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「よっこらしょっと。……あらやだ。まるでおばさんみたいなこと言っちゃった。」 克哉の手を借りて立ち上がった美根子は、恥ずかしそうに笑う。「いえ、そんなことないですよ」 美根子は自分よりも10才は年上の大人である。克哉のような中学生の子供からすると、十分に美根子はおばさんの範疇に入ると言えなくも無いのだが、そこはそれ、社交辞令を言うことが出来る程度には克哉も大人だった。(やっぱりこの看護婦さん、結晶化しかけてるんだね。どうしよう奈里佳?) そして克哉は、苦笑い混じりの社交辞令で美根子に応えつつ、心の中の会話で奈里佳に質問する。(どうって……。この状態ではまだ何も出来ないわよ。そうでしょ、クルルちゃん?) 奈里佳は、自分達の状態をモニターしているはずのクルルに助けを求める。ただ、自分で説明をするのが面倒くさいだけであろうが。(そうですね。克哉君が変身して身体のほうも奈里佳ちゃんになったとしたら何とか出来なくも無いですが、現状ではとりあえず要注意人物として見守るしか出来ませんね。遠隔地からでもモニター出来るように、その看護婦さんの精神とリンクしておくというのが今とれる最善の方法でしょう) 良く言えば常に会話をモニターして手助けが必要なら助言を加える。悪く言えば常に盗み聞きをしていて自分の得意な話題になればしゃしゃり出る。というわけで完全なる状況把握のもと、克哉と奈里佳の会話に割って入ってきたクルルだった。(見てるだけって、それだけで大丈夫なの? もしも急に結晶化が始まったら……) 言葉を濁す克哉。その脳裏には数日前に夢で見た崩壊のビジョンが再生されていた。「ちょっと、矢島君ッ! 急にどうしちゃったのッ!?」 美根子は、転んだ自分に手をさしのべて起こしてくれたた克哉が、目の前で急に黙りこんでしまったのをしばらく不審そうに見ていた。しかし克哉が、突然小刻みに震えだしたかと思うと顔は青ざめ、冷や汗まで流しだしたのを目にすると、あたりをはばからずに大声を出したのだった。「え……」 再生された崩壊のビジョンに精神の平衡を奪われた克哉は、気の抜けた返事をするばかりである。「とりあえず、保健室に早く戻りましょうッ!」 自分よりやや低い位置にある克哉の両肩を正面から掴んで、美根子は克哉の焦点が定まっていないその目を見ながら言い聞かせると、今度は修司の方に叫ぶのだった。「手伝って下さいッ!」 その美根子の剣幕に押された修司は何も言わずに克哉を脇から支えた。「行きますッ!」 その姿は、ドジな看護婦さんの姿には見えなかった。修司は軽くうなずくと、美根子と2人で克哉を保健室へと運び、その扉をくぐった。するとそこに待っていたのは、検尿の結果をカルテに記入している遠子だった。「先輩ッ! どうしたんですかッ!?」 美根子と修司が誰がどう見ても具合の悪そうな克哉を両脇から抱えながら保健室に入ってきたのを見て取ると、遠子は驚きの声をあげた。
Jan 31, 2005
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(看護婦さんが、修ちゃんのアソコが元に戻って男の子になったと言うんなら間違い無いんじゃないの?) 無意識のうちに机の上を指でトントンと叩く夏美。恋人(?)の修司の変身が完全に解けて元に戻ったことを喜ぶ気持ちと、それなのにユニ君が慎重な姿勢を崩さないことにちょっとイラついている気持ちが混ざっているようだ。(彼が元に戻ったことを疑っているというわけではない。むしろ可能性としては、元に戻っている可能性のほうが高いと私も判断している。この場合、彼らが嘘をいう動機が無いからな) 夏美のイラつきに気がついているのかいないのか、冷静な口調を崩さないユニ君。まあ、機械知性なんだからそれもしょうがないかもしれない。(じゃあ、疑っているようなことなんか言わずに、最初からそう言えばいいのに) 不満気な夏美。外から見ると、うれしそうな顔をしたかと思えば今度はむすっとした顔をする様子は、ちょっとあぶない人そのものである。(そう言った不満は、私をプログラムした技術者に言ってくれ。それよりも、私が、『本当のところが分かるかもしれない』と言った真意は、前回の変身後、なぜ身体の一部のみ変身が解けなかったのか。それなのになぜ今になって変身が解けたのか。そしてあそこにいるもう1人の生徒、矢島克哉の部分変身はまだ解除されていないようだが、それはなぜなのか? そういったことが、もう少し観察を続けていれば分かるかもしれない。ひいては魔法少女♪奈里佳と戦うためのヒントが得られるかもしれないということなのだ) まったくもって冷静に自分の意見を述べるユニ君。この意見には夏美にも反論の余地は無い。(なるほど、そういうことね。だったら、さっさと観察を続けましょう。ふふふふふ、情報収集が戦いの第一歩ッ! 見てらっしゃい奈里佳ッ! 今度は絶対に私が勝つッ!!) かろうじて口から言葉が出るのを飲み込んだ夏美だったが、右手を握りしめ、『ふふふふふ』と怪しげな笑いを漏らす夏美の回りには、なんとも近寄りがたい雰囲気が漂う。夏美はこうしてまた一歩、変人への階段を上ったのだった。「そういえば、部分的に女の子に変身していた他の人たちはどうなっているのかしらね? 