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ともに罪を背負ってきた日高と朔也。彼らの関係は、「白夜行」でいうならば、雪穂と亮司の関係に似ています。そして、2人の罪を知る望月の立場は、「白夜行」でいえば、笹垣(武田鉄矢)の立場と同じです。これまでは、雪穂=望月、亮司=日高だと解釈していましたが、それは、おそらく違うのですよね。◇亮司は雪穂に、「あなたは俺の太陽だった」と言いました。日高と朔也こそが、文字どおり「太陽」と「新月」の関係にあり、彼らのあいだに立つ望月は、文字どおり「満月」の象徴なのですよね。◇当初、《天国》と《地獄》というのは、《望月》と《日高》の関係を意味している、と思われました。つまり、善と悪の対比を意味してるように見えた。しかし、そうじゃない。おそらく天国と地獄というのは、異なる運命をたどった《日高》と《朔也》の関係を意味している。つまり、それは幸福と不幸の対比なのです。◇「白夜行」の最終話、雪穂と亮司は、歩道橋のもとで別れました。そして「天国と地獄」の物語は、日高と朔也が歩道橋で別れたところから始まっている。おそらく森下佳子は、2人の運命に何らかの決着をつけようとしています。
2021.03.14
たぶんコロナの影響だと思うけど、今季は橋部敦子のドラマが2作放送されてるので、ついつい見比べています。テレ朝の「モコミ」のほうは、いわゆる《僕シリーズ》の女性版って感じで、正直、今までの焼き直しという印象もあります。一方、フジの「知ってるワイフ」のほうは、韓国ドラマのリメイクということもあり、従来の橋部作品とはだいぶ趣きがちがうし、物語のダイナミズムがかなり激しい。◇しかし、2つのドラマには共通性もあって、どちらも主婦に対して厳しいのですよね。「モコミ」でいえば母親役の富田靖子。「ワイフ」でいえばモンスター化した広瀬アリスや瀧本美織。彼女たちは、つねに夫や家族に苛立っていて、自分の価値観を周囲に押しつけては責め立てます。彼女たちは、ほんとうは被害者でもあるんだけど、それにもまして加害者としての面があぶり出されている。おそらく、女性の視聴者の多くは、つい主婦の側に同調してしまうので、夫や家族のほうに「非」を見ようとするけど、橋部敦子は、そのような一方的な見方を許さないのです。◇橋部敦子の脚本は、主婦だけでなく、どの登場人物に対しても厳しいですね。一方を悪者にする描き方ではなく、どちらが間違っているとも言いにくい描き方をしている。それは、視聴者にとっては、ちょっとフラストレーションのたまる描き方だし、もっと単純な善悪の図式を望む視聴者は、このフラストレーションを脚本家のせいにしたり、場合によっては韓国社会のせいにしたりしてるようです。しかし、単純でないところにこそリアルがあるわけで、それは脚本家のせいでも韓国社会のせいでもありません。それが現実です。2つのドラマはSFファンタジーなので、最終的にはSF的な解決が与えられるのかもしれませんが、それでもなお、物語で示された困難なリアリティは、視聴者の実際の生活に投げ返されることになります。そういう厳しさがある。◇◇ところで、今季は、主演女優賞の最有力候補として、池脇千鶴と広瀬アリスの名前が挙がるはずです。わたしとしては、綾瀬はるかも素晴らしいと思うのですが、彼女の場合は、もう十分に評価が確立してますから、やはり今季は池脇千鶴か広瀬アリスに絞られるでしょう。わたし自身は、「知ってるワイフ」の広瀬アリスの演技にかなり驚いてて、今回は大倉忠義とのW主演賞もありえるんじゃないかと思ってる。◇正直、わたしは、これまで広瀬アリスに対して、「コメディ女優」のレッテルを張っていました。パワフルで面白い役には向いてるけれど、ストレートな恋愛ドラマには不向きだと思っていた。でも、その思い込みは、みごとに覆されました。もし、わたしが、このドラマの制作者だったとしても、まず大倉忠義を主演にするなど思いつかなかったろうし、まして広瀬アリスをヒロインにしようとは考えなかったと思う。かりに候補に挙げられたとしても、わたしなら、たぶん広瀬アリスと瀧本美織の役を逆にしたはずだし、大倉忠義と松下洸平の役も逆にしてしまったかもしれない。そのくらい、大倉忠義と広瀬アリスの主演という発想は、かなり奇抜で冒険的なものだったと思います。でも、蓋を開けてみれば、この配役は大当たりでした。このキャスティングを考えた人はお見事です。◇わたしは朝ドラの「わろてんか」のころから、広瀬アリスの演技を目にするようになりましたが、考えてみると、彼女はどんな役でも魅力的に演じていて、まったくハズレがないです。思っていた以上に、演技のキャパが広いのかもしれないし、もしくは作品の選び方が上手なのかもしれません。↓韓国版
2021.03.12
天国と地獄 〜サイコな2人〜。第7話まで来て、奄美のシヤカナローの花と丸い石、被害者の名前の数字と抜けた歯の完全収集。まだ未回収の謎は散らばってる。森下佳子の物語の構造も、まだはっきりとは見えてきませんが、おそらく、今作は、なんらかの意味で、「白夜行」と「JIN−仁−」の変奏なのだと思う。◇まず「JIN−仁−」には、《階段落ち》と《双子》の要素がありました。満月の夜に階段から落ちると、現代の南方仁は、幕末の南方仁に入れ替わる。そして脳内から摘出された胎児型腫瘍は、いわゆるバニシングツインであり、すなわち「生まれなかった双子」でした。いっぽうの「白夜行」には、《太陽と月》や《歩道橋》の要素がありました。亮司と雪穂が「太陽のもとで歩く」という夢は、黄昏時の歩道橋で交錯しつつも破れ、結局、彼らの運命は月の支配から逃れられません。◇ちなみに、大林宣彦の「転校生」は、階段落ちからの男女入れ替わりの物語であり、新海誠の「君の名は。」は、黄昏カタワレ時の男女入れ替わりの物語なのですが、両者に共通していたのは、思春期の男女が異性の体を手に入れるという、淡いエロティシズムでした。しかし、今回の「天国と地獄」には、そうした側面が希薄です。なぜなら、そもそもゲイである日高陽斗には、女の体への関心がほとんどないからです。つまり、これは「男女」の入れ替わりの物語というよりも、やはり「善悪」の入れ替わりの物語なのであり、もっといえば、人間の運命が善と悪へ分岐するまでの、本来なら代え難い「境遇」の入れ替わりの物語なのです。そして、そこに、自分であるかもしれなかった「双子」の物語も交差します。◇日高と望月は、《太陽》と《満月》の隠喩だったのですが、望月と朔也は、《満月》と《新月》の隠喩にもなっています。新月とは、存在しているのに見えない月のことです。それは、存在したのに生まれなかったバニシングツイン、もしくは空集合のような存在だともいえる。太陽は満月だったかもしれないし、さらに満月は新月だったかもしれない。この入れ替わりの物語は多重構造になっています。そのうえで、オッフェンバック/黒澤明的な天国と地獄の対比を、ベートーベン的な運命の物語に組み直しています。月は、完全に満ちたときに太陽と入れ替わり、完全に欠けたときに闇と化すのです。当初、わたしは、このドラマにとても期待していたのだけど、正直いって、あまり乗りきれてはいない。駄作とまではいわないものの、過去の森下×綾瀬の黄金コンビの名作群に比べると、最高傑作とまでは言いがたい気がする。一般には、高橋一生が絶賛されてますが、わたしは、さほどいいとは思えない。綾瀬はるかの男っぷりは、いままでになく色香に満ちててカッコいいけど、高橋一生のオネエ演技は、ちょっとコミカル要素が強すぎるし、綾瀬はるかの雰囲気へ寄せているようにも見えない。これは、おそらく演出の問題であって、思えば、大林宜彦の「転校生」のときも、小林聡美の男っぷりが見事だったのに対して、尾美としのりの女々しさはわざとらしくて、かなり違和感があったのを覚えています。◇今作は、綾瀬はるかのカッコよさを見せることについては、申し分なく大成功してると思うけど、コミカルな演出はあまり有効ではなく、むしろ「白夜行」的にシリアス度を高めたほうが、ドラマの緊張感ははるかに増しただろうと思います。そして、森下佳子のオリジナル脚本の説話手法が、従来のような原作のある脚色ものにくらべて、ちょっと無理があるかもしれないなあ、という気もしてます。
2021.03.01
天国と地獄〜サイコな2人〜。森下佳子×綾瀬はるか。おなじみTBSのゴールデンコンビ。サスペンスとしては「白夜行」以来、SFとしては「仁」以来って感じでしょうか。毎回ジャンルは違うけど、どこかしらテイストは似てるので安心感がある。それに、さすがは人気作を手がけてきた脚本家らしく、サスペンスであっても、物語の叙述はとっても分かりやすく、難解なところがありません。◇今回は、階段から転げ落ちて男女が入れ替わるという、大林宣彦の追悼を兼ねた「転校生」以来のジャパンSF伝統芸。NHKの「転・コウ・生」(コウの転生?)では、柴咲コウとムロツヨシにもやらしてたけど、いわゆる萌音の声で「入れ替わってるぅ~?!」ってやつ。…かと思ったら、むしろ「仁」のタイムスリップのセルフパロディっぽかったですね。◇作品のテーマは、まだよく分かりませんが、とりあえずは、オッフェンバックじゃなくて、生誕251年目のベートーベンによる天国と地獄・・・って感じでしょうか?「白夜行」や「仁」でもこのあいだの「転コウ生」でも満月が出てたけれど、やはり満月の夜に男女が入れ替わるのですね。日高と望月の入れ替わり。太陽と満月の入れ替わり。奄美大島のシヤカナローの伝説。そこらへんが物語のベースにあるようです。◇ちなみに、感染予防も重要な危機管理だと思うのだけど、警察署内で誰もマスクをしてなかったのは、どういうことなんだろう?それから、女に変身してしまった高橋一生は、いかにも女々しい演技をしていたのですが、もともと綾瀬はるかは男勝りなキャラなので、あんまり似てないのが気になった。NHKで柴咲コウと入れ替わったときは、わりと似てたのにね。
2021.01.19
テレ東の「共演NG」を最終話まで視聴。とにかく鈴木京香が美しかったです。◇内容は、まあ、秋元康がふだんからやっているような、「炎上商法」のネタバラシみたいなもので、たしかにコンセプトは面白かったんだけど、中盤以降は同じパターンの繰り返しなので、案の定、全6話でとっとと終了してしまいました。◇でも、とにかく鈴木京香が美しかった。どうしてテレ東の鈴木京香はこんなに美しいんでしょう。そして中井貴一とのキスシーン!こんなにも美しい59歳と52歳のキスシーンって世界にありますか?ふつうなら「オエッ」てなっちゃう年齢なのに。考えてみれば、NHKの「君の名は」で真知子役を演じた鈴木京香と、1953年の「君の名は」で春樹役を演じた佐田啓二の息子。菊田一夫や古関裕而の業績をふまえた、なかなかに由緒正しいキスシーンなのでした。◇業界的には、共演NGという裏事情をドラマ化したことが、革新的だと面白がられていたようですが、一般の視聴者にとっては、そんな業界の裏話なんぞ別にどうでもいいわけで、むしろ美しすぎる50代の恋愛のほうに、はるかに事件性があったと思います。
2020.12.26
フジテレビ「ルパンの娘」が終了。第2シリーズでは、橋本環奈と小畑乃々ちゃんが加わって、大貫勇輔のミュージカルシーンもかなり増量された。その一方で、泥棒一家と警察一家は和解してしまったので、ロミジュリ的な要素に乏しく、第1シリーズのようなインパクトや緊張感には欠けました。全体的に、画面が暗いのも気になった。第1シーズンのときは、あんなに暗かったかなあ?華やかさよりも、むしろ泥臭さが目立った感じ。◇加藤諒は、メインキャストから外れていたし、テントウムシが飛び立つときの、ジョン健ヌッツォみたいなダバダバ音楽が、あまり効果的に使われていなかったのも残念。最後のほうでは、両家の爺ちゃんが登場して、渉がついに肉声を解禁させて、娘の杏が泥棒デビューしたけれど、期待したほど大きな盛り上がりにはならなかった。◇そして、ルパンとホームズの関係は、まだまだ分からずじまい。北条美雲と三雲玲の謎も、ナターシャとかいう修道女との関係も放置されたまま。ルパンのファミリーネームと、ホームズのファーストネームが、おなじ「MIKUMO」である理由は何?渉と美雲を結婚させて「三雲美雲」にさせたいだけ?◇映画の制作が予告されましたが、スクリーンでどう化けるかは、ちょっと未知数ですね。個人的には、ぜんぶ円城寺親子のミュージカルでもいいけど!華麗に踊りながら敵をやっつけるとか、素敵すぎました(笑)。深田恭子/瀬戸康史/グレーテルのかまど
2020.12.15
今季は、「危険なビーナス」「恋する母たち」「リモラブ」の3作品に注目しているのですが、なかでも「リモラブ」は、かなり内容が斬新かつ意欲的で、独創性が高い。おバカな変人ばかりが登場するところは、ちょっとアメリカンコメディっぽいけれど、このテイストにもすっかり慣れました(笑)。◇第6話では、ついにお互いの正体が判明。美々のなかでは、SNSのなかのイリュージョンの恋と、現実世界のなかのリアルな恋がめでたく重なったのですが、青林のほうは、やはり草モチと美々とのギャップに混乱して、いちどは「ごめんなさい」と拒絶。このとき美々は、檸檬と青林の双方を一気に失いました。イリュージョンとリアルの両方で失恋した。それでも、なんとか平静を装い、いつもの産業医として気丈に振舞って、その悲しみを表さずに去った場面は、このドラマ最大の神シーンだったと思います。◇とはいえ、やっぱり檸檬との幸せな日々を忘れられない美々(笑)。「恋とは幻想である」とか、「恋とは勘違いである」とはよく言うけれど、むしろ「幻想こそが恋なのだ」ということを、美々は、あらためて確認した形です。現代は、リアルが勝つ時代ではなく、イリュージョンこそが勝つ時代なのです。イリュージョンのなかにこそ、見える真実がある。最後には、めでたく両思いになれた二人。このときの青林の心の変化は、あいかわらず唐突でよく分からないけれど、まあ、来週へ繋ぐためのサービスシーンだとも言えます。とにかく、これによって、リモラブはもはやリモラブではなくなり、めでたくリアルラブの世界に突入したわけですが、はたして、このままほんとうにリアルラブを発展させるのか、それとも、あくまでリモラブの世界を追求しつづけるのか、まだまだ分かりません。わたしの予想では、リモラブとリアルラブの「ずれ」を、さらに浮き上がらせていくのではないでしょうか。◇ところで、世間では目下、コロナウィルスの第3波で混乱していますが、ドラマの中では、むしろ感染の緊張がだいぶ緩和して、ラーメン屋台の場面などでは、ソーシャルディスタンスが急速に縮まったりしています。このへんにも、ドラマと現実のずれ、イリュージョンとリアルのずれ、撮影時期と放送時期のずれが生じてしまっていますが、…まあ、仕方ないですよね。
2020.11.19
「トンカツなのに檸檬」とか、「ビーフジャーキーなのに檸檬」とか、「キャベツなのに檸檬」とか、何が何やらわからなくなってますが、要するに、それぞれの食材に檸檬をしぼった感じ?あるいは、主人公がほんとうに愛しているのは、トンカツでもビーフジャーキーでもキャベツでもなく、あくまでも檸檬なのだというところにこそ、一定の真実があるのかもしれない。この先、世の中でVRとかARが普及すると、他者イメージの概念が変わってしまって、「檸檬」とか「草モチ」のようなアバターのままで、一生を添い遂げるカップルだって出てくるのかもしれません。実際、「ビーフジャーキー」や「キャベツ」といった外見のイメージよりも、「檸檬」として接してるときのほうが、その人の本質に触れている気がしないでもないし、「檸檬」のような男性こそが自分の理想だという厳然たる事実は、どんなことがあっても変わらないのかもしれない。川栄李奈が、セフレとのリアルな関係よりも、ソーシャルディスタンスを保った松下洸平との関係のほうに、本物の関係を見ようとしてるのは、そういう未来を暗示してるのかもしれません。#リモラブ ~普通の恋は邪道~/波瑠/松下洸平/間宮祥太朗/川栄李奈/髙橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)/福地桃子/渡辺大/江口のりこ/及川光博
2020.11.03
「#リモラブ ~普通の恋は邪道~」第3話。予想をこえて奇想天外!かなりおかしなドラマ!常識のはるか上空を飛んでいます。でも、水橋文美江の作家性が強力に出てきた気もします…。◇主人公のキャラが理解しにくいと思ってましたが、理解しにくいのは、波瑠だけじゃありませんでした。すでに恋人がいるのに、見知らぬ女と5ヵ月もSNSで会話しつづけていた、松下洸平もかなり理解不能だし、そんな松下洸平になりすまして、波瑠とつきあいはじめた間宮祥太朗もだいぶ理解不能だし、川栄李奈にいたっては、もはや何喋ってるのか意味が分からなすぎて、宇宙人並みに交信不可能なレベルでした(笑)。思わず「セフレ 南アフリカ」で検索してみましたが、べつに南ア共和国にそういう文化があるわけじゃなさそうです。◇奇想天外なコメディではあるけれど、なにか妙にリアルな部分もある。SNSに依存して、四六時中そればかり気になってしまうとか。SNSでやりとりしてるうちは楽しいけど、リアルに繋がりはじめると、デートの準備やら時間の拘束やらで疲れて、やっぱり元の生活に戻りたくなるとか。自分の部屋に友人を招いてみたものの、早く帰って欲しくてたまらないとか。結局、ひとりでテレビ見てる時間がいちばん大事とか(笑)。◇極端な設定のなかに、現代的なテーマが露骨に浮かび上がってきます。実際、面と向かって彼氏には言わないまでも、セフレまがいの関係を別にもってるような人は、きっと現実にも存在するのだろうし、彼氏に言っちゃう分だけ、まだしも川栄李奈のほうが正直なのかも…(笑)。そういえば、モーリー・ロバートソンみたいに、おたがいオープンにしてるカップルもいますよね。◇来週は、間宮祥太朗のウソがばれるはずです。でも、偽物の相手が偽物なら、本物の相手も本物とは言いがたい。とにかく全員が狂ってるのだから。タイトル通り、普通の恋は、どこにも期待できそうにありません。もはや誰が本命とかいう次元の話ではなくなってる(笑)。リモートを媒介にしただけで、「本物の人間関係」というのものの行方が、哲学的・SF的なまでに分からなくなってるのですよね。そこに現代社会のリアルを感じます。波瑠/松下洸平/間宮祥太朗/川栄李奈/髙橋優斗(HiHi Jets/ジャニーズJr.)/福地桃子/渡辺大/江口のりこ/及川光博
2020.10.29
「#リモラブ ~普通の恋は邪道~」第2話。いままでのドラマにないほど、無様にジタバタしすぎる女性を描いてて、かなり斬新で面白いお話だとは思うけど、しばしば台詞がベタすぎるのと、主人公のキャラと行動がちょっと極端すぎて、ついていけないところがあります。登場人物がありえないほど鈍感すぎたり、悪い意味で、ツッコミどころも多い。◇檸檬くんの正体は、もしかしたら最終回まで分からないまま?かとも思いましたが、ラストで種明かしがありました。赤の他人を檸檬くんと勘違いするのもイタイけど、檸檬くんに恋愛感情が皆無というのは、もっとイタイですね。松下洸平の役どころは、「スカーレット」の八郎よりさらに煮え切らない男!優柔不断なヤサ男のおかげで、周りの女性は惑わされて被害を受ける。◇松下洸平の誘いに応じて、あのまま居酒屋に行って、間宮祥太朗のことを檸檬くんと勘違いする展開もありえたけど、あえてそうしなかったのは、今後あらためて間宮祥太朗との絡みがあるからでしょうか?そもそも檸檬くん候補は、4人ぐらいしかいないしね(笑)。波瑠/松下洸平/間宮祥太朗/川栄李奈/髙橋優斗/福地桃子/渡辺大/江口のりこ/及川光博
2020.10.22
