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Milkywayです。お元気ですか? 20230604 ロシアのウクライナへの侵略戦争が始まって以来、日本では、ウクライナへの支援のあり方が議論されてきた。中には、日本の憲法を無視し、軍備の拡張を主張したり、武器支援を言い出す人もでた。その意見には私は賛成できない。 【日本は医療と復興支援に徹すべき】 日本の戦闘地への支援は、医療と復興支援に徹すべきだと、私は思っている。その理由の第一は、戦闘が長期化したとしても、いずれは終わる。勝っても負けても、戦いが終わった後のずたずたになった国土も、心身も、復興させなくてはならない。これは、絶対だ。一方、武器を支援すれば、どちらの側にとっても殺し合いや傷付け合いに加担したことになる。そして、死者や負傷者、その家族のなかに憎しみと恨みが残る。それに、日本の憲法は、ノーベル平和賞の対象になったほどだ。そうした憲法を持つ国が、武器支援はできないだろう。それよりは、傷ついた身体と心を治療する医療をまず支援すべきだ。治った人たちが、国を回復させていくのだから。 【ゼレンスキー大統領が日本に望んでいること】 第二に、当のウクライナ自身が、日本からの武器支援を、望んではいない。ゼレンスキー大統領は、G7広島サミットの最終日、21日午後3時半頃に広島に降り立ち、翌22日夜9時半飛び立つまでのほぼ一日半、日本に滞在した。その間、原爆資料館を訪問し、被爆者の小椋桂子と面会した。彼女が面会後の会見で「ゼレンスキー大統領は泣くのを我慢していた」と語った。 広島を後にする前の記者会見で、日本から殺傷能力のある武器の供与を望むか、と問われた大統領は「武器を供与できる国からは武器をいただきたいのが本音だが、法的な制約も十分に理解している」と述べたのである。 続いて、日本に期待することを問われた大統領は「一番期待しているのはやはり技術だ」と明言した。そして、岸田文雄首相と行った会談でもこの問題を話し合い、具体的にはクリーン・エネルギー、鉄道整備、医療などで日本の技術が必要だと伝えたと述べている。 【ゼレンスキー大統領の希望は一貫している】 今回の広島サミットでのスピーチでも会見でも、ゼレンスキー大統領の日本への期待内容は、以前から一貫している。ゼレンスキー大統領の今回の広島でのスピーチ全文(2023年5月21日)https://www.huffingtonpost.jp/entry/zelenskyy-speech-hiroshima_jp_646acdd0e4b06749be14d9eaと、昨年の日本の国会初のスピーチ2022年3月23日 全文訳https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/detail/2022/05/25/21285.htmlを比べるとそれがよく分かる。 どちらのスピーチでも、武力支援は求めていない。彼が求めたのは、医療や、リハビリの機器や技術面での日本の高い技術、アジア各地やアフガニスタンなど紛争地や紛争後の各国における日本からの教育支援、そして福島の被災からの復興実績を知った上での、支援要請だった。(この点については、2022年3月26日の私のブログに書いた)。 【地雷撤去技術の支援】 日本の復興技術に対する高い評価と、復興における日本の貢献は、上記にあげたものだけではない。日本は長い間、地雷撤去技術を地雷汚染国のカンボジアに提供してきた。こんどは、カンボジアがその技術訓練を、昨年11月からウクライナに提供しているのである。 5月29日、ゼレンスキー大統領は、カンボジアのフン・セン首相と二度目の電話会談を行い、地雷撤去技術の提供に対する謝意を述べた。それに応えて、フン・セン首相は、引き続きこの技術支援を行うと伝えた。日本の高い技術が、巡り巡って両国の国土の復興に役立っているのである。【日本は最得意分野で支援を】 上述したように、日本は医療提供と復興支援に徹すべきだと改めて、言いたい。日本の支援のありかたで視野に入れたいことは、日本人の国民性である。攻撃的ではなく、押し付けがましさのない、穏やかさ。加えて、共感性が高く、互いの信頼を大切にする。忍耐強く、使命感も強い。そうした国民性が世界から賞賛され、信頼を得てきているのである。そうした国民性を最大限に生かすべきだと、私は思っている。 日本には、世界に誇るべき平和憲法があり、80年間も戦争をしたことがない国として、世界の賞賛を得ている。日本はそれを守り、その範囲内で支援すべきだ。武器支援でない形で、支援できることを世界に示してもらいたい。支援される側の希望に叶うような支援を、日本人にふさわしい形で、支援するのが最良なのである。 支援相手の望むことを、支援する側にとって最も相応しいやりかたで!支援はそうあるべきだと、私は信じている。
2023.06.04
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Milkywayです。お元気ですか? 20230507 ニューヨーク公共図書館が、国際機関が出している“公共図書館の使命”を体現する努力を続けている図書館だと、このドキュメンタリーを観て改めて気づいた。具体的に書いておく。【国際機関のいう公共図書館の位置付け】 まず、ユネスコだが、1994年「公共図書館宣言」で、公共図書館を “教育・文化・情報の源であり、平和と精神的な幸福を育成するための必須の機関である” と位置付けている。 次に、図書館関連で最重要な機関である国際図書館連盟(IFLA)のガイドライン(指針)では、公共図書館を「公共図書館は、個々人に対して広範で多様な範囲の知識、思想ならびに種々の見解へのアクセスを保障することによって、民主主義社会の発展と維持に資する重要な役割を担っている」と位置付け。https://repository.ifla.org/bitstream/123456789/1057/2/ifla-publication-series-147-ja.pdf もうひとつ、「読者憲章」(The Charter for the Reader in 1992)では、読書が文化的・科学的遺産への鍵であり、国際理解を促進するもので、民主主義の基と宣言している。 つまり、公共図書館は、情報の源であり、平和と精神的幸福のために不可欠の場所であり、民民主義の基を形成し、それを維持するところだと、明確に位置付けられているのである。デンマークには、民主主義と図書館を直接結びつけた「図書館は民主主義を育てる温室」と名づけたプロジェクトさえある。ニューヨーク公共図書館が、上記のような国際的な基本理念を土台に運営されていることがわかる映画のシーンをあげてみる。【情報の源であることに徹する姿勢】 ニューヨーク公共図書館の、情報弱者をなくそうとする凄まじいとまでいえる努力を、この映画は描いていた。この図書館は当然ながら、書籍、音声、写真、画像といった媒体の充実をはかっている。それに加えて、今や、情報源として必須になったインターネットからの情報を、どの市民もが手にできるように、真剣に取り組んでいる。ニューヨーク公共図書館は、積極的かつ多様な形でパソコンの講座を開き、手取り足取り使い方を指導し、機器の貸し出しまでしている。情報弱者を作らない努力である。その徹底した姿勢に私は感動した。【公共図書館の位置付けは、民主主義の維持と発展のため】 公共図書館に対するこの位置付けは、一般市民の我々にはあまりピンとこないかもしれない。だが、上にあげた公共図書館における国際的な主要宣言では、公共図書館が民主主義の維持と発展のために不可欠と言っている。 どうしてか?自由、繁栄、そして社会と個人の発展は、人間にとって、重大かつ根本的な価値である。その一方、それらは、その民主主義的な諸権利を行使できる能力を、市民のそれぞれがもち、社会において積極的な役割を果たすことができてはじめて、達成される。 つまり、民主主義の発展と維持のためには、諸権利を行使できる能力が必要。その能力を得るためには、それぞれの市民がどれほど、知識、思想、文化、および情報に、アクセスできるかにかかっているということなのである。 民主主義の維持にとっては、自由に、無償で、無制限に、情報にアクセスできることが必須。同時に車の両輪のように、情報に対するアクセス能力をもった市民による社会参加も、不可欠だというのである。【ニューヨーク公共図書館の情報に対するオープンな姿勢】 情報に対する‘オープンな姿勢’、‘開かれた姿勢’というのは、思想的枠組みや、時代の流れや、政治状況にも影響されることなく、欲する情報に、誰でもいつでも自由にアクセスできる状態をいう。 そんなことは、言わずもがなと言われるに違いない。だが、これは実は難しい。蔵書を選ぶ人々が、時代や、社会の風潮や、その時代の価値観に影響されてしまう恐れがあるからだ。この映画《ニューヨーク公共図書館》には、選書にあたって“オープンである”ために、徹底的な議論をしているシーンが描き出される。 もう一つ、ニューヨーク公共図書館の「情報に対しての開かれた姿勢」というのは、時代や思想潮流に影響されないということだけには留まらない。本というものそのものにも、枠付けをしないのである。良い本とも悪い本とも図書館自体は、判断をしない。本自体への評価をしないのだ。 この「情報に対しての開かれた姿勢」を、ニューヨーク公共図書館が貫いているのがわかるシーンが、図書館が催した講演会シーンである。その講演は、歴史書に書かれた内容を、嘘だと主張する研究者の講演会なのである。彼は、アフリカでの奴隷貿易にイスラム教が関与していると従来の歴史書に書かれてきたが、それらは意図的に記述された嘘だと、主張するのである。 自らの図書館に所蔵している本の内容でさえも批判する講演会を、その図書館が開催しているのである。普通は、所蔵している本を批判する講師の講演会など、開かないのではないだろうか?だが、ニューヨーク公共図書館は、所蔵されている本を、金科玉条のように絶対視しているわけではないのだ。 私はこのニューヨーク公共図書館のオープンな姿勢と懐の深さに感銘を受けた。情報に対して開かれた姿勢を保ち、枠付けはせず、議論を行っていくと言う健全な精神をみた。 どのような主張に対しても耳を傾ける姿勢が、新たな研究の地平を拓くと、私は信じている。 あらゆる情報に、自由にアクセスできる。それが民主主義の基本である。それを体現する《ニューヨーク公共図書館》。心に残る映画だった。
2023.05.07
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Milkywayです。お元気ですか? 20230429国際刑事裁判所がプーチン大統領に逮捕状を発出したその内容の詳細と、その意義を書いておく。このニュースは、NHKが2023年3月18日に「国際刑事裁判所 プーチン大統領に逮捕状 ウクライナ情勢めぐり」と報じた。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230318/k10014012431000.html 内容は、前回の本ブログに概略を載せたように、オランダ・ハーグにあるICC=国際刑事裁判所が、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちを移送したことが、国際法上の戦争犯罪にあたるとして、ロシアのプーチン大統領とマリヤ・リボワベロワ大統領全権代表になどに逮捕状を出したというものである。【子どもの連れさりとは?】ウクライナの司法当局は、軍事侵攻が始まって以降、東部のドネツク州、ルハンシク州、ハルキウ州、それに南部ヘルソン州で、あわせて1万6000人以上の子どもが、ロシアによって連れ去られたことを確認。そのうちウクライナに連れ戻すことができたのはわずか300人ほど。この事件について、ウクライナ側は、1000ページ以上にのぼる証拠資料を、国際刑事裁判所に提出した。国際刑事裁判所のカーン主任検察官は声明を出し、これまでの捜査から、少なくとも数百人もの子どもがウクライナの児童養護施設などから連れ去られ、多くがロシアで養子に出されたとみられること、それを裏付ける証拠もあると述べた。【子ども連れ去りのロシア側の意図】これほど多数のウクライナの子どもをロシアに移送するその意図は何だろう? それについては、国際刑事裁判所の検察官が “ロシアでは大統領令で養子促進”をしていると明かにした。ウクライナのコスティン検事総長も、3月7日「ロシアは子どもたちを連れ去ることでウクライナの未来を奪おうとしている」とSNSに投稿。プーチン政権は、連れ去った子どもたちにロシア国籍を取得させ、ロシア人への同化を進め、国家としてのウクライナを破壊しようとしていると非難した。この主張の裏付け事実として、プーチン大統領はこれらの取り組みを後押しするため、去年5月、大統領令に署名。ウクライナの孤児がロシア国籍を取得したり、ウクライナ国籍の子どもを養子にしたりするための手続きを簡素化したのである。【ロシアは「連れ去りではなく保護」と主張】他方、ロシアのプーチン政権は、戦地の孤児らを保護するためだと、連れ去りを否定。子どもたちを戦闘地域から避難させるのは当然だと、自らの行為を正当化している。だが実際は、彼らは、ウクライナの子どもをロシア人の養子にする取り組みを進めているほか、政権の主張に沿ったロシアへの愛国教育も行っているのである。この政策をプーチンの下で中心になって進めてきたのが、子どもの権利などを担当する大統領全権代表のマリヤ・リボワベロワ氏だ。彼女は、先月、プーチン大統領と面会した際に、何千人もの子どもをウクライナからロシアに移動させ、各地で養子縁組を進めていると報告していた。また、彼女は、ロシア人の養子になったウクライナの子どもたちの写真を、SNSに頻繁に掲載。プーチン政権の方針を正当化し続けている。【ウクライナ政府はICCの逮捕状を歓迎】ICC=国際刑事裁判所のプーチンとマリヤ・リボワベロワへの逮捕状発出について、ウクライナ政府は歓迎するコメントを次々に発表した。ゼレンスキー大統領はビデオメッセージを公開。「歴史的な決断だ。テロ国家の指導者が公式に戦争犯罪の容疑者となった」と述べ、歓迎。この中でゼレンスキー大統領は、何千人もの子どもをロシア側に違法に連れ去る行為は、国のトップの命令がなければ行なえないと述べ、「子どもたちを家族から引き離し、ロシアの領土内に隠す行為は、明らかにロシアの国策であり、国家的悪事だ」と述べ、プーチン大統領の責任を厳しく追及していく姿勢を強調した。続いて、シュミハリ首相も「プーチン大統領に逮捕状が出されたことは正義に向けた重要な一歩だ。この犯罪やその他の侵略の犯罪に責任があるのはプーチン大統領だ。テロ国家の指導者は法廷に出てウクライナに対して犯したすべての犯罪について述べなければならない」とSNSに投稿した。さらに、ウクライナ大統領府のイエルマク長官も、SNSで「これは始まりにすぎない」とコメント。「ウクライナではロシアによる子どもの強制的な連れ去りが、1万6000件以上確認され、捜査が進められている。実際の人数はこの何倍にもなるかもしれない」と記し、子どもの帰還に向けた取り組みを進めていると強調した。その他、ウクライナのコスティン検事総長もSNSに「逮捕状が出されたということは、プーチン大統領は、ロシア国外では逮捕され裁判にかけられるべき人物となったことを意味する。世界の国々の指導者は、プーチン大統領と握手をしたり、交渉したりすることをためらうようになるだろう。これはウクライナと、国際法の秩序全体にとって歴史的な決断だ」と逮捕状が出されたことを歓迎した。【この逮捕状への各国の反応】欧米各国や日本は、子どもたちの連れ去りに関する責任者だとして、プーチンはじめ関係者を、資産凍結の対象にするなどの制裁を科した。ただ、国際刑事裁判所へは、日本を含む123の国と地域が参加しているものの、ロシアやアメリカ、中国などは管轄権を認めていない。そのことから、プーチン大統領が実際にこうした国々では逮捕される可能性は極めて低いとみられている。他に、ロシアが身柄を引き渡すとは思えないこと。プーチンが逮捕されるような国に出国するとは思えないので当分の間、身柄をおさえるのは現実的ではないという意見もある。【プーチンへの逮捕状の意義】しかし、逮捕状がでたからには、そこに積極的意義があるのではないだろうか?それは何か?元ICC裁判官の尾崎久仁子・中央大特任教授はこう言う。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB244XT0U3A320C2000000/一つは「あえて逮捕状を出したと公表したのは子どもの連れ去りがいまも引き続き行われているので、こうした犯罪が繰り返されることを阻止するとともに、ほかの非人道的な行為を抑止する狙いもある」ということ。二つ目は「ロシアという国連安保理の常任理事国である大国の現職の大統領がこういった犯罪で逮捕状を請求され、正式に被疑者になることが国際社会に与える影響は大きい。いままでロシアに対して中間的な対応をとってきた国々に一定のインパクトを与えるだろう」ということ。三つ目は「プーチン大統領自身が大統領令を出してウクライナの子どもにロシア国籍の付与を促進するよう法改正を行っているという直接的な結びつきを示す証拠が得やすいことがあるのだろう」と指摘した。【国際社会の動き】アメリカのバイデン大統領は、17日、記者団に対しアメリカはICCの管轄権を認めていないものの「正当だ。強い説得力がある」と述べた。そのうえで「彼が戦争犯罪を行っているのは明白だ」とあらためてプーチン大統領の戦争犯罪を非難。EU=ヨーロッパ連合の外相にあたるボレル上級代表は、ツイッターに「責任追及のプロセスの始まりだ。われわれはICCの取り組みを評価し支援する」と投稿。米調査グループのナサニエル・レイモンドさんは「極めて重要な一歩」と述べた。ナサニエル・レイモンドさんは、アメリカ国務省の支援を受けて、ロシアが占領したウクライナ地域から、子どもをロシア側に移送している問題などを調査してきたアメリカのイェール大学公衆衛生大学院の人道研究室の室長。NHKの取材に対し、彼は「ウクライナの人々の正義を実現するため、そして、国際条約などで、子どもの違法な移送が禁じられていることを示すための極めて重要な一歩だ」と評価。逮捕状についてロシア政府が「何の意味もない」などと主張していることについては、「その考えは間違っている。この逮捕状は、ロシアの行動をまだ非難していない国々に対しても、制裁を含む措置をとるよう呼びかけるものだ」と述べた。さらに、「国際社会は協力して、ロシア政府がこの逮捕状に応じ、プーチン氏を国際的な法執行機関に引き渡すよう、できる限りの圧力をかける必要がある。それは、明日や来年には実現しないかもしれないが、われわれは国際社会として、強い決意で、決して信念を失ってはならない」と述べ、プーチン大統領の責任を追及し続けるべきだとの考えを示した。【非加盟国の新しい動き】 ICCの非加盟国ができることも新たに見えてきた。非加盟国は何もできないと言う無力感を克服できる道が開けたと思える途である。当事国とはいえ、ICCの非加盟国であるウクライナが、戦争犯罪についてICCの管轄権に同意。 ウクライナにICCの事務所を設置する協定を結んだ。それは、ウクライナ自体も戦争責任を問われる危険を孕むものだ。それをあえて踏み越えたところに、ICCとウクライナの真剣度が分かる。これについて、ウクライナのコスチン検事総長は声明で「ICCとの緊密な協力関係における新たな章の始まりだ。全ての加害者が裁かれるまで(行動を)やめない」と強調した。 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2415A0U3A320C2000000/ICCの非加盟国が、管轄権への同意という形で、批准せずとも国際法に参加する道がひらけたと、私は思っている。【ロシアが「子どもの権利条約」にも違反していることが明確に】私は個人的に、この逮捕状によって、プーチン政権が他の国際条約にも違反していると、国際的にかつ人道的上普遍的に非難できる要件が、あらたに付け加えられたと思っている。ロシアは国際連合の「子どもの権利に関する条約」、通称「子どもの権利条約」に1990年に署名。1991年に批准手続きを完了している。したがって、ロシアはこの条約を履行する責任があるわけである。この逮捕状によって明らかになったプーチンの犯罪行為は、「子どもの権利条約」という世界条約にも違反したということを明らかにしたのである。ロシアの「子どもの権利条約」違反という視点を持つもうひとつの意義は、政治的にプーチン政権と近い関係にある国々が、196の国々と地域が締結している国際法に違反していることを理由として、プーチンと距離をとる口実になりうること、と私は思っている。
2023.04.29
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Milkywayです。お元気ですか? 20230423書名『ぼくがラーメンをたべてるとき』作・絵 長谷川 義史 教育画劇 2007年今の平和な暮らしに気づき、同時に、世界を改めて観なおす視点を提供してくれる絵本です。 【ストーリー】ぼくは今ラーメンを食べている。ぼくの隣ではネコがのんびりとお昼寝。ぼくがラーメンを食べている時、隣の家ではみっちゃんがテレビを観ていて、隣の隣のたいちゃんはトイレ。そして、その隣のゆうちゃんはバイオリンのレッスン。同じとき、隣町の男の子は野球をしている。さて、同じ時、隣の国の男の子は自転車をこいでいて、その隣の隣の国では、女の子が赤ちゃんの世話をしている。その隣の隣のその隣の国では、水汲みをしている子、その隣の国ではパン売りをして働く子、牛の世話をして働いている子というように、各国の幼児労働が描かれ、さらには同じ時、遠い隣の国では、外で行き倒れの子がいる・・・という文が現れます。イラストは、ラーメンを食べているぼくと、いろいろな国の同年齢の子どもたちの姿を展いていき、そして、最後のページでは、行き倒れの子にもラーメンを食べているぼくにも、おなじように風が吹いていると描くのです。 【この作品の推しどころ】この本は、一日の中のあるひと時というフレームの中で捉えた、世界各地の子どもの姿を切り取って見せてくれます。レンズをある刹那に固定して、そこから世界の国々を見れば、平和にラーメンをたべている子、幼児労働をしている子、飢えなのか、病気なのか、怪我なのか、地雷を踏んだのか、あるいは流れ弾にあたったのか、外に倒れたままの子がいることも見えるのです。この3年間、新型コロナウイルスが、地球上の人々の生命を危機に陥れました。そして、東欧で起きたウクライナ戦争が、世界の経済全体に大打撃を与え、その余波で日本に住む私たちも苦しんでいます。地球上の命は繋がり、命を支える食べ物もエネルギーも依存しあっていることを、この数年で実感させられました。平和と戦争は隣合わせであること、幸せと不幸は時を同じくして発生していること、私たちは単独で生きているわけではないことにも、目が開かされました。普遍的テーマを伝える力強くインパクトのある絵、シンプルでメッセージ性のある本文、この二つのバランスの良さ。優れた絵本です。今この機会に『ぼくがラーメンをたべてるとき』を、大人にも子どもにもぜひ開いていただきたいと思います。
2023.04.22
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Milkywayです。お元気ですか? 20230418前回二回取り上げた「東洋と西洋の融合」「伝統と現代の融合」として高評価を得たカンボジア初のロックオペラ『WHERE ELEPHANTS WEEP』(象の泣くところ)。今回の「ブロードウェイ・オン・デマンド」オンラインでの世界同時配信で大きな反響を呼んでいます。4月23日まで無料視聴できます。試聴方法は、下記のリンクhttps://www.broadwayondemand.com/rentals/f4e4b5d8-ede0-4035-b6e6-884c0fca3473をクリック。「ADD TO CART」→「CONTINUE TO CHECKOUT」→「PUT IN YOUR NAME AND BRIEF INFO」ここで名前やメールアドレスなど情報を入力→「PRESS CONTINUE」で完了。なおIDは不必要です。続けて試聴したい時は再度申し込むと試聴可能です。オペラというよりミュジカル。上演時間は1時間47分ほど。とても内容の濃い作品です。言葉がわからなくても楽しめます。まだの方は是非。お楽しみください。
2023.04.18
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Milkywayです。お元気ですか? 20230416このオペラは、カンボジアのお正月を祝って、4月14日からオンライン上で無料公開されている。https://www.broadwayondemand.com/rentals/f4e4b5d8-ede0-4035-b6e6-884c0fca3473すごく感動した。まず、このオペラ全体のテーマ「愛と死」「伝統と現代の衝突」という普遍的テーマが、西洋の音楽と東洋カンボジアの音楽プラスアートの融合の中で、みごとに描かれたことに感動。【ストーリー】このオペラは、時代を、内戦終了後のカンボジアに設定。戦争時代に海外に逃れ、西洋で育った青年Samが、カンボジアの伝統に従って、修行僧として一定期間を過ごすために母国に戻ってくる。彼は同輩の修行僧で親友のDaraと共に修行に励んでいるのだが、カンボジア人の歌手Bophaを目にした。彼女は兄のビジネスと家族の助けをしている。さらに、兄の命令で、望まない結婚を強要されていた。Sam とBophaは惹かれ合い、恋に落ちる。Samは修行僧の身分を捨て、Bophaは禁をおかし、家族の伝統に背く。結果的に二人は大きな騒動を引き起こし、ついに親友のDaraが犠牲になり、SamとBophaは自分の生きる方向を、決断することになる。【テーマ】家の対立、社会的立場の対立の中での悲劇的な恋というロミオとジュリエットのような愛の物語が主軸にあり、それを支えるように、内戦時の殺戮や、内戦後のカンボジアに急速に入り込んでくる西洋の文化で壊されていく伝統、というサブテーマも描かれる。さらにカンボジアの仏教伝統、師匠と弟子、家族の在り方、帰国子女の母国での疎外感、そして心の葛藤など、現代の多くの国々にも共通するテーマも描かれる。【歌手】主人公のサムを演じるのがマイケル・リー(Michel.K.Lee)韓国人のミュージカル俳優。1973年アメリカ生まれで、スタンフォード大学で 心理学を修めた。 現在は韓国在住で、演劇活動中。 舞台キャリアとしては、錚々たる作品に出演。主演作も多く、多くの賞を受賞している。例えば《ミス・サイゴン(トゥイあるいはクリス)》《ジーザス・クライスト・スーパースター(シモンあるいはジーザス)》《アリージャンス(フランキー・スズキ)》《風と共に去りぬ(アシュレー)》などがあり、他にも多数の名作に出演している。 https://en.wikipedia.org/wiki/Michael_K._Lee彼はSamの役にピッタリだと私は思った。青年らしい情熱とナイーブさ、修行僧としての宗教的な清らかさとエレガントな風情を持っている。その彼がさまざまな葛藤に苦しみ、死と喪失を経て、最終的な決断をしていく姿を演じる。場面場面で歌うアリアは圧倒的で、深く感動した。Michael K. Leeに隠れてしまうのだが、Samの腹心の友Daraを演じたMarc de la Cruzにも私は心惹かれた。Samの親友であり、Samの良心を象徴する人物である。心優しく、忠実な友人であり、友情ゆえに命を落とす。Marc de la Cruzはそうした人物を、過不足なく表現した。彼の歌唱もすばらしかった。ヒロインBophaを演じたのが Diane Veronica Phelan。役になりきった迫真の演技を見せた。実際に彼女は涙を流しながら歌っていた。ストーリー後半のSamとの二重唱は、西洋の歌唱法とカンボジア(東洋)の歌唱法とが融合していて、その歌唱力に感動した。ただ、この役にはちょっと成熟し過ぎている感があって、少し残念。カーテンコールの場面で分かったのだが、出演者には一人何役も演じている人たちがいて、彼らの力量にも驚きだった。【融合】私がこのロックオペラの何に最も感銘を受け、感動したのかというと、「融合」という言葉に集約されると思う。まず音楽では、西洋の弦楽四重奏に、カンボジアの伝統音楽ピン・ペアットのアンサンブルが融合する。それに、西洋のロック音楽やラップにカンボジアの楽器の音が絡まる。加えてカンボジアの舞踊、東洋と西洋の歌唱法、影絵、さらにはカンボジア武術などが絶妙なバランスでオペラ全体に織り込まれている。そうした劇的要素が、仏教の修行僧を主人公にして、展開するのだ。現在もカンボジアでは、民間人が戒を受け、ある一定期間、仏教修行に入るという習慣が実際に行われている。こうしたカンボジア独自の仏教修行に勤しむ修行僧を主人公として設定したことも、そのユニークさから、成功の大きな要因だったと私は思っている。ただ、タイトルのWhere Elephants Weepの意味がいまいちつかめない。もっと詳しい英語の字幕が欲しかったし、できればリブレット(Libretto セリフ・歌詞)も読んでみたいと思う。
2023.04.16
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Milkywayです。お元気ですか? 2023040820年以上にわたる内戦で、国土が荒廃し、極度の貧困に陥った国カンボジア。この国の悲劇はそれだけではなく、ポルポト政権下で、医師、教師、僧侶を含めた高等教育を受けた人、芸術家の90%前後を虐殺し、教育現場を壊滅させてしまったことだ。当然、伝統芸術も芸能も失われてしまった。だが、ほんのわずかだが生き残った人もあり、苦難の中で勉学を続けた人もいる。そうした人たちによって、伝統芸能が復興され、現代の芸術と融合されて独特な作品が生まれてきている。作曲家 Sophy Himはそうした人の一人で、カンボジアの西洋クラシックの作曲家三人のうちの一人。今日は、Sophy Himによってつくされたカンボジア初のロックオペラ《Where Elephants Weep》(象たちがなくところ)が、まもなくブロードウェイ・オン・デマンドに登場し、4月14日から23日まで(日本では14と15日の両日のようだ)世界中で無料公開される。ぜひ、観ていただきたい。アクセス先はhttps://www.broadwayondemand.com/rentals/f4e4b5d8-ede0-4035-b6e6-884c0fca3473 注意:クリックするとENTER CODEを要求されるが、ENTER CODEを記入する必要はない。【作品紹介】この作品は、戦後のカンボジアを舞台にしたロックオペラで、2007年に初演。物語は、カンボジアの歴史、民族的な傷跡、文化遺産の壊滅、新旧の融合に焦点をあてて描かれる。12世紀のカンボジアから伝わる伝統楽器のアンサンブルであるピン・ペアト、西洋の弦楽四重奏、そしてロックバンド、ラップなど、東洋と西洋の過去と現代が融合した音によって物語が紡がれていく。さらに、舞台装置にも演出にも、伝統的舞踊や現代のダンス、カンボジアの重要な芸能である影絵も取り入れられ、非常に魅力的な要素に満ちている。まさしく伝統と現代のアート、過去の歴史と現代、そして、東洋と西洋が融合したハイブリッド・オペラである。歌手については、公演によって出演者は異なる。YouTubeである公演の映像の一部が観られるので、ご紹介しておく。圧倒的な歌唱力もだがカンボジアの伝統芸能も垣間見られる。https://www.facebook.com/watch/?v=837304676387960【公演への高評価】《Where Elephants Weep》は2007年の初演以降、各地で公演され、高い評価を受けてきた。2008年のニューヨーク公演は、リンカーンセンターシアターで上演。The New York Timesは、この作品を「アジアのオペラの新たなる基準」と賞賛し、音楽、歌唱、ダンス、演技、舞台装置、演出など全てにおいて優れているとの高評価を報じた。オーストラリアのシドニー・オペラハウスでの公演では、シドニーモーニングヘラルド紙から「素晴らしい音楽と素晴らしいストーリーテリング」と絶賛された。NPRは‘East Meets West 'Where Elephants Weep'(Where Elephants Weepは東洋と西洋の邂逅)と評し、作曲家とのインタビュー記事を掲載している。 https://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=9907120このインタビューで、 MARC ROSSI教授(ピアノ、バークリー音楽大学)が非常に大切なことを語っている。 「この曲は、自分自身の言葉で表現しなければならなかったし、これまでにない方法で、新しいことを言わなければなりませんでした。ですが、豊かな想像力を持ち、音楽的な力のバランスをとるセンスをもつ、優れた作曲家の手にかかれば、違いを際立たせながら、共通点を見つけて統一することができることを証明したのです。」これに成功したのが、Sophy Him教授であり、その作品《Where Elephants Weep》なのである。カンボジア本国でも公演が行われ、ロイター通信は「カンボジアの魂を描いたロックオペラ」と高く評価。「このオペラ作品は、この国の文化や歴史について理解を深める重要な作品となっている」と伝えた。私は初演前に、友人でもあるSophy Him先生のところで映像だけだったが、観せてもらった。感動で涙が止まらなかった。今でも、思い出すたびに胸の奥が熱くなる。ブロードウェイ・オン・デマンドでは、この作品《Where Elephants Weep》の公開に合わせて、作曲家ソフィー・ヒムと台本作家キャサリン・フィルーのインタビューも掲載する。このインタビューも、もちろん作品鑑賞も無料。https://www.broadwayondemand.com/rentals/f4e4b5d8-ede0-4035-b6e6-884c0fca3473 4月14〜15日、ここをクリックして、新しい音楽世界を味わってもらいたい。https://www.broadwayondemand.com/rentals/f4e4b5d8-ede0-4035-b6e6-884c0fca3473
2023.04.08
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Milkywayです。お元気ですか? 20230401 3月17日、CBSニュースが「国際刑事裁判所、ロシアのウクライナでの戦争犯罪疑惑でプーチンの逮捕状を発行」と報じた。 https://www.cbsnews.com/news/putin-arrest-warrant-ukraine-war-crimes-icc-international-criminal-court/ この逮捕状の意義は大きいと思うので、そのニュースの全訳を載せる。*************************** 国際刑事裁判所は、金曜日(2023年3月17日)、ウクライナの子どもたちの拉致にロシアのウラジーミル・プーチン大統領が関与した疑いがあるとして、戦争犯罪容疑で逮捕状を発行したと発表した。 裁判所は声明で「ロシアが占領したウクライナ地域での人口(子ども)の不法な追放と、人口(子ども)をそこからロシア連邦へ不法に移送という戦争犯罪に関して、プーチンに責任がある」と述べた。 また、ロシア連邦大統領府の子どもの権利担当委員であるマリヤ・リボワベロ(Maria Alekseyevna Lvova-Belova)についても、同様の容疑で、同日、逮捕状を出した。 ICCは「ウクライナの占領地域で、ウクライナの子どもたちに対する偏見の中で、人口(子ども)を不法に追放し、その地からロシアへ不法移送をするという戦争犯罪に、各容疑者に責任があると信じるに足る合理的根拠がある」と、ICC予審室が判断したと述べた。 昨年来、検察側(ウクライナ検察庁も同様)は、多数の国と個人から情報を得、証拠を集めてきており、ICCのカリム・カーン検察官が、ウクライナの子どもの拉致や民間インフラを標的にした攻撃に関与した人物に対する逮捕状を求める準備を進めてきたと、CBS Newsのパメラ・フォークが、今週初め、報じていた。 今月初め、カーン検察官は4度目のウクライナ訪問をし 「正義に向かう勢いが加速していることを感じつつ、ウクライナを後にします」と声明で述べた。 ロシア外務省は逮捕状に対し「国際刑事裁判所の決定は、法的な観点も含め、わが国にとって何の意味もない。ロシアは国際刑事裁判所のローマ規程の締約国ではなく、その下でのいかなる義務も負っていない」と述べた。 子どもたちを移送するプログラムの陣頭指揮を執ったとして非難されているマリヤ・リボワベロは、「私が言いたいのは、まず、子どもたちを助ける我国の活動を,国際社会が評価したことは素晴らしいということです。我々は、子どもたちを戦場に置き去りにせず、そこから連れ出し、子どもたちにとっての良い条件を整え、愛情深い思いやりのある人たちに囲まれるようにしてやった」と自分の行為を擁護した。 CBSニュースのデビッド・マーティン記者は、プーチンが起訴されるということになれば、ロシアの大統領が国際逃亡者となるということだ、と報じた。 1990年代にボスニアで起きた戦争犯罪の主任検事だったリチャード・ゴールドストーン判事は「国家元首にとっては、ヨーロッパ諸国や北米の国々に足を踏み入れると逮捕されるという恐怖は、楽なことじゃない」と語った。 ロシアによるウクライナでの戦争犯罪を証明するための証拠収集を担当している国務省のベス・ヴァン・シャーク大使は、マーティン記者にこう語った。「彼は今や、ロシアに閉じ込められており、身動きが取れずにいます。逮捕され、法廷に引き出されるリスクが大きすぎるため、国際的な移動は決してできないでしょう」。 戦争犯罪で起訴された他のロシア人についても、同様のことが言える。ヴァン・シャーク氏はこう言う。「ロシア国内にいる間は、ある程度の免罪符を享受できるでしょう。ですが、ヨーロッパで買い物をしたり、どこかで休暇を過ごそうとした場合、彼らは特定され、法執行機関が動きます。彼らの動きに関して言えば、私たちは今ほど統合されたことはないのです」。 ICC検察庁に勤務していたハーバード大学法学部のアレックス・ホワイティング教授は、CBSニュースに対し「逮捕状の発行は、戦争犯罪に対する説明責任を果たすための第一歩です。戦争犯罪が行われたという証拠があり、ある人物にその責任があると特定されたことは、もう発動信号がついたということです。告発された人物は、ICC裁判所のメンバーである123カ国のいずれかに移動した時は、逮捕または降伏の危険にさらされるわけです。それも永遠に」と語った。 バイデン大統領はプーチンを「戦争犯罪人」と呼び、裁判にかけるよう求めている。しかし、米国は国際刑事裁判所の加盟国ではなく、国際刑事裁判所の条約に批准していない。 CBS Newsは、侵攻初期からロシア軍によるウクライナでの拷問や戦争犯罪の疑いを調査してきた。8月には、CBSニュースの特派員クリス・リブゼイが、意思に反してロシア領に連れ去られ、その後救出されてウクライナに連れ戻されたウクライナの子どもたちから、聞き取りを行っている。 米国務省が後援しているイェール大学公衆衛生大学院の人道的研究ラボの2月の報告書は、ウクライナからの子どもの移送に「ロシア政府のあらゆるレベルが関与している」と結論付けている。 2月14日のブリーフィングで、研究所のナサニエル・レイモンド所長は、「ウクライナの子どもたちを収容している施設や収容所のネットワークは、ロシアの端から端まで広がっている。私たちは、そのうちの少なくとも43施設を特定した」と述べた。 「収容所の主目的は政治的再教育のようにみえる」「しかしながら、それらの収容所の子どもたちは、後でロシア人の里親のもとに送られるか、ある種の養子制度に組み込まれた」と付け加えている。 -Pamela Falk、David Martin、Camilla Schickが取材に協力した。
2023.04.01
