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どれぐらい寝ていたのだろう? 窓の外が夕焼け色に染まる頃、克哉はドアを叩く音で目が覚めた。「克哉、起きてる? 佐藤君が来てくれたわよ」 部屋の外から声がする。弓子の声だ。「あ、雄高が来てくれたの? 入ってもらって。もう大丈夫だから」 そうは言うものの、まだ全身に軽いだるさを感じている。しかし克哉はベットから上半身を起こして雄高を迎えるのだった。(おお、恋人が心配してやってきてくれたのね) 克哉と同時に目が覚めた奈里佳が、すかさず茶々を入れる。まったくもって素早い。(恋人なんかじゃないってば。もう、奈里佳はうるさいなあ) 当然のごとく怒る克哉であったが、なぜに照れたような雰囲気を漂わせるのか?(ふふ、そうね。確かに今の状態なら恋人というより親友かな。まあ、こういった恋人関係も成り立たなくはないけどね) 奈里佳が何を言いたいのかわけが分からなかったので、とりあえず克哉は無視をすることにした。その一瞬のやり取りが終わったとき、ちょうど部屋のドアが開き、弓子と雄高が入ってきた。「具合はどう? まだちょっと顔が赤いけど、さっきよりは調子は良さそうね」 そのままベットの横まで来ると、弓子は克哉のおでこに右手を当てて熱を測る。安心したような顔をしたところをみると、どうやら熱は下がったようだ。「もう大丈夫だってば」 雄高が見ている前だからだろうか、母親に熱を測られているという今のシチュエーションが妙に恥ずかしい。「じゃあ、佐藤君。ゆっくりしていってね。今、何か飲み物を持ってくるから」 弓子はそう言い残すと、何がおかしいのか軽く笑いながら、さっさと部屋から出ていった。「来てくれたんだ。ありがとう。雄高」 恥ずかしいような嬉しいような、自分でもよく分からない感情をもてあましつつ、克哉は雄高に椅子に座るように身振りで示した。「ん、まあ、心配だったからな。はい、克哉が早退してからの授業で出たプリント。来週までの宿題だってさ」 1枚しかないプリントを克哉に手渡す雄高。(おおッ! たったこれだけの為にお見舞いに来てくれるとはッ! 喜びなさい、克哉ちゃん。どうやら相思相愛みたいよ♪) 本気か冗談か判断がつかないが、奈里佳は大はしゃぎではやしたてる。奈里佳の頭の中では、克哉と雄高はすっかり恋人になっているようだ。
Feb 28, 2005
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「ぬいぐるみのふりも疲れますね。やっぱり動けないのはつらいですよ」 弓子が完全に部屋の外に出ていったのを確認したクルルは、大きくのびをしながら克哉に話しかけてきた。まるで猫のぬいぐるみそのものといった姿だが、2本足でベットの上を歩いてくるのを見ると何だか妙なものを見ている気持ちになってくる。(クルルちゃんの場合は、まだ良いわよ。誰も見ていない時はちゃんと自分の身体で動けるんだもの。私なんか、克哉ちゃんの身体を借りないといけないのよ) 愚痴をこぼす奈里佳だったが、口調そのものはその状況を楽しんでいるかのように聞こえる。まあ、本当に楽しんでいるんだろうけど。「言っときますけど、身体を貸すつもりは無いからね」 クギを刺す克哉。口調は厳しいが、おびえたような雰囲気が伝わってくる。可愛いかもしれない。(まあ、そんな小さなことはおいといて、せっかく買ってきてもらったんだから早く着替えたら? お母さんも後で見に来るって言ってたし、それまでに着替えたほうが良いんじゃない?) 克哉のことを心配してそう言っているわけではないことは、奈里佳の楽しげな雰囲気から明らかである。間違いなく、女物のパジャマを着た克哉の姿を早く見たいということなのだろう。(奈里佳に言われなくても着替えるよ。これしかないんだし) 弓子に対する愚痴をぶつぶつと言いながら、克哉は詰めえりもりりしい黒の学生服を脱いでハンガーに掛ける。次はズボンのベルトを外すとそれを脱いで、下着の上にワイシャツを1枚着ただけの姿になった。……ちょっと萌える?「はあぁ~、今、この部屋にある男物の服はもしかするとこの学生服とワイシャツだけか。でもお母さん、スカートなんか買ってきて僕にどうしろと言うんだろ?」 クローゼットの扉を開き、中を確認しながらため息をつく克哉。見ると中に入っているのは4分6分でスカートよりもパンツの方が多いのだが、それが弓子なりの配慮というか妥協点ということなのだろう。逆の見方をすれば、いずれはスカートをはかなければ、『お母さん許しませんよ』ということかもしれない。いや、『お母さん泣いちゃうから』だろうか?(もちろん、『スカートをはいてね♪ by母より』ってことなんじゃないの?) 既に克哉としても十分に理解している事実を、改めて突きつける奈里佳。「そんなことは分かってるけどさあ、アソコは確かに女の子になってるけど、体型そのものは男なわけだし、女物の服なんか似合うわけないじゃないか。まったくお母さんは何を考えてるんだろうって言いたかったんだよ」 奈里佳に返事をしながらクローゼットの開き扉を閉め、今度は引き出しを開けてみる。(似合えば着るってことなのね。じゃあ、さっそくアソコ以外の部分も完全な女の子の体型に変身させてあげようか? ていうかサービスでやってあげるわ♪) 物騒なことを言い出す奈里佳。というか本当なのか? 似合えば女物の服を着るっていうのは?「ストップ! 明日は中津木総合病院で再検査をしなければならないんだから、面倒になるようなことはしないでよ。お願いだから」 慌てる克哉。そうなのだ。あれから克哉が残存魔力を吸収した為に部分変身が元に戻った生徒もいれば、克哉が吸収した魔力を利用して奈里佳に部分変身魔法をかけられて、新たに一部だけ女の子になった生徒もいる。しかし克哉のように具合が悪くなった生徒はいないということで、克哉だけが中津木総合病院で再検査を受けることになっているのだ。「そうですね。せっかく明日にでも奈里佳ちゃんに変身出来るだけの魔力がたまったのに今ここで克哉君の身体全体を中途半端に女の子の体型に変身させたら、奈里佳ちゃんに変身出来るのが先になっちゃいますしね」 のんびりした口調でやんわりと奈里佳に反対するクルル。(まあ、それもそうね。どうせ急がなくても結果的にはいずれそうなるんだから) なにやら思わせぶりはことを言う奈里佳。それに対して思いっきり不安な気持ちがむくむくと沸いて出て来る克哉。しかし魔力を限界まで吸収したことにより微熱とだるさが出ている克哉は、どうせはぐらかされるだけだろうと思ったこともあるが、奈里佳の言葉を深く追求するのをやめた。「……とにかく、もう着替えて寝るよ」 ワイシャツを脱いで下着姿になった克哉は、その他の選択枝が無いこともあり、弓子から手渡されたシャツとショーツを手に取った。「女の子のシャツって、ホントに花柄とかついてるんだね」 もちろん大きくて目立つような花柄ではないが、薄く小さく、しかし全面に花柄の模様がついている。今更どうこう言ってもしょうがないと覚悟している克哉は、短くそうコメントするとそのまま下着を取り替えると、更にパジャマを着てベットの中に潜り込んだのだった。(もう少し恥ずかしがってくれるとかしないと、おもしろくないじゃない。克哉ちゃんってばサービス精神が無いわね) あまりにもあっさりと女物のパジャマに着替えた克哉に対して、どう答えれば良いのか分からない文句を言う奈里佳。「誰にサービスするって? 訳分かんないことを言わないでよね。じゃあ、本当に寝るから。おやすみなさい」 よほどだるかったのか、そのまま寝息を立てる克哉。素早すぎるかも。「おやすみなさい。克哉君。明日には魔法少女♪奈里佳ちゃんに変身出来ると思いますよ。でも奈里佳ちゃんに変身するということは、またフューチャー美夏と戦うことになると気がついていますか?」 猫のぬいぐるみには決して出来ない真剣な顔をして、ベットの中の克哉を見つめるクルル。「本来なら克哉君には穏やか青春があったはずなのに……。すいません。そして、よろしくお願いします」 深々とおじぎをするクルル。その独り言には世界を救うという失敗が許されない戦いに克哉を巻き込んでしまったという自責の念と、世界の未来を託す希望がないまぜになった複雑なものだった。
Feb 27, 2005
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「もぉ~っ、しょうがないなあッ! じゃあ、着替えるからお母さんは出ていってよ」 言いたいことは山ほどあったが、早めに横になって休みたい気持ちのほうが強かったので、克哉はその女物のパジャマを受け取ることにした。「いいじゃないの。今は女同士なんだから。あ、そうそう! お母さん、下着も買ってきたのよ。ほら、可愛いでしょ? やっぱり熱があるときはこまめに下着も取り替えないとね♪」 いそいそと紙袋から取り出したのは、数々のショーツ達であった。「女同士かもしれないけど、お母さんに着替えを見られるのは僕が嫌なの」 やはりいつになく強気の克哉であった。変身も、そして変心も近いのかもしれないが、色々な人達から魔力を吸収した副作用かもしれないという可能性もある。「お母さん、さびしい……。せっかく克哉のことを思って買ってきたのに」 ショーツをハンカチのように握りしめ、軽く口にくわえる弓子。年齢を考えたら異常なまでに可愛らしい態度かもしれない。「ちゃんと着替えるから出てってよ」 いくら可愛らしくても、しょせんは母親である。弓子のうるうる攻撃は、克哉に対しては何も効果が無かった。少なくとも克哉にはマザコンの気は無いらしい。「じゃあ、このショーツもはいてくれる? はいてくれるって約束してくれたら、お母さん出てくから」 条件闘争に入る弓子。「まあ、それならいいよ」 克哉はあっさりと弓子の要求を飲んだが、これにはわけがある。克哉は既に、トランクスを奈里佳の魔法によりショーツに変化させられたものを着用している。トランクスをはいてもすぐにまた魔法によりショーツに変化させられてしまうので、女物の下着を身につけることは仕方が無いこととあきらめている。問題は着替えを見られると、その事実を知られてしまうということなのだ。「じゃあ、お母さんはまた後で様子を見にくるから、ちゃんと寝てるのよ」 一気に押してもダメだと悟った弓子は、ここはいったん退いたほうが良いと判断したようだ。買ってきた女物の服の数々を手早くクローゼットの中にしまうと、克哉の部屋を出ていこうとしたが、ふと思いついたように後ろを振り返る。そしてベットの上に置かれたものに目をとめた。「ぬいぐるみ……。克哉が買ったの?」 ベットの上で微動だにせずにいるクルルを見つけて、ちょっと不思議そうにする弓子。「え、あ、ああ。あれね、あのぬいぐるみは、買ったというか、拾ったというか……」 とたんにしどろもどろする克哉。とっさに言い訳が出てこない。「拾ったの? 珍しいわね。克哉ってそういうの好きだったかしら? まあいいけどね。ぬいぐるみが好きだなんて女の子らしいし。あ、そうだ。今度もっと可愛いぬいぐるみを買ってきてあげようかしら。ねえ、どんなぬいぐるみがいい?」 また嬉しそうにはしゃぎかける弓子。「このぬいぐるみはちょっとわけありなの。他のぬいぐるみは別に欲しくないから。じゃあそういうことで」 らちがあかないと、克哉はまだ名残惜しそうにしている母親の背中を押して部屋の外に押し出すとドアを閉め、更に念の為に鍵をかけた。「はあぁ~、疲れる。お母さんもどうしてこうなのかなあ」 アソコが女の子になってしまっても、それが原因で不審に思われたりしない今の状況はそれなりにありがたくはあったが、どうにもため息をつくしかない克哉であった。
Feb 24, 2005
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第12章 家族な人々「晩ご飯の時間まで、寝てなくちゃダメよ。微熱があるんだから。それにほら、新しいパジャマも買ってきたからこれに着替えたらいいわ」 克哉から受け取った電子体温計の数字を確かめると、弓子は心配そうな、それでいてどこか嬉しそうな顔を克哉に向けた。ちなみに微熱があるのは、ついさっきまで学校内はおろか街中の人からランダムに魔力を吸収したせいである。それこそめいっぱいに。「うん、そのパジャマに着替えるかどうかは置いといて、ちょっとぼうっとしてるから、僕も晩ご飯までは寝ているつもりだったから……。でもお母さんこそ仕事のほうは良かったの?」 本来であればまだ弓子は働いていて家にはいないはずの時間である。克哉が疑問に思うのも無理はない。前にも具合が悪くなって早退してきたことがあるが、その時の弓子はいつもどおりに仕事をを済ませて帰ってきたことがあるからなおさらだ。「いいのよ。可愛い息子、いえ、娘の為だもの」 その言葉を聞いて、克哉は顔をしかめる。母親が暴走しかけていることが分かってしまったからだ。だとすれば目の前に広がる光景も理解できる。「お母さん、確かに今の僕のアソコは女の子になっているけど、これは一時的なことでしばらくしたら元に戻るんだよ。だからちょっとこの女物のパジャマは遠慮したいなあ。それに服も」 克哉の具合が悪くなったから早退するという連絡を学校から受けた弓子は、早めに仕事を切り上げると、数々の女物の服やパジャマを買い込んで帰ってきたのだ。もちろんその女物の服は自分のものではないのは言うまでもない。「元に戻るかもしれないけど、そうでないかもしれないじゃない。だったら女の子になっている間だけでもこの服を着て欲しいの。ね、いいでしょ?」 目をうるうるとさせながら部屋中に広げた女物の服をバックに、ピンク色をしたパジャマを手に取り克哉に差し出す弓子。そのパジャマにはややおとなしめながらも随所にフリルが装飾として縫いつけられており、とっても女の子女の子した感じである。「いらないよ。今までのパジャマを着るから」 つきあってられませんと、部屋のすみに置かれたクローゼットの引き出しを開ける克哉。「あれ? 中身がない……」 何が起こっているのか理解ができず、克哉の目が点になる。「ああ、今まで着ていた服や下着は全部洗濯してるから♪ とりあえず今日のところは女物の服しかないの。がまんしてね」 してやったりという感じの弓子。満面の笑みとはこういう表情を指すのだろう。(克哉ちゃん、あきらめて着てあげたら? 実際、今の克哉ちゃんは胸も膨らんでないしお尻も丸くないけど、まあ女の子であることには間違いないんだし。それにきっと似合うわよ) まだ放心気味の克哉に対して、奈里佳が話しかける。イメージとしては克哉の背中を軽く叩きながらという感じであろうか。(かってなこと言わないでよ。いくら今の僕のアソコが女の子になっていても、僕は男であることに間違いはないんだからね) まずは奈里佳に文句を言う克哉だったが、現実問題として男物のパジャマや服が無いのはいかんともしがたい。「お母さん、洗濯してるって言っても、全部を一度に洗濯するのは無理だと思うんだけど……。で、どこに隠しているの?」 魔力を吸収しきっているからだろうか? ちょっとだけいつもよりも強気かもしれない。「クリーニング屋さんに出しちゃった。だって、しょうがないじゃない。うちの洗濯機じゃ一度に洗えないんだもの」 納得出来るような、納得出来ないような、妙な理屈を持ち出す母、弓子であった。やはり奈里佳でもある克哉の親ということなのだろう。
Feb 23, 2005
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(それしか……、方法はないんだよね) 結局のところ、クラスメート達の中に残存する魔力を吸収する為には、イメージ上とはいえ相手の唇にキスをするしかない。その言葉を聞いて克哉は一瞬だが躊躇(ちゅうちょ)した。しかしいまだ奈里佳が遠隔視能力で克哉に見せている保健室内部の映像に看護婦の美根子が映ったとき、克哉は迷いを振り払ったのだった。(そうね、普通にしていても魔力はたまっていくけど、あの看護婦さんが結晶化しかけている以上、完全に結晶化する前に何とかしてあげなくちゃね。クルルちゃんもそう思うわよね?) さすがに克哉と同一人物であるだけあって、奈里佳は克哉の気持ちを100%理解している。ふざけたり遊んだりしていなければ、ホントに息の良いコンビなのである。まあ、めったにそういう状況にはお目にかかれないのであるが。(結晶化は最初は徐々に進みますが、最後は爆発的な勢いで一気に進みますからね。それを考えたら、他人の魔力を吸収して魔法のコントロールが多少不安定になるかもしれないというリスクを抱えるのは、十分に許容範囲内です。克哉君ッ! そして奈里佳ちゃんッ! できる限りがんばりましょうッ!!) クルルも含めて、既に止める者はいない状況である。外から克哉を見たら単に保健室のベットに寝ているだけなのであるが、その頭の中では大いに盛り上がりをみせていたのだった。(よし、僕、がんばるからッ!) 数日前までの克哉だったら、魔力を吸収して1日でも早く奈里佳に変身できるようにしようとは考えもしなかったに違いない。しかし今の克哉は、結晶化とそれがもたらす世界崩壊のビジョンを見てしまったこともあり、『それに比べたら男とキスをするぐらいなんだッ!』と、思っているのかもしれない。すくなくとも傍目(はため)にはそう見える。(じゃ、いきましょうか。でも、みんなから魔力を吸いとって部分変身状態を元に戻しちゃったら、克哉ちゃんだけが目立っちゃうわね……。どうしようかしら?) ふと、奈里佳が思ったことを口にする。(そうですねえ。どこで例のフューチャー美夏が監視をしているかもしれませんからね。用心の為に克哉君のアソコを元に戻してあげたらどうです? 奈里佳ちゃんも元々は克哉君のアソコが女の子になっていることは、誰にもばれない予定だったんですよね) 克哉の変身が近づいてきたとなれば、またしても前回と同じくフューチャー美香を名乗るディルムンのタイムパトロール(?)と戦わなくてはならない。とすればなるべく正体を隠しておいたほうが有利に戦えるということがいえるのだ。(そうだよ奈里佳。ついでに僕のアソコも元に戻してよ。そうしようよ。ね♪) 結晶化と世界の崩壊の話は脇に置いて、克哉は期待に胸をふくらませて奈里佳にお願いする。(だ~めぴょん♪ 克哉ちゃんのアソコを元に戻さなくても、結果的に目立たなくすれば良いんでしょ? だったら全員から魔力を吸収するんじゃなくて、適当に選んで魔力を吸収するとか……、そうねえ。もう変身が完全に解けて元にもどった人を今から部分的に女の子にしちゃうという手もあるわね。克哉ちゃんが魔力を吸収して、その魔力の一部を使って私が部分変身魔法を使ってそれなりの数の生徒の身体の一部を女の子に変えちゃうの。どう? これなら克哉ちゃんが目立つこともないし、第一おもしろそうでしょ?) 世界を崩壊の危機から救うという使命を忘れて、楽しみだした奈里佳。そんなに長いつきあいではないが、こうなった奈里佳に何を言っても無駄だということを、既に克哉は理解していた。(もう、分かったよ。じゃあ、さっさといくよ。まずは誰からにする?) こうして保健室のベットに寝たままであるにも関わらず、奈里佳の遠隔視能力の力を借りた克哉は、保健室にいる生徒達は言うに及ばず、城南中学校のみならず周辺地域のまだ変身状態を部分的に維持している人たちから魔力を吸収しまくったのだった。あいての唇にキスをするイメージをすることによって……。(クルル~、奈里佳~、唇の感触が気持ち悪いよぉ~ッ! ああ、この人、舌を入れてきた~ッ!!) 1時間後、克哉の心の叫びがこだました。ちなみに男性からだけではなく、女性からも残存魔力を吸収出来ることに3人が気がついたのは、もう十分過ぎるほどの魔力を吸収し終わった後だった。けっこう3人ともおまぬけさんである。
Feb 21, 2005