SUITS/スーツ2が終了。米版や韓国版はおろか、シーズン1も見ておらず、萌音が参加した最終章から見始めただけですが、およその内容は理解できました。13話では、女性昇進差別を証明する決め手に欠いていたものの、原告側の女性たちから人事評価表をかき集めて、7掛け採点や画一的な評価パターンの実態を暴いて逆転。14話では、上杉の横領・不倫についての秘密保持契約が足枷になって、尾形を解雇した正当性を証明できずにいましたが、あらたに上杉の不倫についての証言を周辺からかき集めて逆転。わりと話は単純です(笑)。ハーバードだの、東大ロースクールだのと、えらいエリートたちの法廷闘争の中で、さぞかし高度な頭脳戦が展開されるのかと思いきや、やってることは、そこらの刑事ドラマと大差ない(笑)。まあ、それでも、ファームの中であーだこーだとやってる姿が、なんとなく見てて楽しいという、そういう類のドラマだと思います。萌音&小手の(最後には結婚するんじゃないの?ってぐらい)無駄すぎる藤蟹バトルも、馬鹿っぽくて楽しめました。◇◇しかし、最終回は、ちょっとツッコミどころが多すぎた気がする。蟹江が、ロースクールの試験に落ちた真琴を、これまた無駄な嘘で慰めようとしたのも解せないし、そのことで真琴が鈴木を責めたてるのも、(経歴詐称をカミングアウトさせる伏線だとはいえ)あまりの逆ギレじゃないかと思いました。◇「ダービー」とかいう外資系ファームにかんしても、そもそも観月ありさしか表に出てこないので、その実像がまったく見えてこない。たんに元恋人とバブルを回顧するような話になってる。甲斐と鈴木は、「ダービー」のことを悪しざまに言うけれど、どのぐらい悪どい企業なのか具体的に見えないのです。甲斐は、「自分たちは正攻法で行く」みたいなことを言ったけど、実際にやってることは、メールを盗み見たうえで敵にカマをかけるという、なんとも泥臭い戦法でした(笑)。端から見ると、何が正攻法で何が悪どい手法なのかよく分からない。◇甲斐が辞任するしないの問題は、ダービー側が「上杉の過去の横領・不倫」を問題視したおかげで、棚ボタ的に解決したようなのですが、わたしが思うに、すでにファームを去っている人物の過去の話なんぞより、現役で経歴詐称のニセ弁護士が働いてることのほうが、よっぽど問題でしょ。それに、幸村と甲斐は、今回の件で互いの信頼を決定的に失ったと思うのですが、そこらへんも、なし崩し的に終わってしまいました。織田裕二/中島裕翔/新木優子/中村アン/小手伸也/上白石萌音/鈴木保奈美/伊東四朗/吉田鋼太郎
2020.10.21
事実上、途中で終わってしまった「カネ恋」。10月20日発売のシナリオブックには、未放送回をふくむ全話の内容が完全収録されるそうです。それを読めば明らかになるとは思うのですが、いちおう、この作品の全体的なテーマを、わたしなりに考察してみたいと思います。◇このドラマのテーマは、「ほろこびは繕うほどに愛着が増す」ということだったと思います。お金があるうちは、新しいものに買い替えればいいけれど、お金がなくなったら、ほろこびを繕いながら使っていくしかないし、大事に繕うことで、物への愛着もわいていく。人間関係も、たんに新しいものに取り替えてしまうのではなく、いろんなほころびを繕いながら、欠点を直したり、過ちを許したりしながら、大事に育んでいくことで、愛情が生まれていく。「おカネの切れ目が恋のはじまり」というのは、そういう意味なのだと思います。◇すべての登場人物が、ほころびを繕うことの大切さに気づいたとき、何がどう変化して、誰と誰が結ばれることになったのか。それまでの慶太は、お金で新しい物を買っては、古い物を平然と捨てていました。まりあは、古い人間関係を捨てて、新しい人間関係に取り替えていました。しかし、玲子は、母とともに鎌倉の古民家で暮らし、古く壊れたものを繕いながら生活し、さらには、早乙女のことを許し、父のことを許しながら、人間関係を大事に繕っていこうとしていました。欠点や過ちを繕うほどに、人や物との関係がむしろ深まっていきます。たとえば子供のおもちゃも、ただ新しいものに買い替えるのではなく、なんども修理しながら使えるような、あるいは修繕するほど進化していくような形が、ありうるのかもしれません。ぬいぐるみは、洗濯や綿の入れ直しをして長く愛し続けられるし、AIのロボットは、知能や経験をアップデートしていくことができる。慶太が開発すべきなのは、そういう玩具だったかもしれません。◇それにしても、なぜ慶太は「猿」だったのでしょうか?ヘラヘラした三浦春馬が、なんとなく猿っぽかったからでしょうか?方丈記の文章に「猿」が出てくるのは偶然でしょうか?猿渡一族の経営する玩具メーカーは、その社名が「モンキーパス」で、その主力商品はAIロボットの「サルー」で社長の相棒は「猿之助」で、息子の慶太の相棒は「猿彦」でした。玲子が幼いときに父に買ってもらったのは、ラケットで空振りをする猿の玩具だったけれど、その製造元がモンキーパスだったことが、玲子がそこへ入社するきっかけだったようですし、彼女が猿の絵皿に恋をしたのも、どこかで猿に愛着をもっていたせいかもしれません。◇ちなみに、わたしは、せいぜい「せかほし」を時々見ていた程度で、あるいは歌って踊る姿がスゲーと思ってた程度で、とくに三浦春馬のファンでも何でもありませんが、『カネ恋』最終回の放送後に、ほかのファンサイトなどを差し置いて、なぜかこのサイトが検索上位に挙がってしまったのは、かなりビビッたと同時に、なんだか申し訳ない気持ちでした…。読んでくださったみなさん、ありがとうございます。そういえば、最終回でミスチルの主題歌が流れてきたとき、わたしは、ちょっとしたデジャヴにおそわれました。よくよく考えてみたら、わたしは『14才の母』というドラマを、リアルタイムで見ていた人間なので、今回の「turn over?」という曲が、あのときの「しるし」にどこか似ている気もして、それが脳味噌のどこかでつながったのかもしれません。
2020.10.18
ここのところ、わたしの日テレドラマへの信頼は、すっかり失われているのですが、はたして今季はどんなもんでしょうか…?◇まずは『極主夫道』。日テレの「頑張ってる感」が、もはや涙ぐましい。なんだかテレ東をお手本にしてる気もしますが(笑)。まあ、最近のテレ東のドラマは、たしかに日テレよりよっぽど上をいってますから、テレ東に学ぶことも必要かもしれません。演技派のキャストをそろえてますけど、ほとんど俳優の顔芸だけで笑わせてる気が、しないでもありません。◇◇次に「リモラブ」。うん。これは、ひさびさに日テレらしさを感じるかも。主演の波瑠にも安定感があるし、演出にも、音楽にも、いかにも日テレらしいテイストがあります。ただ、肝腎の、水橋文美江による脚本の善し悪しは、まだ、いまのところ見えにくい。「スカーレット」が素晴らしかったので、わたしの期待値としては、だいぶ高いのですけど。◇冒頭は、小津安二郎の、映画『お茶漬けの味』のパロディからはじまりました。この最初のシーンを見ると、主人公はハイスペックな高飛車女子かと思うのですが、実際は、そうでもなくて、むしろ真面目すぎて非モテな女子のキャラなのですね。とくに高収入というわけでもなさそうです。最後には、SNSで知り合った顔の見えない男性にのめりこみ、それを部下の男子だと勘違いし、急に異性として意識しはじめるという、ちょっと情緒不安定な側面を見せて終わりました。主人公の人物像に、いまいち一貫性が見出しにくい(笑)。感染予防にまつわるドタバタを、どういう方向性で描こうとしているのか、そこらへんも、まだ見えてきません。極主夫道/玉木宏/川口春奈/志尊淳/白鳥玉季/MEGUMI/滝藤賢一/橋本じゅん/稲森いずみ/竹中直人#リモラブ ~普通の恋は邪道~/波瑠/高橋優斗/松下洸平/間宮祥太朗/及川光博/川栄李奈/福地桃子/江口のりこ
2020.10.15
カネ恋。最終話。先週のキスシーンを最後に、失踪したまま戻ってこない、という展開でした。失踪というよりも、たんにフラリと気まぐれに出ていった感じだし、てっきり、今週も、三浦春馬は出てくるものだと思っていたので、途中までは、そのつもりで見てたのですけど、伊豆からの帰りの電車のなかで、北村匠海が、「いいかげん、帰ってきましたかね?」と言ったので、そのときに、ようやく、「ああ、もう帰ってこないのね…」と気づきました。つまり、この最終話は、ほぼ全編がキャスト亡き後に撮影されていたわけですが、途中までは、まったくそのことに気づきませんでした。◇いろいろと思うことはあります。急遽、この最終話を作り上げたキャストもスタッフも、すごいなあ、とは思うけど、その一方で、よくもわるくも、テレビドラマって、途中で終わらせようと思えば、どうとでも終わらせられるんだなあ…というのも、一つのいつわらざる感想です。実際、途中で放送回数が短縮されて、むりやり終わらされるドラマってあるわけだし、視聴者も、それとは気づかずに見てたりするわけだし、それでも、何の疑問ももたずに、納得してる視聴者もいるわけですよね。ある意味、テキトーに騙されているんだなあ、と(笑)。◇今回の脚本についていうと、故人への思いも盛り込みながら、短期間で最終話を書き上げた手腕もさることながら、それだけになおさら、本来なら、このドラマは、どういう物語になる予定だったのか?…というのが、いちばん興味のあるところです。実際、けっこう面白い話だったと思う。お金に不自由なく育っていた少女が、父が横領罪で逮捕されたことをきっかけに、一転して清貧女子にはなったものの、ずるずると投資ビジネスの起業家の男に貢ぎ続け、そのあとは大企業の御曹司と恋をする、というお話です。おカネというものを、最終的にはどう見せようとしていたのでしょうか?◇今回の第4話で意外だったのは、早乙女(三浦翔平)が再登場していたこと。彼は、けっして先週で退場だったわけではなくて、最後まで絡むキャラだったのでしょうね。瑠璃(大友花恋)と結ばれる予定だったのでしょうか?かたや、ガッキー(北村匠海)のほうは、まりあ(星蘭ひとみ)との恋愛フラグが立ってたように見えます。まりあのキャラは、たんに金持ち目当ての現金な女なのか、それとも本当の愛情を求めている女なのか、よく分からないままに終わってしまいました。ひかり(八木優希)については、彼女が慶太の実妹でないことが、父親から慶太に知らされる予定だったようですね。そこから慶太とひかりの関係はどう変わっていくのでしょうか?◇シナリオブックが発売予定のようです。どういう内容になっているのかしら?せっかくなら、今回の脚本をもとにして、タイトルとキャストを変えて、続きの物語を見てみたいです。
2020.10.07