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Milkywayです。お元気ですか? 20230325認定NPO法人Efa Japanの記事を目にして、寄付をした。今回のプロジェクトは、クラウドファンディングによって遂行されるのだが、今月末に支援金受付の期限を迎えるので、それまでになんとか目標額に達させなくては!という危機感が募った。もし目標額に達しなかったら、それまでの支援金が無になってしまう。そうすれば、対象となっている二つの学校で首を長くして支援を待ち望んでいる障がい児(二つの学校の生徒数149名。内 障がい児数49名)が使える、バリアフリー図書が届かなくなる。適切な教材がなければ、学習から取り残されてしまい、結果的に彼らの「学ぶ機会」が、ほぼ無くなってしまう。【NPO法人Efa Japanのプロジェクトとは】★3月31日(金)までクラウドファンディング挑戦中★「本の飢餓から子どもたちを守りたい。ラオス障害児にバリアフリー図書を」専用サイト:https://camp-fire.jp/projects/view/653399※クレジットカード、コンビニ、銀行振込、キャリア決済、楽天Payなどでのご寄付が可能です※エファへのご寄付は、税制上の寄付控除対象となります【上記プロジェクトの記事】私に寄付を促させた記事は下記。自分ごとで恐縮ですが、最近膝を骨折し、図書資料へのアクセスができなくなって、「本の飢餓」状態の極々ごく一部を体験しました。車椅子から解放されはしたものの、歩行不自由な身では、当然外出もままなりません。必要な資料を調べたくても、図書館にも行けず、必要な資料が電子書籍にはなっていないので、パソコンを介しての資料や図書の貸し出しも受けられませんでした。片足が不自由というだけでも、出版図書へのアクセスができなかったのです。この怪我によって、自分以上の不自由さや障がいを持った方々、視覚障害のある方、視覚障害でなくともディスレクシアや読むことに困難のある方々、高齢者、入院患者、被災地の方々、自国語の図書や情報にアクセスできない方々、戦禍の中にある人々、貧困の中で出版物にアクセスできない子どもたちの困難を、一層想像できるようになりました。そして改めて、Efa Japanの「本の飢餓」をなくすための活動、読書や情報取得から「誰も取り残させないため」の活動の大切さに思い至りました。特に子どもたちを「本の飢餓」状態にさせてはならないとはっきりと思いました。Efa Japanには、「学ぶ権利」を守るための、さらなる活動を続けてもらいたいと強く思います。それによって、命が助かり、希望を見出し、未来への扉を開く人々が生まれるのですから。【本の飢餓とは?】「本の飢餓」とは、世界盲人連合(WBU)が提唱した言葉。発展途上国に暮らす障害者が利用可能な書籍(点字、音声、大活字本など)が、非常に限られた状況にあることを示している。現在、視覚に障害のある人が読める図書は、毎年出版される本の中で1%以下と推定されており、世界盲人連合(WBU)はこの状況を「本の飢餓(bookfamine)」と名付けたことに由来する。【なぜラオスか?】認定NGO Efa Japanは、アジアの子どもたちへの教育支援を長年続けている団体で、現在取り組んでいるのは、「本の飢餓から子どもたちを守りたい。ラオス障害児にバリアフリー図書を」というプロジェクト。なぜ、ラオスか?と疑問を抱く方もいるだろう。ラオスは、教育環境が日本よりもはるかに劣悪だからである。なぜそれほどラオスの環境が悪いか?それは、ラオスには戦争の傷跡が残り「世界一不発弾が残る国」だからである。それと、現在の段階で重要な点は、日本よりもデジタル化が進んでいるから、バリアフリー図書がすぐに活かせるからである。詳細はEfa の公式サイトhttps://camp-fire.jp/projects/view/653399 を参照していただきたい。【バリアフリー図書について】バリアフリー図書については、私のブログで以前 ブログNo191,192,194で「マルチメディアDAISY」のタイトルで書いたので、関心のある方はそちらを読んでいただきたい。バリアフリーの図書は、日本の教育現場でのデジタル化が進めば、日本でも一気に広がると思う。Efa Japanの教育支援活動は、今後は、日本語に馴染んでいない日本に住む避難民や外国籍の子どもたちに、この電子書籍の提供を拡大するという。【Efa JAPANからの成功報告メールがありました】2023/04/01 00:11【御礼】たくさんのご支援をありがとうございます!https://camp-fire.jp/projects/653399/activities/465624?utm_campaign=653399&utm_medium=stepmail&utm_source=report【修正とお詫び】 私の文章のなかに誤りがありました。今回のクラウドファンディングはAll-in方式をとったそうで、かりに目標の100万円に達しなくても、支援金は無駄にはならず、事業に反映される方式だったそうです。私の誤りでした。申し訳ありませんでした。
2023.03.25
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Milkywayです。お元気ですか? 20230318 私が考えるゼレンスキー大統領の特質は、前回のブログに書いたように、その言葉の力、行動力、先端的科学技術の駆使、そして大国や権威に屈しない態度だと、思っている。 今日は、大国や権威に屈しないその態度について書く。【トランプ大統領との会談】 そのことがよくわかるのが、2019年7月の、当時のアメリカのトランプ大統領とゼレンスキー大統領との会談である。この会談では、トランプが自分の政敵ジョー・バイデンを攻撃するために息子のハンター・バイデンに関する情報を提供するよう、ゼレンスキー大統領に求めた。 この時のCNNの映像は今は観られないのだが、トランプの驚きと失望が同居した顔を映し出した。この要求を出された時、ゼレンスキー大統領は、トランプが話した事柄を「理解した」と述べながらも、直接的に情報提供を約束することはなかった。 「理解した」と言った一方で、ゼレンスキー大統領は、会談のより重要なテーマであるウクライナの安全保障のためにはアメリカの支援が必要であり、そこに協力を求めるという主要アジェンダに焦点を当てるように努めた。それでもトランプは、ハンター・バイデンに関する情報提供を求めることを繰り返した。しかし、ゼレンスキー大統領はその要求に応じることはなかったのである。 この会談後、トランプは、ゼレンスキー大統領に電話をし、ウクライナへの軍事支援をする見返りに、バイデン家に対する調査を要求した。この電話の内容は、トランプの一連の職権濫用・不正を裏付けるいわゆるの「ウクライナ疑惑」の発端となり、その後、彼を弾劾する要因の一つとなった。この件についての詳細は、ロイターが、2019年11月21日に報道し, https://www.reuters.com/article/usa-trump-impeachment-idJPKBN1XU1ZMBBCが、2019年9月26日にトップニュースで解説付きで伝え、https://www.bbc.com/japanese/49835059CNNも、2019年10月7日に 解説している。 https://www.cnn.co.jp/usa/35143619.html日本でも、2019年10月3日、フジテレビ系ニュースサイトFCI NYが映像と解説付きで報じ、https://www.youtube.com/watch?v=ByYPT8ZsiZYテレ東BIZも同様な方法で伝えている。https://www.youtube.com/watch?v=Lyh_d_K9YxU この時のゼレンスキー大統領は、大国アメリカの虎の威を借りたトランプの圧力には応じない姿勢を貫き、しかしその一方で、従来続いてきたアメリカからのウクライナへの軍事支援を、継続させたのだった。 みごとな外交手腕を見せるとともに、不正には応じないという彼の政治的信念を示した例であった。【NATOに対しても同じ姿勢】 ゼレンスキー大統領のこうした政治姿勢は、ロシアによる侵略が再び本格的に始まった2022年2月以降も一貫している。軍事的支援が欲しいからと言って、NATO諸国に媚びることはしない。むしろ、その曖昧な態度を批判したり、各国が政治ゲームをしている間にウクライナ国民は命を落としていると非難した。さらに、ウクライナは多大な犠牲を払って世界の民主主義を守る闘いをしているのだと、世界の国々に納得させたのだった。 ゼレンスキー大統領の、大国の権威に媚びることなく、是々非々を明確にし、それをしっかりと言葉にして伝え、協力を得ていくという国のリーダーの姿に、私は感動している。
2023.03.18
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Milkywayです。お元気ですか? 20230304 2月24日でロシアによる本格的ウクライナ侵略から、丸一年がたった。この間、プーチンとゼレンスキー大統領のリーダとしての対照的姿が際立った。強権を振り回し、情報を秘匿・捏造することによって国民を欺き、人命をも顧みない政治家の姿と、他方、国民と共にあり、新しい科学技術を駆使して情報を発信し、国民を力づけ、危険を顧みず戦地に自ら赴く国家元首の姿である。 対外的な姿勢もこの二人は対照的だ。プーチンは、過去に併合し属国扱いをしてきた国々の元首を呼びつけ、同盟関係を威圧的に強制し、世界に対しては、核をちらつかせて脅迫する大国の元首の姿を見せつけている。その一方、ゼレンスキー大統領は、オンラインで、あるいは出向き、各国議会で演説。この侵略戦争は民主主義への甚大な挑戦であることを気づかせている。彼は、ウクライナが戦っているのは、もちろん自国の独立と民主主義を守るための戦いではあるが、それは、世界の民主主義に対するロシアの破壊行為と闘っているのでもあり、また世界の人々と同じ望み、自由で幸せな暮らしを求めての戦いであると訴え続けた。この彼の姿は、新しい科学技術を駆使して抗戦の指揮をとりつつ、世界の国々を味方につけるための外交を展開するリーダ像として、定着した。 ゼレンスキー大統領でなければ、ここまでウクライナは持ち堪えられなかったのではないかとさえ私は思う。 【ゼレンスキー大統領の特質】私が考える彼の特質は、言葉の力、行動力、先端技術の駆使、そして大国の権威に屈しない態度だと、私は思っている。今日は、彼の言葉の力について書く。 【西欧の正統派政治家の伝統上にいる人】ゼレンスキー大統領は、言葉の力が重要視されるギリシャ・ローマからの政治家の伝統を引き継ぐ政治リーダーとして、私の目には映る。古代ギリシャ以来、政治家が依って立つ最大のものは、言葉の力であった。古代ギリシャでは、政治家はオラトリー(弁論術)の技術を駆使して人々を説得し、政治的な影響力を持った。また、古代ローマでも、政治家たちは演説や弁論術を重視し、人々を動かすために熟練した話術を持つことが求められていた。その後も、近代民主主義の発展に伴い、政治家たちは選挙演説や公式演説などで、大衆を説得し、影響力をもつための技術を磨いてきた。現代の政治家たちも、演説やメディアでの発言によって、人々を説得し、支持を得るために、言葉の力を駆使している。このように、西欧では古代から、政治家には言葉の力や演説術の重要性が、西欧の政治文化となっている。ゼレンスキー大統領は、そうした西欧における正統派の政治家の伝統上にいる人、と言える。 【国内での演説】彼は、国内では、日々、街頭にある大きなスクリーンで国民に語りかけ、結束力を維持し、軍人の士気を高め続けている。そして、ツイッターには、日々どの国の元首と話したか、どういう支持を得たか、どのような支援をどの程度提供してもらえるのか、などを発信している。そうしたことによって国民は、日々の状況を把握し、苦難に耐え、希望を抱くことができる。また、国外に避難した人々も、支援者も、ウクライナに共感する人々も、心を一つにできるのである。 【世界への働きかけ:個別に各国へ】そして、対外的には世界各国別にも、国際的な場面でも、精力的に働きかけ続けている。2022.年2月24日の侵攻から4月7日の1ヶ月半で、各国議会での演説数は19カ国にのぼった。3月1日に欧州議会での最初の演説から、続いて同8日の英国国会で。続いて矢継ぎ早やに、ポーランド、カナダ、米国、ドイツ、スイス、イスラエル、イタリア、フランス、日本、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ベルギー、オランダ、オーストラリアにルーマニアと続けたのである。(CNNのニュースのまとめhttps://www.cnn.co.jp/world/35186020.html) 【世界への働きかけ:国際機関へ】上記に加えて、多国間機関の会議にも出席し、演説をしている。例えば、国連の安全保障理事会、欧州連合(EU)の欧州理事会、主要7カ国(G7)や、北大西洋条約機構(NATO)も含まれる。国際会議「ドーハ・フォーラム」でも、米音楽界の祭典「グラミー賞」の授賞式にも事前録音したメッセージを寄せた。彼は休むことなく演説を続け、ロシアの侵略の不当性と、国際法違反であること、民主主義への破壊行為であることを訴え、今ロシアの蛮行を見逃せば、民主主義自体が危険に晒されることになるとの認識を高めた。ウクライナは、世界の民主主義を守るために戦っていると訴えるのと同時に、その窮状を伝え、世界各国から支援を取り付けたのである。 だが、ゼレンスキー大統領の演説は、支援を求めるためだけになされたわけではない。時には厳しい批判もした。例えばドイツでは、ロシアの侵略を非難する一方で、ロシアとのガスの取引をしていることを厳しく批判した。だがそれにもかかわらず、ドイツ議会は、総立ちの拍手をゼレンスキー大統領に送ったのである。 【彼の名演説の例】ゼレンスキー大統領の名演説は、すでに本となって出版された。私が心に残っているものをあげておく。一つ目。2022年2月24日イギリス議会での演説では、多くの議員たちが感動の涙を流した。それが収められた動画は、BBC Newsのウェブサイトで。https://www.bbc.com/news/av/uk-politics-60521929 二つ目。2022年12月22日米連邦議会では「支援は慈善ではなく投資だ」と訴え、ここでもスタンディング・オベーションは鳴り止まなかった。https://www.bbc.com/japanese/video-64060519 三つ目。今年2023年2月8日の英国議会での演説がすばらしかった。この時ゼレンスキー大統領は、戦闘機を「自由のための翼」と表現。戦闘機供与を渋る英国や世界に向けて、供与を要望し、この演説を契機に各国は供与に前向きな姿勢を示すようになった。(BBC News 2023 Feb.8 https://www.bbc.com/news/uk-politics-64566248) 彼の演説に心惹かれる理由が垣間見られるところがこの演説にはある。切実な内容の中にも、イギリス人が大好きなユーモアも散りばめられているのだ。彼はこう言った「2年前に訪れた時の、美味しい英国のお茶、ありがとうございます。そして、今回の、強力な戦闘機提供の約束、ありがとうございます。」と述べたのである。議場からは笑いが起こった。この演説はYouTubeでも見ることができる。https://www.youtube.com/watch?v=3NeNZGs7p7s ゼレンスキー大統領のこのスピーチに対する英国議会からの返礼のスピーチも素晴らしかった。 「我が国議会の900年に及ぶ歴史には、記録に残るスピーチが多くある。今日のあなたのスピーチは、その歴史に加えられた新たなタペストリーとして残るでしょう」「リーダーには“国民と共にいる”ことが必要とされる。あなたはずっと国民と共にいた」「リーダーの真髄は“Never give up とselflessness”です。それをあなたは見せてくれた」と称えた。 ゼレンスキー大統領の演説には「言葉の重み」がある。一人一人の心に訴え、多くの人々に目覚めを促し、人類普遍の願いを根付かせる。いつも聴くものを感動させる。上記の名演説は英語で行われているにもかかわらずである。彼の経歴には‘コメディアン’が先行し、そこが過度に強調されているが、彼は‘脚本家’でもあり、言葉は彼の最大の武器でもある。 彼の演説は、将来有名なスピーチとして残っていくのではないかと思う。『The Penguin Books of Twentieth-Century Speeches』が手元にあるが、そこにはルーズベルト、チャーチル、ガンディー、ケネディー、マーチン・ルーサー・キング、オバマなど、危機にあたって人々を率いた真に偉大なリーダー達の言葉が収録されている。この本の21世紀版には、かならずゼレンスキー大統領の多くの演説が載っていることを私は信じている。
2023.03.04
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Milkywayです。お元気ですか? 20230225 この3年、新型コロナの感染に世界が震撼し続けた。その波は今も続いている。この間の医療従事者のご苦労は、往診をいただいているドクターやナース、介護職の方々、医療職の友人たちからの言葉から推測できた。 医療者の大変さは、今続いているウクライナでの戦争、トルコ・シリア大地震でもいかばかりかと想う。だが、どんなに慮っても、我々が想像できるのは、ごく一部に違いない。かといって、現場で救命の真っ只中にいる医療者達からの声は、情報発信どころではないだろう。 せめて我々にできることは、人々の命を守るために医療者がどのような困難に直面し、奮闘してきたのかを歴史の中から知り、見直すことによって、現状を推測し理解して、それを今と今後に活かしていけるのではないかと思っていた。 そうした思いでいた時に、この映画《じょっぱりー看護の人花田ミキ》に出会った。「明日のために、昨日を語る」とプロデューサー鎌倉幸子さんが、掲げていて、私は、我が意を得たり!と思った。この映画については【ホームページhttps://hanadamiki.com】を。 このサイトには、五十嵐匠監督やキャスティングの情報があり、木野花さん、王林さん、伊勢佳世さん、相馬明紀実さん、草野とおるさん、舞の海秀平さんの出演が決定とある。制作支援のクラウドファンディングもしていて、この映画の趣旨に賛同した私は、ささやかながら支援した。【看護婦 花田ミキさん】 花田ミキさん(1914〜2006年)は、日赤の看護師として、日中戦争や第二次大戦に三度も召集を受け、従軍看護師として傷病兵の看護にあたった方である。また、樺太からの引き上げ船に乗って、船上で傷病兵や民間人の看護にもあたった。 戦後は、1949年頃から全国で感染が続出したポリオ(小児麻痺)の集団感染に心血を注ぎ、当時東京にあった進駐軍本部から治療法や介護法を学んで、全国に広めた方として知られている。 常に最前線で、患者の身体と心の両方の痛みに寄り添い続けた方である。 この映画の詳細は、上記の公式ホームページにもあるが、花田ミキさんと当時の状況をより詳しく知るには、公式ブログも読んでほしい。【映画「じょっぱり-看護の人花田ミキ」公式ブログ】 https://hanadamiki.hatenablog.com/about このブログには、花田ミキ『鎮魂のうた』の1章から3章(I.日中戦争と病院船、II. 黄土戦野の病院で、Ⅲ. 第二次世界大戦と私)も掲載されている。日中戦争当時の看護師の召集がどのようなものだったか、中国にいる傷病兵を乗せた病院船がどんな困難に見舞われ悲惨だったか、それと敗戦下の日本の様子がよく分かる。ぜひ読んでいただきたい。 このブログでは、過去を知ることと同時に、現在起きていることも知ることができる。現在ウクライナで看護師・助産師として活動をしているウェンディ・ウォリントンさんのインタビューも載っているからである。現在と過去が結びつく記事で、鎌倉さんの言う「明日のために、昨日を語る」の面目躍如というブログである。 https://hanadamiki.hatenablog.com/entry/2023/02/09/215300「天使とは、美しい花を振り撒く者ではなく、苦しみあえぐ者のために戦う者のことだ」 フローレンス・ナイチンゲールこの映画と公式ブログにも出てくる言葉を最後に添えておく。 なお、この映画の記事は下記にも紹介されている。東奥日報 https://www.toonippo.co.jp/articles/-/1489040デーリー東北 https://www.daily-tohoku.news/archives/148312公式ウェブサイトhttps://hanadamiki.com/
2023.02.25
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Milkywayです。お元気ですか? 20230218認定NPO法人Efa Japan(エファ ジャパン)が今取り組んでいるプロジェクトが、カンボジアとラオスの障がい児への教育支援。図書支援に特に力を入れている。方向としては、もっともアナログな布絵本、そして、最新のデジタルテクノロジーを使ったDAISY図書。この両輪で支援を進めている。ご存知のように、カンボジアは東西冷戦の犠牲となり、内戦によって国がめちゃめちゃになったところである。このプロジェクトの背景や詳細については、担当の方々からの声を後ろに載せる。【布の絵本】知的障がいのある子どもにとても有効な絵本だ。布の絵本は人間の五感のうちのもっとも原初的な感覚「触感」を活かす絵本。まず触れて、その感覚を使って本の世界に入れるように促す。障害のある子にとっての、本とのもっとも初期的な出会いをつくる大切な絵本である。カンボジアの人たちが自分で作れるように、北海道の布絵本制作の「恵庭たんぽぽの会」のベテラン今野さんが、見本を作ってくれた。カンボジアの子ども達に馴染みのある動物を主体に、それに加えて、馴染みの薄い動物もバランスよく取り入れてくれている。【なぜカンボジアで布の絵本が必要か】なぜカンボジアで布の絵本が必要なのか。その背景を、本年1月23日にこのプロジェクト担当の鎌倉幸子さんがFacebookにアップし、説明している。以下だ。https://www.facebook.com/kamakura.sachiko/?locale=ja_JP 北海道から布絵本が届きました。2021年9月より、カンボジアとラオスで 障害がある子どもたちへの学習支援を行っているエファジャパン。 そもそも本が少ない国ですが、障害児向けの教材は「ない」。本当に「な い」。 またカンボジアには「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えなさい」 ということわざがあるのですが、現地からも「ものをもらいたいわけでは ない、つくり方を知りたい」という声が上がっています。 ないならつくるという精神のもと、カンボジアやラオスの子どもたちに 持っていく絵本のサンプルへのご協力を呼びかけました。 すると北海道の布絵本の団体様より5冊もの布絵本(力作!)がオフィス に届きました。 2月に予定していたカンボジア出張。私は残念ながら、骨折のせいで行けま せんが、事務局長の関さんが届けます! 一針、一針にどれだけ時間と思いをかけて縫われたのだろうと考えると、 目頭が熱くなってきます。 本当にありがとうございます! 骨折してから気が滅入ることが多かったのですが、 「やっぱり私は、絵本の仕事がしたいんだ」と、心の底からそんな気持ち が湧き上がってきました。 映画もそうですが「戦争×文化」という言葉が、私が10代のころから 追い求めていたことなのかもしれない。バラバラなことをやっている ように見えて、実はつながることをやっている気が、最近しています。[布絵本『いないないばあ』の動画]https://www.facebook.com/kamakura.sachiko/videos/3138413569791037/【その布絵本が現地に届いた!!!】Efa Japanの事務局長の関さんが、力作を今週カンボジアに届けてくれた。関さんは、その様子を写真と共にFacebookにアップ。https://www.facebook.com/efajapan.org/ 13日夜にプノンペン入りし、乱立する高層ビルに見下ろされながら宿まで。 15年前と比べ中間所得層(世帯所得5,000~34,999US$)は13%増、 国民の半数弱を占めるようになったカンボジア。 エファでとり組み始めた「障害児のためのライフスキルプロジェクト」の 活動地は、首都から3時間ほど南下した南部カンポット州。30年前と さほど変わらぬ当時の農村の風景が広がっています。 健康、教育、生活水準面で貧困程度と発生頻度を示した多次元貧困率は、 国全体で35%、地方では40%以上。地方に暮らす人々の半数近くが、 いまだ厳しい貧困状態の中に。 今回は次年度のとり組みのためにパートナー団体と詰めた話を行うことが 目的でしたが(対面はやはり違う!)、日に日に変化していく子どもたち と再会できたのが何よりでした。 この間お世話になっている木村さん、ご友人の方々に託していただいた 布絵本、大喜びです!これから広げていくデイジー図書は、デジタルに よる情報アクセスを目指しますが、貧しさの中にあっても、障害がある 中でも自分の力で生き抜く力を身に着けていける社会を目指していきます。https://www.facebook.com/photo.php?fbid=5955112617902101&set=a.109644522448969&type=3さて、それらの絵本を紹介した時の動画を紹介する。パーフォーマンスはティム・チャトラーさん。読み聞かせの第一人者である。https://photos.google.com/share/AF1QipN64egevsFkZYTcSLHTkM6mIUHqq1447yw0HwHe7pqDu3wf9PRDJqxiMpSVfM27vw/photo/AF1QipMuHmQbx202PBzBt5yHx45GMhnbv0F9JOlRDKzR?key=VWtNcGF3NFI2RzE3S3dkMHlMckRZQThXTk1sSm5Rこのところ、世界からのニュースは辛いものばかり。自分自身の怪我もあって、気持ちが沈んでいた。しかし、この嬉しいニュース。希望が届いたような気がしている。
2023.02.18
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Milkywayです。お元気ですか? 20221228David TsubouchiさんのYA向けファンタジーシリーズThe Chinese Doorの第三作目Journey to Japanが先月11月26日に出版された。第一作目が2020年11月出版、第二作目Arctic Adventureが2022年6月で、今回の第三作目が半年おいての11月だから、かなりのハイスピードでの上梓である。 ダイナミックなストーリー展開が特徴のこのシリーズ、アマゾンではどう紹介されているか、訳してみる。 【アマゾンでの本書の紹介】主人公イーサンの祖父であるGが購入した不思議な「中国の扉」。この扉がイーサンたちを遥か彼方のモンゴルの地へといざなった。モンゴルの手付かずの大地に,自分の世界の汚染を送り込む邪悪なヴェストイと、イーサンと仲間たちそしてGは戦いを挑む。さらに続いて、その扉は500年前の極寒の北極海へと彼らを導びいた。そこを舞台に、ヴェストイとの闘いが再び繰り広げられるのだ。これらの冒険の中で、イーサンは新しい仲間と出会い、新しい知恵と技を得て、それらを駆使して世界を救おうと奮闘する。 このシリーズの概要がこのように説明されている。ヤングアダルトに受けそうなストーリーではないか。 このシリーズで私が感じる最大の魅力は、ストーリーの舞台が壮大であること。作者自身の世界各地への旅体験が織り込まれているので、描写部分がリアル。それと、コントラストが巧みで、現実の世界の極めて日常的な描写のあとに、時間と空間を超えてのファンタジー世界が広がることだ。このコントラストによって、ファンタジーの世界にリアリティが増すのである。さらに、その二つの世界を繋ぐChinese Doorという仕掛けも魅力的だ。 最新の三作目については、機会をあらためて書くが、今回はとりあえず第二作目についてアマゾン上に書いた私のレビューを紹介しておく。【Milkywayのレビュー】作者は友人なので、おまけもあって5つ星のうち5.0を付けた。しかしながら、5.0をつけた人たちは他にもいるから、あながち私の偏向とは言えないだろうと思う。 私はこんなふうに書いた。 Exciting space and time fantasy(ワクワクのタイム・ファンタジー & スペース・ファンタジー)本書は、善と悪との闘いを描く「The Chinese Door」三部作の二作目だ。モンゴルの広大な砂漠と北極海を舞台に、邪悪な者たちとの新たな闘いが繰り広げられる。スペースファンタジーであると同時にタイムファンタジーでもある本書は、500年の時間のギャップと広大な空間を行き来しながら、冒険と闘いを繰り広げていく。 この第二作目は、時間・空間ファンタジーでもあると同時に、異文化体験ストーリーでもある。西洋人である主人公が、イヌイットやモンゴルの人々と出会い、戸惑いつつもお互いを受け入れ、真の仲間として成長していく。その意味でも、人生で新しい体験を重ねていくことになるヤングアダルトにふさわしい内容と言える。 加えて第二作には、謎解きの鍵として、日本やイヌイットの神話や伝説、サミュエル・テイラー・コールリッジの詩の一節なども盛り込まれていて、本好きの好奇心をも刺激する。 私はこのシリーズの一作目、第二作へと読み進んだ時、アニメーション映画を思い浮かべた。広大なゴビ砂漠、北極海の氷山群、巨大な扇風機で吹き飛ばされる悪事を働く衛兵たち、氷壁に埋もれている輝かしい宝剣、さらに、神秘的な北極海の主。そして、鷲、梟、大狼、鼠に瞬時に変身するキャラクターたち、深い雪の中を行進するモンゴル人やイヌイットの一団。これらスペクタクルに満ちた場面を描くには、アニメ映画が最もふさわしいのではないか? CGでは、そうした場面はどのように表現されるのだろうか?もしアニメ映画にする企画が実現したら?そんな企画が現れないだろうか。私はそんなことを夢想して、別なワクワク感も味わった。この作品がアニメ化されたらいいなあ。その映画をぜひ観たいものである。 上記のレビューを、著者ご本人は大変気に入ってくれたようだ。 さて、このシリーズ第三作目Journey to Japanは、日本が舞台になっていることもあり、依頼があって私はbeta readerを務めた。この三作目については、後日ブログで紹介する。
2022.12.28
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Milkywayです。お元気ですか? 20221217 「本の飢餓」という言葉を最近耳にすることが多くなってきた。この言葉についての説明は、世界盲人連合が「現在出版されている印刷物の99%が、視覚障害者にとってはアクセスができないものであり、この状況を「本の飢餓」と呼ぶ」と説明している。印刷物の99%を、視覚障害者が読めずにいる現実に心底驚く。 「本の飢餓」に対する認識も最近少しずつ広がってきて、それを解消しようとする取り組みが欧米諸国はもとより、日本、アジア諸国、アラブ諸国など世界各地で展開されるようになってきた。読むことへの障害を感じない人々にとっては、実感が湧かないかもしれないが、読むことへのバリアは、実際は視覚障害者だけでなく、ディスレクシアという障害をもつ方や、脳の機能不全によるADHD、集中困難、認知障害、自閉症アスペルガー、トウレット症候群などの障がいをもつ方、あるいは寝たきりになって書物を持てなくなった方にも起きる。身体的障害が無くても、移住者あるいは住んでいるところの公用語が母国語ではない人々、限られた教育しか受けていない人々、あるいは貧困ゆえに、さらに戦闘地では、本にあるいは情報にさえアクセスできない人々もでる。つまり思っている以上に「本の飢餓」の中にいる方々は多いと言うことだ。 今ちょうど、自分自身が読むことのバリアフリー化や「本の飢餓」問題に関わっていることもあって、「本の飢餓」に関心が深くなり、図書館の役目を考えている。そんなことから、ドキュメンタリー映画〈ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス〉をAmazon プライムで観た。一言で言うと「感動」だった。アメリカ社会の「知」に対する姿勢、人権への高い意識がわかって非常に参考になったし、同時に知りたいことも出た。今日は、この映画〈ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス〉を観て想ったことを記しておく。 【ニューヨーク公共図書館とは】Wikipediaにかなり詳しく載っているので、そちらを参照していただくのが良いが、概略だけ記す。ニューヨーク公共図書館 は、ニューヨーク市内マンハッタン区、ブロンクス区、およびスタテンアイランド区の各地区に、大小合わせて92の地域分館と、研究目的のために公開されている3つのリサーチ・ライブラリー(研究書図書館)から構成されている。公共図書館としては世界屈指の規模をもち、5300万点の蔵書・収蔵物を所蔵。 公共図書館ではあるが、設置主体はニューヨーク市ではなく、あくまで民間の非営利組織 (NPO)で、年間の予算額約340億円の約5分の1を民間からの寄付でまかなっている。 利用は原則として無料。ニューヨーク市に在住あるいは勤務している者であれば、誰でも会員になることができる。年間来館者数は約1700万人にものぼる[5]。 この図書館の特徴として、インターネットを積極的に活用した情報発信や、数多くの教育プログラムを展開していて、ニューヨークにおける総合的な教育・研究機関として機能している。 とWikipediaにあった。映画は、上記で紹介されている活動だけでなく、ニューヨーク市民全体を視野に置いたもっと幅広い活動をこの図書館が展開していることを描いていた。公共図書館がこうした多様な活動を展開していることに、私は驚くと同時に、羨望を覚えた。 この映画の中で私が感動したこの図書館の特徴を書いておきたい。 【図書館の役割に対する認識】図書館の役割、その位置づけについての確固とした運営者の信念が語られる。こう言うのだ「図書館とは本の置き場ではありません。単なる書庫と思われがちですが、図書館とは人なんです。知識を得たいと思う人々が主役の場所なのです。そのために本があり、そのためにいろいろな方法が用意されているところです。生涯をかけて学ぶ場所、どんな世代でも利用できるところ。図書館は文化的にも経済的にも重要です。地域のコミュニティのためにも必要です。研究図書、アーカイブや、貸し出し機能も必要。多様性に応えることが求められています。図書館は将来必要ないという意見がありますが、それは図書館の進歩にも重要性にも気づいていない言説です。」 この言葉からは、図書館の存在意義と役割を明確に認識し、その使命を果たそうとする使命感がはっきりと伝わってくる。 【市民をインターネットへと繋ぐ活動】ニューヨーク公共図書館 のポリシーでもありその特徴にもなっている市民をインターネットへと繋ぐ活動のシーンは、目を見張るものがあった。意外なことなのだが、ニューヨークでもインターネットに繋がっていない人々が300万人もいるのだという。図書館運営スタッフは、こうした市民が「オンラインで図書館の資料が見られるようにする。これが21世紀の究極の目的」だと言い、「テクノロジーがこれを可能にする」と語る。そして、資料のデジタル化、それに関連する著作権問題を解決する新たなシステムが必要だと提案した。市民をインターネットに繋ぎ、市民の間に情報の格差を作らないために、無料のインターネット接続を図書館で提供し、さらに、希望者にはインターネット接続用の機器の貸し出しもしている。この取り組みはすごいと思った。「教育と情報のアクセスこそが不平等を根本的に解消する。その力を過小評価してはいけません」とあるスタッフは語った。私はこの意見に全面的に賛成する。 【コミュニティセンターの役割や多彩な教育や文化活動も】この図書館では、貧困層への住宅提供への手伝い、国境警備隊など仕事の紹介、医療センターとの連携まで提供している。さらに、多様な文化活動も展開している。例えば、講演会、コンサート、詩人による詩の朗読、読書会、高齢者のための運動を兼ねたダンスクラス、子どものための学習指導、放課後教室、ロボット制作クラス、聴覚障がい者のための手話者による演劇を楽しむワークショップもある。老若男女、障がいの有無の隔てなく市民が参加できる多彩な講座を提供しているのである。 【市民に深く根付いている図書館】ゆったりとした空間をもつ閲覧室。利用者の真剣な眼差し。この映画の中で「図書館で全てを学んだ」と語った脚本家も、こうした利用者の一人だったのだろう。この脚本家だけではない。この図書館から多くの芸術家たち、クリエーター達が生まれたのだと言う。その人たちが学んだのがこの図書館にある《ピクチャーコレクション》。私はこのコレクションに感動した。画像、写真、挿絵、絵、版画、エッチング、広告などの印刷物などが、テーマやトピックごとに整理されているコレクションである。1915年から蒐集が始まり、100年かけて作られたコレクションだという。貴重な画像や写真が山のようにある。どの資料も閲覧無料。アンディ・ウオーホールだけでなく多くの著名な芸術家たち、クリエーター達がこのコレクションに学び、ここからインスピレーションを得たという説明も、納得できた。 このコレクションでは、画像を見られるだけでなく、この100年間のそれぞれの時代の流行のフォント、使われていた色、技術の変化、それらに反映された人々の考え方の変化などまでもがわかる。 【この図書館を支えている力】この図書館のこうした多彩な活動を支えているのが、多くのボランティアたちである。彼らの活動範囲は多様で、録音本館では点字本の読み方や、点字タイプライターでの文書の作り方を、視力障がい者が指導している。もう一つ、録音本の録音シーンでは、それに取り組む人々の真剣さにも感動した。ボランティアたちは、図書館を支える支援者のためのパーティーや、活動報告会を開く手伝いもする。 図書館運営スタッフの取り組みもすばらしい。図書館へ関心をもってくれるように政治家へのメッセージを発信。予算獲得あるいは公的資金を得るためにどうするか、また、予算はどう配分するか、民間からの寄付も含めての資金をどう呼び込むか?など、図書館運営を巡っての真剣な討論をする。最近のデジタル図書の動向とデジタル図書についても、熱のこもった討論シーンがある。この図書館でのデジタル図書の貸し出し率は、300%。急激な伸びをみせ、貸出の待ち時間は4〜5ヶ月にもなっているという。そうした中で、デジタル図書を購入するのか、人気のある作品の購入を優先するのか、あるいは貴重本の購入を優先させるべきなのかの葛藤を映したシーンからは、この図書館を支えている人々の、図書館のもつ使命への認識が伝わってきた。 【知りたいこと】この映画は2017年の製作である。つまりコロナ・パンデミック前に作った作品だ。2020年から始まったコロナ禍の中で、この図書館は従来の多様な活動ができたのだろうか? この図書館の重要な機能の一つ「情報のアウトプット/情報の積極的発信」ができたのか?ニューヨーク公共図書館はどのようにして、その多彩な活動とその役割を果たし、危機を乗り切ったのだろうか? 映画を見終わって、そうしたことを知りたいと思った。模索を続ける他の多くの図書館の参考になると思ったからである。
2022.12.17