堀田君のようにもう元にもどったのかしら? それとも矢島君のようにまだ変身したまま?」 夏美に観察されているなんてことには当然ながらまったく気がついていない克哉、修司、美根子の3人は廊下を歩いている。克哉と修司は、色の変わった尿検査用紙持っている。「早い遅いはあっても、そろそろ順番に元に戻りだしているかもしれませんね」 修司は、根拠もないまま適当なことを言う。「矢島君は、どう? 元に戻るような感じはあるのかしら?」 ま、その意見はそれとしてという感じで修司の意見をスルーすると、後ろを振り返りながら美根子は克哉に質問した。「ええと……。無いみたいです」 一応、考えたふりをした後で、克哉は小さな声で返事をした。「うーん、やっぱり他の人の様子を見てみないと、矢島君の状態が普通なのかどうなのか分からないわね」 至極まじめな顔つきをして考え込み出す美根子。集中しているのか、眉間にしわが寄ってきている。そしてそのとき……。「あッ!」「看護婦さんッ!」 修司と克哉が警告しようとしたその時には既に遅く、美根子は何故か何もない廊下でつまずき、転んでしまった。つくづく転ぶのが好きな看護婦である。「痛~い」 あまり痛そうには感じられないような口調の美根子。「大丈夫ですか?」 克哉は転んでいる美根子に手を伸ばす。「ええ、大丈夫。いつものことだから。なんでか分からないんだけど、私って転びやすいの。いつもこれで失敗しちゃうし、ホント、自分でも自分が嫌になってくるわ」 転んで尻餅をついたまま、美根子は自嘲気味にそう話す。「転ぶくらいで、失敗しちゃうだとか、自分が嫌になるだなんて、おおげさじゃないですか?」 修司が不思議そうに尋ねる。「転ぶ時に、足下がおぼつかない患者さんを支えていたりしていなければね。……それで危うく患者さんを骨折させちゃうところだったし。あ、ありがとう」 美根子は修司に対してそう答えると、今度は手を差し伸べてくれている克哉に礼を言った。「いえ、どういたしまして」 それに対して克哉は、さらに手を前に伸ばして美根子の手を取る。ふんわりとした手の感触に思わず克哉は顔を赤らめるが、それは一瞬のことだった。(奈里佳ッ! これはッ!?」 声を出さずにいることに努力が必要だった。柔らかな手の感触とは裏腹に、克哉が掴んだ美根子の手からは冷たい凍るような何とも言えない感覚がはい上って来たのだった。(直接身体に触れなければ分からない程度のまだ小さな芽のような状態だけど、この看護婦さん、結晶化しかけてるわね) 奈里佳のいつになくまじめな声が、克哉の頭の中で響いた。
Jan 27, 2005
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第11章 健康に敏感♪ その2(どうやら例の堀田修司だが、もとに戻ったらしいな) ユニ君の音のない声が夏美の頭の中に響く。「えッ! ホントッ!!」 思わず声を上げてしまう夏美。慌てて口を押さえてごまかそうとしたが、回りの様子を見る限り、その必要は無いようだった。 一応健康診断を待っている間は自習ということになっているのだが、誰も自習なんかしていない。そして生徒がまじめに自習をしていない自習時間は、昔からうるさいものと相場が決まっている。というわけで、夏美の叫びを聞いた者はごく一部だけであったし、一瞬けげんそうに夏美の顔を見た女子生徒もいるにはいたが、ただそれだけだった。 夏美もクラスメート達から、【いわゆるちょっとあぶないやつ】という評価を得ているらしく、ちょっと程度の奇行では不審を招かないようだ。(修ちゃんがもとに戻ったって、それ、本当なの?) こんどは声を出さずにユニ君に問いかける夏美。なぜか意味もなくひそひそ話モードになっている。(自分で確かめると良いだろう。校内各所に設置してある監視カメラからの映像と、校内放送用のスピーカーをマイク代わりにして拾った音声だ) ひとことそう言うと、ユニ君は例によって夏美の視界の一部にバーチャルな画像を浮かびあがらせた。しかもユニ君が言うように、そこには音声までもがついていた。マイクもスピーカーも機械の構造としては同じものだから、スピーカーをマイク代わりにして音を拾えるようにシステムをいじってあるということのようだ。「ごめんなさい。ごめんなさい。本当にごめんなさい」 修司に対して、看護婦(?)が謝っている様子が、夏美の視界に一部に映し出されている。職員用のトイレから保健室へと続く廊下のようだ。「……高かったのに。これ」 右手に持ったデジカメを胸の高さに掲げると、それを見ながら肩を落としている修司。(どうやら水に浸かって壊れているようだな。あのデジタルカメラは) そうコメントすると、画像のデジカメ部分を拡大してみせるユニ君。細かな分析結果が重なって表示されるが、わけの分からない夏美にしてみたら、かえって邪魔なだけだ。「でも、堀田君も悪いんだよ。あんな写真を撮っていたんだもん」 看護婦と修司の後をついて歩いていた克哉の言葉が聞こえてきた。(あんな写真って……。どんな写真なのかしら?) 夏美は『ユニ君なら分かるでしょ?』と、暗にその写真を見たいと要求する。(画像、そのものは残ってないが、会話をモニターしていたところによると、彼の局部が女性器に部分変身した際の、そのものの写真らしい。というわけなんだが、見たいかね?) あくまでもまじめに夏美に質問するユニ君。このあたりは機械知性特有の融通の効かなさだ。(せっかくだけど、遠慮しておくわ) 夏美は丁重にお断りをした。見ていて決して楽しいものでは無かったからだ。少なくともノーマルな性的趣味を持っている夏美にとっては。「しょうがないか。後で、データだけでも引き上げることが出来たらいいんだけどな」 修司は、まだうらめしそうに、トイレの便器の中の水に落ちてしまったデジカメを見る。「それにしても、堀田君のアソコは元に戻って男の子になったのに、矢島君のアソコは女の子のままなんですね」 どう修司に声をかけて良いか分からなくなった美根子は、笑顔を無理矢理浮かべながら、ぎこちない口調で質問した。「個人差……、かな?」 あはははは、と、笑ってごまかしながら、頭をかきつつ克哉は美根子に答えた。(ホントだッ! 修ちゃん、元に戻ったんだッ!!) 看護婦さんの発言を聞いて、夏美は顔がほころんで来るのを感じた。やはり恋人(?)のアソコが女の子のままでは、今すぐソレを使って何かをするわけでもないのに、なにか嫌ということなのだろう。(画像では確認出来ていないから、完全ではないがな) 夏美の喜びに水をさすつもりはまったくないのだが、ユニ君は結果的にそういうことをしてしまった。(単にそう言っているだけってこと?) 夏美がやや冷静さを取り戻す。(可能性は否定出来ない。もう少し観察を続けて見るとしよう。本当のところが分かるかもしれない) ユニ君は夏美の視界に存在するバーチャルな画像をやや縮小させた。
Jan 25, 2005
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「ねえ、堀田君。完全に元に戻ったの? どこか変なところは無い?」 早くそれをしまって欲しいと思いつつ、克哉は修司に問いかける。「う~ん、完全に元に戻ったんじゃないかな。生理痛も消えているみたいだし……」 下腹部を確かめるようになでながら答える修司の様子は、生理通から開放された安堵感とは別に、やはりどことなく残念だという気持ちがうかがえる。まったくもって変態さんとしか言いようがない?(魔力の暴走をコントロールできるようになったのか、それとも残っていた魔力がなくなったのか、どっちにしてもそろそろ変身が解ける頃だったのね) 奈里佳は、『私はすべてを分かっていたわよ』とでも言わんばかりの調子でコメントする。(でもさ、そうすると部分変身している他のみんなも、そろそろ変身が解けだすってことでしょ? 僕だけがまだ変身しているってのは、ちょっとまずくない?) 対する克哉は、おろおろと問いかける。その割には頭の回転は良いみたいだけど。(おそらく個人差があるはずだと思いから、まだ変身が解けていない人も大勢いるんじゃないしょうか? だから克哉君、そんなに心配することはありませんよ) そう答えたのはクルルである。たしかに克哉、つまり奈里佳は自分自身の魔力を完全にコントロールしているので、変身したり変身を解いたり、また今回のように部分的に変身をしたりするのは思いのままなのであるが、みんなの場合はそうではない。(……だといいけど) クルルや奈里佳には振り回されっぱなしの克哉としては、いまいち素直に納得することはできない。もしかするとまだ部分変身をしているのは自分だけなのではないかという疑いの気持ちを捨てきれないでいた。「え~と、とりあえず良かったですね。元に戻って」 それはともかく、気を取り直した美根子が修司のソレから微妙に顔を逸らしつつ、それでいてチラリチラリと視線を向けて、元の男の子に戻ったアソコを確認する。「う~ん、もう少し多くの写真を撮りたかったのに残念だな。結局はこれだけしか撮れなかった」 修司はポケットからまたデジカメを取り出すと、すでに写してある画像を液晶に表示させた。……しかしそんなことをする前に、早く下半身を隠してほしいものである。「見てみるか? 矢島」 修司は、美根子の肩越しにのぞいていた克哉にデジカメを渡すと、そのまま立ち上がりパンツとズボンを引き上げた。その様子を見て、美根子も微妙に緊張を解く。やはりいくら看護婦とは言っても、男性のむき出しの股間を見てもなにも思わないということは無いようだ。美根子も年頃な女性には違いがないということか。「……!?」 一方、デジカメを渡された克哉は、その液晶画面に表示された画像を見て固まってしまった。なんとそこには、アップで撮影されたアレが写っていたのだった。それはもう色気をはるかに通り越してグロさだけが前面に出てしまうほどの大写しのアップ画像だった。「堀田君、これ、ちょっとまずいんじゃない?」 今の克哉はアソコが女の子になっているが、本来なら若き血潮がドクドクと身体の一部に集中して流れる中学2年生男子である。たとえエロスよりもグロが勝っているような画像にだって、興味が無いと言えば嘘になる。(まったく純情ねえ、興味があるならじっくり見てみればいいじゃない。ま、あの修司君のだと思うと私としては見たくなくなるけどね) 克哉の屈折した気持ちはお見通しの奈里佳がつっこむ。「中学生がこんなもの見ちゃダメですよッ! ちょっと、貸して下さいッ!!」 液晶画面に何が写っているのかに気がついた美根子は、克哉の手からデジカメを奪おうと手を伸ばす。「ダメですよ。これは僕のですッ!」 奪われまいと、修司もその手を伸ばし、美根子と修司の手は、克哉が持つデジカメの上で格闘した。そして……。「ちょっと、2人ともやめてよ……」 もつれ合った手と手、そして克哉の手から離れたデジカメは美根子の大きな胸に当たりはじかれると、その落下軌道を変えて洋式便器の中心部へと入って行ってしまった。 そしてポチャンという情けない水音が響くと同時に、あたりに散らばる水しぶき……。哀れ、修司のデジカメはその短い生涯を終えたのだった。