「カネ恋」第3話。なかなか面白かったです。たとえ悪い男が相手でも、恋に落ちたら盲目になりますよねえ…というお話。15年越しの片想いなら、なおさらのこと。傍目から見ればフラれて良かったのですが、本人がはげしい喪失感に襲われるのは無理もありません。けっこうリアルなエピソードでした。◇わたし的には、早乙女(三浦翔平)のキャラが興味深かったです。彼はどれほど「悪い男」だったのでしょうか?考えてみると、なかなか難しいです。板垣(北村匠海)を、10万円近いセミナーに入会させようとしたり、けっこうエゲつない商売をしてるように見えます。玲子(松岡茉優)も、あのくらい高額な受講料を払い続けてたのかも。しかし、もともと、そういうサービスを売る仕事なのだから、いくら高額だとはいえ、詐欺とまでは言いがたい。受講者はみんな、リスクを承知のうえで書籍やセミナーに投資しています。未婚と偽っていたのは道義的に問題があるけど、いわばメディア的なイメージ戦略であって、本業とは直接関係のないことだし、それをもって犯罪とまでは言えない。そういうメディア戦略については、妻も、秘書も、了解していたはずです。べつに、結婚詐欺をやっていたわけではないし、妻子を隠して不倫していたわけでもありません。むしろ、顧客の女性たちとは恋愛関係にならないように、一定の距離を保っていたようにも見えますし、玲子との適切な距離を保ちつづけていたのも、そのためだったのだろうと思える。最後に、玲子に「じつは…」と言いかけたのは、彼女との恋愛関係に発展してしまう前に、真実を打ち明けようとしたからであり、そこには、彼なりの誠意や線引きがあったように見えます。早乙女の行為は、法的にも犯罪とは言いがたいし、女性に対する裏切りとも言いがたい。グレーではあるけど、極悪とまでは言えない。なかなかに微妙なキャラなのでした。◇玲子が「早乙女は独身だ」と信じ込んでいたように、慶太は「ひかりは妹だ」と信じています。2人とも騙されていて、しかも、騙されることにお金を使っている。そして、ある意味では、騙されることから幸せを得てもいたのです。
2020.09.30
え?!全15回?まだ4話も残ってんの?最終章なのに?ずいぶんと長い最終章ですね。もはや、最終章詐欺なのでは?なんつって(笑)。◇たんなる萌音めあての視聴(笑)。今までまったく見てなかったので、何のこっちゃ話はさっぱり分からない!なにやらハーバード大経歴詐称で、二股キス不倫の鈴木くんが、正義感に燃えすぎてるとかなんとか。でも、萌音の役どころには満足。ちょっと高圧的なキャラが可愛い。「恋つづ」より、こっちの役のほうがいい。ただ、検事から弁護士に転身しちゃったので、今後はキャラが変わっちゃうのかも。きっと検事より弁護士のほうが儲かるんだろうね。登場人物の弁護士は、めちゃくちゃリッチな生活してるし。◇え?!萌音がカバーアルバム?リクエスト受付だ?そりゃ、何の曲でもいいけど、とりあえずはadieuとのデュエットでしょう。織田裕二/中島裕翔/新木優子/中村アン/今田美桜/小手伸也/鈴木保奈美上白石萌音/吉谷彩子/伊藤健太郎第11話 第12話 第13話 第14話 第15話
2020.09.22
テレ朝の『妖怪シェアハウス』が終了。先週までは、ゆるゆる系の脱力ドラマだったのに、なぜか最終回だけは、やたらと気合が入っていました(笑)。てっきり編集長の原島さんと結ばれて、ハッピーエンドで終わるものと予測してたのに、なんとまあ、自分が妖怪になってしまうという驚きの結末。そっちに行きますか…。けっこうビックリです。◇かなり奇想天外だったけれど、これはこれで、意外にアリだと思います。「妖怪の本体は人間だ」という結論でもあり、それと同時に、「妖怪の世界=常識外の世界を肯定する」という前向きなメッセージにもなっていました。主人公が向かった常識外の世界とは、天狗様のいる山岳世界(=高尾山?)のようでもあり、いわゆる引きこもりの世界でもあったようです。なかなかのエンディングですね。◇もともと、このドラマには、ちょっと「ローカル感」が乏しくて、そこに物足りなさを感じていました。やっぱり妖怪ドラマを作るなら、京都か鎌倉を舞台にしなきゃダメでしょ!とも思ってたし、せっかく小芝風花を主演にするなら、なおさら京都訛りのドラマにすべきでは?とも思ってたし、かりに都内を舞台にするとしても、もっともっと江戸っぽさを出さなきゃね、とも思ってたけど、まあ、昨日の最終回についていえば、なかなか妖しい雰囲気も醸し出せてて良かったです。◇全体にキャスティングもよかったし、民話風の妖怪案内も勉強になりました。とくに松本まりかは、『純情きらり』と『竜の道』を同時に見てたこともあり、その振り幅の広さに驚かされました。彼女は、今シーズンの助演賞候補です。そして、さらに振り幅がすごかったのが大東駿介!!編集長の原島さんは、いままでの彼にはない知的な役どころで、とてもカッコよかったけど、それと同時に『浦安鉄筋家族』も見てたので、あまりの振り幅の凄まじさに目眩を覚えました。浦安の春巻先生のインパクトは、いちど見たら二度と一生忘れられません。原島さんと春巻先生は、ほんとうに同一人物だったのでしょうか?大東駿介も、助演賞確定です。◇ちなみに『浦安鉄筋家族』は、テレ東の屈指の作品にして、21世紀最大の傑作ウンコドラマだったのですが、同じテレ東といえば、黒島結菜&鈴木京香が主演した、『らーめん才遊記』もなかなか出来がよかったです。いまのテレ東のドラマ制作能力は、脚本も演出もしっかりしていて、キー局を上回っていますね。小芝風花/大東駿介/味方良介/毎熊克哉/松本まりか/池谷のぶえ/大倉孝二/miwa
2020.09.20
遅ればせながら「おじカワ」最終回。眞島秀和ことチベットスナギツネと、今井翼ことパグ太郎の、おじさん同士の微笑ましい友情物語。登場するのは、眞島秀和、今井翼、桐山漣、藤原大祐、という男性4人。◇女性をほとんど絡ませることなく、男性だけでファンシーな世界を作りあげるという、なかなか野心的な作品ではありました。ほんのすこし山本未来が絡みましたけど、もともと彼女自身にほとんど女っ気がないので(笑)、事実上、男性だけの物語になっていた。いわゆるBLものではないけれど、否応なく「おっさんずラブ」的な世界になっていた。個人的には、もうすこし女っ気があったほうが物語がスリリングになったかなあ、という気はします。愛加あゆが眞島秀和に絡んで、そこに富田望生と森七菜が割って入るとか、そんな"おじキュン"展開にも期待したのですが。◇男性たちは、勇気をふりしぼって、たがいに「可愛いもの好き」をカミングアウトするのですが、最後の最後まで、女性に対してのカミングアウトはありませんでした。そこが、すこし物足りないといえば物足りない。「可愛いもの好きのおじさん」に対する、女性側の拒絶や和解の過程を描けば、もっと物語はスリリングになった気がします。まあ、山本未来の場合は、「はなから気づいてたけど、何とも思ってなかった」というオチでしたが(笑)。実際、女性のほうは、ごく普通に受け入れるか、身も蓋もなく興味がないか、のどちらかですよね。◇パグ太郎に初対面したときの、キョドった眞島秀和にはちょっと萌えました。今井翼も、なかなかいい味を出していたので、堂々の優秀助演賞をあげたいけど、できれば、彼がドールハウスに耽溺する姿にも萌えたかったです。
2020.09.19
「カネ恋」第1話。三浦春馬の遺作ですが、とくにテロップが表示されることもなく、普通の新ドラマとして、当たり前のようにスタート。◇いつものお仕事系ラブコメかと思っていましたが、「方丈記」と「清貧」の話が出てきたり、「鎌倉の古民家」が舞台になってたり、「一杯のかけそば」にじんわりしたり、予想外の内容だったので、いつのまにかのめり込んで、純粋に作品への興味が湧いてきました。現在の格差社会を題材にしながら、お金のことを考える物語になっています。できれば、当初の予定通り、全8話で見たかったとは思うけど…とりあえずは虚心で楽しむことにします。大島里美/松岡茉優/三浦春馬/三浦翔平北村匠海/星蘭ひとみ/草刈正雄/キムラ緑子
2020.09.16
親バカ青春白書。最終回は、ガタロー&美咲の恋と、父親に嫉妬する娘の物語。ちょっとフランス映画みたいなお洒落な話でした。日本のドラマとしては珍しいパターンですね。さくらとハタケの恋じゃなくて、ガタローと美咲の恋がメインになるのは、予想の斜め上をいく展開で驚きでしたけど、恋愛のトキメキという点では、「わたナギ」のおじキュンよりも説得力があった。ドラマの前半は、まるでバブル期の大学ノリが甦ったような、かなり馬鹿っぽい内容だったので、急にこんなお洒落な展開になったのが意外です。正直、第5話まではクソドラマかと思ってましたが、最後の6話と7話は、なかなか印象に残りました。ムロツヨシ/永野芽郁/中川大志/小野花梨/今田美桜/戸塚純貴/新垣結衣/ドラゴン桜
2020.09.14
「家政夫ナギサさん」特別編。フジの月9の特別編と同じように、総集編に毛の生えたようなものではあったけど、未公開シーンが多いのは、それだけで楽しいし、逃げ恥の「ムズキュン!特別編」の経験が生きてますね。今回も、タイトルは「新婚おじキュン!特別編」です。◇まあ、何度見ても、ピークだったのは第4話で、それ以降は、あまり脚本の出来がよくありません。とくに恋愛感情がきちんと描けてないのは致命的。「おじキュン」とは名ばかりで、結婚という結末には、おおいに無理がありました。ナギサさんの実家がどうなったのかも不明。結婚を口実にタダで家事をさせてるとしたら、それこそ「好きの搾取」と言われても仕方ない。そこらへんの脚本は、あまり練られてるとは言いがたい。◇ちなみに、「靴下は裏返さずに洗濯しろ」みたいなことを何度もアナウンスしてましたが、これは明らかな「偽情報」であって、本来、靴下というのは裏返して洗うべきものです。それを知らないのは家政夫として失格だし、ドラマ制作部としても取材不足・調査不足です。TBSとしても、これはちょっとしたBPO問題です。ダスキンメリーメイドの監修は入ってなかったのでしょうか?◇それにしても、三浦春馬主演の新作ドラマがこれから始まるのは、なんとも変な気分というか、キツネにつままれるような感じです。
2020.09.09
「親バカ青春白書」第6話。ムロツヨシ本人の演出。段ちがいに素晴らしいです。今までは何だったの? って感じ。俳優陣の演技のキレもよいし、カメラの位置も動きも素晴らしい。新垣結衣も段ちがいに美しく見える。脚本まで出来がよく思えてきます。撮る人が違うと、こんなにも違うものでしょうか?わたしは、俳優としてのムロツヨシよりも、俄然、監督・演出家としてのムロツヨシに興味が湧いてきました。壊滅している日テレドラマの、唯一の希望の光かもしれません。いっそ日テレは、すべての作品をムロに演出させたらいいのでは?
2020.09.07
「私の家政夫ナギサさん」最終回。結婚して終わるというのが、当初からの既定路線だったのでしょうけど、やや強引な印象は否めなかった。最後の最後まで、恋愛のトキメキがあったのかどうか疑わしい。いわば「恋愛なき結婚」って感じです。まあ、現実にも、「恋愛なき結婚」ってのはありうるし、それはそれで一つのスタイルだと思うけど、それならそれなりの説得力がほしかったです。わたしから見ると、この結婚は、お隣同士のしずかちゃんとのび太君が、ふたりで同じドラえもんを共有した形に見えます。つまり、ナギサさんが独立して、メイと田所さんの専属家政夫になるってことですね。それはそれで新しいライフスタイルでしょう。飯尾と富田靖子が夫婦だったってオチも、やや強引というか、ちょっと無理がある気がした。彼女が赴任してきた時点で分かるべきことだし、いずれにせよ妻の会社を贔屓することになるのでは?◇さて、このドラマ、けっこう熱心にMRの世界を描いていましたが、患者に投与すべき薬が、データとは無関係な「力学」で決まっていく様子は、なかなかにグロテスクでした。もちろんドラマでは、できるだけ人道的な物語に仕立ててはいたけど、おそらく現実は、もっともっとグロテスクなのだろうと思われます。むしろ批判的な視点で描くべき題材じゃないかと感じました。◇予告された2時間SP「新婚おじキュン!特別編」。あまり過剰な期待をすると裏切られますね。せいぜい、配信ストーリーをまぶした総集編ってとこでしょうか。多部未華子/大森南朋/瀬戸康史/眞栄田郷敦/高橋メアリージュン/宮尾俊太郎/平山祐介/水澤紳吾/岡部大(ハナコ)/若月佑美/飯尾和樹(ずん)/夏子/富田靖子/草刈民代/趣里/光石研/四ツ原フリコ/徳尾浩司/山下すばる/あいみょん「裸の心」
2020.09.02
わたナギ第8話。そこで結婚提案するんかいっ!と、普通ならツッコむところだけど、さすがに『逃げ恥』のときの免疫がありますから、そこまで大きな驚きがあるわけじゃなく、むしろ「ナルホド。そこで言うのね」って感じです。ただ『逃げ恥』のときは、いきなり第1話からの結婚提案だったから、そこから先の七転八倒こそが、メインの物語になっていたわけだけど、今回の場合は、もうすでに最終回の直前ですから、これ以上の大きな展開はないのかな、と思う。おそらく結婚に至ることはなく、期待をもたせたあたりで終わるのかなあ、と予測します。やはりナギサさんは本社に異動して、いったんはお別れってことになるんじゃないでしょうか。メイが、「ナギサさんなしには生きていけない!」と言って、思わず泣きつく姿に既視感があったのは、「ドラえもんなしには生きていけない!」と泣きついた、のび太君の姿に重なってしまったから。だって、何でもやってくれるし。便利だし。…まあ、そういう関係も、ひとつの愛のカタチかもしれないけれど。もし、かりに結婚したとしても、メイは、ナギサさんの家に引っ越す気はないでしょうねえ。とはいえ、ずっと田所さんと隣同士のまま、というのも気まずいけど。◇よくいえば、あっという間の全9話でしたけれど、悪くいえば、期待したよりも薄い内容に終わりそうです。せっかくなら全10話にして、もうひとエピソードを盛り込んでもよかった気がします。『竜の道』にせよ『ナギサさん』にせよ、エンディング曲は非常にうまく出来ていて、ドラマの良し悪しとは無関係に、じつに効果的でしたね。
2020.08.26
わたナギ。第6話。いまひとつディテールの描き方が不満です。脚本のせいなのか、演出のせいなのかは、よく分からない。脚本は2人で、演出は3人で、それぞれ分担してるようですが、どうも回ごとの出来にムラがある気がする。◇◇メイはナギサさんの過去に関心をもち始めて、ナギサさんはメイの現状を心配しはじめる。いままでビジネスライクな関係だった2人が、すこしずつ接近しはじめる重要な過程です。しかし、その両者の心の動きが、いまひとつ自然ではない。(それって、ドラマとしては致命的ですよね)いきなり私生活に踏み込もうとしたり、急に不機嫌になったり、急に激高して衝突したり、なにもかもが唐突な印象です。本来なら、さまざまな偶然が重なることで、期せずして両者が接近していくのだし、そこにこそ"ドラマ"が生まれていくはずなんだけど、その「偶然」の描き方が、いまひとつパッとしません。◇たまたまイタズラ心でナギサさんのあとをつけたら、思いもよらないものを見てしまったのだし、たまたま過去のノートをメイに見られてしまって、思わず動揺して狼狽えてしまったのだし、たまたまメイの姿と昔の恋人が重なってしまって、つい出過ぎたことを口にしてしまったのですよね。その「たまたま」の描き方が、いまひとつなのです。予定調和な結末ありきの展開にしか見えない。どうせ結論は分かってるのだから、そこへいたるまでの些細なディテールをこそ、もっと自然に、もっと魅力的に描いてほしいのですけどね。
2020.08.12
コロナ感染から復帰したクドカンが、テレビを干された芸人を主人公にリモートドラマ。かなり哲学的なSFホラー。郵便的AIによる誤配。あるいは、AI漫才のシャレにならないボケ。なぜ水田伸生がNHK?坂元裕二と一緒に日テレを見捨てたの?日テレのドラマ部門は完全に死んでますよ(笑)。岡田准一や長瀬智也を使いこなしたクドカンが、生田斗真を重用する理由。濃い顔のジャニーズをコメディに使う理由。なんなんだろう?それにしても、なぜドラマって、ガス爆発とかの現実を予言してしまうんだろう?気持ち悪いですよね。宮藤官九郎×水田伸生×生田斗真
2020.08.11
わたナギ。第5話。今回はいまひとつ…。というか、かなり不満です。◇もともと、このドラマの大きな注目ポイントのひとつは、母と娘の関係でした。一昔前のトレンディドラマでは「家庭より仕事」という価値観が当たり前だった。それが現代的な女性像を作っていたからです。ところが、このドラマでは、それがもはや"母世代の価値観"に後退していて、娘の世代では、ある種の反動が起こっています。つまり、「仕事より家庭」という古風な価値観に回帰しているのです。もちろん、たんに逆転現象が起こってるだけではなくて、「男性が母親に憧れる」という新現象も起こっています。そこらへんに、このドラマの面白さがあるはずでした。◇しかし、こうした母世代と娘世代の確執が、呆気ないほどあっさり解消してしまった。両者を和解させたのは、陳腐な「思い出ビデオ」と「思い出料理」…。田舎の結婚式じゃあるまいし、そんな安っぽいイベントの演出で、長年の確執が打ち解けるものでしょうか?だって、娘の結婚相手にも会わず、孫にすら会わないような絶縁状態って、そうとうに深刻で根深いものですよ。掘り下げ方が物足りない。かなりの肩透かし。重要なテーマのひとつが、こんなに安易に処理されるとは。いまや頑固だった母親は、娘家族との同居も考えはじめて、長女にまで結婚を促すようになったらしい。でも、今回のエピソードは、「家庭より仕事」という母の信念を変えさせるには、あまりに不十分なものだったと思います。
2020.08.05
これはもう初回からマズいのでは?まるで素人芸人のコントをダラダラ見せられている感じ。やはり日テレのドラマ部門は壊滅したのだなと思います。いくら一流のキャストを揃えてみたところで、ドラマの作り方を知らないのでは救いようがありません。「今日俺」のときに見られたような、細部の表現のセンスもまったく感じられないですね。やはり映画やドラマは監督ひとりで作るものではなく、スタッフ全員のセンスが揃わなければ成り立たないのだと思います。どうして日テレはここまで堕ちてしまったんだろう?この作品に引っ張り出されたキャストが気の毒でなりません。
2020.08.03
私の家政夫ナギサさん。通称「わたナギ」です。すでに第4話まで来ています。なんとなく見始めたこのドラマ。そもそも、キャリアウーマンと家政夫の恋って、ただ「逃げ恥」の設定を逆にしただけじゃん!さすがにこのパターンは現実にはありえないし!そんな下心で家政夫になる男性が増えても困るし!でも、まあ、「知り合いの知り合い」ぐらいの男性なら、最初はちょっとアルバイトの感覚で家政夫やってもらって、そこから恋愛に発展するぐらいはあるかも…と思うけど、そうはいっても、このドラマの設定にさほど興味があるでもなく、出ているキャストにさほど魅力を感じるでもなく、あくまで「逃げ恥」の惰性で見はじめただけなのですが…なぜか予想外に面白い(笑)。なんだか見てて楽しい。すでに毎週火曜日が楽しみ!ナギサさんとは関係のない、サブストーリーの部分もぜんぶ面白くて、ついつい惹き込まれます。1時間があっという間に終わっちゃう。脚本が上手。てっきり女性が書いてるかと思いきや、見たら徳尾浩司という男性なのですね。しかも「おっさんずラブ」を書いた人?そして、あいみょんの主題歌にもホッコリくる。この曲って、ロックじゃなくて、まったくもってフォークですよね(笑)。ほとんど吉田拓郎ですよね…。あるいは海援隊とかアリスですよね…。でも、それが何だか心にジワッと沁みる。二人でブランコ乗ってるだけのシーンでも、じんわり温かい気持ちになります。これって、きっとオジサンの感性ですよね(笑)。それが狙いだったりして…。
2020.07.29
「美食探偵」もだいぶヒドいと思ったけど、「未満警察」も同じくらいダメです。第1話には多少の期待をしたけど、回を追うごとに内容が荒唐無稽になっていく。まるで仮面ライダーかなにかを見せられている気分です(笑)。おそらくは題材の選定そのものが失敗なのですが、いまや韓国ドラマのリメイクにすがるしかないほど、日テレのドラマ部門は企画力を失っているのでしょうね。脚本もかなりひどくて、ちょっとフォローしようがありません。脚本家は、毎回のお話を作ることに精いっぱいで、いろんなことに配慮するだけの余裕も能力もないって感じ。たぶん撮影がはじまる段階では、修正しようもないくらいヒドい脚本なんだろうな。スタッフも、キャストも、これが「駄目なドラマ」であることは、うすうす気づいてると思う。仕方ありませんよね。これじゃあ、論評する意味もありません。やはり、いまの日テレには、まともにドラマを制作するだけの能力がないのです。基本的につくりかたを知らないんだろうと思う。かつての輝かしい「日テレドラマ」のブランドは、すっかり消え去りました。
2020.07.13
「美食探偵」が終了。まったく脈絡の見えない意味不明なドラマでしたが、ようやく最終回になってコンセプトらしきものが見えました。でも、ちょっと遅きに失した感じです。もうすこし明瞭なシナリオにしてほしかったですね。◇ある種のグノーシス(異教徒)として、社会から排除されてしまった者どうしが、絶望をつうじて繋がり合おうとする物語だったのなら、そのコンセプト自体は、たぶん間違っていないんだと思う。でも、そうだとしたら、マリアだけでなく、明智の魅力も、もっと「グノーシス」なものじゃなきゃいけない。そこにこそ、明智とマリアが惹かれ合う理由があるのだから。そこがまず非常に分かりにくかったです。ただ中途半端に磯部揚げを食べているだけの、時代遅れでコミカルな変人にしか見えないのです。明智五郎の異教的な怪しい魅力が、まったく感じられない。一方、マグダラのマリアにとって究極の「美食」といえば、それは明智(=イエス)とともに迎える最後の晩餐なのですが、このドラマでは、なぜか毎回の「美食」が社会への復讐の手段になってしまっています。これが「美食」の意味を混乱させています。グノーシスにとっての「美食」というのは、(エデンの園の果実のように)むしろ人々を悪の世界へ招き入れる禁断の媚薬でなきゃいけない。かりに殺人そのものが「美食」であるのならば、そこに強烈な快楽があることを明示しなきゃいけません。共犯者たちをも魅了したマリアの殺人の美学というものが、最後の最後まで、いまいち理解できなかったので、なんだか脈絡のないドラマに感じられました。たんに脚本家だけの責任じゃなくて、以前の日テレなら、もうちょっと丹念に練りあげていただろうなと思います。
2020.06.29
台湾との共同制作ドラマ。なんだか脚本が青臭くて下手っぴいですね。まるで新人脚本家の秀作を見てるみたいです。プロデューサーや演出家が適当に手直しできなかったのでしょうか?主人公の恋と、家庭の問題を抱えた上司の苦悩と、台湾生まれの老人の歴史と、台中部の田舎の青年の物語を交錯させる構成は間違ってないと思うけど、それぞれの描写がいかにも安易で薄っぺらな感じがする。上司の家庭問題は不必要かもしれないなあ。まあ、そこらへんは原作の問題かもしれないけど。…って、クレジットを見たら、脚本を書いてるのは田淵久美子なんですね。こんなものかなァ。それとも、演出に問題があるのでしょうか?実際、演出のテンポも非常に悪いです。台湾映画のゆったりした雰囲気を狙ってるのかもしれませんが、もたもたして冗長なだけで、あまり上手くいっていない。何よりもセリフのやり取りに生き生きとしたものが感じられません。つまらないセリフを喋らされている俳優が痛々しく見えます。興味深い題材の作品なのに、ドラマとしての魅力には乏しい。次週以降も見続ける自信はありません。
2020.05.22
「美食探偵」はしばらく中断ということですが、ここまで見てきたところ、かなり評価が難しい。面白いところはあるけれど、優れたドラマだとは言いがたい。とにかく、第1話に問題がありすぎたのですね。映像は奇妙だったし、展開は唐突だったし、何がなんだかよく分からなかった。苺が明智に惹かれる理由もよく分からないけど、明智がマリアに惹かれる理由もよく分からない。そのことが引っかかったまま、後々のストーリーにまで影響しています。いまさら言うのもなんだけど、苺が助手になるまでの経緯や、マリアが崖から落ちて姿を消してしまった出来事は、せめて2回分くらいを費やして、もっと丁寧に描いてほしかった。もしくは、探偵と助手との関係は最初からデフォルトにして、宿敵マリアの存在も最初からデフォルトにして、第1話の内容は、まるまる「回想」として処理してもよかったのです。つまり、苺が助手になるまでの経緯も、マリアが崖から落ちて姿を消してしまった出来事も、すべてを「謎めいた過去」として回想すれば、だいぶスッキリしたと思う。◇ちなみに、このあいだの第6話の内容は、なかなか面白かったのですね。燃えさかる炎の中でのディープキスはなかなか衝撃的だったし、それを見て呆然と立ち尽くす苺の姿も美しくて魅力的だった。ただし、犯罪の「美学」うんぬんの話はよく分からない。今回の事件には「美学」がなかったというのだけど、はたして前回までの事件に「美学」があったのでしょうか?まったくもって違いが分かりません。他人の殺人願望を実現してやるのが「美学」だというのなら、明智一族に従属させられた中年男の殺人願望を叶えてやることも、同じ程度に「美学」なのではないでしょうか?それとも殺し方のテクニックになにか美学的な差でもあったのでしょうか?◇ところで、第6話のラストシーンでは、演出についての妙なテロップが表示されました。物語の最中に、わざわざ演出方法についての解説を表示する必要がありますか?とりたてて演出方法が斬新なわけでもないし、いったい何のために、ああいうことをするのか疑問です。たんなる演出家の自己満足だとしか思えません。さも「意味ありげなこと」をやっているように見せたいのでしょうが、そのような発想と姿勢じたいが何ともいえず幼稚だというほかない。自分のやっていることの「意味」を視聴者に丸投げするよりも、まずは自分が何をやっているのかを自分自身で明確に理解すべきです。もし何がしかのメッセージがあるのなら、それを物語や映像のなかで明瞭に示せばいいのです。あんなものがちょくちょくドラマの中で表示されるようになったら興覚めです。
2020.05.21
「美食探偵」はやっぱり変なドラマです。第1話では、まるで昔の新東宝の無国籍映画みたいな、かなり奇天烈な変てこムードを醸し出していました。第2話以降は、だいぶ正常化してきたけれど、それでも、いろんな部分でピントが外れている。意図的にピントを外してるのかもしれないけど、それが何を狙ってるのかも、よく分からない…。◇中村倫也のキャラについていうと、そもそもイケメン設定なのかダサメン設定なのかが不明瞭。最初は「上の下」と言われてたはずなのに、いつのまにかモテモテ設定になってたりして、見ている側は困惑してしまいます。彼のキャラ設定が分かりにくいので、おのずと小芝風花との関係性も焦点がぼやけてくる。◇コメディドラマとして見ると、これはもう、完全なくらいにスベっている。笑えるギャグはほとんど無いに等しい。唯一、笑えたところがあったとすれば、「トリコロール」を「トルコ料理」と言ったことぐらいかな。50年ぐらい前の映画なら、バイクの「空ぶかし」でもギャグとして成立したでしょうけど、今の時代にそのネタでいちいち笑えと要求されても無理です。そこらへんもピントが外れている。◇探偵ドラマとして見るならば、「人々の隠れた殺人願望をリモートで実現する」という発想は、たしかに現代的な側面に触れていて面白いと思うけど、肝心の犯罪トリックはだいぶ漫画じみたものだし、およそ完全犯罪になりそうなものではない。トリックの巧妙さを楽しめるような作品ではありません。いまのところ悪玉マリアの所業は、単独犯罪なのか、組織犯罪なのか分からないけど、ホームズに出てくるモリアーティとは違って、あまりにも「姿が見えすぎるんじゃないか」って気もします。あんなに姿を見せてたら、警察にすぐマークされるのでは?彼女の犯罪が、毎度毎度、明智と結びつくのも、はたして偶然なのか必然なのか、そこらへんの設定もよく分かりません。たんなるご都合主義にも見えてしまう。◇前回の第4話は、とつぜん猟奇的な内容になりました。このドラマに猟奇性を求めてた視聴者はいないと思うけど、期待されてないわりに、かなりハイレベルな猟奇性を見せてきた(笑)。なかなかスゴイとは思いつつも、正直、困惑せざるを得ません。美食をテーマにした作品なので「あわや」とは思ったけど、人肉食に至らなかったのが、せめてもの救いです。物語は、DV夫を断罪する展開になるのかと思いきや、むしろDV夫のほうが「主人公の親友」という設定で、最後は、DV夫を殺した妻のほうが悲劇的な最期を迎えてしまう。この後味の悪い結末にも、視聴者としては受け止め方に苦慮します。◇そんなわけで、意図的にピントを外してるのか、はからずもピントが外れちゃってるのか分かりませんが、かなり変なドラマになっていくのは間違いない。
2020.05.07
子供のときに『まんが世界昔ばなし』のアニメで、先日亡くなった宮城まり子の「ああ無情」を見て以来、いろんなバージョンのレミゼを見てきたけれど、見るたびに「こういう物語だったのね…」と思い知る。それもこれも、ちゃんと原作を読んでないからですけどね。(その昔、ものの数分で読むのを挫折した)◇今回のBBC版ドラマが、どのくらい原作に忠実だったか分かりませんが、前半部分にはかなりの迫力があったし、最終回には、すごく重要なメッセージが込められていました。わたしは「レミゼ」の原作を読んでないかわりに、同じユゴーの「死刑囚最後の日」を読んでるのだけど、あの小説に込められていたのと同じユゴーの理念が、今回のBBC版の最終回に感じることができました。ユゴーは、「許さないこと」を信念にしたジャベールの人生を断罪して、「許すこと」を信念にしたジャンバルジャンの人生を救います。最終回では、ジャンバルジャンだけでなく、テナルディエにまで救いがあるのですが、それ以上に、いちばん大きな救いだと思えるのは、マリウスとコゼットに「許すことの意義」が伝わっていくことです。ややもすると、マリウスとコゼットは、たんなるお坊ちゃんお嬢ちゃんに見えてしまうのですが、最後に父=バルジャンが徒刑囚だったと知ることで、それまで目を背けてきた底辺の人々の生に目を向け、彼らに「許し」を与えていくことの重要性を知っていく。そこが、物語にとって最大の救いになっています。つまり「許し」の連鎖が次世代に受け継がれている。◇じつは今回のドラマを見ていて、第7話にちょっと物足りなさを感じていました。ミュージカル版にくらべて盛り上がりに欠けたからです。ミュージカル版では、バリケードの場面にこそ最大のクライマックスがある。「on my own」ではエポニーヌの悲恋が歌われるし、「people's song」では自由の闘いが高らかに歌い上げられる。しかし、ドラマ版の第7話では、戦いの悲惨さが淡々と描写されるだけで、ほとんどドラマティックな盛り上がりはありません。エポニーヌは突然やってきて殺される。ガブローシュも虚しく死んでしまう。若者たちの戦いは無残に挫折して終わる。ただ屍だけがゴロゴロと積み重なっていくのです。でも、それが原作に近いのかもしれません。すくなくとも、このドラマ版の最大のメッセージは、第7話ではなく、最終回の第8話にあったと思います。エポニーヌの悲恋や、若者たちの自由への賛歌を、あえて淡白に描いているのは、描くべきテーマがそこにはなかったからですね。「許し」を描くことに焦点を絞ったドラマだったと感じました。
2020.05.06
日テレの「野ブタ」とならんで、再放送が注目を集めたTBSの「JIN-仁-」。緊迫した医療現場の最前線。江戸時代なのにみんなマスクしてる。そして感染症「コロリ菌」の蔓延。タイムリーにもほどがある…。ドラマ自体が10年前の過去から未来へ投げかけられた、ちょっと予言的な作品のように思えてくる。驚くほど状況的な意義を感じさせる再放送でした。◇まったく古さを感じさせないし、やっぱり名作ですね。考えてみたら、綾瀬はるかとMISIAの組み合わせって、「ぎぼむす」が最初じゃなくて、このドラマからだったのね。当時から「白夜行」も「JIN-仁-」も夢中で見てましたけど、あらためて、00年代以降のドラマ史にとって、綾瀬はるかと森下佳子の出会いは大きかったなあと再認識です。◇武田鉄矢も「白夜行」と「JIN-仁-」でいい仕事をしてました。今回の再放送を見て、もっとも胸に迫ったセリフは、緒方洪庵(武田鉄矢)が南方(大沢たかお)に問いかけた「未来は平らな世でございますか」の一言。…涙が止まらなかった。過去から現代にむけて、一点の曇りもない眼差しで投げかけられた悲痛な問いでした。
2020.05.05
「美食探偵 明智五郎」の初回ですけど、一見して、ワケわからん感じのドラマです。あまりにも突拍子がなさすぎて。斬新… というよりも、たんにドラマの作り方を知らないのでは?という疑念のほうが大きい。意図的にやってると思うほどの知性は感じないのです。カメラのピントの合わせ方すらおかしいんじゃないの?ってところもある。◇視聴前は、NHK『トクサツガガガ』のコンビだと期待したものの、実際のところは、日テレ『偽装不倫』のスカスカドラマの雰囲気のほうが強い。宮沢賢治をうっすらまぶしただけの恋愛ドラマと同様に、ダビンチをうっすらまぶしただけの探偵ドラマに終わるのでは?◇正直、いまの日テレのドラマ部門がどうなってるのかよく分からないけど、読売テレビの「シロクロ」がかなりの完成度を見せた半面、日テレ本体のドラマ部門は、基礎から崩れてるのでは?との不安もある。まあ、局にとっては、数字さえよけりゃあ何でもいいんでしょうけどね。ドラマ史に残るような「変なドラマ」になる可能性はあります。
2020.04.13
「野ブタ」。15年経つのだそうです(笑)。じつは、このブログも2005年に始まったので、当時は、このドラマのことをけっこうレビューしました。今はなきアマゾンリストにも、こんなことを↓書いていた。青春ドラマの、とらえがたいヒューマニズムとアンチ・ヒューマニズム、もしくはリアルとアンリアルを、感受性ゆたかに表現しえてる名作。繊細で、スタイリッシュで、ちょっと寓話的で、謎めいていて、じつは哲学的。ほんの少し映像を見ただけで、すぐそれと分かる前衛的な“日テレスタイル”。それがこの作品に到達したんだ、と思わせてくれるような快挙です。宇梶剛士、高橋克実、清志郎、夏木マリら“大人たち”の怪演も見事!うーん。なるほど…。ストーリーはまったく覚えてないけど!(笑)とにかく、木皿泉の脚本と、岩本仁志の演出に、あのころの日テレ土9の魅力がたっぷり詰まっていたのです。たんなるジャニタレドラマじゃあなかったんだよね。そのことだけは覚えてる(笑)。ちなみに当時の日記はここらへん↓に残ってますが、https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/200510160000/https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/200511290000/https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/200512130000/https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/200604180000/https://plaza.rakuten.co.jp/maika888/diary/200605110000/ざっくり読み返してみると、第7~9話あたりが肝だったのかなあ。プロデュースする方とされる方の関係が逆転し始めて、それまで完璧だった亀梨くんが徐々にバランスを崩していく第7話は、素晴らしい内容でした。まだ最終回が残ってますけど、第9話を見た段階で「名作」と言ってしまいましょう。今回の登場人物の一人は、明らかに自殺してしまうような女の子。現実に存在する「絶望」の片鱗をかいまみせながら、かろうじて青春ドラマに救いを与えるための素晴らしい演出でした。一歩手前で、絶望の片鱗だけを見る。「絶望」について考えるためには想像力が必要だし、その点では、この一種寓話的な脚本というのは、とても印象的で、効果があったと思う。「絶望」というのは実際に存在するけど、でも、誰も落ちてなかった。ただ、人型だけが、草むらに残ってる。それを4人で見てる。このシーンが、そのことを象徴しています。…だそうです。われながら、まったく覚えてない(笑)。まあ、第1話を見返してみても、いまだに通用する内容だったんじゃないかとは思います。来週は第2話をやるんですね。
2020.04.12
「アライブ がん専門医のカルテ」が終了。すごかった。ご苦労さま。よく11話もやりましたね。低視聴率なのに(笑)。終盤はほぼ一話完結だったので、ある意味、早く切り上げることもできたわけだし、逆に、ずっと続けることも出来たのだろうけど、11話に収めたのが、ちょっと不思議な気もする。低視聴率のわりに(いや、低視聴率だからこそ?)しっかりと丁寧に作ってあったし、スポンサーの圧力にも屈することなく、ひとつひとつの映像にも、妥協しない意志を感じました。屋上で深呼吸をするシーンは、ふつうに考えれば木村佳乃の死亡フラグになるはずだけど、それを逆手にとって、彼女を生かしたことは、医療への希望を抱かせる強いメッセージになってましたね。まさに医療ドラマの真髄を見た感じ。そして、男性中心の医療ドラマにはありえない、女性ならではの独特の美しい世界観がありました。完全無欠の作品とは思いませんが、なにげに、今季の作品の中で、いちばん「終わって寂しい」と感じてるかも…。もうすこし2人の姿を見てたかった。これが、おそらく倉光泰子の代名詞作品になるのかなと思う。「百合」といってしまえば身も蓋もないけど、この脚本家の個性には今後も期待したいと思わせます。
2020.03.20
「知らなくていいコト」が終了。お世辞にも良質なドラマとは言えなかったけれど、最終回についていえば、まあ可もなく不可もなく収まったって感じです。よくいえば「妥当な結末」に落ち着いたかなと思う。◇もしかしたら、乃十阿の本妻は、事件の真相を知っていたのではないでしょうか。それを承知のうえで、彼に冤罪を背負わせたのでは?乃十阿を殺人犯に仕立てることで、息子を守ってピアニストとして成功させ、自分は外交官と再婚して幸福な人生を送った。それこそが、夫の不倫にたいする仕返しだったように思います。◇同じことは、尾高の本妻についてもいえる。自分だけが子供を押しつけられて、尾高とケイトが幸福になるなんて許せないですよね。だから、あえて子供を尾高に押しつけて、彼女は彼女なりに幸福な人生を歩もうとしている。それが夫の不倫にたいする仕返しなのだろうと思います。不倫をするのは個人の自由だと思うけど、不倫をされた側の人間にだって、相手に仕返しをする権利ぐらいあるはず。そうじゃなかったら不公平だもんね。◇結局、尾高は、本妻にも捨てられ、ケイトにも捨てられ、何もかも失って、おそらく乃十阿と同じような人生を歩むことになるでしょう。そもそも尾高は「自分の女」には興味がない男です。だからこそ「他人の女」を愛してしまう。ケイトもまた「自分の男」には興味がない女です。だからこそ「他人の男」を愛してしまう。そういう二人が結ばれても幸福になれるはずがない。どうせ、自分のものになった途端に興味を失うのだから。ちなみに尾高がケイトに対して、「命を削って真実に突き進んでいくケイトが好きだ」「曖昧に流されることを美徳としてる世の中に 真実はこうなんだと切り込んでいく技がある」とかなんとか言ってましたけど、それって、近所のラーメン屋のスープが市販品だと暴いた記事のことだっけ?◇登場人物のなかで、唯一、まともな幸福をつかみとれるのは、土壇場で権力に屈した岩谷だけですね。他人に不倫を勧めたりするわりには、自分自身はけっして不倫をしない人だから、夫婦ともども出版人として成功していくでしょう。会社にも収まり、家庭にも収まるタイプの人ですね。最終的に、そこからはみ出ない人です。そしてもうひとり、作家として成功するのが野中ですよね。彼はやがて第7話の西村雅彦みたいな、有名作家の大先生になっていくのですから、いずれは週刊イーストの記者たちも、接待でおべんちゃらを使わねばならないでしょう。小泉愛花は、あのまま野中との関係を続けていれば、いずれは有名作家の奥様になれたはずなのに、野中をポイ捨てにしたせいで、万年下っ端の記者にアンパンを与えるだけの女になってしまった。これがまさに「妥当な結末」だと思います。◇ところで、乃十阿が尾高のスタジオで受け取った小包は、いったい何だったのでしょうか?彼の無罪を証明するような資料を、弁護士が送っていたのかもしれませんが、乃十阿は、それを捨ててしまったのでしょうか?そうやって彼は、死ぬまで不倫の罪を背負っていくつもりなのでしょうね。…それはともかく、回収しないくせに思わせぶりな伏線だけまぶすのはやめてほしい。スタインベックの小説をちらつかせながら、最終回でまったく触れなかったのも「何だかなあ…」って感じです。
2020.03.12
「大食いヤラセ番組」とか、あいかわらずどうでもいい話…。どんな名目でテレビ局内を取材させてもらったのか知らないけど、親切に制作現場を案内してくれた番組プロデューサーのことまで、取材が終わったら、容赦なくバッシングして切り落とすんですね。なんというか、弱肉強食というか、えげつない世界です…。◇さて、2時間あれば事足りるような内容の話を、毎回毎回つまらない”スクープ”ネタを交えながら、むりやり10話分のドラマに引き伸ばしてきた作品ですが、はたして論評に値するのかどうか疑問に感じつつも、いよいよ来週が最終的ってことで、結末を待ちたいと思います。◇ケイトの父である乃十阿徹は、悪意のない子供の過失(殺意はない)を庇うために、わざわざ家族のことを置き去りにしてまで、なぜ死刑をも覚悟で「無差別殺人」の罪を被ったのか?(死刑にならず出所できた理由も不明ですが)なぜ弁護士でさえ気づくような真実を、妻が気づかなかったのか?じつは妻も、夫が冤罪に見舞われるのを黙認したのでしょうか?おそらく乃十阿が隠したかったのは、子供の過失よりも、さらに重大な真実だったのでしょう。そして、そこには、おそらくケイトの母との「不倫」が関係していたのでしょう。そのことをケイトの母は知らなかったのでしょうか?スタインベックの小説とはどんな関係があるのでしょうか?なぜ尾高のスタジオに届けられた小包を、乃十阿は、勝手に可燃物として廃棄したのでしょうか?◇ここまで不倫のネタを引っ張ってきたドラマですから、最終的に「不倫」にたいして何らかの裁定を下すはずですが、たんに「不倫はいけません」なんて陳腐な結論になるとも思えない。とはいえ、そう簡単に不倫を肯定できるわけでもありませんよね。不幸な恋愛がもたらす悲しい結末にも向き合わざるを得ない。>真壁さんの彼だと思って見てた野中さんはステキだったけど、>自分の彼になってみたら、そうでもなくなったっていうか。(by 小泉愛花)この頭の悪い尻軽女のセリフにこそ、永遠不変の真実がありますよね。つまり、誰しもが「他人のもの」を欲しがるのです。ケイトの母が乃十阿を欲しがったのも、ケイトがいまさら尾高を欲しがってしまうのも、野中がいまさらケイトに嫉妬しはじめるのも、みんな「他人のもの」が欲しくなってしまうからです。ふだんは偉そうにバッシングしてる人たちでさえ、結局は同じ穴の狢です。そして、なぜか自分のものになった途端、自分のものはクズに見えてくる。それこそが恋愛の真実ですよね。
2020.03.05
医療ミスをめぐるエピソードは先週で終わっちゃった?三浦翔平はともかく、田辺誠一さえ登場しないのですね…。木村佳乃と田辺誠一の関係を清算しなくていいのかなあ…。せめて木村佳乃の逡巡にスポットを当てて、退職願を出したり引っ込めたりしながら、松下奈緒の家族(遺族)との和解とかも、もうすこし感動的に描いたらよかったのでは?なんて思うんだけど、意外にあっさり病院に留まることにしたみたいです。なんだかメインのストーリーが一段落して、高畑淳子も旅に出てしまったから、うっすら最終回っぽくなった気がしないでもない。次週につなげる要素が何もなくなっちゃった感じ。まあ、一話完結の物語としては十分に成立してるんですけど…、このドラマって、一話一話がけっこう重たいわけだし、やっぱり次週に引っぱる「繋ぎのストーリー」があったほうが、視聴者のモチベーションのためにも得策じゃないのかしら?などと、よけいなお節介まで考えてしまう。制作者サイドは、もう視聴率のことは気にしてないのかな?あるいは、実際に病気と闘っている視聴者のことを想定して、むやみに翌週へ引っぱるような話の作り方を、みずから控えているのかもしれません。そこらへんは制作者の意図ですよね。毎回、最初と最後に美しい屋上のシーンがあります。遠景に横浜の海を見わたせる場所ですね。今回はとくに癒された。あのシーンにも制作者の意図があるのかな。
2020.02.28
