ちょっと本を作っています

ちょっと本を作っています

Jan 23, 2005
XML
カテゴリ: 本を作る
出版業界でメシを食う方法(その十五)

今日の話は、昨日の日記に書いた水の江滝子さんから始まった「芸能人と趣味」の企画が打ち切られる原因になったある本の話です。シリーズとしては終わってしまったのですが、その後も人の輪はどんどん広がっていきました。この日記も前の削除された分の再録です。『身も心も捧げた女は飽きられる』にも載せました。


結城美栄子さんの場合

「ね、いいでしょ。私、ここにこれを入れたいのよー」

結城美栄子さんは陶器の人形を作っていました。

昨日書いた水の江滝子さんのときと同じ、芸能人と趣味をテーマにした本です。


お年を召した方なら結城美栄子さんといえばピンと来るでしょう。

昔はNHK三人娘の一人としてドラマの常連俳優さんでした。

外交官の娘として育ち、イギリスのロイアルバレー団に所属したこともあります。


アキレス腱を切ってプリマドンナへの夢を断念。演劇の道へと進みました。

海外での生活が長く、劇団の入団テストの時に問題が読めなかったそうです。

いちいち試験官に問題を読んでもらったというエピソードがあります。




ともかく注文の多い人なのです。

彼女の作る陶芸の人形も異色なら、これほど注文の多い人も珍しい。


これじゃ実用書じゃないよ

ところが、私も男なんですね。上目づかいに大きな目で見上げられ、

「ね、お願い」を連発されると、全部従ってしまうのです。

気が付けば、彼女の独特の世界の作品集に仕上がってしまいました。


これでは私が企画を持ち込んだ先の出版社の意向と余りにも違いすぎます。

どうしようかと悩んでいると、「ね、お願い。ここもこうして欲しいのよ」

と、さらに彼女の意向を押し付けられる始末です。


お気に入りのデザイナーも自分で見つけてきてしまいました。

哀れにも私には抵抗の術が見当たりません。

彼女の持つ独特の世界への執拗なまでの執着、そして彼女の確信。




本が出来上がるまで、発注元の出版社に何も知らせず、本を仕上げました。

まさしく詐欺行為。製作費はもらってしまって、支払いに使ってしまいました。


半端じゃないんだよね

その出版社の専務は「うーん!」と言っただけで黙ってしまいました。

目の前にあるのは、私の企画書からは想像も出来ない代物です。

でも、ハンパではない出版物でした。




売れるかどうかは別にして、出版人としては文句の言いようもないような。

その本の書名は、「ビバ・サーカス(山海堂刊)」。


この本を出したことで、私の企画したシリーズは一気に終焉を迎えました。

企画書と丸っきり違う本を、相談もせずに印刷まで終わらせたのですから。

もちろんご本人、結城美栄子さんは上機嫌です。


お礼にご馳走をしたいからと、赤坂にある彼女のご自宅へご招待を受けました。

当日私は、社内の美人スタッフ二名を引き連れて、彼女のご自宅へ伺いました。

(当時私は面食いでしたから美人以外は採用しなかったのです)


私だけじゃなかった

「前の日からローストビーフを仕込んであるんですよ」

彼女の言葉に誘われて行ってみると、エプロン姿のご主人が出てきました。

「ウチの人、ローストビーフが得意なんですよ」


あーあ、やっぱりね。

ミュージシャンのご主人も、たぶんあの大きな目で上目づかいに見上げられて、

「ね、お願い。大切なお客様なの」

とか何とか言われて、気が付いたらおさんどんをやらされていたのでしょう。


でも、仇は取りました。江戸の仇を長崎で。

私、酔っ払って、彼女が焼いた自慢のお皿を割ってしまったのです。

「しょうがないわね。○○さんは」の一言でご和算です。


対処方法は簡単だった

後日、彼女の個展にお呼ばれしたことがあります。

今は別れてしまった家内と一緒に行きました。

お腹が空いたので食事に出たら、結城さんも一緒に付いてきました。


「ねえ、奥さん。私にご主人のスタイリストをやらせてくんない」

「ねえ、お願い。見違えるようになるから」

いつもの彼女の口ぶりです。誰にもノーと言わせないような。


私の家内の答えは簡単でした。

「ダメです。お断りします」

「私がいくら言ってもダメなんですから」

「ホント、いいかげんにして欲しいっていつも言っています」


結城さん、黙ってしまいました。

そうだこの手があったんだ。

何か言われたときに、理詰めで説得しようと思った私がバカだったのです。


魅力的な人ですよ。言うまでもないけど

結城さんの意向を、

「ダメです。企画と違います」と一言いえば、私は次の仕事も貰えたのです。

簡単な話でした。


でも凄いでしょう、結城美栄子さん。

自分の信念と自分の感性、そして自分の世界をしっかり持った人です。

私は今でも、彼女のハッキリとしたものいいに共感を覚えています。


インターネットで一度「結城美栄子」さんを検索してみてください。

彼女の世界を垣間見ることが出来ます。

私も少しはお役にたったようです。


結城美栄子さんの本で『芸能人と趣味』のシリーズは終わってしまったけれど、この本が新たな出会いをもたらしました。これも削除された前の日記に書いた分ですが、明日は人形作家「土田早苗」さんとの出会いを掲載します。このような様々な出会いがあったので、2月3日発売の『身も心も捧げた女は飽きられる』のネタにだけは不自由していません。さんざん振り回されましたからね、イイ女たちに。

