再出発日記

再出発日記

PR

フリーページ

お気に入りブログ

源氏物語〔12帖 須磨… New! USM1さん

ポピュリズム?? New! 七詩さん

モダン・トーキング New! はんらさん

イ・ウォンテ「対外… New! シマクマ君さん

『華僑二世徐翆珍的… New! Mドングリさん

カレンダー

2012年06月19日
XML
カテゴリ: 邦画(12~)
今月の労働組合機関紙連載の映画評です。ホントは別の作品を準備中だったのですが、新藤監督死去の一報を受け、急遽変えました。この一文を書くに当たって「裸の島」(1960)を見ました。ユーチューブで全編見ることが出来ます。まさに名作です。

「一枚のハガキ」
5月29日、新藤兼人監督が老衰で亡くなった。享年100歳、大往生である。歳もそうだけど、作品的にもきっちりと「仕上げ」をして逝かれた、と思う。今回は急遽、監督の最後の作品で集大成、昨年度キネマ旬報第一位「一枚のハガキ」について述べたいと思う。
上官の引くくじ引きで100人いた部隊で6人のみ生き残り、戦後も居場所がなくなってしまったひとりの男と、最初の夫も戦地で死亡、直ぐに弟と結婚させられるも招集されて死亡、その両親も死亡し、独りになった農家の嫁。二人が最初の夫に託されたハガキが縁で出会う話である。
監督の体験が元になっているとは言え、リアリズムでは無い。戦中の農村の出征と葬式の場面を四回、全く同じアングルで同じように描いている。その他、わざと前衛舞台のようなオーバーで激しいセリフのやり取りもある。かなりいろいろな試みをこの作品でしているのである。
毎朝のように孫に「生きてる?」と言われながら起こされ、やっと撮影・監督した作品なのであるが、しかし出来上がった作品は、驚くほど若々しい。
戦争に翻弄され、ボロボロにされながらも、それでも強(したた)かに生きる「庶民」。監督が一貫して追求してきた貧しくても助け合う「家族」の姿と「反戦」、二つが分かち難く強烈に観客に突きつけられる。
他人の引いた 「くじ運」で生き残った男は、「くじ運」が悪くて寡婦になった女と生活することを自らの意思で決意する。「これがワシの最後のくじじゃ」と。
「ここを畑として、一粒の麦を蒔こう」
掘っ建て小屋の前に広がる黄金の麦畑。夫婦二人で運ぶ小川の水。最後はこの場面で終わる。これは映画好きならば直ぐに連想するのであるが1960年の「裸の島」(モスクワ映画祭グランプリ受賞)の冒頭の場面のオマージュだ。瀬戸内の島を舞台に、夫婦と2人の息子との厳しく辛い労働と暖かい家族の日常を、一切セリフを無しに描いた名作である。主演は乙羽信子。最後の場面を、自らの独立プロの代表作と最愛の妻の作品に回帰する形で終わらし「これで良し、これで良し」と監督は呟いたのではないか。まさに見事な「おわり」でした。(11年新藤兼人監督作品、大竹しのぶ、豊川悦司主演、レンタル可能)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2012年06月19日 23時55分31秒
コメント(5) | コメントを書く
[邦画(12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ 自然数の本性1・2・3・4次元で計算できる) ≪…三角野郎…≫は、自然数を創る・・・  …
永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?
ポンボ @ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) お元気ですか? 心配致しております。 お…
むちゃばあ@ Re:そのとき 小森香子詩選集(08/11) はじめまして むちゃばあと申します 昨日…

バックナンバー

・2024年11月
・2024年10月
・2024年09月
・2024年08月
・2024年07月
・2024年06月
・2024年05月
・2024年04月

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: