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前号終了間際のあらすじ 「話は梅の木のことだぞ、俺たちにとっちゃ、下手な怪談話より 怖えだろ・・」 「ちょっと、酔い醒める・・・」 そう言った香織も目つきを変えて裕也と顔を見合わせた。「あの梅の木は」 第11話「何か・・・いや、誰かがいたようなって・まさか人影が見えた なんて言わないでしょうね、裕也」 「そのまさか・だと思う・俺が目を見開いた瞬間、見られた!と 思ったのか、その人影はあわてて俺に背を向けて・・・」 そこまで言って裕也は自身の言葉でその光景がよみがえり、背筋が 凍る思いがして思わずゾクッと身を震わせた。 裕也の凍る思いが香織にも伝わったようで、彼女は裕也の腕を強く 掴みながら先を知りたがった。 「ねえ裕也、その先は?『俺に背を向けて』のその先は?」 「なんだよ、お前震えてんじゃん。怖いんだろ?」 「そうだけど・・怖いもの見たさって、あるでしょ、あれよ」 裕也は香織の好奇心の旺盛さに呆れたが、それが彼の心に余裕を もたらしてくれたことに気付かずに・鼻で笑って応えた。 「俺に背を向けて・・・梅の木に・・入って行った?いや、消えて ・・った? 香織、思いだしたらまたゾクっっとしたじゃないか 背中がさあ・・・」 「人のせいにしないの!さっきは鼻で笑ってたくせに!元はと言えば 裕也が見てしまったからでしょ・・それを・・・」 確かにそうだったと思い直し、香織の『それを』という言葉を 具体的に言い直した。 「あれは、なんと言うか、半透明な感じになって・人がだよ、梅の 木の向こうに入ってったと言うか、消えてったというか・・・そんな 感じだったんだ」 今度こそ、香織は背筋が凍るような錯覚に襲われ両肩をすくめた。 「まるで、パラレルワールドみたいな・・・!!」 ハッとしたように背筋を伸ばした香織の変化に裕也が気付いて 「どうした?なにか思い出したようだけど」 「そう、そうなのよ!パラレルワールドって自分で言って思い出した の」 「なにを?」 「ブルースのマスターはね、大学が理系で物理学とか専攻してたって そんな話聞いたことがあるのよ、行ってみない?」 軽く首をひねった後、裕也も香織に同意した。 「行ってみるか、どうせ二人でああだこうだと考えてみたところで、 結論出そうにないしな・・・問題は信じてもらえるかどうかだけど」 「そこよね・・・知識はあっても経験値ゼロじゃね・・・」 「まあ、俺たちはその知識さえ持ち合わせてないんだし、行って 話してみて、だめなら他の手を考えるとしようぜ」 「うん、そうと決まったら飲み直ししようよ裕也」 「だな、このままじゃ眠れやしない」 「なにやってんだよ、二人で、早くこっちこっち!」 リビングでママにも相手をしてもらえなかったのだろう 香織パパが嬉しそうに手招きしている。 「香織パパに負けないくらい飲まなきゃな」 「そりゃ大変だわ!」 いつも有難うございます。(^^♪
2026.04.29
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「あの梅の木は」 第10話 香織ママはアルコールが適度にまわってくると、普段に増して陽気に なる。 「でさあ、香織、あんたたちどこまで進んだの?」 「な、なによ!急にそんな話、パパもいるっていうのに!」 それまで裕也と話が弾んでいた香織パパが振り返って首をつっこむ。 「なになに、なんのことだ進んでいるって?」 「もう、おとうさんったら地獄耳なんだから、いいのよ男同士で他愛も ない話に花をさかせていれば」 「何だよ、そんな邪険にしなくてもいいだろ!教えてくれよー」 香織が両親の間に立ちはだかって言った。 「いいえ!パパには絶対に教えません!」 