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小説 「scene clipper」 Episode 8窓の向こうには似たようなマンションやビルが東京の主要道路の一つ環状七号線、通称「環七」を挟んでいくつも建っていて、新宿の街並みはビルの隙間からチラホラ見える程度だ。 新宿、あの街は俺の性分に合っている。デビュー前のサザンが出演していたライブハウスもあれば、今は「思い出横丁」と呼ぶようになっているが俺にとっては大切な思い出の「しょんべん横丁」と呼ばれていた飲み屋街があって、それはトイレが無いからのネーミングだったが美味しいもつ焼きを食わせてくれる店があった。上妻と良く飲んだ、あの頃は・・・。 まあ、あの街が見えたところで、今日は足を運ぶ気にさえなれない。 一昨日のことが俺の心を支配したままなのだ。 持ち上げたグラスの中で琥珀色の液体が揺らいでいるのが見える。氷の融解が進んでいるこの様が愛おしいほどに好きだ・・・だから何時もそのまま自分のものにしてしまう、一気に飲み干してしまうのだ。 テーブルの上に置くと、氷たちは浮力を失っているからグラスの底にふぞろいのままで(それがまたいいのだ)横たわる、音を立てて。その様も俺は気に入っている。 テーブルの上のバランタイン12年は残り1/3。 空けてしまえば眠れるか・・・。 氷を入れ替えてバランタインを注ぎ始めると、眠れない原因をつぶしてやろうと、やっと心がたどり着いた。 彼女にとっては辛いことかもしれないが、恋人と瓜二つの俺と初めて出会ったあの日から一昨日まで5回は会ってる。それなのに何故無視したり、ガンを飛ばしたりしたのか、その理由を知りたい。大方のところ察してはいるが、思い違いならまた眠れない。 バランタインと氷とグラスが導き出してくれた答えだ、やっとのことで・・。 皆さんには、眠れない夜がありますか?それをつぶす策、ルーティンをお持ちですか?こっそり教えて下さると参考になります。(^^♪応援いつもありがとうございます。
2023.01.26
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小説 「scene clipper」 Episode 7 (上妻!俺は見てしまったよ・・・) 「あれです、あれですよ!」 部屋の一隅を指さす水城の声はひどく上ずっている。 俺がその壁に近づいて行ったのは、マリの白い歯の笑みの理由が壁に飾った写真にあると、そこまでは読めたからだ。 「だろうな、けど少し静かにしてろ」(なるほど・・・これはマリさんと俺、そんな訳ないがしかし・・・)理由を知らず初めてこの部屋に来てこの写真を見たら、誰の目にもそうとしか映らないだろう。目の前にあるこの写真の中で、マリにしがみつかれて余裕の笑みを浮かべてる男・・・。 「俺にそっくりだよな・・・」マリを振り返ると、また白い歯を見せて笑っている。そこで水城は藪をつついた。 「いやいや、瓜二つっていうんでしょこの場合」「良く言うわねー、本当なら山本さんに初めて会ったその時にコージのこと思い出して、『瓜二つ』ってセリフが出てくるんじゃないの?」 可哀そうなくらいしょげ返った水城を見てさすがにマリもそれ以上追及することはやめた。 「ま、いいわ・・・」そのあとマリは少しだけ言い辛そうに「茶っ葉が切れてたわ、コーヒーの豆も・・・水城、悪いけどそこのセブンでコーヒー豆・・モカよ、買って来て」 そう言ってマリは人差し指と中指の間にはさんだ電子マネーカードを揺らした。 「はい、モカですね」「うん、あんたのタバコも買っていいから」「あ、ありがとうございます」 やっと本来の笑顔を取り戻した水城は飛ぶように部屋を出ていった。 振り返ると、いつの間にかマリがすぐそばにいて、壁にあった写真をはずすと裏返しにして傍の棚の上に置いた。 俺を見るマリの瞳は強くそして純粋な光に満ちていて、目をそらすことなど出来なくなってしまった。「水城君が戻って来るまででいい、私を抱きしめて!お願い」 忘れきれない人への想いは、いつも胸の真ん中あたりを漂っていて、人はそれをぼんやりと眺めていることで、心の波を鎮めて生きていけるのかもしれないが・・・。「けれど・・・風が強すぎると、波を鎮めきれない時だってあるよな」 そう言って俺はマリを抱き寄せた。 書く者にとって応援ほど励みになるものはありません。いつも有難うございます。
2023.01.14
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小説 「scene clipper」 Episode 6 「ごちそうさま!」多少前後しながらではあるが3人の満足した声を受けて福寿のおやじさんは、いつものように温かい笑顔で片手をあげて見送ってくれた。 カラカラと音を立てて水城がガラス戸を閉める(アルミのドアなんかに替えないでくれよ、おやっさん) 俺は立ち止まるとポケットに両手を突っ込み少しばかり腹を前に出すと「フーッ」と息を吐いた。 また白い歯が見えた。「時々、意味深に白い歯を見せて笑うんですね」俺はたまらず訳を尋ねた。馬鹿にされてるのじゃなさそうだが・・「あ、これ?」「そうそう、マリさんが白い歯を見せて笑うのなんて中々見れないのに今日は、あれ?って俺も不思議だったんですよ」「そうなの?あんたにも忘れられちゃったのか・・・」 「え?」「え、じゃないよ、鈍いんだから」「・・・・・」俺「・・・・・」水城「ま、あたしの部屋に行けば思い出すよ」 俺は水城の表情を探った。水城は俺を見て首を傾げるだけ仕方なくマリに続いて歩き始める ここは渋谷区と中野区の区境が近いはず。 中野区に入ったな・・・。と、マリの足が道から外れた。 「ここよ」言われるままついていく水城と俺3階で廊下に出る・・・一番端で立ち止まった。「303」俺、つい口にした。するとマリが「もう覚えたわね」と・・・また白い歯を見せながら言った。ドアが開いて「どうぞ、入って入って、今お茶入れるから」「お邪魔します」と水城と俺 「あ!」水城が素っ頓狂な声を立てた。「分かったでしょ、あたしが何度も白い歯を見せた理由が」「上妻!俺にはまだ・・・あれ!?」予想外な展開!それは次回明らかになる・・予定です。応援ポチよろしくお願いいたします。
2023.01.04
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