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2010.07.02
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カテゴリ: その後のこと
昨日の仕事帰り,梅雨の合間に,久々に夕焼け空を見ました。
真っ赤に輝くような夕焼けではなかったけれど,町中が淡い
オレンジピンクに染まる中を家路につきました。

toraの最後の入院中は,街がそんなピンクオレンジに包まれる
中を病院に通っていました。
どの患者の家族も同じように,一日の終わりの時間を一緒に
すごそうと,病院の玄関に向かって歩いている光景が浮かびました。

今からちょうど1年前,toraを失った直後の私は,すべての感覚を
失ったようになっていました。

隔絶されたような,そんな感じでした。
感情の起伏もなく,楽しいと感じることもおいしいと感じることもなく,
毎日を過ごしていました。

伴侶を失うということの現実は,おそらく同じ立場になった人にしか
分からないと思います。
普通,人間は一つの生命体として,感覚も感情も持ち合わせています。
それは感覚器や皮膚を通じて,自分の外との接触を行い,自分自身が
感じるものとして認識するものだろうと思いますが,そうではないの
かもしれません。

私が楽しいと感じていたのは,私自身が楽しいと認識していたのでは
なく,一緒にいるtoraが楽しいと感じるのを見て,楽しいと感じて

相手がいなければ,美味しいとは感じないのです。自分が美味しいと
いう感覚は,一度相手に伝わって,フィードバックしてきてはじめて
自分も美味しいと感じるのです。

夫婦といえども,元々は他人です。別々の個体ですが,共に暮らし,
行動をともにすることで,個体の目的は単体では達成できず,伴侶と

ですから,私はtoraを失って,自分自身の感覚も失いました。
何も感じない,こころが動かない毎日を過ごしました。

気晴らしに,無理にでも楽しいことをしてみようと,一人で観光したり,
山に登ったり,温泉に泊まりに行ったりしてみましたが,ダメでした。
感じることができる能力を失っていたのですから,当然ですよね。

去年の6月,toraが旅立った日の朝,toraはもう,私たちの呼びかけ
に応えることはありませんでした。
ただ,時々呼吸が止まりそうになるたび,娘が,「お母さん,息して!」
と呼びかけると,再び息をしていました。

私たちは,もう,今しかないとばかりに,
「今まで,楽しかったよ。ありがとう」
「いっぱい苦しませて,ごめんね」
「助けてあげられなくて,ごめんね」
とたくさんの言葉を伝えたのですが,反応はありませんでした。

その後,美希病院でお会いしたE先生は,感覚は最後まで残るという
ことを教えてくださいました。もういのちの灯が消えようとしている
ときでも,聴覚は残っている。だから,あなた方の呼びかけも,
きっと聞こえていたはずですよと。

私たちの最後の呼びかけは,どうやらtoraに届いていたようです。
E先生から教えていただいて,恥ずかしいことに,私はその場で
涙が止まらなくなりました。
toraに私たちの呼びかけが聞こえていたからといって,すべての
罪滅ぼしになると思っているわけではありません。
それでも,toraが精一杯生きてくれたことに対する,私たちの精一杯の
お礼の言葉が伝わっていたのかもしれない。
私たちの感謝の気持ちを受け入れて,それから旅立ってくれたのかも
しれないということを知って,随分,気持ちが軽くなりました。

toraが旅立って1年,私のこころは少しずつ,楽しいと感じることが
できるようになって来ました。





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Last updated  2010.07.02 10:18:26
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