなければ、とてつもなく高価なものになる製品がいくつもあります。そういう例を考えると、経営は効率(全体最適化)だと言いきれるものでもないように思います。
2009年01月26日
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百田尚樹の580ページに及ぶ大長編ボクシング小説。題名の「BOX」とはボクシングをするという意味だそうです。昔はボクシングの試合だと「ファイト」といってレフェリーが試合を再開させていましたが、最近は「ボックス」というようです。 高校のボクシング部の顧問高津耀子を語り部に、二人の天才ボクサー、鏑矢義平と木樽優紀が友情と成長がボクシングを通じて描かれています。 アマチュア・ボクシングのルールやボクシングのテクニックなども詳しく述べられていて、とてもためになります。ちなみにSCIENCEとには「ボクシングの攻防の技術」という意味もあるそうです。■あらすじ 高津耀子は電車で喫煙を注意した若者たちに取り囲まれすごまれている。それを見かけた二人ずれの少年のうちの一人が彼らを倒してしまう。それが、耀子と鏑矢の出会いだった。鏑矢とその友達の優紀は、偶然にも耀子が教師をしている私立高校の1年生だった。鏑矢は中学の頃から町のジムに通い、そこのトレーナーからは天才と思われてた。優紀と鏑矢は小さい頃からの友達で、鏑矢がいつも優紀を守っていたのだった。鏑矢は同じ学年でも、ダメなクラスの体育課で優紀は特進クラス、その中でも上位五人に入っている優等生だ。 ある日、優紀は学校の女生徒とデートの最中に、昔の中学のいじめっ子に出会い、殴られてしまう。この事件を契機に、優紀はボクシング部に入り黙々と練習を積む。人一倍の努力をした結果、優紀は鏑矢を上回る実力を持つにいたるが。。。■個性的な登場人物たち 真面目な優紀と破天荒な性格でいかにも天才ぶりを示す鏑矢のコントラストが鮮やかです。 キャラクター的には、飄々としてユーモアのある鏑矢の性格が小説をとても面白くしています。 彼らを取り巻く人たちも個性的な人物がそろっています。 高校ボクシング界最強の男でモンスターと呼ばれる稲村和明。基本的な防御しか教えない沢木監督。彼は実は昔「鬼」と呼ばれていたファイターだった。 鏑矢を育てた街のジムの曽我部トレーナーなどひと癖もふた癖もある連中が登場します。彼は、なにやら、「あしたのジョー」の丹下段平を思い起こさせるキャラクターです。 ■精緻を極めた試合の描写 この小説の特徴は、試合の場面が非常に細かく描かれていて、読んでいるとその場面が目に浮かぶほどです。 特に、国体大阪予選での優紀対稲村、鏑矢対稲村の壮絶な戦いは息をのみます。 またボクシング部のマネージャー丸野との楽しいふれあいなども描かれていて、凄惨な戦いのシーンの合間にほっと一息つかせてくれます。 戦いの場面は鏑矢たちが出場した国体大阪予選の決勝のシーンまでで、後はエピローグ的に10年後の彼らの姿が耀子の口から語られています。 最後まで読んだら、なぜか泣けてきました。 ■出色の出来 映画化を希望 ということで、これは青春小説としてだけではなくボクシング小説としても出色の出来で、ぜひ映画化を希望したいです。 それにしても、600ページ近い長編ですが、つまらないところが一切なく、最後まで読者を釘付けにする筆者の筆力は、実に驚嘆に値します。百田尚樹著 BOX! 太田出版 2008年11月11日第4刷
2009年01月25日
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今日いつものように泳ぎに行って、いつも一緒には泳がないおじさんの隣で泳いでいました。ところが、私が泳ぎ始めたらすぐ、おじさんは隣のコースに移ってしまいました。 ちょっとピッチを上げて泳いだので、疲れてしまい、500mほど泳いで止まったら、すかさずそのおじさんが近寄ってきて言いました。「あんた、女の人とすれ違う時に手で触っているそうじゃないか。いつから泳ぎを変えたんだ。」と怒りを含んだ声で私に言いました。 私は、全く身に覚えのないことなので、「泳ぎを変えたのは2年くらい前で、それ以降は変えていない。」という話をしました。すかさず、おじさんは「左手でかくときに手が外に広がる。だから、みんなあんたが入ってくると他のコースに移ってしまう。」と言います。私は「年寄りに触れといわれても、誰も好き好んで触りたいはずがない」と言いたくなりましたがやめておきました。 会話それで終わりでしたが、私は事情を良く理解できないままに、しばらく茫然としていました。 最近触ったかもしれない老齢のご婦人に話を聞きに行ったところ、左手をかいた時、手が外に広がっているということを話されました そのご婦人は、他人の泳ぎ方をいつも観察していて、私の場合には最初はずいぶん遅いと感じていて、最近少し改善されてきたと思っていたそうです。ところが、スピードが上がったせいか昔の悪い癖が出てしまっているのではないかと言います。だから、「私とすれ違う時には気をつけている」というようなことを仰っていました。 私も、次第に事情がつかめてきました。 会話の中で、そのご婦人は私が健康ではないと思っていたそうです。彼女自身も心臓が悪いらしく、医者に止められているにもかかわらず、ニトログリセリンを両肩に貼って泳いでいるという猛者でした。 「健康のために泳ぐことは良いことだし、すれ違う時に気をつけるようにしたら」とアドバイスというか同情されてしまいがっくり。 その時はもう、泳ぐ気にならず、お礼を言ってそのまま帰ってしまいました。 帰ってから、鏡を見ながらフォームをチェックしたら、なるほど手が肩幅より広がっています。 ハッキリ言って、手が斜めに出ています。 手先から肩甲骨までののばしを常に意識していて、その意識が強すぎて入水の時に入水側の腕に触るような感じで頭が傾いていることに気がつきました。 「なるほど、このことか」と、初めて合点がいきました。 今考えると、注意してくれたおじさん(この方も定年を過ぎています)に感謝しなくてはと思います。 この方の指摘がなければ、フォームの間違いに気がつかずずっと泳いで、他人にも迷惑をかけ続けることになったと思います。今度会ったときは、お礼言おうと思います。 今日は、2軸のDVDを見直して、初心に戻りたいと思います。
2009年01月24日
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昨年の暮れに 書店で見かけた雑誌ですが、ユニークなデザインで購入してしまいました。 本のランキングというと宝島社の「このミステリーがすごい」というのが定番ですが、この本はあらゆるジャンルを扱っていて、とても参考になります。 この本は、一年前に休刊になった「ダカーポ」の恒例企画「今年の最高の本」の復活版です。 何も知らなくても、これを見るだけで読むべき本が自然とわかるようになっているところは、とてもよく出来ています。 お勧め本も、メディアの書評担当者だけではなく作家や本屋さんのスタッフなどから選ばれた本ものっていていいです。 また、出版元の自分のところのお勧め本も載っており、まさに至れり尽くせりです。これ一冊あれば、昨年のめぼしいところはほとんど網羅されているといってよいのではないでしょうか。なにしろ、タレント本や漫画まであるのですから。個人的には、ノンフィクションもさらにジャンル分け(特にスポーツ)してほしかったところです。 現在、その中でおすすめになっていたボクシング小説の「BOX!」を読んでいます。500ページもある小説ですが、とても面白いです。 いまは会社の休み時間を利用して読んでいるだけですが、3日間で150ページくらい読み進みました。これについては、後日感想をアップしたいと思います。 ということで、一家に一冊「今年最高の本2008」。
2009年01月22日
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年末に渋谷のタワーレコードに行った時、クラシックフロアの入口にキャサリン・ジェンキンスのCDとDVDが飾られていました。私はこの歌手は全く知らなかったのですが、DVDをみてその輝くばかりの美しさと歌声に魅了されました。その時は、とくに何も買わなかったのですが、後日AMZON.CO.UKを除いていたら、彼女のCDがかなり安く売っています。結局酔った?勢いで、CDとDVDを購入しました。日本では2006年にブレイクしたようで、私が購入したのは2006年リリースの「Serenade」と2007年の「Rejoice」それに、2007年のDVD「Live at Llangollen」の3枚です。 DVDには「Serenade」と重複している曲があります。 何回か聞きましたが、彼女は普通のクラシック歌手ではなく、サラ・ブライトマンのようなクラシックとポピュラーの橋渡しをするような歌手という認識をしました。DVDをみても、マイクを使って歌っていますので、普通のクラシック系の歌手とはちょっと毛色が違うことは確かなようです。声はメゾ・ソプラノですこし暗めの声質で、ビブラートが縮緬系でちょっと気になります。 フレージングは自然で、変に崩したところがなく好感が持てます。 ヴィジュアル系の歌手ですので、CDよりはDVDのほうが楽しめることは確かです。 CDでは私の好きな「セレナーデ」収録の「Be My Love」、「花の歌」、「Rejoice」収録の「Secret Love」が気に入りました。 ドリーブの「ラクメ」からの「花の二重唱」は何とキリテ・カナワとのデュエットで、なかなかさわやかです。 総じて、「The Prayer」、「IL Canto」のように、ゆったりとして静かな曲が現時点では向いていると思います。低音部がいまいち苦しそうな歌唱に終始しているところは今後の課題でしょうか。 クラシック系はどちらかというといまいちですし、「グラナダ」のような、普通女性歌手が歌わない曲を歌っているのは少し疑問があります。 DVDでは、カルメンのなかのナンバーを取り上げるなど頑張っていますが、いかんせん魅力に乏しいです。 ここでも良かったのは「Be My Love」。 この編曲はワーグナーかR.シュトラウスばりのオーケストレーションで凄いことになっています。 この曲に触発されて、以前から気になっていた中丸三千繪の「Be My Love」をダウンロードして聞き比べてみました。 ソプラノとメゾ・ソプラノの違いはありますが、さすがに歌のうまさと軽やかさは中丸三千繪の敵ではありませんでした。 それから、「パッヘルベルのカノン」(「Serenade」収録)や「カバレリア・ルスティカーナ」の間奏曲(「Rejoise」収録)などの器楽曲を歌っているのも珍しいです。 DVDではエクストラトラックにプロモーション・ビデオとBBCの「Song of Praise」(賛美歌)という番組からのビデオクリップが収録されていて、これも楽しめます。 ところで、今後どのように成長していくのか気になるところですが、2007年には故郷のマーガム・パークで音楽祭を立ち上げたそうで、行動力はかなりあるようです。 しかし、デビュー当時からころころ顔が変わっていて、デビュー当時と今では全く別人のようです。化けている部分も多いとは思いますが、下に女性は恐ろしい生き物です。。。 体形も、徐々に横に広がってきたようです。 どうも太る体質のようですので、日頃から気をつけていかなくては、と勝手に心配しています。(^^; しかし、時々、化け物みたいなアーティストが出てくるイギリスという国は誠に不思議な国です。今回新ためて感じました。 Katherin Jenkins:Serenade(Universal Music 476 571-8)1. (Quello Che Faro) Sara Per Te2. Nella Fantasia3. Chanson Boheme4. Green Green Grass of Home5. O Mio Babbino Caro6. Be My Love7. The Flower Duet8. Pachelbel's Canon9. Granada10. Lisa Lan11. The Prayer12. Dear Lord and Father of Mankind13. Il Canto14. Ave MariaKatherin Jenkins:Rejoice(Universal Music 476 620-0)1. Rejoice2. I (Who Have Nothing)3. Sancta Maria (Pietro Mascagni Version)4. Secret Love5. Le Cose Che Sei Per Me (The Things You Are to Me)6. How Do You Leave the One You Love?7. Requiem for a Soldier8. Somewhere (From West Side Story)9. Shout in Silence10. Be Still My Soul (After Sibelius)11. Kiss from a Rose12. I Will Pray for You13. Viva TonightKatherin Jenkins:Live at Llangollen(Universal Music(171 458-3)1. Introduction2. Ruslan and Lyudmila Overture3. L'Amore Sei Tu4. O Mio Babbino Caro5. Cymru Fach6. Maria (from Westside Story)7. All I Ask of You (from The Phantom of the Opera)8. O Sole Mio9. (Dafydd y Garreg Wen) David of the White Rock10. Be My Love11. Carmen Overture and Prelude12. Carmen - Habanera13. Carmen - Seguedilla14. Carmen - Chanson Boheme15. Somewhere Over The Rainbow16. Time to Say Goodbye17. Calon Lan18. The National Anthem19.Hen Wlad Fy NhadauExtras1.Questoe Per Te(PV)2.Time To Say Goodby(PV)3.L'amore Sei tu(I Will Always Love You)(PV)4.Quello Che Faro(PV)5.You'll Never Walk Alone(from BBCs Song of Praise)National Symphony OrchestraAnthony Inglis(cobd)
2009年01月21日
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コリンデイビス指揮ロンドン交響楽団のシベリウス・ツィクルスの最終回、 AMAZON.CO.UKで8.68ポンド(約1170円)他も買いましたが、送料こみでも国内で買うのの6割くらいとかなり安いです。 全体的に良く言えば彫が深く、悪く言うとやりすぎのように聞こえます。個人的にはちょっと脂っこいものをたらふく食わされた感じで、どうも私の嗜好にはあいません。 第1番は最初からデイビスの唸り声が聞こえ、やる気満々の演奏。少々やりすぎと思えるようなところもありますが、これはこれでいいのかもしれません。特にティンパにシンバルなどははえらく張り切っています。金管も最初から全開です。 第2楽章のクラリネットの高音のピッチがちょっと気になります。力こぶが入っているのは悪くないのですが、ちょっと入りすぎていて空回り気味なのが惜しまれます。テンポは全く問題なくスムーズに流れていきます。第3楽章は荒々しいです。アタッカで第4楽章が始まります。ここでも唸り声が聞こえます。時折ためを作るところがあり、他の部分が速いため余計変な感じに聞こえてしまいます。第2主題の弦のぞわっとするような響きに身震いを覚えます。第1楽章の主題が帰ってくるところあたりからの音楽は、大変感動的で、なけます。 ロンドン交響楽団の演奏は、ほとんど完璧だと思います。それも、これがライブですから凄いものです。 続く第4番は私にとってはあまりなじみのない音楽です。 作曲者自身が「心理的交響曲」と呼んだといわれているように、長い闘病生活の不安とその生活を支えた希望、そして病を克服して得た充足感が表現された、非常に内省的な作品。この曲でのデイビスは陰鬱な雰囲気を生かした音楽作りで、緊張感があります。ただコントラストをつけすぎているように思います。 第1楽章は劇的で痛切な表現に心が痛みます。聞いているだけで、シベリウスの心の痛みが心に突き刺さるようです。 第2楽章は楽しげな主題が演奏されますが、そこには影があります。 第3楽章これぞ思索的な音楽。シベリウスの最高傑作といわれる所以がわかるような演奏です。出口のない悲しみを表しているかのように思えます。チェロ独奏がとても美しいです。 第4楽章は病から脱出した満足感が表されているのでしょうか。しかし、全面的にスカっとしているわけではありません。 時折見せる暗い表情はシベリウスの不安を表しているのでしょうか。こういう交響曲では珍しいグロッケンの響が新鮮に聞こえます。しかし、この交響曲にふさわしいかは別な問題だと思います。 この曲でもロンドン交響楽団の演奏は申し分ありません。 SACDプレーヤーでも聴いたのですが、レベルが低く、音もつぶれ気味で、CD層で聞いた方がいい感じです。もっとも、私のASCDのプレーヤーは安物なので、あまりあてにはなりませんが。。。。。(SACDプレーヤー欲しいっす!)Colin Davis:Siberius Symphony No.1 & 4(LSO LIVE)1.Symphony no 1 in E minor, Op. 39 l.Andante, ma non troppo - Allegro energico ll.Andante. Ma non troppo lento lll.Scherzo. Allegro lV.Finale2.Symphony no 4 in A minor, Op. 63 l.Tempo molto moderato, quasi adagio ll.Allegro molto vivace lll.Il tempo largo lV.AllegroSir Colin Davis(cond)London Symphony Orchestra
2009年01月20日
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HIGH FIVEのブルーノート移籍第1作を遅ればせながら購入しました。 個人的にはヨーロッパのジャズは全く関心がなかったため、アーティストなども知りません。今回、たまたまこのアルバムのサンプル音源をチェクしたところ、素晴らしい演奏であることを知り、早速購入したというわけです。彼らは「ネオ・ハードバップ」と呼ばれているらしいですが、古臭さはほとんど感じません。それは、彼らのオリジナルが多かったことと多少関係があると思います。 どの曲も大変熱い演奏です。特にトランペットのファブリツィオ・ボッソの情熱的なソロは大変魅力的です。 トランペットに触発されたのか、ダニエル・スカナピエコのテナーサックスのプレイもとても素晴らしいです。 このバンドは、バックがしっかりしていてフロントも安心感のあるプレイが出来るところが大きいと思います。 リズムはベースもドラムスも大変強力です。 ピアノトリオになると待ってましたとばかりに出てくるベース、多彩な技を繰り広げるドラムス、クールななかに情熱を秘めたピアノと聞いていて興奮してきます。 ちなみに、「HIGH FIVE」とはいわゆる「ハイタッチ」のことだそうです。 彼らのオリジナルは、粒がそろっていて、魅力的な曲が多いです。 特にルカ・マヌッツァの「Cosi Come Sei」はかなり魅力的な作品です。カントリーがかったイントロに始まり、ゆったりとしたテンポから繰り広げられる、トランぺとサックスのユニゾンで演奏される物憂げでモーダルなメロディーを聞くとなにやらトニー・ウイリアムスの曲を思い出していしまいます。 トランペット・ソロは最初から全開です。テンションの高くなったところを、少しクールなピアノが続いて、熱を冷ましています。個人的には一押しの演奏。 第4曲目はフリューゲルによるソロから始まるジャズワルツ。手が込んでいて、素直なワルツではなくちょっと少し乗りが違います。これがしゃれた味わいを生んでいます。 第5曲目は典型的なハードバップを思い起こさせる哀愁を帯びたメロディーにワイルドなテイストを織り交ぜた佳曲。サビの部分でラテン・タッチになる所も面白いです。なにやらジャズ・メッセンジャーズあたりを聴いているような気になってきます。 火を噴くようなトランペットにコルトレーン・ライクなテナーともども素晴らしいソロを聞かせてくれます。 第6曲目は、愁いを帯びたピアノから始まる、スロー・バラード「エストゥディオ・ミステリオーソ」。トランペットからテナーに引き継がれるの哀愁を帯びたメロディーがとてもいいです。 続くトランペット・ソロも夜のムードたっぷりのフレーズを繰り出して大変いい感じです。 第8曲目もマヌッツァのオリジナルでテンポは違いますが、「Cosi Come Sei」と同じで、新主流派的なサウンド。とにかく、メロディーがすごくかっこいいです。 フロントとピアノともども申し分のないソロを繰り広げています。ここでも、ドラムス、ベースのあおりがきついです。(^ ^; スカナピエコのダンサンブルな「Nino's Flowers」は単純なリフを積み上げた曲ですが、響が新鮮で、ドラムスの多彩な技をベースにしたトランペットとテナーの熱狂的な掛け合いがいやがうえにも興奮をかき立てます。 チャンカグリーニの「Naty」。スマートなハードバップ風のチューン。ボッソのフリューゲルがここでも超強力なソロを展開しています。このアルバムでの彼のプレイはまさに絶好調といっていいほどのすごさを見せつけてくれます。 そのほか、ボッソのプランジャーミュートプレイがさえる表題曲「Five For Fun」、シダー・ウォルトンの軽快なラテンナンバー「オホス・デ・ロホ」、マッコイ・タイナーの「インセプション」など聞きどころ満載です。 特に急速調の「インセプション」はテナー、トランペットとも火を噴くようなアドリブの応酬で一気に70年代の世界に戻ったような気がします。 しかし、スタジオセッションでこんなに燃えている演奏なんて久しぶりに聞いたような感じがします。聞いた後スカッとすること請け合いです。 国内版には2曲ボーナストラックがついてます。これがまた凄まじい演奏で、どうしてこれが落ちたのか分からないほどです。 11曲目は早いテンポの曲ですが、トランペットが炸裂。途中のドラムスもいい感じです。4分ほどの曲ですが、あっという間に終わってしまい、なんて短いんだと思ってしまいます。 最後は、トロピカルムード漂うジョビンのバラード。メロディーがテナー、トランペットと引き継がれ、その後テナー、ピアノのソロへと続いていきます。 録音は大変素晴らしく、演奏の素晴らしさに大いに寄与していると思います。これはできれば、パソコンやデジタル機器ではなく普通のコンポーネントで、大音量で聞いていただきたい演奏です。 ということで、演奏録音、作品どれもが最高水準に達している稀有なアルバムとして、強力にお勧めしたいと思います。 HIGH FIVE:Five For Fun(EMI TOCJ-66462)1.HIGH FIVE:Five For Fun2.Ceder Walton:Ojos De Rojo3.Luca Mannutza:Cosi Come Sei4.Lorenzo Tucci:Pandaguru5.Fabrizio Bosso:Happy Stroll6.Unknown:Estudio Misterioso7.McCoy Tyner:Inception8.Luca Mannutza:Evan's Even9.Daniele Scannapieco:Nino's Flowers10.Pietro Ciancagline:Naty 11.Joe Henderson:A Shade Of Jade12.Tom Jobin:Ligia Fabrizio Bosso(Tp,Flhn)Daniele Scannapieco(ts)Luca Mannutza(piano)Pietro Ciancagline(double bass)Lorenzo Tucci(drum) Recorded on July 8-10,2008 at House Recording Studio in Rome
2009年01月19日
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この前お伝えしたベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホール。今日の、午前4時からの放送でした。寝たのが12時ころでしたが、何とか3時50分に起きてみました。前日に少しでもいい音で聞こうと思って、PCからアンプにつなぐために、ケーブルを買ってきました。音はそれなりに満足でしたが、思わぬトラブルが待ち受けていました。最初、客席を映していたのですが、お客さんの手の動きがのろい。それに音も聞こえません。 原因が、High Bandで受信していることにあることに気がつき、すぐMidiumにしました。それで、何とか見ることができたのですが、がかりでした。Midium Bandではフルスクリーンにするとさすがに画像が汚くて、大いに不満を感じたのですがしょうがありません。 前テストした時はHigh Bandで全く問題がなかったので、おそらくアクセスの集中のためサーバーの負荷が増大したとしか考えられません。それに、途中で、何回か映像と音声が途切れたりすることがありました。結局、生中継はリスクが大きいので、次回からはアーカイブを見るようにした方がいいようです。 今回はコンサートマスターがガイ・ブラウンシュタイン。テノールホルンはクリスチアード・ゲスリンク。ホルンのトップはドールでした。 日本人は1stヴァイオリンの町田琴和さんとヴィオラの清水直子さんのお二人。安永氏は降り番でした。 ハイティンクの音楽は強音でもうるさくならず、弱音のデリケートさが特徴的です。 弱音は普段聞かれるよりも一段弱い音で演奏される場面ががたびたびありそれが、一層効果的でした。 それに通常の演奏だと弱音では少し神経質になりやすいものですが、ハイティンクの音楽は線が細くならず、温もりさえ感じられてとても心地よいものでした。 テンポは第5楽章がかなり遅いほかは、ニュートラルか少し遅めだったと思います。5楽章は遅いため些か推進力にかけていたと思いますが、他は全く問題ありませんでした。 この曲は、グロテスクな音楽なのですが、それがほとんど感じられないことも稀有なことだったと思います。 スケルツォもいいか悪いかは別にしておどろおどろしさが皆無でした。 2つの「夜曲」は退屈な音楽になりがちですが、ベルリン・フィルの絶妙のアンサンブルとあいまってまったく退屈しませんでした。 けっして面白く聞かせようという意図は見られないのですが、なぜか飽きませんでした。 随所に出てくるソロはさすがに立派なものです。しかし、この曲で活躍するホルン・ソロのいかにももったいぶったようなフレージングとブラウンシュタインの少し癖のあるヴァイオリン・ソロはあまりいただけませんでした。 終演後はブラボーの嵐で、楽員が引き揚げた後もハイティンクが呼び出されていました。 ハイティンクは1929年生まれで3月には80歳になります。 あと何年活躍できるか分かりませんが、末永く活躍されることを願わずにはいられません。 気になったのは、ハイティンクの後ろに座っていた女性(舞台下手)がガムを食べていたことです。 ハイティンクが大写しになるたびに、その女性も映り、どうにも気になりました。 まさか、彼女は自分の姿が世界中に配信されているとは思っていないでしょうが、著しく感興をそぐことは確かです。 次回からはそのようなことのない様に、関係者の努力を期待したいです。Mahler: Symphony No. 71. Langsam (Adagio) - Allegro con fuoco2. Nachtmusik: Allegro moderato3. Scherzo: Schattenhaft4. Nachtmusik: Andante amoroso5. Rondo - Finale: Allegro ordinario - Allegro moderato ma energico Bernard Haitink(cond)Berliner Philharmoniker17th Jan,2009 Philharmonie,Berlin