いくら有名週刊誌の記者だとはいえ、傷害事件の被害者の顔をテレビ番組でさらすのは、さすがにコンプライアンス違反じゃないかってことと、「私の行きつけのラーメン屋のスープが市販品でした!」みたいな心底どうでもいい記事に比べたら、「ホワイトデーはラスクが定番だよね。」って記事のほうが、まだしもマシだと思えてくることなどが重なってしまい、まずは冒頭15分の前提部分に引っかかってしまう…。さらに最後の15分、収賄の尻ぬぐいを押しつけられた金庫番が、親族の不利益になるような真実を遺書に書き残すくらいなら、最初から自殺なんかせずに真相を暴露すりゃよかったじゃん、という思いも、なかなか簡単には拭いきれない。帳簿データの隠し場所を、なぜ主人公が「犬の首輪」だと確信したかも、けっこう謎です。妙なディテールに細かいわりに、脚本の粗が多すぎるのでは?大石静は、アシスタントにでも手伝わせてるのでしょうか?◇さて、編集長(佐々木蔵之介)は、主人公に、尾高(柄本佑)との「略奪婚」を勧めました。すでに有名人になってしまった主人公は、「殺人犯の娘として」について手記を書くだけでなく、「不倫報道記者自身が略奪婚をする理由」についても、手記に書いて週刊イースト誌上に発表するのでしょうか?「バッシングする側」が「バッシングされる側」になる展開は、このドラマの最大の肝になる見せ場だろうと思うし、だからこそ世間からのバッシングを覚悟で手記を書くべきなのですが、当の編集長自身は、主人公に手記を書かせることに及び腰のようです。「だったら略奪婚なんか勧めてんじゃねーよ!」とツッコミを入れたくもなる。編集長の本来の信念にしたがえば、「殺人犯の娘として」についての手記はもちろんのこと、「不倫記者自身の略奪婚」についての手記も書かせなきゃなりません。人間の様々な側面を伝え、人間とは何かを考える材料を提供する。それがゴシップ誌にあるべきジャーナリスト精神なのだから。いや、あの編集長ですから、最後には怒鳴りつけてでも手記を書かせるとは思いますけど、その前に、まずは殺人犯との血縁を確認するほうが先ですね。◇◇それはそうと、重岡大毅のクズっぷり演技に100点満点!でも、主人公はあのクズ男と付き合ってたんだよね。求婚されたときはウハウハしてたでしょ?たんなる面食いなのでは?他人の旦那を略奪するほど男を見る目があるのかなあ…。
2020.02.27
いやー、だいぶ民放臭いドラマでした。これがBSクオリティってやつでしょうか。潔いくらいに、NHKらしさはどこにも感じられなかった(笑)。暇をもてあましてたはずの田舎の刑事が、借金まみれの実父を疑うミスリードをすることもなく、どんどん真相に迫っていく感じとか…義父が娘を殺そうとするときに、わざわざ法律の条文まで朗誦してトリック説明したりとか…最後は、中山美穂が殺し終わるのを二階で待っていたかのように、登場人物がぞろぞろ階段から下りてくる感じとか…あまりにお約束すぎる設定と、安っぽい昼ドラみたいな演出がいっぱいで、ほとんど内村プロデュースのコントを見てるような気分。80年代の安っぽさをあえて再現するのが「リバイバル」の意味なのかなあ?そのように割り切って見れば、十分楽しめる内容だったのかも。そもそもトリック自体が、複雑なわりに偶然だのみの無謀なものに思えるし、娘に自首させるのはまだしも、偽装自殺なんてさせた日にゃあ、母親が正気を失って真相をバラすに決まっている。まあ、夏樹静子の追悼という意味もあって、なるべく原作に忠実にドラマ化する意図だったのでしょうが、逆にいえば、わざわざNHKがドラマ化した意義は、そこ以外には見出せませんでした。どうせやるなら、もうすこし知的なドラマに仕立ててほしかったけど、ぶっちゃけ、いまのNHKにとって、本腰を入れて取り組むほどの素材ではなかったのかもしれません。
2020.02.25
これが1~2話ぐらいの内容だったら大絶賛してたところ。ようやく第5話になって出てくるというのは遅きに失している。そもそも、このドラマは、犯罪者の心情を探っていく物語なのだから、今回のエピソードは想定の範囲内ですけれど、佐々木蔵之介が語ったジャーナリストとしての信条と、事件当事者の切実な感情が葛藤しあう部分には迫力がありました。問題は、ここから先の話が、さらにどう転がるのか。その展開こそが実のあるものにならなきゃ意味がない。今回がいちばんのピークになるようじゃ話になりません。もう、ここから先は、昨今の話題のネタだの、妙に細かいディテールだの、そんなものを寄せ集めただけの無意味なエピソードはいらないし、柄本佑がカッコいいだの、重岡大毅がカッコいいだの、そんな視聴者向けの安っぽい話題づくりも必要ありません。(あってもいいけどね)とにかく物語のいちばんの幹の部分を、残り数話のなかで実のある内容にしてもらいたいです。ここまで来たら最後まで見るつもり。つまらなかったら、とことん大石静をこきおろしてやる。
2020.02.06
アライブ がん専門医のカルテ。途中参戦だったけど、おどろくほど重いドラマ。よくも民放で、こんな重いテーマに果敢に取り組んでるなァと感心します。たんなる「娯楽」として鑑賞するのは困難なくらい、生死に直面するようなシビアな問題に容赦なく向き合っている。いちおうは、コミカル要素やサスペンス要素もあって、過度に重くなりすぎない演出を心掛けてるようだけど、いかんせん、扱ってるテーマがびっくりするほど重い。はなから視聴率が苦戦するのを覚悟して作ってるのかも。◇脚本は、倉光泰子。前作の「スキャンダル専門弁護士 Queen」では、ちょっと脚本の組み立てが分かりにくかったり、やたらにスタイリッシュな演出にばかり目をとられたけど、考えてみれば、主人公2人の女性の友情をスリリングに描いてる点では同じです。そして、社会的なテーマに取り組んでる点でも共通している。竹内結子と水川あさみのバディがそうだったように、今回の、松下奈緒と木村佳乃のコンビも、普通なら、ちょっと思いつかないような斬新なキャスティング。そして、どちらの場合も、過去に重い因縁を背負ってるという設定なのですね。脇を固める配役にも独自色があって、ほかの脚本家にはない、一種独特な世界観を感じさせます。今後も、心して見ていこうと思います。
2020.01.31
知らなくていいコト。第3話。唖然とするほどツマラナイです…。あいかわらず一話完結部分の脚本がひどすぎる。今回は、ただ大貫勇輔のダンスを見せるために、無理矢理でっちあげたようなエピソードでした。もしかしたら、父親の殺人をめぐるメインのストーリーに、何らかのかたちで結びつくのかもしれませんが、このエピソードじたいはほとんど無意味でした。>>動画の一部が切り取られて、流出・炎上しました。>>取材して真意を語らせて、名誉を挽回できました。…この話のどこに面白さがあったでしょうか?どこにもドラマらしきものが見当たりません。◇篠井英介のブティックのくだりは何だったのでしょうか?母親を亡くしたばかりの女性に会うなり、「あなたが結婚しないのを待ちくたびれて死んだのよ」などと無礼な挨拶をする人間が存在するのでしょうか?「タツミーヌさんとお知り合いなんですか?」などと驚いてましたが、そもそもそれを聞くために取材を申し込んだんじゃないのですか?「自分でコーディネートするのはお金がかかりますよね」と言ったら、「お金をかけないのが才能なのよ」と答えていましたが、これは会話として成立していたのでしょうか?「三丁目の角のラーメン屋」って…、そんな漫画みたいな紋切り型の店があるのでしょうか?住民説明会のシーンでは、いったい誰と誰が争っていたのでしょうか?介護施設の誘致賛成派として、町の老人たちがゾロゾロ集まったりするでしょうか?◇細部の描き方にリアリティがなさすぎる。適当な材料を寄せ集めて話をつくったら、そこにバンクシーだの、小澤征爾だの、蜷川幸雄だの、それっぽいネタをまぶしてるだけじゃないですか?このドラマのつまらなさは、あまりにも低次元な脚本にこそ原因があると思います。主演の吉高由里子に責任を押しつけるのは筋違いです。
2020.01.23
やっぱり大石静の脚本には、かなり不安があります。実力に見合わない複雑な内容に挑んで、かえって詰めが甘くなっているのでは?前回もそうだったけど、とくに一話完結パートのエピソードがお粗末。付き合ってる男にDNA婚活を勧める女って、理解不能です。恋人に婚活させながら付き合いつづけるって、どういうこと?このDNA婚活のエピソードは、「殺人犯の娘との結婚を受け入れられるのか」という、メインのストーリーにも関係するのでしょうが、それだけに、エピソードの説得力が弱すぎる。◇毎度毎度、主人公の書いた記事が、大スクープみたいに絶賛されるのにも閉口します。正直、たいした記事じゃなさそうなんだよねぇ。こういうのも、駄作ドラマにありがちな悪しき予定調和だと思う。それから、各回ごとに日付が区切られてるようですが、週刊誌の発売日以上の意味があるのでしょうか?◇殺人犯の父親をめぐるメインのストーリーも、どこまで緻密に作られるのか、ますます不安になってくる。秋吉久美子が、父親にかんする秘密を、あえて娘の恋人(柄本佑)に打ち明け、まだ自分の死期すら分からなかった段階で、結婚の意志すらない娘の将来を彼に託したのは何故でしょうか?そして、その目算が外れて、娘がべつの男と付き合ってしまったことを、秋吉久美子はどう思っていたのでしょうか?それから、もともとは結婚する意志のなかった主人公が、重岡大毅との結婚を望むようになったのは何故でしょうか?まだまだ分からないことが多いですが、そうした伏線がどこまで精密に回収できるのか、それじたいが疑わしく思えてきます。
2020.01.18
スカーレット。黒島結菜が台風のように暴れ回っていて驚かされます。彼女は、トーク番組などで喋ってるときは地味目の人ですが、ドラマで演技をするときのヒロイン感がすごい。登場した瞬間、彼女を中心に物語が動いていくのです。そのままヒロインに取って替わりそうな勢いです。今後は、伊藤健太郎も登場するってことで、後半はもう別のドラマに変わっちゃうんじゃないか?どんどんアシガール化していくんじゃないか?と思えてくる。松永三津のキャラなら戦国時代にまで跳んでいきそうです。わたしは、今後の朝ドラヒロインのイチオシ候補として、志田未来や上白石萌歌のことを考えていたけど、もしかするとNHKへの貢献度の面でも、黒島結菜が最有力の候補として急浮上してくるかも。満島ひかりや二階堂ふみのような異才ではないけれど、仲間由紀恵や新垣結衣のような民放系女優とも違う。おそらくNHKでこそ輝くタイプの人じゃないかと思います。
2020.01.12
映像を見た瞬間、「あ、これは水田伸生ね!」と思ったけど、違ってた(笑)。でも、プロデューサーは大塚英治と西憲彦。日テレらしいテイストは濃厚に出ています。ひさびさに「日テレドラマだわあ」って感じ。そのうえ、『正義のセ』の吉高由里子と、『けもなれ』の山内圭哉と、『高嶺の花』の華道、ならぬ茶道が出てきて、なんだか一昨年の日テレ作品がひとつになったみたい。しかし、何といっても父親役が小林薫で、しかも犯罪が絡んでいますから、『Mother』や『Woman』など坂元裕二の作品を強く意識させます。父と娘あるいは母と娘の関係が、大きなテーマになるのでしょうか。一話完結部分の老女の詐欺被害をめぐるパートは、いまひとつ深みに欠けるエピソードだった。作品の軸になる親子の物語は、どれだけ深まっていくでしょうか?はたして良作になるか、駄作になるか、今のところ、まだちょっと評価しにくいです。大石静の脚本に、坂元裕二と同じレベルを期待できるか、やや疑わしくもある。
2020.01.09
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