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Milkywayです。お元気ですか?20221203アフガニスタンといえば、中村哲医師を思い浮かべる方が多いだろう。中村さんが凶弾に倒れてからもう一年になる。今回の高世仁さんの現地報告は、タリバンが中村さんをどう受け止めているかにも触れている。加えて、吉永小百合がラジオで中村さんを涙ながらに語った放送の文字起こしも載せてくれている。これはほんとうに感動的だ。皆様と分かち合いたい。12月4日には中村さんが亡くなってから4年目を迎える。中村哲さんにも想いをいたしつつ、アフガニスタンの今を知っていただきたい。***********************************Hitoshi Takase - 11月22日(火)。アフガニスタン9日目。 https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=pfbid035Ajdtaxew1mdgfrwRaWaFaUzgVtxW3QGjRxbHSVC5m8x9vst541A2VshgLTdp1uul&id=1811758190https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=pfbid035Ajdtaxew1mdgfrwRaWaFaUzgVtxW3QGjRxbHSVC5m8x9vst541A2VshgLTdp1uul&id=1811758190 ジャララバードは首都カブールと違って標高が低く、南に位置しているので暖かい。きょうは日中25℃は超えたようで、日向にいると暑い。 カブールが学校の冬休みを長くとるのに対して、こちらは厳しい暑さを避けて夏休みが長いそうだ。 ジャララバードのあるナンガルハル州は、アフガニスタンの主要民族、パシュトゥン人が多い土地で、気候だけでなく文化もカブールとは異なっている。 朝一番で文化情報省ナンガルハル州事務所へ。 カブールの外務省で取材許可はおりたのだが、地方に行くと現地の文化情報省からの許可も必要になる。 タリバンが政権について時間が経ち、ややこしいルールがいろいろ出てきて面倒だ。 それが済むと、今度は経済省の州事務所に「表敬訪問」に行かなくてはならない。取材対象のPMS(ペシャワール会の現地事業体)を管轄するのが経済省だからだ。PMS幹部といっしょに所長に会いに行ったら、NGO担当職員が同席した。 経済省がNGOを管轄するのは変な感じだが、タリバンはNGOを外国からお金をもってくるパイプと位置付けているのではないかと推測する。そして、制裁による経済難のなか、その傾向がいっそう強くなっているのでは? ロシアでは外国のNGOは体制転覆をめざす西側の手先として敵視されているが、アフガニスタンでは歓迎されているようだ。 はじめの文化情報省では1時間以上待たされた。オフィスが開く朝8時に行ったのだが、所長以下幹部は来ていない。カブールの外務省でも定刻に役人が出勤して来ずに長時間待たされた。 このアフガニスタンリポートを読んで、私たちが順調に、効率的に取材していると思うかもしれないが、とんでもない。何ごとも時間ぴったりにはいかないのがこの国である。 会えば会ったで「まずはお茶でも」となり、お菓子をかじりながら延々と世間話をすることに。こうしてどんどん取材時間がずれ込んでいく。 東南アジアあたりへの出張から帰国した日本のビジネスマンが「現地のやつらは時間にルーズで困るよ」などと優越感まじりに嘆くのをよく聞くが、日本人が時間を気にするようになったのはそれほど昔のことではない。幕末から明治はじめに来日した欧米人が、「これほど時間を守らない人たちをみたことがない」と書き遺している 明治期の強力な近代化政策が、軍隊、工場、学校などのシステムを据え、時間を守る習性を国民に叩き込んできたのだ。環境によって「国民性」のなかには変わっていく部分も多い。 イライラしそうになったら、アフガニスタン人は「時間を守らない」のではなく、「時間に拘束されない生き方」をしているんだなと考えるようにしよう。 でも、ほんとは困るんだけど(泣) 二つの役所をまわって、タリバンが国際社会への復帰を希望し、日本に大きな期待を持っているように感じた。 最初の文化情報省では、応対してくれた幹部はみなヒゲをたくわえ、民族服にスリッパのタリバンで、日本からのNGOの支援に期待していると語った。そして、ぜひ撮影しなさいと、SVA(シャンティ国際ボランティア会)とJICAによる「子ども図書館」の建設現場を所長みずから案内する熱の入れようだった。 次の経済省では、いかにもタリバンといういかつい風体の所長さんが、「中村医師はアフガニスタン人のために命を投げ出して献身されました、日本の皆さんに心からの感謝を申し上げます」とあいさつ。 この言葉を信じるとすれば、タリバンも中村哲医師を高く評価していることになる。 同時に所長は、外国メディアは、アフガニスタンの悪いことばかりを報道するが、良いことも取材するように、と釘を刺した。海外からの評判を気にしているということだろう。 そのうちお茶とお菓子が出てきて、10分ですむはずの「表敬訪問」は1時間以上に。 さらに所長、「あなた方には特別に護衛を2人つけてあげます」と言う。ありがた迷惑。でも断れない。 経済省を出るともうお昼。自動小銃をもったタリバン兵2人が外で私たちを待っていた。 午後はPMSのジア医師が中村哲医師が建設した灌漑用水などの一部を駆け足で案内してくれた。 あすは一日かけて回ろうと思う。 中村哲医師のことをあまり知らない人のために― 吉永小百合がラジオで中村さんを涙ながらに語った放送がとても分かりやすい。私が文字おこししたブログがあるので、関心のある方はどうぞ。 https://takase.hatenablog.jp/entry/20200415中村哲 1946年福岡県生まれ。医師、ペシャワール会現地代表。PMS(ピース・ジャパン・メデイァカル・サービス)総院長。 国内の病院勤務を経て、84年パキスタン北西辺境州、現在のカイバル・パクトゥンクワ州の州都ペシャワールのミッション病院ハンセン病棟に赴任し治療を始める。そのたかわら難民キャンプでアフガニスタン難民の一般診療に携わる。 89年よりアフガニスタン国内へ活動を拡げ、山岳地帯医療過疎地でハンセン病や結核など貧困層に多い疾患の診療を開始。 2000年から、干ばつが激しくなったアフガニスタンで飲料水・灌漑用井戸事業を始め、03年から農村復興のため大がかりな水利事業に携わる。19年12月4日、アフガニスタンにて凶弾に倒れる。享年73。 PMS(ピース・ジャパン・メディカル・サービス。平和医療団・日本)/ペシャワール会とは― ペシャワール会は1983年9月、中村哲医師のパキスタンでの医療活動を支援する目的で結成された国際NGO。 PMSは現地事業体。当初、ハンセン病の治療に取り組んでいたが、2000年の大干ばつ時の感染症患者増をきっかけに、清潔な飲料水の確保にも取り組むようになる。さらに自給自足が可能な農村の回復を目指し、農業事業にも取り組んでいる。現在はペシャワール会の村上優会長が、PMS総院長を引き継いでいる。
2022.12.03
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Milkywayです。お元気ですか? 20221126ロシアによるウクライナ侵攻から9ヶ月が経った。当初の衝撃が薄れ、戦争の報道にも疲れが出てきたのか、最近ウクライナとロシアの停戦の話題が多くなった。だが、戦争は戦いが終わったらお終いではない。人々の暮らしは、戦闘時と変わらないあるいはもっと厳しくなるのである。ウクライナも同様に、戦いの後にも国民には塗炭の苦しみが襲うだろう。停戦を語るときには、停戦後の復興も視野に入れて議論するのが良いと私は思っている。戦闘終結後一年を過ぎたアフガニスタンは、我々に多くの示唆を与えてくれると思う。現地で取材を続ける高世仁(たかせ ひとし)さんのレポートを紹介する。https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=pfbid0fmoHQFSULFfzxAtu1ksuPGQVDYdSqyKSsCay23nJQYBf8Dzh45r5dzH72mH97VCwl&id=1811758190 *******************************Hitoshi Takase - 11月20日。アフガニスタン7日目。...11月20日。アフガニスタン7日目。 これまで聞いた街の声で圧倒的に多いのは「平和になったが、仕事がない」だ。 これをどう解釈するかでタリバン政権の評価は分かれるだろうが、とりあえず貧困が急拡大しているのは確かだ。 もっとも深刻な影響をこうむっているのは子どもたちだとユニセフ(国連児童基金)は指摘する。「300万人以上の子どもたちが急性栄養不良の状態にあり、予防可能な病気にかかりやすい状況にあります。そのうち100万人以上の子どもたちが、栄養不良の中でも最も致命的な重度の急性栄養不良の危険にさらされています」(8月15日アフガニスタン発) https://www.unicef.or.jp/news/2022/0157.html そこでインディラ・ガンディー小児科病院という大きな公立病院を取材した。 病床は満杯で、母親たちが廊下にまですわりこんでいた。栄養失調の子どもが増えているのに加え、母親の栄養不良が未熟児を増加させる要因になっていると医師は言う。 受け入れ態勢はパンク状態で、保育器1台に赤ちゃん2人が収容されていた。また、医療機器のパーツや使い捨ての器具の不足が大きな問題になっている。電灯など基本的なものもなくて困っているという。この国で最高の公立小児科病院でこの状況である。地方ではどんなことになっているのか。 撮影中、一人の赤ちゃんの容態が重篤になり、医師が心臓マッサージをする事態に。うずくまってすすり泣く母親の姿は見るに忍びなかった。 きのう薬物依存の話をリポートしたが、とくに貧しい人に常習者が多い。 街でよく見かけるのが一輪車で荷物運びをする労働者だ。商店街などで大きな買い物をするお客の荷物を一輪車で駐車場まで運んだりする。 35歳のカイスさん(仮名)は、朝と夕方の2回、ヘロインを吸引する。若いころ石材を扱って腕に大けがをし、今もときおり激しく痛むという。薬を買ったりはできないので、痛み止めがヘロインだ。これなしには働けないという。 私が思いつくのは事務労働みたいな仕事につけないかということだが、カイスさんは学校に行ったことがない。字が読めないのはもちろん、「時計もよめない」という。単純な肉体労働しか残っていないのだ。 タリバンによる政変が直撃しているのは、こうした日雇い労働者たちだ。カイスさんは前政権のときはほとんど毎日仕事があったが、今は月に数えるほどしかないという。少しでも収入を補うために、空き缶を集めて売っているが、2日間で500グラム(45円)にしかならない。たくさんの人が空き缶集めをしているので、なかなか見つからないのだ。 街のいくつかの「寄せ場」で聞くと、毎日10人に1人くらいしか仕事にありつけないという。 「仕事がたくさんあった前の政権の方が良かった」と口々に訴える。彼らがタリバン政権を嫌うのは、人権とか自由とかの話ではなく、「食えない」からである。 いくら戦争がなくなっても、食えなきゃ死んじゃうだろ、というのだ。 カイシさんは働くためにヘロインをやっていたが、毎日仕事にあぶれていれば、お酒のないこの国では、「やけくそで薬物でも」となるかもしれないな。酒好きの私の筋違いの推測かもしれないが。 きょうは体調がいま一つで、おなかを壊してしまった。 毎日羊肉の入った脂っこいピラフを食べているからか、この国特産のザクロをむちゃ食いしたからか。あるいは単に体が疲れているのかもしれない。 昼目一杯取材して、夜は撮影した素材のテープおこしに時間がかかり(長いインタビューがあったりすると特に)、そのあとフェイスブックを書くので睡眠が5時間未満になることも。 でも、ここまで書いてきて、「慣性の法則」じゃないけどやめられないので、がんばってリポートを続けます。 取材はさらにつづく。**********************************この続きは次回のブログにアップする。
2022.11.26
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Hello,Milkywayです。 20221120 しばらくブログからご無沙汰してしまっていた。10月半ばに膝を骨折。手術・入院していたせいだ。この間、意外なことなのだが読むことに不自由した。病院にはipadを持って行ったのだが、身体をベッドに横たえたままipadを持つと、ちょっとした腕の向きにつれて画面が縦になったり横になったりかってにくるくる変わって、読んでいるページが定まらない。私が設定の仕方がよくわかっていなかったせいもあり、これを修正できなかった。要するに足の怪我で読むことに不便が生じたのだ。足が動かないことがそうした事態を引き起こすとは思ってもいなかった。不覚であった。しかも自宅に帰ってきてからも、膝が曲がらないために、PCのあるデスクの前に座っていられるのは短時間。それなのに、受信したまま処理しなくてはいけない文書は溜まっている。なんとか読むだけでもできないか?と頭を巡らせいろいろ試した。そして、いくつかの解決策を見つけた! 1. WORDの文書ファイルは読み上げ機能を使った。これで内容が把握できた。返信はipadから短く。要点のみにした。2. WORDの文書ファイルだけでなく、PDF ファイルも読み上げ機能を使えることが分かった。方法は、ファイルを開いて タブの編集→スピーチ→「読み上げを開始」を選択する。これで聞くことができた。3. 少し長い返信は、WORDのディクテーション機能を使って音声を文字化。それを校正した。これで随分と楽に作業ができた。 4. Zoom会議の時にも便利Googleドキュメントの音声認識機能とOBS Studio(無料でオープンソースのソフト:ビデオ録画生配信ソフト)を使うと、話している内容を文字起こしして、リアルタイムで字幕表示されることがわかった。分かりづらい時とか、文字表記やスペル表記が欲しい時には、非常に便利だ。また文字起こし済みの字幕のテキスト配布もできるのだというが、これはまだ使ったことはない。いずれにせよ、この二つの機能の組み合わせは、十分に実用に耐えるようだ。 ICTの発達によって、読むことが困難な時に音声認識機能が大いに助けになるし、Zoomの使い勝手も良くなることが今回分かってありがたかった。 私にとっては、「怪我の功名」と言うべき結果となったのである。
2022.11.19
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Milkywayです。お元気ですか? 20221016 旧統一教会に解散命令を裁判所に請求するよう、全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)が宗教法人所轄の文部相や法相に申し入れ書を送った。また、10月7日には、元2世信者が、日本外国特派員協会での会見で「どうかこの団体を解散させてください」と訴えた。だがその会見中に、教会側が中止を求める圧力をかけただけでなく、この元2世名誉を著しく毀損する行為をし、表現・言動の自由を侵害する行為にも及んだ。これは放送中だったこともあって、全国にその映像が流れ、旧統一教会の危険さが再認識され、教団解散に対する国民の意識が一層高くなった。【宗教法人の解散に関する法律】宗教法人の解散は、所管する文化庁などが請求できる。裁判所が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると、明らかに認められる行為をした」と認めた場合、解散命令を出すことができるのだ。「宗教法人法」の第八十一条にこうある。(解散命令)第八十一条 裁判所は、宗教法人について左の各号の一に該当する事由があると認めたときは、所轄庁、利害関係人若しくは検察官の請求により又は職権で、その解散を命ずることができる。一 法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。 出典:e-gov 法令検索 「宗教法人法」 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=326AC0000000126旧統一教会は日本で1964年に宗教法人格を取得して以来、この第八十一条の一の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をし」続けてきた。宗教法人というものは公益法人であり、その公益性が最重要視される法人である。その公益性ゆえに、税金も優遇されている。だが、旧統一教会の活動は、公益というものからかけ離れていて、むしろ反公益、もっとはっきり言えば反社会的活動を続けてきた。その意味で私は【旧統一教会は反社会的組織】と考えている。その根拠として、教団側は教団の骨子を問われた裁判での敗訴が多数あり、教団の教義の中心を断罪されてきた、という事実があるからだ。教団が反社会的であったとされた判例を下に挙げる。【1. 教団の詐欺行為と伝道の違法性】旧統一教会という教団の身元を隠して、人々に近寄り入信させ信徒にしてきた。そこがまず《詐欺行為》となる。さらに、《伝道に関する違法性》も断罪された。2002年8月21日判決言渡。この判決に対して旧統一教会からの高裁へ控訴が行われたが、最高裁への上告はいずれも棄却された。【2. 献金勧誘行為の違法性】教団は信者に対して多額の献金要求をしており、過去30年余りで1230億円以上の被害が確認されている。そうした被害について起きた裁判で《献金勧誘行為の違法性を問われて敗訴となった例》が下記である。1993年(平成5年)5月27日、福岡地方裁判所での判例1999年(平成11年)3月11日、最高裁判所での判例1999年(平成11年)12月16日、福岡地方裁判所での判例2000年(平成12年)4月24日、東京地方裁判所での判例2002年(平成14年)10月28日、新潟地方裁判所での判例2020年(令和2年)2月28日、東京地方裁判所での判例。最高裁でも旧統一教会は敗訴。これほどの数にのぼっているのだ。【2. 婚姻の違法性と無効性】教団の重要な宗教活動である《合同結婚式の違法性》についても判決が下された。2004年(平成16年)2月26日、最高裁判所での判例2005年(平成17年)4月25日号、新潟地方裁判所での判例さらにその《婚姻の無効性》までも、裁判で認められている。1993年10月7日 福岡地裁。教会の指示により婚姻届をした女性が婚姻意思の不存在を理由男性との婚姻の無効の訴えが認められた。このように、旧統一教会の違法性と反社会性が裁判所で裁かれてきたのである。旧統一教会の歩みは、公益に反し、社会の秩序を乱し、多くの人々を不幸にし、社会に悪益を及ぼしてきた歴史なのである。。公益のためにその存在が認められ、税が優遇されるべき宗教団体とは言えない団体だと私は考えている。一日も早く解散されることを願っている。**********************************注:文中の青字部分はWikipediaや新聞などからの引用である。
2022.10.16
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Milkywayです。お元気ですか? 20221009この問題は自分の考えの整理と記録として残しておきたいので、書いておく。安倍元首相の国葬が9月27日に終わっても、当初の自民党大御所たちの“終わったら必ずよかったと思うはず”とか“反対の声は国民の声とかなりズレている”とかの目算と現実は全く異なるものとなった。それは、10月3日の各社の世論調査で、国葬実施について「評価しない」が「朝日」59%「読売」-54%「JNN」-54%であったことでも分かる。 これほどに評価が低いのは、反社会的教団である旧統一教会と安倍元首相の関係がどんどん明るみに出ているからだと私は思っている。 10月3日に開かれた国会でも、野党側から国葬の検証、旧統一教会との関係が激しく追求されているし、国民の関心もいまだに高い。安倍氏銃撃から国葬という過程の中で次々と明らかになっていく自民党と旧統一教会との癒着。これについてもう少し継続して書いていく。本ブログでは、以前のブログと同様に、Wikipediaやメディア記事からの引用部分は青字にして書き進める。【旧統一教会の政治家への浸潤が明らかに】安倍元首相の政治信条には、旧統一教会の国家像が反映されているようだ。Wikipediaにこうある。政治家との密接な関係は、教団の宣伝・広報に利用されており安倍晋三元総理大臣が説いていた国家像である「美しい国」と、日本統一教会の初代会長の久保木修己が説いた「美しい国」との共通点が指摘されている。国家像だけではなく、現実的に安倍・菅政権で議論が進まなかったあるいは後退した、夫婦別姓、性教育、性的マイノリティの権利擁護などが、旧統一教会に恩のある自民党保守派からの反対のために進まなかったという意見もある。安倍氏だけではない。自民党議員たちへの旧統一教会の浸潤も次々と露わになってきた。2022年9月8日、自民党が公表した「旧統一教会と議員の関係の点検結果」によると、衆参両院の議長を除く所属する自民党所属の国会議員379人のうち、47.3%にあたる179人が教会との接点があった。NHKの記事https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220908/k10013809081000.htmlそして、YouTubeのビデオhttps://www.youtube.com/watch?v=Ri1AKyVupfU上の二つをみただけでも、自民党の国会議員のほぼ半数が旧統一教会に関連し、選挙時にもその協力を得てきたこと、そして、自民党はそれをひたすら隠そうとし続けていることが分かるし、それを正そうとする意欲も自民党には無いことがわかる。【自民党による「点検」への不信】自民党が公表した「旧統一教会と議員の関係の点検結果」は、信用できない。なぜなら第一に、点検内容が不備である。この点は後述する。さらに、結果が公表された以後も、この結果から漏れたものが次々と発覚し、修正が続いているからだ。第二に、調査対象である重要人物がこの「点検」とやらから外されている。旧統一教会問題の主要人物である安倍元首相。故人だからできないと政府は説明しているが、本人からの聞き取りができないのであれば、安倍事務所を調査すれば良い。何もしないうちから“やらない”との前提で政府の姿勢を発表している。次に、細田 博之衆院議長がこの点検の対象外になっている。この人は故安倍氏と共に教団と最も深い関係にあり、選挙の時に、細田派の長として、票の割り振りしていた人物と言われている人である。彼と教会の関係が深いことは数々の証拠が示している。旧統一教会の大会に出席し挨拶したことが数度。また別の機会では、旧統一教会の韓鶴子総裁を賞賛。さらに、2021年6月11日にはあろうことか、国会内で、旧統一教会と自民党が国会内で第1回統一集会を開き、そこに出席した他の議員たちとガッツポーズで記念写真を撮っている。 こうした教会との密接な関係について説明を求められているのに、細田氏は会見を開いて自らの口で説明そして質問に答えるという形をとらず、A4一枚の説明文を提出。案の定その後、その文書で報告した以外の接点がいくつも発覚。さらなる説明責任を問われて再度A4二枚の文書提出で済ませた。細田氏には衆院議長という自分の立場への弁えも無いようで、国民の疑念にきちんと答える姿勢がみえない。第三に、山際経済再生担当大臣のごまかし。彼は、自民党内の自己点検に報告されていない統一教会との密接な関係が次々と発覚。それらに対する山極大臣自身のコメントは「記憶にあるが記録にない」。こうした迷言をはく彼のことを自民党が見逃していることだけをとっても、自民党の「点検」がいかに信用ならないものかがわかる。山極大臣自身による申告以外で、その後発覚した教会との密接点をいくつか挙げておく。一つ目、2011年ナイジェリアで行われた関連団体の会合に出席して、文鮮明教祖を「まことのお父様」と呼んでいた。二つ目、2018年「統一協会」トップの韓鶴子総裁と会っていた。これについては、統一教会主催だったにもかかわらず、「関連団体の会合への出席」として報告していた。三つ目。教会の総務局長が、山極大臣の選挙スタッフにいた。彼は、統一教会の信者で、統一教会の大幹部の運転手を務める人。安倍元総理が殺害された直後の7月11日の統一教会の会見の時、田中富広日本教会会長の隣に座っていた総務局長である。これほどの人物が山際大臣の選挙スタッフとして入り込んでいたのだ。2014年の選挙前の時の“証拠写真”を週刊新潮が掲載した。細田衆院議長や山際大臣だけではない。「点検」内には、旧統一教会のイベントに参加し、教団トップの韓鶴子総裁を“マザームーン”と賞賛した山本朋広議員の名前もない。統一教会とどろどろの癒着と言われてきた山谷えり子氏、麻生太郎氏、杉田水脈氏らも点検から外されている。【自民党の「点検」は不備で、無意味】そもそも自民党が実施したこの「点検」には不備がある。教会との密着度や問題度が分からないように作られているのだ。教団への便宜供与や、教団からの議員秘書の受け入れについての項目、さらに自由記述欄もアンケートには無い。つまり『8項目以上のことは書くな』という点検内容なのである。鈴木エイトさんは「調査という意味では無意味だ」と非難している。鈴木エイトさんの言葉を引用する。「茂木幹事長名で議員に配布された2枚のペーパーの1枚目で「党として組織的な関係は一切ないことは既に確認済み」とクギを刺し、2枚目にまとめられた質問はたった8項目。「秘書などのスタッフ派遣を受けているか」「便宜を図ったことがあるか」「表に出せない資金提供を受けたことがあるか」「当局の捜査に待ったをかけたことがあるか」──など、聞くべきことが設問にない。自由記述欄もない。質問を超える報告は一切するな、組織性をにおわせることは決して書くな、と枠にはめ込んでいます。 ──本気度の低さは隠せません。」https://news.yahoo.co.jp/articles/b76a07649c9844d84ed657b7b28eafcac0b04248 旧統一教会問題を解決しようと思うのであれば、「国会調査委員会」を設置して、徹底的に調査をすべきだ。それを求めているのが国民の声ではないか? 岸田首相には、今度こそ、自民党内の大御所の言うことを聞くのをやめ、当初言っていた国民の「声を聞く力」を発揮してもらいたい。
2022.10.09
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Milkywayです。お元気ですか? 202210029月27日、「国葬反対」者が世論の過半数を占める中、岸田首相は国民に納得できる説明もしないままに、「国葬」を押し切った。会場の外には「国葬反対」のデモ隊までが押し寄せる中をである。この状況は、海外メディアがニュースにするほどだった。今回の「国葬」強行は、これから検証されていくだろう。私も自分の考えを記録しておきたいと思う。【旧統一教会との密接な関係発覚】前回のブログで書いた様に、安倍元首相の国葬の実施は、岸田政権が民主主義を軽視し、国の行政を私物化したことを露呈させただけにはとどまらない。銃撃の背後にあった旧統一教会との密接な関係が噴出し、自民党がカルト集団に汚染されていたことが明らかになり、その状況が国葬反対の声と共に、国民の間に加速度的に拡大した。安倍元総理は、祖父・父から3代に亘って反社会的宗教団体「旧統一教会」との深い絆を培ってきた。その旧統一教会による犠牲者の一人によって、故安倍晋三氏は命を落とした。単なる衝動的な暴力によって命を落としたのではない。祖父の岸信介・安倍晋太郎・晋三の三代が、旧統一教会に力を貸したことによって生み出した、巨大な不幸の結果が、この事件を起こしたのである。この銃撃事件によって、旧統一教会という反社会的教団に汚染されきっている自民党政権の実態が明らかになった。【旧統一教会の教理】この旧統一教会が何を教えている団体なのか、整理しておく。以下の情報は全てWikipedia 「世界平和統一家庭連合」 https://ja.wikipedia.org/wiki/世界平和統一家庭連合に拠る。【欧米ではカルト宗教とされている】旧統一教会は、宗教的には、中国では邪教、欧米ではカルト宗教とされている。聖書に預言された無原罪で生まれた再臨のキリストが文鮮明(今それは否定され、再臨のキリストは妻韓鶴子)であるとすることから、全てのキリスト教会から異端と見なされている。例えば、1995年のフランス国民議会委員会報告1996年 オーストリア連邦環境・青少年省1997年 ベルギー議会調査委員会(1997)[646]1997年 ドイツベルリン上院報告(1997)1999年 再度フランス国民議会委員会報告2014年 中国共産党中央弁公庁報告 と記されており、ヨーロッパ各国や中国でもカルト集団に指定されている。 【旧統一教会の教義】旧統一教会の教義の中心は文鮮明本人は「現人神である自分を中心とする神国政治を創る」と言っていたとされ、内部告発によれば、韓国で教えられている教義では「韓民族が選民であり、他民族に優越している」「韓国語が世界共通語になる」とされており、韓国が世界の中心であるとする「韓国中心主義」が説かれている。韓鶴子総裁は、「宗教と政治は一つにならなければなりません」と発言。ここを読むだけでも、旧統一教会は宗教団体というよりは、政治団体と言える。 旧統一教会が政治組織である根拠はさらにもっとあり、1961年に当時のKCIA長官・金鍾泌によって教団が再編され、韓国の政治的目的を達成するために政治工作を行っていたことが明らかになっているが、この事実は、1978年のアメリカ合衆国下院の報告書で明らかにされている。【日本での活動の目的は】文鮮明の教え(教義)の一つとして、文教祖の恨(ハン)を晴らすため「エバ国家日本をアダム国家韓国の植民地にすること」「天皇を自分(文鮮明)にひれ伏させること」(「文鮮明先生御言選集」346巻より])としていて、こうした教義はおよそ宗教活動の目的とは言えず、宗教の本来の目的から完全に逸脱している。それだけでなく、天皇を支配下に置くという日本の国の形まで破壊しようというものなのだ。さらに、日本は「サタン」側の国であるとされており、それは代々天照大神を崇拝して、韓国キリスト教を過酷に迫害した国である、と日本をサタン(悪魔)と位置付けている。それだけではない。この教団は、日本という国の破壊を目指す文鮮明・韓鶴子夫妻に協力している実態もわかるのである。それは、旧統一教会の教祖文鮮明が設立した関連団体の反共政治団体「国際勝共連合」では、「朝鮮半島が突破口に第三次世界大戦が必ずおこらなければならない」「日本は生活水準を3分の1に減らし、税金を4倍、5倍にしてでも、軍事力を増強してゆかねばならない」とし、日本の国民に犠牲(生贄)になることを要求(『新版 社会科学辞典』 新日本出版社 1978年第1刷)としているからだ。こうした教団に、安倍晋三の祖父岸信介内閣時代には、あろうことか首相公邸が統一教会本部として使用させていたのである。 【世界の四大宗教も自らに平伏させるという教え】旧統一教会の教祖が、自らを世界の元首のその上に立ち、世界の四大宗教も自らに平伏させるという教えも説いている。教義によると、教団が「四大名節」と呼ぶ記念日には、文鮮明と家族に対して、天皇の身代わりに日本統一教会の会長・久保木修己が拝礼を行うという儀式が行われ、その他にも、アメリカ合衆国大統領などの世界各国の元首に扮した教団幹部が同様に跪く。さらには、イエス・キリスト、釈迦、孔子、ムハンマドなど主要な宗教の創始者に扮した人物も文鮮明とその家族に平伏するという。統一教会が行う宗教活動や国際勝共連合が行う政治活動は、このような文鮮明の野望を実現するための方便に過ぎないとされる。このような教義のもとに、旧統一教会は日本の天皇制を壊し、日本から経済的収奪を目指し、世界の宗教を自らの支配下に置き、さらに第3次世界大戦をも画策する教団なのである。 そういう教団を日本で設立させ、それを支援し続けてきた岸・安倍家3代の元首相。さらに、この教団の支援を受けて国会議員を誕生させ、自らの派閥を広げてきた人物を、国を挙げて弔うのは、正気とは思えない。 カルト教団である旧統一教会との深い接点を持ち続けてきた故安倍晋三。この一点だけでも私は彼の国葬は間違っていたと思っている。
2022.10.02
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Milkywayです。お元気ですか? 20220926 安倍元首相の「国葬儀」という儀式が明日行われる。最後の最後まで私は反対の意思表示をしたい。この国葬の実施は、日本の政治体質が現れているからだ。それに対する自分の考えを整理しておきたい。儀式が終わっても書き続けようと思う。【国会での審議も決議もなし・国会軽視つまり国民軽視】今回の国葬決定の経過では、岸田政権が民主主義の破壊を一層進めたことを露呈させた。この国会軽視、国民の意思は無視という政権運営は、故安倍首相、菅前首相と悪化の一途を辿ってきた。岸田政権は、彼ら二人の悪伝統を受け継ぎ、それをさらに悪化させたのである。国会での審議も経ず、司法・立法・行政の三権の長にもはからず、国民の代表者である各党の党首とさえも意見交換をしなかった。内閣という閉じられた中で「国葬」という全額国税で賄う国の大行事を決定した。国会を軽視し、国民の意向を完全に無視したのだ。 今回の民主主義に反する行為は、皮肉にも、国会で118回もの虚偽答弁をし、自分の友達を優遇する行政を行い、それに対して何ら明確な返答をしてこなかった故安倍元首相の踏襲となり、さらに、民主主義を壊した権力者を顕彰しようとする、岸田内閣による「私物化された国葬儀」となったのである。【この国葬への質問書とそれに対する政府の答え】この国葬が適切なものかどうかの質問書が参議院議員 辻元清美議員から下記のように出された。質問主意書: 参議院内閣参質二〇九第一〇号 令和四年八月十五日内閣総理大臣 岸田 文雄参議院議長 尾辻 秀久 殿 辻本議員からの質問書とそれに対する答弁書が「参議院議員辻元清美君提出安倍晋三元総理の国葬儀等についての基準に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。」として、下記のごとく答えられた。https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/209/touh/t209010.htmこの答弁書を読んでわかる通り、岸田政権は今回の国葬には根拠となる法律はないこと、内閣法制局においてすら、本国葬について具体的な検討は行っていなかったこと、費用は一般会計の予備費から充当すること、と回答したのである。この様に、政権自ら法的根拠のない国葬であること、予算も明確ではないことを認めたわけで、そうした中で税金を使うというのは、行政の私物化、民主主義に反する行為を知った上で行ったいうことになるだろう。もう確信犯という気がする。【ミャンマーのクーデター政権を招いた】加えて岸田政権の民主主義意識の低さは、国葬への参加案内をした相手先の選択にもはっきり現れた。なんと、ミャンマーの軍事専制政権の出席をも促したのである。そもそも、ミャンマーの軍事政権を日本政府は「政府承認」していないのにである。現在のミャンマー政権は、昨年2月クーデターを起こし、選挙で選ばれた民主的政権を倒して、権力を握った。そのあと前政府の要人を次々と逮捕、拘束し、不正極まる裁判によって、非暴力民主化運動の指導者のアウン・サン・スーチー国家元首はじめ、民主政権の民主活動家たちを逮捕。そしのうちの4人の死刑を決定し、処刑した。それだけでなく、民主化を求める市民に対し弾圧を続け、人権団体によると、クーデター以降、2000人以上の市民が虐殺されたという。 ごく最近も9月16日、北西部で国軍による学校などへの無差別空爆や砲撃があり、少なくとも11人の子どもが死亡したというニュースが報じられた。こういう弾圧を続けている未承認政権を国葬に招いたのである。 英国のエリザベス2世の国葬には、現在のミャンマー軍事政権は参列を許されなかった。それなのに岸田政権は、こうした軍事政権を国葬に招き参加させる。その行為が現軍事政権を認めることになることを考えていないのだ。あまりにも無思慮で、民主意識が低すぎではないか。 そうした岸田政権の体質が露呈した安倍元首相の「国葬儀」が明日行われる。次のブログでは、統一教会と自民党との関係について書く。
2022.09.26
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Milkywayです。お元気ですか? 20220923前ブログでは、国葬に反対する国民・市民の世論調査の結果と訴訟について書いた。その更新後に、別の大きな反対の動きもあったので、それらも記録しておく。 17日、東京・銀座で、約650人の参加者が「国葬反対」「税金使うな」とシュプレヒコールを上げデモ行進。 9月19日、台風14号の影響による強い雨の中、約1万3千人(主催者発表)が、東京代々木公園で「国葬反対」のデモに集まった。大きな台風の中にもかかわらず、これだけの人が集まった。 21日、札幌市の大通公園を出発し、自民党の道連本部が入るビルの前へと市民がデモ。9月23日には、新橋SL広場前でのリレートークと銀座デモが行われる予定。27日の政府が国葬を強行する当日にも、錦華公園での集会後、国葬会場の日本武道館に迫る抗議デモが行われる。 https://kosugihara.exblog.jp/241587150/ こうした国民・市民の声を、岸田政権はどう観ているのだろう。もう一つ、衝撃的な「国葬反対」の抗議行動が起きた。21日朝、東京 霞が関で男性がみずから、油をかぶり体に火をつけた。現場には、今月27日に行われる安倍元総理大臣の国葬に反対する趣旨の手書きのメモが残されていた。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220921/k10013829121000.htmlこれほどの強い反対行動が、各地で起きていることを、岸田政権は直視するべきだし、この影響を予測すべきだ。さて、今回のブログの主題に戻る。今回は、岸田首相のあげた国葬を行う4つの理由には、私自身は全く納得できないので、その一つ一つについての私自身の考えを記す。【岸田総理の挙げた国葬を行う理由は納得できない】岸田首相は、安倍元首相を国葬にする理由を2度の機会を使って説明した。まず1度目は2022年7月14日の記者会見において、「安倍元総理におかれては、憲政史上最長の8年8か月にわたり、卓越したリーダーシップと実行力をもって、厳しい内外情勢に直面する我が国のために内閣総理大臣の重責を担ったこと、東日本大震災からの復興、日本経済の再生、日米関係を基軸とした外交の展開等の大きな実績を様々な分野で残されたことなど、その御功績は誠にすばらしいものであります。外国首脳を含む国際社会から極めて高い評価を受けており、また、民主主義の根幹たる選挙が行われている中、突然の蛮行により逝去されたものであり、国の内外から幅広い哀悼、追悼の意が寄せられています。こうした点を勘案し、この秋に国葬儀の形式で安倍元総理の葬儀を行うことといたします。」と述べた。これらの説明では国民は納得せず、国葬反対の世論は増加。それにつれて岸田内閣の支持率も低下の一途を辿った。そこで再度、9月8日、国会閉会中審査で、岸田首相が説明した。https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220908/k10013808541000.htmlだが、その内容は7月の第1回目の説明とほとんど変わっておらず、実施を決めた4つの理由を少し長く述べただけだった。その4理由とは、1. 安倍氏が憲政史上最長の8年8か月にわたり総理大臣を務めたこと2. 国として葬儀を執り行うことで安倍氏を追悼する3. わが国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜く決意を示していくため4. 来日する各国要人と集中的に会談を行い、安倍氏が培った外交的遺産をしっかり受け継ぎ、発展させる意思を内外に示すためと述べた。【4理由に対する私見】一つ一つについて、私が納得できなかった点を記しておく。1について最長の政権を讃えたいのだったら、内閣葬か自民党葬にすれば良い。なぜなら、国民全員が自民党に投票したわけではないからだ。他政党に投票した選挙民が安倍氏の長期政権を祝うなど理屈には合わないし、道理が通らない。他党支持者からすれば、自民党による長期政権は、祝う対象ではない。しかも、自民党の岩盤支持層と言われるのは国民の30数パーセントと言われている。あとの60数パーセントは自民党支持者ではない。この60パーセント以上の人からすれば、祝う対象でもなく税金を使って良い対象でもない。2について安倍氏を追悼するのが目的であれば、別に国葬にする必要はない。内閣葬でも自民党葬でも、内閣と自民党との合同葬でも良い。哀悼の意志を表明したい国民がそこに赴き、献花でも献香でも、記帳でも良いではないか。なぜ国葬でなければならないのか?その理由が明確でないのだ。3について我が国が暴力に屈せず、民主主義を断固守り抜く決意を示すために国葬をする、という理由も、納得できない。暴力に屈しないという姿勢を示すためになぜ「国葬」が必要なのか?国葬でなくてもよいではないか。暴力に屈しないというキャンペーンを世界中に発信する、暴力廃絶の声明を継続的に何十年も出し続けることだってできる。なぜ国葬という儀式を執り行うのか、という問いに岸田首相は答えていない。4について 「来日する各国要人と集中的に会談を行い」と岸田首相は言ったが、各国要人は来ない。国連の常任理事国5カ国(アメリカ合衆国、ロシア、中国、フランス、英国)の全てのトップは欠席。安倍氏があれほど親密さをアピールしたロシアのプーチン氏さえ欠席。EUのミシェル大統領、ヨーロッパの大国ドイツ、フランスの大統領も欠席。中国からは返事さえ来ていない。G7の国では、かろうじてカナダのトルドー首相が出席するのみ。要するに、海外要人で埋め尽くされ、そこで一大弔問外交が繰り広げられることは無くなった。そこで自分をアピールできると踏んだ岸田総理の読みは大外れ。弔問外交など全く期待できないスカスカの国葬なのだ。一つ強調しておく。岸田総理のあげた理由「民主主義を断固守り抜く決意を示すための国葬」という理由が、国葬強行となれば、完全にアイロニーとなる。それは、国葬を決定したことそのものが、民主主義の基本である法的根拠がなく、三権の長の承諾もなく、国会で審議されることもなく決定されたからだ。岸田内閣の「国葬」決定は「とんでも民主主義」に基づいたものなのである。国葬を決行すれば、岸田首相の挙げた「民主主義を守り抜く」とは真逆の日本政府の現実の姿を国内外に晒し、歴史に残る大皮肉・アイロニーとなるだろう。次の回では、岸田政権の国会軽視、国民軽視の姿勢について書く。