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(文句を言わないッ! あの看護婦さんを結晶化から助けたいんでしょ? だったらつべこべ言わずにさっさとやるッ!) 奈里佳としても、美根子が結晶化しかけている状態を放置しておいて良いとは思っていない。克哉にキツイ言い方をしてはいるが、そういう言い方をして克哉の尻を叩くことが、むしろ克哉の希望に沿うことだと理解しているのだろう。というわけで、克哉を叱ることを楽しんでいるように思えるのはきっと気のせいだということにしておこう。(そうだね、あの看護婦さんを結晶化から助けて世界を崩壊の危機から救う為には、ガブッと噛んで血を吸わないといけないんだよね。魔力を集めて早く奈里佳に変身しないと、看護婦さんの結晶化がいつ始まっちゃうか分かんないものね) 自分に言い聞かせるようにして、決意を固める克哉。『正義の為なら吸血行為だって許されちゃうのだッ! どうせイメージ上のことだしね』と、まるで夏美が言いそうなことを思っていたりする克哉だった。もちろん奈里佳もだ。しかしクルルの意見はちょっと違っていた。 (ちょっと待ってください。血を吸うイメージを使って魔力を吸収するのはやめたほうが良いんじゃないですか?) 誤解しようがない表現で克哉の行動を制止するクルル。こころなしか慌てているようにも見える。(クルルちゃん。それってどういう事なの? 納得いく説明をして欲しいんだけど?) 奈里佳は、『せっかく克哉ちゃんがその気になったのに水を差さないでよ』という文句を忍ばせつつクルルに質問をする。ちょっと言葉のはしばしに棘が見え隠れするのは気のせいではない。(ちゃんと説明しますから、とにかく待っててください。いいですね、克哉君?」 クルルは更に念を押す。克哉がクラスメート達から血を吸うイメージを使って魔力を吸収することが、そんなにもまずいことなのだろうか?(うん、分かった。でもどうしてなの?) 克哉としてもクルルの意図が分からない。そもそもクルルは、『なるべくリアルにイメージするのがコツです』などと言って積極的に血を吸うイメージを克哉にさせようとしていたのだ。それなのに今はそれを止めようとしているのだから、克哉が疑問に思うのは当然である。(あの男子生徒の首筋に克哉君のキスマークがついちゃったことを見て気がつきませんか?) 克哉の質問に対して質問で答えるクルル。(それがどうしたってのよって……。あッ! もしかして!?) 声をあげたのは奈里佳である。どうやらクルルが何を言いたいのか分かったらしい。(やれやれ、奈里佳ちゃんともあろうものがもしかして今まで分かってなかったんですか?) あきれるクルル。その口調は嫌みと紙一重である。(気がつかなかったんだからしょうがないでしょッ! 誰にだってそういうことはあるってことよ。よく言うでしょ? 『弘法も筆の誤り』って) 自己正当化をはかる奈里佳。(いや、それを言うならむしろ『河童の川流れ』とか『猿も木から落ちる』とかのほうが……) 何故に挑発するようなことを言うのか? クルル、勇気がある奴……。無言で歯がみする奈里佳の気配が怖いかも。(ねえ、どういうこと? 全然分からないんだけど) またしても話からおいてきぼりになりかけている克哉が2人に事情説明を求める。(キスマークがつくということは、克哉君の魔法力が相手に対して物理的な作用を及ぼしているということですよね。ということはつまり牙を立てて首筋から血を吸うイメージを使って魔力を吸収しようとすれば……、分かるでしょ?) 結論まで説明したわけではないが、そこまで説明されて克哉にもクルルが何を言いたいのかが理解出来た。(つまり、僕が血を吸うイメージをして魔力を吸収しようとすれば、首筋に牙の跡がついちゃうと……) 理解した克哉の顔から血の気が退いてしまう。意外と男の子の精神は、流血沙汰になるような状況には弱いのだ。(ま、跡がついちゃうだけならまだしも、ヘタすると頸動脈を傷つけて出血多量で死んじゃうかもね。まあ、ここは保健室で真美先生がいるし、ついでに看護婦さんも2名いるから手当のほうも期待できるってことで、よっぽどじゃないと死なないでしょうけどね) さも、自分は最初から分かっていたという態度を取る奈里佳。図々しいというか立派というか。(そんなッ! 血を吸うイメージをしただけで、相手を殺しちゃ洒落にならないよッ!!) 驚く克哉。まあ、驚かないほうがどうかしているのだが。(克哉君の魔法力が強すぎるせいですね。本来、こうしたイメージをしただけではキスマークがついたりなんかしないんですけど、さすが克哉君♪ 僕が見込んだだけのことはことはありますね)(そうねえ、克哉ちゃんの魔法力はものすごく強いのは間違いないわ。さすが私と同一人物でもあるだけのことはあるわね) 自画自賛するクルルと奈里佳。なんだかもう勝手にしてと言いたくなる克哉であった。(じゃあ、結局みんなから魔力を吸収するためにはどうしたらいいの?) 話を元に戻そうと、克哉は具体的な質問をした。(やっぱり、キスして魔力を吸い取るしかないんじゃない? それならキスマークがつくことも、牙の跡をつけちゃうこともないんじゃないかしら?) 軽い調子で結論を口にする奈里佳だった。(そうですね。僕もそれがいいと思いますよ) クルルも奈里佳に同意見のようだ。というか、正確にはクルルの意見に奈里佳も同意したというのが正しいのだが、まあそんなことはどうでもよい。特に克哉にとってはそうだった。
Feb 20, 2005
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「え~ッ! お前、彼女がいたんだッ!! いったい誰にキスマークをつけられたんだよ」「いやいや、ちょっと待て。今のこいつの胸は女の子のように膨らんで立派なおっぱいができているんだぞ。もしかしたらキスマークをつけたのは男かもしれんッ!」「はッ! そういえばそうかッ!? 気持ち悪いやつ」「しかし、まあ、おっぱいだけ見たり触ったりするのなら、それはそれで楽しそうじゃないか?」 キスマークと聞いて勝手なことを口々に言いだす外野達。女の子だけじゃなく、男の子だってこういう話になると盛り上がっちゃうものなのだ。「違うッ! さっきまでこんなキスマークなんかついて無かったんだッ! 先生も見てましたよね?」 キスマークを首筋につけた男子生徒は、真美先生に自分の無実(?)を主張する。「確かにさっき胸囲を測った時には、こんなキスマークなんか無かったわ」 男子生徒の首筋を確認する真美先生。疑問のみが浮かんでくる。「ええ、私もそう思います。確かにこんな目立つような所にキスマークがあれば、もっと早くに気がつくはずです」 真美先生の意見に同意する遠子。その横では一番最初にキスマークを見つけた美根子が無言のままうなずいている。「先生、もしかするとこれも変身現象の後遺症じゃないんですか?」 ふと思いついた雄高が、彼にしてはまじめな顔で意見を述べた。「なるほど。ま、そんなところでしょうね」 ため息をつく真美先生。「やっぱり他の生徒達にもキスマークがついているのかどうかもう一度確認しなくちゃいけないのかしら?」 少々疲れた気持ちで真美先生に確認する美根子。しかし既に答えは聞かなくても理解しているようだ。「この健康診断は、集団変身現象の後遺症について調べるのが本来の目的ですからね。やっぱりもう一度調べてみないといけないんじゃないでしょうか?」 美根子に対して自分の意見を述べる遠子。「ま、議論の余地なしってところかしらね。ハイッ! じゃあみんなッ! 検査が終わって服を着た人も、もう一度服を脱いでちょうだい。知らないうちにキスマークがついていたりしてないか検査するわよ」 真美先生はてきぱきと指示を出していった。その指示にあわせて美根子と遠子が動き、生徒達も服を脱いでいった。 それにしても本質的にはどちらも同じ男子生徒とはいえ、部分的に変身したままで女の子な胸をしている生徒と、どこも変身していない生徒が同じ場所で服を脱ぎ、肌をあらわにしているというのは妙に不思議な光景である。中には下半身にテントを張っている生徒もいたりするのだが、これでいいのだろうか?(まったく克哉ちゃんってば何やってるのよ。キスマークをつけてどうするのよ。血よ、血を吸わなくちゃいけないのに、唇だけをつけてちゅーちゅーやっててもダメでしょ。牙を立ててガブッといかなくちゃ血は出てこないのよ) 保健室の様子をうかがっていた奈里佳は状況を把握すると克哉に文句を言い始めた。(そんなこと言ったって、牙なんか無いんだもん。分かんないよ) ちょっとすねてみせる克哉。まあ、その通りではある。
Feb 18, 2005
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(ハイハイ、分かったわよ。クルルちゃんってば冗談も通じないんだから。そんなんじゃ恋人もできないわよ。で、克哉ちゃん。話を戻すけど、男のおっぱいなんか吸いたくないから、首筋から血をすうイメージをとってみたいと、つまりはそういうわけね?) もう十分に楽しんだのか、奈里佳はクルルの言葉に対して比較的素直に応じたのだった。(つまりも何も、最初っからそう言っているのに奈里佳が話をそらしたんじゃないか) やや不満そうな克哉。しかし可愛い子がすねると更に可愛さが増すのはなぜだろう?(あら、そうだったかしら? ま、それはともかく、ハイどうぞッ!) 自分に都合の悪いことはすべて水に流すその態度はある意味立派なような気がしなくもない。そんな自我自賛をしつつ、奈里佳は克哉に見せている視界を切り替えた。(この首筋から血を吸うイメージをすれば良いんだね? そうしたらその人が持っている魔力を吸収することができるんだよね?) 分かっているならさっさとすれば良いのにと思わなくもないが、克哉としてはとことん納得しないと行動に移せられないらしい。(そうですよ。克哉君。なるべくリアルにイメージするのがコツです) 克哉の背中を押すかのようにクルルがアドバイスをする。(分かったら、さっさとやるッ! ほれほれ、ちゅーちゅーと吸ったんさい♪) けしかける奈里佳。本来は世界の結晶化と崩壊を阻止する為の行動であるはずなのに、既に楽しいイベントと化しているようだ。(分かったよ。ええと、なるべくリアルに血を吸うイメージをすればいいんでしょ) そして克哉はベットの上に横たわったまま、奈里佳の遠隔視能力の助けを受けて視界に捕らえている男子生徒の首筋に意識を集中した。そして想像上の自分の唇をその首筋に這わせると、思いっきり血を吸うイメージをしたのだった。「うわわッ! な、何だ何だッ!? くすぐったいだろ。やめろよッ!!」 イメージ上とはいえ、克哉に首筋を吸われた男子生徒は、それはもう見事なまでの反応を示したのだった。そして彼は首筋の何かを手で払いのけようとしたのだが、その手はただ空を切るだけだった。「どうしたんだよ、急に。何かあったのか?」 不審そうに問いかける周りの生徒達。「何かおかしなことでもあったの? ちょっとでも変なことがあったらすぐに教えて欲しいんだけど、どうしたの?」 他の場所で生徒達の体重を計っていた真美先生が異常を察して質問する。同じく美根子や遠子も、声を上げた男子生徒に視線を向けている。「なんだか今、首筋を誰かに触られたというか、吸われたというか、何か変な感触があったんです」 そう言いながら首筋を手で触る男子生徒。「あら? ちょっと見せてもらっていいかしら?」 美根子は男子生徒の首筋に何かを見つけると、ぱたぱたとスリッパの音を立てながら男子生徒のところまで歩いてきた。そしてそのままじっくりとその首筋を見て首をかしげるのだった。「なんでキスマークが……」 確かにその男子生徒の首筋にはくっきりとしたキスマークがあった。
Feb 17, 2005
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(まあ、そうなんだけど、別に首筋にこだわらなくていいわよ。血(ち)は乳(ちち)につながるから、あの子のおっぱいを吸っても魔力を吸収できるし、イメージするならそっちのほうが簡単かもね) 奈里佳はそう言うと、克哉に見せている視界を望遠モード(?)にして、男の身体についているということを除けば文句のつけようがないほど立派で形の良いおっぱいをアップで映しだした。(そ、そうなんだ……) アップになってしまえば、男の身体についているという欠点も気にならない。そんなおっぱいを目の前にして、克哉はごくりと唾を飲み込んだ。アソコが女の子になっている今の克哉であったが、やはり精神は健全な男の子ということなのだろう。(そうそう、だから早く吸っちゃえ。ほら、さっさとしないと胸が隠されちゃうわよ) 急かす奈里佳。しかし克哉がわずかに躊躇(ちゅうちょ)している間に、その生徒の胸囲検査は終わり、見事なその胸はシャツの下に隠されてしまった。(あ、もう遅いかな。あははは……) 寂しいような、ほっとしたような、微妙に乾いた笑いでごまかす克哉。(もう、さっさとしないから。やるべき時はさっさとやるッ! で、どうするの?) 威勢良くはっぱをかけると、何かを問いかける奈里佳。(どうするって何が?) 何を言われたのか分からない克哉は、そのまま奈里佳に質問を返す。(だから次におっぱいをむき出しにしてくれる子の順番まで待つか、それともこの子の首筋から血をすうイメージをしてみるか。あるいは単純にイメージできれば良いんだから、さっき見た記憶を元にしておっぱいを吸うイメージをしてみるか。どうするかって聞いてるのよ) 奈里佳は克哉に決断を迫る。(首筋から血をすうイメージにしてみるよ) しばらく考えた末に、克哉はそう答えた。(もう、克哉ちゃんってば純情なんだから。ホントはおっぱいを吸いたい癖に♪) 克哉をからかう奈里佳。楽しそうである。(違うってば。いくらおっぱいでも男のおっぱいなんか吸いたくないだけだよ) 言い訳をする克哉だったが、実は心が揺れなかったと言えば嘘になるという状況だったりする。(ま♪ 女の子のおっぱいなら吸いたいってか? 克哉ちゃんったらエッチなんだから、もう~) 自分の都合の良いように克哉の意見を曲解する奈里佳だったが、曲解したその意見のほうが克哉の本心を言い当てているのは真実である。その証拠に克哉からの反論は無い。(奈里佳ちゃん、克哉君をからかうのもそれぐらいにしてあげたらどうです) 放っておいたらいつまで経っても話が進みそうにないとみたクルルが奈里佳と克哉の会話に介入してきた。