仁王立ちで、おまけに拳をにぎって言い切る娘の姿に、父親は成す術も なく、 「何だよ、そんなに怒ることないだろ・・・」 語尾が消え入りそうである。 裕也はそんな父と娘のやりとりを見て、吹き出しそうになり、あわてて 口を手で塞いだ。 「ママ!・・・」 「分かった、もう聞かないから・・・あなたも余計な詮索しないこと! 分かった!?」 「じゅうぶん、分かりました・・・」 「まあまあ、もうそのくらいで、お父さん、ほら飲みなおしましょ」 「うん、裕也君は優しいなあ、やっぱり男同士だな、うん・・・」 すっかりしょげ返った父を見て、母と娘は顔を見合わせて噴き出した。 裕也は咳払いで香織に自分の方を見るように促がし、顔を小刻みに振った。 顔には「もう許してやれよ」と書いてある。 自分のグラスにビールを注ごうと身体の向きを変えた裕也の目に! (あれは何だ!?) 彼の目が庭が見えるガラス窓に釘付けとなったがそれは一瞬のことで、 直ぐに立ち上がり、窓に近づいていく。 香織が異変を察知した。 「どうかしたの?裕也?」 「今、梅の木のところに・・・」 そう返事をしながら彼の手はすでに窓のサッシを開け始めていた。 そばに来た香織が 「どうかしたの?・・・」 そう言いながら彼の目線を追って梅の木を見る。 「今、なんか・・いや誰かがいたような・・・」 「やだ、まだ怪談話には早すぎるでしょ、飲みすぎじゃないの?」 「話は梅の木のことだぞ、俺たちにとっちゃ、下手な怪談話より 怖えだろ・・」 「ちょっと、酔い醒める・・・」 そう言った香織も目つきを変えて裕也と顔を見合わせた。 いつも有難うございます。♪
2026.04.23
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「あの梅の木は」 第9話 〇申し訳ございません、署名の件、問題点があり取り止めとさせて頂きます。 お騒がせして申し訳ありませんでした。 「俺が本気だとか言うけど、お前は、香織はどうなんだ、さっき 滝沢精肉店の反応を自分で確かめたんだろ、どう思った?」 「・・・正直に言うとね・・・認めたくないんだよね」 「認めたくない?」 「うん、だって・・・本当に裕也が次元の隙間に落ちて向こうからやって来たのなら、中一の時に知り合った 裕也とは別人ってことにならない?『アナタ』は・・・」 香織が口にした『アナタ』は裕也にとんでもない衝撃を与えた。 その衝撃は、裕也の中に後悔の念を呼び起こした。 (あの梅の木に違和感を感じることさえ無かったら・・・ 例え違和感を持ったとしても、こんなこと、誰かに相談した ところで解決できるとは思えない。そんな難問を打ち明けられた 香織をどれだけ悩ませたんだ! 俺は香織との間に大きな溝を作ってしまったのか?) 香織は香織で、裕也の表情の変化から彼が今、大きな衝撃を 受けていることを感じ取っていた。 (『アナタ』の一言、それは口にすべきでは無かった!一番 辛いのは異次元に跳ばされてしまった裕也本人なのに!) 「裕也!ごめんなさい!さっきは『 別人だ』なんて言って、 おまけに『アナタは』って、冷たい言い方をしてしまって・・ 傷付いたよね、本当にごめん!」 「いや、香織は全然悪くない、悪いのは、今日香織に確認して もらってこの不安を共有してもらおうとした俺の方なんだ」 「・・・・・・・・」 「男のくせに情けない奴だ俺は!」 香織が首を振って裕也の言葉を否定する。 「そんなことない!こんなこと経験したひとなんて誰一人いない んじゃない!?、それこそ『事実は小説より奇なり』っていう 類のことでしょう?男も女もないわよ、自分のこと責めることない!」 危なかった、裕也はよそを向いて瞼を指でぬぐった。 「ああ、もう今日はこれまにでしとこう!言い出しっぺが言うのもなんだけど」 「そうね・・・今夜はもう飲んじゃうお酒!」 「え、それって俺も・・・」 「しょうがない、お酒の力でも借りなきゃ眠れないでしょ今夜は!」 