2022.09.23
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Milkywayです。お元気ですか? 20220919国葬に大反対の理由をその1に続けて記す。今回は費用の不透明性と国民・市民からの反対に焦点を置く。ブルーの文字色部分は引用部。 【費用・予算の不透明性】費用・予算の不透明性に関しては、日刊ゲンダイDIGITAL 8/31https://news.yahoo.co.jp/articles/e9816c76e3c1b2dd9c5a016da776396c42800372分かりやすい。ポイントを引用する。「要した経費については国葬後に精査してお示ししたい」──。安倍元首相の国葬をめぐり、松野官房長官が30日の会見でこう言い放った。岸田政権は実施経費として2.5億円の支出を決定。この中に含まれていない海外要人の「警備費」や日本滞在に伴う「接遇費」などは事後報告で済ませるつもりらしい。官邸は、全体経費ではなく、会場設営費や使用料、送迎代などの一部経費を合わせて2.5億円という数字を出した。ところが、そうした政府の態度への世論の反発が強く、支持率急降下したためか、態度を変えて、9月6日に予算は16億6000万ほどと発表。その金額さは6.6倍を超える。国のお金を使うのに、こんないい加減な予算作りというものがあるだろうか?しかも、この金額には計上していない費目があって、実際はこれ以上になるだろうと言われている。その根拠となるであるであろうかつての例と比較してみる。この記事では《3年前の「即位の礼」と同規模》になるのではないかと予測し、次の様な数字を出している。まず警備費である。「即位の礼」(2019年10月)では、国際機関を含め165の国と地域から国家元首など254人が参列した。政府は今回の国葬の案内を、195カ国と4地域、そして約80の国際機関に通知した。国家元首の出席は少ないとしても、代理の要人の出席が見込まれるから、ほぼ同規模になるだろう。「即位の礼」の時は、警備関係費用として28億5000万円を支出した。 次に接遇費である。外務省の野党合同ヒアリングでは「旅費や宿泊費というものは(日本政府が)負担することはないと想定している」と答えた。だが、これはあくまでも現時点の「想定」に過ぎない。現職の大統領や首相の滞在費なら、相手国が負担するケースはあるだろう。しかし、個人で参列する元職の場合はどうか。 「即位の礼」の際、外務省は約48億円を計上。滞在費だけでも約35億円に上った。つまり、警備費が最大35億円、海外要人の滞在費が「即位の礼」と同規模だとすると、国葬の実施経費は、ざっと見積もって最大70億円に膨れ上がる。実に政府発表の28倍だ。この記事でわかる様に、今回の国葬は、名称の点でも費用の点でも、国民を欺こうとする岸田政権の姿勢が表れている。 【世論調査、反対の署名運動、反対の訴訟】「国葬」への国民の反対意見は非常に多い。最新の9月17−18日の世論調査の結果では、安倍晋三元首相の国葬について「反対」が共同通信では60.8%、毎日新聞では62%にも上った。国民の6割以上が反対なのである。一方、憲法学者、法律家、学識者による「国葬反対」の署名呼びかけに対して、7月〜8月での反対署名は、9月5日の時点で、40万筆を超えた。https://www.asahi.com/articles/ASQ954Q3JQ95UTIL00C.html日本人は意思表明が苦手だ。しかも、こうした署名運動に参加する機会に出合い、そこに署名をするという勇気を持つ人はなかなかいない。それでも40万人もの人々が、はっきりと「国葬反対」と意思表示をしたのである。政府はこの人数にのぼった国民の意思を軽んじてはいけない。 【安倍元首相の国葬差し止め訴訟が各地で起きた】国葬差し止め訴訟も各地で起きた。東京新聞Web版 2022年9月12日 https://www.tokyo-np.co.jp/article/201739が分かりやすい。要点は下記。安倍晋三元首相の国葬に対しては、「安倍元首相の国葬を許さない会」という市民団体が、憲法が保障する思想・良心の自由に反するなどとして実施と予算支出の差し止めを国に求めて、訴訟を起こした。この市民団体には、第1~2次提訴では、弁護士や研究者ら計576人もの人々が原告に加わっている。だが、東京地裁、さいたま地裁、横浜地裁が訴えを却下。しかも、この訴訟では、口頭弁論も開かれず、実質的に審理しない「門前払い」の結論を下した。原告団はこの裁判所の対応に怒りを表明した。この原告団の弁護団長の大口昭彦弁護士は、国葬の根拠となる法令が存在しない点も指摘しつつ「法律がないから判断できないというのでは、司法権が行政権の軍門に下っているのと同じだ」と批判した。同会はさらに原告を募って第3次提訴を目指す方針を出した。別の市民団体も、さいたま地裁と横浜地裁による却下の決定を不服として、東京高裁に抗告した。私は、弁護団長の大口昭彦弁護士の指摘がもっともだと思う。裁判所の下した結果に対して、私も納得できないし怒りも覚える。森友問題と同様、裁判所が自民党や岸田内閣の顔色を伺った結論という印象だからだ。国民・市民の国葬反対の運動はこの3裁判所が出した結論で挫けたわけではない。この先も継続する。司法が政府の顔色を伺う様な今までの姿勢を止め、自らの矜持を取り戻してくれることを私は願う。第二次安倍政権と、その跡を継いだ菅政権の下で、三権分立という民主主義の基本が壊れた。岸田政権がそれを引き継いではいけない。今修正しないと日本の民主主義は完全に壊れてしまうと危惧する。政府が、国葬を強行したら、国民・市民の政府への批判や、司法の政府寄りの姿勢に対しての批判の声はさらに勢いを増すに違いない。第3回目は、岸田首相があげた国葬を行う4つの理由について、私の考えを書く。
2022.09.19
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Milkywayです。お元気ですか? 202209177月8日の安倍元総理の銃撃事件からもう1ヶ月半が過ぎた。在任中には多くの問題を起こし続け、好きではない政治家ではあったが、その亡くなり方があまりにも衝撃的で、彼について書くことができずにいた。だが今日は書いておかなくてはいけないという思いがまさった。亡くなり方が痛ましいという思いはある。だが、彼を国葬にするという現政権の決定を支持するほど、感情に引き摺られたくはない。いろいろ考えた結果、断固反対という立場に達した。今回から数回続けてのブログは、現時点で反対する自分の理由を整理し、まとめておくために書く。【政府が使っている名称への不信感】政府は、そもそもその名前を「国葬」ではなく、「国葬儀」という紛らわしいものにした。こうした用語使いには、岸田政権の「国葬」という名を使うのが憚られる、あるいは非難をかわそうと言う意図が透けて見える。国民を騙そうと言う政府の小賢しさが透けていて、国民を馬鹿にしていると私は思った。さらに言うと、現政権は、国内と国外で用語を意図的に使い分けている。外務省の英語での発表は「State Funeral」つまり「国葬」という言葉を使っている。2022, https://www.mofa.go.jp/press/kaiken/kaiken24e_000146.htmlPress Conference by Foreign Minister HAYASHI Yoshimasa, Friday, July 22, つまり、世界に対しては「国葬」としてアナウンスし、外務省は「国葬」への出席を各国政府に問い合わせたのである。それなのに、なぜ国内にあえて「国葬儀」なる紛らわしい言葉を使うのだろう。この言葉の使い分けには、何かを誤魔化したいかのような姑息な意図が見える。【安倍元首相の国葬の正統性に対する疑問】次は、この国葬儀なるものは、憲法違反ではないのか?あるいは、そこに法的根拠があるのか? という問題である。国葬というのは、政府が葬儀の全費用を負担する国家行事で、戦後では貞明皇后(大正天皇の皇后)、吉田茂・元首相、昭和天皇の3例しか行なわれていない。これについては、国葬の研究で知られる宮間純一・中央大学教授は、「日本で戦前戦中期に行なわれた国葬は、国家や天皇のために尽くした『偉大な人物』を賛美する場でした。こうした異論を封じる性格を持つ国葬は、戦後民主主義になじみません。歴史の検証なしに国葬を再現するのは問題です。手続きの面から見ても国会で議論を尽くすべきだったが、閣議決定だけで押し切った。これも民主主義に反している。安倍元総理の政治的功績の評価とは関係なく、私は今の日本に国葬自体が不要だと思います」と述べている。https://news.yahoo.co.jp/articles/4aeb1e49f834c09956fdc63284fda22f25f01530 (マネーポストWEB 8/30) 今回の安倍元首相の国葬は、戦後の民主主義になじまず、手続き上も大いに問題があるのがわかる。そうした問題がある行事に、国家予算や国税を使うことは不当ではないかと私は考える。第二回目は、その費用や予算の不透明性と世論について書く。
2022.09.17
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Milkywayです。お元気ですか? 20220828 岸田新政権では、統一教会との関連ばかりが注目されていて、その政治姿勢や政治信条だけでなく、倫理的にも大いに問題がある人物が要職についたことが霞んでいる。 政府の要職に杉田水脈議員を登用したことは、岸田政権の体質を浮き彫りにした。さらに、自民党が、男女差別や性的マイノリティに対する差別発言を繰り返すこの人物を高く評価していることも、彼女を就任させたことで明らかになった。そしてさらに、杉田水脈氏を政府高官につけることで、国民からの批判にも耳を傾けず、無いことにしてしまおうとし、そうすることによって、国民の敗北感や無力感を根付かせてしまおうとする自民党や岸田政権の姿勢も分かった。だが、その目論見にのってはならない。私たちは、国民としての健全な批判精神を持ち続けるために、この人物の就任にもっと注目し、議論や批判をするべきだと思う。 問題の主は、総務大臣政務官に就任した自民党の杉田水脈議員(55)。彼女は上記の様な問題に加えて、この度も明らかな嘘を口にした。8月15日の就任記者会見で「セクシュアルマイノリティの方々を差別したことはない」と大嘘を言ったのである。この発言は、YouTubeで確認できる。https://www.youtube.com/watch?v=zwyF_zi4G7I このビデオの40:00頃から彼女は二人の記者の質問に答え、特に41:00 ころからの杉田氏の答えでは「過去に多様性を否定したこともなく、ある性的マイノリティの方々を差別したこともない」と、声も大きくして明言。 しかしこの発言内容は明らかな嘘で、過去に彼女のLGBTQの方々への差別発言に批判が高まり、その記事を載せた雑誌は休刊に追い込まれているのである。しかも、このことは海外の新聞にも取り上げられ、杉田議員の発言は批判されていた。2018年9月26日の英紙ガーディアンのJustin McCurry記者による記事「Japanese magazine to close after Abe ally's 'homophobic' article (安倍首相の盟友の「ホモフォビア」記事で日本の雑誌が休刊へ)」である。https://www.theguardian.com/world/2018/sep/26/shincho-45-japan-magazine-homophobia-mio-sugita-shinzo-abe以下に全文を翻訳する。*************************** 与党自民党の右派議員が書いた同性愛嫌悪の記事に対する反発から、日本の著名な雑誌が廃刊されることになった。「新潮45」は、杉田水脈議員の見解をめぐる論争が続く中、発行を停止すると発表した。杉田議員は自身が書いた記事の中で、LGBTを「非生産的」と表現し、彼らを支援するために税金を使うことに疑問を呈した。杉田議員は、「同性カップルは“子どもを生まない”。つまり、生産性に欠け、国の繁栄に貢献しない」と書いた。「新潮45」はその後 「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」と題する特別企画を掲載した。 しかしその後、発行元の新潮社は、記事について謝罪することとなった。「雑誌の売り上げが減少し、編集作業の人員が不足したなかで、特集パッケージの精査や記事のチェックを十分に行えなかったことは否めません。このような事態を招いたことを大変申し訳なく思っています」と語ったと、朝日新聞が報じた。 出版元の佐藤隆信社長が「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた」と異例の声明を出し、「新潮45」は廃刊となった。 7月に掲載された杉田氏の記事は、政治家やLGBTの権利運動家から非難を浴び、謝罪を要求された。しかし、杉田氏の所属する政党は当初、杉田氏の叱責を拒否。だが後に「性的少数者」の権利を支持する立場と矛盾する見解であると発表している。 安倍晋三首相の盟友である杉田氏は、この記事について公式に謝罪していない。安倍首相は先週、「彼女はまだ若いので注意して仕事をしていってもらいたい」と述べた。杉田氏は51歳である。 1982年に創刊された「新潮45」は、自らを「ちょっと危険」であると表現し、右翼的な見解と政治的に正当とされる見解に対する批判意見を提供することで、新しい読者を集めようとしてきた雑誌である。 LGBTの権利を求める運動家たちが杉田氏に謝罪を要求する中、同誌は、“第二次世界大戦前後、日本兵が性奴隷を利用したという報道は韓国の捏造である”と主張する杉田議員を擁護しようとしてきた。 同誌は最新号で、文芸評論家の小川榮太郎氏の“性的少数者の権利を保障するなら、電車内で女性に手を出す男性の権利も社会は保障すべきでないのか”と述べた記事を掲載した。 毎日新聞によると、新潮社の伊藤幸人広報部長は、同誌の編集部が「部数増のために、記事への十分なチェックがおろそかになった」と述べている。****************************** 上記の様な有力紙ガーディアン紙の記事まで、杉田氏は嘘だと言うのだろうか?もしそうなら、同紙に対する重大な名誉毀損になるだろう。それが杉田氏には分からないらしい。 差別発言を繰り返し、事実をねじ曲げ、嘘を通し続ける総務大臣政務次官。こうした人物が政府の中枢にいることに国民はもっと危機感を持つべきだと私は思う。
2022.08.28
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Milkywayです。お元気ですか? 20220822 前回のブログ2回では、DAISY(Digital Accessible Information System)という電子書籍フォーマットについて書いた。このフォーマットでは、書籍を音声のみにしたり、しかもその速度を自由に変えたり、音声とテキストの組み合わせで読み上げを聞きながらテキストを目で追っていったり、あるいは、そのテキストをハイライトしてどこを読んでいるか明示したり、あるいはテキストと音声と画像を組み合わせたりして、どのような障害のある方でも読書ができるような、さまざまな配慮がなされた電子書籍システムであることを述べた。 そして、このシステムが援助できる障害領域は、非常に広範であることも紹介した。しかも、このシステムを使えば、障害のある方たちが自分たちのニーズに適った図書を作ることもできるのである。 今回のブログはこの画期的システムの創始者河村宏さんの「命を救うDAISY」の一側面を紹介する。 【命を救うDAISY】河村宏先生が所属する「日本DAISYコンソーシアム」が主導した「浦河プロジェクト」という例を紹介する。http://www.rehab.go.jp/ri/event/image/shoufuku06.pdfこれは、北海道の浦河町にある「べてるの家(英語: Bethel's house)」という精神障害等をもつ方々の地域活動拠点のことで、生活介護、訪問看護ステーション、ヘルパー・ステーション、グループホーム、有限会社福祉ショップ「べてる」などの活動をする社会福祉法人の総体で、そこで暮らす当事者の方々にとっては、生活共同体であり、働く場であり、ケアも提供するホームという3つの性格を持っている。https://ja.wikipedia.org/wiki/べてるの家かつてこの「べてるの家」をNHK番組で観た時に、その活動内容に私は目が開かれる想いをした。精神障害がある方たちは、一般的には災害時には救援を受けるだけ、という先入観を持たれているのだが、ここの方々はそうではない。自ら上に書いたマルチメディアDAISYを使って、地震発生時の『防災マニュアル』を作り、それに基づいて避難訓練をし、そして実際に、2010年2月28日のチリ津波の際は速やかに、安全に避難しただけでなく、町役場や自治会との連携を実行し、他の住民の方々も安全に避難できたのである。まさしく「命を救うDAISY」でありうることを実証した。 【べてるの家で実証】「べてるの家」は、日本でもっとも地震の発生頻度の高い日高地方にある。そのため、いつ地震や津波が起きても避難できるように備える必要があった。さらに、1995年の阪神淡路大震災や2004年のインドネシア・スマトラ沖地震の大津波から、避難は喫緊の課題となっていた。河村宏先生は、2003年から浦河に入り、「べてるの家」の避難におけるDAISY活用に取り組まれた。DAISYは、音声・テキスト・画像を同時に表示するデジタル録音図書なので、同時に複数の感覚器官を通じて情報を提供できるため、認知に障害のある精神障害者などに対する情報伝達ツールとして有効という実証研究を始め、2010年までの間だけでも60回も浦河入りし「べてるの家」の方々と続けられたのである。具体的には、不安があっても「学べばいい」「練習すればいい」「研究すればいい」という共通認識を確立し、自分たちの生活の中での課題を、仲間たちと話し合い、メンバーそれぞれが対処方法を編み出した。避難場所を「地震発生後、4分以内に10メートル」と、具体的な目標を設定。当事者それぞれの方々が居住している所から、実際に自分達で避難場所まで歩き、その道筋を文字と写真と音声で示した『避難マニュアル』をマルチメディアDAISYで製作したのだ。(出典:「障害者と災害」 報告書 2010年3月12日)https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/disaster/sympo20100312/ikematsu.html その結果が、前述の、2010年チリ津波の避難勧告がでた時の安全な避難と、町役場や自治会との連携の成功だったのである。 【自治体での導入を】私は、この前例が全国各地の精神障害のある方々の避難用に、自らがDAISYを使って『防災マニュアル』を作れることの前例、好例になると思った。さらに、彼らの地域社会への参加を促し、社会貢献をすることにつながるとも思った。救援されるだけの人でなく、救援を援助する方々にもなるのである。 近年被災地では障害のある方々、高齢者の逃げ遅れによって亡くなる、あるいは助けに行った方々が犠牲になるなど、痛ましいことが起きている。その場所にあった避難ルートの確保と、避難方法の徹底のための独自のマニュアルが、マルチメディアDAISYだったら自分たちで作れるのである。ぜひとも各自治体はこのDAISYを活用した「べてるの家」での試みを、参考にしていただきたいと願う。障害のある方々が災害で命を落とさないために。
2022.08.22
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Milkywayです。お元気ですか? 20220813アメリカでは、司法が政府から完全独立をしているのだと、羨望の想いで読んだ記事をシェアしたい。8月8日(月曜日)FBIが元大統領の疑惑捜査のために、フロリダにあるトランプ氏私邸の家宅捜査に踏み込んだ。政府権力の支配下にあるような体の日本の司法と、その独立性が保たれているアメリカの司法の対極的な姿。それを伝えるCNNの記事の全文訳を載せる。(筆者注:記事の中のトランプ氏の写真2枚は文中への挿入ができなかったため割愛した。)「FBI executes search warrant at Trump's Mar-a-Lago in document investigation、文書の捜査のためにトランプ氏のマー・ア・ラゴでFBIが捜査令状を執行」の見出しの2022年8月8日の記事である。https://edition.cnn.com/2022/08/08/politics/mar-a-lago-search-warrant-fbi-donald-trump/index.html⚖︎・・・・ ⚖︎ ・・・・・ ⚖︎ ・・・・・ ⚖︎ ・・・・・(CNN) - FBIは月曜日、フロリダ州パームビーチにあるドナルド・トランプ氏の私邸マー・ア・ラゴにおいて、捜査令状を執行した。私邸に持ち込まれた可能性のある機密文書を含む大統領府文書の取り扱いに関する(トランプ氏への)調査の一環として行われたものである。事情に詳しい3人がCNNに明らかにした。捜査令状が執行された時ニューヨークのトランプタワーにいた前大統領は、FBI捜査官がマー・ア・ラゴで「彼らは私の金庫にまで押し入った 」と述べたと、関係者がCNNに語った。「フロリダ州パームビーチにある私の美しい家、マー・ア・ラゴは現在、大勢のFBI捜査官に包囲され、襲撃され、占拠されている」と、トランプは月曜日の夜に声明を出した。元大統領の自宅を捜索するという異例の動きは、司法省の威信と権限を示すもので、トランプ氏の法的問題が多方面で続くさ中、行われた。他方、トランプ氏は今後数カ月のうちに、2024年のホワイトハウスへの再挑戦を発表するとみられている。 FBIがフロリダ州パームビーチにあるトランプ氏私邸での捜査令状を執行した際、マー・ア・ラゴのゲートに立つシークレットサービスの捜査官たち(2022年8月8日撮影)。司法省は、前大統領に関連する2件の捜査を精力的に進めている。2020年の大統領選挙結果を覆えそうと2021年1月6日米連邦議会を襲撃した事件と、機密文書の取り扱いに関連する件である。この問題に詳しい人物によると、捜索は月曜日の早朝に始まり、法執行機関はトランプ氏のオフィスや個人の部屋があるクラブ内のエリアを重点的に行ったとのことである。別の捜査に詳しい人物によると、FBIの捜索には文書が保管されている場所の調査も含まれており、箱単位で物品が押収されたという。数カ月前、国立公文書館がマー・ア・ラゴからホワイトハウスの記録を回収したのに続いての捜査で、今回のFBIによる捜査では、公文書全てを回収する必要があったとのことである。 元FBI職員が語る、FBIの捜索で印象的だったこと 02:03トランプ氏の子息エリックが、フォックス・ニュースの司会者ショーン・ハニティに「彼らの話からすると、ドナルド・トランプが米連邦議会を襲撃したことに関する何らかの文書を所持しているかどうかを国立公文書館が裏付けたいからだ 」と語った。トランプ氏の弁護士であるクリスティーナ・ボブ氏は、FBIが文書を押収したと述べた。「トランプ前大統領とその弁護団は、FBIと司法省の職員とに対してあらゆる段階で協力的であった。だが、FBIは抜き打ちの家宅捜索を行い、文書を押収した」と語った。月曜日に捜索令状が執行される前に、FBIと米国シークレットサービスの間での連絡交換が行われ、FBIが複雑な手続きなしに私有地に入ることができたと、この問題に詳しい人物は述べている。トランプ氏不在のマー・ア・ラゴには、シークレットサービスの足跡はほんのわずかである。CNNはFBIにコメントを求めているが、司法省はCNNへのコメントを拒否している。一方、ホワイトハウスの高官は、捜索について知らされていなかったと述べた。ジョー・バイデン大統領の政府高官によると、マー・ア・ラゴの捜索について、ニュースで報道されるまで知らなかったという。文書に関する調査大統領の資料の収集と分類を担当する国立公文書館はこれまで、少なくとも15箱のホワイトハウスの記録をトランプ氏のマール・ア・ラゴから回収した--その中には機密扱いのものも含まれている--と発表してきた。6月初旬、トランプ氏のホワイトハウス時代の機密資料をマール・ア・ラゴへ持ち込んだ可能性についての詳細な情報を得るため、捜査官がこの敷地に足を踏み入れるという稀有な出来事があった。その時同席した関係者によると、司法省の防諜・輸出管理セクションのチーフであるジェイ・ブラットを含む4人の調査官の捜査に、トランプの弁護士であるボブとエヴァン・コーコランの2人が同席したという。会談の冒頭、トランプ氏はダイニングルームの近くに立ち寄り、調査官に挨拶をした。彼が去った後、弁護士からの質問には調査官は答えず、トランプ氏が資料を保管している場所を尋ねた。弁護士は調査官を資料の箱が保管されている地下の部屋に連れて行き、調査官は部屋を見て回った後、最終的に立ち去ったと関係者は語っている。第2の情報筋によると、トランプ氏は挨拶にやってきて世間話をしたが、弁護士が捜査官と話をしている間にその場を離れたという。この情報筋によると、捜査官に見せられた書類の中には、最高機密のマークがついているものもあったという。5日後の6月8日、トランプ氏の弁護士は捜査当局から、文書が保管されている部屋のセキュリティをさらに強化するよう求める手紙を受け取った。側近はその後、その部屋に南京錠を追加した。この問題に詳しい関係者によると、4月と5月、マー・ア・ラゴのトランプ氏の側近は、大統領記録の取り扱いに関する調査の一環として、FBIから事情聴取を受けた。「機密文書を記録から不正に取り去ることは連邦法に違反する犯罪だ。ですから宣誓供述書を記入する際には、この犯罪については記載しなければならない」と、元連邦・州検察官でCNN上級法律アナリストのエリー・ホーニグ氏は述べている。ホーニグ氏は、CNNのエリン・バーネットの「OutFront」(筆者注:エリン・バーネットがホストを務めるCNNのテレビニュース番組)で、この捜索のタイミングは、選挙から90日を切ったら政治的に微妙な動きはしない、という長年の規則に従っているものだと語った。「今日はちょうど中間選挙から、おそらく91日か92日前だと思います。90日ルールを適用したと解釈すれば、今日このような行動をとった理由はわかります。」GOP(共和党)のメンバーがトランプ氏を支持共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長は声明で、「共和党に対して、民主党は絶えず官僚制度を武器として使っている」と主張。また多くの共和党議員がソーシャルメディア上で前大統領を擁護している。また、ケビン・マッカーシー下院共和党党首(カリフォルニア州選出)は、「もうたくさんだ」「司法長官(メリック)ガーランドよ、書類を保管し、予定を空けておけ。もう十分だ。司法省は政治的武器化という耐え難い状態に陥っている」「共和党が下院を奪還した暁には、我々はこの部門を直ちに監視し、事実を追認する。小細工する暇は与えないからな」とツイートした。また、フロリダ州の共和党上院議員リック・スコットも「我々は今すぐ答えが必要だ。FBIは今日彼らが何をしていたのか、そしてその理由を説明しなければならない」と述べた。他方、トランプ氏の文書の取り扱いを調査している下院監視委員会の委員長は、司法省に対し、前大統領の情報の取り扱いを「完全に調査する」よう求めている。ニューヨークの民主党議員キャロリン・マロニー氏は「大統領にはアメリカの国家安全保障を守る厳粛な義務があり、トランプ前大統領が機密情報の取り扱いを誤ったことで我々の安全を危険にさらしたという疑惑は、最大限の精査を必要とする」「今日のマー・ア・ラゴでの行動の詳細はまだ明らかになっていないが、司法省がトランプ前大統領による機密情報の重大な誤操作の可能性は完全に調査しなければならないことは明らかだ。」と述べた。 この記事は追加更新されています。CNNのDana Bash、Zachary Cohen、Jeremy Diamond、Shawna Mizelle、Megan Trimbleが寄稿。⚖︎・・・・ ⚖︎ ・・・・・ ⚖︎ ・・・・・ ⚖︎ ・・・・・以上が今回の記事の全文。これから前大統領トランプ氏についての捜査に関するより一層詳細な記事が出てくるだろう。日本の司法の実態と引き比べつつ、注視していきたいと思っている。
2022.08.13
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Milkywayです。お元気ですか? 20220806前回のブログはDAISY化された電子図書のことを書いた。その後質問をいただいたのでもう少し書いてみる。DAISYとは、Digital Accessible Information Systemの略で、障がいのある方々への読書を援助するデジタル図書規格のこと。デジタル録音図書の国際標準規格になっていて、現在70カ国以上の会員団体で構成するデイジーコンソーシアム(本部スイス)によって、その開発と維持が行なわれている。DAISY図書のカテゴリーは、音声デイジー、テキストデイジー、音声とテキストと画像の機能を複合的に使ったマルチメディアデイジーがある。このDAISY図書が有効な障害の対象は、視覚障害だけではなく、聴覚障害、ディスレクシア、パーキンソン病、学習障害、知的障害、精神障害、発達障害、上肢障害、いわゆる「寝たきり」の状態の方、一過性の障害、入院患者、その他図書館が認めた読書に困難がある人など、そのカバー範囲は非常に広範だ。 【DAISYについてのわかりやすいビデオ2つ】DAISYがどういうものかがわかる日本語字幕付きのビデオを2つ紹介する。もし日本語字幕が出なかったら、次の手順で試してみて欲しい。まず、設定 → 字幕 → 自動翻訳 → 日本語の順で設定をすると日本語になる。1 《Daisy - Digital Talking Books》これはドイツで使われている音声DAISY本とDAISYプレイヤーの紹介。https://www.youtube.com/watch?v=mZAS3sMSH_82. 《What are DAISY talking books? 》このビデオは分かりやすい。https://www.youtube.com/watch?v=v9-HvSpzPvI【DAISYのあゆみ】このすばらしいDAISY規格電子図書の主な推進元は、日本障害者リハビリテーション協会の「デイジー情報センター」。ここが中心になってDAISY規格図書の普及をしている。まず、1999年に厚生省から予算がつき、その予算でデイジー製作システムと再生機、合計2,580タイトルのデイジー図書と601タイトルの法令を、全国の視覚障害者情報提供施設等に提供し、デイジー図書を全国に普及させる礎を築いた。その後も着々とマルチメディアデイジー教科書や図書の普及を精力的に継続している。さて、DAISY規格の電子図書を読むにはどうしたら良いのか?サピエ図書館にアクセスである。【サピエ図書館】DAISY規格による図書を包括的に提供しているのは、国内ではサピエ図書館である。サピエは、視覚障害者をはじめ、文字を読むことが困難な人々に対して、様々な情報を点字、音声データなどで提供するネットワークをいうが、サピエ図書館はこのサピエのメインサービスである。サピエ図書館の点字図書・録音図書の書誌(本を探すための情報)が76万件もある。さらに、サピエ図書館の蔵書内容とその数は、点字DAISY 22万9千音声デイジー約10万テキストデイジー約1万マルチメディア・デイジー約320(これは増加中)の、計約34万タイトルもある。 出典:『図書館利用に障害のある人々へのサービス 上』p132~135-【DAISYシステムを開発したのは実は日本人】詳しいことは下記「日本DAISYコンソーシアムThe DAISY Consortium(https://daisy.org)を読んでいただたい。ここの副理事長の河村宏先生が、この世界基準DAISYシステムの実際の開発者なのだ。河村宏さんとはどのような方なのか?2013年国連総会「障害と開発に関するハイレベル会合」での講演内容が、国際連合広報センターのウェブサイトに掲載されているので、読んでいただきたい。https://www.unic.or.jp/activities/international_observances/hr_day_2013/kawamura/その活動の先進さと広範さ、そしてその成果については次のブログで書く。
2022.08.06
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Milkywayです。お元気ですか? 20220729【DAISYとは?】最近、DAISY(デイジー)にハマっている。DAISYってなに?花の名前?と聞かれる。いやいや、花ではない。DAISYとは、Digital Accessible Information Systemの略で、障がいのある方々への読書を援助するデジタル図書システムのこと。しかも、デジタル録音図書の国際標準規格になっている画期的なシステムである。DAISYは電子書籍の国際標準規格で、現在70カ国以上の会員団体で構成するデイジーコンソーシアム(本部スイス)によってその開発と維持が行なわれている。これほど大規模な組織によって維持管理され、しかも継続性が重要視されているので、他の電子書籍と違って、提供元の都合で無くなったとか読めなくなるとかの心配がない。【DAISYはなにがすごいか】このDAISY規格で作られたマルチメディア図書はなにがすごいかというと、一つの作品を読むのに、音声での読み上げだけではなく、同時に読み上げ部分をハイライトしたり、拡大したり、絵や挿絵など画像も表示できるところ。さらに動画も同時に使えるから、読むことに障害のある方々にとっては痒いところに手が届くような機能を持ったデジタル図書なのだ。視覚障害だけではなく、読むことに障害があるとはどういうことか?ご存知の方も多いとは思うが、初めて聞くという方のために、具体的に説明してみる。例えば、視覚や聴覚にも知的にも問題はないのに、印刷物の読みに困難を持つ方がいる。文字がにじむ、ゆらぐ、鏡文字になったり、文字がかすんだりといった見え方の問題だけでなく、「記号」である文字を「音」として認識することが困難だったり、名称を想起する速度が遅いことによって、読みの困難さがある方々である。そうした困難の解消のために、マルチメディアデイジーでは、テキストがハイライトして、その部分を音声で喋ってくれるので、どこを読んでいるかがわかる。見て情報をとることが難しい場合は、音で情報をとれる。だから、読むこと自体に集中しすぎて中身が入ってこないという困難のある方にとっては、マルチメディアデイジーを使うと、読みに関する負担が減って、中身のことを考えたり内容を理解したりということに能力を使うことができるというわけだ。【DAISYが有効な障害の対象】このDAISY図書が有効な障害の対象は、視覚障害だけではなく、聴覚障害、ディスレクシア、パーキンソン病、学習障害、知的障害、精神障害、発達障害、上肢障害、いわゆる「寝たきり」の状態の方、一過性の障害、入院患者、その他図書館が認めた読書に困難がある人など、そのカバー範囲は非常に広範。このデバイスに接した時、私はまさしく眼から鱗!という想いをした。【百聞は一見にしかず】百聞は一見にしかず!まずはYouTubeに分かりやすい動画がある。下記を見て欲しい。「わいわい文庫のマルチメディアDAISY図書をWindows10パソコンで読む方法」https://www.youtube.com/watch?v=aEvx7bPuRW0この動画には次のような分かりやすい紹介文がある。「マルチメディアDAISY図書は、本文の文字・画像が音声と同期している電子図書です。 わいわい文庫は、公益財団法人伊藤忠記念財団が製作したマルチメディアDAISY図書の愛称で、全国の学校、図書館、医療機関などの団体に無償で寄贈されています。 わいわい文庫はCDディスクで提供されていて、Windowsパソコンで音声読み上げするためのアプリ【Dolphin EasyReader Express】もインストールされています。」次回はこのDAISYシステムをもう少し詳しく紹介する。
2022.07.30
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Milkywayです。お元気ですか? 20220709戦争・紛争という難しいテーマを扱った海外の児童文学作品を、前回2回でとりあげた。今回は日本の作品について書く。戦争を日本の視点で描くと言えば、原爆を主題にしたものを第一にあげなくてはならないだろう。『絵本 おこりじぞう』 まず、『絵本 おこりじぞう』 1979 金の星社をあげたい。この作品は、作者山口の原作を沼田曜一が語り口調にしたもので、語り込んで練りあげてきた文体が、読者に響いてくる。絵がすばらしい。抑えた色調と余白がかえって読者の想像力をかきたて、被害の酷さを読者に想像させる。特に、わらい地蔵の顔が不動明王のような怒りの表情になり、その目から溢れた涙を、今際の際の女の子が末期の水として飲む場面は、忘れられない印象を残す。「こわいものなど描きたくないのだが、こわいものを地上から無くするためには描かねばならない」という画家の四国の言葉が、この本全体のメッセージである。『ヒロシマ 消えたかぞく』次に、『ヒロシマ 消えたかぞく』ポプラ社 2019 をあげたい。最初のページに「1945年8月6日、広島に一発の原子爆弾が落とされるまで確かに生きていた家族の記録です」とある。この本は、そこに載せられた鈴木家の一人ひとりが生きていた確かな記録、そして死の記録でもある。本の中には、一人一人の日常と、はじけるような笑顔がある。その一人一人が、たった一発の爆弾で命を落とすのである。この鈴木家の人々のような家族があの日の広島でどれほどでたのか、読者はそのことを改めて考えさせられる。 本に載っている人々が実在の人々だったという事実が、写真絵本のインパクトと力強さを証す作品である。本文は英語との対訳形式で書かれていて、日本から発信する本という出版意図が見える本。『平和ってどんなこと?』3冊目は『平和ってどんなこと?』という本。この作品は、日・中・韓による「平和絵本」12冊シリーズの1冊で、2011年 童心社から出版された。 この本には、シンプルなメッセージ「戦争をしない、武器はいらない、いのちはたった一つ、殺してはいけない。」というメッセージがついている。出版に携わった人々の願いがまっすぐに伝わってくる作品で、児童文学の特質である“直截なメッセージ性”ということを改めて思い出させてくれる。絵の持つ力も大きく、民族や年齢を超えてボーダー・クロッシング(境界超え)な作品と思う。 『ぼくがラーメンをたべているとき』最後に、書名『ぼくがラーメンをたべているとき』教育画劇 2007年をあげたい。私は個人的にこの本が大好きだ。 ストーリーは、ぼくがラーメンを食べているという、平和な日常生活の場面からスタートする。ぼくがラーメンを食べているその瞬間、隣の家のみっちゃんがしていることを絵は描く。そこから絵はとび、外国の子どもの場面へと移る。自転車にのっている男の子、赤ちゃんをおんぶする女の子、幼くして働いている幼児労働の子ども、外で倒れているおそらく死んだ子・・・。と世界各地の子どもの姿を、この同じ瞬間で起きていることとして、そこに大きな違いと多様な姿があることを描き進めていく。 この作品は「時」がテーマでもある。時の捉え方を、普段我々が思うような”過去・現在・未来へと”流れるものではなく、水平的で共有できるものとして提示した。世界を俯瞰する視点と同時に、時は水平的で共有できるものでもあるという概念も示してくれる作品である。これによって、平和な自分の居場所から世界へと視点を移すものの見方を、読者は学ばせてもらえるのである。 これを大人のジャンルで描くとしたら、どれだけの言葉数を必要とするだろうか?その意味で、この作品はシンプルな言葉、絵の力を最大限に生かせるという児童文学というジャンルの特質をも示しているにである。 テーマ、テクストの簡潔さ、イラストの芸術性とさらに本文を補うバランスをとる技術。そうしたことを考えると、全体的調和のとれた完成度の高い作品だと私は思っている。
2022.07.09
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Milkywayです。お元気ですか? 20220703プーチンを戦争犯罪人として国際法で裁くのは無理ではないか、という悲観的な空気が重く漂っている。だが、私は希望は捨てない。どんなことも希望を捨てた段階で終わってしまうからだ。人類は、国際秩序を踏みにじり、暴虐の限りを尽すプーチンの行為を許してはいけない。許さないために最後の最後まで人知を尽くすべきだと私は思っている。この侵略戦争は、プーチン個人の謬錯対人類全体の頭脳との闘いだと思う。一人の頭で考えることは知れているのだ。プーチンの誤謬が、ことごとく明らかになってきている。まず第一に、2・3日でキーフは陥落するだろうという彼の幻想は水泡に帰した。第二に、彼が妄想したロシア軍によるウクライナ首都の制圧も、傀儡政権樹立も成功しなかった。第三は、彼は原子力施設も手中に収め、核の脅威をチラつかせて世界を脅した。だが、世界はその脅威に屈しなかった。結果、彼はその施設を使うことは躊躇。自国をも汚染することになるからである。ここでも彼の目算は外れた。第四は、彼の想定を遥かに超えたウクライナ国民の強固な抵抗に遭った。第五は、自国ロシア軍の士気の低さ。それと主戦艦や戦車、爆撃機などの想定を遥かに超えた損失。第六は、NATOの拡大阻止を目論んだのに、中立国だった強い軍事力を持つ北欧二カ国がNATOに加わる、というオウンゴールとも言う結果を招いた。しかもNATO会議はロシアを「最も重大で直接的な脅威」として敵国としての位置付けをする採択をして30日に閉幕した。そうなのだ。プーチンの妄想は次々と崩れているのである。もう一つ、彼は国際法では逮捕されないと踏んでいたに違いない。だからあのような大胆な侵略戦争に踏み込んだのであろう。彼の目算は、人類が知恵を尽くして粉砕しないといけない。プーチンが国際法で裁かれる希望を、私は繋ぎ続けていることをここで再び言いたい。その希望の理由となる記事を紹介する。ロイター に載ったBBC News 法務特派員Dominic Cascianiの5月23日の記事「戦争犯罪とは何か、ウクライナ問題でプーチンは訴追される可能性があるのか?」という記事である。https://www.bbc.com/news/world-60690688この記事の初めから途中までは下記のようなものだ。ポイントだけここにあげると「ウクライナの裁判所は、紛争が始まって以来初めてとなる戦争犯罪裁判で、民間人を殺害したロシア軍戦車司令官を終身刑に処した」「国際刑事裁判所(ICC)も調査団と科学捜査の専門家をすでに派遣している」「たとえ戦争でもルールがあり、それはジュネーブ条約と呼ばれる条約をはじめ、さまざまな国際法・協定に盛り込まれている。民間人は意図的に攻撃されることはない。また、民間人の生存に不可欠なインフラも攻撃されることはない。無差別に、あるいはひどい苦しみを与えるという理由で、対人地雷や化学・生物兵器などは禁止されている。病人や負傷者は、戦争捕虜としての権利を持つ負傷兵を含めて、世話をしなければならない。殺人、レイプ、集団迫害などの重大な犯罪は”人道に対する罪“状況によっては”ジェノサイド“と呼ばれる」ウクライナでは、最初の終身刑に処した裁判に続いて「41人のロシア兵を、民間人の殺害、レイプ、民間インフラへの爆撃、略奪などの罪で起訴する準備を進めている」ウクライナ国外からは「米国のジョー・バイデン大統領と英国のボリス・ジョンソン首相は、ロシアがウクライナで戦争犯罪を犯していると非難している」「(国際機関の)調査官やジャーナリストは、キエフ郊外の町ブチャやその近郊で、民間人を意図的に殺害した証拠を発見している」「3月、マリウポルの劇場や病院へのロシアの攻撃は、大量殺戮」「多くの専門家は、侵略行為そのものが「侵略戦争」の概念に基づく犯罪であると主張している。」と記事は書いている。【戦犯容疑者はどのように訴追されるのか】続いてこの記事は、プーチンや政権高官が訴追されるとしたらどのような手続きを経るのか、その際の障害は何かを書いている。現在二つの国際司法機関が捜査にあたっている。国際刑事裁判所(ICC)と国際司法裁判所(ICJ)である。ICJに関して言えば、ロシアに不利な判決を下しても、国連安全保障理事会(UNSC)常任理事国の1つであるロシアは、制裁の提案に対して拒否権を行使することができるので、判決の執行は困難。だが、もう一つのICCは、国を裁くのではなく個人の戦争犯罪を調査し、訴追する。過去には、ニュルンベルク裁判で、ヘルマン・ゴーリング、ルドルフ・ヘス、ヨアヒム・フォン・リッベントロップなど個人を裁いた。ニュルンベルクではさらに、「国際法を守るために国家が特別法廷を設置することができる」という原則を確固たるものにしたのである。この原則は、これからいきてくる。もう一つ心強いのは、多くの実績を上げてきたICC主任検察官である英国人のカリム・カーンQC 勅選弁護士(https://www.jpedia.wiki/blog/en/Karim_Ahmad_Khan)が、ウクライナで戦争犯罪が行われた根拠があるとみていることだ。加えて、調査員たちは、ロシアがウクライナからクリミアを併合する前の2013年にまでさかのぼって、過去と現在を調べていることである。証拠があれば、検察官はICCの裁判官に逮捕状を発行してもらい、ハーグで個人を裁判にかけることになる。しかし、問題はある。同裁判所は独自の警察組織を持たないため、容疑者の逮捕は各国に依存しており、ロシアは同裁判所のメンバーではないため、容疑者の身柄を引き渡すことはないだろうという点である。このようなことから、悲観論が出ている訳だ。さて、今日の主題に入る。ここからは記事を全訳する。(強調文字は筆者による)【プーチン大統領や将軍、その他の指導者が訴追される可能性は?】 ヒューマン・ライツ・ウォッチ(紛争における戦争犯罪の証拠収集を専門とす る組織)のヒュー・ウィリアムソン氏は、ロシア軍には処刑やその他の重大な 虐待の証拠がある、と認めている。 指導者が残虐行為を許可したか、見て見ぬふりをしたかを含め、「指揮系統」 を確立することは、今後の裁判において非常に重要である、とウィリアムソン 氏は言う。 ICCは「侵略的戦争の遂行」という犯罪も訴追できる。これは、自衛のための 正当な軍事行動を超えて、不当な侵略や紛争を行う犯罪のことである。 しかし、これに関しては、ロンドン大学の国際法の専門家であるフィリップ・ サンズQC教授は、ロシアはICCに加盟していないため、ICCはこの件で ロシアの指導者を起訴することができないと言う。 理論的には、国連安全保障理事会はICCにこの犯罪を調査するよう求める ことができる。しかし、ここでもロシアが拒否権を発動する可能性がある。 こうした障害に対抗するためには、サンズ教授は、世界の指導者たちが、 ウクライナにおける侵略の罪を告発するための一回限りの法廷を設置するこ とを望んでいる。もう一つは米国の動きである。【米司法長官がウクライナ訪問、ロシア戦争犯罪捜査で協力】AP通信の記事「ガーランド米司法長官がウクライナを訪問し、同国のベネディクトワ検事総長と会談した=AP」を載せた日経の記事。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN21EKG0R20C22A6000000/AP通信はこう伝えている。 【ワシントン=坂口幸裕】米司法省は21日、ガーランド司法長官がウクライ ナを訪問したと発表した。ロイター通信によると、訪問したのは西部リビウ 近く。 ウクライナへの侵攻を続けるロシアの戦争犯罪や残虐行為にかかわった人物 を特定する捜査の一環になる。現地でウクライナのベネディクトワ検事総長と 会談し、協力していく方針を確認した。 ベネディクトワ氏は5月末に、ロシア軍の戦争犯罪の容疑者として軍幹部や 政治家らを含む600人以上を特定し、そのうち80人ほどの訴追手続きを始め たと明かしている。ウクライナ検察は戦争犯罪の疑いのある事案を1万4千件 超を把握したと主張する。 米メディアによると、ガーランド氏は戦争犯罪に関与した人物を特定するた めの特別チームを米政府に発足させたと説明した。人権侵害や戦争犯罪に関 する捜査の専門家で構成する。 ガーランド氏は現地で「戦争犯罪者に隠れる場所はない。国内外のパート ナーとともに戦争犯罪などに関与した人物の責任を追及する努力を惜しまな い」と話した。司法省がウクライナなどに検察官を派遣し、ロシアによる 制裁逃れを阻止するために欧州や中東などの国を支援する意向も表明した。 バイデン政権はウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領らを 「戦争犯罪」に関与したと認定するよう国際社会への働きかけを強めている。 ロシアによる民間人への攻撃を「ジェノサイド(大量虐殺)」と批判する声が 国際社会で広がる。 国際刑事裁判所(ICC)は捜査に乗り出しており、近くウクライナに事務所を 開設する。米欧とも連携し、捜査活動を強化する。もうひとつ、ドイツも独自の動きをしている。【ドイツがロシアの戦争犯罪を捜査 ウクライナ侵攻で】2022年6月18日の日経はドイツ紙ウェルト(電子版)が18日報じたニュース。【ベルリン=共同】ドイツ連邦刑事庁のミュンヒ長官は、ドイツの捜査当局が ロシアのウクライナ侵攻を巡る戦争犯罪の疑いを捜査している」を掲載。https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB183Z80Y2A610C2000000/ ミュンヒ氏は「捜査は始まったばかりだが、既に3桁の手掛かりを得た」と した「加害者や指揮官を特定し、ドイツで裁判にかける」と述べた。ドイツ に避難したウクライナ人の情報を基に、目撃者や被害者から聞き取り調査し 証拠を集める。政治家も対象になるという。 ドイツの法律では国外での戦争犯罪や人道に対する罪などを訴追できる。 今年1月には、シリアのアサド政権下での市民への拷問を巡り、人道に対す る罪に問われたシリア情報機関の元大佐に、西部コブレンツの裁判所が 終身刑を言い渡した。上記のように、アメリカとウクライナの司法省が結束した。アメリカはかつてユダヤ人に対して行われたジェノサイド裁判で実績がある。ウクライナにとっては巨きな味方を得たということだろう。しかも、ICCはウクライナに現地事務所を開設し、ウクライナやアメリカと密接に協力することになるのである。大きな進展を期待できる。もう一つのドイツが、自国ではなく国外の戦争犯罪もさばけるという法をもとに裁判を始めた。ドイツはアサド政権での戦犯を裁いている実績がある。ここでの成果も期待できるのである。こうした動きとともに、サンズ教授が提案しているように、世界の指導者たちが、ウクライナにおける侵略の罪を告発するための一回限りの法廷を設置してくれる希望がある。これらの動きをもとに、私はプーチンが裁かれることへの希望を捨てない。
2022.07.03
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Milkywayです。お元気ですか? 20220627ロシアによる侵略が始まって数日後の2月28日、ウクライナを代表する芸術家マリア・プリマチェンコの絵画作品が25点も焼失という報道に衝撃を受けた。収蔵されていたイヴァンキフ歴史郷土史博物館の火災が、直接的な原因だったという。プリマチェンコは、彼女の肖像の記念コインが発行されたり、絵画作品が切手のデザインに採用されるなど、ウクライナの国民的画家。それだけでなく、2009年にはユネスコが「プリマチェンコの年」を宣言するほど、世界的な評価の高い画家である。続いて3月上旬、東部ハルキウにあるハルキウ美術館が、ロシア軍による爆撃の爆風により窓ガラスが破壊され、館内の温湿度が管理が不可能になって、25,000を超える数の作品が雨風にさらされる状況になった。この美術館には、アルブレヒト・デューラーなど西洋絵画の重要作品に加え、この地で生まれた重要な画家イリヤ・レーピンの作品も多数収蔵されている。さらにマリウポリの美術館も破壊され、時事通信が3月25日「マリウポリの美術館破壊 巨匠らの作品不明―ウクライナ」とその様子を記事にした。 https://www.jiji.com/jc/article?k=2022032500899&g=intこれらウクライナの美術館や文化財は、どのような被害を受けているのか?についての詳細はhttps://www.theheadline.jp/articles/632で読むことができる。 【詳細と保護活動を伝える国会図書館のサイト】このように、ロシア軍によってウクライナの美術館や博物館、図書館が無残にも破壊されて続けていることと、保護活動を詳細に伝えている記事を紹介する。「ロシアによるウクライナ侵攻に関連する図書館・博物館の状況 」と題する記事を載せているのが、日本の国立国会図書館の「カレントアウエアネス・ポータル」というサイトで、No.433 2022.04.21発行の E2483の記事である。https://current.ndl.go.jp/e2483この記事によると、 3月13日時点でハルキウやルハンシク、チェルニーヒウ等の図書館が全部また は一部損壊。被災した図書館には、ハルキウ国立科学図書館等の大規模図書館 やチェルニーヒウにあるウクライナ保安庁の文書館も含まれ、キーウ州のイワ ンキウ郷土史博物館、キーウのバービン・ヤール・ホロコースト・メモリア ル、マリウーポリのクインジ記念美術館等に大小の被害が生じている旨の報道 がある。【文化財保護の動き】こうした中で、文化遺産損失の懸念はウクライナ国内だけでなく海外からも高まり、諸外国からの支援も始まった。まずウクライナ国内では、文化情報政策省がロシア軍の攻撃によって生じた文化遺産への被害状況の報告を集めているし、民間での取組としては,イワノ=フランキーウシクにあるギャラリー「Asortymentna kimnata」が美術作品の疎開・保存プログラムを実行。また、リヴィウにある全体主義体制メモリアル博物館館長らが美術品保護のための基金「Ambulance Museum」を立ち上げ,欧州委員会(EC)等の支援の下、美術館・博物館の支援に当たっている。ウクライナ国外からの取組ではドイツの文化・メディア連邦政府委員会が、ポーランドでは国内の美術館・博物館がそれぞれに主導して、ウクライナの文化遺産保護を目的とするネットワークや委員会が設立された。また、米国やオーストリアの研究者が主導して、消失の危険性がある文化遺産関係機関のウェブサイトやデジタルコンテンツ等を保存するプロジェクト「Saving Ukrainian Cultural Heritage Online(SUCHO)」が活動中である。と伝えてくれている。私たちは、対岸の火事とは思わず、人道支援だけでなく世界・人類の遺産である美術館・博物館・図書館の保護にもっと目を向け、できるだけの支援をしなくてはと思う。日本政府にもこの分野への支援にもっと積極的に関わってもらいたいと願っている。そのためには世論の高まりが大切だ。引き続き一人でも多くの声があげていってもらいたいと思う。
2022.06.27
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Milkywayです。お元気ですか? 20220619 戦争・紛争という難しいテーマを扱った児童文学作品を、数回にわたってとりあげる。第一回目は、先の二つの大戦で、言葉に言い尽くせないほどの被害をこうむったユダヤ人を主題にした数作品をとりあげた。今回はその第二回目。紛争に巻き込まれたこどもと難民キャンプのこども、そして難民を迎えた側を描いた作品について書く。 【紛争地のこども:題名Flowers for Sarajevo】こどもたちが戦いに巻き込まれるのは、大戦だけとは限らない。彼らは民族紛争や宗教紛争といった地域戦争にも嫌でも巻き込まれる。Flowers for Sarajevoは、第二次世界大戦以降のヨーロッパでの最悪の紛争と言われるボスニア・ヘルツェゴビナ紛争(1992年〜1995年)の地サラエボに住む少年の視点から、民族間の争いと宗教紛争がどう見えたかを描いている。主人公は、戦争に行った父親に代わって、花屋を営んで家族の生活を支えている少年ゴーラン。彼は「戦場のチェリスト」と呼ばれるチェリスト ヴェドラン・スマイロヴィッチ(Vedran Smailovic)を日々目にしていた。戦禍の中でもくもくとチェロを弾く音楽家、その一方、ほそぼそと営業を続けていたゴーランの花屋のある非戦闘地域に指定されている中央市場まで、爆撃によって破壊される。この作品は児童文学の特質である直截なメッセージ性を発揮した作品である。それは戦場に向かう前のゴーランの父の言葉「セルビア人もいるし、クロアチア人もいる。イスラム教徒もいるし、キリスト教徒もいる。みんなそれぞれに言いたいことがあるんだろう。だけど、花のこと考えてごらん。となり同士で咲いてるじゃないか。なあ、ゴーラン」に凝縮されている。読者はストーリーに導かれ、この言葉を噛みしめるのである。 次に、難民キャンプで暮らすことになった子どもたちを描いた作品を紹介する。一作目は、 【難民キャンプの子どもを描いた作品:タイトル名My Beautiful Bird 】作&絵 Suzanne Del Rizzo、出版社 Pajama Press。この作品は、2011年に起こり、現在も続いているシリア内戦を背景にしている。21世紀最大の人道危機と呼ばれる被害を生んだシリア内戦。2017年の調査では国内難民は660万人。トルコ、ウガンダ、パキスタン、レバノンなど海外へ逃れた人々の数は670万人もいて、その半数は子どもである。(UNHCR https://www.unhcr.org/jp/global_trends_2018)本作は、この内戦によって難民となったこどもの、難民キャンプでの暮らしを描いているが、作品誕生のきっかけは2015年、Suzanne Del Rizzo自身の子どもたちに、シリア内戦を説明するための素材を探していたところ、ある時、ヨルダンにあるザータリの難民キャンプにいた少年が、野鳥との交流に慰めを見出したというニュースに出会った。それに感動し、この作品に結実させたのだという。この作品は、国内外で多くの賞を受賞した。 Suzanne Del Rizzoは力量のあるイラストレーターで、科学分野の仕事から子どもの本へとそのキャリアを移しての初めての仕事Skink on the Brinkが、SCVWI Cristal Kite賞を受賞。Rainforest of Reading賞のファイナリストにもなり、イラストレーターとのキャリアを本格的に始めたという経歴をもつ。彼女のイラストの特徴は、工作用粘土、ポリマー粘土など数種の材料を使い、多面的で独特な質感のある作風をもっていることにある。本作品でも、絵を描く場面や、凧を作る場面を描く際の絵の素材が布・粘土・ポリマー・紙など多様で、この作家がいろいろな素材を使いこなせる力量を窺わせる。彼女の独特なイラストは、とても印象的だ。内容も含め、忘れがたい作品である。 本文は、子どもの友だちとなった小鳥の視点を使っているが、小鳥が物語を語るというこの手法は、多様な視点を使えるという児童文学の特質を生かしたもの。 現在、このザータリキャンプには約8万人のシリア難民が暮らし、人口数から言えば、ヨルダンで4番目に大きな町となった。その後キャパシティを超えたため、近くに新しいキャンプができた。 難民問題は日本人にとっては、対岸の火事のように、身近には感じられないことだろう。だが、実際には、2021年の時点で8930万人もいて、それが今回のウクライナへの侵略戦争によって一億人を超えた(典拠UNHCR https://www.unhcr.org/jp/global_trends_2021)。日本の総人口に近い数の難民が現在世界にいて、今や世界中が難民問題で悩み、社会が不安定化している。この事態は子どもたちも日々のニュースで見聞きしているはずで、疑問も抱いているだろう。だが、難民問題は、あまりにも複雑で、説明が難しい。親たちも、教師たちも、どのように、どのような視点で、子どもたちからの質問に答えて良いのか、手がかりが欲しいのではないだろうか。 そうした中で、一人の少年の、悲しみ、苦しみ、絶望とそれからの脱却のプロセスが、少年の心の動きとして捉えられ、展開されている本作品は、視点の使い方と一人称の語り口で、共感しやすい作品に仕上がっているので、手はじめとして良い作品だと思う。 この問題へ目を向ける小学校高学年から中学生の子どもたちへの、難民の現実を見る窓として、また、適切な足がかりとなるのではと思い、この作品をとりあげた。 もうひとつの理由は、この作品を戦争による難民と限定せず、例えば原発事故による被災者、あるいは自然災害によって、家族や家を失い被災者となった子どもと捉えても良いと思ったからだ。私たちは、そうした不幸に遭遇した子どもたちの心の内を、理解していないのではないだろうか。そうした意味でも、子どもだけでなく大人たちにも、勧めたい作品だと思う。 【難民キャンプの子:タイトル名『ルブナとこいし』】ウェンディ・メデュワ 文/ダニエル・イヌュ 絵、2019年、BL出版ルブナは難民。父親と船でたどり着いた。浜で拾った小石に顔を描き、それが唯一の友達となった。やがて同じキャンプに来たアミールと仲良しになる。だが難民キャンプを出ることになった二人に別離がくる。 この作品は、児童文学の特質である絵の力を再認識させる本だ。それともう一つ、この作品は、このジャンルの特徴でもある象徴性に富んでいる。本全体の基調色は青。見返しも裏見返しも水色。ルブナの服も彼女の周囲の色も青。船で来た難民の色を象徴する。荒れる海に浮かぶ人を満載した船の船体には花なのかヒトデなのかが描かれ、それに加えて、海藻も描かれている。この同じモチーフが、ルブナと友達となったアミールが海の中で遊ぶシーンにも使用されている。ここからはいろいろな意味が読み取れる。また、この作品の絵の構成にも、強いメッセージ性がある。最初のページにはルブナの顔が全面に断ち切りで描かれる。最後のページには、それと対をなしてして、アミールの顔が同じように描かれるのである。二人はともに、別離のない友達である小石を手にしている。離ればなれになる二人の悲しみ、寂しさ、孤独、それを味わわざるを得ない難民生活の不条理さがクローズアップされる。非常に迫力ある画面構成だと思う。ダニエル イヌュの圧倒的な画力で、テクストなしでもストーリーが伝わる。感傷に陥らせることなく、読者の気持ちに真っ直ぐに訴える作品である。 【難民を迎える:タイトル名The Suitcase】を紹介する。作者 & イラストレーター Chris Naylor-Ballesteros、出版社 イギリスNosy Crow。2019に出版された。この本は、今日本に必要なテーマを持った作品だと思う。それは難民や移民を迎えた側のストーリーだからだ。難民が社会問題化しているイギリスで出版された作品だが、今日本に必要な作品テーマだと思う。加えて、この作品は、前回書いた“児童文学というジャンルを使って戦争を描くというその意義”を改めて認識させてくれる本である。理解からcompassion(共感共苦)へと読者のこころをいざなってくれるからである。この作品は、前回描いた児童文学の特質であるこのジャンルの普遍性をも、再認識させてくれる。第一に、登場人物を動物におきかえたことで、国や地域、民族を限定させなかった。さらに、ストーリーもイラストもシンプルにして、難民を迎えた側のこころの動きをはっきりと描き、だれにも分かるように表現したのである。典型的とも言える三タイプのキャラクターの、三タイプの発言が、納得させられる。ひどいことをしてしまった三人が、その償いにsuitcaseに入っていた写真どおりの小屋を建てることによって和解を申し出で、スーツケースの持ち主はそれを受け入れる。知らない人を迎えた時の戸惑いから、理解へ、そして共感へと登場人物のこころは移っていくのである。みんなのためのティーカップがほしいという結末は、子どもにもおとなにも一つの有効な融和手段を示唆していて、納得できる結末となっている。好きな作品だった。 今回のブログは、紛争に巻き込まれた子ども、そして難民キャンプで育った子ども、それともう一つのテーマ、難民を迎える側を扱った作品を紹介した。次回は日本から発信するこのテーマを扱った作品について書きたいと思う。
2022.06.19
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Milkywayです。お元気ですか? 20220612戦争・紛争という難しいテーマを取り上げた児童文学作品を数回にわたってとりあげる。第一回目として、このテーマを児童文学というジャンルで取り上げるその意義と、先の大戦で言葉では言い表せないほどの犠牲を強いられたユダヤ人を主題にした作品について書く。 【戦争を児童文学で描く意義】その意義の一つ目は、「理解とCompassion」を育てるというのがあると思う。このcompassion という言葉は「共感共苦」という訳語になるのではないだろうか。Compassionのpassionはもともとイエスの受難を意味する言葉で、接頭語comは“共に”という意味だからだ。そこからすれば、他者の悲しみや苦しみ、痛みに対する深い思いやりと理解、そしてそれを分かち合おうとする心の働きを意味すると考える。仏教でもその教えの根幹となる言葉「慈・悲」にLove・Compassionが充てられている。生きとし生けるものの悲苦を分かち合うということだろう。 また現代ではCharter for Compassion という世界憲章があり、 “核となる価値観”として世界45か国、311 地域が批准していることからも、人類ほとんどが共有する価値観と考えてよいのではないだろうか。 【児童文学 イコールBorder Crossingなジャンル】もう一つの意義は、児童文学がBorder Crossing(超境界/境界無し)なジャンルとして位置付けられることにある。国際リテラシー学会(ILA)は 境界を越えることは人類の未来にとって不可欠であり、児童文学はその道 しるべとなる可能性を持っている。(Crossing borders remain essencial for our human future,and children’s literature holds potential for showing us the way.”) -JOURNAL, Vol. 51, No. 6 (Mar., 1998) Published By: International Literacy Association(ILA国際リテラシー学会) p504-と表明した。児童文学は年齢、性別、民族、宗教、哲学、社会的、経済的、時代的な制約を受けずに共有できるジャンルだというのである。そしてこのジャンルの特性として、シンプルな言葉で、普遍的なテーマを表現でき、しかも、大人の文学と異なり絵やイラストの持つ力を援用でき、大人の文学で使える挿絵以上の比重をもってテーマを表現できることがある。イラストにも本文にも高い象徴性も込められるから、読者によって受け取る深さは異なり、読むたびに発見がある作品ともなれるのである。こうした特性をおさえつつ、いくつかの作品を以下で取り上げる。まずは二つの大戦で差別の故に多大な犠牲を被ったユダヤ人の子どもたちを描いた作品が、その犠牲者数を反映して、非常に多い。そのどれもが人間の良心に訴えかけてくるものである。 【SARA’S FLIGHT】一つ目にLorenza Farina、SARA’S FLIGHT 仮題『サラの旅立ち』 を紹介する。 イラストはSonia M.L.possentini、出版社はFatatrac。強制収容所アウシュビッツに収容され、ガス室送りになった少女サラの日常から死までを、サラの友コマドリからの視点から描いている。この作品は本文にもイラストにも、このジャンルの特性である高い象徴性をみることができる。冬枯れの木が収容所を象徴し、鳥たちは子どもたちを象徴する。コマドリは受難のイエスと最後まで付き従うという堅忍、compassionと愛を象徴し、キリスト教国では、聖画にもクリスマスカードにもよく描かれている。キリスト教徒ではない日本の読者には、それを読み取ることは難しいだろうが、それができなくとも、忘れがたい読後感を残す作品だし、年齢があがって再読するたびに新しい発見を味わえる作品だと思う。小鳥の視点から語られるせいか、子どもの無垢さや悲惨な状況がいっそう際立ち、視点の使い方が功を奏している作品である。強制収容所の抑留者の状況を、子ども達に語り継ぐという確固とした姿勢が伝わってくる作品だった。 【アニカ・トール『海の島』】新宿書房 2006年。 1939年、ユダヤ人迫害の中で両親は、娘ステフィとネッリ二人を他の500人の子ども達とともに、スウェーデンの救済委員会経由で疎開させる。12歳のステフィと7歳のネッリは、別々の家庭で別れて暮らすことになる。言葉も習慣も、環境も宗教も違う場所での暮らしでいじめにあうステフィと、環境に順応する妹。二人の間に生まれる葛藤も描かれる。読者対象は中学生からと思われるが、文章の密度も濃く、大人でも十分に読み応えのある作品である。作者アニカ・トールAnnika Thor:について1950年スェーデン イエーテボリ生。1996年 En o I havet でデビュー。ステフィとネッリシリーズ4作の第3作目『海の深み』でニルス・ホルゲション賞。『海の島』『睡蓮の池』『海の深み』『海が開けて』)4作全てで2000年コルチャック賞受賞。『ノーラ、12歳の秋』で1997年リンドグレーン賞受賞。非常に力量のある作家である。この作品の背景第二次大戦中のスウェーデンは、大戦開始直後には中立を宣言するが、実際はドイツ寄りの政策をとった。しかし1942年、ヴァンゼー会議で、ナチスのユダヤ人にたいする「最終的解決」が決定され、ユダヤ人に対する迫害が過酷になったことから方針を転換し、ユダヤ人救出に舵を切ったという歴史的背景がある。この時代背景の参考となる書籍に、小野寺百合子『バルト海の海のほとりにて』、ベルント・シラー『ユダヤ人を救った外交官ラウル・ワレンバーグ』、デボラ・ドワー『星をつけた子供たち』、クロード・ランズマン『SHOAH』などがある。 【ジュディス・カー『ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ』】評論社 1980 高学年向きの作品で、ドイツ児童図書賞受賞。主人公はユダヤ人で9歳のアンナ。父は高名な評論家。1933年ナチスが政権を取る選挙の直前、一家はスイスへと逃れ、そこから、フランス、イギリスへと渡る。この間の経済的な危機、父親が殺されるかもしれないという不安、母国語を失う苦難などに遭遇しながらも、世事に疎い父、家事に疎い母と共に亡命者として生きる姿を描いた。この作品は3部作で、第2作目は15歳になったアンナが、空襲の激しくなったロンドンで亡命者として生きる姿を描いている。第3作は、大人向けである。三作を通して年齢的にも内容的にもBorder Crossingな作品。 【アニタ・ローベル『きれいな絵なんかなかった』】ポプラ社 2002年。 ポーランドのクラクフでチョコレート工場を経営するユダヤ人家庭に生まれた主人公。5歳の時に、第二次世界大戦勃発。ナチスの迫害から弟と共に逃れ、はじめはばあやにかくまわれ、次には修道院にかくまわれての逃亡生活を送る。10歳で捉えられ強制収容所へ。生き延びて終戦とともにスウェーデンの療養所に送られ、そこで結核の治療を受ける。両親と再会後17歳の時、一家はアメリカに移住する。作品ではこの間の不安、恐怖、悲しみ、飢餓、尊厳を剥ぎ取られた苦難の日々が克明に描かれる。ユダヤ人であることを隠していなければならない暮らしとその複雑な心情。ユダヤ教・カソリック・プロテスタントの信仰の中で揺れ動く心。ユダヤ人の習俗。そうしたものが、詳細に描き出される。ユダヤ人のことを知らかったことに気づかされる作品だった。 【ユリ・シュバルツ 文・絵 『おとうさんのちず』】あすなろ書房 2009。作者ユリ・シュバルツは1935年、ポーランドのワルシャワ生まれ。4歳でワルシャワを離れ、トルキスタン(現在のカザフスタン)で6年間、パリ、イスラエル、そしてアメリカへと移る。本書ではトルキスタンでの暮らしが描かれる。食べ物がない中で、パンの代わりに地図を買ってきた父親。そうした行為を恨みながら、地図で心を飢えを満たしていく少年。切ないが現実感迫る作品で、ユダヤ人や戦争による移民・難民のストーリーに共通する切なさがある。同時に空想の世界で得る充実感を描き、想像力が救いであると同時に、その威力も納得させる作品である。理解とCompassionそして精神の自由を謳った作品で、私の好きなピーター・シスの作品にも同質のものを感じる。まだまだユダヤ人の苦難をテーマとした作品はたくさんある。このブログを読まれた方からも、情報をいただけたらと願っている。次回のブログでは、民族紛争の中の子どもを描いた作品を取り上げたい。
2022.06.12
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Milkywayです。お元気ですか? 20220605私は民族楽器が好きだ。その国の文化や歴史が反映されているからだ。今回はウクライナの民族楽器バンドウーラから見るウクライナの歴史について書きたい。バンドウーラの外見は日本の琵琶に似ている。形は洋梨型。やや平たい洋梨型の胴から伸びたネックに弦が貼られている。しかし、その弦の数は琵琶よりも格段に多い。もう一つの大きな違いは、琵琶はバチを使って演奏するが、バンドウーラは、弦を指で弾いて演奏する。先日のコンサートのカテリーナ・グジーさんは、ギターのようなピックも使っていないようだった。指で弾いて演奏するので、全体的に優しい音で、その音色は金属弦のギターとかハープシコードに似ていた。 民族楽器にはその国歴史が反映されていると上に書いた。バンドウーラは、まさしくそのとおりウクライナの苦難と迫害の歴史と共に歩んだように見える。その歴史をたどると、日々ニュースで目にする攻撃されている都市の名前も次々と出てくる。バンドウーラについてはwikipediaの英語版(https://en.wikipedia.org/wiki/Bandura)が詳しい。だが、記事全体が非常に長く詳細にわたるので、そのところどころを抜粋訳し、さらにウクライナの歴史の重なる部分を加えて、下記にまとめてみた。♪・・・・♪・・・・♪・・・・♪・・・・♪・・・・♪ バンドゥーラ(ウクライナ語:банду́ра)は、ウクライナの撥弦楽器。ギリシャ語のパンドラが由来と言われていて、チターとリュートの要素を併せ持ち、1940年代まではコブザという呼称で呼ばれることもあった。リュートに似た楽器についての記述は、591年にまでさかのぼり、11世紀のルテニア王国の首都、聖ソフィア大聖堂のフレスコ画に描かれている。 【バンドゥーラ奏者コブザール】バンドゥーラを演奏する音楽家はバンドゥーリストと呼ばれるが、バンドゥーラの伝統的な奏者(多くは盲人)はコブザールと呼ばれた。このコブザールという職業階級の発展とともに、バンドゥーラは大きな変貌を遂げ、1738年にフルヒフにあった東ヨーロッパで最初の音楽学校で、指導も始まった。当時のバンドゥーラのレパートリーは、民謡、聖歌、詩歌、ドゥミと呼ばれる叙事詩などを歌う声楽作品の伴奏を中心とした口伝のものが多く、民俗舞踊の曲もレパートリーの一部だった。 【抑圧の年月】ところが、バンドゥーラの発展を抑圧する時が訪れる。まず演奏者コブザールへの迫害が帝政ロシア下で始まった。1876年、コブザールやバンドゥーリストの舞台公演が公式に禁止された。それだけでなく、ウクライナ語による民族音楽の演奏が禁止された。これはコブザールのレパートリーに宗教的な要素が多かったこと、コブザール独自のレパートリーの多くが、ウクライナのコサックの遺産を理想とするものであったことなどがあるが、そうした主題がウクライナ国民の民族主義を鼓舞させ、共産主義への抵抗となるとロシア側が危惧したからだった。その結果、ロシア語圏では、コブザールは非ウクライナ人たちから路上乞食のように扱われ、逮捕されたり、楽器を破壊されたりすることがしばしば起きた。 【束の間の小康期:1900年代の発展】ところが、1900年代に入ると、バンドゥーラはつかの間の小康期を味わうことになる。1902年にハリコフで開催された第12回考古学会議で、巡回する盲目のバンドゥーリストの民俗芸能が再び話題に上った。調査の結果、6人の盲人伝統コブザールが生存していることが判明。同会議のステージで演奏された。その後、ウクライナの自己認識の高まりから、バンドゥーラは若い学生や知識人を中心に普及。1908年、キーフのミコラ・リセンコ音楽演劇研究所が、コブザールのイワン・クチュフラ・クチェレンコが指導するバンドゥーラのクラスを開始。1909年、フナト・ホトケヴィチが、リヴィウでバンドゥーラの最初の入門書を出版。1910年、バンドゥーラのための最初の作曲がホトケヴィチによってキーフで出版。1913年から14年にかけて、ミハイロ・ドモントヴィチ、ヴァシル・シェフチェンコ、ヴァシル・オヴチニコフらが、ウクライナの民謡をバンドゥーラが伴奏するバンドゥーラ入門書を多数出版。しかし、この小康状態は長く続かない。1914年、第一次世界大戦勃発したのである。 【第一次世界大戦勃発以降のウクライナ】ロシアがオーストリアへ侵攻。西ウクライナが戦地となった。1917年以降ウクライナでは、西ウクライナ共和国、ウクライナ人民共和国、ウクライナ国と国名を変えて異なった政権が樹立された。さらにウクライナを巡っては、チェコ、ルーマニア、ポーランド、ソビエトが、西部、中部、南部・東部の3地域を支配するなど、近隣各国が入り乱れて、ウクライナに侵攻。国全体が大きな戦争の渦の中に巻き込まれていった。この中で、1918年から20年にかけて、多くのバンドゥーリストがボルシェビキ(ソビエト連邦共産党)によって銃殺された。ウクライナは第一次世界大戦後に独立を宣言するものの、ソビエト・ロシア戦争に負けたため、1922年12月のソビエト連邦結成によって、その構成国となり、徐々にウクライナの独立性は失われていった。 【弾圧の日々】続いてウクライナ国民に悲惨な年月が訪れる。1926年、ソビエト連邦共産党(ボリシェヴィキ)は、各地に見られる民族主義的な傾向に対して弾圧開始。1927年、ソビエト連邦共産党中央委員会は、ロシア語をソ連邦内の公式言語とすることを決定。1928年になると、コブザールに対する規制が行われるようになり、パスポートのない旅行や免許のない演奏はできなくなった。また、免許のないバンドゥーラの製造や製作も制限されることになった。1932年から33年にかけて、ソビエトはウクライナの自己認識の高まりを抑制しようと、ウクライナの都市民俗文化に厳しい制限を加えた。ウクライナのバンドゥーラ教室は解散させられ、多くのバンドゥーリストがソ連政府によってよりいっそう弾圧を受けた。1930年代には、バンドゥーリストの逮捕が相次ぎ、多くは、5年から10年の収容所での拘留や、シベリアへの流刑となった。この時期は、ウクライナ国民にとっても言葉にできないほどの苦難の時期となった。1929年12月、ソビエトがウクライナで農業集団化を開始。農民を農地から追い出す。1930年9月、ポーランドによるウクライナ「鎮圧」政策開始。ウクライナ人への弾圧強化。それだけではなく、1930年代前半は、ソ連が、ウクライナ民族主義者、ウクライナ人の知識人、集団化政策への反対者、そして共産党政権にとって脅威であると見なした者を容赦なく処罰した。また、農村部は民族主義者の溜まり場として目をつけられていた。1932年12月‐1933年3月、ソビエトは、ウクライナ全域とウクライナ人在住地域で人工的に大飢饉(ホロドモール)を起こす。数百万人が餓死。目を覆うような惨状が広がった。1934年6月、ウクライナでの首都がハルキウからキエフへと移る。これに伴い、バンドゥリストたちに給料が支払われなくなった。同年12月には、ウクライナの知識人に対する弾圧の波が押し寄せ、65人のウクライナ人作家が逮捕される事態が発生。1936年以降、逮捕されたバンドゥリストたちは即時の銃殺となり、1937年から38年にかけて、多くのバンドゥリストが処刑された。この時期のバンドゥリストとコブザールの個別処刑については、多くの文書が残されている。その証拠が近年明らかになった。1933年12月から1934年1月にかけて、ウクライナSSRの首都ハリコフで開催されたイベント(民族学会議の仮面をかぶっていた)に、全国から多くの路上ミュージシャン、特に盲目のコブザールが招待され、その参加者は300人に上ったと推定されているが、その後、全員が新ソビエト社会にとって不要な存在として処刑された。 【第二次世界大戦期】1939年、ドイツ軍がポーランドに侵攻。続いて1941年、ドイツ軍がソ連を攻撃し、独ソ戦が始まる。この戦争中は、当然バンドゥーラにとっても停滞の時期となる。ナチスによって著名なバンドゥリストが何人も殺された。1942年2月にキーフで起こったバビ・ヤールの虐殺はその一例である。 【第二次世界大戦後】第二次世界大戦後、特にスターリンの死(1953年)後、バンドゥーラや演奏家への制限は幾分緩和され、追放されていた人たちの中には、ウクライナに帰ってきた人もいた。ウクライナの音楽学校や音楽院にバンドゥーラ・コースが再興され、やがてチェルニヒフやリヴィウの楽器工場でバンドゥーラの連続生産が再開された。しかし、再び苦難の時代が襲った。1950年代には、多くのバンドゥリストが奇妙で説明のつかない状況で死亡または行方不明になったり、シベリアに強制送還された(約30~50人)。このようにして、1960年代までに、共産党によるバンドゥーラ芸術に対する完全な制圧が達成された。バンドゥーラの女性化政策によって、音楽院にバンドゥーラを学ぶ男性が入学できなくなった。さらに、バンドゥーラのレパートリーは、歴史的な歌や叙事詩から、ロマンチックな恋愛や叙情的な作品に限られ、さらに古典的なピアノ曲をバンドゥーラ用に書き直したものしか演奏を許されなくなった。バンドゥーラのための音楽文献の出版も統制。バンドゥーラの製造も、いくつかの楽器工場に制限された。また演奏は厳しく検閲され、制限されたレパートリーでステージに立つことしか許されなくなった。このように、ソ連の共産党はさまざまな手段でバンドゥーラの芸術を統制し、操作し続けたのである。この時期、反ソ連的とみなされる文化的側面はすべて抑制され、宗教的なテキストやメロディーを持つ曲、クリスマスキャロル、コサックの過去に関する歴史的な曲、民族主義的な内容を含む曲などが禁止された。 【復興期から現在】しかし、1960年代に、復興の兆しが見え始めた。バシュタンがキーフ音楽院の学生たちと行った研究をもとに、プロのバンドゥリストのためのテクニックとレパートリーの基礎を作った。さらに、ウクライナのプロの作曲家たちミコラ・ドレミウハ、アナトリー・コロミエツ、ユーリ・オリーニク、コスト・ミャスコフなどが、楽器のためのソナタ、組曲、協奏曲などの複雑な作品を作り上げた。1970年代後半、コンサート用バンドゥーラがチェルニヒフ工場、後にリヴィウ工場で連続生産されるようになり、1970年代半ばには人工爪が開発され、よりプロフェッショナルな演奏をすることができるようになった。近年、バンドゥーラをオーケストラ作品に取り入れるウクライナの作曲家が増え、「ナタルカ・ポルタフカ」のようなウクライナの伝統的な民族オペラがバンドゥーラのために採譜されるようになった。 現代作品では、Y.スタンコヴィッチの「クパロ」やヴァレリー・キクタの「聖なるドニプロ」でも、バンドゥーラがオーケストラの一部として取り入れられている。また、オリイニクやピーター・センチュクなど、ウクライナ出身の欧米の作曲家も、バンドゥーラのために本格的な作品を作曲している。現在、ウクライナのすべての音楽院では、バンドゥーラの演奏を専攻するコースが設けられていて、バンドゥーラの演奏と教育学を専門とする上級学位を取得することも可能になっている。最も有名なのはキーフ音楽院とリヴィウ音楽院、そしてキーフ文化大学で、その主な理由は定評のあるスタッフがいることである。このほか、オデッサ音楽院やハリコフ文化大学も注目されている。♪・・・・♪・・・・♪・・・・♪・・・・♪・・・・♪だが、これらの貴重な音楽大学はロシアによる攻撃に今現在晒されており、実際本年3月3日夜、ウクライナのハリコフ国立文化大学の寮がロシア軍の攻撃を受け、中国人留学生4人を含む13人の学生が死亡した。https://matomame.jp/user/yonepo665/08d9ad90ca284bf27551プーチンは停戦を決意しないと、民族の遺産まで破壊し続けることになる。
2022.06.05
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Milkywayです。 20220528 ウクライナ支援コンサートに行ってきた。ウクライナの民族楽器のバンドウーラを演奏しながら歌うカテリーナ・グジーさんのコンサートだ。【カテリーナ・グジーさん】 カテリーナさんは、ウクライナのチェルノブイリ生まれ。生まれて1ヶ月の時にチェルノブイリ原発事故が起きた。一家は発電所のすぐそばに住んでいた。だが、キーフに避難できたのは1ヶ月半後。避難先では差別を受けた。夜になったら放射能で体が光ると陰口をいわれた。学校では、避難してきた子どもたちは健康のためということで、毎日1キログラムの果物を食べさせられた。それをやっかんだ他の子どもたちは、カテリーナさんたちをいじめた。そうした苦しい日々の中、避難した子どもたちで組織された音楽団に入団。音楽や民俗ダンスを学んだ。この音楽団は、世界各地でチェルノブイリ支援のためのコンサート活動を続けていた。その一環でカテリーナさんは9歳の時初来日。日本がとても気に入った。日本に住みたい、こんなに平和で安心な国で子どもを育てたいと願ったという。そしてとうとうその願いを叶え、日本に移り住んだ、と語った。 コンサートでは、彼女は日本の歌「ふるさと」などに交え、故郷ウクライナの歌を、時には涙もみせながら歌った。聴衆の中にもハンカチを目に当てる姿も見られた。日々ニュースでみる惨状に、想いを共にしたのだろう。【日本に避難してきたお母さん】 今回のコンサートが特別だったのは、お母さんのマリヤさんが出演したことだ。戦禍のウクライナから3月下旬に日本に避難して来たのだという。時には徒歩で隣国ポーランドに逃れ、そこから飛行機に乗った。どれだけ過酷な脱出だったか、下記の記事を読むと想像がつく。https://hochi.news/articles/20220321-OHT1T51216.htmlマリヤさんは、舞台で挨拶をし、国に残してきた二人の娘家族を案じていることを語った。故郷の歌も歌った。歌声は力強く、舞台怖じなど見せないその姿は凛としていて、ほんとうに魅力的だった。 コンサートの締めくくりは日本語で「上を向いて歩こう」。カテリーナさんの歌に、マリヤさんも聴衆も手拍子で合わせ、会場は完全に一つに。こころが結びついたようなとても良いコンサートだった。【カテリーナさんの懸念】 カテリーナさんは、現在多くの支援コンサートのオファーを受け、1日2回のコンサートをこなすこともあるとか。身体も限界に近いと語った。それでも、その歌声に衰えはなく、美しい歌声だったし、なによりも疲れをみせない舞台姿は立派だと思った。祖国の避難民への支援を続けるという彼女の使命感がそうさせているのだろう。彼女は、一つの懸念を語った。この侵略戦争が時間と共に注目度が下がり、人々の意識から消えていくことへの懸念だ。私は彼女の想いに深く共感した。 2月24日、その真偽さえ疑うようなロシアによる武力侵攻の映像に私たちはショックを受け、100万人単位で増え続ける避難民の姿に、何かできないかと模索した。だが、3ヶ月が過ぎ、ニュースも少なくなり厭戦気分も出てきた。それに伴ってニュースの数も減ってきた。シリア内戦やミャンマーのクーデターのときと同じことが起きそうな気配がする。だんだんと忘れ去られてしまうのではなかろうか。【想ったこと】 このコンサートではいろいろなことを考えさせられた。私たちは世界と密接につながっている。この戦争によって発電エネルギーの原材料の輸入が困難になったせいで、電気代が大きく上がった。ガソリンも値上がりした。小麦、植物油の輸入減少によって食品の値も上がった。経済が大きく下降し始めている。アフリカや内戦が起きている国々ではさらなる飢餓が進むと国際機関で取り上げられている。 こうしたことが起きたのは、プーチンが第二次世界大戦以後の世界の均衡を破ったからだ。世界秩序を壊したという不正義が行われたことも、忘れてはならないと思う。そして、突然住む家も仕事も生活も失った人々が、600万人以上も出て、その一人一人が困窮の中にいるということもけっして忘れてはならない。 ウクライナが元に戻るには、何十年もかかるだろう。戦争は戦闘状態だけが終わればそれで終わりではない。例えば亡くなった人々の捜索。負傷した人々の治療と心身の後遺症の治療、住宅建設、道路、橋、交通機関、ガスや電気などのインフラの復旧、学校や病院他公共機関の復旧建設、地雷の撤去、爆弾で荒れ果てた農地の復旧、こうしたこと全てを成し遂げなくてはならないからだ。膨大な時間がかかる。例えば1991年の終戦後のカンボジアは、いまだに地雷撤去を続けている。ウクライナではこれから先、何十年も要するだろう。 一方日本では、プーチンによる侵略戦争に伴って、これからは武力に頼らなくてはと、防衛費を一気に増大させた。物価が上がり生活は苦しくなる上に、増税が起き、社会保障が低減していくだろう。戦争を起こさないあるいは回避する知恵、方策、学問振興、外交努力という議論が起きないのはなぜだろう。 ウクライナ問題は、平和ボケだった日本人の目を覚まさせた。日本人は、ウクライナへの注視を続けなくてはならない。自分たちのこれからの生活に直結するのだから。
2022.05.28
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Milkywayです。お元気ですか? 20220521 ロシアによるウクライナへの侵略戦争の結果、世界は大切な中立国を失いつつある。北欧の二国スウェーデンとフィンランドとがNATOへ正式な加盟申請をし、さらに永世中立国のスイスまでがNATOへ傾いてきたのである。 私は、北欧二国のNATO加盟には反対しない。隣国であるロシアの蛮行を目の当たりにした二国にとっては、当然の決断だったと思う。 一方、重要な中立国を失うその代償は大きい。中立国の存在は、国際社会の宝とも言うべきもので、中立国であるが故に、世界の平和と人道保護に多大な貢献ができてきたからである。それを失う結果を招いたプーチンを厳しく非難したい。 【スウェーデンのユダヤ人救済】 スウェーデンは1814年のナポレオン戦争以来、200年にわたり国際関係において中立的な立場を保ってきた。第一次および第二次世界大戦の時も、中立を保ち続けた。そして、第二次大戦の時には、スウェーデンは難民受け入れを緩和し、ノルウェーやデンマークから何千人ものユダヤ人を受け入れたのである。 ノルウェーのユダヤ人に対する迫害作戦をドイツ軍が開始すると、スウェーデンは900人のユダヤ人難民を受け入れた。これは当時ノルウェーに住んでいたユダヤ人の半数以上の人々である(下線部はWikipedia日本語版にないため英語版を使った)。 続いて、当時デンマークにいたユダヤ人8,000人のほぼ全員を受け入れた。これらの事は、スウェーデン国内のユダヤ人(英語版)保護と同様、スウェーデンの中立政策によって可能になった事だった。 スウェーデンの日刊紙スヴェンスカ・ダーグブラーデットは、他のどの国よりもスウェーデンはユダヤ人を援助し、救出したと述べている。 (Wikipedia 英語版)https://en.wikipedia.org/wiki/Sweden_during_World_War_II#Humanitarian_effort 今日は、上記の歴史的事実を裏付ける児童文学作品を2冊紹介する。第二次世界大戦時、中立国スウェーデンが果たしたユダヤ人の子ども救済を描いた作品である。 【アニカ・トール『海の島』】 1冊目はアニカ・トール『海の島』。2006年 新宿書房出版。作者Annika Thorは1950年スウェーデン イエーテボリ生まれのユダヤ人である。1996年本書 En o I havet でデビュー。この作品の主人公ステフィとネッリのシリーズ4作の他にも、力作を刊行している。 受賞歴は、このシリーズ3作目『海の深み』でニルス・ホルゲション賞を受賞。4作全部『海の島』 『睡蓮の池』 『海の深み』 『海が開けて』で、2000年コルチャック賞受賞。『ノーラ、12歳の秋』で1997年リンドグレーン賞を受賞。 【ストーリー】 1939年、ユダヤ人迫害の中で、両親は娘12歳のステフィと7歳のネッリを、他の500人の子どもと共に、スウェーデンの救済委員会経由で、スウェーデンに移住させる。 イエーテボリの北の小さな漁村に住む漁師のエヴェルトとメルタ夫妻の家にステフィが、アルマの家にネッリが住むことになり、姉妹は別れて暮らすことになった。ネッリが環境に順応する一方で、言葉も習慣も、環境も宗教も違う場所での暮らしで、ステフィはいじめにあう。 海外への疎開という子どもにとっては大きな負担のある生活と、知らない家族との暮らし、土地に馴染めない苦しみ、そして姉妹に起きたすれ違いが、丁寧に描かれていく作品である。もう一冊が 【アニタ・ローベル『きれいな絵なんかなかった』】Anita Lobel, No Pretty Pictures-a child war 1998で、2002 ポプラ社から小島希里の訳で出版された。これも自伝的作品である。 【作者について】 1934年、ポーランドのクラクフでチョコレート工場を経営するユダヤ人家庭に生まれる。 5歳の時に第二次世界大戦勃発。ナチスの迫害から弟と共にばあやに匿われて逃亡。次に修道院に匿われ、逃亡生活を送る。 10歳で捉えられ強制収容所へ。生き延びて終戦で自由になる。その後、スウェーデンの療養所に送られ、そこで結核治療をすることになる。戦後両親と再会。 17歳の時、一家はアメリカに移住した。 【ストーリー】 こうした暮らしの中での不安、恐怖、悲しみ、飢餓、尊厳を剥ぎ取られた苦難の日々が描かれていく。 ユダヤ人であることを隠していなければならない暮らしとその複雑な心情。ユダヤ教・カソリック・プロテスタントの信仰の中で揺れ動く心。 そうしたものが、ユダヤ人の習俗の詳細とともに生々しく描き出される。迫力のある作品である。 私は特に、ユダヤ人のことを知らかったことに気づかされた作品だった。 この時期、中立国の意味や避難民をテーマとした本もよいのではないだろうか?
2022.05.21
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Milkywayです。お元気ですか? 20220514 2022年5月12日、フィンランドとスウェーデンがNATOへの加盟を申請。NATO側も、迅速にその承認を行うと表明した。長年中立を保ってきた北欧二国。しかも、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領は、プーチンと最も仲の良い西側の首相と言われてきた。その人がこれほど大きな歴史的決断をしたのである。ヨーロッパがプーチンに対して、どれほどの脅威と恐怖感を共有しているのかが分かる。 今日は、フィンランドとスウェーデンのNATOへの加盟とその背景、そしてその意味を報じるニュースがあったので、それを翻訳紹介する。INDEPENDENT紙がAP経由のニュース「Crucial NATO decisions expected in Finland, Sweden this week」(フィンランドとスウェーデンの加盟に関してNATOが今週、重要な決定予定)と報じた記事である。https://www.independent.co.uk/news/sweden-ap-finland-nato-russia-b2075345.html内容翻訳は以下。************************** 今週、フィンランドとスウェーデンはNATOへの加盟という問題に直面した。軍事同盟の外にとどまることが巨大な隣人とのトラブルを避ける最善の方法であるという両国の長年の信念が、ロシアのウクライナ侵略によって崩れ去ったのだ。 両国の与党社会民主党とフィンランド大統領とが数日中に加盟に賛成すれば、NATOはロシアに隣接したNATO加盟国2つを持つことになる。 加盟は北欧の2カ国にとって歴史的な展開である。スウェーデンは200年以上にわたって軍事同盟を避けてきたし、フィンランドは第二次世界大戦でソ連に敗れた後、中立の立場をとってきた。 2月24日にロシア軍がウクライナを攻撃するまで、両国の首都ストックホルムやヘルシンキでNATO加盟が真剣に検討されたことはなかった。ところが、事実上一夜にして、両首脳の会話は、"なぜ加盟しなければならないのか?"から "加盟にはどのくらい時間がかかるのか?"に変わったのである。 ウクライナからの強硬な抵抗と欧米の広範な制裁措置と相まって、今回のウクライナへの侵略が、プーチン大統領にとって裏目に出た最大の結果が、この両国によるNATO加盟申請である。 フィンランドとスウェーデンが同盟に参加すれば、バルト海と北極圏で、ロシアはNATO諸国に完全に包囲されることになる。 以前モスクワに駐在したフィンランドの外交官で、ワシントンの“新アメリカ安全保障センター”で研究員を務めるヘリ・ハウタラ氏は、「もう侵略前の状態に戻ることはできない」と述べた。 ウクライナ戦争前にプーチンと最も仲が良いと思われた西側指導者の一人、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領は、木曜日にNATO加盟に関する姿勢を発表する予定である。両国の社会民主党は、今週末にそれぞれの立場を表明する予定だ。 もし、その答えが「イエス」であれば、両議会ともにNATO加盟は賛成多数となり、すぐにでも正式な申請手続きを開始することができる。 サナ・マリン首相率いるフィンランド社会民主党は、フィンランドの他の政党とともに、NATOへの加盟を支持する可能性が高い。スウェーデンの状況は、現在のところまだそれほど明確ではないが。 スウェーデン社会民主党は常に非同盟を堅持してきたが、その党首で首相のマグダレナ・アンデルソンは、"2月24日以前と以後 "では明らかに違っていると語った。一方、NATO加盟に反対を表明している閣僚もいる。気候環境相であるアニカ・ストランドホールは、スウェーデンの放送局TV4で、「軍事的に非同盟であることが、我々の最も良い利益になると信じている。」「伝統的にスウェーデンは、平和と軍縮のために声をあげてきた」と語った。 フィンランドもスウェーデンも、ロシアの干渉の格好の標的になることを恐れて、国民投票は計画していない。 同盟による安全保障が適用されるまでの間、軍事的に脆弱になると感じている両国は、申請期間中に米国や他のNATO加盟国からの支援を受けるという確約を求め、そしてその確約を得た。 他方ロシア政府は、スウェーデンとフィンランドがNATOへの加盟を決めた場合「軍事的・政治的な影響を受けるだろう」と警告を発した。 ロシアの安全保障理事会の副議長を務めるドミトリー・メドベージェフ前大統領は先月、バルト地域での軍事的プレゼンスを強化することをモスクワに強いることになると述べてもいた。 しかし、アナリストによれば、ウクライナでのロシア軍がいかに泥沼化した中にいるかを考えると、北欧諸国に対する軍事行動の可能性は低いという。フィンランドとの国境付近(1,300キロ)に駐留するロシア軍の多くがウクライナに派遣され、そこで「大きな損失」を被ったとハウタラ氏は述べている。 ロシア側が両国に対してとる対抗策としては、兵器システムをフィンランドに近づけること、偽情報キャンペーンやサイバー攻撃をすること、さらに経済的対抗措置に加えて、昨年ポーランドのベラルーシとの国境で起きたような、ロシアとフィンランド国境への移民誘導などが考えられるという。 これに関しては、すでにここ数週間、ロシア軍機によるいくつかの領空侵犯が報告されたし、モスクワでは有名なスウェーデン人をナチスのシンパとして描いたポスターを使っての明らかなネガティブキャンペーンなど、ロシアがすでにスウェーデンとフィンランドへの注力を強めている兆候がある。同様の戦術は、プーチンが "特別軍事作戦 "と呼ぶものを開始する前に、ウクライナの指導者に対しておこなってきたことでもある。 数十年にわたり加盟に断固反対してきた両国の世論は、今年に入って急速に変化した。世論調査では、フィンランド人の70%以上、スウェーデン人の50%以上がNATO加盟に賛成している。 フィンランド国際問題研究所のチャーリー・サロニウス=パステルナーク研究員は、ウクライナで繰り広げられた衝撃的な光景が、フィンランド人に「自分たちにも起こり得ることだ」という結論を出させたと語った。 冷戦時代、フィンランドはソ連を刺激しないようNATOに加盟しなかったし、スウェーデンにはナポレオン戦争末期から続いてきた中立の伝統があった。しかし、その一方で、両国ともソ連の脅威に対抗するため、徴兵制に基づく強固な軍隊を構築してきたのである。スウェーデンには核兵器開発計画もあったほどだ。だがそれは、1960年代に破棄された。 1981年10月、スウェーデン南西部の沖合でソ連の潜水艦が座礁し、紛争の危機が高まったことがあった。スウェーデン軍とソ連軍の救助隊との緊張したにらみ合いが終わったのちに、潜水艦が引き揚げられたという出来事があった。 1990年代にはロシアの軍事力が低下すると、フィンランドは防衛力を強化、他方スウェーデンはロシアとの衝突の可能性が低くなったと考え、軍を縮小。領土防衛から遠くにある紛争地域での平和維持活動へと重点を移した。 2014年のロシアのクリミア併合は、スウェーデン人に安全保障状況の再評価を促した。スウェーデンは徴兵制を再導入し、戦略的に重要なバルト海のゴットランド島を含め、防衛力の再構築に着手したのだ。 防衛アナリストによれば、フィンランドとスウェーデンは近代的で有能な軍隊を持っており、北欧におけるNATOの能力を大幅に向上させることができると言う。さらに、フィンランドとスウェーデンの軍隊は、NATOと頻繁に訓練を行っており、基本的に相互運用が可能であると述べている。 新加盟の決定は、NATO加盟国30カ国すべての批准が必要なため、通常、数カ月かかる。しかし、フィンランドとスウェーデンの場合、加盟手続きは「2週間ほどで完了する」「今は普通の時代ではない 」"とNATO当局者は語った。Lorne Cookがブリュッセルからこのレポートを寄稿。APの戦争報道は、https://apnews.com/hub/russia-ukraine でご覧ください。**************************************
2022.05.14
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Milkywayです。お元気ですか? 20220507 ウクライナ侵略後のプーチンの傍若無人ぶりは目に余る。第二次世界大戦での大きな犠牲に思いを致しながら世界中が力を合わせて作り上げてきた国際秩序も、国際法をもプーチンは無視。歯牙にも掛けない態度をとり続けている。そもそも、ウクライナへの侵略が、2月23日の夜開かれていた国連安全保障理事会の会合中に行われたというだけで、国連への挑発行為だし、もっと言えば国連を嘲笑するかの如き行為であった。その後も衰えることなくプーチンの傍若無人はエスカレートしている。 今回のブログは、プーチンの国際社会や国際秩序無視の例を挙げ、その異常行動を記録しておこうと思う。今回のウクライナ侵略は、ロシアという国によるものではなく、プーチンの決断だったというのが、各国のメディアが報じるところだ。プーチンの決断の結果、数えきれない戦争犯罪が起きた。現在判明し裁きを受ける対象となっているだけで9158件。容疑者が特定され、写真まで公開された。「ロシアの戦争犯罪9158件捜査…ウクライナ検事総長「容疑者15人を特定」2022/05/02 読売オンラインhttps://www.yomiuri.co.jp/world/20220502-OYT1T50156/ウクライナのイリーナ・ベネディクトワ検事総長は1日、地元テレビのインタビューで、「ロシアによる戦争犯罪9158件を捜査している。日々、新たな事案が見つかっており、首都キーウ(キエフ)周辺だけで15人の容疑者を特定している」と報じた。BBC NEWS 2022年5月1日も「ウクライナ、ブチャでの戦争犯罪容疑でロシア兵10人の捜査開始」https://www.bbc.com/japanese/61288652 と見出しを打ちウクライナ国防省は兵士らの写真を公開。この10人は「計画殺人」の容疑の他、罪のない一般市民を人質に取り、殴打し、自宅を略奪した疑いもある。と伝えている。【ICCとEUが合同捜査】ロシアによる戦争犯罪への捜査は、ウクライナ国内だけでなく、国際機関ICC(国際刑事裁判所)とEUの捜査組織との連携で行われることになった。「ICCとEUが合同捜査、ウクライナでの戦争犯罪追及」日経新聞2022年4月26日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN260820W2A420C2000000/4月25日、EUの欧州検察機関「ユーロジャスト」がウクライナでの戦争犯罪などを追及する合同捜査チームに、国際刑事裁判所(ICC)の検察官が参加すると発表した。その声明は「ウクライナで起きた(戦争犯罪をはじめとする)『中核犯罪』の責任者に法の裁きを受けさせるため、あらゆる努力を払うという明確なメッセージだ」と強調した。それを後押しする様に、欧州委員会が、証拠の収集・保全を可能にする「ユーロジャスト」の権限強化案を公表。犯罪者追及のための国際的なシステム構築を、着々と進めている。一方、ロシアの反応はどうか。【ロシアはICCからの問い合わせを無視】「ICCロシアに書簡送るも…“返事なし” 「戦争犯罪」を捜査」(日テレNEWS)https://news.yahoo.co.jp/articles/12898ac422e606a36de2ded2af03603158d6637d案の定、ロシア側は国際司法からの問い合わせには反応しない。反応して言質をとられたり、捜査の過程で命令系統がはっきりして、プーチンに行き当たのを恐れてのことだろう。ロシア側の実際の対応は、27日、国連安保理で、ICCのカーン主任検察官が捜査の進捗を「(捜査の過程で)ロシアに3回書簡を送ったが返事はもらっていない」と報告した。「法を守るべき時だ」とロシアに捜査への協力を呼びかけたが、ロシアは無視し続け、その一方でロシアは、ウクライナでの残虐行為は「フェイクニュースだ」と繰り返している。プーチンは、上記の様に国際司法も国際機関からの要請も無視し続けているのだ。さらに、【ローマ教皇にも返答なし】プーチンは、世界の宗教指導者ローマ法王に対しても同様の姿勢を鮮明にした。国際法、国連などの国際機関だけでなく、世界の精神的指導者までをも歯牙にかけないという態度をとったのである。「ローマ教皇、プーチン大統領に会談要請したが「返答ない」…イタリア紙」 読売新聞オンライン 2022/05/04https://www.yomiuri.co.jp/world/20220504-OYT1T50089/ニュース内容は「ロシアによるウクライナ侵攻を巡り、ローマ教皇フランシスコは3日付のイタリア紙コリエーレ・デラ・セラ(電子版)のインタビューで、プーチン露大統領にモスクワでの会談意向を伝えたが、返答がないと明かした。教皇はインタビューで「今も(会談を)要請し続けている。プーチン氏が会談を拒んでいるか、望んでいないことを懸念している」とし、「(会わずに)どうやってこのような残虐行為を止められるか」と述べた。教皇は侵攻開始翌日の2月25日、在バチカン露大使館を訪れ、侵攻について懸念を伝えていた。」プーチンは誰の言うことにも、もう耳をかさない。大国の権力の座に居続け、富と権力をほしいままにした人間の傲慢さと弱さをさらしている。こういう怪物化した人間に、どう対処したら良いのだろう。我々は今、戸惑いながら深刻な問いの中にいる。
2022.05.07
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Milkywayです。お元気ですか? 20220430「安保理、ウクライナ危機で「全力尽くせず」 国連総長が認める」とAFPニュース(AFP通信は世界3大通信社の一つ)が4月29日報じた。 https://www.afpbb.com/articles/-/3402705?act=all&pid=24453994ウクライナの首都キーウを訪問中の国連のアントニオ・グテレス事務総長が、国連安全保障理事会はロシアによるウクライナ侵攻を「阻止し、終結させる」ための努力が不足していたと認めた。さらに「安保理はこの戦争を阻止し、終結させるに全力を尽くせなかった。このことが大きな失望、憤りと怒りの源になっている」とゼレンスキー大統領との共同会見で述べたのである。 私は、この言葉を聞いて、国連に対する怒りと失望がいっそう増した。事務総長が事実を認めることは良いとしても、この評論家のような言葉はなんだ?国連は国際的紛争解決、国際社会の平和維持を第一義とする組織ではないか。その事務総長の言葉がこれとは、心の底から私は失望した。 【事務総長の無力さ】しかも、今回のウクライナへの訪問は、侵略戦争が始まって2ヶ月以上も経過してからだった。さらに、事務総長は、ウクライナの先にロシアに赴き、プーチンに先に話を聞いている。順番違いではないか!常任理事国のロシアへの顔色伺い、もっと言えば、事務総長の任命権を持つ常任理事国プーチンへのへつらいのように私には見えた。この会談はプーチンに利用された。冒頭プーチンに一方的に捲し立てられ、その様子がロシア国内に放映されて、プーチンの宣伝に利用されたのだ。事務総長のせっかくのお出ましにもかかわらず、人道的停戦についても提案すらできず、この会談で国連の限界があらわになった。 そうした出来事の後の、ウクライナ訪問での言葉が、上記の発言だったのだ。ゼレンスキー大統領との会見後に言ったのは「人道回廊実現へ全力を尽くす」という、本当にやるのか、できるのか何の保証もないこの言葉だけだった。日経新聞 2022年4月29日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN28FO10Y2A420C2000000/ 誰もが知っているように、安全な退避には戦闘中断の合意が不可欠。だが、これまで試みられた人道回廊は機能していない。避難のための人道回廊にロシア軍が地雷を仕掛けたり、避難の人々を狙い撃ちにしているのだ。そんなことは事務総長だから、訪問前に当然織り込み済みだろう。その上でのこの発言だったのである。 【プーチンの国連と事務総長への侮辱行為】もっとひどいのは、国連事務総長の訪問を嘲笑うように、総長滞在中のキーウを、28日、ロシアが爆撃し、10人が負傷。しかも、ゼレンスキー大統領との会談直後に爆撃をした。https://www.afpbb.com/articles/-/3402706狙いすましてやったのである。国連と国連総長を侮辱し、そのメンツを潰すというプーチンの意図が丸見えの爆撃であった。そして、この攻撃については、ロシアが「長距離精密兵器で」と認めている。朝日新聞デジタル2022年4月29日 https://www.asahi.com/articles/ASQ4Y6T4MQ4YUHBI02G.html間違って爆撃したのではなく「精密兵器で」狙って撃ったのだ。 プーチンは、もう制御がきかない。国際社会の秩序など一顧だにしない。やりたい放題である。国際社会による、彼の顔色伺いも、理事国だからという尊重も意味がない。【新しい平和維持組織への着手を】もはや国連には期待できないことが明らかになった。国際社会は、この事態に早急に対応しなければならない。新しい平和維持組織創設にいますぐ着手しなくてらならない、と私は思う。
2022.04.30
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Milkywayです。お元気ですか?20220423ロシアによるウクライナへの侵略戦争で、にわかに注目されるようになった言葉「戦争犯罪」。実際には今までも世界の紛争地では必ずと言って良いほど起きてきた犯罪である。だが、われわれ日本人は対岸の火事とばかりに無関心だったし、戦争犯罪という概念さえも明確にはわからないままだったのではないだろうか?そういうこともあり、今日のブログではその定義とミャンマーでも戦争犯罪が起きていることを記しておく。【戦争犯罪の定義】https://ja.wikipedia.org/wiki/戦争犯罪には、戦争犯罪は以下のように定義されている。次に揚げる各行為またはそのいずれかは、裁判所の管轄に属する犯罪とし、これについては個人的責任が成立する。a項-平和に対する罪すなわち、侵略戦争あるいは国際条約、協定、誓約に違反する戦争の計画、準備、開始、あるいは遂行、またこれらの各行為のいずれかの達成を目的とする共通の計画あるいは共同謀議への関与。b項-戦争犯罪すなわち、戦争の法規または慣例の違反。この違反は、占領地所属あるいは占領地内の一般人民の殺害、虐待、奴隷労働その他の目的のための移送、俘虜または海上における人民の殺害あるいは虐待、人質の殺害、公私の財産の略奪、都市町村の恣意的な破壊または軍事的必要により正当化されない荒廃化を含む。ただし、これらは限定されない。c項-人道に対する罪すなわち、犯行地の国内法の違反であると否とを問わず、裁判所の管轄に属する犯罪の遂行として、あるいはこれに関連して行われた、戦争前あるいは戦争中にすべての一般人民に対して行われた殺害、せん滅、奴隷化、移送及びその他の非人道的行為、もしくは政治的、人種的または宗教的理由にもとづく迫害行為。【裁かれる対象】戦争犯罪を裁く国際法の趣旨として大きいのが、戦争抑止である。その趣旨から、戦争犯罪人として裁きを受けるのは、武力紛争時に行われた「ジェノサイドの罪」「人道に対する罪」「戦争犯罪」の実行者や共犯者、依頼者、教唆者、煽動者、上官などである。戦争犯罪人は、戦時では、軍の上官の命令には従わなければならない。だから被疑者は命令にしたがっただけとも主張できる。大切なことは、そうした事情も法廷で審理されることと、その罪にかなった裁きが下される点である。もう一つ、私が大切だと思うのは、その審理の過程で、何が人間を戦争犯罪を犯すまで追い込むのかという側面である。それが明らかにされ、人類がその背景を共有し、人間を戦争犯罪人にしない知恵をえることも重要だと思う。【ミャンマーにおける戦争犯罪】上記の戦争犯罪の定義にてらすと、ミャンマーで行われていることが明白な戦争犯罪だとわかる記事がある。「ウクライナ侵攻で国際社会が目を逸らすミャンマー 軍事政権の弾圧に市民が続ける抵抗方法」というタイトルで本年4月15日、ジャーナリストでアジア政経社会フォーラム(APES)共同代表の舟越美夏さんが発表した記事である。 https://news.yahoo.co.jp/byline/funakoshimika/20220415-00291465舟越さんはこう書いている。「ロシア軍のウクライナ侵攻に国際社会の目が集中していることで影響を受けている国は少なくない。国軍が昨年2月にクーデターを起こしたミャンマーがその一つだ。国連人権高等弁務官事務所は3月半ばに包括的報告書を発表し、「国軍は戦争犯罪など組織的人権侵害を犯している」と指摘して国際社会に行動を求めたが、反応した国際社会は無きに等しかった。強大な武力を持ちながらも国を掌握できず焦る軍事政権には、抵抗勢力を叩き潰す好都合の状況だ。東部や北部で戦闘が続く中で、13日にミャンマー最大のお祝い「水かけ祭り(ティンジャン)」が始まったが、市民は静かに、頑強に抵抗を続けている。」この記事は、ミャンマーでも今現在起きている戦争犯罪の実態と、市民のミャンマー軍に対する抵抗を、いくつかの重要なポイントを示してレポートしている。ここではそのポイントだけを紹介するので、詳しい内容は、上記の舟越さんの記事を読んでもらいたい。1. ロシア侵攻で軍政に湧いた懸念舟越さんによると、ミャンマーの軍政権が、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で、同じことがミャンマーにも起こるのではないかと懸念を強めたというのだ。2. 水かけ祭りでアピール狙うがミャンマー軍政権は、伝統の国民的お祭りの映像を流して、国内が軍政権の下で落ち着いているのを必死にアピールしようとしている、と言う。脆弱な支配状態を中国に見せたくないためだ。しかし市民のムードは、お祭り気分からはほど遠い。今年も市民の大多数が祝賀イベントをボイコットした。それもそのはずで、ミャンマー国内の現状は「多くの犠牲者が頭を撃たれ、焼き殺され、恣意的に逮捕され、拷問され、人間の盾として使われた」。国連が指摘しているこの状況は続いており、NGO「政治犯支援協会」(AAPP)によると、クーデター以降、国軍に殺害された市民は1750人を超えた。さらに4月9日は、古都バゴーで市民82人以上が国軍に虐殺されてから1年に当たり、遺族らは軍事政権の監視を気にしながら、ひっそりと一周忌の法事を行ったばかりだ。」という状態だからだ。3. 犯罪の重さは同じのはずこの点についての舟越さんの指摘は、ウクライナ以外で起きている戦争犯罪に対する関心の温度差に、忸怩たる想いを抱いている私には、“言いたいことを言語化してくれた”と強く思った。舟越さんはこう書いている。 「市民虐殺は、国に関わらず重い犯罪のはず。だが実際には各国の国益がどう絡むかで扱いが変わる。米国を中心とした国々の利益が絡むウクライナの状況は大きく取り上げられ、ミャンマーやアフガンでの戦争犯罪や虐殺は内政問題にされてしまう」。ミャンマー人ジャーナリスト、ジンミンマウンはそう分析し、ナポレオンの名言をもじって付け加えた。 《世界は災難に満ちていて、独裁国家ではなおさらそうだ。しかし災難は独裁者によってもたらされるだけでなく、自国の利益を最優先して沈黙する国際社会のメンタリティによるものでもあると思う。》戦争犯罪が起きている現場の声を知ることは極めて大事だ。我々は、こうした事実を視野におきながら、ロシア軍やミャンマー軍政権に日本の政治家がどう対応しているのか、注視する必要がある。加えて、ロシアの侵略戦争を利用して自らが注目を浴びようとしている政治家や、自身の願望を遂行しようとしている政治家たちの倫理観をも、改めて厳しく評価する必要があると考えている。
2022.04.23