Jan 19, 2005
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(え~ッ! でも、今度僕が奈里佳に変身して魔法力を使い切っちゃったら、変身が完全に解けてアソコも女の子から男の子に戻れるんでしょ!?) 前に聞いた話を思い出しながら、克哉は念を押すように確認をする。声を出さないで会話することに意識的な努力が必要な程度には興奮し、そしてさすがに怒っているかもしれない。(変身して変心したら、きっと元に戻りたくなくなるわよ。そうなれば克哉ちゃんは自分の意思で普段の自分が女の子でいられるように魔法を使うかもしれないでしょ?) 克哉には、奈里佳が笑みを浮かべている様子がありありと想像できた。そして背中に流れる冷や汗が更にその量を増していくのも分かってしまった。(絶対、そんなことしないもん) 自分でも自信がない口調だとは思う。しかし奈里佳に変身すると心までも奈里佳に変心してしまうということを2度も体験している克哉としては、『そうしない』と自信を持って断言することができないのだった。(わかった、わかった。じゃあそういうことにしておいてあげましょうか♪ 現実はどうであれ、人間には夢を見る権利があるんだものね♪) 今、克哉と会話している奈里佳という人格は、克哉という人格がそうなっていたかもしれない可能性であり、現在克哉として存在している人格とは別物に見えていながら本当は同一人格であるのだ。というわけで奈里佳はまったく根拠のないことを言っているわけではない。無論、克哉に対して強制しようだなんてことも考えてない。奈里佳は、克哉が奈里佳になったときには自分の考えと同じ行動をするだろうということを知っているだけなのだ。……なんかややこしいけど、そういうことだと思ってほしい。(そう言えば話は変わるけど、今度僕が変身して僕自身が奈里佳になったら、今こうして僕と話をしている奈里佳はどうなっちゃうのかな?) ふと思った疑問だったが、考えてみるとどうなるのかとても興味が沸いてきた克哉だった。(さあ、どうなるのかしらね? ……クルルちゃん、分かる?) どうやら奈里佳にも分からないらしい。奈里佳は常時自分たちの精神とリンクしているはずのクルルに質問した。(……僕もこっちの世界に来るときに持っていた知識の大部分を失っていますからね。ちょっと分からないっていうのが本音ですね。まあ、変身してみれば分かるんじゃないですか?) 何だかもう他人事のような感じでのんきに応えるクルル。まあ、他人事には違いないんだけど。(ちょっと、クルルちゃんッ! 無責任なんじゃないの? その言い方って) 更に抗議しようとする奈里佳だったが、その時、美根子の叫び声が響いたのだったッ!「な、なんですか!? これは~~~ッ!!!」 その美根子の声に驚いた克哉は、あわてて身体をトイレのほうに向けると、美根子の後ろから個室の中をのぞき込んだ。「えッ? え~と、それは……」 ここ数日ご無沙汰しているが、見慣れた自分のものと同じ種類のモノがそこにあった。しかも礼儀正しく起立して。「ふ~む。どうやらこれはあれだな」 落ち着いてはいるが、ちょっと残念そうな表情を見せながら、修司は正しく現状を認識したらしい。しかし女子トイレの個室に座り、アソコを起立させている男子学生というのは、何とも異常な光景である。警察に通報されても文句が言えないかもしれない。「もうッ! いきなり変なことしないで下さい。慌てて検査用紙を落としちゃったじゃないですか。いったいなんのいたずらなんですか?」 今ひとつ状況が分かっていない美根子は、修司の股間のそれをおもちゃかなにかだと思っているのか、そのまま修司の股間のそれをむんずと掴んでしまった。「あれ? 取れない……」 更に混乱しているのか、掴んだ手を離すことも忘れている美根子。「まあ、普通は取れませんよね」 行儀良くちゃんと立っているそれを、美根子に握られたままの修司。「あの~、看護婦さん。堀田君の変身が完全に解けて、ちゃんとした男の子に戻ったんだと思うんですけど?」 ポンポンと、美根子の肩を軽く叩きながら克哉は美根子に話しかける。「……え~と、つまりこれは、おもちゃじゃなくて本物?」 それを握る手を開こうとするが、何故か意志に反して指が動かない。「そうですね。触られている感覚ありますから」 冷静な修司。しかしその冷静さが美根子の羞恥心を刺激する。看護婦という仕事柄、見慣れていないというものではないのだが、さっきまで修司の股間は女の子だったのだ。心の準備が出来ていなかったこのだから恥ずかしくなるのも無理もないと言える。「ご、ごめんなさい。すみません、い、今、手を離しますからッ!」 驚きが一段落したところで、美根子はようやく手を離すことに成功した。
Jan 17, 2005
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「ええ、そうですよ。だってしょうがないじゃないじゃないですか。実際に僕たちのアソコは女の子になっちゃってるんだし」 現状を素直に受け入れている(?)修司は、ズボンを降ろしたショーツむき出しの下半身を美根子と克哉にさらしている。確かになにもない股間にはショーツがよく似合うのかもしれないが、よくよく注意をして見てみると、お尻の肉付きが貧弱でちょっとバランスが悪いと感じなくもない。簡単に言えば確かに股間には何もないのだが、全体の形は男の子のお尻という感じであろうか。 まあ、そういうお尻に愛を感じる人もいるのは確かだけど……。「そうか。そうでしたよね。聞いてはいましたけど、聞くと見るとじゃ大違いですよね。……ん? あの、これってもしかすると生理用のショーツなんじゃないですか?」 修司がはいているショーツの種類に気がついた美根子は、修司の股間を指で指しながら固まってしまった。体中がギギギと音を立てているようだ。「そうなんですよ。昨日に比べたらちょっとは楽になってきたんですけど、やっぱり大変ですよね。女の子が体育を見学するわけが分かっちゃいましたよ。あ、そうそう、ついでに取り替えなくちゃね」 固まっている美根子の視線を気にするどころかむしろわざと見せているのではないかという感じの勢いで、修司は生理用のショーツを下に降ろした。そして更に固まる美根子。「あ、ははは……、そ、そうなんですか。じゃ、ま、まずはそちらのほうから片づけ……、片づけましょうね。あ、ははは」 そして動き出したと思ったら、やはりちょっと壊れてしまっているようだ。しかしまがりなりにも一応はさすがにプロの看護婦さんッ! 美根子は修司をトイレに座らせると、潮のにおいがする液体を吸って塗れているナプキンを手際よくショーツからはがして汚物入れに放り込むのだった。なんというか、別にそこまでしてあげなくても良いのだが、何となく成り行きにながされている美根子だった。 さて、そんな2人から距離を置いている……。とは言ってもせいぜい1メートル半程度しか離れていない場所に立っている克哉は、修司が入っている洋式トイレに背を向けていた。なぜって、背を向けていないと見えちゃうからだ♪(克哉ちゃんもこのままアソコが女の子のままだったら、あと2週間もすれば修司君みたいに生理になっちゃうわね。良い機会だからじっくりと見学すれば良いのに) くすくすと笑いながら奈里佳が克哉に話しかける。(冗談ッ! そうなる前に僕は男に戻るから関係ないのッ!) 声には出さないが、顔を真っ赤にして反論する。(戻れるならね♪) 奈里佳の答えは明るくそして短かかったが、克哉の背中に冷や汗を流させるには十分な何かを持っていた。
Jan 12, 2005
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「でも看護婦さん。例えば今の僕が手鏡でアソコを映しながら検尿しても別にまずくはないでしょ? デジカメで撮るのも同じことですよ。デジカメですから別に現像する為に誰かに見せなくちゃならないわけでもないですし、問題ないんじゃないですか?」 女子トイレの中でいったい何を大真面目に会話しているんだと、美根子は修司の主張を聞いて頭が痛くなるような気がしてきたが、それをなんとか職業意識で押さえこむことにした。「鏡とデジカメは違うんじゃないでしょうか?」 援軍を求めるように、克哉のほうを向いて同意を求める美根子。顔は困りきっている。「そうですよね。鏡はその場限りですけど、デジカメは後に記録が残っちゃいますもんね。やっぱりまずいですよ」 美根子に同調する返事をする克哉は、ここで修司のそのシーンをデジカメで撮るようなことになれば、次は自分の番だと警戒しているのだった。まあ、結果はともかく流れとしてはそうなることは間違いないところだろう。「じゃあ、いいです。デジカメで撮るのはあきらめますから、看護婦さん、検尿のほうを手伝ってください」 もっと反発するかと思われたのに、修司の返事はやけに素直だった。思わず顔を見合わせる克哉と美根子。この2人、もしかすると似ているのかもしれない。(何かたくらんでいそう。この子、なかなか良いわね。気に入ったわ) 奈里佳は奈里佳で、修司のことを誉めている。「手伝うって、検尿をですか?」 話の流れに必死で付いて行こうとする美根子だったが、修司が何を考えているのかもうわけが分からなくなってきていた。そして克哉はというと……、既に傍観者モードに入りつつあった。「そうですよ。そのためにここに来たんでしょ?」 当然と言わんばかりの修司の口調。鼻息が吹き出している。「ええ、そう言えばそうでしたね。分かりました。でも手伝うって何をして欲しいんですか?」 デジカメで検尿シーンの瞬間の写真を撮ってくれという要求に応える訳にはいかないが、検尿そのものを手伝ってくれということなら、看護婦としての自分の仕事の範疇(はんちゅう)ということであるから、美根子としても断るこはできない。 いぶかしむ気持ちも無いでは無かったが、美根子は修司の要求を受け入れる決意をした。「だから検尿の検査用紙を看護婦さんが持っててください。僕がおしっこをしますからそれに合わせて検査用紙の位置を調整してくれれば良いんですよ」 排尿するところを他人に見られることについては、なんの羞恥心も感じていないらしい。さすがというべきか、それともやっぱりというべきか。「やっぱり自分だけでは出来ませんか?」 念のために聞いてみる美根子。「初めてですからね。やっぱり手伝ってください」 そう言うと修司は美根子の返事も待たずにズボンのベルトを外し、まずはズボンのみを下に降ろしたのだった。「えッ!?」 ズボンの下から現われた下着を見て、美根子は小さく声をあげた。その声を聞いてそれまで視線をそらせていた克哉も、つい反射的にそれを見てしまった。「それ、女の子用のショーツなんじゃ……」 修司と克哉のアソコが女の子に変身しているということを知ってはいた美根子だったが、実際に詰め襟の学生服を着ている修司が女性用のショーツをはいているのを見ると、美根子は激しく違和感を覚えるのだった。
