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2007年12月05日
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Ribonさんより 雑誌「世界」10月号

この9ページに満たない小論は、小田実が岩波新書に書き下ろそうとしていた「世直し・再考」の序章に当たる部分である。1972年の岩波新書「世直しの倫理と論理」の増補改訂を計画していたのだが、その計画の途中から全面書き下ろしに変わったのだという。この部分はまだ胃ガンが発見される前の文章、自分としては当然「世直し」の最前線に立つ意欲満々だっただろう。この序章だけでも、それはよく伝わる。

文章そのものは、図書館で読むか、やがて出版されるであろう遺稿集で読んでいただくとして、私の印象に残った部分を紹介したい。

小田実は市民を「小さな人間」だと位置づける。その「小さな人間」が「大きな人間」に対して反逆、勝利する瞬間を幾つか想起する。そのひとつが 「1945年のイギリス国政選挙で、大半が「小さな人間」のイギリス市民が、それまでイギリスを強力、強引に引きずって世界大戦での勝利に導いたチャーチル首相の保守党を斥けて労働党を政権の座につけたことです。」 と言う。世界史に疎い私は知らなかったのだが、ポツダム宣言の主役の一人であるチャーチルは実は1945年の段階で歴史の表舞台から身を引いていたのである。映画の「シッコ」を見た方なら、思い出すと思う。アメリカの現在とイギリスの現在を大きく分けているのは、国民皆保険の制度である。イギリスはそれを大戦後の皆飢えに苦しんでいたときに実現していて、出てきたイギリス国民はそれを非常に誇りに思っていたのだ。「小さな人間」の勝利の前例はそのように幾つかある。

しかし、小さな人間はなかなか立ち上がらない。それはこのブログを読んでいる多くの人が感じていることなのではないか、と思う。小田実はそれに対して、このような重要なことを書いていた。

彼のべ平連の経験では 、「日本の運動も、アメリカの運動も、決して当初から派手に大きく盛り上がったものではありませんでしたし、中だるみの時期もあって、わずか十数人ほどしかデモ行進に来なかったこともよくありました。」「その1966年2月と言う時点では、彼らのベトナム戦争を「いくらなんでもひどすぎる」事態だとする認識は、まだアメリカ社会全体に広がっていなくて、彼らはまだまだ少数者、その意味では「前衛」でした。しかし彼らの「いくらなんでもひどすぎる」認識は、ついに社会全体に広がり、わずか3年後の1969年11月15日には全米各地で参加者の数万人、数十万人規模の集会、デモ行進が行われるほどのものになっていました。」

「ひどすぎる」から「いくらなんでもひどすぎる」に社会全体が移ったときに、小さな人間」は勝利する。と、小田実は言うのだ。



今現在、いろんなところで、働く現場で、ネットカフェで、米軍基地建設予定地で、薬害現場で、「小さな人間」が「いくらなんでもひどすぎる」と呟いている。呟く現実は確実にある。その声をいかに大きくするか、ほんの少しでもブログが役に立てばいいと思う。





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最終更新日  2007年12月06日 00時06分10秒 コメント(6) | コメントを書く


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