2009年01月18日
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今日は子供のセンター試験の日。 今年は、近くの大学で受験できることになり負担が軽減できてよかったと思います。 それでも結構早く、集合場所である駅に向かいました。駅からは同じ高校の人たちと一緒にバスで会場に向かいました。おそらく冬道でも20分程度で着く筈です。 私がトレーニングのあと、帰りの車の中で7時のニュースを聞いていたら、英語のリスニングが6時35分までかかったということを報道していました。 そんな時間までかかるとは思わなかったので、センター試験未経験者の私としては、今どきの高校生は大変だなと思ってしまいました。 帰宅して、風呂から上がった頃にどうやら帰ってきたようです。時間を見ると7時半をまわっていました。子供が言うには、リスニングでトラブルのあった受験生が2,3人出て再試験を行っていたために遅れたという話でした。ちなみに、子供の通っている学校では初めてのトラブルとか。 以前から耳にしてはいますが、毎年このリスニングでトラブルが絶えないようです。ラジオのニュースでも何箇所かでトラブルがあったと報じていました。お土産?として、そのリスニングの機械をもらってきたようなので、早速動かしてみましたが、ランプが点滅して動作しません。仕方がないので、電池を外してリセットしましたが動きません。結局、リセットを2回繰り返して何とか動くようになりました。 ボタンは、「電源」と「確認」、「再生」の3つです。それから、メモリー・スティックの入る挿入口と音声ボリュームのつまみがあります。 興味があったのでばらして中を見ると、メモリー・スティックのコネクタと信号処理用のLSIが基板の中で結構な面積を占めていて、あとはトランジスタが数個とレギュレータ、抵抗コンデンサ類などの受動部品トータル20、30個でしょうか。 2006年度に使用した装置の分解写真がこちらに載っています。(基板の組み立てはミツミ電機?の様です) 今年のは、基板は1枚ですが外観は同じです。2006年の基板ではICは基板に載せて樹脂で封止してますが、今年のバージョンは普通の樹脂パッケージのLSIをはんだ付けしています。 その他外装のモールド部材が2個、つまみ、電池の切片、メモリースティック、イヤホン、組み立て費込などを考慮すると原価千円では済みそうにありません。受験生数が54万人ですから、これにかかる費用は半端ではありません。千円としても五億円以上です。それを1回で使い捨てにするのはどうかと思います。 まず、メモリースティックを使っているのところがまったく理解できません。これは使い捨てを前提にした企画では絶対に出てこない案だと思います。 メモリースティックを使ったということは、機械の寿命が来るまで何回も使えることを考えているとしか思えないのです。 まさか、リスニングの試験問題が間違ってもすぐ変更できるようにということではないでしょうね。。。。 使い捨てにするのであれば、メモリースティックにするのではなく、マスクROMにするのが普通のやり方です。 このようなことを考えても、大学入試センターはコスト意識がまるでないとしか思えません。 大学入試センターは独立行政法人になっていますが、民営化しても意識はお役人のままのように思います 思わぬ方向に脱線してしまいましたが、ばらした後もとに戻したらちゃんと動きました。 思うに、トラブルの原因はリセットでプログラムがうまく作動しないことにあるように思います。これを考えると、ハード的なリセットボタンを設けたほうが良かったように思います。 最初に書いたように、今年も例年通り、トラブルが発生したようです。50万台以上であれば、不具合が出る装置も出てくると思います。しかし、それで被害をこうむるのは受験生たちです。 それをどのようにして回避するか、関係者は不具合のあった装置を解析してどうすればよいか真剣に考えてほしいと思います。 けっして50万台分の数台という確率だからいいという考えではいけません。受験生にとって動かなければ、故障率100%だからです。これのせいでうまくいかなかったとしたら、受験生は浮かばれません。 それから、このシステムが最も良いシステムかどうかも真剣に検討もしてほしいと思います。 ということで、いろいろ書いてきましたが、明日も試験は続きます。受験生の方々は、今日の結果は忘れて明日どうするかだけに集中してほしいと思います。受験生諸君の健闘をお祈りいたします。
2009年01月17日
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先週あたりから、母親が急に歩けなくなりました。原因は骨粗鬆症です。以前から指摘されていて、薬は服用していたのですが、なぜか急に悪化したようです。 歩けないため、歩行器を借りたらとかいろいろ言うのですが、本人は言うことを聞きません。聞くところによると、立つと体重が足にかかって足が痛くなるということです。ちょっと前に、病院に行って電気治療をしたのですがそれが悪くて悪化したようです。 母の場合、他の病気も持っているし、もともと電気治療はあわないと以前から言っていました。ところが、よりによって電気治療とは。。。 何故「電気治療はあわない」といわなかったのかと言いましたが後の祭りでした。 結局、歩くことが困難になり、四つん這いで歩き始めました。 最初は、手が汚くなるので軍手をしていましたが、負担が大きいのかなんとゴミ箱を持ってそれを支えにして四つん這いで歩いています。いくらなんでもゴミ箱を持って四つん這いで歩くなんてと思いましたが、本人は全然気にしていません。 しょうがないので、いろいろ調べたところ、近所に補助具をレンタルするところが何社もあることが分かりまし。早速、妻に介護について役所に相談に行かせたところ、早速レンタル業者がやってきました。昨日帰宅したら、見慣れない器具が置いてあり、それが歩行器でした。ところが、母はそれが気に入らず、相変わらず四つん這いで歩いています。母はなかなか頑固者で、いったん気に入らないとなると梃子でも動こうとしませんので、半ばあきらめかけていました。 ところが、今日帰ってみると、別な歩行器があります。聞くところによると、歩行器を業者に返したら、カタログを見て取り寄せてくれたようです。これは幸いにも母が気に入ったようで、今のところ使ってくれています。 こういうものは、患者にできるだけストレスがないことが重要です。心やさしい方なら、妥協してしまうと思いますが、今回は母の頑固なところが功を奏した?ようです。 今のところ、骨折はないようですが、予防のため電動ベッドや椅子などの手当を早急にしたいと思います。 昨日は母の誕生日だったのですが、彼女にとっては人生で最悪の誕生日ではなかったかと思います。あとどのくらい生きられるか分かりませんが、出来るだけのことはしたいと思っています。幸い、食事は十分にというか十分以上にとれているのが救いです。 ところで、補助具を探すといろいろ出てきます。ビジネスの面から言うと、将来性は勿論、技術的にも改良の余地が大いにあり、ビジネスとしてかなり有望だと思います。結局、個々の介護用品を改良してもだめで、患者の環境の全体最適化をはからなければならないことを痛感しました。ということは、住まいから補助器具まですべてをトータルで考えることが必要になります。今のところ、そういう考え方のメーカーはないようですので、ビジネスとしてのうま味はかなりありそうです。 聞くところによると、今回来ている業者はレンタル料金を集金しているそうです。いまどき、集金なんて新聞くらいなものですが、マーケティング的にはとても有効な手段だと思います。集金がてら困りごとを聞いたりして新たに器具を勧めることもできます。昔ながらの方法ですが、ある意味理にかなっていることは間違いありません。
2009年01月16日
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ガーディナーが、自主レーベルSOLI DEO GLORIAに注目のガーディナーのブラームス交響曲ツィクルスを録音し始めました。 AMAZO.CO.UKで送料込みで10.7£(約1440円)と激安です。HMVのマルチバイと比べるとなんと1200円も安いです。 ガーディナーといえば、誰かの著書だったか、雑誌か覚えていませんが、録音の時のことでさんざんこき下ろされたことしか覚えていません。 アルヒーフを干されてから久しいですが、その間も自主レーベルを立ち上げてバッハのカンタータの録音にいそしんできたようです。 個人的には、嫌いではありませんでしたが、前掲の記事により遠ざかっていました。ブラームスを録音したということを知り、遅ればせながら購入に及んだわけです。 肝心の演奏ですが、一部かなり荒々しく演奏されている部分があり、全面的に賛同するところまで行きませんでした。勿論演奏の出来としてはかなりの水準だと思います。ただ、HMVのサイトで「かなり革新的な演奏」というコメントがありましたが、個人的にはノリントンの音楽に親しんでいたこともあり、革新的というコメントには疑問が残りました。 第1楽章の導入部はかなり早いテンポで、ホルンや木管のコードも荒々しく吹きならされます。 アレグロに入ってからも快調なテンポで進んでいきます。しかし主題を奏するヴァイオリンのポルタメントがすごく気になります。なお、1楽章では、繰返しを実行しています。 第2楽章は遅くはないですが、それほど違和感のあるテンポではありません。 オーボエの鄙びた音色が、懐かしさを呼び覚まします。ヴァイオリン・ソロも高貴な美しさに満ちていてとてもいい感じです。本来ヴァイオリンとホルンとのユニゾンであるはずのオーボエはほとんど聞こえません。ヴァイオリンのカデンツァの裏のホルンのソロではゲシュトップが下品に聞こえて少々具合が悪いです。3楽章は第2主題途中のクラリネットからオーボエと続くあたりから次第に早くなります。トリオもかなり早く、この楽章ではこのテンポ設定が功を奏し、スリルと興奮を呼び起こします。ちなみに、ノリントンとLCPの演奏時間と比較すると、ノリントンが4分27秒に対し4分18秒と9秒早いです。4分ほどの曲で、9秒も違うというのはかなり大きな違いといえるのではないでしょうか。 4楽章のナチュラル・ホルン・ソロの響も荒々しく、やたらと音を割っていて、この曲に対するイメージを裏切るような解釈です。 1番ホルンを補強する2番ホルンの伸ばしがいかにもわざとらしくて、何故ブラームスが補強しているのか全く理解しているように思えません。主部に入っての第1主題の歌わせ方も少し変です。4小節目の3泊目の8分音符を少し弱くして消え入るように演奏しているのは気色悪いです。終結部はきびきびしたテンポですが、最後に少しためを作っているところが不満です。 フィル・アップされている合唱曲集は、聞いたことがない曲ばかりですが、とても清らかで美しいです。 ただ、オケが出てくると「ん?」となってしまうところがあることも確かです。 解釈は自然で全く問題ありませんので、これらの合唱曲を楽しめること請け合いです。オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティークは弦の響きが薄く、特に高弦はどうも鼻をつまんで歌っている声を聞くような違和感があります。ブラームス交響曲第1番(Soli Deo Gloria SDG 702)1.ブラームス:『埋葬の歌』 Op.132.メンデルスゾーン:『われら、人生のただ中にありて』 Op.23-33.ブラームス:『運命の歌』 Op.544.ブラームス:交響曲第1番ハ短調 Op.68 モンテヴェルディ合唱団 オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク ジョン・エリオット・ガーディナー(指) 録音:2007年秋、ロンドン、パリ(ライヴ)
