かのこの小部屋

かのこの小部屋

2005年12月08日
XML
カテゴリ: 読書雑記
瀬尾 まいこ 『幸福な食卓』

幸福な食卓  2004年11月刊 講談社


>父さんが自殺を失敗した時も、母さんが家を出た時も、朝は普通にやってきた。
そして、その悲しい出来事の後も…。
今、最注目の作家が放つ、とっても切なくて、ちょっとおかしくて、あったまる長編小説。(楽天ブックス)



初めは短編だと思って読み始めたのだけれれど、すぐに、短編連作・・・というよりも長編に近いことに気がつきました(いつも気付くのが遅すぎなのです)


小題ごとに時間が少し進んでいたりしましたが、ずっと同じ家族内での日常が綴られていました。
家族は4人、父・母と、兄の直と妹の佐和子。

この物語では、佐和子の視点で話が進んでいました。


んー。

とても妹を大事にしている感じ。

でも、何だか話が進む内に、一番しっかりしてそうな直ちゃんにもイロイロ問題があることが分かってきました。
単に能天気なくらいに明るくて、妹がとっても大事!という人なのかと思っていたのですが、読み進める内に目に見えている姿とは全く違うことに気付きました。

ただ、直ちゃんだけでなく家族の全員が、どこか少しずつおかしい感じでしたが・・・


物語は、父が
「父さんは今日で父さんをやめようと思う」
という宣言から始まります。


初めの内は、それでも何とか普通の家族として過ごしていましたが、
母が家を出て行き、父が仕事を辞め、大学に行くために浪人生になったりなど家族が家族でなくなってしまう時には、
「あ~やっぱりバラバラかぁ・・・」 と思いました。

そもそも、みんなすごくちぐはぐな感じで、ムリをしているように感じていたので、 「まぁ、そうなるだろう・・・」 という予想を裏切らなかったわけです。




その時にハハオヤは何かが抜けたように風呂場の床にぺたんと座りこんで何か小声で呟いていて、
兄は2階で父親の残した遺書を読んでいた。

死んだように風呂場に横たわった父を救ったのは佐和子だった。
救急車を呼んで一命を取り留めた父。

それからは、父はどこか佐和子に対して遠慮した目を向けるようになり、また半端でない感謝の気持ちを持つようになる。

母は、毎日毎日長い時間をかけて風呂場を洗い続け、

直ちゃんは恋人に振られ続けている。

そして、佐和子はその季節が訪れるとひどい胃痛に悩まされる。




そんなどこかがちょっとずれて、おかしくなってしまった家族。


ただ、意外だったのは、家族としての枠組みはなくなってしまったのに、ちゃんと家族として存在していられたと言うところ。


父親が自殺未遂をしても、母親が家を出てしまっても、
原形をとどめないほどの関係の崩壊が訪れる事も無く、朝になると食卓を囲む。
確かに元のように「家族で食卓を囲む」という暗黙の了解ごとはなくなりましたが・・・




「私が頭痛を起こすように、母さんが家を出たように、直ちゃんにも大きな欠落部分があったのだ。」


人一倍優秀で、頭の良かった兄の見えなかった暗い部分。。。


直ちゃん自身が佐和子に語った、
父親の遺書から得た「長生きの方法」

もちろん、それは間違っている。
だけど、それを佐和子からは教えられない。
自分で気付かなければ意味がないことだからだ。


それは佐和子も同じ。
いつもどこか冷めたまなざしで物事を見ている佐和子。
彼女もやはり、どこかに欠陥を抱えていたのだと思う。


そんな欠落部分を抱えた直ちゃんの前に現れたコバヤシヨシコ。
彼女は直ちゃんの救世主だった。

そして佐和子には、同級生の大浦くんが。
(大浦くんの、下の名前は勉学くん。結構かわいい?
名前通りの生意気なガリ勉くんではなくて、単純で真っ直ぐな勉学くんで本当に良かったなって思ってみたり)


高校生になって佐和子は、なりたくも無い級長に選ばれてしまい、一所懸命だけではどうにもならないことを知り、時には人に頼ることも大事なのだと大浦くんに教わる。


大浦くんは単純な分いつも潔いくらいに真っ直ぐだ。
いっそ気持ちの良い位の単純(素直)さは、とっても格好よいかも!
しかも、意外に頼りになる。


ただ大浦くんが熱い分、佐和子がどこか冷めているようには感じたかな?
それでも単純な大浦くんにつられて、随分と佐和子も普通に幸福だったのだろうと思う。


そうだな、正直、「ある出来事」によって佐和子は大きく成長できたとは思う。
それは読んでみて感じた。
でも、やっぱり・・・コレはないなぁと思ってしまうのはしょうがないかな。

最後に、佐和子が少しずつ前へ進もうとしていることで、少しは救われたかな。



全体的な意味では、面白いと一言では言えない感じでした。


でも全体的に重苦しい作品内容、題材に反して、語り口は軽快でサラリと進み、暗さをあまり感じさせなかったのが、すごいというべきなのでしょうか?
とても読みやすい文章でした。


読後感は・・・うーん。
ショックだったけど、佐和子の成長を見られた分、差し引きゼロってところかな?

やっぱり最後に残るのは家族なのかなぁ。。。
一概には言えないかもしれないけれど、一番身近な無償の愛を与えてくれる存在と言うのは、やっぱり「家族」なのだろうなぁと思わされた1冊でした。


(読書雑記 #022)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005年12月21日 07時12分55秒
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: