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Hiro Maryam

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2015年07月12日
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テーマ: 短編を作る(405)
カテゴリ: Short stories
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短編 〜スポットライト〜






着古して黄ばんだシャツをまとった少女は、

2年前にはちょうどよかったけれど、

今となっては、引き締まった小動物の脚のような彼女の腿を、

ほとんど隠すことができてないスカートを身につけていた。


最後に切りそろえたのはいつだろうか?というほどに不揃いな、

肩を5・6センチ越して伸びた髪を無造作にひとつに結き、

公営集合住宅の空き地と隣接した畑を囲ったネット、その上のわずかなスペースの上に、

器用に腕と脚で絶妙なバランスを取りながら、

身軽そうな細い身体を委ね、彼女は座っていた。



それは、よく晴れた初夏のことだった。

夕暮れにはまだ早い時刻で、微風が出てきていた。

少し傾いてはいるが、真夏を思わせるように輝く日差しを、

顔にも、全身にもスポットライトのように浴びながら座っている彼女は、

顔を少し左へむけ、奥二重の眼を細めていた。

整った目鼻立ちを少し歪ませたその表情は、

6・7歳と思われるその少女を、

思春期の娘よりも大人びて見せていることに、

わたしは驚きを隠せなかったのだった。



カメラ片手に散歩していたわたしに気づいても、

彼女は姿勢も表情も変えずに座ったままだった。



彼女が一体いつからそうして、どこを見ているともなく、

風景と風に馴染むようにゆったりと座っていたのか、わからなかったが、

そうしていることは、わたしが思うほどには、容易でなかったのかもしれない。



驚かせないようにゆっくりとそっと近づき、

こんにちは 


っと少し離れたところから、わたしは彼女に声をかけた。





”今”に溶け込むように座っている彼女のこの姿を

cameraに収めたい衝動に駆られたからに他ならなかった。

それを彼女に伝えようと声をかけたのだったが・・・





すると彼女は猫のように全身のバネを縮めてから伸ばし、

座っていたとこから小さなつむじ風を起こすかのように、

わたしの目の前に降り立ったのだった。



こんにちは・・・

わたしから何を言われるのか?


っと、不安そうではあったがそれを隠すかのように、

それまで一文字に引き締めていた唇の端をあげて、

微笑するようにして彼女は答えたのだった。




そしてこういう結果を思慮することなく、

彼女に声をかけてしまったことを、

その後長いこと、わたしは後悔することになったのだった。









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Last updated  2015年07月13日 00時40分43秒
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