再出発日記

再出発日記

PR

×

フリーページ

お気に入りブログ

源氏物語〔34帖 若菜… New! USM1さん

国旗損壊と皇室典範… New! 七詩さん

よしくんのビーフシ… New! はんらさん

街道をゆく3:河内み… New! 天地 はるなさん

映画の時間 カリン… New! シマクマ君さん

カレンダー

2017年03月24日
XML
テーマ: 本日の1冊(3717)



生協シリーズ三作目。委託配達労働者の労組結成物語と青春を描いた 「ユニオン!」 、女性労組専従者を主人公にした 「走り出す」 と、どちらかと言えば明るいトーンで進んで来た世界が、今回は30年来のベテランの正規労働者を主人公にした話で少し会話も少なくなって内省的になった。

佐々木真一は、生協の共同購入のトラック配達の途中に、5年先輩の伊達さんらしきホームレス姿を見つける。伊達さんはかつては一緒に生協の夢を語った上司だった。バブル景気の後、投資失敗のツケを支払わせる格好になった現場の労働強化の結果、伊達さんは45歳の時に課長職のまま配達担当に戻り、2005年ごろ(?)退職する。しばらくして、離婚して荒れた生活をしているという噂が入る。

その夜、真一はもう一度見つけた場所に行って件の男を追う。しかしハッキリわからないまま。

そんな一コマを描いた作品である。

狙いはわかるような気がするのだが、この内容を14頁に収めるのはキツかったかもしれない、と思った。伊達さんも、真一も、生協の進歩的な所に惹かれて入協しているが、全体的な情勢と生協の経営戦略、さらにはそれを批判的に見る視点を、なぜ真一の視点として獲得出来ているのか、それとも正規労働者はみんなそんな視点を持っていたのか、説明が不足している(真一もいっとき本部勤務だったという一言はある)。これら生協の俯瞰的な(非常に鋭い)説明は、伊達さんの退職には必要な情勢説明だったのかもしれないが、小説としてはわざとらしく見えるのである。

全51巻という壮大なエンタメ文学として、私は北方謙三の「大水滸伝シリーズ」を愛読している。何処か、それと被るような気がしてならない。最初の「水滸伝」は、英雄108人が宋の国に叛旗を翻し、戦いに次ぐ戦いで、英雄たちの半数以上が死ぬ。その波乱万丈の物語が圧倒的な読者を獲得した。次の「楊令伝」は、革命集団梁山泊が遂に宋を倒し、南宋に追いやり、物流だけが支配する、帝を戴かない自由国家をつくる。そしてそれが建設途中で崩壊する話だった。現在読んでいる「岳飛伝」(4巻まで)は、結局楊令や梁山泊の目指したものは何だったのか、登場人物たちが行動しながら思い悩む話になっている。北方謙三は、最初から水滸伝を南米キューバ革命に模して描いてきたといっている。だとすれば、これは壮大な革命の夢と挫折を重層的に描く物語になるだろう。北方謙三のすごいのは、筋肉バカはバカなりに、リーダーはリーダーなりに、敵方は敵なりの理屈を、状況説明をほとんど使わず、会話だけで話を作っていることだ。もちろん大長編だから出来ることである。エンタメとして成立する様々な仕掛けも、大長編だから出来たことだろう。

生協という「未完の革命」を重層的に描く物語として、この三作だけではなく、他にも産まれることを願います。出来たら、エンタメとして。



2017年3月20日読了





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2017年03月24日 12時04分21秒
コメント(4) | コメントを書く
[読書フィクション(12~)] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

キーワードサーチ

▼キーワード検索

コメント新着

聖書預言@ Re:のろいではなくて呪いの話(11/01) 神の御子イエス・キリストを信じる者は永…
背番号のないエースG @ 関東大震災 「福田村事件」に、上記の内容について記…
ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな@ 自然数の本性1・2・3・4次元で計算できる) ≪…三角野郎…≫は、自然数を創る・・・  …
永田誠@ Re:アーカイブス加藤周一の映像 1(02/13) いまはデイリーモーションに移りました。 …
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
韓国好き@ Re:幽霊が見えたら教えてください 韓旅9-2 ソウル(11/14) 死体置き場にライトを当てたら声が聞こえ…
生まれる前@ Re:バージンブルース(11/04) いい風景です。 万引きで逃げ回るなんて…
aki@ Re:書評「図書館の魔女(4)」(02/26) 日本有事と急がれる改憲、大変恐縮とは存…
北村隆志@ Re:書評 加藤周一の「雑種文化」(01/18) 初めまして。加藤周一HPのリンクからお邪…
ななし@ Re:「消されたマンガ」表現の自由とは(04/30) 2012年に発表された『未病』は?

バックナンバー

・2026年06月
・2026年05月
・2026年04月
・2026年03月
・2026年02月
・2026年01月
・2025年12月
・2025年11月

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: