ちょっと本を作っています

ちょっと本を作っています

Jan 8, 2005
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カテゴリ: 本を作る
出版業界でメシを食う方法(その一)


出版社に勤めたい。編集者になりたい。そのような方たちからメールを頂くようになりました。その方法を一言では言えないものですから、私の場合どうだったのかを書いてみます。すでに長い年月が過ぎ去りました。参考にもならないかも知れませんが、興味のある方は読んでみて下さい。


編集者って?

「どうすれば、編集者になれますか?」

よく聞かれる質問だけど、うーん、答えづらい。

どのような本の編集をやりたいかでも変わってくるし……。


著者の書いた原稿を本の形にまとめるのが編集者だけど……。

形だけの問題でもないし……。

そりゃ様々な分野の知識があったほうがいいけど、それだけでもないし……。


しょうがない、自分を振り返ってみよう。

ただし、B級の編集者ですからね。私は。

こんな私でも編集者が務まったというお話です。


私が編集者になったきっかけ



それも学生時代に、アルバイトのつもりでした。そのまま社員になりました。

根が無精者の私です。卒業が決まっても就職活動をサボっていたのです。


最初の仕事は「商品管理」でした。何のことはない倉庫番です。

まー、生意気盛りでしたので、編集や営業にケチばかりつけていました。

そのうち、そこまで言うのなら編集をやってみろと異動になりました。


でも誰も仕事は教えてくれません。冷ややかなものです。

あいつ生意気だからお手並み拝見ってところです。

本が出来るまでの工程も、それこそ校正記号一つ知らなかったのです。


最初に手掛けた本

ドンと原稿を押し付けられても、何からやればいいのか分かりません。

皆が帰った夜中に、先輩編集者の棚にあった原稿と本を引っ張り出しました。

「うん、このように指定すればこのように組みあがるんだ」




バッチリです。見事に、私が思った以上の出来栄えでした。

でも何かおかしいのです。まさに私が思った以上に良く出来過ぎなのです。


翌日、印刷屋さんの営業マンにこっそりと訊ねました。

「あれ、誰か手伝ってくれたんですかね」

「いえ、指定して頂いたとおりですよ。何もしていません」


印刷屋さん今晩は



その日の夕方、印刷会社を訪ねました。

「あのー、この本をやってくれた現場の方に会いたいんですが……」


私も一応は、得意先の人間ですから丁寧に応対してもらいました。

でも現場の担当者は遠慮なんて一欠けらもありません。

「何? あれお前さんがやったの。ひでーなんてもんじゃなかったぞ」


「しょうがねーから、勝手に組み上げといた。文句ねえだろ」

「余計な指定なんて入れずに、原稿のまま寄こしゃいいんだよ」

「知ったかぶりして赤字を入れられちゃ迷惑だ。勉強しなおせよ」


「済みません。新人なもんですから、教えて下さい」

「誰が? 冗談じゃないよ。それくらい自分で考えろよ」

「だから、印刷の工程を教えて欲しいんです」


授業料は一升瓶

「馬鹿言うな。俺は渡りの職人だ。そんなことやってられるか」

「何ですか、その渡りの職人って?」

「おめーなー、それさえも知らないのか。潰れるよお前のいる会社」


「渡りってな、活字を何本組み上げて幾らって、出来高払いの職人だ」

「だから俺は、おめーと話しているだけで大損なんだ。もう帰ってくれ」

「済みません。じゃあ隅っこで見させて下さい。見るだけならいいでしょう」


「まったくもー、邪魔したらただじゃおかないからな。勝手にしろ」

私は、ポケーっと二時間ほど作業を見ていました。

それからこっそり抜け出して一升瓶とお寿司の折り詰めを買ってきました。


もしかしたら印刷の職人さんになったかも

「おめーもよ。いい根性してるよ。おもしれーか。見てるだけで」

コップ酒が効いたのか、十人ほどいた職人さんたちの笑い声が響き始めました。

「よっしゃ、あんちゃん。自分でやってみろ。先ずはヒロイだ」


活字を一本一本、棚から拾い出す植字という作業です。

その日から三週間ほど、毎晩出かけて行きました。

次には組版という作業です。拾った活字を一頁に組み上げる作業です。


「おめー、出版なんてちんけな商売やめちまえ。印刷の仕事を教えてやるよ」

「いい金になるんだから。腕のいい職人になれば遊んで暮らせるぞ」

結局は、一番最初に会った口の悪い職人さんが全てを教えてくれました。


以上は、今のオフセットの前の時代。活版印刷全盛の頃の話です。

一番難しい表組みや何段にも重なった数式さえも組めるようになりました。

編集へ異動して一ヵ月後、ベテラン編集者より私のほうが印刷通になりました。


まず行動を起こすこと、それが編集者の基本かもしれません

編集の技術を覚える方法は簡単です。見ればいい、やればいいだけです。

