2026
2025
2024
2023
2022
2021
2020
全4件 (4件中 1-4件目)
1

今日のまとめ 1. 中国は石油の消費国であるとともに産油国でもある 2. 大慶油田のお陰でペトロチャイナは世界的石油会社の一角を占めている 3. しかし大慶油田は既に盛りを過ぎており今後減産が心配される 4. 思わぬ生産コストの上昇が期待はずれの決算の原因 5. 主力油田の衰退はペトロチャイナだけの問題ではない 中国は石油の消費国として世界の石油の需給関係にとって次第に重要な存在になりつつあります。現在のところ中国の占める割合は全体の8.5%程度ですが着実に需要が伸びつつあるという点で目の離せない存在です。 日本と違って中国では石油が出ます。従って中国は石油消費量の全てを輸入に頼っているわけではありません。事実、ペトロチャイナ(PTR)の所有する中国を代表する大油田、大慶油田は世界で4番目に大きい油田です。 この大油田があるお陰でペトロチャイナは世界のオイル・メジャーと呼ばれる巨大石油会社と比較しても遜色ない事業規模を誇っています。 上の図に見られるように石油の生産高ではペトロチャイナはBP、エクソン・モービル(XOM)に次いで上場企業のうち世界で第3位につけています。ペトロチャイナにとって問題なのは大慶油田に対する依存度が高すぎる点です。下の図のように同社の生産量の約4割が大慶油田から稼ぎ出されているのです。 しかし大慶油田は古くからある油田の辿る典型的なライフサイクルを踏襲する形で「老境」に入ろうとしています。このため上のグラフでもわかりますが年々生産量は漸減しています。大慶油田の含水率(Water cut)は89.78%と非常に高く、通常、このくらいの含水率に達した油田はつるべ落としに生産が減り始めるのは時間の問題です。ペトロチャイナは新疆、重慶、タリムなどの油田の増産を急いでいますが、大慶油田の開けた穴を埋められるか?というと状況はかなり苦しいと言わざるを得ません。現在のペトロチャイナ株を巡るアナリストの多くの同社への評価が厳しいのは、主にこれが原因であると言えます。実際、先日発表された決算は市場予想をかなり下回りました。探索・生産部門におけるコストの大幅な増加がその原因です。大慶油田においてだんだん石油の採集が難しくなっており、それがコスト超過を招いたことは明白です。因みに2005年から2006年にかけてペトロチャイナの原油生産量の増加率は+1%足らずでした。一方、探索・生産コストは+5.6%と跳ね上がっています。ペトロチャイナの売上高成長の殆どは原油の平均販売価格が2005年の$48.37から2006年は$59.76へ上昇したことによります。ただ主力油田の老朽化で生産量の維持が困難になってきているのは別にペトロチャイナに限ったことではありません。最近の話題ではメキシコのカンタレル油田の生産量が激減していることが業界関係者の注目を集めています。またクウェートのブルガン油田も含水率が75%程度まで上がっており末期的な症状を示しています。世界最大の油田であるサウジアラビアのガーワー油田も含水率は35%程度であると言われており、今後衰退する前兆が現れています。大慶油田はまだまだ工夫の余地はあると思います。その理由は同油田から生産される石油のうち、最新鋭の特殊石油採取手法(enhanced recovery method)を援用した生産は未だ生産全体の27%に過ぎないからです。 ペトロチャイナは国内における石油の探索だけではなく海外における油田の権益の取得にも積極的です。50%子会社であるニューコ (Newco)を通じて、カザフスタン、ベネズエラ、ペルーなどの油田の権益を支配しています。またアフリカなどでも積極的に事業展開する意向があります。 ペトロチャイナは主に探索・生産などの川上部門に依存する体質になっています。 ペトロチャイナで生産された原油のうち83%は自社の製油所でガソリンや石油化学製品に加工されます。残りはシノペック(SNP)などの企業に売却します。シノペックは石油の探索・生産部門が弱く、基本的には精製・販売などの所謂、川下部門中心の企業です。事実、シノペックは世界の総合石油会社の中で最も精製マージンの増減に業績を左右されやすい企業です。従って原油価格の高騰はシノペックにとってかならずしも好材料ではありません。
2007年03月23日

