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2014年03月18日
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テーマ: 本日の1冊(3688)

「自衛隊協力映画」須藤遥子 大月書店
ちょっと型苦しいまでに社会学的立場から自衛隊が協力して作られた映画を研究した本。しかし、重要な指摘が幾つもあり、知らなかったことも多く、良書だった。

氏の問題意識は明確である。その協力実態は知られてないことが多く、規模(制服からイージス艦まで)も形態(なんと原則無料!)も知らなかった。その協力根拠は明文化されており、初めて読んだ。文化政策としての、国家権力の「日本」「日本人」「日本文化」に対する構築・再構築・固定化、それにすり寄る文化産業に対してもメスをいれている。しかし、その内実は複雑。単なるブロパカンダ映画のみに協力をしていない(「自衛隊色を表面に出さず」という基準もある)。それは、作品の完成度がなければそもそもプロパガンダになり得ない反省から来ているという。これらの特徴はアメリカの協力基準ともいろいろ違い、興味深かった。その他、検閲の問題等もある。

各作品に言及する。
「ゴジラ」平成シリーズ(16-22作)とミレニアムシリーズ(23-28作)。自衛官が人殺しをせずに実戦出来る、ということで、「ゴジラ映画は自衛隊にとり聖戦」らしい。
99年12月公開の 「ゴジラ2000ミレニアム」 の頃から、リアルな自衛隊として脚本の注文が増したという。 「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ東京SOS」(2003) では、このころには有事防衛のための機龍(メカゴジラ)の登場や、ゴジラ対処のための閣議シーンを何度も挿入、また首相の「私には国民を守る義務がある」「我々を守るために戦っている仲間を見殺しには出来ない。我々は臆病者ではない!」という台詞を言わせるなど、小泉人気のもとでかなり意識された脚本が作られたらしい。
なんと 「ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃」(2001) の自衛隊協力では、憲法9条を改正した「防衛軍」が事前シナリオに登場していたために、協力できなかったらしい。このころは自衛隊の方が慎重だったのか。


「ガメラ2」 では、陸・海・空すべての自衛隊が協力している。「自衛官が主役になる」「ガメラ(善)と自衛隊(善)が協力して宇宙から飛来した生物レギオン(悪)から日本を守る物語」というコンセプトを自衛隊が大きく評価した。金子監督は「怪獣映画というのは、戦争映画の変型」だと認識する。「戦争のような状況になった人々を描く」。そのことの是非はともかくとして、本当に敵がきた時のシュミレーションとして、果たしてきちんと描けているのか。私はもう一度観て置く必要を感じた。

第八章「現代の自己犠牲」の 「ミッドナイトイーグル」 論は重要である。

第十章「自衛隊協力映画の太平洋戦争」の中にこういう一節がある。
アーロン・ジェローは「男たちの大和/YAMATO」は「反戦映画」という名目にもかかわらず、すべての日本人が見習うべき無償の愛国心を示した好例として右翼系の評論家から評価されており、この作品では「亡国のイージス」や「ローレライ」にも共通するように、命と生存を肯定する一方で、戦後の日本の再生を死と敗戦に依拠させるような矛盾するナショナリズムが見られる、と指摘している。これは、「神風特攻隊員を含む、未来のために命を捧げたすべての先祖に感謝するという主張」が、「日本の戦後の高度成長を犠牲死や英雄死と直接結びつけるという形で、新旧のナショナリストの中に復活している」というシュテフィ・リヒターの指摘とも重なる。(243p)

これは、13年公開映画でおそらく二位につくであろう 「永遠の0」 にそのまま当てはまるだろう。

2014年3月7日読了





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最終更新日  2014年03月18日 11時12分48秒
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