とは言え、そうそう朝帰りを続ける訳にもいかず、今日は香織の家で 夕食に続いて飲み始めた。そしてまた例の人が墓穴を掘ることに。 「裕也君はそのソファで寝ていいから」 と裕也と香織が座るソファを指さした。 例によって香織ママが助け船を出す。 「そんな可哀そうなこと言わないの、裕也君は香織の部屋で寝るでしょ 婚約してるんだから」 「またそんなこと言って、お母さんは少し軽すぎないか?」 「あら、夜中にソファを抜け出して私の部屋に忍び込んで来てた のはどなたでしたっけ?」 「おい、かあさん、娘の前でそんなこと言うなよー」 またしても伊達家のリビングが笑いに包まれた。いつも有難うございます。読んで頂けると励みになります。♪
2026.04.16
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「あの梅の木は」 第8話 「俺はここで待ってるから」 裕也が指さしたのは、中野と杉並の区堺に沿って曲がるその角、 つまりは石橋豆腐店の角が見える児童公園のベンチだった。 「わかった・『伊藤ハムの太いソーセージ状のハンバーグ』を 下さい、でいいのよね?」 「うん、それでいい。悪いけど頼む」 頷いた香織は道の向こう側に渡り、やがて石橋豆腐店の角を曲がった。 待つこと約10分、手提げの買い物袋を下げた香織が道の両側を 確認しながら道を渡り、歩道を進み公園に入って来た。 一目でご機嫌斜めだとわかる顔つきだ。 「よ、悪かったねえ、まあこれでも飲んで」 裕也は待ってる間に近くの自販機で買ったコーラを差し出した。 香織は手にしていた手提げを裕也に預けてコーラを受け取ると、 ゴクゴク喉を鳴らして500ミリの半分近くまで飲んでしまった。 「おー、豪快だねえ」 「誰かさんのお陰でねー!すっごい喉渇いた、フー・・・」 「はいはい、ほんと悪かった。で、どうだった反応は?」 「結構引いてたよおばさん。それからご主人に『また伊藤ハムの ハンバーグだって、うちで扱ったこと無いのにねえ』って怪訝な顔 されちゃったよー、先にお母さんから頼まれた分を注文しとくん だったよ~」 「やっぱりなあ、そうかーやっぱり・・・」 「ねえ聞いてる?」 「あ、わるい、聞いてるよもちろん。俺ん時と同じだやっぱりな」 「何がやっぱりなの?ちゃんと説明してよね」 「うん、あれだよ『桜の木と梅の木』の『伊藤ハムのハンバーグ』 バージョンってことなんだよ」 「えー、木の場合は桜と梅の2種類だけど、今日のは『伊藤ハム のハンバーグ』だけじゃない。どう同じなのよ」 「簡単だろ、香織んちの庭に桜の時は売ってあって、梅のときは 売るどころか扱ったことも無いっていう、『有る無しバージョン』 ってことさ」 「裕也・・・」 「何?」 「あんた簡単に言ってるけど、それってもう世界がここだけじゃない って、一つだけじゃないって認めちゃってるってことになるんだよ、 それ分かって言ってる?」 「勿論さ・・・そうなるだろ?」 「ちゃんとあたしの目を見て言って」 裕也は目に力を込めて 「それしか考えられないだろ」 「本気だ、こいつ・・・」 いつも有難う御座います♪
2026.04.11
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「あの梅の木は」 第7話「裕也、何してるの?」 裕也は香織の声で気が付いた。 伊達家の玄関先で梅の木に見入っていたことに・・・。 梅の木の向こうに、桜の木が重なって見えた気がしたような、 そんな錯覚に陥っていたのである。 「あ、うん、今行く」 玄関のドアを閉めながら香織は裕也の顔をのぞく。 「どうかしたの?心ここにあらずって感じだよ」 「ごめん、後で話す・・・」 「あら、いらっしゃい裕也君、久しぶりねえ、さあ 上がって上がって」 「どうも、ご無沙汰してます。