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2017年06月28日
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「自由民権運動〈デモクラシー〉の夢と挫折」松沢裕作 岩波新書



私も、読みながら、様々な所で、「同じ轍を踏んでいる」と思う所や、「ここは、昔の方がすごかった」と思う所があった。

もちろん、著者の言うように、ここから無理やり教訓を引き出したら本末転倒にはなる。「しかし、遠く離れた過去であるがゆえに、私たちは、運動というものが否応なく抱えてしまうあれこれの問題や、運動が広がっていく時にそれをささえるものはなんなのかといったことを、より一般的な形で、より冷静に受け止めることはできるだろう。」(以上215-216p)という意見には大いに同意する。

現代運動に対する著者の評価は、おそらく私とは違う。また、あまりにも自由民権運動のリーダーたちの動機を、その権力志向に焦点を当て過ぎているとも思う(その視点は新鮮ではあったけれども)。数行で終わった植木枝盛や中江兆民の評価がほとんどなかったのも不満であるし、高知立志社の役割も過小評価されている気もする。

そのことに留意した上で、現代の運動に刺激を貰った所の1部をメモする。
○自由民権運動はポスト「身分制社会」を作り出す運動だった。
←その意味では現代は終身会社身分制が終わろうとして、その歪が左右に分かれているのかもしれない。自由民権運動とは違い、左翼はその不満分子を大きく吸収することに失敗している。

○官憲によって「弁士中止」になる演説会はかえって、弁士と観衆の一体感を高め、一種のエンタメになっていた。
←こういう手法は、現代も通用する。例えば、秘密保護法で知らされていない秘密を暴くYouTubeを開設する。観衆は「いつ逮捕されるのか」とドキドキするだろう。

○「愛国交親社に加入すれば二人扶持の棒禄が支給され、さらに腕力あるものは帯刀が許される」「税金が免除される」「国会が開設されると、全社会の財産は平等に配分される」等々の「参加=解放」型幻想で貧民を取り込み、一地域の半分が社員という現象が起きた。これが自由民権運動が一部活動家や都市知識人の運動にとどまらない広がりを見せた。この受け皿となったのは「私立国会論」である。
←著者はここに民主党の失敗を思い出しているのかもしれない。もちろん性格は大きく違う。ただ教訓はある。

○国会論と憲法構想の意義。
←この辺りの自由民権運動と政府の一日ごとのせめぎ合いは、見るものがあると思う。判断の遅れ等々のことがなければ、もっと自由民権運動の憲法構想を固めることが出来たかもしれない。運動のスピードの重要性は、現代も、現代こそ、重要である。

○秋田立志会の激化事件はスパイによって起こされたか、否か
←真偽は明らかにされていないが、これは共謀罪が通ったいまや、現代こそ、これから気をつけなければならない。著者は加波山事件を追い詰められた者が起こしたものと決めつけているが、私は短絡的と思う。

自由民権運動は、ポスト身分制社会という背景と共に、新聞という新しいメディア誕生を背景として拡大した。そのことの分析は、ここにはほとんどない。また、運動する側に立つ分析は少ない。例えば板垣や後藤のような俗物に任せるのではなく、植木枝盛がもっと生きて活躍していたら等々の分析はここにはほとんどない。

それらを含めて、「新しい運動の季節」たる現代に、自由民権運動は新しい歴史的教訓の宝庫だと思う。

2017年6月読了





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最終更新日  2017年06月28日 18時08分43秒
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