メートル・ド・テル徒然草

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エルネスト1969

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Apr 26, 2006
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 レストランに勤めていると、お客様から料理を誉めて頂くことももちろんあります。また、おすすめしたワインなどが口に合って喜ばれる時もあります。

「あっさりしてて、美味しかったわ~」
「さっぱりしてて、美味しいわね」

 はて!?
 ご提供した料理は必ずしも「あっさり・さっぱり」したものではありませんでした。それに合わせたワインも決して薄味のワインじゃ無くて、結構コクのあるもの、、、
 そもそもフランス料理においては、だしの取り方に始まって、様々な調理法も「抽出と濃縮」に重きをおいている面があります。良い食材と言われるものは、得てして他の同じ食材と比較して濃いものですし、昨今のワインも「美味しい」と評価されるものは主張のはっきりした濃度を備えています。
 ひとつの味に慣れて来ると、さらなる刺激を求めようとしますので、「美味しい」と言われれば言われるものほど、その味は濃くなっていくケースが多いのです。

 しかし、よくよく考えてみると気付くのですが、日本語でいう「あっさり・さっぱり」は後に続く「おいしい」を強調するための修飾的な意味合いで使われていることが多いのです。

 美味しい→しっかり食べられる→食べられることができるのは、あっさりしてるからだ。


 これが、フランス語だったりすると、やはり食文化の違いでしっかりと味の乗った料理を指して、「上あごが大喜びするほど美味しかった!」と言うような言い回しがあるそうです。

 では、そもそも「美味しい」とはどういうことか?
私はとにかく「味のバランスが良い」ということだと考えています。

 美味しい塩もあります。美味しい野菜もあります。美味しいと言われる水さえあります。
 でも、肉や魚に調味をせずに食すことはありません。どんなに美味しくても、塩だけを料理とは言いません。

 料理として人の手が加わった時にそれぞれがバランスを取り合いながら、「美しい形」を形成する所に、料理としての「美味しさ」が生まれて来るのです。

 脂のうま味に対しては、良質の塩味を加えることによってバランスがとれます。塩味に対しては乳脂肪分の甘味がまろやかさを生み出します。

 それがチャーミングであれ、ダイナミックであれ、いづれにしてもバランスが悪いと美味しくはなり得ないと言えます。

 しばしばシェフやキッチンの料理人から
「お客様が今日の料理についての感想を聞いて欲しい。」
と、言われることがあります。


 サービスマンとして、例えお客様から「あっさりしてて…」と言われたとしても、適切なニュアンスを噛み砕いてシェフなりキュイジニエに伝える技量が必要なのです。

 お客様の言われる、「あっさり・さっぱり」は非常に「バランス」がよくて美味しかったと同義語であると私は考えています。







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Last updated  Apr 27, 2006 09:46:10 AM
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Comments

背番号のないエースG @ チョコレート 「風の子サッちゃん」 ~ Tiny Poem ~…
坂東太郎G @ 「辛味調味料」そして考察(01/16) 「石垣の塩」に、上記の内容について記載…
エルネスト1969@ Re[1]:ホスピタリティは「人」ありき(10/04) はな。さんへ コメントありがとうございま…

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