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Milkywayです。お元気ですか? 20220416 ゼレンスキー大統領の国連・安全保障理事会での演説が日本語訳されて公開された。2022.04.07 木曜日 TBSラジオの[荻上チキSession]https://www.tbsradio.jp/articles/53000/ その演説について、書いておきたいと思う。なお翻訳の全文は、番組での紹介文とともに、文末につける。 ゼレンスキー大統領が今回の演説で強調したのが、国連改革だった。国連がこの侵略戦争でまたしても無力さを露呈し、人々はその現実にじれったさと腹立たしさを覚えた。私も同じだ。今回は、ゼレンスキー大統領も演説の中で指摘した国連改革についての私の想いを記しておく。【国連改革が必要】 今回の戦争を契機に、国連の無力・無機能を変革しなければならないと言ったゼレンスキー大統領の意見に、深く頷いた。今回、国連がこれほどの無力状態に陥ったのは、ロシアが国連の主幹をなす常任理事国の五つの国(中国、フランス、英国、米国、ロシア)の一つだったことだ。 常任理事国の決議は、全員一致となっている。だから、どんな決議案も提案も、常任理事国の一国が拒否権を使えば、なにも決めることができない(国連憲章第27条)。今回の「ロシア軍の撤退決議」も、当然だがロシアが拒否権を使い、決議に至らなかった。【拒否権に対する賛否両論】 常任理事国の持つ拒否権については、賛否両論が続いてきた。拒否権支持派は、拒否権が国際的な安定の促進に寄与しているとか、軍事介入に対する牽制になると主張してきた。 他方、拒否権に対する批判派は、拒否権は国際連合の最も非民主的な要素であり、その行動を事実上妨げており、戦争犯罪や人道に対する罪に対して国際連合が何もできなくなっている主な原因だと主張してきた。 実際、今回のロシアによる蛮行に対しての国連は、拒否権批判派の意見通りだった。【拒否権行使回数】 ここで、実際に各国が使ってきた拒否権の回数を見てみる。過去から2020年8月現在までの拒否権の行使回数は、ロシア連邦・ソビエト連邦が116回アメリカ合衆国が82回イギリスが29回フランスが16回中華人民共和国・中華民国が16回である。 https://ja.wikipedia.org/wiki/国際連合安全保障理事会における拒否権 この回数をみれば、拒否権が濫用されていること、そのことによって世界平和が達成されなかったことがよくわかる。このまま拒否権行使が認め続けられれば、国連は今の無力状態を永久に続けてしまう。今後、起こるかもしれない国際的な戦争時にも、平和のための働きができないのだ。それはつまり、国連の存在意義がないということになる。だから、この硬直状態を突破するために、国連改革が必要なのである。【改革内容三つ】 改革内容は、三つ。一つは、常任理事国が問題の当事者の場合、拒否権を行使できないようにするのが一つ。もう一つは、常任理事国が拒否権を使って硬直状態に陥った場合は、非常任理事国10カ国の採択と国連総会での決議に従うことだ。三つ目は、今回のロシアのように自らが戦争を引き起こした時は、永久に持つと規定されている常任理事国としての資格を、一定期間停止させることだ。【国連改革は不可能という声】 だが、どんなに国連改革案があっても、国連憲章の改正には、巨大なハードルがある。憲章の108条が、安保理常任理事国は国際憲章の改正に対しても、拒否権を持つと定めてあるのだ。ようするに、現実問題としては、国連改革は無理だと言う結論である。 私自身は、多国主義を支持する。自国さえ良ければいいという「自国第一主義」は危険だと考えている。米国のトランプ大統領の下での「自国第一主義」は、イスラエルと結ぶことで自国の利益を優先した結果、中東をより不安定化させた。そしてフィリピンやイタリア、ブラジルなどあちこちの国家元首がトランプのまねをし、国際間の調和を乱した。フランスには「自国第一主義」を掲げた極右勢力の増大があった。それがヨーロッパの不安定さを作り出した陰の力になっていて、崩壊のひびが見えてきている。【国連に代わる国際機関の創設】 今回のロシアによるウクライナ侵略は、第二次世界大戦後の国際秩序を完全に壊した。しかも、その回復も改革も、現在の国連憲章の下では不可能に見える。それであれば、新たな国際機関を作った方が早いように思える。もちろん、それにも時間がかかる。だが、今のままで手をこまねいているわけにはいかない。着手しないと何も始まらないのだ。 それぞれの国々の独立性や国内問題にはタッチしないという原則を守りつつも、国際秩序を守る枠組みを作ったり、互いに危機の時は救いあう何らかの国際機関が必要だ。私はゼレンスキー 大統領が「U24」と名付けて提案したような機関を望む。 単純すぎて、理想主義すぎると言われるに違いない。だが、何もしないで諦めてはいられないのだ。「たとえ明日、世界が滅亡しようとも今日私はリンゴの木を植える」と言う言葉に、私は与する。 最後にもう一つ個人的願いを書いておく。この戦争を引き起こしたプーチンとその一派一人ひとりに責任をとらせる方法を、国際機関に考え出してほしい。彼らの行為が、平和に暮らしていた罪のない450万人を超えるウクライナ避難民をうんだ。ロシアは、ウクライナの民間人を無差別に殺しただけでなく、自国の兵士たちの命をも奪ったのである。 国際法廷は、プーチンとその一派の罪を裁いて刑に服させるだけではなく、経済的にも賠償をさせるべきだ。各国がすでに差し押さえた彼らの個人資産や、それに加えてまだ見つかっていない資産、例えば、パナマ文書やスイス銀行での隠し資産なども徹底的に洗い出し、それを償いに充ててほしいと願う。 戦争を起こした当事者には、服役や死刑ではなく、生きている期間中に責任を自覚させる方法を確立しなくてはならないと私は思うのだ。下記はゼレンスキー大統領の国会演説全文*****************************TBSラジオの[荻上チキSession]https://www.tbsradio.jp/articles/53000/の番組での紹介文「ウクライナ語を英語に訳されたものを日本語に、全文翻訳しました。翻訳は、翻訳業の慎曜さんです。演説の英文はゼレンスキー氏のHPからの引用になります。」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・【日本語翻訳全文】総会議長、事務総長、そして安全保障理事会のメンバーをはじめとする参加者の皆様。本日はこのような機会をいただき、感謝いたします。この場をお借りして、国連加盟国代表の皆様に、私の話を聞いていただけることでしょう。昨日私は、先日ロシア連邦の軍隊から解放された我が国の都市ブチャから戻りました。ブチャは、占領軍によって戦争犯罪が犯されていない場所を見つけるのが困難なほどの惨状です。ロシア軍は私たちの国のために働いた人々を探し出し、意図的に殺害しました。家の外にいた女性たちは、生存者に近づき助けを呼ぼうとしていただけだったのに処刑されました。大人と子供、家族全員が殺されるケースもあり、ロシア軍は彼らの遺体を燃やそうとしました。私は今、亡くなった人々を日々追悼している国民を代表して演説を行っています。毎朝、国民は殺害された人々の追悼をするのです。拷問の末に後頭部や目を撃たれた人。通りにいただけで撃たれた人。苦しみながら死を迎えるよう、井戸に落とされた人。マンションや一軒家の中にいて、手榴弾で吹き飛ばされて亡くなった人。道路の真ん中で一般車に乗っていて、面白半分で戦車に踏み潰された人。手足を切り落とされ、喉を切られた人。子供の目前でレイプされ、殺された人。自分たちの聞きたかった答えを言わなかったというだけで、舌を切り取られた人もいます。このような行為は、ISIS(イスラム国)が彼らの占領地で行っていることと、どう違うのでしょうか?ひとつ違うのは、これが国連安保理の常連理事国による所業だという点です。この国は、諸国の内なる結束を壊しています。国境を破壊しています。彼らは、2つの大陸に住む十を超える民族が持つべきはずの民族自決も、それぞれが自治権を持った国家であるという権利も認めません。そして、民族的、宗教的な多様性を破壊するというやり方を一貫して追求しています。できるかぎり多くの一般市民を殺すようなやり方で戦争を激化させ、意図的に遂行しているのです。普通の平和な都市を際限なく破壊し、軍隊を送り込んで国を荒廃させ、集団墓地を後に残します。 皆さんもご覧になったでしょう。彼らは国家レベルで憎悪を掻き立て、プロパガンダと政治的腐敗を利用して他の諸国に広めようとしています。また、彼らが引き起こしている世界規模の食糧危機は、今後アフリカやアジアで大規模な食糧不足を招くおそれがあります。これは、食料価格の安定が国内の治安における主要な要因となる国々を、最終的には必ずや大規模な政治的混乱に陥れることになるでしょう。そこでお聞きしたいのですが、安保理が保証しなければならない安全とは、一体どこにあるのでしょうか?安全というものが存在していないのです。安保理は存在するのに、何事もなかったかのように振る舞われている。国連が発足した時に掲げた保障すべき平和は、一体どこにあると言うのでしょうか?平和を脅かす侵略者の抑圧を保証するための世界の枢要な機関であるべきはずなのに、まったく効果的に機能できていないのは明らかです。ロシア軍がブチャを占拠している間に何をしたかを、世界中の人々が目の当たりにしました。しかし世界は、ウクライナの占領された他の地域で彼らが何をしたのかをまだ見ていません。場所は変われど、残虐性にも犯罪行為にも、変わりはありません。責任を免れることがあってはならないのです。皆さんに、どうかお聞き願いたい。国連憲章の第1章第1条を思い出してください。この組織の目的は何ですか?平和を維持することです。平和への強制です。国連憲章は、文字通りに最初の条項から守られていないのです。そうであれば、その他の条項すべてに意味はあるのでしょうか?今日、我が国の領土、ウクライナの領土におけるロシアによる行いの結果、第二次世界大戦が終結して以来最も凶悪な戦争犯罪が起きています。ロシア軍は意図的にウクライナの都市を破壊し、迫撃砲や空爆によって焼き払っています。意図的に、都市を孤立させ、大勢の人を飢餓に陥らせています。意図的に、敵の陣地から逃げようと道路を移動する市民の行列を狙って撃っています。彼らは、市民が空爆から身を隠しているシェルターでさえも、意図的に爆破しているのです。また、一時的に占領した領地において、一人でも多くの市民が犠牲になるような状況を意図的に作り出しています。不幸にも、ブチャで起きた大虐殺は、この41日間で占領軍が実行した数ある例のうちの1つにしか過ぎません。他にも多数の都市で同じような被害が発生していますが、マリウポリ、ハリコフ、チェルニヒウ、アフトゥルイカ、ボロディアンカなど数十を超えるウクライナの地域がブチャのような状態にあるというその真実の全容を、世界の人々はまだ知らないのです。これらの罪に対する非難を受けて、ロシアの代表団が何を言うのか。私にはそれが分かりますし、あなた方もよくご存知だと思います。何度も彼らが言ってきたことです。一番の例は、ドンバス地方でロシア軍がロシア製の武器でマレーシアのボーイング機を撃墜した時や、シリアでの戦争中です。彼らは自身を正当化するために、皆を非難するでしょう。彼らは、真実には異なるバージョンが存在すると主張するでしょう。そして、それらのうちどれが本当であるかを確立することは、まだ不可能だと言い張るはずです。彼らなら、こう言うでしょう。「殺害された遺体は仕掛けられたもので、動画はすべて仕組まれたものだ」と。しかし、今はもう2022年です。衛星画像という、決定的な証拠があります。完全に透明性のある調査を行うことは可能なのです。それこそが、私たちが関心を寄せることです。ジャーナリストとのやり取り、そして国際的機関との連携を最大限に行いたい。国際刑事裁判所の関与を求め、完全なる真実と完全なる責任を追求していただきたいのです。国連の加盟国なら、どの国もこの追求について関心があるはずです。何のための追求なのか?それは、自らを特権があると考え、罰せられることはないと思っている国を、きっぱりと罰するためです。これにより、戦争犯罪を犯す可能性のある世界のあらゆるその他の国々に対しても、罰を受けることは避けられないということを提示することができるでしょう。最も大きな国が罰を受ければ、誰しもが罰を受けることになります。ロシアがウクライナに侵攻した理由を教えましょう。ロシアのリーダーシップは、まるで古代の入植者のようです。彼らは私たちの富と民が欲しいのです。ロシアは、すでに、数万人におよぶウクライナの市民を彼らの領土に強制移送しました。このままでは数十万人に達するでしょう。また、ロシアは2000人以上の子供を誘拐しました。数千人もの子供をたやすく誘拐してしまったのです。そして今も同じことを繰り返しています。ロシアは、ウクライナ人を従順な奴隷にしたいのです。ロシア軍は、自分たちが占領した都市や村で堂々と略奪行為をしています。これは最も大規模な略奪です。彼らは食料や、犠牲者からもぎ取った金のイヤリングまで、あらゆるものを盗んでいます。私たちが戦っている相手は、国連安全保障理事会における拒否権を殺りくの権利に変えるような国です。これは、世界規模の安全保障の構造全体をむしばむものです。悪は罰せられないという事態を許し、それを世界に広めることなのです。平和と安全を維持するために機能するすべての構造を破壊します。これが続けば、最後には、各国が安全を確保するために国際法や国際機関ではなく、兵器の力に頼ることになるでしょう。そうなれば、国連は本当に解散を迎えてしまうかもしれません。そこで皆さんにお聞きしたいのです。国連を解散するおつもりなのですか? 国際法の時代は過ぎたのだと、そうお考えなのでしょうか?もしあなた方の答えが「ノー」であるなら、今すぐ、迅速に行動しなければなりません。今すぐ国連憲章の効力を復活させなければならないのです。即座に国連の体制改革を行い、拒否権は殺りく権ではないということを示さなくてはなりません。安全保障理事会には、世界中のすべての地域の公正な表明が必要なのです。侵略国に対し、今すぐ講和を強制しなければなりません。決断が必要です。シリアからソマリア、アフガニスタンからイエメン、そしてリビアまで、大量虐殺の連鎖は、とっくの昔に断ち切られるべきだったというのが率直な意見です。暴政が自ら引き起こした戦争の代償としてその存在を失い、その後に公正な平和が保証されているのであれば、確実に世界は変わっていたでしょう。そしておそらく、ウクライナは自国で戦争などしなかったはずです。この戦争は、私たちの国民、ウクライナ国民に対する戦争です。市民に対する戦争なのです。しかし、世界はそれを傍観し、クリミアの占拠や、それ以前に起きたグルジア戦争に対して見て見ぬふりをしました。さらにさかのぼって、トランスニストリア地方全土のモルドバからの疎外についてもそうです。世界は、ロシアが自国の国境付近で起きたその他の紛争や戦争の下準備をしていた経緯についても、見て見ぬふりでした。どうやってロシアを止めるのか?今すぐ、ロシア軍と、彼らに命令を与えた関係者を、ウクライナで戦争犯罪を犯した罪で裁判にかけてください。犯罪の命令を下し、市民を殺害することでその命令を実行したすべての人間には、ニュルンベルク裁判のような法廷が待ち受けているでしょう。私はロシアの外交官たちに改めて言いたい。例えばフォン・リッベントロップも、第二次世界大戦後に罰を免れることはありませんでした。また、ロシアの刑事政策の策定担当者にも、アドルフ・アイヒマンだって罰を受けたということを申し上げておきたい。どの犯罪者も逃げられはしないでしょう。一人たりともです。しかし、重要なのは、今こそ体制を変える時であり、その中核は国連であるということです。これを実現するために、私たちは、世界会議の開催を提案します。決議の場として、平和的なキーウでの開催を希望します。議題は、世界の安全保障制度をどのように改革するのか。世界的に認められた国境の不可侵および国家の保全を、実際にどのように保証するのか。国際法の支配をどのようにして徹底するのか。ぜひ話し合いたいのです。1945年、世界的な国際治安機関が創設された時にサンフランシスコで掲げられた目標は、明らかに達成されていません。そして、それらの目標は改革なしで達成することは不可能です。したがって私たちは、次の世代へつなぐために、安全上の課題に対し予防的に対応し、平和を保証する能力を備えた効力のある国連を実現するため、全力で取り組まなければなりません。武力侵略を抑止して、侵略国に和平を強制するのです。決断力と、平和の理念に背いた場合に罰することのできる効力を備えてください。これ以上、例外や特権があってはいけません。経済力、地理的領域、個々の野心の対象にかかわらず、国際関係にかかわるすべての関係者の誰しもが平等であるべきです。平和の力が優勢にならなければなりません。人類が常に夢見てきたように、正義の力、安全保障の力が優勢になる世界を目指しましょう。ウクライナは、最新の安全保障制度を担う主要な事務局の1つとして基盤となる準備ができています。ジュネーブ事務局が人権に特化し、ナイロビ事務局が環境保護の分野に特化しているように、キーウU-24事務局は、平和維持を目的とした事前防止対策を専門に活動することできます。私たちがアフガニスタンで行った平和的任務を思い出してください。当時、私たちウクライナ人は、自費で同国から1000人以上もの人々を避難させました。その時は最も危険な局面でした。しかし、人々は助けを必要としていました。そこでウクライナは、手を差し伸べたのです。他の諸国と同様に。私たちは、アフガニスタン人、ヨーロッパ諸国、米国、カナダの人々などさまざまな国籍や宗教を持つ人々を避難させました。私たちと同類かどうかにかかわらず、助ける対象を区別することはありませんでした。すべての人を助けたのです。世界の誰しもが、助けが必要な時に必ず助けが来ると確信していれば、世界は間違いなくもっと安全な場所になるでしょう。したがって、ウクライナには、世界の安全保障制度における改革を提案する道徳的な権利があります。私たちは、いい時代だけでなく、苦境の時代でも他者を助けるということを示してきました。そして今、私たちはウクライナの平和のために、安全保障理事会による決断を必要としています。この決断を採用する方法がわからないのであれば、あなた方にできることは2つあります。侵略国であり戦争の根源であるロシアが、自らの侵略と戦争に関して下される決定を阻む行為を止めさせてください。それができないのであれば、平和のためにどのように形式を再編し、本当の意味で機能させられるのかを示してください。あるいは、現在の形式を変えることができず、出口がないのであれば、最後の選択肢は完全な(国連安保理の)解散しかないでしょう。私は、3つ目の選択肢なしで実現できると確信しています。ウクライナは平和を求めています。私たちは平和を手に入れたい。ヨーロッパも、世界にも平和が必要なのです。最後に、短い動画を見ていただきたいと思います。誰か1人による権力の乱用を許してしまったせいで、あなた方(国連安保理)の力がどんな状況に取って代わったのかを示す動画です。責任を問われないということが、この状況を引き起こしたのです。可能であれば、どうかこの動画を見てください。皆さんにはウクライナを訪れ実際に見ていただく機会がありませんから、ぜひ見てほしいのです。ありがとうございました。 ※動画は上記のゼレンスキー氏のHPで確認できますが、凄惨な映像ですので注意してご覧ください。
2022.04.16
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Milkywayです。お元気ですか? 20220409 4月7日、国連総会で、国連人権理事会の理事国として、ロシアの資格停止を決議した。 193カ国で構成される国連総会が、ロシアがウクライナで「重大かつ組織的な人権侵害」を行ったとして、この理事会からの追放を採択したのだ。 この決定を受けて、バイデン大統領は、ロシア軍によって「人々がレイプされ、拷問され、処断され、場合によっては遺体が冒とくされている姿は、普遍的な人間性に対する暴挙」だとロシアを非難した。 一方、当事者のロシアは、この決議案が採択された後、自ら人権理事会から離脱する意向を表明した。 国連でのこの大きな動きについて、このブログ上で自分の考えをまとめておきたい。 今回のブログは下記3紙を主な参考にした。時事通信 https://www.jiji.com/jc/article?k=2022040800334&g=int東京新聞 https://www.tokyo-np.co.jp/article/170459ロイター https://www.reuters.com/article/ukraine-crisis-un-idJPL3N2W503J【人権理事国とは】 47カ国が理事国として選出されていて、任期は3年。年3回理事会が開かれ、定期的レビュー(UPR)で、全ての国連加盟国の人権に対する取り組みを評価する。また、人権侵害があったとする報告に対しては、独立した専門家を派遣したり、委員会を設置することもできる。これまでにシリアや北朝鮮、ブルンジ、ミャンマー、南スーダンに対してこうした措置がとられた。 ロシアは23年末まで理事国を務める予定だった。だが今回の資格停止によって、ロシアは決議案の提出など主体的な活動ができなくなる。人権理事国の資格を失うのは、2011年3月のリビア以来、2例目。安全保障理事国を構成する5つの国としては、初の処分となった。【表決での反対国・棄権国】 ロシアのウクライナ侵略後、193カ国から成る国連総会では「ロシア非難決議」を141カ国の、「ウクライナ人道支援決議」を140カ国でという圧倒的賛成多数で採択してきた。だが今回は、採択に必要な投票国の3分の2以上の賛成を確保したものの、票数は100を割り込んだ。賛成が93カ国で、反対が24カ国。棄権が58カ国、無投票が18カ国もあった。ロシア非難に対する反対票は、過去2回の評決では5カ国だけだったが、今回は、中国や北朝鮮、イラン、ベラルーシ、シリア、キューバなども加わり24カ国にものぼり、前二回の非難決議の5倍近くになった。 一方棄権した国は、インドをはじめブラジル、タイ、メキシコなど58カ国。ブラジルやメキシコなどは過去2回のロシアへの国連決議では賛成したのに、今回の「人権理事国の資格停止」では棄権に回り、棄権数は人道決議の際の38から20も増加した。【賛成・反対・棄権の投票一覧】 どの国が賛成・反対・棄権の投票をしたのか、国連の投票結果を示す画像がこれである。https://www.ukrinform.jp/rubric-polytics/3451453-guo-lian-zong-huiroshiano-guo-lian-ren-quan-li-shi-guono-zi-ge-ting-zhiwo-jue-ding.html これを見ると、反対票を投じたのはロシアは当然として、アルジェリア、ベラルーシ、ボリビア、ブルンジ共和国、 中央アフリカ共和国、中国、コンゴ、キューバ、北朝鮮、エリトリア、エチオピア、ガボン、イラン、カザフスタン、キルギス、ヨルダン、ラオス、マリ、ニカラグア、シリア、タジキスタン、ウズペキスタン、ベトナム、ジンバブエの24か国。ロシアに隣接した国々やアフリカ諸国、共産国が主だ。 投票結果の裏側に、ロシアからの圧力や脅しがあったとロイターは書いている。ロシアから、決議案に反対しなければ報復するとの書簡が、アフリカやアジアの国に送付されたと伝えているのだ。 それを反映してか、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟10カ国の多くが棄権や反対に回った。ロシアの資格剥奪に賛成したのはフィリピンとミャンマーのみ。ベトナムとラオスが反対に回り、残り6カ国のインドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、ブルネイ、マレーシアが棄権した。そのほかアジアの国では、インドが武器取引などを通じてロシアと密接な関係もあり棄権に回ったし、そのほかの国々では、中立的な立場で自国の国益を優先する思惑が働いた国もあると報じられている。【ロシアを追い詰めすぎない方が良いという意見】 ロシアの人権理事会での資格停止には、異を唱える国もある。例えば、アラビアは、“資格停止は事態をエスカレートさせる”と主張したし、中国の国連大使は“人権問題の政治化や道具化”として、今回の決議を批判した。 たしかに「ロシア」を追いつめ過ぎれば、ロシア国内で国粋主義が蔓延し、ナチスの再来を促すことになってしまう危険性があるかもしれない、かつて日本の国際連盟脱退の後、日本が急速に国粋主義に燃え上がったようになる危険がある、という意見だ。今のロシアは、国民の大部分がプーチンによる言論統制によってプーチン側が流す情報を鵜呑みにし、プーチンに対する国民の支持率はウクライナ侵略前の67.2%から、81.6%へと一気に支持率があがっている(4月8日 ロイター )。言論統制によって作り上げられたプーチンを支持する今のロシアは、ヒットラーを支持した第二次大戦前のドイツより危険だ。人口がはるかに多いし、はるかに資源も豊富だし、核を持ったナチスとなりうるというのだ。 そうした意見については、私自身は組みしない。ナチス化させないためには、ロシアという国を名指ししないで、追い詰めるのはプーチンとその一味だけに絞ることが必要だ。ロシア国民にはあらゆる方策を駆使して真実を知らせ、このままだと国民生活は破綻に向かうことを教え、国際社会との宥和をするように説く必要がある。報道規制を受けているロシア国民、特に年齢の高いテレビ視聴層には、宗教者からの呼びかけは有効ではないだろうか? 事実を知った国民からプーチンを突き上げさせ、プーチンに責任をとらせることを示す国際意見が必要だと私は考える。時間はかかるが、今後の国の健全化を考えると、ロシア国民の自覚が第一に来なくてはならないと私は思う。【私の意見】 私は、人権理事会のロシアの資格剥奪は、当然と考える。人権を守ることを主導する立場の国が、人権侵犯をまさしく国際社会の目の前で行っているのだから。 さらに、人権理事会のみならず、国連安保理の常任理事国としてのロシアの地位も、プーチンが裁かれその賠償を終えるまで、剥奪した方が良いと私は考えている。そうしないと、理事国としての権利は行使するが、その責任は果たさないということになるからだ。義務と責任は両輪だ。同じ様に動かないと、正しい方向で進まない。今までにない厳しいプーチンへの制裁は、前例となる。そうすれば他の常任理事国の4カ国は、その前例に従わなくてはならなくなる。常任理事国の働きを健全化することによって、国連の機能を元に戻すきっかけにすれば良いと願う。 ウクライナの人々のこれほどの犠牲を、けっして無駄にしてはいけないと願う。 それと同時に、もう一方の「非常任理事国」の権限も、強めなくてはならないと私は思っている。現在の大国主義のままでは、国連での民主的な議論ができなくなるからだ。 もし国連がこのような改革を早急にできないのなら、ウクライナが提案したU−24という新たな国際機関を創設した方が良いとも思う。 私自身は、多国主義を支持する。自国さえ良ければいいという「自国第一主義」は危険だと考えている。 もう一つ、今回の人権理事国としてのロシアの資格剥奪や、国連決議には今後の展開のために意義があることを書いておきたい。それは、世界がどの様にプーチンを見ているかを、彼に示す効果もあると私は考えているからだ。プーチンは自ら作り上げた専制体制によって、裸の王様状態になっていると報道が伝えている。彼の周囲は彼が怖くて、本当のことを彼に告げられない。プーチンは真実を知らないが故に、誤った判断をしてしまっていると報道されている。 そうした裸の王様状態の中で、国際社会が彼をどう見ているか、侵略地でロシア軍が何をしているか、国際社会の潮流は何かを彼が知り、国際機関からの不名誉な扱いを受けることによって、プーチンが事実と向き合うきっかけになると私は思う。 彼は自分がふりあげた拳を仮に下ろせなくても、戦争犯罪人として裁かれるときに、国際社会はこれこれこのようにして、彼に警告を発してきたという証拠を積み上げることができるのだ。 彼は国際社会のなかでの大国としての責任と自覚を失っている。大いなる時代錯誤の中にいる。その彼に、国際社会が「目を覚ませ」とメッセージを次々と投げかけている。それが今回の決議である。プーチンが気づいてくれることを心から願っている。
2022.04.09
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Milkywayです。お元気ですか? 20220402 ロシアからの侵略戦争から避難したウクライナの避難民は、2022年3月31日の時点で、410万人に達した。 日本にも避難民受け入れを岸田首相が表明した3月2日から29日までに325人が入国。さらなる希望者数はまだ1000人程いると言われている。加えて、世論の後押しもあって、日本政府が異例の積極姿勢を示し、政府専用機による移送や入国後の生活支援も検討していて、今までの日本政府の他国の避難民に対する冷たい仕打ちとは打って変わった姿勢を示した。嬉しいことである。過去の経緯については、今回のウクライナ難民への支援が契機になって、今後、もっとしっかりと取り組んでくれることを願っている。 ウクライナ難民が逃れた近隣国とその人数を示す国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の資料から作成された地図がある。 https://www.jiji.com/jc/tokushu?id=ukraine_refugees_2022&g=ukrこれをみると、わずか5週間で避難民数は410万人超え。これほどの人たちが、家族と離れ離れになり、住むところも生活の手段も失い、外国に身を寄せたわけである。その不安や苦しみ、悲しみは想像してもしきれないだろう。私たちは、「自分がその人の立場になったら」と我が身を彼らの一人ひとりに置き換えて、1日一度は考えてみたほうが良いと思う。 まずは国から逃れてきた人たちが欲しいのは、国に残してきた家族の安否、故郷の様子、国境を越えた後の行動の仕方などなど、彼らの“今を支える情報”に違いない。そうした情報を避難民の方々がどこで得られるか?避難した人々のニーズに応えて、ウクライナ政府は3月25日「ウクライナ国立図書館」を、避難民のための情報発信プラットフォームにした。すばらしいアイディアだ。まさしく「生きるためにアクセスする図書館」としての在り方である。 日本に避難したウクライナの人々に、この図書館のサイトを教えてあげてほしい。欲しい情報、生きる希望をもてる情報がきっとあるに違いない。サイトは下記:ヴェルナツキー・ウクライナ国立図書館(ウクライナ語: Національна бібліотека України імені В.І. Вернадського)Information on the NBUV website: http://nbuv.gov.ua/node/5874 このウクライナ国立図書館による「生きるための図書館活動」をいち早く紹介したのが、アジア各国での、戦後の図書館支援活動を展開してきた鎌倉幸子さん。彼女のFacebook上https://www.facebook.com/1559082396/posts/10226944787556544/で、下記の情報を公開した。以下は鎌倉幸子さんの公開情報の全文である。********************************БІЖЕНЦІ ТА ВИМУШЕНО ПЕРЕМІЩЕНІ ОСОБИ(REFUGEES AND INTERNALLY DISPLACED PERSONS)ウクライナ国立図書館は、避難民の人たちが必要な情報をまとめたサイトをオープンしました。・国内避難民の登録証明書の作成・行方不明の人々を検索するアプリ・クロアチアの国境を越えた後の行動の仕方・破壊された住宅の補償等の情報がまとまっています。まだこれから充実していく様子。戦争は情報戦ともいわれますが、死なせるための情報ではなく、生きるための情報を届けることが重要。その役割を図書館がになっているのだと、強く思いました。悲しいことですが戦争が始まり避難民となった人にとってどのような情報が必要なのか、ウクライナ国立図書館のこのサイトから知ることができます。この体験をただの悲劇としてとらえるのではなく、教訓・学びとすること…。このサイトが残し、伝えてくれるものを、外国の物語として見るのではなく、明日は我が身として受け取りたいです。原文は下記Національна бібліотека України імені В. І. ВернадськогоMarch 25 at 3:58 AM · Information on the NBUV website: http://nbuv.gov.ua/node/5874The National Law Library of Ukraine in cooperation with the Institute of Information Technology of the National Library of Ukraine named after V. And. Vernadsʹkogo started the work of information and analytical resource "Refugees and forced to relocate persons | REFUGEES AND INTERNALLY DISPLACED PERSONS» nbuv.gov.ua/nowar .The project contains a structured database that reflects national and international work in the field of protecting the rights of forced immigrants, their integration into new host communities, utilizing the social potential of internally displaced persons, broad Involvement of the VPO to the development of territorial communities.The resource is designed for internally displaced persons, specialists of state and regional authorities, local government, representatives of territorial communities, public organizations, libraries, scientists, educators, and all those interested in solving the problems of the VPO.*************************本ブログ、あるいは鎌倉幸子さんのFacebookにアクセスした方は、地元の図書館に「ウクライナ避難民のための情報サイトが、ウクライナ国会図書館にある http://nbuv.gov.ua/node/5874」ことを教えてやってほしい。図書館同士が連携をとって情報を共有したり、各図書館のホームページ上に載せれば、ウクライナ避難民の誰かにきっと役に立つはずである。
2022.04.02
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Milkywayです。お元気ですか? 20220326 今月23日、日本では初めてという国会での国家元首によるオンライン演説があった。ロシアによる武力侵略に対して、ほぼ1ヶ月戦い続けているゼレンスキー大統領を迎えての演説だから、唯一無二といえる機会。私は中継を観、録画を再度観て、そして文字起こしの全文も読み、ゼレンスキー大統領の日本への理解と配慮が行き届いた演説だったと思った。大統領や彼の側近、スピーチライターたちは、日本人が論理的な議論は不得意だが、情緒性には優れ、心情には深い理解を示し、共感性が高いことを充分知っていたのだと思う。 この演説に関して私の思ったことを記す。【日本への理解と要請】 大統領の演説が日本側に打診されてから、ある人々が懸念していた過激な発言など全くなかった。むしろ拍子抜けするほどの穏やかな内容だった。今までEU議会、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、アメリカ議会などで見せた、ロシアへの制裁不足とか、ウクライナにとってはどうしても必要な援助を決断してくれない苛立ちなどを言うことはなかった。日本に対しては、平和憲法を持っている故に軍事援助ができないことを理解し、ロシアへの経済制裁にさらに力を注いでくれるように要請した。 大統領は、アジアで率先してウクライナへの支援をした日本国民にお礼を言い、平和と自由を享受している国としての日本を、再認識させた。そして、ウクライナと今もっとも共有できる懸念として、チェルノブイリ原発の危機と、生物化学兵器サリンに言及した。そして、日本人と共有できる故郷に帰りたいという想い、戦争による不安や恐怖など普遍的心情を「津波」という言葉を使って伝えたのである。 【大統領が日本に期待していること】 ゼレンスキー大統領は、日本の平和憲法上、日本からの軍事力支援は期待していない。それが無理であることを承知しているのだ。ゼレンスキー大統領が日本に要請したことは、大きく分けて三つ。一つは現時点でのロシアへの官民両面からのさらなる経済制裁とその継続。もう一つは、ウクライナの戦後復興時への支援。三つ目が、国際平和を守るための「新しいツール」創設へのリーダーシップだ。下記に詳細を述べる。【ウクライナへの復興支援】 戦後の復興を驚異的な短時間で成し遂げた日本人への尊敬を、ゼレンスキー大統領は口にした。日本は世界からそのように目されてきたのである。実際、日本の科学力・工業力をはじめ、建築・医療・教育分野で、ウクライナの復興を助ける能力はものすごく大きい。アジアトップと目されてきた医学・医療分野での高い能力が日本にはあるし、原発の廃炉に尽力してきた原発分野での力もある。アジアの国々や発展途上国から羨ましがられた高い教育力もある。国の復興の時には不可欠な、多くの分野での支援能力が日本にはあるのだ。そして、そうした支援を支える結束力や調和を生み出す精神への期待が、ゼレンスキー大統領の言葉にはあった。 日本の精神性への共感については、日本の昔話を使って視覚障害の子どもたちのためのオーディオ・ブックの制作に尽力した自分の妻の例に言及して、障害者への支援と教育を通じて、日本人の心をウクライナの若い世代と共有しようとしたことにも表れている。彼の言葉の端々から、日本の文化と精神性に対するリスペクトを私は強く感じた。彼は「日本とウクライナは価値観を同じにしている」とも言ったのである。【平和への貢献は武器だけではない】 私は今回のゼレンスキー大統領の演説から、日本の文化力が日本の武器であることを改めて認識した。かつて、いくつかの東南アジアの国々や中東と東欧の国々の大使や大使館員たちとお話をする機会に恵まれた時、私は常に、彼らの日本の文化に対する尊敬に驚かされた。 日本人である我々は気付いていないのだが、歴史と伝統の中で培われた日本人の精神性や心情には、彼らから見れば、独特の尊敬すべきものがあるようだ。ウクライナも「キエフ公国」が母体になった長い歴史を誇る国だ。共有するものが多くあるに違いない。日本が、ウクライナに協力できることは武力ではなく、文化や科学分野を中心としたソフト面だと私は確信している。【国際平和への日本の貢献】 ゼレンスキー大統領は、「U24」という国際的連合体を創設する提案をしている。平和を維持するためのこの国際協定がどういうものであるかは、米連邦議会での彼の演説の中で語っている(本ブログの前回で全文訳を掲載)が、この連合組織への日本のリーダーシップをゼレンスキー大統領は要請したのである。 今回のプーチンの蛮行に対しては、国連は無力だった。NATOも様々な制約から機能不十分である。一方、国連の常任理事国入りを願いながらできないままの日本がいる。その立場にある日本は、新しい国際組織なら、世界で唯一の被爆国として、強い発言力を持てるだろう。そうやって国際貢献ができる。武器による平和維持は、もはや幻想だったことが今回のロシアの侵略行為で分かった。核のボタンをもっているプーチンのやりたい放題という現実を、世界は突きつけられたのである。加えて、この核の危機のさなかに、北朝鮮によるミサイル発射事件も次々と起きた。人類は、核を持てば持つほど死に近づいていくことが分かったのである。核の使用をちらつかせて自分の思い通りにことを進めようとする指導者の組織に頼ることは、どれだけ危険なことか、我々は思い知った。もうこうした方法論には身限りをつけ、新しい国際秩序構築へ動いたほうが良い。こんどこそ、平和憲法を持ち、核の被害国である日本に、力を発揮してもらいたい。【日本の政府閣僚とイタリアとの比較】 日本政府への大きな期待を、私は上述した。だが、ここで、日本の国会演説の前日に、同じくゼレンスキー大統領のオンライン演説を開催したイタリアと比べ、日本政府と大臣達に耳の痛いことも付け加えておきたい。 3月22日、それは開催された。イタリアはご存知のように、第二次大戦では、ドイツ・日本と組み、連合国の敵となった国である。欧米からすれば日本と同列の国だ。そのイタリアは、ゼレンスキー大統領からの強い要請をうけた後、ドラギ首相が「ウクライナの人々の威厳はロシアのごう慢さに立ち向かい、ロシアに多大な犠牲を払わせている」と述べ、ロシアに対する制裁の強化に向けて、EU=ヨーロッパ連合などと緊密に連携すると述べた。 一方、日本の山東昭子参院議長は「貴国の人々が命をも顧みず、祖国のために戦っている姿を拝見して、その勇気に感動しております」と戦闘を称え、「わが国とウクライナは常に心は一つにある」と精神論で締め括った。ゼレンスキー大統領の演説に具体的に触れるところは無く、まさしく前もって用意して暗記した挨拶を言っただけ、という様子で、大統領のメッセージを受け止め切れていないというのが、分かってしまう内容だった。 さらに、ゼレンスキー大統領の演説を聞いていた日本の議員たちの姿も情けないものだった。特に、林芳正外相の大あくびも、ここで記録しておく。林外務大臣は、演説前にはまるでコンサートか何かの開幕を待つときのように、隣席の岸田文雄首相とニタニタ笑って私語。演説中にも同じように私語。この様子は、NHKの中継画面に映っていただけでなく多くのメディアが取り上げた。写真の一枚を載せておく。我が国の政府閣僚の姿はまことに情けない。 さて、もう一度、イタリア閣僚に戻る。ダリオ・フランチェスキーニ元文化大臣は、3月18日、ツイッター上でロシア軍によって破壊された伝統あるマリウポリの劇場の再建援助をすると表明した。https://twitter.com/dariofrance/status/1504499779136544775文化大臣を退任した後でも、これほどのコミットメントをするのである。人間としての幅も政治家としての実力の差も知れる。日本の政治家たちよ、奮起を!