Jan 10, 2005
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「あの~、だから検尿を早く始めたいんですけど……」 克哉と修司のやりとりのどこに口を挟んで良いのか分からなかったのか、美根子はおずおずと、何故か手を上げながら発言した。「はい、分かりましたッ! いよいよ女子トイレ初体験っすねッ!!」 グッと、こぶしを握りしめ、不必要なまでに力を入れる修司。女子トイレにかけるそのような情熱こそが、アソコが女の子になっているにも関わらず女子トイレから追いだされる原因となっていることに気がついていないらしい。「あ、ハイッ! すみませんッ!!」 一方の克哉はというと、電気に打たれたかのように軽く飛び上がってからペコリと頭を下げている。「ああ、良かった。やっと検尿が出来る……。で、どちらから先にしますか?」 美根子は、ほっとため息をつくと、1つしかない洋式のトイレを前にして、克哉と修司の2人に問いかけた。「ハイ、看護婦さん、僕から行きます」 克哉が返事をするよりも早く、修司は『ハイハイハイ』と、手をあげる。「ええ、私としてはどちらが先でもいいですから、早くしましょう」 安堵と緊張が混じった様子の美根子は洋式トイレのドアを開け、手で支えてドアが閉まらないように押さえている。「それじゃ早速……。ととっ、忘れるところだった」 個室の中に入りかけた修司だったが、途中でくるりと身体の向きを変えて、出てきてしまった。「じゃ、矢島。これお願いな♪」 明るい声と共に、修司は克哉にデジカメを手渡した。「え? 何これ?」 いきなりなんの説明もなくデジカメを手渡されて戸惑う克哉。デジカメと修司の顔を交互に見ている。「何って、デジカメだけど。電源を入れてシャッターを押せば、デジタル写真が撮れるという……」 至極真面目な顔をして、デジカメとは何ぞやということを説明し始める修司。その顔は真剣だ。「いや、だからそうじゃなくて、なんで僕が堀田君のデジカメを受け取らなくちゃいけないのかということなんだけど……」 渡されたデジカメを修司に返そうとするかのように前に差し出す克哉。その顔と態度からは修司の意図を的確に見ぬいていることが見てとれる。(やっぱ写して欲しいんじゃないの? まあ変態な発想だけど、特に誰にも迷惑をかけてるわけじゃないし、いいんじゃない。写してあげれば) 奈里佳は奈里佳で、面白そうな展開になるのだったらなんでもありという考えらしい。(写してあげればいいって、いったいどこを写すことになると思っているの?) まあ、確かに本来は男子生徒であるにも関わらず、アソコだけ女の子になっている修司の検尿しているところを写真に撮るだなんてしたら、変態さんの仲間入り間違いなしである。克哉がちゅうちょするのも無理はない。(まっ♪ 分かってるくせに。克哉ちゃんったらエッチなんだからぁ~) 答えになっていないような、なっているような返事をする奈里佳。それに対して克哉は何かを言いたかったが、口では勝てそうになかったのでとりあえず奈里佳のその発言を無視することにした。ちなみに克哉が奈里佳に勝てないのは口だけではないことは言うまでもない。「もちろん、このデジカメで俺が女の子なアソコで検尿しているシーンを撮って欲しいに決まってるじゃないか。それとも矢島、おまえのを撮らせてくれるのか?」 修司は、『本当のところはそのほうが良いんだけど』と考えながら克哉が返そうとするデジカメを右手で押し返した。「撮るのも撮られるのも遠慮したいんだけど……」 洋式トイレの個室前での静かな攻防であった。「あの、さすがにそういうシーンを写真に撮るのはまずいと思うんですけど……。やめましょうよ。そういうのは」 看護婦というか、生まれながらの女性として、女性のたしなみというか常識というか、とにかく美根子は2人の男子生徒(?)がおかしな方向に足を踏み出しかけているのを見て、慌ててそう言うのだった。がんばれ、美根子ッ! がんばり切れないのは目に見えているけど。
Jan 6, 2005