今日のまとめ 1.サブプライム住宅ローン市場では既に貸し渋りの状況が至現している 2.米国の住宅セクターはGDPの15~20%の貢献度を持つ 3.米国経済は消費依存型であり住宅市場の減速は成長を鈍化させる 4.もはやゴールディー・ロックではない 5.米国への輸出に依存する業種は要注意 6.BRICsの内需型企業を中心に投資すること 7.FEDは早晩利下げに転ずる 8.BRICsの株式市場はマルチプル・エクスパンションを起す 9.現在のBRICsのPERは割高ではないサブプライム住宅ローン市場 米国のサブプライム住宅ローン市場における焦げ付きの急増を嫌気して世界の株式市場が神経質な展開になっています。サブプライムとは信用力が劣る借り手のことで、通常の融資基準では融資がおりないような危ない借り手のことを指します。そこで今日はこの新しい現実を踏まえて我々BRICs株式の投資家がどう投資戦略を変えるべきなのかについて考えてみたいと思います。 米国の住宅ローン全体に占めるサブプライムの比率は残存ローン総額のうちの約12%です。今回、問題を起しているサブプライム業者においては延滞比率はすでに二桁に乗っています。サブプライム住宅ローンは与信審査がきわめて杜撰です。一部のサブプライム業者の倒産でサブプライム・ローンを証券化し転売する流通市場は変調をきたしています。このため新規のサブプライム住宅ローンは組成しにくくなっており、所謂、貸し渋りの状況になりつつあります。サブプライムの借り手の中にはちょうどクレジット・カードを次々に乗り換える感覚で住宅ローンを次々に「はしご」する借り手が居ます。彼らは今後、借り換えが出来なくなり、ローン返済に困る「焦げ付き予備軍」であると考えられます。これらのことから今後焦げ付きローンはさらに増加することが考えられます。これは米国の住宅市況にとって不吉な兆候であるといえるでしょう。米国経済への影響一般に米国の住宅セクターは直接・間接にGDPの15~20%の貢献度を持っていると考えられています。近年の米国経済は企業の設備投資意欲が低かったため消費者の積極的な消費行動に依存する構図になっていました。実際、企業のバランスシートは実質ネット・キャッシュ・ポジションになっているのに対して、消費者の負債額はGDPの4%に相当しています。つまり消費者は貯蓄が無いにもかかわらず積極的な消費態度をとってきたわけです。それを可能にしたのが住宅の含み益をローンを借り替えることによりキャッシングする行為だったのです。そのようなキャッシングが困難になってきたということは米国の消費全体が減速する危険が高まったことを意味します。これまで米国の経済は熱すぎもなく、冷めすぎてもいない、所謂、「ゴールディー・ロック」と呼ばれるちょうどいい湯加減の経済が続いてきたわけですが、この均衡が次第に崩れることをそろそろ心配すべきだと思います。 BRICs経済はどうなる?若し米国の需要が減退するというのであれば加工輸出型経済である中国も或る程度とばっちりを受けることを覚悟する必要があります。ただ、今のBRICs各国は国内経済に勢いがありますし、アメリカを介在しないBRICs間での交易がたいへん盛り上がっています。このためアメリカ経済の鈍化から受ける悪影響は限定的でしょう。それを断った上で今後は用心のため輸出関連株ではなく内需関連株をポートフォリオの中心に据えることが好ましいと思われます。 米国は早晩利下げに転ずるさて、米国経済が減速した場合、これは悪いニュースばかりではありません。FEDは今後早い時点で利下げに転じてくると思われるからです。FEDは過去の経験では利上げが打ち止め(今回の場合、去年の夏でした)になってから大体7ヶ月後に利下げに入ります。そのスケジュールから考えてそろそろ利下げ局面に入ると考えるのが順当でしょう。また、今回のサブプライム住宅ローンの問題は放置しておくと金融システムに対する不安などを誘発しかねない重要な問題です。FEDはその辺りのことはよく心得ていますから、問題が広がらないうちに断固とした措置を講ずると思われます。幸い、去年までFEDは整然と利上げをしてきました。現在のFFレートは5.25%で、FFレートからインフレ率を差し引いた実質政策金利は約3%です。これは今後の利下げ余地が十分にあることを示唆しており、メリハリの利いたダイナミックな市場誘導が可能であることを意味します。 米国の利下げ環境下でのBRICs株式FEDが利下げに転じた場合、これはBRICs株式にとって好材料です。なぜなら配当割引モデルなどの投資理論からすると金利下落局面では妥当株価収益率(PER)は拡大するからです。このことをマルチプル・エクスパンション(PERの拡大)と呼びます。中国の株式市場のPEマルチプルはとりわけ拡大しやすいと考えられます。なぜなら投資家は来年に北京オリンピックを控えて今の局面で中国の内需が腰折れになってしまうリスクは殆ど無いと考えているからです。因みに現在のBRICs各市場のPERは以下のグラフの通りです。各国の株価収益率はブラジルが8.2倍、ロシアが8.6倍、インドが17.9倍、中国が10.1倍です。これらの数字はインドを除いておのおのの国の過去10年の平均PERと比較してもきわめて妥当な水準です。また、米国のPERの14倍、日本の18倍に比べても決して割高な水準ではありません。特に米国の場合、住宅ローン市場における焦げ付きは多額の引当金計上の必要を生ずると予測されます。この分だけでも米国市場の平均PERを16倍くらいの水準に押し上げる可能性があります。
2007年03月16日

今日のまとめ1.最適な課金方式は何か?という点では未だ模索が続いている 2.オンライン・ゲーム産業自体は順調に成長している 3.ザナインが最も充実したパイプラインを擁している 4.中国のゲーム株は米国のそれに比べて割安に放置されている 課金方式の模索オンライン・ゲーム企業の株式が上場されてからほぼ3年が経過しました。これらの企業が登場した当初は全く新しいタイプのサービスだったのでそれらのビジネスがどういう風に発展するかに関して未知の部分が多かったです。しかし3年の年月を経て明らかになった事というのもあります。そのひとつが人気ゲームタイトルの寿命はウォール街の投資家が考えていたよりもかなり短命であるという点です。上の図はゲームのライフサイクルを示したものですが、長期に渡って安定的に収入を上げられると思われていた人気タイトルの凋落が思ったよりも早い時期に到来しました。また、ユーザーの離反も当初予想より急速でしたので投資家のこのセクターに対する投資熱は急激に冷めました。ゲームの運営会社は古くなったタイトルの延命策を考えなくてはいけなくなりました。そのひとつの方便が無料化というやり方です。人気が峠を越えたタイトルを見切り良く無料化することでユーザーをつなぎとめるとともに課金の方法をゲームの中で販売されるアイテム(例えば武器など)の販売に依存する方式に移行するわけです。この課金方式をアイテム課金と呼びます。 この無料化→アイテム課金という課金方式変更で運営会社の売上高の推移がどう変化するか?ということを示したのが上の図です。一昨年から去年にかけて無料化に踏み切る企業が続出した為、業績の下方修正が相次ぎました。その後、無料化に踏み切ったゲームの多くが目論見通り顧客のつなぎとめに成功し、アイテム課金による売上高もどうやら上がり始めていることが確認されたので今はこれらの運営会社の株価は出直りつつあります。また、最近は似たようなゲームが次々に濫造されており、ヒットする見込みの薄いタイトルも数多くあるのですが、それらの多くは最初からいきなり無料化され、アイテム課金に依存するケースも見受けられます。この一方で昔ながらの有料方式にこだわる運営会社もあります。例えばザナイン(ティッカー:NCTY)はその例です。ザナインは次々に話題のゲームの中国における運営権を高額の契約金を払って獲得し、それらを矢継ぎ早にリリースしてゆくことで売上のモメンタムを維持する戦略をとっています。 このように現在の中国のオンライン・ゲーム業界は最善の課金方式は何か?という命題に関して意見の一致をみておらず、試行錯誤が続いています。このようなビジネス・モデルの模索はオンライン・ゲームに限らず新しいビジネスの黎明期にしばしば起こることです。オンライン・ゲーム業界全体で見るとゲーム人口やトータルでの売上高の成長のペースに大きな鈍化は見られていません。従って、課金方式を巡る混乱はオンライン・ゲームそのものが曲がり角に来ているという風に受け止められるべきではないと思います。主要銘柄の近況ネットイーズ(NTES)は『ファンタジー・ウエストワード・ジャーニー』と『ウエストワード・ジャーニー・オンライン2』という中国で第1位と第3位のオンライン・ゲームを持っています。『ファンタジー、、、』の方は1月に拡張パックが発表されピーク・ユーザー数134万人と記録を塗り替えました。また『ウエストワード、、、』はゲーム内でのプロモーションを実施中であり、ユーザーをつなぎとめるのに効果を上げています。これらの主力タイトルは比較的古くなりつつあり、それがこのような延命策を打ち出す背景にあるわけですが、これまでのところ予想以上に延命策は上手くいっていると言えるでしょう。新しいタイトルとしては『天上碑2』のオープンβテストが3月1日から始まっています。同社はこれまでゲームの自社開発を中心にしてきました。そのため同社のオンライン・ゲームは開発費が低くオンライン・ゲームのグロスマージンは90.3%と極めて高いです。しかし今後のタイトルのパイプラインは同社の現在の売上規模から考えると極めて貧弱です。 シャンダ(SNDA)は一足先に主力タイトルが凋落の憂き目に遭い、ユーザーの離反を食い止めるため無料化への移行を積極的に進めました。これが上手くゆき現在同社のユーザー数は順調に伸びています。同社は一昨年に業績が良かったときにシナ(SINA)の株式を大量取得したり、『EZコンソル』と名付けられたエンターテイメント・ハードウエアのビジネスに進出したりといろいろ多角経営に手を出し、これらがことごとく不首尾に終わりました。現在シャンダはシナの株式の大部分を処分し、『EZ』事業も大幅に縮小しました。シナの株式の売却により手にしたキャッシュで自社株の買戻しを行なっています。このように同社はより本業にフォーカスした経営になっておりこれは投資家に歓迎されています。ネットイーズ同様、シャンダの新作のパイプラインも貧弱です。 ザナイン(NCTY)は課金開始2周年を迎えた『ワールド・オブ・ウォークラフト』一本に収益の大半を依存する体質です。『ワールド、、、』は去年の秋に若干モメンタムの衰えが見られこれが投資家の不安を招きました。しかし、拡張パック、『バーニング・クルセード』がリリースされ、これが当初の予想を上回る成功を収めたため『ワールド、、、』の寿命がこれで伸びたと考える投資家が増えています。同社は『ワールド、、、』で成功した大作主義路線を今後も踏襲すべく、前評判の高いタイトルの運営権をどんどん取得しています。パイプラインとしては: 『ギルド・ウォーズ』現在βテスト中 正式サービス開始は6月 『SUN』現在クローズドβテスト中 正式サービス開始は6月 『ヘルゲート・ロンドン』第4四半期にクローズドβテスト開始 『ハックスレー』2008年以降 『ラグナロク・オンライン2』時期未定 『エミル・クロニクル』時期未定 などとなっています。勿論、これらのタイトルが全て成功を収めることは期待薄です。このうち1つか2つが『ワールド、、、』のようなヒットにつながれば同社としては十分でしょう。 株価評価さて、オンライン・ゲーム株の株価評価ですが、去年までは各社の主力タイトルの凋落とそれに伴う課金方式の変更など業界全体を巡る不透明要素が多かったです。このためオンライン・ゲームのセクターの株価収益率も米国のゲームの株と比べると約半分程度の評価に甘んじています。成長性の面で中国の企業のほうが著しく劣っているということはありませんのでこの評価の格差は新しい課金方式に投資家が馴れてくれば自然に縮まってくると考えられます。
2007年03月12日

今日のまとめ 1.中国のオンライン・ゲーム市場は高度に発達している 2.オンライン・ゲームは中国の実情に適合した商品である 3.市場規模は7.5億ドルで年率30%成長している 4.ハリウッド映画のように当たり外れが大きい 5.開発業者と運営会社に2分できる 6.自社開発かライセンス導入かでマージンに差が出る中国は世界で最もオンライン・ゲームのユーザー数が多い市場です。ユーザー数は2300万人とも言われており、これは世界の他の国々のオンライン・ゲームのユーザーを全部足した合計より多いです。このように中国でオンライン・ゲームが発展した理由は幾つか指摘できます。先ず海賊版(パイラシー)の問題が挙げられます。中国では映画のDVDや音楽のCDが違法にコピーされて出回る事例は皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、これはゲームも同様です。このためコンパクト・ディスクを介在せずサーバーによりゲームをホストするという方法が考え出されました。また中国の場合、個人のパソコン普及はまだまだ端緒についたばかりで、多くのユーザーはネット・カフェを利用しています。これだとパソコンやブロードバンドのサービスを購入するお金が無くてもネット・カフェを訪れれば気軽にオンライン・ゲームが楽しめるわけです。これが中国独特の市場を形成する原因となりました。MMORPG(多人数オンライン・ロール・プレイング・ゲーム)と呼ばれるオンライン・ゲームでは同時に何万人ものユーザーが好きな時間に好きな場所からゲームにアクセスし他のプレーヤーとゲームを楽しむことが出来ます。ユーザー同士がゲーム上で協同するなど、型にはまったパッケージ・ソフトでは味わえないオンラインならではの魅力もあります。ゲームを提供する会社の側からするとコンパクト・ディスクを製造、販売する手間が省けるし在庫の問題もありません。ゲームを連続的にアップグレードしたりリリースしたり出来ます。さらにゲームを通じてユーザーと長期的な関係を作ることも可能です。オンライン・ゲームの市場規模は2006年の時点で約7.5億ドル程度です。市場のパイは年率約30%で成長しています。オンライン・ゲームを提供している企業には: ネットイーズ(NTES) シャンダ(SNDA) ザナイン(NCTY) テンセント ソーフー(SOHU) CDC(CHINA) などがありますが、実質的にはネットイーズ、シャンダ、ザナインの上位3社の間での争いとなっています。オンライン・ゲームの業者は開発(デベロッパー)と運営(パブリッシャー)に大別できると思います。これまでのところ有名なオンライン・ゲームは韓国など中国から見た外国で開発されたものが多かったです。運営業者はそれらのゲームの運営権を獲得し、中国での運営に際しローカライゼーションと言って言語を翻訳したり現地の好みに合わせてゲームを調整したりします。運営業者としてオンライン・ゲームの業界に参入することは過去においては比較的容易でした。しかしオンライン・ゲームは大ヒットしたタイトルにユーザーが集中するためそれらのヒットを抱えている業者はどんどん太るけれどヒットが出ないと事業継続がむずかしくなるという二極分化が見られます。大きい業者は高い契約料を支払って海外の前評判の高い新しいゲームを次々に囲い込むことができるし、或いは社内に大きな自社開発部隊を持ち、ゲームの自社開発を目指すことができます。或る意味で大作主義のハリウッド映画業界のメンタリティーと同じような傾向が現れつつあるという風に言ってもあながち的外れでは無いでしょう。 開発業者には例えば韓国のウエブゼン(WZEN)のように上場された企業もあります。そこで開発業者の株を買った方が良いか、或いは運営業者の株を買ったほうが良いか?という議論が何年か前にありました。現在の時点では軍配は運営業者のほうに上がっています。その理由として運営業者はひとつのタイトルを軌道に乗せると2年から3年近くもそのタイトルから継続的な売上高を毎月上げることができるのに対し、開発業者は開発したゲームの版権を売った対価のかなりの部分が前払いの支払いであり、継続的ロイヤリティーの収入は比較的少ないからです。するとどうしても業績が新製品の開発サイクルに連動して激しくブレやすくなり、投資家は一般にそういう収益形態を敬遠する傾向にあります。 最近の傾向としてザナインのようなヒット作を抱えている業者がその潤沢な手許資金をもとにどんどん前評判の高い新作タイトルを青田買いするという現象が見られます。この結果、有望なタイトルの契約料はぐんぐんインフレを起しています。運営業者の立場から見れば高い契約料を支払っても大ヒットしたタイトルから得られるキャッシュ・フローは魅力です。なぜならオンライン・ゲームは契約料を除けば製造原価(COGS)は無いに等しいし、売り上げ増に伴うコストの増加、具体的にはサーバーの追加の必要やゲーム・マスターと呼ばれる監視員の増員などは比較的負担にならないからです。従って経営者の考え方として「兎に角、大枚をはたいてでもヒットする可能性のある新タイトルをどんどん買占め、将来の売上高を維持することに全力を挙げる。そのためにはマージンを犠牲にしても構わない。」という売上成長重視の会社と「高い契約料を払って導入したタイトルが必ずしも成功するとは限らない。だから自社でゲームを開発し、コストを抑え、ロイヤリティーの支払いを回避することで高収益を目指す。」という利益重視の会社に2分されてきている観があります。前者の代表はザナイン(NCTY)であり、後者の代表はネットイーズ(NTES)です。 さて、実際のゲームの運営に際しては主にネット・カフェにおいてユーザーがプリペイド・カードを購入し、実際にゲームをプレイした時間に応じてカードに残った残金が減ってゆくという方式がとられます。この場合、運営会社の手許にはカードを販売した時点で入金があるのですが、会計上、売上高を計上できるのは実際にユーザーがゲームを楽しんだ使用時間に応じてレヴェニュー・レコグニッションがなされます。この仕組みは運営会社にとって売掛金が無いので有利です。 成功する業者とそうでない業者が出てくる分かれ目というのは勿論、ヒット作に恵まれるということが一番重要になってきますが、それに加えてゲームをサポートする体制をきっちり作るということが重要です。サーバーのトラブルなどがあると売上高に響くのみならずユーザーの離反を招きます。さらにゲームのプレーヤーの中に違反行為をするユーザーが多いとまじめなユーザーがしらけてしまい、ゲームに嫌気がさしたりするわけです。従ってまじめなユーザーが安定的な接続環境で気持ちよくゲームを続けられるような保全体制を構築しないといけません。このようなゲームの真正性を英語ではインテグリティーと呼びます。大ヒットしたタイトルは運営会社にとって財産であるわけですからインテグリティーを保つことは自分の経営資産を守ることを意味するのです。
2007年03月07日
全4件 (4件中 1-4件目)
1