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2012年07月01日
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カテゴリ: 中江兆民
津山の洋学資料館には、ずらりと薬草になる花々が植えられていました。ベニバナはちょうど今の時期に咲いているようです。乾燥した花を薬草に使うということ。効用は血行促進作用。他に染料や食用油に使われることも有名。

6759紅花.JPG
「三酔人経綸問答」中江兆民 岩波文庫
時の政策を批判する時に、批判ばかりしていたのでは良くない。対案は持つべきではある。しかし専門家ではない市民の身、原発政策や経済面の複雑な論議に入っていくと埋没してしまって抜け出せなくなる。よって、一番根幹の論議とは何かを考える。根幹を押さえて置くと、結論は直ぐに出るだろう。すると、結局はアメリカとの関係をどうするのか、というところに行き着くのである。それは即ち日本の外交政策をどうするのか、というところに行くだろう。だから憲法9条をどうするのかということは、世の中ことを論ずる時には必要不可欠だし、中国脅威論云々というのは、基本的には決して無駄な論議ではない。

しかし繰り返すが、専門家ではない市民の身、脅威論等の細かな軍事比較などしては居られない。良いのは、物事の最初に立ち返ること。グランドデザインを決めた明治の論議をみることだろう。

格好のテキストがある。それが本書である。原文と現代語訳の両方があり、訳文は現在に至っても多分最高峰である。

三者三様の立場から意見を闘わして方向を探るのは、空海の「三教指帰」から始まり良い方法である。 私はかつて真似の戯れ言をしたことがある

紳士君は「民主政治」の立場をとる。(←共和主義に近い)そうなって「自由平等」になれば、軍備や戦争は必要ではなくなる。学芸も栄え、道徳も高尚になる。万一他国が攻めて来たら、主張すべきことは断乎として主張し、「弾を受けて死せんのみ」と答え豪傑君の失笑を買う。

豪傑君はどうか。争いは動物にとっても人間にとっても避けられないものであるだけでなく、政治家や軍人にとっては楽しみである。恋旧家と好新家が対立するが、恋旧家は社会の「癌腫」だから、それらをアジアかアフリカの大陸に送り、小国を大国にする方法を構ずればよい。そのことにいま着手しなければ、欧州諸国はかならずアジア侵略を開始するだろう。という。

詳しくは読んで頂くとして、現代の我々に最も傾聴に値する論は南海先生の論だと私は思う。



さて、外交である 。「もし彼らの軍備拡張が小規模であるならば、あるいは爆発するかもしれないが、大規模に軍備拡張しているから、爆発することはあり得ないのです。」 これは中国脅威論、昔ならソ連脅威論にあたるだろう。それでも、もし攻めてきたとしたら専守防衛に尽くすしかない 。「わがアジア諸国の兵隊は、それで侵略しようとする時には不十分だけれども、それで防衛するには十二分なのです。」「二つの国が戦争を始めるのは、どちらも戦争が好きだからではなくて、じつは戦争を恐れているために、そうなるのです。」「要するに、外交上の良策とは、世界のどの国とも平和友好関係を深め、万やむ得ない場合になっても、あくまで防衛戦略を採り、遠く軍隊を出征させる労苦や費用を避けて、人民の重荷を軽くしてやるよう尽力してやること、これです。」

この結論に対して紳士君、豪傑君共に「少しも奇抜なことはない。今日では、子供でも下男でもそれくらいのことは知っています」と笑ったが、果たして現代日本の若者はそういう水準だろうか。自衛隊は果たしてこうなっているか、知っているだろうか。(←じゃあ、お前は自衛隊を認めるのか、と聞かれたならば、私は「安保条約を廃棄し、自衛隊を一旦解体し本当の自衛隊になれば認める」と言おうと思う)

専制から立憲君主制に移り、やっと民主制に移りつつある現代(移ったとは決して言えない)、最も現実的なグランドデザインはこうだ、と私も思う。現実的だけれども、未だ現実化されていないのが、日本の不幸なのである。





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最終更新日  2012年07月01日 23時41分26秒
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