私の場合、仕事を覚えるための出費は一升瓶と折り詰めの寿司代金だけです。

それも、私はちゃっかりと残業料を請求したので、自腹は痛んでいません。


先入観を持たないことも編集者には必要なことのように思います。

私は出来るだけ編集仲間とは距離をおきました。

書店さんや営業のスタッフとは年中飲んでいてもです。


出版技術を覚えるためにエディタースクールに入ったことはあります。

でも三日目には辞めてしまいました。

印刷現場がどうなのかは勉強しましたが、それ以外には興味はありません。


人それぞれですから一概には言えません。

著者や新聞記者連中や雑誌記者連中とは、今も付き合っています。

それと本屋さんや出版取次の人たちとも。



しばらくはダラダラと昔話でも書きますかね。読んでも面白くないでしょうが、ちょっと思い出にひたってみます。


☆今日書いたのは後楽印刷という印刷屋さんでの思い出です。飯田橋駅から歩いて7~8分のところにありました。今から十数年前にその印刷屋さんも潰れたと聞きました。あの職人さんたちどこへ行ったのだろう。私より30歳くらい年上の人たちが多かったので、生きておられるとしても、いい年です。急に懐かしくなりました。今、私があるのも、この時出会った職人さんたちのおかげです。お鮨を折り詰めにしてもらったお鮨屋さんは、確か「金寿司」と言いました。まだあるのかな。美味しかったな、あのときのお鮨。






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Last updated  Jan 14, 2005 02:32:23 PM
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聖書預言@ Re:ネットを再開するぞーっ! と思ったとたん(04/28) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
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38万円で本ができた


第一章 もっと手軽に自分の本を作れたら


第二章 協力出版と懸賞募集の甘い罠


第三章 自分の本を作りたい理由を考えよう


第四章 本にする原稿をまとめよう


第五章 自分の本を売ってみよう


第六章 安く本を作る方法を考えよう


第七章 物書き稼業と編集者稼業の裏表


第八章 昨今の出版業界のお寒い事情


第九章 いまどきの本屋さんと物流事情


第十章 出版業界こぼれ話


【出版後記】


負けてたまるか


その1


その2


その3


その4


その5


その6


舞台裏からの独白


すぐそこの田舎暮らし


第一章 先住民/黒猫の『タンゴ』


第二章 山里「コンタ」発見


第三章 知らないってことは


第四章 竹の子で仲間を釣り上げる


第五章 森の天使の小さな落し物


第六章 小悪魔『チビクロ』参上


第七章 チビクロ砦とチビクロ王国


第八章 まったくもう、田舎暮しってヤツは


第九章 チビクロ、チビコゲへ変身中


第十章 隠れビーチで日向ぼっこ


第十一章 チビクロ、何処へ行こうか


第十二章 何で、お前まで行ってしまうの


第十三章 ムジナに見送られ、街へ帰る


エピローグ みんなで遊ぼうよ


両国・千夜一夜物語


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後編


はみ出し人生・出版屋稼業


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第二話 ちょっぴり生意気だった理由


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第四話 土木から資格試験へ


第五話 工学書転じて実用書に 


第六話 なぜかスキー書


第七話 退職、そして創業


第八話 行け行けドンドンの始まり


第九話 原稿は役員専用車で届く


第十話 スパイにされちゃった


第十一話 ただ酒、ただ飯、お土産は仕事


第十二話 閃いた


第十三話 出版から映像へ


第十四話 ヒットチャートに載っかった


第十五話 思えば、いろいろやったもんだ


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第二章 したたか女はイイ女


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第四章 私の出会ったイイ女列伝


エピローグ


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第二話 やっぱり巻き込まれてしまった


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