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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2023.09.02
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 バブル崩壊で不動産価格と株価の暴落が深刻な資産デフレをもたらし、バランスシートの悪化が経営を圧迫しました。


 これに異常な円高が追い討ちをかけ、国内需要が低迷しているのに輸出にブレーキをかける円高ではやってられませんでした。


 ”新冷戦の勝者になるのは日本”(2023年6月 講談社刊 中島 精也著)を読みました。


 ポスト冷戦時代は日本の長期低迷時代でもありましたが、米中対立を軸とする新冷戦時代になって、いままでの日本のピンチが逆に日本復活の大チャンスになるといいます。


 日本企業は積極的に海外への工場移転を進めましたが、ポスト冷戦でグローバル化の進展というタイミングに合致していました。


 この結果、日本経済はバランスシート悪化、円高、産業空洞化の三重苦に見舞われることになりました。


 ところがポスト冷戦が30年で終了すると、世界経済を取り巻く諸条件が一変しました。


 経済安全保障が重視されるようになり、グローバルーサプライチェーンの見直しが進行しています。


 新冷戦下の世界経済環境は新興国には不利ですが、逆に日本には追い風が吹くといいます。


 新冷戦と地球儀を俯瞰する安倍外交のコラボが結実して、TSMCの熊本工場進出が実現しました。


 加えてアベノミクスで株価や不動産価格が回復しバブル崩壊から30年が経過した今、日本経済を苦しめてきた三重苦は過去のものになりつつあります。


 まさに日本大復活の芽が見えてきています。


 中島精也さんは1947年熊本県生まれ、横浜国立大学経済学部を卒業して伊藤忠商事に入社し調査情報部へ配属となりました。


 1976年に日本経済研究センターに出向、1987年に伊藤忠商事為替証券部へ異動しました。


 1994年にifo経済研究所客員研究員(ドイツ・ミュンヘン駐在)、2006年に伊藤忠商事秘書部丹羽会長付チーフエコノミスト(経済財政諮問会議担当)となりました。


 2015年より丹羽連絡事務所チーフエコノミスト、2018年に福井県立大学客員教授となり今日に至ります。


 1980年代後半にゴルバチョフは新思考を提唱し、ソ連外交の根本的転換を推進しました。


 これを受けて米ソ間の首脳会談が定例化し、1989年のマルタ会談では冷戦の終結が宣明されました。


 続く東欧社会主義圏、軍事ブロックの解体、ドイツ統一、全欧安保協力会議のパリ憲章における不戦の誓いなどがおこなわれました。


 それまでの冷戦の主舞台となった欧州で、東西対決型紛争の条件がなくないました。


 このポスト冷戦時代は、日本がバブル崩壊の後始末に追われる最悪のタイミングでやってきました。


 ポスト冷戦は世界の労働力、資源、土地、マネー、技術が開放されたことから、物価の安定と生産性向上を受けて、世界貿易と投資が飛躍的に増大しました。


 インフレなき持続的成長が長きにわたり継続し、世界、とりわけ中国など新興国がその果実を享受しましたが、日本だけが蚊帳の外におかれていました。


 日本はバブル後遺症によるバランスシートの悪化、異常な円高、グローバル化による産業空洞化の三重苦に陥っていました。


 労働力など生産要素価格の下落で世界はディスインフレで心地よかったのですが、日本経済はさらにデフレが進行して潰されてしまいました。


 日本の製造業に深刻な打撃を与えたのは止まらない円高でした。


 大規模な為替介入と金融危機で一時的に円安に振れましたが、2000年代に入ると再び円高が続きました。


 リーマンショックでドルが底割れして、2011年10月に1ドル75円32銭の変動相場制導入以降の円の最高値をつけました。


 急激な円高は製造業の競争力低下をもたらしました。


 円高のボディーブローに耐えられない企業は工場閉鎖に追い込まれたり、中国やASEANへの工場移転を決断しました。


 産業空洞化に直面した地方都市は壊滅的打撃を被るところも出てきました。


 円高で体力が低下した企業は雇用カットか賃下げかの二者択一を迫られました。


 米国とは企業風土が異なる日本では大量解雇はしづらく、結果的に賃下げで労使共に妥協せざるを得ませんでした。


 賃金水準は1997年をピークに低下し、それから25年が経過してもいまだに名目賃金はピーク時を回復していません。


 失われた10年と呼ばれたように、ゼロ成長とデフレの時代はその後も長く続くことになりました。


 企業の多くは自主的に不良資産の縮小に努め、銀行は不良債権比率の縮小に務めました。


 これが幸いして2008年にリーマンショックが襲っても邦銀の経営は盤石でした。


 2000年から12年にかけての日本経済は実質成長率の平均が0.6%と超低成長、消費者物価の平均上昇率はマイナス0.6%と、バブル崩壊後にデフレにはまり込んでしまいました。