つづく





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jan 23, 2005 11:13:20 PM
コメント(6) | コメントを書く
[本を作る] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

秦野の隠居

秦野の隠居

Comments

聖書預言@ Re:ネットを再開するぞーっ! と思ったとたん(04/28) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
KURADON @ Re:ネットを再開するぞーっ! と思ったとたん(04/28) わあっ❗️ いきなり KURADONさん とでた!…
マリア4415 @ Re:会おうね。関西の人、中国地方の人(08/05) はじめまして。突然お邪魔して申し訳ない…
秦野の隠居@ Re:よかった(04/28) のりのりさん ----- 完全復活です。 アメ…
のりのり@ よかった 久しぶりにのぞいてみたら、ご隠居さん本…
秦野の隠居@ 引っ越しました 楽天ブログを再開しようと思ったけど、ど…
秦野の隠居@ Re[3]:秦野の隠居です(04/28) パパイヤさん ----- 後ほどご連絡させて頂…
パパイヤ@ Re[2]:秦野の隠居です(04/28) 今、メールを送らせて頂きました! 上記の…
秦野の隠居@ Re[1]:秦野の隠居です(04/28) パパイヤさん ----- いつでも相談に乗りま…
パパイヤ@ Re:秦野の隠居です(04/28) 良かった。 本当に生きてらっしゃる!(笑…

Freepage List

両国の隠居の自慢話


テスト


画像の貼り付けかた


チェック


38万円で本ができた


第一章 もっと手軽に自分の本を作れたら


第二章 協力出版と懸賞募集の甘い罠


第三章 自分の本を作りたい理由を考えよう


第四章 本にする原稿をまとめよう


第五章 自分の本を売ってみよう


第六章 安く本を作る方法を考えよう


第七章 物書き稼業と編集者稼業の裏表


第八章 昨今の出版業界のお寒い事情


第九章 いまどきの本屋さんと物流事情


第十章 出版業界こぼれ話


【出版後記】


負けてたまるか


その1


その2


その3


その4


その5


その6


舞台裏からの独白


すぐそこの田舎暮らし


第一章 先住民/黒猫の『タンゴ』


第二章 山里「コンタ」発見


第三章 知らないってことは


第四章 竹の子で仲間を釣り上げる


第五章 森の天使の小さな落し物


第六章 小悪魔『チビクロ』参上


第七章 チビクロ砦とチビクロ王国


第八章 まったくもう、田舎暮しってヤツは


第九章 チビクロ、チビコゲへ変身中


第十章 隠れビーチで日向ぼっこ


第十一章 チビクロ、何処へ行こうか


第十二章 何で、お前まで行ってしまうの


第十三章 ムジナに見送られ、街へ帰る


エピローグ みんなで遊ぼうよ


両国・千夜一夜物語


前編


後編


はみ出し人生・出版屋稼業


第一話 私の出版屋事始め


第二話 ちょっぴり生意気だった理由


第三話 出版企画会議の話


第四話 土木から資格試験へ


第五話 工学書転じて実用書に 


第六話 なぜかスキー書


第七話 退職、そして創業


第八話 行け行けドンドンの始まり


第九話 原稿は役員専用車で届く


第十話 スパイにされちゃった


第十一話 ただ酒、ただ飯、お土産は仕事


第十二話 閃いた


第十三話 出版から映像へ


第十四話 ヒットチャートに載っかった


第十五話 思えば、いろいろやったもんだ


身も心も捧げた女は飽きられる


プロローグ


第一章 身も心も捧げた女は飽きられる


第二章 したたか女はイイ女


第三章 女の勘違い


第四章 私の出会ったイイ女列伝


エピローグ


ナタマメ狂想曲


第一話 なぜナタマメ茶を作ったのか?


第二話 やっぱり巻き込まれてしまった


編集後記


ご協力をお願いします


2


ちょっと振り返ってもらえませんか


リンクを貼って下さっている方一覧


ブログ仲間(その2)


自主制作出版日記


両国の年の瀬


セミナー日程


ブログ仲間が書いた本、作った本


工事現場で~す


アジアの片隅に中古パソコンを


隠居の店


究極の中国花茶


健康でいて欲しいから


原稿の書き方、本のまとめ方


私の家計簿


本作りネットワーク


隠居の引越し


リボンリボンさんと楽天


みんなの本作りサロン


両国の隠居とJPS出版局の作った本


個人出版(自費出版)実践マニュアル


東京新聞(2006年12月15日)


今までのブログ


こうして著者は騙される


製作費概算見積り例


出版物製作についての確認書


出版販売についての確認書


出版契約書


蘇れ、出版業界人


四六判並製(ソフトカバー)製作費早見表


四六判上製早見表


A5判並製早見表


A5判上製早見表


本作り概算料金早見表


無名著者のための販売戦略


テスト


秦野の四季


JPS出版局が手掛けた本



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: