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2021.07.18
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カテゴリ: 農学校教師時代
1924(大正13)年7月の日付不明の詩です。
「ほほじろ」は小鳥のホオジロでしょうか。
若者たちが、徹夜でガスエンジンを操作して、灌漑水を川からくみあげていたようです。
科学の力を使って、自然の恵みを確保し、干ばつという、自然災害に立ち向かう農村青年たちと、郷土に対する讃歌のようです。

(本文開始)

一五七
  〔ほほじろは鼓のかたちにひるがへるし〕
         一九二四、七、 、
ほほじろは鼓のかたちにひるがへるし

岩頸列はまだ暗い霧にひたされて
貢った暁の睡りをまもってゐるが
この峡流の出口では
麻のにほひやオゾンの風
もう電動機(モートル)も電線も鳴る
夜もすがら
風と銀河のあかりのなかで
ガスエンヂンの爆音に
灌漑水の急にそなへたわかものたち、
いまはなやかな田園の黎明のために
それらの青い草山の

古風な稗の野末をのぞみ
東のそらの黝んだ葡萄鼠と、
赤縞入りのアラゴナイトの盃で
この清冽な朝の酒を
胸いっぱいに汲まうでないか

水いろのそらの渚による沙に
いまあたらしく朱金や風がちゞれ
ポプルス楊の幾本が
繊細な葉をめいめいせはしくゆすってゐる
湧くやうにひるがへり
叫ぶやうにつたはり
じつにわれらのねがひをば
いっしんに発信してゐるのだ

(本文終了)




#宮沢賢治 #ほほじろは鼓のかたちにひるがえるし #干ばつ #ヒデリ





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最終更新日  2021.07.18 05:17:31
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