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「ちょっ、ちょっと看護婦さん! そこは女子用ですよ!! 良いんですか?」 美根子が何のためらいもなく2人を女子用トイレに誘うのを見て、修司が慌てて声をあげた。しかしなぜかその声は嬉しそうだ。「え? 何かまずいことでもあるの?」 修司が何を問題としているのか良く理解出来ていない美根子であった。「いや、別に……。ただ僕のアソコは女の子になっていますけど、外見は男のまんまの僕たちが女子トイレに素直に入って行っても良いんですか? まあ、看護婦さんが良いと言うのなら文句は無いんですけどね」 自分が着ている詰め襟の黒い学生服をしめしながら、遠子に説明する修司。顔がにやけているのがなにかおかしい。「ええ、高谷先生からは、『アソコが女性化している男子生徒には職員用の女子トイレの使用許可を出しているから』って聞いていますし、何も問題があるとは思えませんが?」 女子トイレの入り口に立ったまま、美根子はわずかに首をかしげる。「堀田君、もしかして昨日も今日も職員用の女子トイレを使って無かったの」 真美先生に言われるまま素直に職員用の女子トイレを使っていた克哉は、逆の意味で驚いた。「いや、俺もここの女子トイレを使いたかったんだけど、入ろうとしたら何だか周りの女の先生達に白い目で見られてさ、それでも入ろうとしたら、『真美先生から聞いているけど、あなたの場合は男子用に行ってちょうだい』って言われたから、結局職員用でも男子用のトイレを使ってたんだよ」 そう不満を漏らすと、修司は制服のポケットから小さなデジタルカメラを取り出した。「せっかくだから女子トイレの様子をしっかりとこのカメラに収めたかっただけなのにさ」 そして修司はカメラを構えてそのレンズを克哉に向け、パシャリとシャッターを切ったのだった。(ホント、バカだわ。こいつ。でも、これぐらい自分の想いを素直に実行する行動力があるなら、この子が結晶化するなんてことはありえなさそうね) 奈里佳は、あきれつつ感心した。「もしかしてカメラを手に持ったまま、女子トイレに入ろうとしたの?」 克哉は、聞かなくても分かる答えを聞く為に質問した。お疲れさまなことである。「もちろん! 未知な場所に行く時にカメラは手放せないでしょう?」 当然のように答える修司。「そんなの持ってちゃ、いくら職員用でも女子トイレには入れてくれないと思うよ」(私もそう思う) 克哉が修司にそう言うと同時に、奈里佳もそれに同意する。まったくその通りである。「真実を撮影しているだけなのに理不尽だ」 何がいけないのか分かっていない修司であった。「あの~、そろそろ検尿……」 女子トイレの入り口に立ったままの美根子が、困ったような声を出す。「あ、はいはい、今行きます!」 美根子に呼ばれて、克哉はあわてて職員用の女子トイレに駆け込んだ。それを追いかけるようにして、修司も女子トイレの中に入っていく。「おおッ! これが女子トイレかッ!!」 ピンク色のタイルがふんだんに使われた男子禁制の部屋に立った修司は、感激の声を上げて回りを見渡すと、遠慮なくデジカメで当たりを写し始めた。「やめなよ。誰も入ってないけど、女子トイレで写真はまずいよ」 克哉は修司の学生服の袖を引っ張る。「そんなこと言ってもだな、めずらしいんだからしょうがないだろ? それとも矢島は珍しくないのか?」 カメラを覗きこんだまま、克哉に反論する修司。さすがと言えばさすがであるが、……誰も入っていない女子トイレって、そんなにも珍しいか?「珍しくは……、ないよ。だって昨日からここに入ってるし」 ちょっと恥ずかしそうに答える克哉。「えッ!? 追い出されなかったのか?」 ようやくカメラから目を離し、克哉に向かって振り向いた修司の顔は、本当に驚いていた。「追い出されたよ……。男子トイレから。やっぱり職員用とは言っても女子トイレに入るのは恥ずかしいから、昨日は職員用の男子トイレで用を足したら、外にいた男の先生に、『音がちょっとまずいから、君は女子トイレでしなさい』って、言われたんだもん」 克哉はほほを軽く朱に染めて修司に事情を説明した。(あはははは、大きかったものね。克哉ちゃんの音♪) すかさず茶々を入れる奈里佳。やはり大きな音とは、あの音のことなんだろうか?「ずるいなあ、音がするのは俺も同じなのに。やっぱり矢島は元々女の子みたいに可愛いからだろうな」 修司の言葉に、更にほほを赤くする克哉だった。
Jan 4, 2005
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「まあ、そのほうが確かにしやすいかもしれないわね。職員用のトイレには1つだけ洋式のトイレがあるから、そこでしたらいいわ」 すぐさま美根子の提案に賛成したのは、真美先生である。そのまま修司に向き直ると笑顔で促した。「じゃあ、そうします。矢島も行こうか?」 素直に返事をすると、修司は克哉を誘いながら保健室を出て行こうとする。「え、ああ、そうだね。行こうか……」 克哉も、どうせなら和式よりも洋式の方が良いかと思っていたので異存はない。「あ、ちょっと待って」 真美先生は2人を呼び止める。ドアに手をかける直前だった修司はその場に立ち止まったが、すぐに止まれなかった克哉は、先を歩いていた修司の背中にぶつかって鼻を打ってしまった。両手で鼻を押さえる仕草が可愛いかもしれない。(克哉ちゃんったら、どんくさ~♪) ちゃかす奈里佳。克哉自身も、今の自分をどんくさいと思ってしまったので、言い返すにも言い返せない。「何かまだあるんですか?」 小さくゴメンと克哉に謝りつつ、修司は真美先生に質問する。「ねえ、美根子。悪いんだけど、この2人に付いていってくれない?」 修司の質問には答えず、美根子に対して手を合わせてお願いする真美先生。右目で軽くウィンクをしているその顔はちょっと笑っているようにも見える。