2009年01月15日
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このところ、世の中の不景気のために、首切りをされた派遣労働者の扱いに対する大企業のふるまいに非難が上がっています。 いろいろな意見が出ていますが、どちらかというと、派遣労働者に同情的な意見が多いようです。そのなかで、ライブ・レボリューションの増永社長の意見が異彩を放っています。 要するに、雇用者側は会社の社会的使命(安定的な雇用を確保する)を忘れ、雇用される側も「自助努力」が足りないという指摘です。 最近、雇用側の(違法ではないが)人をもののように扱う態度に非難の声が上がっています。 欧米は仕事があるのに人が不足している時に、募集します。だから、レイオフされても、比較的冷静です。ところが、日本の場合には、社員を育てて能力を引き出すという経営のため、アメリカのように簡単にクビ首を切ると、いろいろ文句が出てきます。日本型経営には、首切りはなじまないということだろうと思います。 増永社長主張ののユニークなところは、雇用される側に対し、「デモをする暇があったら職を探せ」、「職は必ずある」「スキルがなかったら身につけろ」と手厳しいです。増永社長のこの意見はS.スマイルズ『自助論』によるところが大きいそうです。増永社長は2007年の金融商品取引法・貸金業法・建築基準法の改正による関し不況で官製不況で大きな不利益をこうむった経験があります。当時、多くの企業がつぶれたそうです。その時の経験からえた教訓は「私はこの国で会社を経営しているのだから、この国の法律やルールに従うのが義務である」だったのでした。結局、社会の変化に不満を言うよりは自らをその変化にあわせることが大事なことに気づいたということです。 自助論の翻訳者の竹内均氏の訳者解説で述べている言葉が身にしみます。 (以下増永社長の要約) スマイルズが『自助論』を書いた頃のイギリスは、世界最強の国であった。「ユニオン・ジャックのひるがえるところに太陽が没することはない」といわれたほどである。このような最盛期のイギリスを支えたのは、自助の心をもったイギリス国民であった。これを裏返しにしていえば、その頃に比べて現在のイギリスの勢いがやや衰えているのは、自助の心をもったイギリス人の数が少なくなったからである。いわゆる成熟病がイギリスに災いしたのである。現在の日本は、日本や世界の歴史にもなかったような自由と繁栄を楽しんでいる。それが続くことを願っている。それには成熟病を防止すればよく、この本を読むのがよい。この本が青年からやや年をとった人たちにも読まれることを願う。自己実現をするのに遅すぎるということはない。スマイルズの頃に比べて現在のイギリスの勢いがやや衰えたのは、イギリスの政治家たちが自助の心のない人を助けたからではないかとさえ、私は考える。(引用終わり)最後に増永社長は、企業についてこう語っています。「大きいもの、強いもの、そして、速(早)いものが生き残るのではない。変化に適応できるものだけが残る」そして、「変化しないことが最大のリスク」だと喝破しています。実に含蓄のある言葉だと思いますが、世の中の企業の社長さんたちの中でこのことに気づいている方はどれくらいいるんでしょうね。。。。
2009年01月14日
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日野皓正の最新アルバムを聞きました。一昨年発売された2枚のアルバムから、再びフリー色の強い演奏が続いています。今更ながら、菊池雅章の影響の強さを感じずにはいられません。 「寂光」とは仏教の用語で、(1)真理の寂静(じやくじよう)なることと真智の光。理と智の二徳。(2)「(常)寂光土」の略。 常寂光土とは、天台宗でいう四土のうち、最高のもの。仏の悟りである真理そのものが具現している世界、 だそうです。 ジャケットにも仏教関連のレリーフみたいなもの(でも日本ではなくインドネシアあたりの雰囲気がします)の写真が使われています。 今回の目玉は新加入の和丸のプレー。 略歴は彼のホームページに書かれてあります。 (以下引用)沖縄県 阿嘉島生まれ 17歳 東京都世田谷在住7歳からドラムをはじめ、8歳で沖縄 基地の街コザで米兵を相手にプロの実力派と共にロック・メタルを中心としたライブ活動で人気を得る10歳、渡辺香津美氏等日本のトップミュージシャ達とファーストアルバム「BEAT KIDS」をりりースポカリスエットのCMで福山雅治氏と共演東京フィルハーモニー交響楽団との共演では指揮者より高い評価を得るBEGINのライブやその他レコーディング、あらゆるジャンルのミュージシャン達とライブ活動テレビ番組にも多数出演し話題を呼ぶ14歳の夏、ジャズを始めようと日野皓正氏コンサートへ行き、突然ステージへ呼ばれまさかの共演。この運命的な出会いから約1年、正式メンバーとして大抜擢、16歳より本格的にプロ活動!(引用終わり) 十六歳ですか。 写真を見ると浅黒く精悍な顔で、いかにも沖縄出身という感じがします。 肝心のプレーですが、始終ドタバタしている感じがして、なんとなく落ち着かない演奏のように思います。 勿論テクニックはあるので、足りないのは経験だけだと思います。 また、いきなりフリーといわれても、そうそううまくできるはずはありませんので、全体としてはよくやっていると思います。 それが功を奏しているのは、5曲目のAM/PMです。これって、コンビニのテーマソングではないですよね??早いテンポで驀進していく曲調が今の和丸の芸風にフィットしていると思います。後半のソロも悪くないです。 また、ここでの多田誠司のアグレッシブなアルト・ソロはいいです。 アルバム全体を支配しているのは、禅のわびさびを思い起こさせるような日本的な間の世界です。 このアルバムでは日野のアルバムにしては珍しくゲスト・プレーヤーが参加しています。佐藤允彦(p)と山田穣(as)のお二人です。何故この二人かというのはブックレットでは全く触れられていないのでわかりません。ただ、その試みはうまくいっていると思います。第1曲目の菊池雅章のいかにも日本的な雰囲気の中に峻烈さを感じさせる曲に、佐藤允彦はふさわしいと思います。佐藤允彦については、最近全く注目していませんでしたが、コンスタントにアルバムを出していますし、相変わらず精力的な活動をしているようで全くご同慶の至りです。なんだかんだ言っても、今年67歳になります。この年でいまだにフリー・ジャズやっているなんて、普通では考えられません。それだけ、柔軟性があるんでしょうけれども、わたしも少しは見習わなければと思います。もっとも、日野皓正も一つしか若くないですから、いったい彼らの若さの秘密は一体何なんでしょうね。 もう一人は2005年に活動を休止して以来、2007年後半からぽつりぽつりと活動を再開し始めた山田穣です。 彼のホームページを見ると今年はスケジュールがびっちりと詰まっているようで、とても嬉しいです。 いかなる理由での活動休止だったのか2チャンネルを見ていて大体替様子はつかめましたが、全快したようで誠に喜ばしいことです。 その山田穣ですが、少し細身でくすんだ音色で、レギュラーの多田誠司の澄んだ音色とはかなり違います。 それに、ちょっとリードの具合が悪いのか、音色が濁る時があります。 ソロ自体は緊迫感があり、出来としては悪くないですが、全盛期の状態に戻っているとは言い難い所があります。 昔1度だけライブを見たことがありますが、長髪で暗い雰囲気で吹いていました。 ホームページの写真を見るとメガネをかけて雰囲気がまるで違っています。 こちらで、最近の演奏を見ることができます。 姿は昔とは全く別人のようですし、演奏も音程が悪くていまいちでした。 念のため、昔の「Blue Stone」というアルバムを聞いてみましたが、昔はずっとクリアな音だったことが確認されました。 4曲目の「Edges」は僅か2小節のテーマとも言えないモチーフで開始され、あとは静けさが支配するフリーフォームです。 全体を通じて、金澤のベースが味わい深いです。 6曲目の「211 West 20th Street」。題名からするとウエストコーストあたりの音楽という感じですが、一度聴いたら忘れられない日野さん独特の旋律美が感じられる作品。オーネットオ・コールマンの乾いた叙情に通じた雰囲気も持っています。多田の少し寝ぼけているようなアルト・ソロ、そのバックの石井のピアノや和丸のデリケートなブラッシュ・ワークともども素晴らしいです。後半の日野のトランペットと石井のピアノのからみから高揚したあとのテーマが聞こえてくるところの感動的なことといったら、そうそう体験できる瞬間ではありません。 7曲目は菊池の「Santa Cristina」。 1曲目と同じようにダークなムードの横溢した世界を繰り広げます。佐藤允彦の低音を多く使ったプレイが、そのムードをことさら強調しているように聞こえます。鳥たちのさえずりを思わせるように、アルトとトランペットが断片的音をまき散らしているうちに突如パタリと終わってしまうあたりなかなかユニークです。 8曲目は日野のオリジナル「Funakura」どういう意味なのかわかりませんが、瞑想的な曲。 おそらく沖縄の石垣島の舟蔵の里のことだと推測されます。 冒頭からテーマは出てきません、2分くらいから出てくる琉球音階風の旋律がテーマでしょうか。 しかし、いかにも沖縄沖縄した感じではなく、沖縄の海の静けさをそこはかとなく感じさせます。 鳥たちのざわめきを思わせるトランペット、アルト、ピアノの響きに終始する「Desperados」。 1分足らずの曲ですが、結構印象が残ります。 日野皓正:寂光(SONY SICP 10109)1. ザ・パースペクティヴ・ツィステッド2. ラヴァ・ダンス3. ティアーズ4. エッジズ5. エー・エム・ピー・エム6. 211 ウェスト 20th ストリート7. サンタ・クリスティーナ8. フナクラ9. デスペラードス 日野皓正(tp)多田誠司(as)石井彰(p)金澤英明(b)和丸(ds)佐藤允彦(p 1,6)山田穣(as 3,4)
2009年01月13日
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いい映画であることは確かですが、個人的にはよく分からなかった映画です。特に、なぜアルゼンチン人のゲバラがカストロと出会ってすぐにキューバの革命運動に身を投じるのか、説得力に乏しいような気がします。この映画は、歴史を勉強してから見たほうがよさそうに思います。■生い立ちを描いてほしかった最初の方の描き方が不十分で、妻子をメキシコに残して、ひとりでキューバに乗り込んでいくあたりも十分に描かれていません。 個人的には、彼の生い立ちや環境あたりからじっくりと掘り下げて描いてくれた方が、なぜそうなったのか分かりやすかったと思います。 それに、のちに妻となるアレイダ・マルチ・デ・ラ・トーレがいつの間にか秘書役になっていくのも、どうにもよく分かりません。 政府軍の軍人の不ぬけぶりはよく描かれています。 最後に逃げ出した軍人の哀れな姿をゲバラの口から言わせているのはあらずもがなと思いました。■市街戦でも美しい映像 モノクロとのコントラストが見事 ゲリラ戦や市街戦の映像はとても美しく、戦闘の場面とは思えないほどです。 後半緊迫感が出てくるまでは、これが戦いのシーンだとは思えないような、雰囲気があります。 一方、国連での演説のシーンやインタービューのシーンは当時の映像と見まごうばかりです。 ざらついた質感がリアルです。 過去がモノクロで現在がカラーという設定はよくありますが、これが逆という例は見たことがありません。 そのためか、私はこれは記録フィルムかなと思ったほどです。念のため、カラーとモノクロが同一人物かどうか音声を注意深く聞いていたのですが、別人のような感じでした。 スティーヴン・ソダーバーグ監督がどういうことを意図したのか分かりませんが、見る者に対しては誤解を与えるような方法だったような気がします。 それが監督の意図であるなら、真意は何か聞いてみたいものです。 ■時代が生んだ人物 人となりがよく描かれている この映画では、事実だけを描いていて、映画での創作は皆無とのことです。 してみると、ゲバラは捕虜を虐待するな、民衆からものを収奪したり、乱暴を働いたりするなと命令していて、まれに見る厳しい方だということが良く分かります。 戦いは、兵士の規律と民衆の支持なくしてうまくいかないことを知っていての発言であると思いますが、南米の教育も満足に受けていない兵士に向かって言う言葉とは思えません。 その妥協のなさが、かえって部下からの信頼を厚くしたことは確かだと思います。 民衆が押しかけて、兵士にしてくれと懇願するシーンが何回となく出てきます。ゲバラが彼らに言うことは決まっています。「武器はあるか、ない場合には、こちらで用意している分に足りない人間は帰れ」です。それから、「読み書きのできない奴は、ここに置いておくことはできない」。この2点につきます。 思うに、素人集団を教育するにはこれくらいの厳しさがないと、まともな訓練すらできないのだろうと思います。 ゲバラが何故読み書きにこだわるかという答えを彼自身にこたうぇさせています。 それは、「読み書きができない人間は簡単にだまされてしまうから」だそうです。確かにそれは当たっていると思います。戦争は、敵との戦いだけではありません。その地域の人間との交渉もあり、読み書きができる程度ではとてもではありませんが、難しい交渉など出来るはずがありません。そういう意味で、ゲバラが言うことは全くその通りです。 ハバナに向かう兵士が、政府軍の将校の車に乗っているのを見咎めて、サンタクララに引き返して戻して来いという件は、規律を重んじるゲバラの面目躍如たるシーンでした。 ということで、中途半端なきらいがあります。監督が続編を作りたいという気持ちもよく分かります。続編は月末に公開されるようですが、今後どのような展開になるのか、とても楽しみです。 結局この映画を見ての感想は。カストロは戦略家であったが、ゲバラは戦略家たりえず、あくまでも戦術家、それもとてつもなく優れた戦術家として偉大な人物だったということを感じました。 それは、結局彼が平時にではなく戦時にしか生きられなかったことと無関係ではなかったと思います。それにしても、現在の世の中からは考えられません。ある意味、戦争で個人の力量が発揮できる最後の時期だったのかもしれません。 なお、本編終了後次回作の予告編を見ることができますが、私はネットで見られるだろうと高をくくって、さっさと帰ってしまいました。 予想通り、見ることができますが、映画館で見られるものと同じかどうかは分かりません。■登場人物が酷似している 主演のベニチオ・デル・トロは、モノクロが本人だと思ってしまったくらいで、実物にかなり似ていると思います。カストロも似ています。 それから、2番目の夫人となるアレイダが著した著書に使われている写真を見る限り雰囲気がかなり似ています。■事前学習が必要ということで、映画自体かなりよく出来ていると思いますが、事前にゲバラがどういう人物だったかは予習しておいた方が、映画の理解に役に立つと思います。 さて、続編がどのように描かれているのかとても楽しみです。 特に、彼の臨終の場面がどう描かれるのか興味があります。なにしろ、ボリビアで銃殺されるとき銃殺役の兵士に、「早く撃て、それがお前の仕事だろう」と言ったとか。結局、それでも死に切れず、別な兵が心臓に銃を撃ち込んで絶命したということです。それから、銃殺されて村に遺体が運ばれた時、どんな凶悪なヤツなのか顔をみてやろうと村人が集まってきたのに、その姿を見て遺体に手を合わせ始めたといいます。これらが本当かどうかわかりませんが、どのように描かれるのか興味は尽きません。公式サイト
2009年01月12日
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叔父から戴いた県民共済プレゼンツ「山形由美」コンサートに行ってきました。 私は、もともとこのようなちょっとクラシックからポピュラー系に片足を突っ込んだような演奏家には偏見を持っていて、今回も全く期待していませんでした。 しかし、その安定したテクニック、玄人はだしのMCなどデビューから23年のキャリアはだてではありませんでした。不明を恥じるものです。 当然、プログラムは軽いものが中心ですが、そんなに馬鹿にしたものではありません。 こういう良く知られた作品を、それなりに聞かせるというのもまた一つの技術なわけで、その点彼女は素晴らしいエンターテイナーだと思います。 前半は、世界各国の曲を集めたコーナーでした。 しょっぱなのエルガーは、フレーズがぶちぎれで、先が思いやられましたが、徐々に調子を上げていきました。2曲目の「春の海」は文字通りのんびりとした風情が感じられ蕪村の「春の海 ひねもすのたり のたりかな」の気分を満喫しました。3曲目のモーツァルトはもともとがピアノ独奏用の曲ですので、ピアノが活躍する場面が多かったです。ピアノは山内知子さんでした。ソロをプッシュするところまではいっていなかったかもしれませんが、単なる伴走者に終わることなく、自己主張もあり、何よりもダイナミックスが大きく、メリハリの利いた音楽が、山形さんのどちらかというとのっぺりしたフルートを大いにサポートしていたと思います。 続いてはグルックの「精霊の踊り」。これはあまり面白くありませんでした。 通常感じられる高貴さがあまり感じらないというか、こんなにつまらない曲だったっけと思ってしまいました。仮面舞踏会からの「ワルツ」はアイス・スケートの浅田真央のフリーの曲としてCDが売れているという話を以前書きましたが、山形さんもその話をされていました。フルートで演奏するのはどうかなと思ったのですが、悪くなかったです。ここでも、山内さんのダイナミックなピアノがとてもよかったです。 続いてはヴェネチアにちなんだ音楽を2曲。 山形さんは最近ヴェネチア室内合奏団との共演が多く、それで、「ヴェニスの愛」と「ヴェニスの謝肉祭」の2曲を選んだそうです。 「ヴェニスの愛」はマルチェルロのオーボエ協奏曲のアダージョですが、フルートで演奏されると、オーボエで演奏されたときの、清冽さというか、はかない美しさが失われていしまったようで、この曲はフルートには向かいないと思いました。 「ヴェニスの謝肉祭」は長いので抜粋で演奏されました。 しかし、最後の難しい変奏がきっちり演奏されて、それなりに楽しめたと思います。 第2部は映画音楽を中心とした選曲した。 最初は『めぐり逢う朝』で使われたマラン・マレの「スペインのフォリア」。 ルイ14世の時代にフランスで流行したシャンソン「ああ、お母さん、あなたに申し上げましょう」で、若いお嬢さんがお母さんに恋人への想いを打ち明けようとする「恋歌」です。 無伴奏で演奏されました。はじめて聞く曲でしたが、装飾音符の多いロココ調の曲が嫌みなく表現されていたと思います。 続いては、ウエストサイド・ストーリーから3曲。 最初の2曲はいいのですが、「マンボ」はさすがにフルートでやるにはちょっと厳しい感じがしました。 続いては、「星に願いを」。山形さんのMCによるとこの曲は人気ランキングの7位にランクされているそうです。 通常のムーディーな曲調で終始するのではなく、中間部ではフルートの速いパッセージが続き、ジャージーな雰囲気を感じさせる編曲は素晴らしかったです。 次は再びミュージカルからのナンバーで「マイ・フェア・レディー」からの2曲、「踊り明かそう」「彼のことで頭が一杯」のメドレー。 「彼のことで頭が一杯」のあとに「踊り明かそう」を再び登場させてしっかりと締めくくっていたあたり、なかなかいい編曲だと思いました。「彼のことで頭が一杯」はしっとりとした表現でなかなか良かったです。また、「踊り明かそう」をバースから始めているのもなかなか聞いたことがありません。最後はピアソラを2曲。ピアソラをやると話した時、「タンゴの歴史」を期待したのですが、あっさりと裏切られました。もっとも、このような趣向のコンサートでそんな曲を期待する方が無理というものですが...。「オブリビヨン」はしっとりとした表現でしたし、「リベルタンゴ」はピアノとの掛け合いが楽しかったです。 アンコールは「冬のソナタ」からの2曲。 それに、山形さんが昔演奏していた曲で、今度初期のアルバム9枚がデジタル・リマスターで復興されたことを機に、初期の曲中から、「虹色の航海」が演奏されました。この虹色の航海はあるCMで山形さんが演奏するために難波正司氏が書いたオリジナルで、その名の通り船が滑るように海を進んでいく様を描いたもので、聞いていてとても気持ちがいい曲でした。 ということで、全く期待していなかったのですが、山形さんの確かなテクニックといい意味でのエンターテインメント性を感じられ、爽やかなコンサートでした。食わず嫌いはよくないですね (^ ^; 山形由美コンサート 第1部1.エルガー:愛の挨拶2.宮城道夫:春の海3.モーツァルト:「キラキラ星による変奏曲」4.グルック:精霊の踊り5.ハチャトゥリアン:バレエ「仮面舞踏会」より「ワルツ」6.マルチェルロ:ヴェニスの愛7.ジュナン:ヴェニスの謝肉祭幻想変奏曲第2部1.マラン・マレ:スペインのフォリア ~『めぐり逢う朝』2.ウエストサイト・ストーリーより l.トゥナイト ll.マリア lll.マンボ3.マイフェア・レディーからメドレー「踊り明かそう」「彼のことで頭が一杯4.ピアソラ「オブリビオン(忘却)」5.ピアソラ:リベルタンゴアンコール1.冬のソナタより「はじめから今まで」「My Memory」2.難波正司:虹色の航海盛岡市民文化ホール マリオス 大ホール 3列31番で鑑賞
2009年01月11日
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いよいよ現地時間の6日から、ベルリン・フィルの定期演奏会の模様がネットで中継されたようです。これは、シーズン券と1回券(9.99ユーロ)があり、他にアーカイブの1回券もあります。 シーズン券は全コンサートを何度でも見ることができるというものですが、2万円近くします。 プログラムを見ると、1月13日のハイティンクのマーラー第7番、2月13日のシューマンのコンチェルト・シュトゥック、3月7日のドゥダメルの登場など、興味深いプログラムが並んでいます。 個人的には、シューマンのコンチェルト・シュトゥックに興味がそそられます。メンバーがどうなるかが分からないのですが、出来ればバボラクとドールのそろい踏みを期待したいです。 このときは、他にツィンマーマンの交響曲の第1楽章という珍品も聞くことができるのも楽しみです。アーカイブとして12月に行われたティーレマンのブルックナーの第8、マーラーの第3、そしてこの間のラトルのブラームスとドヴォルザークのコンサートが入っています。アーカイブへの格納はタイムラグがあるようです。とりあえず、様子見がてらにハイティンクの1月13日のチケットを購入しました。登録方法は、こちらから入って、new customerのsign up nowから登録ページに移ることができます。 そこでは、ストリームテストというページがありLow band,Medium band,High bandで画像のテストを行うことができます。 high bandで見てみましたが映像、音声とも鮮明です。bandの違いは画像の大きさの違いですので、high band以外は物足りません。 high band以外の大きさだったらお金を払ってみる価値があるかどうかはかなり疑わしいものがあります。映像は少し暗めでしたが、問題ありません。ソースはブラームスの交響曲第2番第4楽章の冒頭3分くらいです。テュッティ後のクラリネットソロの少し前、通常弱くしないところで急に音量を落とす解釈で思わずのけぞってしまいました。チケットの購入は通常のネットでのクレジット決済と同じですが、カードはvisaとmasterしか対応していないようです。 チケットを購入した後で、1回券はライブでしか見られないことに気がつきました。ということは、ドイツとは8時間の時差があるので、土曜の夜8時開演ということは、日本時間の18日朝4時です。 はたして起きることができるか確証がありませんが、何とか起きて見たいと思います。 こうなると、多少遅れても、日本でならアーカイブで見るのが一番いいことになりそうです。なにしろ、アーカイブだと購入から48時間以内だと何回でも見られるらしいのでこちらの方が有利なことは確かです。ところで、6日の演奏会のドボルザークのスラブ舞曲作品46の第8はただで、ブラームスの第1は5ユーロです。 ログイン後、こちらから入っていただけると、ドボルザークはただで見られますので、是非お試しください。ただし、アカウントは取得していなければなりません。ドボルザークのスラブ舞曲の後にはTerry Martin、ラトルらによるDigital Consertについての内容説明が収録されています。フルスクリーンモードにしなければ、プログレスバーが中央下に出たままなので、そこの四方向に矢印のあるアイコンで、フルスクリーンモードにしてお楽しみいただければと思います。保存を試みていますが、成功していません。2チャンネルによると、Flash H.264が手ごわいようです。また通信環境もさることながらハードにも大きく影響されるようですので、まず視聴してからお金を払うかどうかは決めたほうがよろしいと思います。
2009年01月10日
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この前に味をしめて?またまたMIDLAND CDからの購入。 現在のレート1ポンド137.7円で換算するとCD+DVDで29ポンド。それに送料3.2ポンドを合わせて32.2ポンド。 円換算で4433円うちCDは12.5ポンド(12.5*137.7=1721円)と安いです。 DVDはもともと16.5ポンドと激安ですがこれが円換算で2272円!です。 国内だと4000円は優にします。 どちらがお得かは言うまでもありません。 ポピュラーチューンの編曲あり、メンバーのオリジナルありとなかなかヴァラエティに富んでいます。 オリジナル以外の編曲はL.パウルが担当しています。 ステージではかなり変なふるまいをする方ですが、編曲の腕は確かです。 このアルバムは2005年から2007年に収録していたものをまとめたそうですが、残り物という感じではなく、とても素晴らしいアルバムになったと思います。 この団体にいつも感じるおふざけ?はあまりなく、真面?に音楽に取り組んでいます。 総じて、心温まる音楽が多く聞いた後もとても爽やかです。 この中では、トーマス・ガンシュのオリジナル・サンバ「Samba Mno Ci」が執拗なリズムの繰り返しから展開されるアドリブの応酬でまさにムノツィル・ブラスならではの迫力です。 ちょっとサンバの軽さはなく、ウイーン風なのかもしれません。 L.パウルのオリジナルでトロンボーン(クレジットはありません)をフィーチャーした「ハンガリー幻想曲」はモンティの「チャルダッシュ」に似た旋律が出てきます。 最初から超絶技巧のオンパレードです。 それから途中で、超高音が出ますが、これはどうやって吹いているのでしょうか。 トロンボーンとは思えないハイ・トーンです。 これからいくとゾルタン・キスでしょうか。 それからお決まりの歌も飛び出し、ほとんど崩壊寸前まで行きます。 最後はウイーンの行進曲調で驀進します。 セッション録音とは思えない、狂気を含んだ異常な盛り上がり方は、さすがとしか言いようがりません。 CDでこれほどの盛り上がりですから、さぞかし実演はすごいことになるだろうなと想像されます。 また、「Riserva」(予約)と題されたボサノヴァの哀愁漂うメロディーがとてもおしゃれです。 アルトホーン?とトロンボーンに支えられて繰り広げられるガンシュ?のスタイリシュなアドリブ・ソロが曲を盛り上げています。 「Tanzbodenboaniger」はウイーン調のおふざけの入ったユーモアたっぷりの音楽で、聞いているだけでニヤニヤしてきます。 編曲物では、キャロル・キングの「君の友達」がとてもさわやかです。 それから、リチャード・ロジャースの「オクラホマ」からの愛らしい「私の夢から」もインティメイトで心温まる演奏です。 シューマンの「夕べの歌」(Op.85 No.12)も少しテンポは速めで、劇的にすぎるような感じはしますが、金管アンサンブルではこれくらいが限界かもしれません。 しかし、しっとりとして味わい深いものがあります。 「The Green Hornet Theme」は「くまん蜂の飛行」をモチーフにしたテレビ番組のテーマ。 ガンシュのハイトーンを駆使した、かなり、すっ飛んだソロが凄いです。 それから、蜂のぶんぶんいう音の模写など工夫を凝らしています。 それから、トラッドの「ズンマがそうだったために」(Da Summa is aussi)はパウルの本領発揮?のかなりおかしな編曲です。 金管のコラールに調子っぱずれのハープが加わるというまことにけったいな代物です。 表題曲のルグランの名曲「これからの人生」。2本のミュートトランペットから始まるイントロはクールでミステリアスな雰囲気を感じさせます。チューバのリズム・フィギュアが全体を支配しているところもなかなかユニークです。全体的にスインギーで、ところどころに出てくるソロ(特にトロンボーン)もいい感じです。 ゲアハルト・フュッスル のオリジナル「Moldavia」。 モルダヴィア(Moldavia)は、東ヨーロッパの一角を占める地域の名称です。「ルーマニアの東北部、すなわちカルパティア山脈の東、プルート川の西で両者に挟まれた地域にあたり、時にはルーマニア領を越えてプルート川の東にあるドニエプル川を西限とするベッサラビア地方を含めた、さらに広い地域を指す。」だそうです。 出典:Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A2%E3%83%AB%E3%83%80%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A2 クレツマー風の音楽で、トランペットの急速調のユニゾンが否が応でも興奮を掻き立てます。 最後はガンシュの異色作「Frater Septimus」。 正式な名前が、 「フラッター・ゼプティムス・クルークス・ノーネが祝賀をやろうとした、実は非常に親愛なるDJになったのが明らかになったために」 というとんでもなく長ったらしい名前です。 最初は、荘厳な雰囲気に包まれて始まりますが、ターンテーブルが突然停止した時のようにアンサンブルが停止します。突如として打ち込みのリズムやサンプリングの音が聞こえてきます。 しばらくすると、遥かかなたから、金管アンサンブルの音が聞こえてきます。この部分は無機的な打ち込みと金管なアンサンブルのコントラストが見事です。 アンサンブルが最高潮に達すると、あれほどやかましかったリズムは消えてなくなり、最後はオルガンを模したシンセの清らかな旋律が最後を締めくくります。 実験色が強く、受け入れられるのはなかなか難しいような気がします。 この曲は、個人的には、何回も繰り返して聞く気にはなりません。 これからの人生~ムノツィル・ブラス(Hoanzl)1. Out of My Dream/Richard Rogers (arr. Leonhard Paul)2. Auf der Heide bluh'n die letzten Rosen/Robert Stolz (arr. Leonhard Paul)3.Riserva/Leonhard Paul (arr. Leonhard Paul)4. Abendlied/Robert Alexander Schumann (arr. Leonhard Paul)5.Tanzbodenboaniger/Leonhard Paul (arr. Leonhard Paul)6.Russische Nachte/Thomas Gansch (arr. Thomas Gansch)7.Hungarische Schnapsodie/Leonhard Paul (arr. Leonhard Paul)8.You've Got a Friend/Carole King (arr. Leonhard Paul)9.Moldavia/Gerhard Fussl (arr. Gerhard Fussl)10.Da Summa is aussi/Traditional (arr. Leonhard Paul)11.The Green Hornet Theme/Billy May/Al Hirt (arr. Roman Rindberger)12.What Are You Doing the Rest of Your Life/Michel Legrand (arr. Leonhard Paul)13.Samba Mno Ci/Thomas Gansch (arr. Thomas Gansch)14.Frater Septimus Crux None ist gerade dabei eine Eucharistiefeier zu umrahmen, als ihm plotzlich klar wird, dass er eigentlich viel lieber DJ geworden ware/ Thomas Gansch (arr. Thomas Gansch) Thomas Gansch(Tp)Robert Rother(Tp)Roman Rindberger(Tp)Leonhard Paul(Tb)Gerhard Fussl(Tb)Zoltan Kiss(Tb)Wilfried Brandstotter(Tuba)Recorded 2005 at Symphonia Studio、Konzerthaus Wien ,Jan. 2006,Jan. 2007 at "Hey You" Studio Vienna
2009年01月08日
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今年初の映画はポイントがたまったので無料チケットを利用してディズニーの「ティンカー・ベル」を見ました。 前田有一氏が絶賛していたのに影響されたということもあります。年始年末のディズニー映画は、本命が「ウォーリー」なのですが、私はまだ見ていません。 この「ティンカー・ベル」は4部作にするという映画で、ディズニーも相当力を入れているはず?です。上映時間が70分とちょっと物足りないのですが、内容は充実しています。ティンカー・ベルの妖精デビューとウェンディが失くしたオルゴールを修理して届けに行くまでを描きます。 内容的には、取り立てて目新しかったり、深い描き方をしているわけであはりません。 ただ、それを上回る映像美に引き込まれます。妖精たちの姿も勿論美しいですが、景色がとても美しく、とてもこの世のものとも思えない(もっともですが)ほどです。絵本の中に入ったような気分になってしまいます。花や草木の美しさはもとより、動物たちも丹念に描かれています。特に、ホタルの愛嬌のある姿には笑ってしまいます。チーズというネズミも凄くかわいらしく、動きもいいです。ティンカー・ベルら妖精たちが妖精らしからぬ人間臭さを漂わせているところも魅力的です。ティンカー・ベルは少女の設定のようですが、色気もありなかなかいいです。 男の登場人物は少ないのですが、妖精の粉の番人テレンスが出番が少ないながらもよく描かれていたと思います。 ティンカー・ベルはピーターパンに登場するときの、少し意地悪で嫉妬深い性格ではなく、性格は比較的素直です。ただ、ネバーランドへ行きたいばっかりに、自分の得意なことでなく、他のいろいろなことに手を出して失敗する、すこし間抜けな性格です。人の言うこともよく聞くのですが、それがとんでもない結果になってしまいます。 私はエンドロールでキャストが出てきたところで帰ってしまいましたが、日本版の「妖精の歌」はこのあと歌われたのでしょうか?ちょっと辛抱が足りなかったかもしれません。。。。公式サイト
2009年01月07日
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映画「ペルセポリス」のブログを書いている時にメイキングでカトリーヌ・ドヌーブが出ていなかったことから、ネットでカトリーヌ・ドヌーブに関する書き込みを眺めていたら、ドヌーブは姉のフランソワーズ・ドルレアックにコンプレックスを抱いていたという文章が目に留まりました。 それで、フランソワーズ・ドルレアックについても調べていたら、彼女達の共演した映画「ロシュフォールの恋人たち」に行き当たりました。 実際の映画もとても興味があるのですが、何しろミュージカルで、以前ご紹介したルグランの「Le Cinema De Michel Legrand」に収められたいた、「双子姉妹の歌」にしびれていたこともあり、早速HMVで資料をチェックしました。 音源を聞くとどの曲も素晴らしく、私の好きな「You must Believe in Spring」も使われていて、それに日本盤ではボーナストラックが新録音を含む9曲とてんこ盛りで、これは買わねばと思い速攻で注文しました。 実際聞いてい見ると、音自体もそれほど悪くはなく、大変楽しめました。 ミュージカルの楽しさが凝縮していて、ルグランの天才ぶりがいかんなく発揮されたスコアが、映画を見ているような気分にさせてくれます。 台詞が少し入っているところもいいです。 この2007年の復刻はサウンド・プロデューサー橋本徹氏の選曲による「Suburbia Favourite Shop」シリーズのなかの1枚です。1枚ものもありますが、個人的にはこの完全版をお買い求めになることをお勧めいたします。 日本語のブックレットによると、ルグランは監督のジャク・ドゥミの要求する「陽気でポップな、いわゆるキャッチーな曲を作るのに苦労した」ことを告白しています。 現存するデモテープには10数パターンに及ぶ「双子姉妹の歌」や後年「ロバと王女」に流用される「マクサンスの歌」の原型など、膨大なメロディとその断片が残されているそうです。 若干注文をつければ「フィナーレ」は昔の映画によくあるような型どおりの盛り上げ方で、かえってそれまでの軽快な調子が崩れてしまったところが惜しいです。 この映画では、台詞はドルレアック姉妹が話していますが、歌は吹き替えです。ルグラン達は歌との声質のギャップを極力避けるため、何回もオーディションを繰り返し、クロード・パランとアン・ジェルマンの二人を選びました。今日多くの方がドルレアック姉妹が歌っているものと思っていることからも、この試みは成功でした。ボーナストラックが極めて充実しているのもこのアルバムの特徴です。DISC2の9曲目はミッシェル・ルグランのコメントのあとでデモテープから取った、彼のスキャットとピアノの弾き語りです。(MONO)八方破れで、映像が見たくなるほど躍動感にあふれています。作曲家の歌とは思えないスキャットのうまさです。英語版の「双子姉妹の歌」も原曲に劣らない素晴らしい演奏ですが、原曲の持つフランス語のぶっきらぼうに聞こえるところが、すこし流麗になっていますが、そこが別な魅力を生んでいる原因だと思います。このトラックは、イギリス、オランダ、カナダなどで発売された英語版のアルバムからの1曲です。 11曲目から15曲目は後年オーケストラ録音されたアルバムからのフィルアップ。 16曲目の「マクサンスの歌」はフィル・ウッズらと共演したライヴ・アルバム「Michel LegrandRecord Live at Jimmy's」(未CD化) ルグランのエレクトリック・ピアノに支えられてフィル・ウッズがゆったりとしたテンポでソロを繰り広げています。後半はテンポアップして、ベース、ドラムスも加わりスィンギーな演奏が展開されますが、この展開はゾクゾクします。大変素晴らしい演奏。 最後のメドレーは、アルファレコードの「The Warm Shade of Memory」が権利の関係で収録できないため再録音されたものです。トランペットとトロンボーンの2管編成のクインテット。ハードバップ風で、ウッズの名演の後ではいかにも平凡という感じを持ってしまいます。 アルバムのタスキに「すべてが夢のように美しい」とコメントされていますが、これは個人的にも全面的に賛同するものであります。 2枚組で3千円弱とお得ですし、映画音楽・ファンのみならず、ジャズ、クラシックのファンの方にも絶対のお勧めです。 ところで、これを聞いていて映画も見たくなったのですが、現在廃盤です。 また、AMZONのレビューを見ると、フィルムの状態が悪く、数年前に亡き夫のジャック・ドゥミの妻であるアニュエス・ヴァルダが、修復バージョンで復活させたそうです。ただし、修復版はアメリカやフランスのDVDだけだそうです。 仕方がないので、アメリカ版で我慢するかと思っていたら、「シェルブールの雨傘」制作45周年にあたる今年の1月末からデジタルりマスターで「シェルブールの雨傘」とともに公開されるそうです。 当地でも公開されるようですが、公開が遅いようでしたら出張の折にでもぜひ見に行きたいと思います。 「ロシュフォールの恋人たち」オリジナル・サウンドトラック リマスター完全版(ユニヴァーサル UICY 6822/3) ディスク 11.トランスボドゥール橋2.キャラバンの到着3.双子姉妹の歌4.マクサンスの歌5.デルフィーヌとランシアン6.町から町へ7.デルフィーヌの歌8.シモンの歌9.水夫, 友達, 恋人, または夫10.恋するアンディ11.イヴォンヌの歌12.マクサンスの歌13.ソランジュの歌14.ハンブルグからロシュフォール15.バラバラ事件の女 ディスク 21.めぐり合い2.アンディの歌3.お祭りのバレエ4.夏の日の歌5.いつもいつも6.コンチェルト7.キャラバンの若者たちの出発8.フィナーレ9.双子姉妹の歌 & ミシェル・ルグランのコメント10.双子姉妹の歌(英語ヴァージョン)11.バラバラ事件の女12.いつもいつも13.水夫, 友達, 恋人, または夫14.めぐり合い15.ソランジュの歌16.マクサンスの歌17.ロシュフォール・メドレー