これ少しですけど」 途中で買ったショートケーキの入った、テイクアウト用の 手提げボックスを差し上げた。 「あら、そんな気を遣わなくていいのに、でもありがとう」 手提げボックスを手に香織ママはいそいそとキッチンに向かった。 裕也がリビングに入り、「おじさん、こんにちはお邪魔します」 と言い終わらないうちに、香織の父親が不機嫌な声を出す。 「裕也君さあ、嫁入り前の娘を朝帰りさせるっていうのは、 ちょっとそれはないんじゃないか?」 「あ、すいません気を付けます・・・」 「あらお父さん、うちの父に同じこと何度言われたかしらねえ」 キッチンからダイニングテーブルに手巻き寿司のネタを運んできた 香織ママから耳の痛いセリフが香織パパに届いた。 「おいおい、それを今言うかね?」 「でも、お母さんの言うとおりなんでしょ?」 「お母さん、香織に話しちゃったのかい?それはないよー」 香織パパが頭をかいてバツのわるそうな顔をしたので、リビング にみんなの笑いが起きた。 笑いに包まれた伊達家のリビングダイニングでの賑やかな食事会は 手巻き寿司の好物のネタを巡る香織パパと裕也との争奪戦によって 一層賑やかなものとなった。 やがて、寿司ネタが尽きる前に、全員がごちそうさまを言い箸を 置いた。裕也は自分の立場と感謝の気持ちをこめて重ねて言う。 「ごちそうさま、香織ママすごく美味しかったです」 「気に入ってもらって良かったわ、また作ったげるわよ」 「はい、期待してます」 香織ママは立ち上がりながら 「そうやって喜んでくれると作り甲斐があるわー、誰かと違って」 その誰かさんが苦々しげに 「なんだよー俺ばっか。このふたりには何のペナルティもないの?」 「それもそうね・・・じゃあ」と香織に目をむけた。 「香織、あとで買い物に行ってくれる?」 香織が快く引き受けると、横から裕也が 「それ、俺も一緒に行くよ、俺、急に4丁目の滝沢精肉店のメンチカ ツが食べたくなってさあ」 「え、じゃあサミットには行かないの?」 「いや、行くよ。メンチカツを途中で俺んとこに置いてね」 「なんかめんどうね・・・」 「うん、ちょっと訳ありなんだ」 「・・あそう、じゃ後で・・」 「ああ・・・」 訳ありと聞いては仕方もなく、香織は母親のとなりに行くと、 買ってくるものをスマホにメモっている。 「あ、でも香織あなた明日仕事・・・買い物してたら、裕也君と ゆっくりしてらんないでしょ?」 「あれ、言ってなかった?明日は先週の土曜に休日出勤した代休 だって」 「ああ、そう言えば・・じゃあ頼んじゃおうかしら」 「うん、いいよ、じゃあ行ってくる」 香織は裕也を目で促がして、共に玄関に向かう。 玄関のドアを閉めると香織が裕也に聞きただす。 「訳ありって、どんな?」 「滝沢精肉店でメンチカツを頼んだあとでこう聞いて欲しいんだ」 「伊藤ハムのだったと思うんだけど、『太くてこんくらいの(両手で 長さを示してみせた)ハンバーグが今も売ってるか』ってね」 「伊藤ハムのハンバーグ?」 「そう、香織は知ってる?」 「・・・ハンバーグのレトルトなら知ってるけど・・・それは太い ソーセージみたいね。裕也は知ってたわけね?」 「正しくは、憶えてる、だね・・・香織んちのあれが桜の木だった ら、香織もきっと『知ってた』はず」 この時香織はその答えを持ち合わせてなく、傾げた首は元に戻ったが すぐに閃いた。 「読めた!その時お店の人は『おかしなことを聞くなあ』って顔する わけでしょ?」 「当たり!さすがだなあ、それを香織にも確認して不思議さを俺と 共有して欲しいんだ」 「わかった、やってみましょー!」 「そんな、張り切らなくてもいいから」そろそろ桜が満開です。皆さんの所はどうですか?読んで頂けると嬉しいです。(^^)/
2026.04.04
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