「付いてって……」 とっさにどう答えるべきか分からなくなった美根子。頭の中が白くなったらしい。「だから、こういう時の為に病院から派遣されて来たんでしょ? 美根子はさ」 笑顔の真美先生。それを聞いていた克哉と修司はわけが分からなくて顔を見合わせるだけだったが、美根子はハッとしたような顔つきになると、美根子なりに真剣な顔をして身体を緊張に包んだのだった。「そ、そうね。がんばらなくっちゃ!」 何をどうがんばるつもりなのか知らないが、美根子はその決意を口にした。その拍子に美根子の自己主張の激しい胸がブルンと揺れたのだが、それを見た真美先生はちょっと顔を引きつらせ、克哉と修司は顔を緩めたのだった。(は~、大きな胸よねえ。うらやましい? 克哉ちゃん) 奈里佳が見ている視界は、当然に克哉が見ている視界そのものなので、誰の胸がどう大きいということは説明する必要はない。(うらやましいなんて思ってないよ。もう、奈里佳は何を言ってるのさッ!) 見ていたことを知られている恥ずかしさを隠す為に、克哉はちょっと怒ったような言い方をした。(ま、私たちの胸は成長期なんだから、あんなおばさんには負けないから安心しなさいってことね) 何故か得意そうにそう言うと、奈里佳は克哉の頭の中に、奈里佳の胸が大きく成長した未来予想図のイメージを投影する。そのイメージ映像の信憑性はどうなっ指ているのかは分からないが。(おばさんっていうのは失礼だよ。せいぜいお姉さんって言ったほうが……) 何だか本質とはずれたところで奈里佳に反論する克哉。「じゃあ、私、行ってきます。あ、遠子ちゃん、あとよろしくね。私、この2人の面倒を見る為に、ちょっとトイレまで行ってくるから。さ、あなた達、行きましょうッ!」 そして遠子は真美先生と遠子にそう言い残すと、半ばあっけにとられている克哉と修司の手を引きながら保健室の外へと歩いて行った。残された他の男子生徒達はその様子を見ているだけだったが、そこに遠子から声がかけられる。「さ、じゃあ、皆さんもこの検査用紙を持ってトイレに行って来てくださいね」 改めて尿検査の案内をする遠子に促されて、部分的に女の子になっている男子生徒達がぞろぞろと保健室に最も近いトイレへと移動し始めた。「あの~、看護婦さん?」指 その頃、美根子に手を引かれて校舎の中を移動していた克哉は、遠慮がちに空いているほうの手を小さく上げると、美根子に話しかけていた。「なに? ええと……」 美根子は歩き続けたまま後ろを振り返らずに克哉に返事をしようとしたが、自分が手を引いている2人の男子(?)生徒の名前を知らないことに気づいたのだった。「矢島です。矢島克哉(やじま・かつなり)です」 一応、自己紹介をする克哉。律儀である。「ああ、ごめんなさい。私は津谷美根子(つや・みねこ)よ。よろしくねそれで、何だったのかしら? 矢島君」 軽く一度後ろを振り返り、克哉の顔を見てそう言った美根子だったが、そのまま前に向き直る。ずんずんと歩くそのスピードは弱まることがない。「職員用のトイレ、通りすぎちゃいましたけど」 後ろの方を振り返り、美根子に正面玄関入り口近くにあるトイレを指し示す克哉。「え、そうなの?」 それを聞いて急に立ち止まる美根子。何だか予測出来ない動きをするのが得意のようだ。「わッ!」 そして案の定、美根子にぶつかりそうになる克哉。何とかあやういところで衝突を回避したのだが、もつれた足が怪しげなステップを踏むことになった。もちろんその事情は修司も同じである。「とととッ!」「きゃっ、危ない」 修司は、克哉に比べるとやや落ち着いた動きの小さなステップを踏んだだけだったが、両手に克哉と修司をつないだままの美根子は、バランスを崩しかけた2人に左右から両手を引っ張られて転びそうになってしまった。やはり身体の重心が高いのであろうか?「ああ、びっくりした」 ようやく2人の手を離した美根子は、どきどきとする胸を押さえながら、克哉のほうを向いた。「びっくりしたのはこっちですよ。職員用のトイレはあそこです。あ、ちなみに僕は堀田修司(ほった・しゅうじ)です。看護婦さん」 克哉に続いて修司も正面玄関に近いトイレを指さす。「え、でも、あれって『来客用』って書いてありますよ」 トイレの入り口の上に飛び出しているプレートの文字を読む美根子。確かにそのトイレには来客用と書いてある。「それがうちの学校では職員用トイレってことなんです」 したり顔で説明する修司。そしてその横では克哉も修司の言葉を肯定するかのようにうなずいている。「あら、そうだったの。私は職員用のトイレはてっきり職員室の横にあるものだとばっかり思っていたわ」 舌を小さく出し、右手で自分の頭を軽く叩いて照れて見せる美根子。顔が赤い。「けっこう間違える人って多いんですよ」 気にすることないですよと、慰める克哉。その言葉を聞いて、美根子は気を取り直した。「なるほど、この学校じゃそうなっているのね。なるほど、なるほど。……じゃあ、それはそれとして行きましょうか。ええと、矢島君に堀田君、ついて来て下さい」 この仕事をやり遂げるという使命感に燃えた美根子は、2人の返事を聞かずにさっさと歩いてトイレの中に入ってしまった。……来客用の女子トイレに。
Jan 1, 2005
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