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2021年12月28日
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テーマ: 本日の1冊(3697)


蓑虫山人‥‥ 。絵の技術にはムラがあり、立派な人物でもなければ有名でもない。定職にも就かず、各地で人の好意に甘え、勝手に遺跡を発掘し、変な格好をして変な行動をして、ー死に方に立派もなにもないものだがー風呂上がりにのぼせて死んでしまったような人物だ。(28p)

何故、こんな人物のために、こんな立派な書物を作ったのか?図版と写真が非常に豊富。雑誌「Discover Japan」連載をまとめた。

要は好奇心の塊なのである。旅が好きで、たまたま出会った縄文遺物が好きで、勝手に発掘する中で、明治20年、亀ヶ岡遺跡の最初の紹介者にもなる。あの国宝級の遮光土器(宇宙人の姿をしたヤツ)が出た遺跡である(おそらく蓑虫山人が発掘者)。そういうわけで、縄文時代のフリーペーパーを10数年前から作ってきた望月昭秀さんにしてみれば、他人のようには見えないのだろう。私も、とても親近感が湧いた。

幕末、岐阜県の豪農の家に生まれ、家を飛び出し、放浪の人生を送る。池大雅や渡辺崋山、鉄斎などの南画を見様見真似で描いていて、絵日記を残している。俳諧も好きだった。若き日は勤王の志士の真似事?もしている。大ボラ吹きなので眉唾モノなのだけど、西郷隆盛と月照の心中を助けたのは自分だと言っているらしい。でも絶対ウソとも言い切れない。ともかく、現代ユーチューバー顔負けの「やってみよう」精神に溢れている。また、南画の絵はお世辞にも美術品とは言い難いが、味があり、現代流行りのマンガエッセイのように感じる。読んでいくうちに誰でも蓑虫山人を好きになってゆく。不思議な本だ。

後書きを読むと、意外にも写真家・田附勝さんの方から企画を持ち出したのだという。放浪して、地方の素封家と仲良くなって、観光地をプロデュースして、博物館を作る夢を生涯持つ。対象者の懐に飛び込むことを常とする写真家の田附さんとしては、なんとなく通じるところがあるのかもしれない。

有名ではないけど、無名じゃない。
あゝこんな風に人生を送れたら、どんなに良いだろ。





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最終更新日  2021年12月28日 11時02分51秒
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