Feb 15, 2005
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(えーーーッ!? 吸血鬼のまねか、そうじゃなけりゃ、キ、キスをするしかないのッ!!) 声を出さないように、ベットの上で毛布を引き上げてそれで口をおおう克哉。(克哉君、もしかしてちょっと誤解していませんか? 別に本当に血を吸ったり、キスをしたりしなくてもいいんですよ。単にイメージするだけなんですよ) 動揺している克哉の誤解を解こうとするクルル。(そうそう、単にイメージするだけよ。もっとも、とことんリアルにイメージしなくちゃいけないんだけど、まっ、それぐらい何でも無いわよね?) 対して、微妙に克哉の不安を煽ろうとする奈里佳。楽しそうである。(う~ん、イメージするだけでいいのか。じゃあ、とりあえずやってみるかよ) 色々と不安はあったものの、やるしかないということで克哉は自分を納得させた。(じゃあ、まずは保健室の中にいる子の中から1人選んでみることにしましょうか。克哉ちゃん、誰がいい?) 奈里佳の声とともに、目の前の景色が二重映しになってしまった。克哉がベットに横たわりそこから実際に見ている視界と、奈里佳が遠隔視して克哉に見せている視界が重なってしまったのだ。(奈里佳、視界が二重映しになってるんだけど……。このままじゃ何が見えているのかごちゃごちゃしていてよく分からないよ) 当惑する克哉。(バカねえ~。だったら目をつむれば良いだけでしょ? ちょっとは頭を使って考えたらどうなの?) 鼻で笑う奈里佳。しかし本来は克哉も奈里佳も同一人物である。というわけで奈里佳が克哉を馬鹿にしていても、奈里佳の口調に克哉に対する愛情が微妙に感じられるのはそのせいであろうか。(バカ、バカって言わないでよ) 奈里佳に反論しつつ、それでいながら克哉は素直に言われた通りに目をつむる。すると克哉の頭の中には健康診断を受けているクラスメイト達の鮮明な画像が映し出された。 ちなみに夏美と『ユニット20479』、通称【ユニ君】が行っている視界の分割によるバーチャルな子画面の表示という技を使うには、克哉が身も心も奈里佳に変身して魔法を完全に扱えるようになる必要がある。つまり現状では視界の切り替えが精一杯なのだ。(どう? この子は胸だけが女の子になっているわけなんだけど、とりあえずこの子かいってみる?) 奈里佳が克哉に見せた視界の中では、男子生徒が大きく膨らんだ胸もあらわに上半身をさらしていた。(うん、分かった。じゃあ、とりあえず血を吸うイメージをしてみるね。やっぱり首筋から吸うイメージでいいの?) 男子生徒相手にキスをするイメージを頭に浮かべるよりは、まだしも首筋から血を吸うイメージを浮かべる方がマシと判断したのだろう。
Feb 14, 2005
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(うん、ありがとう) クルルの励ましに対して礼を言う克哉。その雰囲気からは強い決意がうかがえたが、無理をして緊張を押し殺している様子も感じられなくもない。(でも、さっきも言いましたけど、他人の魔力を吸収するということは、自分とは違う波長の魔力を吸収することになりますから、変身後の魔力のコントロールに乱れが生じる危険性を覚悟しておいてくだい。おそらく奈里佳ちゃんに変身した後の克哉くんなら大丈夫だとは思いますけど、慣れるまでの間は注意が必要です。魔力が暴走なんかしちゃったら大変ですからね。とにかく注意してがんばってくださいよ) 念の為の注意をするクルル。しかし克哉の決意を変えようという気は無いようだ。克哉の決意の強さを理解しているのだろう。(分かった。注意するよ。それで、他の人の魔力を吸収するにはどうしたらいいの? 堀田君から魔力を吸収したって言われても、何も覚えていないんだよね) 知ったかぶりとはほど遠い態度の克哉。謙虚というか素直である。(相手に意識を集中して、魔力を吸い取るイメージをするのが基本かしらね。でしょ? クルルちゃん) 魔法関係の知識に関してある程度の知識はあるものの、完全な知識があるわけではない奈里佳としては、クルルに確認するのを忘れない。普段のタカビーな態度とは裏腹に、押さえるべきところでは慎重なのかもしれない。やはり元々の元は克哉と同じ精神をしているということなのだろう。(まあ、そうですね。問題なのは誰から魔力を吸い取るか、その相手を特定することですが……) 奈里佳の言葉を肯定しつつ、問題点を指摘するクルル。確かに保健室のベットに寝ていて、その上そのベットがカーテンで外部と仕切られている状態では、相手を見ながら確認することはできない。クルルとしてはその点を問題としたのであろう。(その点は問題ないわ。私が遠隔視して、その映像を克哉ちゃんに中継すればいいだけのことじゃない。ふふん、やっぱり私が居て正解だったわね) 何をすべきかがハッキリとしており、自分がそれを出来る能力を持っていることを自覚して威張る奈里佳。(なるほど……。では、後は克哉君が誰から魔力を吸収するかを決めて、実行するだけですね) 納得するクルル。(実行するだけですねと言われても、具体的にはどうすればいいの?) 何だか奈里佳とクルルにおいてきぼりにされたような感覚を味わいながら、克哉は質問する。(そうね、他人の魔力を吸収するというと、良く知られたやり方としては血を吸うっていうやり方があるわね。ほら、吸血鬼みたいに血を吸うことで他人の魔力を吸収するわけよ。まあ、実際に血を吸わなくてもイメージの上で血を吸えば魔力を吸収できるはずなんだけどね) 具体的にという克哉の質問に対して、やはり具体的に答える奈里佳。(吸血鬼……。う~ん、出来るかな。僕に……) 吸血鬼のように相手の血を吸うことをイメージしろと言われても、なかなか具体的にイメージ出来るものでは無い。克哉の戸惑いももっともだ。(じゃあ、代わりにキスをするっていうイメージでもいいわよ。それでも相手の魔力を吸い取ることは出来るはずだから。そうよねえ。血を吸うだなんてことよりも、キスをするイメージのほうが健全よね♪ そうでしょ、克哉ちゃん?) 次善の策を克哉に提案する奈里佳。しかしその雰囲気から本当はこちらのやり方を克哉にさせたがっているのがみえみえだ。
Feb 13, 2005
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(他の人の魔力を吸い取っちゃえばいいってことはなんとなく分かるけど、それって簡単に出来ることなの?) しばらく考え込んでいた克哉だったが、考えても分かりそうになかったので素直に聞いてみた。(あら、気づいてなかったの?) 奈里佳が本当に驚いたという声をあげる。実際には声は出ていないけど。(気づいてないって何が?) 不思議そうに問い返す克哉。きょとんとしている。(さっきまで一緒にいた、堀田修司君の変身がなぜ急に解けたのか? それは克哉君が彼の魔力を吸収したからなんですよ。無意識にやったみたいですけど、やったことには変わりありませんから、簡単かどうかはともかくまた出来ると思いますよ) 奈里佳の代わりに克哉の質問に答えるクルル。(知らなかった……) 克哉は言葉がない。(やっぱり気づいてなかったのね。克哉ちゃんってば、さっきのトイレの中の出来事に対してあんまりいい感情を持たなかったでしょ? 『早く終わってくれないかなぁ~』なんて考えていなかった?) 奈里佳は克哉に問いかける。(そういえば、そんなことを考えたような気もするけど、ホントにそんなことぐらいで堀田君の魔力を吸収出来ちゃったりするの? まるで嘘みたいな話のような……) クルルや奈里佳の話を聞いても、克哉としては自覚がまったく無いので信じるに信じられない。(嘘みたいだけど事実だからしょうがないでしょ。そもそも克哉ちゃんは自分が持ってる力に自覚を持たなくちゃ。いい、克哉ちゃんは私、つまり『魔法少女♪奈里佳』でもあるのよ) なぜか胸を張って威張っているようなイメージ映像が克哉の脳裏に浮かんでくる。(奈里佳ちゃんの言う通り、克哉君には他人の魔力を吸い取る力があります。というか魔力をためようとしている普段の状況が既に自然界や他人の魔力を少しずつ吸収している状態なんです。今回の堀田君のケースは、その吸収能力が選択的に働いた結果ということですね) クルルも奈里佳の意見を補強する。(ま、無意識にやっちゃったということだけが、ちょっとアレだけどね。本当なら意識的に魔力を吸収して欲しいところよね。というわけで克哉ちゃん、あの看護婦さんの結晶化を救う為に変身までの時間を短縮することは可能よ。克哉ちゃんにその気があればね♪) 奈里佳は挑発するように克哉に問いかける。イメージ上の奈里佳の手が克哉の首に絡みついてくるかのような雰囲気だ。(その気はもちろんあるけど、出来るかな、僕に……。奈里佳が代わりに魔力を吸収してくれるってわけにはいかないの?) いざとなるとやや気弱になってきた克哉。もしかしてちょっt情けないかもしれない。(だから、あんまり言いたく無いけど私たちの本体は克哉ちゃんなのよ。私じゃないの。克哉ちゃんがやらなきゃ話は始まらないのよ。分かる? サポートはしてあげられるけど、やるのは克哉ちゃん本人がやらなくちゃダメなのよ) ちょっと突き放したような印象で克哉の頼みを断る奈里佳。(……分かった。出来るかどうか分からないけどやってみるよ) ようやく腹を据えたのか、克哉の返事にも気迫が込められてきた。(それでこそ、世界の結晶化と崩壊の危機を救おうという正義の魔法少女です! がんばって下さい) 克哉の頭の中には、素直に克哉の決心を喜んでいるクルルの声が聞こえてきたが、その時克哉の家にいるクルル本体は、緊張を伴ったまじめな顔をしていた。ぬいぐるみのようなクルルのまじめな顔というのはなかなか想像出来ないかもしれないが、とにかくまじめな顔であった。
Feb 11, 2005
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(ああ、もうッ! 泣くことないでしょッ!! まったく、それでも男の子なの?) 克哉が涙を流していることを感じた奈里佳は、それに対して文句をつける。(奈里佳ちゃん。今の克哉君は『女の子』なんですけど♪) 場を明るくしようという意図なのか、必要以上に弾んだ言い方で奈里佳の言葉を訂正するクルル。(分かってるわよ。ちょっとしたボケじゃない。ほら、克哉ちゃんも笑って、笑って) 本当はそのツッコミを克哉に言ってほしかった奈里佳だったのだが、克哉本人にその気が無いのではしょうがない。(結晶化しかけているあの看護婦さんをそのままにしておくのはかわいそうだよ……) やはりこのまま自然に魔力が溜まっていくのを待ってから変身するしかないのかなと、克哉は自分でもそう思いながらも、どこかあきらめきれないでいた。変身するのを嫌がっていたはずなのだが、やはり結晶化による世界崩壊のビジョンを見てしまったことが克哉の心の奥底を大きく動かしていたらしい。(……本来なら十分な魔力をためる為にはあと数日は必要なんだけど、克哉ちゃんがその気なら、あと1日でなんとかできなくもないわよ) 珍しくまじめな口調の奈里佳。(えッ!?) 驚く克哉。まじめな口調の奈里佳に驚いているのか、それとも奈里佳の言葉の内容に驚いているのか? まあ、両方かもしれない。(だから、やり方しだいで、1日もあれば十分な魔力をためることができるって言ったのよ。クルルちゃんなら分かるでしょ? なんてったてここには魔力が残存している人達がいっぱいいるんだもん。これを利用しないって手はないわね) 奈里佳はクルルに話を振った。自分で全部説明するのが面倒になってきたのかもしれない。(う~ん、まあ、不可能ではないですね。他人が持っている魔力を吸収すれば確かにすばやく魔力を充填することができます。でも、自分自身の波長とは違う波長の魔力を吸収することになるわけですから、変身後に魔力のコントロールが乱れちゃうかもしれませんよ) 奈里佳の言いたいことにすぐに気がついたクルルだったが、同時に問題点も指摘する。(ねえ、いったいどういうことなのか教えてよ。僕にも分かるように) 奈里佳に変身し、その記憶も共有したことがある克哉だが、変身したその状況で知ったことしか記憶に残らないので、克哉には魔法全般に対する深い知識は無いに等しい。というわけで、克哉には自分の頭の中で展開される奈里佳とクルルの会話にはまったくついていけなかった。(つまりですね、克哉君。たとえばこの学校の中だけでも、先日のお嫁さんへの変身が完全に解けなくて、まだ部分的に変身したままの生徒がいますよね? そういった生徒達には、部分変身を維持しつづける為に必要な魔力が残存しているわけです。その魔力を克哉君が吸収すれば、自然に魔力がたまるのを待つよりもずっと早くに魔力を満たすことができるというわけです) 説明的なセリフをよどみなく口にするクルル。それを聞いた克哉はしばらくその言葉をゆっくりと噛みしめるのだった。
Feb 10, 2005
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(克哉君の潜在的な魔法力が強いのは良いんですが、正比例して感受性も強いというか、強すぎるのが問題ですね。完全に変身して身も心も奈里佳ちゃんになってしまえば問題無くなるんですけど) クルルも離れた場所から会話に参加してくる。(あッ! それって、私のことを感受性が無いってバカにしてない?) 奈里佳がすかさず抗議する。その反応性の良さは、ある意味十分に感受性が高いかもしれない。(奈里佳ちゃんの感受性が無いだなんて言ってませんよ。奈里佳ちゃんに変身した後の克哉君は、自分の魔力を完全にコントロールすることが出来るってことです) その場に居ないにも関わらず、『チッチッチッ』と顔の前で指を振っているような気がして、克哉はちょっとおかしくなった。(クルル、僕が奈里佳に変身出来るにはあとどれくらい魔力が溜まらないとダメなの?) まだ気分的には落ち着いていない克哉だったが、その声だけは落ち着いていた。(魔力の溜まり具合からすると、明日にでも変身出来なくは無いですが、変身しただけで魔力の大半を消費しちゃいますよ。出来たらもう少し魔力が溜まってから変身したほうがいいですね) とりあえずクルルは克哉の質問に答えると、いったんここで言葉を切った。(まだ変身できないのか……) 克哉はため息をつくような言い方をする。(あららッ! もしかして克哉ちゃん、今すぐにでも変身したいの?) 克哉と奈里佳は一心同体の関係なので、別にそんなことは聞かなくても分かっちゃうのだが、あえて質問する奈里佳。おそらく克哉の口から直接聞きたいのだろう。(うん、だってあの看護婦さん、結晶化しかけてるんだもん。このまま放っておいたら……) そしてまた身体を小刻みに震わせる克哉。寒くない寒気に、克哉はベットの上で小さくひざを抱え込むように丸くなっていく。(勝手に崩壊のビジョンを見るのは良いけど、いいかげん慣れなさいよね。ビジョンはビジョン。それ以上でもそれ以下でもないんだから) 突き放すような言い方だが、どこか優しげな奈里佳。珍しいこともあるものだ。(克哉君が使命に燃えてくれるのは嬉しいんですが、魔力が溜まらないことには変身ができないんですよ。あと数日のことですから、魔力が十分に溜まるのを待ちましょうよ) クルルも柔らかな口調で克哉を諭す。(でもッ! だってッ!! このままじゃあの看護婦さん結晶化して……。死んじゃうかもしれないのにッ!!) かろうじて声に出すことはせず、心の叫びを爆発させる克哉。その閉じた目からは涙がこぼれていた。
Feb 8, 2005
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「なんですってッ!? ちょっと見せてみなさいッ!!」 そのまま真美先生は本人の返事も聞かずに修司のズボンのウェスト部分を左手でつかんでぐいッと引っ張っると、今度はそこに出来た隙間からパンツの中に右手を突っ込む。「うわッ! 先生、何するんですかッ!?」 当然と言えば当然だが、抵抗しようとする修司。しかしさっきまでの美根子に対する態度と全然違うのはどうしてだろう。やはり、いきなり突然にという点がポイントなのだろうか?「元に戻ったという話が本当かどうか確かめないと、話にならないでしょッ! ……なるほど。ちゃんと付いてるようね」 ひとしきりムニュムニュと復活した修司のアソコを触り、その確かな存在を確認した真美先生は、ようやく修司のパンツの中から手を引きだした。「真美ちゃん……」 それを見ていた美根子は、そこまでやっても良いのか? という戸惑いを隠せない。病院勤務で患者さんの意志を尊重しなければいけない職場環境と、保健室の養護教諭という、ある意味自分の方が立場が強い教育の現場という職場環境の差であろうか。真美先生は美根子の心配をよそに堂々とした態度で消毒薬を使って手を洗っている。「堀田君は、完全に元の状態に戻ってるわね。変身が完全に解けたと見て間違いないわ」 美根子の消極的な非難を完全に無視して、真美先生は独り言のようにつぶやきながら、克哉の上にかけられた毛布の中に手を入れる。続けてズボンの上から克哉の股間を触ってそこがまだ女の子のままであることを確認する。「でも、同じようにアソコが女の子になっていた矢島君は、元に戻る様子は無くてなおかつ体調を崩している。どうしてなのかしら?」 そのまましばらく動きが止まる真美先生。美根子、遠子、修司の3人も黙ってその様子を見ている。しかしその時間もわずか数秒のことだった。「……美根子ちゃん、遠子ちゃん。変身現象の後遺症が残っている男子生徒達を徹底的に検査するわよ。みんなの現状を把握しなくっちゃッ!」 真美先生のその剣幕に、ようやく自分が本来ここで何をしなければならないかを思い出した美根子は、それまでのおろおろとしていた気持ちを引き締めた。「遠子ちゃん、行くわよ」「はい、先輩」 美根子と遠子はお互いに顔を合わせてうなづいた。「じゃあ、矢島君はしばらくここで寝ていてもらうとして……。さあ、あなたももう一度詳しく検査よ」 そして真美先生に引っ張っぱられるようにして修司もその場を去り、カーテンで仕切られた区画のベットの上には、克哉だけが取り残された。(……ようやく静かになったわね。どう、克哉ちゃん、まだ気分は悪い?) ベッドに横たわる克哉の頭の中に、奈里佳の声が響く。克哉の体調を心配しているのか、その音の無い声はいつもに比べてかなり小さい。(あ、奈里佳。大丈夫……、と言いたいけど、ちょっとまだダメ。まだ崩壊のビジョンが消えなくて……) 克哉の弱々しい返事が奈里佳に返る。
Feb 6, 2005
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「この子の具合が急に悪くなっちゃったの」 克哉を保健室に置かれている3台のベットに連れていく美根子は、検査を受ける男子生徒をかき分けながら遠子に答える。「美根子、とりあえずここに寝せて」 真美先生がベットの周りに張られたカーテンを開ける。「おい、矢島、大丈夫か?」 生徒の群れのなかから心配そうな声が口々に発せられるが、克哉はそれに応えない。美根子と修司、そして真美先生に抱えられながら、克哉はベットに横たえられた。「熱は無いようね。というか逆に体温が低化しているみたいだけど……。ねえ、いったい何があったの?」 克哉のおでこに右手をのせてアバウトに熱を計ると、真美先生は事情を知っているだろう美根子に質問する。「それが分からないの。私が廊下で転んで、この子に手を引かれて立ち上がったと思ったら、こうなっていたのよ」 まったくもって分からないと、ベットに寝かされた克哉とその周りに集まってきた男子生徒達の顔を順番に見ながら首をかしげる美根子。「それだけですか……。何かそうなる直前に変わったことはなかったんですか? 先輩」 そう言いながら、遠子は克哉の身体に毛布を1枚、2枚とかけていく。「いえ、とくに変わったことは……」 看護婦にあるまじきことだが克哉の容態を心配するあまり、美根子は気が動転して何も思い出せないようだ。「そう言えばそのちょっと前に、女の子になっていた僕のアソコが一瞬のうちに元にもどったんですけど……、直接は関係無いですよね?」 自信無さそうに中途半端に手を上げて真美先生に答える修司。その瞬間、真美先生の顔つきが保健室の養護教諭とは思えないほど厳しく変わったッ!
Feb 2, 2005
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