 デフレのぬかるみからなかなか抜け出せない状況が続いていました。


 このデフレを吹き飛ばし日本経済の再生を目指して総理にカムバックしたのが、安倍晋三さんでした。


 毛利元就の「3本の矢」にちなんだ政策は、第1の矢「大胆な金融政策」、第2の矢「機動的な財政政策」、第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」からなっていました。


 第1の矢と第2の矢は不況からの脱出を目的としたケインズ政策です。


 潜在成長軌道から下方に外れてしまった日本経済を財政金融政策を駆使して、とりあえず元の成長軌道に復帰させることを目指しました。


 円安は日本製品の価格競争力を高めるので輸出が伸びるはずですがおかしいです。


 何か原因があると思いながら考えを巡らしていると、空洞化が進んでいることに気がつきました。


 日本の供給力が落ちているのでは円安の輸出刺激効果は薄いのです。


 金融緩和を起点として、円安、輸出増加、生産増加という好循環メカニズムが働きません。


 第3の矢は潜在成長軌道の傾きをアップさせて、日本経済がより高い成長軌道を走ることを目標としていました。


 しかし、第3の矢は岩盤規制を貫通することができませんでした。


 安倍外交は世界に日本が自由主義、民主主義の守護者として信頼できるパートナーであることを認知させた8年間でした。


 日米同盟を基軸として、自由で開かれたインド太平洋を推進しました。


 その目標実現のために自らの防衛力を強化し、アペノミクスで経済再生を推し進め、地球を40周して多くの国との信頼関係構築に努めました。


 ウクライナ戦争を起点として民主国家と専制国家の新冷戦時代になり、国際緊張が高まりました。


 経済安全保障の重要性という見地から民主主義の同盟国と友好国は、互いにフレンドショアリングというグローバルサプライチエーンの再構築に動き始めています。


 安倍外交は日本がフレンドショアリングの拠点として海外から選択されるための基礎を築きました。


 その実例が台湾TSMCの熊本工場進出であり、日本に投資する海外企業の先駆けとして重要な役割を果たすことになるでしょう。


 その後も案件は目白押しで、日本が新しい半導体サプライチェーンの核になる可能性を示唆しています。


 実は安倍総理の地球儀を俯瞰する外交が最大の成長戦略ではなかったでしょうか。


 新冷戦と安倍外交のコラボが海外企業の日本進出を通じて、日本経済の再生に大きく貢献する予感があります。


 新冷戦時代への移行により日本経済を巡る環境激変は必至です。


 民主国家と専制国家の間でブロック化が進行し、世界の生産要素の供給と価格が大きく変わるからです。


 その結果、ポスト冷戦時代は新興国有利で日本不利でしたが、世界経済の条件が新冷戦では新興国不利で日本有利とコマが逆転していきます。


 グローバルサプライチェーンを見ても、西側の同盟国と友好国との間でフレンドショアリングの構築が進みます。


 日本が信頼されるパートナーとして、新たなグローバルサプライチェーンの一角を占めるのは確実です。


 いかにイノペーションを起こすかが課題であり、そのために先端技術分野への予算の優先配分は必須条件です。


 バブル崩壊以降、長きにわたって日本企業を苦しめてきた円高は終わりました。


 株価や不動産など資産価格がバブル期のレベルまで回復したことにより、バブル崩壊で悪化した企業のバランスシートも著しく改善しました。


 バブル崩壊以降の敗北主義的な内向き思考も遠のき、未来への投資という資本主義本来のアニマルスピリッツが戻りつつあります。


 日本大復活をもたらす条件は整ったと言えますので、あとはそれをうまく活かすために構造改革が不可欠です。


 そういう意味でイノベーション重視のアペノミクスの使命はまだ終わっていません。


 変化の時代は顧客ニーズ、価値観、企業間パワーバランス、流通、技術、規制等が大きく変化します。


 この様な時代にあっては既存の製品サービス、既存の販売方法、既存の開発・生産方法は変化に対応できません。


 変化の時代は、既存の強みが必ずしも強みではなくなり、逆に弱みになることさえあります。


 改革なくして成長なしは普遍の真理です。


 日本大復活は改革の志を持った政治家、経済人、ならびにそれを支援する我々日本人一人ひとりの意志の力にかかっているといいます。


第1部 ポスト冷戦の終焉(新冷戦を仕掛けた習近平/中国との対決姿勢を強める米国/プーチンリスクとウクライナ戦争/緊張度を増す日中関係)/第2部 新冷戦で変わる世界経済(冷戦の終結とグローバリゼーションの進行/デフレからインフレへ/新冷戦時代の世界経済/新冷戦は日本大復活の時代)







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Last updated  2023.09.02 07:36:23
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