2009年01月06日
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レンタル店に出ないので痺れを切らして買ってしまいました。 本編は映画を見た時と同じ印象ですが、映像は映画館で見た時よりも美しいと感じました。ボーナストラックはメイキングと本国と日本での予告編と寂しいのですが、メイキングがとても面白かったです。 まず、マルジャン・サトラピ監督がアニメとそっくりなのに驚きました。 幾分横に広がっていますが、顔かたちはまぎれもなく似ています。それに、監督ぶりがとてもすごい。アニメーターや声優たちにいろいろ指導するのですが、その身振りや表情が実に豊かです。ユーモアもたっぷりあり、このかたは俳優としてもやっていけそうな感じがします。 残念だったのは、母親役のカトリーヌ・ドヌーブの姿が出なかったことです。 娘キアラは父親のマルチェロ・マストロヤンニにそっくりでした。 アニメは古典的な方法で、トレースしながら一枚一枚描いていって、最後はフェルトペンで仕上げるという方法をとっています。監督はCGだと簡単にできるが、冷たい感じがするのと、時間がたつと古くなってしまうということから古典的な方法をとることにしたようです。個人的には、これは正解でCGでやると冷たくなって、辛い話なのに温かみのあるアニメのために救われている部分がとても大きかったので、正解だったと思います。 それから、実写も考えたようですが、これは考えただけで難しいことは明らかです。 Wikipediaによると、2005年に『Poulet aux prunes(鶏のプラム煮)』でアングレーム国際漫画祭の最高賞である最優秀作品賞を受賞しています。 絵を見ていて気がついたのですが、ペルセポリスでもそうですが、この方はべたの使い方が大変うまいです。べたで塗りつぶされていても、平板な感じにならないところはさすがです。 師であるダビッド・ベーもべたの使い方がうまいのでその影響でしょうか。 これも映画化して欲しいですね。。。監督のインタビュー アニメと実物Poulet aux prunes
2009年01月05日
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1971年から1981年にかけてMPSのレコーディングで活躍した「シンガーズ・アンリミテッド」彼らの3枚の「ア・カペラ」のアルバムを2枚のCDにリマスタリングした2006年のアルバム「Complete A Capella-Sessions」を聞く。きっかけは、ギルバート・オサリヴァンの「クレア」の動画を見て、彼らの演奏を思い出し、CDをチェックしたことに始まります。AMZON.CO.UKで「ア・カペラ」を集めたアルバムが出ていることを知り、早速注文しました。送料込みで14ユーロと\1800弱です。輸入盤を買うと\2800~\2900と千円は違いますから、断然お得です。私は、彼らが活躍していた当時からのファンで、何枚かレコードも購入しました。その分厚いハーモニーと、ボニー・ハーマンの清純な歌声が大好きでした。それから、ちょっと頼りないドン・シェルトンのテナーの歌声も記憶に残っています。改めて聞きなおしてみても、古さを全く感じさせません。どの曲にも通じる、遥かかなたの夕焼けに照らされた雲を見ているような、懐かしさと広大な空間の広がりを感じてしまいます。似たような構成なのですが、不思議と飽きません。ほとんどの曲は、オリジナルのテンポよりかなり遅くじっくりと歌い上げているのですが、オリジナルでは感じられない曲の彫の深さが感じられます。これは彼らだけで成し遂げたのではなくMPSのハンス・ゲオルク・ブルナーシュワーとの共同作業によって成し遂げられたことは言うまでもありません。録音は1971年、1974年、そして1979年に行われています。確認はしていませんが、どうやらオリジナルアルバムの曲順に従って収められているようです。選曲の特徴としては、スタンダードが多いのですが、その当時のコンテンポラリー・ポップスやビートルズのヒット・チューンが多く取り上げられているのが、目につきます。「青春の光と影」、「フール・オン・ザ・ヒル」など原曲の持つ味わいと違ったテイストがとても心地よいです。特に、ぎりぎりまでテンポを落とした「フール・オン・ザ・ヒル」はオリジナルがどちらかというとニヒルな感じの曲なのに対して、深い叙情を感じさせる曲に変貌したといっても言い過ぎではないと思います。編曲はリーダーのジーン・ピュアリングですが、編曲というよりは作曲の領域に限りなく近づいた仕事だと思います。彼の器楽的なアプローチとヴォイシングにおける腕の冴えはまったく脱帽ものです。それから「ニューヨークの秋」「エミリー」「インディアン・サマー」などのスタンダードもいいです。個人的に「エミリー」はこの演奏によって曲の良さを知ったようなものです。このグループでは低音の2人の男声のソロはほとんど聞かれませんが、珍しく「 Lost in the Stars」で聞かれる、深々深としたジーン.ピュアリングのバリトンは実にほれぼれとする美声です。アメリカ版のwikipediaを見ていたらジーン・ピュアリングが昨年の3月26日に亡くなっていたことを知りました。バスのレン・ドレスラーも2005年に亡くなっています。遅ればせながら、ご冥福をお祈りいたします。ユニヴァーサルの斎藤嘉久氏が「10年前の話」として、ハンス・ゲオルク・ブルナーシュワーをドイツに訪れた時のことを書いていらっしゃいます。とても興味深いことがつづられていますので、よろしかったらご覧になってください。 なお、このアルバムのブックレットには「ハンス・ゲオルク・ブルナーシュワー(July 29,1927-Oct.14,2004)の思い出に捧ぐ」という言葉が載っています。彼も2004年10月に亡くなっていました。The Singers Unlimited:Complete A Capella Sessions(MPS 06024 9825421)DISC11. Both Sides Now2. London by Night3. Here There and Everywhere4. Lullaby5. Michelle6. Fool on the Hill7. Emily8. Since You've Asked9. More I Cannot Wish You10. Try to Remember11. Clair12. Killing Me Softly with His Song13. Yesterday14. My Romance15. Lost in the Stars16. April in ParisDISC21. Girl Talk2. Nature Boy3. I Don't Know Where I Stand4. Autumn in New York5. Like Someone in Love6. Indian Summer7. Anything Goes8. Way We Were9. One More Time, Chuck Corea10. Sweet Lorraine11. Jeanie with the Light Brown Hair12. Someone to Light Up My Life13. Love Is Here to Stay14. Entertainer15. All the Things You Are16. Sometimes I Feel Like a Motherless Child17. I Wish You Love Singers Unlimited:Bonnie Herman,Don Shelton,Gene Puering,Len Dresslar
2009年01月04日
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ポリフォニック恒例のGreat British Music for Wind Bandシリーズの最新作。いつもなら、国内のディストリビューターから購入するのですが、たまたま見つけた「Midland CD」なるイギリスの吹奏楽、ブラスバンド専門のレコード店から購入しました。 以前発売された同じシリーズの「The Year of The Dragon」と合わせて送料込みで28.2ポンド、現在のレートから行くと、¥135として\3800程度ですから、かなりお得です。 因みにHMVではマルチバイでも¥2198ですから2割がた安いです。 何と言っても、送料が3.2ポンドと安いのが魅力です。こうしてみると、1カ月は早く耳に出来ることと、おまけに安いとなれば本国から輸入した方が断然いいことは確かです。それに1週間くらいで届くのも魅力です。アメリカだと2週間くらいかかってしまうことを考えると、安い、早いで今後ヨーロッパから購入する方がいいかもしれません。 まさに、私に限って言えば、円高さまさまです。 肝心の演奏ですが、チョイ聞きした時は今回は不作だなと思いました。 ところが何回聞いてもピンときません。いつもなら何回か聞いているうちにいい曲だと認識することがあるのですが、今回に限って言えば、結局気に入った曲はありませんでした。全体的に小粒で物足りないのが大きな理由です。とても残念です。 その中で、しいて言えば、表題曲の「Wind Borne」が優れていたと思います。この曲は2008年フランスで行われた“Coups de Vents”国際作曲コンクールにおいてグランプリを受賞したイスラエルのエルサレム出身の34歳の若手作曲家アヴナー・ハナニの作品。クールで不思議なムードを持った曲です。リズムの繰り返しが印象的で、そこにいろいろな楽器が表れては消えるといったような曲で、その軽さと躍動感がなかなか快適です。また独特なハーモニーとリズムが新鮮です。リズム・パターンの変わる終結部はヒンデミットのムードに似ています。これが持続するかと思うと、途中から静かになり、消え入るように終わります個人的にはこのムードを持続させてほしかったところです。もう少し何とかならなかったのでしょうか。 英航空軍バンドの指揮者であるロブ・ウィフィンの3曲からなる、「リーディング・エッジ」。 第1曲の悲しみを振り切るような劇的な旋律と曲全体を支配するミステリアスなムードが魅力的です。第2曲目は哀愁を湛えた旋律が美しい「シチリアーナ」。アタッカで続く「フィナーレ」は推進力のある旋律が魅力的です。中間部は中だるみですが、後半の緊迫した盛り上がりも悪くないです。ただそれが徹底されていないため、中途半端に感じられるところが惜しいです。 ダロル・バリーの6つの部分からなる「ディヴァージョンズ」はなかなか変化に富んでいます。 特にクラリネットのエキセントリックなソロ・フレーズはなかなか面白いです。 この曲の響の薄いところでのオーケストレーションはなかなか独特です。5つ目の部分でのアルト・サックス・ソロを2本のフルートとバスーンが支えているところなど、面白いサウンドになっています。 そのほか、ダンカン・スタッブスの5分ほどの小品「ドラゴン・ダンス」も結構面白いです。ダンカン・スタッブスは2000年からイギリスの空軍セントラルバンドのディレクターを務めている作曲家、指揮者です。ダンスという割には躍動感があまりなく、全体的に暗いムードで、いつの間にか終わってしまう展開もいまいちな原因です。ただ、途中出てくるトロンボーンのグリッサンドがなかなか面白い効果を出しています。 最後のナイジェル・クラーク3楽章からなる「ファンファーレとセレブレーション」はファンファーレの勇壮な楽想はいいのですが、イギリス民謡が出てくると一気にテンションが下がります。 1,2楽章とも同じつくりで、3楽章でなんとか帳尻をあわせている感じがします。 エレビーの組曲「ロンドンの叫び」はまったく退屈です。特に「ロンドンの歌」と題された曲では「メリーさんの羊」がわざわざテノール独付きで演奏されますが、全くつまらない。 おなじみの「英雄行進曲」は、アルト・クラリネットの音が際立っていて、悪くないです。 このように作品はいまいちですが、演奏はどれも素晴らしいものです。 前回の「Mosaic」もなかなかなじめず、結局レビューは書き損ねましたが、良い曲は何曲かあったと思います。 しかし、今回はどうも不調でした。マンネリでしょうか。次回の巻き返しを期待したいと思います。WIND BORNE: GREAT BRITISH MUSIC FOR WIND BAND VOL. 14 (QPRM 153D)1.Percy Fletcher(arr. Philip Sparke):Heroic March2.Martin Ellerby:The Cries of London l.Dawn Watch ll.Westminster Chimes lll.A Dream or Two (A Song for London) Vl.Catch that Catch Can V.Evening watch Vl.Hymn Vll.Darrol Barry:Diversions (Epitaph for a Dreamer) )3.Rob Wiffin:Leading Edge l.Prelude ll.Siciliana lll.Finale4.Avner Hanani:Wind Borne5.Duncan Stubbs:Dragon Dance6.Nigel Clarke:Fanfares and Celebrations l.Intrada ll.Processional lll.JubilateROYAL NORTHERN COLLEGE OF MUSIC WIND ORCHESTRAKENNETH BOYD (Tn)Conductor:Clark Rundell, Mark Heron(1,4,5,6)
2009年01月03日
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当地では一般の映画館での上映はなく、10月に上映会があったようですが知りませんでした。結局最近出たDVDを見た感想をひとつ。「いのちの食べ方」みたいな、ドキュメンタリーかと思ったのですが、「ダーウィンの悪夢」のような先進国の発展途上国からの搾取、いわゆる南北問題がテーマでした。それほどあからさまに訴えているわけではないのですが、状況証拠を積み上げていくように、その訴えがじわじわと心に沁み渡ってくるような作りで、良かったと思います。この手のドキュメンタリーにありがちな映像の汚さはなく、とても綺麗な映像で、アフリカの笛や太鼓を使った音楽も上質で、ドキュメンタリーとしての仕上がりは最上級だと思います。 冒頭、アメリカのスペシャルティ・コーヒー協会(SCAA)の国際カッピング・コンテストの模様が映し出されます。味を見るのにスプーンで一杯だけすくって「ずずっ」と音を出して飲むところが印象的です。そこで、「最高のコーヒーに出会った」という話が聞かれます。それはエチオピア産のハーラー豆でした。 この映画は、このコーヒー発祥の地エチオピアで74000の農家が参加するオロシア州コーヒー農協連合会の代表タデッセ・メスケラ氏の奮闘ぶりを軸に、繰り広げられます。印象的なのはキレンソ・モニコサ農協を訪問したい時の農民たちとの会話です。メスケラ氏は欧米で飲むコーヒーの値段はいくらかと問いかけます。農民たちは答えられません。メスケラ氏はコーヒー1杯が25ブル(4米ドル)で、コーヒー豆1kgで80杯のコーヒーができると続けます。そうすると、1kgのコーヒー豆は2000ブル(230米ドル)になるわけです。メスケラ氏は続けて、1kgの豆をいくらで買ってもらっているかと農民たちに問いかけます。最高でも2ブルだという答えが返ってきます。この値段の背景には、コーヒーの国際協定が1989年に破綻し、それ以来コーヒー豆の価格が30年前の値段になってしまったことがあります。何故、生産者の売り値がこんなに安いのかというと、ニューヨークとロンドンの商品取引市場で値段が決まってしまうからです。この値段によりすべてが決まってしまうところが問題だと映画は主張します。結局しわ寄せは弱いところに来るため、生産者は流通業者の言い値で売るしかないという実態が明らかにされます。選別でも、1日働いてわずか4.5ブル(0.5米ドル以下)にしかなりません。農民たちはこの窮状に対し、欧米では禁じられているチャットという麻薬を栽培して収入を増やそうとしています。このチャットは20本くらいで30ブルにはなり、それに年2回の収穫が見込められるそうです。 世界のコーヒーはクラフト・フーズ(Kraft Foods),ネスレ( Nestle),P&G (Procter & Gamble),サラ・リー(Sara Lee)の4つの多国籍企業に支配され、彼らの利益を守るために新たな参入も阻まれているという構図が出来上がっているのです。流通業者も決まっているようで、クラフトに卸しているクロカ、ネスレやスターバックスに卸しているボルカフェ、ドイツのダルマイヤーなどの業者が直接買い付けに来ています。メスケラ氏はこの流通過程を省き、焙煎業者に生産者から直接流通させることにより、コストの6割の削減を目差しているのです。 一方、ニューヨーク市場の動きに対して、別な動きをとっているところもあります。イタリアの焙煎メーカーイリーカフェ、イギリスのテイラーズなど、品質の面からニューヨーク市場と結びついてない。映画ではテイラーズの関係者がはっきりと指摘している。中米では市場が1ポンド63セントなら生産コストは90セントつまり、生産者は1ポンド売ると30セントの赤字が出るという。この状況を踏まえて、彼らはエチオピアの農民たちを救いたいと考えている。2003年メキシコで開かれたWTOの閣僚会議の模様も描かれていました、先進国はもっとマーケットを広げるべきだという主張をし、途上国は公平な取引をしろと迫る。相変わらずの風景です。それに小国は3人程度で、EUは650人も参加し、複数の部会が非公開で同時進行するという展開です。これで公正な審議が行われるはずはありません。しかし、悪いことはいつまでも続くはずがありません。メスケラ氏が直接取引を行っているところを紹介してくれます。イギリス第4位のスーパーアズダ、アメリカのピースコーヒーなどです。 私は今までこのようなことが今もあるとは全く知りませんでした。何しろ、アフリカの輸出額のシェアは世界のわずか1%で、それが2%になることにより、欧米からの支援額の5倍にもなるというのですから、どちらがいいかは明らかです。彼らが欲しているのは援助ではなく、公正な貿易です。 最後のほうで、スターバックスのコーヒー豆を供給しているシダモの地でアメリカからの援助物資を受け取っている人たちのシーンが映し出されています。エチオピアではこのような人たちが700万人もいるそうです。しかし、その救援物資の袋に描かれている表示が「USA Wheat」ですから、ブラックユーモア以外の何物でもありません。 メスケラ氏がロンドンのスーパーでフェアトレードのコーヒーの中からやっと「モカ・シダモ」を見つけるシーンは生産者のことを思うととても悲しいシーンです。メスケラ氏が仰っているように「消費者はこのコーヒーがどこで生産され、生産者がいかに搾取されているのか」を消費者は知る義務があると思います。私はコーヒーはあまり飲みませんが、今後、なるべくフェアトレードのコーヒーを買うように努めたいと思います。 なお、2007年にエチオピア政府は長年争ってきた「ハーラー」「「シダモ」「イリガチェフェ」などのブランドをスターバックスにライセンスすることになったそうで、着実に彼らの努力は実を結びつつあると思います。 監督はロンドン生まれのマークとニックのフランシス兄弟。大げさな表現はなく、事実をして語らしめる手法が映画を観終わった後、見る者に心地よい感動を与えてくれます。それに全編を流れる空気感が、アフリカを描いているにもかかわらず、すこしウエットに感じられるのも悪くないです。ーまた、アフリカの民族楽器を主体としたアンドレアス・カプサリスの音楽も、大変優れています。フェアトレード・ラベル・ジャパン公式サイト>
2009年01月02日
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原題Body of Lies。名前を変えた理由が分かりませんが、横文字ではなく日本語にできなかったのでしょうか。たとえば「嘘の組織」みたいな感じだとネタばれでしょうか??? これですでにネタばれの可能性がありますが、じつにおもしろい映画でした。 最近、レオナルド・ディカプリオの映画はよく見ていて、映画の中の人物と、実物を混同しそうになります。 今回の映画は、前作の「ブラッド・ダイヤモンド」に似た感じの舞台設定です。 前回はシエラレオネ、今回は中東で、職業も前回はダイヤの密売人、今回はCIAのエージェントと違いますが、やばさ加減は同じです。 原作はデイヴィッド イグネイシアスで、「ウォールストリート・ジャーナル」、「ワシントン・ポスト」を経て、中東を舞台にした小説を執筆。 現在も「ワシントン・ポスト」や「ニューヨーク・タイムズ」に寄稿しています。 ■あらすじ CIAの情報局員フェリスは世界中で頻発するテロの首謀者アル・サリームを懸命に追っている。 いろいろな手を使ってアジトがバグダットにあることを突きとめる。 フェリスはアジトを襲撃し、そこで入手した情報からヨルダンのアンマンにアル・サリームのセイフ・ハウスがあることを突き止める。 フェリスはヨルダンのCIAのボスとなり、ヨルダンの情報部(GID)のボス、ハニ・サラムとコンタクトを取る。 ハニ・サラムの心情は「裏切らないこと」だった。 そして、情報を提供してもらうために、恩を売っておいて、泳がすことが大事だと考えている。 ハニは敵の内部へスパイを送る計画を考えていた。 拘束していた敵のカラーミを母と話させ、寝返らせる。 そのまま、アルカイーダの仲間として続けろと言って開放する。。。。■興奮する工作の場面 フェリスは嘘を実現するために、凄腕のガーランド(サイモン・マクバーニー)を雇い、工作を着々と進行させる。 このときのシーンがとても興味深いものでした。 身元不明の死体を用意し、アメリカ軍の基地を爆撃する。 犯行声明をアラビア語に自動翻訳しそれを、アジトから入手した本当のメールアドレスに送る。 関係者からの称賛のメールが届く。 その中には居所の分からない、アル・サリームから連絡が入る。。。 着想が実に奇抜で、実際の世界でもだまされる確率は極めて高いと思います。 ここら辺の描写は見ていてゾクゾクさせられます。■ディカプリオ迫真の演技 フェリスは爆撃の巻き添えを食らったり、狂犬にかみつかれたり、凄まじい拷問を受けたりと傷の治る暇もないほどです。 特に拷問の場面での激痛をこらえる演技は真に迫るものが感じられ、見ている者まで激痛を感じてしまうようです。 この映画では、負傷して手当てを受ける場面がよく出てきますが、こういうシーンはディカプリオの独壇場ではないでしょうか。 とにかく、その痛々しい姿が見る者をして彼が演技をしていることを忘れさせるようです。 一方、現場から遠く離れた安楽な生活の中で非情に命令を下すホフマン(ラッセル・クロウ)の楽天的な姿には、よくある会社での上司と部下の関係を象徴しているようなシーンが何度も出てきます。 この上司はあまり良い上司ではないようです。 ホフマンはフェリスを支援しているつもりでもの、実際はそれが障害になっていることを全く理解していない無能な上司です。 ラッセル・クロウはなかなかこの人物のいやらしさを巧みに演じていたと思います。 見る者がホフマンを嫌いになる一歩手前のところでとどまらせているところはさすがと思います。 ところで、ラッセル・クロウは体形からして、かつての「グラディエータ-」のようなヒーローを演じることは不可能になってしまったのでしょうか。何かさびしい気がします。 結果的に何とか任務は完遂出来るのですが、それはホフマンの腕ではなく、ヨルダンの情報部(GID)のボスハニ・サラム(マーク・ストロング)の優れた手腕によるものでした。 このサラムを演じるマーク・ストロングのクールな演技はこの映画でもっとも光っていたと思います。 実際の世界でこの通りなのかどうかは分かりませんが、このように弱小国にとっての諜報の重大さとその効果の大きさを感じさせる映画もなかなかないように思います。 そう意味でとても参考になる映画だったと思います。 この映画のヒロイン アイシャを演じるのはイランでもっとも有名な女優ゴルシフテ・ファラハニ。 気が強いながら、清純であるアイシャの演技はなかなか良かったと思います。 フェリスとのシーンは殺伐としたシーンが多い中で、砂漠のオアシスのような爽やかさを感じさせました ただ、途中からの登場でしたし、最後もいつの間にか消えてしまって、少し物足りなかったです。 アルカイーダの黒幕アル・サリームを演じるのはイスラエル出身のアロン・アブトゥーブル。イスラエル最大の映画スターの一人。 その悠揚迫らぬ演技はアル・サリームの不気味さを表していたと思います。 しかし、激高してフェリスを痛めつけるシーンは、重厚な人物にしては首をかしげてしまいます。もちろんこれは演出上の問題でありますが... ■惜しい最後の場面 最後の場面が時間の関係か十分に描かれていなかったのが残念です。おかげで、どういうからくりでそうなったのかよく理解できませんでした。 できれば、DVDでそこらへんをディレクターズ・カットで明らかにしていただければと思います。 公式サイト
2009年01月01日
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