2022.03.26
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Milkywayです。お元気ですか? 202203193月16日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がアメリカの連邦議会でビデオ演説を行った。その内容は、ウクライナの痛ましい現状を伝え、ウクライナ国民の闘いも伝えた。この演説では、ウクライナが闘っているのは世界共通の人間の願い、生命の安全、自由、幸福の追求といった人間としての基本的権利だと述べた。それ故、同じ価値観を共有する国々からの支援が必要なのだと訴えたのである。加えて、この演説でゼレンスキー大統領は、非常に興味深い提案もした。世界平和への脅威に対して国連も軍事同盟のNATOも機能していないことを挙げ、それに代わる国際秩序維持のための機関を創設することを提案したのだ。私は、この提案は今後の世界に非常に大切であり、真剣に検討すべきだと考える。実際近年の国連は機能不全と言って良い。安全保障理事会は、常任理事国(中国、フランス、ロシア連邦、イギリス、アメリカ)の一国でも拒否権を使えば、そこで全てが停まってしまう。実質的な動きが全くできなくなってしまうのだ。今回のロシアの国際法違反にも、戦争犯罪にも、国際秩序違反に対しても今や為す術がない。国連に替わるものがないと、世界秩序は崩壊の一途となると思う。この機に、この課題に真剣に取り組むべきだと私は思う。今回の大きすぎる犠牲を無駄にしてはいけないと心から願うからだ。今日のブログは、ゼレンスキー大統領の米連邦議会での演説の全文を紹介する。多くのメディアがこの演説を報じたが、本稿では米CNNが注釈をつけたものを採用した(注釈部も太字部分も原文のままに斜字・太文字にしてある)。我々日本人が知らない背景などが、説明されており、演説内容が、より理解しやすいと思ったからだ。典拠は下記:https://edition.cnn.com/interactive/2022/03/politics/ukraine-zelensky-congress-speech-annotated/?utm_source=twCNNi&utm_content=2022-03-16T17%3A30%3A12&utm_term=link&utm_medium=social****************************************************************Zelensky’s address to Congress, annotated(ゼレンスキー米議会演説、注釈付き) キエフが包囲され、ロシアによる侵略で絶望的な状況のなか、ウクライナのVolodymyr Zelensky大統領は、アメリカの議員達に向けて、実践的軍事援助の増強、ウクライナ上空を飛行禁止区域にするという決定、そしてロシアへのさらなる制裁を懇請した。 この度の事態では、NATO加盟国が紛争に巻き込まれることを恐れて直接的な関与を拒んでいることを受け、ゼレンスキーは新しい国際安全保障組織の創設を提案した。そして、ジョー・バイデン大統領に対して、アメリカだけでなく、世界のリーダーになってほしいと求めた。 ゼレンスキーは欧米各国の議会で次々と演説を続けている。英国議会でのビデオ演説では、ウィンストン・チャーチルを引き合いに出し、欧州連合(EU)議会での演説では、通訳が感動のあまり声を詰まらせるということが起きた。続くカナダ議会では、カナダ首相のファーストネームであるジャスティンを使って、より直接的な支援を訴えた。 これまでにもチャーチルやネルソン・マンデラなど、外国の指導者が我が国の議会で演説したことがある。しかし、事実上、戦場にある所から演説したことはかつてなかったことである。 ゼレンスキーの米国議会での演説を、文脈とともに以下にご紹介する。 この演説は、通訳を介して行われた。ありがとうございます。議長、議会の皆さん、紳士淑女の皆さん、アメリカ国民のみなさん、友人の皆さん、ウクライナからご挨拶できることを誇りに思います。首都キエフからです。この街は毎日ロシア軍からミサイルと空爆を受け続けています。しかし、我々はあきらめません。一瞬たりともそんなことは考えていません。 ゼレンスキーは戦場からアメリカ議会で演説している。上院議員及び下院議員が集まっているのは、下院の豪華で格式高い会議室ではなく、議会議事堂内の講堂である。ここキエフも我が国の美しい多くの都市や地域社会と同じように、第二次世界大戦以来最悪の戦争に巻き込まれました。8年間ロシアの侵略に抵抗してきた、勇敢で自由を愛するウクライナ国民を代表して、私は皆様にご挨拶する光栄に浴しています。 ロシアは2014年にウクライナ領のクリミアを併合し、同国東部で分離主義者による反乱を煽ってきた。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領(当時)は米議会合同会議で直接演説し、ロシアに対抗するためのより直接的な援助を米議員に求めた。しかしその時のオバマ政権は、安全保障のための支援はしたのだが、実際的な軍事支援は行わなかった。その結果、紛争は長期化し、今年の2月のロシアによるウクライナ侵攻までの間に約1万4,000人が死亡した。このロシアによる本格的な侵略を阻止するために、我々ウクライナ人は、最愛の息子や娘を捧げています。今まさに、我が国の運命が決定されようとしています。ウクライナ人が自由でいられるかどうか、民主主義を維持できるかどうかの瀬戸際です。私たち国民の運命が決まろうとしています。ロシアは我々の土地や都市も攻撃してきただけでなく、我々の価値観、基本的な人間の価値観に対して、残忍な攻撃を仕掛けてきました。ロシアは、我々の自由に対して、我々が自分たちの国の未来を選択し、自由に生きる権利を阻むために、戦車や飛行機を投入したのです。 この言葉は、生命、自由、幸福の追求、そして人々が自らの政府を選択するというアメリカ政府の基本に直接語りかけている。アメリカ国民とまさしく同じように、我が国民も、幸福や自分の国に対する夢をもっていますが、それらが今蹂躙されているのです。私は、ラシュモア山にあるあなた方の国の記念碑である著名な大統領たちの顔を思い出します。あの大統領たちは、今日のアメリカ合衆国の基礎を築きました。民主主義、独立、自由、すべての人への配慮、勤勉に働く人、正直に生きる人、法律を尊重する人、あらゆる人への配慮をする国を築きました。 私たちウクライナ人も同じことを望んでいます。私たちが望むこと全ては、あなた達自身の生活の中でも望むことなのです。紳士淑女の皆さん、友人の皆さん、アメリカ人の皆さん、あなた方の偉大な歴史の中に、ウクライナ人を理解するページがあります。分かってください。私たちが今、あなたを必要としているのです。 ゼレンスキーの呼びかけの本質的部分「私たちと私たちの民主主義を助けてくださ い」「あなたを見習えるように助けてください」がここである。パールハーバーを思い出してください。1941年12月7日の恐怖の朝のことを、飛行機が攻めてきて空が真っ黒になったあの時のことを。思い出してください。9月11日を思い出してください。2001年のあの恐ろしい日、悪があなたの都市、独立した領土を戦場に変えようとした日のことを。罪のない人々が空から攻撃された時のことです。そうです。誰も予想していなかったし、誰もそれを止めることができなかったのです。 2月7日は、フランクリン・D・ルーズベルト大統領が「悪名高き日」と議会演説で述べた日で、9月11日は、アメリカがNATOの同盟国に支援を要請した日である。これらの二日は、米国が空から攻撃された日であった。今日、ゼレンスキーはこの両日をあげ、ウクライナ上空を飛行禁止区域に指定するよう求めた。私たちの国は、あの時のみなさんと同じことを、毎日経験しています。今、この瞬間にもです。3週間前から毎晩、ウクライナの様々な都市で。オデッサ. . . . .(ウクライナの都市の長いリスト)で、ロシアはウクライナの空を何千人もの人々に死をもたらす源に変えてしまったのです。ロシア軍はすでにウクライナに向けて1,000発近いミサイルを発射し、無数の爆弾を投下し、ドローンを使って私たちを殺害しています。正確に狙ってです。これはヨーロッパが80年間見たことのない恐怖であり、私たちは全世界からこの恐怖に打ち勝つ答を命がけで求めています。人々を救うためにウクライナ上空に飛行禁止区域を作ることがそんなに大変なことなのでしょうか?求めすぎですか?人命を救うために飛行禁止区域を求める、ロシアが我々の自由な都市を脅かすことができなくする人道的な願いを持つことは、求めすぎなのでしょうか? NATOがウクライナ上空を飛行禁止区域にすることと、ウクライナへ戦闘機の移送を求めるゼレンスキー氏の要求を、バイデン政権は繰り返し拒否してきた。それは、米国をロシアとの戦争に巻き込み、第三次世界大戦を誘発することになるという懸念からだった。加えて、軍事専門家が、飛行禁止区域がロシアの攻撃を止めることができるかどうか疑問視しているからでもある。 飛行禁止区域の設定が無理だと言うなら、別の方法を提案します。私たちがどのような対空防衛システムを必要としているかご存知でしょう。S-300やその他同様のシステムのことです。国民、自由、国土を守るために、強力で力強い航空機を使用できるかどうかが、戦況を左右することはご存じのとおりです。ウクライナやヨーロッパを助けることができる航空機がこの地上に存在することはお分かりでしょう。ですが、それらがウクライナにも、その上空にも無いのです。我らを守ってくれてはいないのです。 ゼレンスキーは、飛行禁止区域設定ができないのなら、それを下回る、代替となるタイプの援助、すなわちソ連製のS-300防空ミサイルシステムなどの援助を求めた。しかし、バイデンは、ウクライナにアメリカの戦闘機を与えるという提案も、ポーランドにアメリカの戦闘機を与え、その代わりに、ポーランドがソ連時代の戦闘機をウクライナに渡すという提案も拒否している。私には夢がある、この言葉は、皆さん一人一人が知っている言葉です。私はこう言います。私には必要なものがある。私たちの空を守る必要があります。あなたがたの決断と助けが必要です。それは、みなさんが "I have a dream "という言葉を聞いたときに感じたのと全く同じ意味なのです。 ゼレンスキーはこれまで、EU議会、英国議会、カナダ議会で演説を行ってきた。その都度、それぞれの国にぴったり合ったメッセージを使って演説をした。今回は、アメリカの公民権運動の英雄であるマーティン・ルーサー・キング・ジュニアの言葉を引用し、かつ、イギリス議会でのチャーチルの有名な言葉を使ってメッセージを伝えている。紳士淑女の皆さん、ウクライナは米国の圧倒的な支援に感謝しています。貴国政府と貴国国民が私たちのためにしてくれたすべてのこと、武器弾薬、訓練、財政など、自由世界の中でのリーダーシップを発揮して、侵略者に圧力をかけてくれています。 米国は、今週、大規模な歳出法案の一部として、ウクライナに136億ドルの援助を承認した。ウクライナと世界中の民主主義を守るための、バイデン大統領個人としての関与と真摯な取り組みに感謝しています。ウクライナとウクライナ国民に対して戦争犯罪を犯した全ての者を戦犯と認定する決議案を出してくれたことに感謝します。ですが今、私たちの国だけでなくヨーロッパ全体が最も暗い時期にあることは事実です。私はあなた方にもっと多くのことをお願いしたいのです。ロシアの軍事マシーンが停止するまで、毎週、絶えることなく、新しい制裁のパッケージをお願いしたいのです。 ゼレンスキー氏は、米国やNATOの支援に感謝の意を表しながら、欧米に対してさらなる支援とロシアへの圧力強化を繰り返し求めている。この不当な政権の基盤となっている全ての人物への規制が必要です。ウクライナに対する侵略に責任がある者たち、国家公安委員会のメンバー、この国家的テロを断ち切る道徳心の無い者たち、未だその政府組織に居座っている者たち、彼ら役人の最後の一人に至るまで、米国が制裁することを提案します。すべての(アメリカの)企業は、ロシア市場を切り離す必要があります。そこはウクライナ人の血で溢れているのです。皆さん、国会議員の皆さん、もしあなたの選挙区にロシアの軍事組織に融資している企業があれば、ビジネスを撤退させてください、圧力をかけてください。ウクライナの人々を破壊するために使うお金を、ロシアに一銭も与ないでください。我が国の破壊、ヨーロッパの破壊をくい止めるために。アメリカの港はすべてロシア製品の受け入れを停止してください。平和は収益よりも重要です。全世界でこの原則を守らなければなりません。 米国や欧米による制裁の厳しさには目を見張るものがある。ロシアは、早ければ今週にも、対外貸付金の債務不履行を起こすと言われている。しかし、ゼレンスキー大統領は、欧米はもっとやるべきことがあるという。特定の政治家だけでなく、すべてのロシアの政治家に経済制裁を加えるべきだ、と言う。そして、米国企業にはロシア市場からの撤退を求めている。 ゼレンスキーは「平和は収益よりも重要だ」と言い、経済へのダメージよりも、民主主義を守ること、国際秩序を守ることがより重要であると述べている。私たちはすでに反戦連合、つまりプーチン大統領の我が国への侵略に反対した数十カ国を束ねる大きな反戦連合の一員ではありますが、私たちはここからさらに歩を進める必要があります。2月24日に始まったロシアのウクライナへの全面的な侵攻に、迅速に対応し阻止するための新しいツールを作る必要があるのです。1日24時間で、その悪が直ちに罰せられるというのが公平でしょう。しかし今日、世界にはそのようなツールはありません。過去の戦争があったからこそ、先人たちは戦争から自らを守る制度を作り上げたのですが、残念ながらそれは機能していません。私たちもあなたたちもみている通りです。ですから、新しい制度、新しい機関、新しい同盟が必要です。私たちはそれを提案します。 現況は、ロシアがNATO加盟国を攻撃した場合には、NATO同盟国は憲章の第5条に基づいてその国の防衛にあたることになっている。しかし、ウクライナは同盟国にはなってはない。それ故に、バイデン氏らNATOの指導者は、同国に軍隊を派遣する計画はないと述べているのである。私たちは、U-24連合を創設することを提案します。平和のために団結し、紛争を直ちに停止させる強さと意識を持ち、必要であれば24時間以内にあらゆる必要な支援を提供し、必要であれば武器も、制裁も、人道支援、政治支援、財政支援もし、世界を救い、命を守り、平和維持のために必要なものすべてを迅速に提供する責任ある国の連合体の創設です。 ウクライナが加盟していないNATOや、ロシアが常任理事国としてほとんどの事項に拒否権を使う国連に代わる新しい国際協定のようなもので、興味深いアイデアである。ゼレンスキーはここで、プーチンのレッドラインであるウクライナはNATOへの加盟を望んでいないという意思表示も示しているのかもしれない。この連合体は、さらに、自然災害や人災に遭遇した人々、人道的危機や疫病の犠牲となった人々を支援することができます。新型インフルエンザを予防し、命を救うためにワクチンを接種するというごく簡単なことが、世界にとっていかに困難であったかを思い出してください。世界は何ヶ月も、何年もかかったのです。この組織によって、犠牲者を出さないために、より迅速に動けるようにするのです。 ゼレンスキーはここで、発展途上国がCOVID19のワクチン接種において大きく遅れをとっていることに言及し、加えて、世界的な大きな脅威になると専門家が指摘している気候変動にも言及した。皆さん、アメリカ国民のみなさん、もし今日そのような同盟関係、つまりU-24が存れば、何千人もの命を救うことができるでしょう。世界には平和を望む人々、非人道的な破壊に苦しんでいる人々がこの世界にいるのです。ロシア軍が我々の国、我々の土地で何をしたのか、1本のビデオを観ていただきたい。私たちはこれをやめさせなくてなりません。他国を服従させようとする侵略者を防ぎ、その意図を打ち壊さなければならないのです。 このビデオをぜひご覧ください。 映像は生々しく、見るに堪えない。子どもたちが殺され、負傷している様子が映っている。ロシア軍は国際法に違反し、民間人地域を標的にする攻撃を増やしている。[ここから先は英語で]最後に、要約します。今日、国家のリーダーは一国のリーダーであるだけでは不十分です。世界のリーダーであることが必要なのです。世界のリーダーというのは、平和のリーダーであることを意味します。あなたの国の平和は、もはやあなたやあなたの国民だけのことではありません。あなたの隣人たち、強い人たちにかかっているのです。強いというのは弱さを意味しません。強いとは、勇敢で、自国民および世界市民の命のために戦う準備ができていることを意味します。人権のため、自由のため、まっとうに生きる権利のため、そして、時が来た時に死ぬ準備ができていることを意味します。それは誰かが望んでいる時にではありません。隣人に望まれた時の強さなのです。 ゼレンスキーはここで英語に切り替え、自由世界のリーダーを目指すアメリカ大統領バイデンに直接訴えた。ウクライナの人々に起こっていることは、すべての民主主義に影響を及ぼすとゼレンスキーは述べている。 [英語で]今、ウクライナの人々はウクライナのためだけでなく、ヨーロッパと世界の価値のために、未来のために戦っています。だからこそ、アメリカ国民は、ウクライナだけでなく、ヨーロッパと世界を助け、地球を生かし、歴史に正義を残すために、援助してくれているのです。もうすぐ私は45歳になります。ですが今日、100人以上の子どもたちの心臓が止まったとき、私の年齢も止まりました。こうした多くの死を止めることができないのであれば、私には生きている意味がありません。我が民、偉大なるウクライナ人のリーダーとして、これが私の課題です。我が国のリーダーとして、バイデン大統領に申し上げます。あなたは貴国のリーダー、偉大なる国のリーダーです。私は、あなたが世界のリーダーであることを望みます。世界のリーダーであるということは、平和のリーダーであるということです。 これは、大統領職は独裁国家から民主主義を守ることことであるとするバイデン大統領に対する、直裁的なメッセージである。ウクライナにさらなる支援をすれば第三次世界大戦を誘発するかもしれないという危惧のゆえに、ウクライナへの援助の増強を拒んできたバイデンへの訴えである。ありがとうございました。[ウクライナ 語で] Glory to Ukraine. ウクライナに栄光あれ。[英語で] Thank you for your support. ご支援ありがとうございます。
2022.03.19
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Milkywayです。お元気ですか? 2022031221世期の今、圧倒的武力で他国を侵略する、という蛮行を世界にみせたプーチン。その姿は我々の想像を超える残虐さだ。国際法を歯牙にも掛けない行為を続けている。彼に対する世界の対応は、そのあまりの異常性に対応できずに右往左往しているように見える。そしてプーチンが精神に異常をきたしているのではないかという分析まで、真剣にしている。常人である世界のリーダーが考え出した経済制裁は、ロシアにとっては大きな打撃となるだろうが、その効果に即効性はない。その一方で、プーチンは日々刻々と、学校、病院、市街地などそこに住む民間人を無差別に攻撃し、日々何十万という悲劇が現出させている。さらに、あろうことか原発や核関連施設までをも攻撃し、核を使うぞという脅しをもかけている。2月25日、BBC「ロシア軍、チェルノブイリ原発を占拠 ウクライナは「生態系災害」の再来を警告」https://www.bbc.com/japanese/605183223月4日、YouTube 「ロシア軍は、4日早朝にヨーロッパ最大のザポロジエ原子力発電所を砲撃した。」https://www.youtube.com/watch?v=Jw9UhaI6gCA3月7日、時事通信「ロシア軍、核研究施設を攻撃か ウクライナ北東部ハリコフ」 https://www.jiji.com/jc/article?k=2022030700145&g=int【プーチンの首に懸賞金】プーチンのあまりの非道ぶりに、とうとうロシア人の大富豪アレックス・コナニキン氏が、プーチン逮捕に懸賞金を懸けた。彼の真意は「1億円 狙いは?投稿の“富豪”に単独取材(2022年3月4日)」https://www.youtube.com/watch?v=4DACBlEgRvM他で分かる。このインタビューの中で彼は、この懸賞金はプーチン暗殺を目指すものだという他者からの誤解を正している。コナニキン氏の目的は「プーチン氏が逮捕され、裁判にかけられ、自身が犯した人道的罪について公平な裁きを受けるべきだと信じている」と語った。私も、コナニキン氏に賛成だ。プーチンは殺されるべきではなく、裁判にかけられ、自身が犯した人道的罪を認識し、悔い改め、そしてその償いをすべきだと思うのだ。そして同時に、プーチンがなぜこのような野蛮な行為に至ったのか、その軌跡も明らかになってほしい。それが、世の権力者への警告になると思うからだ。国際法を犯し、世界中を不安に陥れているプーチンは国際法で裁かれるべきだと私は思う。【プーチンを逮捕し裁判にかけることができる法廷とはどこか?】二つある。一つは国際司法裁判所(ICJ)、もう一つが国際刑事裁判所(ICC)だ。そして、すでにロシアは国際司法裁判所(ICJ)に提訴された。【1. 国際司法裁判所(ICJ)での動き】初回の審理が3月7日にオランダ・ハーグの国際司法裁判所で行われた。2日間の日程だったが、ロシア側が欠席したためこの日で終了した。ロシア側の主張は、ウクライナ東部の親露派武装集団が実効支配する地域で、「集団殺害(ジェノサイド)が行われている」ので軍事作戦を開始したと訴えた。それに対してウクライナは、ロシアの情報について「最も強い言葉で否定する」と強調。逆に、ロシアがウクライナ国民への計画的な集団殺害を行っているとして、ICJに対し、ロシアの軍事作戦の即時停止などの暫定措置をとるよう求めた。CJは暫定措置については「できるだけ早く判断する」としている。この審理については、ロイター の記事を下記に載せる。https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-world-court-idJPKBN2L40ZO[ハーグ 7日 ロイター] - 国際司法裁判所(ICJ)は7日、ロシアの軍事行動停止を求めたウクライナの訴えを受けた審理を開始した。ただ、ロシアがボイコットしたため、同国の法的代理人不在の審理となった。ICJは、ロシアの不参加を遺憾だとした。在オランダのロシア大使館にコメントを求めたが、返答は得られなかった。ロシアのプーチン大統領はこれまで、ロシアの「特別軍事行動」は、ウクライナ東部で「虐げられ、ジェノサイド(大量虐殺)にさらされている(ロシア語を主要または唯一の言語とする)住民を保護するため」に必要だと述べている。一方、ウクライナは、ジェノサイドの主張は事実無根で、侵略を法的に正当化する理由には全くならないと主張している。この訴訟は、両国が署名した1948年の大量虐殺防止に関する条約の解釈が中心となっている。この条約では、署名国間の紛争を解決する場としてICJが指定されている。【2. 国際刑事裁判所(ICC)での動き】もう一つの国際裁判所である「国際刑事裁判所(ICC)」でも、ロシアによるウクライナでの戦争犯罪の捜査を開始した。「国際刑事裁判所(ICC)」は、個人の国際犯罪を裁く常設の国際裁判所である。私はこの「個人」つまりプーチンをターゲットにして捜査ができる裁判所が着手してくれたことを嬉しく思った。もちろんこの侵略はプーチン一人で起きたことではないと思うが、まずは国をターゲットにするよりは、彼とその取り巻きから始めれば、結論が速く出ると思える。詳細は「ニューズウイーク」https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98200.phpが伝えているが、 これによると、 国際刑事裁判所(ICC)は3月2日、ウクライナで戦争犯罪が行われた疑いについて、直ちに捜査を開始すると明らかにした。前例のない数のICC加盟国から要請があり、ウクライナ領土で行われた戦争犯罪、人道に対する罪、集団殺害に関する過去および現在の全ての容疑について、証拠収集を開始するという。【国際刑事裁判所が裁いた主な案件】私が国際刑事裁判所(ICC)に期待しているのは、過去に多くの政権担当者が逮捕され、判決も受けているからだ。その主な例を挙げる。① 2005年7月8日、ジョゼフ・コニーらテロ組織‘神の抵抗軍’幹部にICC逮捕状が発行され、2006年6月1日にICCから要請を受けた国際刑事警察機構(ICPO)が国際手配を行った。② 2007年5月、スーダン・ダルフール案件について、現職の政府閣僚を含む容疑者2名に対して逮捕状が発行された。同案件については2008年7月さらに、ICC検察局が同国のオマル・バシール大統領の逮捕状も請求。③ 2008年8月には、北オセチアをめぐるグルジア事態について、グルジア・ロシア連邦両国政府の協力を得て調査を開始。④ 2009年1月26日、コンゴ民主共和国の案件について公判が開始された。⑤ 2011年2月26日、安保理決議1970に基づいてICC検察官によるリビアに対する捜査が開始。6月27日に当時の指導者ムアンマル・アル=カザフィーの逮捕状を請求国際指名手配を行った。⑥ 2011年11月30日、2010年コートジボワール危機のさなか、人道に対する罪を犯したとしてローラン・バグボ前大統領を逮捕・収監。元首経験者に対しはじめて逮捕状を執行した。⑦ 2012年4月26日、リベリア内戦で人道に対する罪などを犯したとして、リベリアの元大統領チャールズ・テーラーが国連設置法廷史上初の有罪判決を受けた。これらを見ると、国家元首の逮捕、有罪判決は前例としてあり、プーチンへの裁きも十分あり得ると私は思う。まずは、いっときも速くプーチンの身柄を拘束し、即時停戦をすることだ。それをこころから願う。
2022.03.12
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Milkywayです。お元気ですか? 20220305今回のプーチンの武力による侵略目的はなんだろう。地政学的な価値からどうしても欲しかったのだろうとも言われているし、旧ソ連邦を取り戻すというプーチンの野望の一環とも言われている。世界からの経済制裁を受けても、長い目で見ればウクライナを手に入れておけば、十分その見返りは得られると思っているのではないかとの見方もある。プーチンの今回の蛮行が、ウクライナの天然資源のみならず他の資源を欲したものとは断定できない。だが、この機会に、日本ではよく知られていないウクライナの潜在力を知り、この国が日本だけでなく世界の経済や食料輸入国としても大切な国であることを知っておくのも良いと思う。本ブログの前回で、ウクライナの天然資源と工業力、そしてその輸出力を紹介した。今回はその農業資源について、書いておく。まず、気候。ウクライナの気候は、カンザス州とほぼ同じ。夏は涼しくやや乾燥気味、冬は寒くて湿気が多い。カンザス州は農業と牧畜業でよく知られており、合衆国の大文穀倉地帯の一部をなしている。こうした特徴と酷似しているのが、ウクライナである。 本記事のウクライナの農業事情の典拠はState Statistics Service of Ukraine, Ministry of Economy of Ukraine ウクライナ経済省統計局 2021-09-24最終更新日:2021-09-24https://www.trade.gov/country-commercial-guides/ukraine-agricultural-machineryで、それを翻訳した。********************************ウクライナの農業ビジネス部門は、依然として経済の中で最有望な部門である。肥沃な農地は4150万ヘクタール。国土の70%を占め、世界の黒土埋蔵量の約25%もある。ここから生まれる農産物は、ウクライナ最大の輸出産業で、2020年のGDPの約9.3%を生み出している。生産は主に農業企業と個人農家の2つのグループで担われており、前者は45,000の企業で構成されていて、農業総生産のうちの55%を占める。個人農家グループは、平均1.23ヘクタールの土地を耕す400万以上の世帯からなり、農業総生産の45%近くを生み出している。ウクライナの農業は、穀物栽培が主で、全農業生産高の73%を占める。中でもトウモロコシ、小麦、大麦が主要作物である。2013~2017年の5年連続で、ウクライナは年間6000万トン以上の穀物と豆類を収穫。その後2018年と2019年には、生産量をそれぞれ7000万トン、7400万トンと増やした。続く2020年は、経済状況、COVID-19による制約、例年にない気象事情によりウクライナにとって激動の年となり、2020年の穀物総収穫量は6,540万トンと減った。それでも国内市場のニーズの3倍を超える量の収穫は得た。多くの専門家は、収量が大幅に改善されれば、ウクライナの総穀物生産量は1億4000万トンが可能と見積もっている。油料種子は、ウクライナの農作物の中で2番目に重要で、主な油料作物は、ヒマワリ、大豆、菜種。2000年代半ば、未加工のヒマワリ種子に対する輸出関税が実施された後、ウクライナは有数のヒマワリ油産業を発展させ、ヒマワリ油の輸出国として世界第1位となった。ウクライナの輸出は総量が減少する中で、農産物輸出のシェアは高まっている。ウクライナの輸出による収入に占める農業の割合は、2012年の26%から2020年には45%に増加し、222億ドルに達した。農産物輸出の基本は依然として原材料の輸出であり、トウモロコシ、小麦、菜種、大豆などの植物由来の製品である。ひまわり油はトウモロコシに次ぐ輸出品で、58億ドル(全輸出品の7.6%)を占めている。また、家禽類、飼料作物、ジャガイモ、テンサイ、各種果物や野菜も大量に生産されている。農地売買モラトリアム (農地の取引を暫定的に禁止)政策が、ウクライナの潜在的な生産量と実際の生産量のギャップを生んでいた。この政策により、大規模農家の土地リース代がかさみ、それが灌漑や排水への投資への障害となっていた。しかし、2021年7月からの段階的な土地市場の開放により、農家は土地を担保に資金調達ができるようになり、長期的な視点で見れば、設備やインフラへの投資ができるようになった。また、同時に、農地を販売できるよう(個人あたり247エーカーまで)にもなった。ウクライナの農業企業は、2024年からは、24,710エーカーまで購入できるようになる。世界銀行は、土地市場の開放に加え、補助金のターゲティング改善や土地の生産性向上、農業セクターの透明性向上などの施策により、今後数年間で年率2.0%以上のGDP成長率の上乗せが見込まれると推定している。2016年から2017年にかけて、大きな政治的安定、より強い経済、より安定したフリヴナ(国の通貨)などによって、ウクライナの農家が農業機械を含む設備投資を再開することが可能になった。農業機械や機器の輸入は、2017年には2015年に比べて約2.5倍に増加し、2013年の水準に戻った。この年の急増は2018年と2019年には安定し、輸入機械・機器の需要はそれぞれ11%と12%へと減少。2020年には、COVID-19に関連する制約、クレジットや運転資金へのアクセスの制限、オープンランド市場への移行などにより、農業機械・設備の輸入は15〜20%程度減という予想に反して、33%と劇的に減少した。中古農業機械の需要は安定的に推移。エンドユーザーの多くは中堅・中小の農業生産者である。中古農機具の輸入業者は、大量の在庫を持たず、顧客の需要に応じて仕入れを行う方法をとっている。その主な理由は、高価な国内ローンや変動する為替レート、それと需要が変動することである。ビジネスチャンス在ウクライナ商務部は、米国の農業機械・機器メーカーのウクライナでの販売見通しについて、長期的に肯定的な見方をしている。農業機械の需要は、ウクライナのアグリビジネスの健全性に直接結びついているが、農業機械の輸入量は伝統的に多い。ウクライナは世界有数の農作物の生産・輸出国である一方、設備が不足しており、既存の農業機械の多くは老朽化している。ウクライナ農業経済研究所によると、2018年、農地1ヘクタールあたりの固定資産の稼働率は20%だった。生産量の伸びと需要の遅れが予想される中、ウクライナの農業機械・設備の輸入は増加することが予想され、農業機械・設備の運用ニーズは、2025年に200億ドルと推定される。今後続く土地市場の開放と2030年までのウクライナ政府の灌漑排水戦略の実施によって、灌漑排水技術への投資は促進される。また、埋め立てシステムのエンジニアリングに関連する公共調達の機会も生まれるだろう。ちなみに、ウクライナの灌漑インフラ近代化の総コストは40億ドルと推定されている。現在147,000ヘクタールの土地をターゲットにしているシステムの近代化は、2021年から2024年の戦略実施の第2フェーズで取り組まれる予定。近代化の必要性は1億9,400万ドルと見積もられている。1ヘクタールあたりの推定コストは1,200ドル。典型的なポンプステーションは、約140万ドルで、そのうち90万ドルは農家所有のスプリンクラーの電源に必要で、残りの50万ドルはポンプステーションと複数の農家を対象とするパイプネットワークのために必要となる。**************************************ウクライナのその他の農業資源は、Facebookにも紹介されているので、それも付け加えておく。Atrlanticcouncil, 2021年3月4日の “ウクライナは世界を養うUkraine can feed the world”と題した記事である。Facebook:https://www.facebook.com/512445543/posts/10158779344825544/耕地面積はヨーロッパで1位。肥沃な黒土の面積は世界第3位で、世界の25%の量を占める。ヒマワリとヒマワリ油の輸出で世界1位。大麦生産量は世界第2位で、その輸出量は世界第4位。世界第3位のトウモロコシの輸出国。世界第4位のジャガイモ生産国世界第5位のライ麦生産量ミツバチ生産量世界第5位で75,000トン小麦の輸出で世界第8位。鶏卵生産量世界第9位。チーズの輸出で世界第16位。さらに多量の鶏肉の生産国でもある。「ウクライナは6億人の食糧需要を満たすことができる」 と締めくくられている。 ************************************一昨日、ウクライナにある原発プラントがロシアの爆撃を受けた。詳しい被害状況はわかっていないが、爆発が起これば、チェルノブイリの事故の10倍の規模になると言う。そんなことになったら、せっかくのヨーロッパの穀倉地帯が壊滅する。しかも、ヨーロッパ全域に放射能汚染が拡大してしまうことにもなる。プーチンは被爆した土地を欲しくはないだろう。では、彼のウクライナ侵略の目的は何なのか?彼の本当の意図を知りたい。戦争の後の社会は本当に悲惨だ。私は戦後七年も経ってからカンボジアに入ったが、人間が味わう不幸や苦しみは全部あったという気がした。それらを目の当たりにして、胸が痛み食欲が止まり、私は8日間で7キロ痩せた。その時見たことは、今でもはっきり思い出す。ああした不幸はけっして起こってはならない。豊かな資源に恵まれたウクライナ、今後の成長が見込まれ、ヨーロッパのみならず世界に貢献できるはずのウクライナ。プーチンにこれ以上のウクライナに対する蹂躙はさせてはならない。私が今望むこと。それは、彼が、即刻、国際裁判所に訴追され、その過ちを裁かれることである。
2022.03.05
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Milkywayです。お元気ですか? 20220226とうとうロシアのプーチン氏が、ウクライナに侵攻した。世界中からの非難を歯牙にも掛けない蛮行だ。ヨーロッパはじめ民主主義国を敵に回すことや、経済制裁を受けるというリスクにも目をくれない暴挙である。なぜロシアはそれほどまでにウクライナが欲しいのか。多くの専門家たちが多くを語ってくれると思うが、私はここでは、ウクライナ併合でロシアが得るものとして、その天然資源と工業力資源について記しておく。典拠はWorldAtlas 2019年資料である。https://www.worldatlas.com/articles/what-are-the-major-natural-resources-of-ukraine.html まず、石炭。ウクライナの石炭埋蔵量は世界第7位、ヨーロッパ第2位の約340億トンを誇る。石油は1億3,500万トン以上、シェールオイルは37億トンが埋蔵されていると推定されている。天然ガスは2004年の天然ガス埋蔵量は、確認されている国の中で26位。 シェールガス埋蔵量 欧州3位...世界13位...22兆立方メートルである。 【鉱物資源】鉄鉱石は、ウクライナだけでも推定270億トンの鉄鉱石埋蔵量があり、世界の鉄鉱石生産量の6位にランクされている。マンガン鉱石は、ヨーロッパで最大のマンガン鉱石埋蔵量を誇っており、世界のマンガン鉱石生産量のトップ10に入っている。チタン埋蔵量はヨーロッパ最大。チタンの輸出量は世界4位に位置している。ウラン鉱床はヨーロッパ最大。さらに、 ウクライナには黒鉛鉱床が300もあり、その量は10億トン以上、世界の黒鉛の20%に相当する。水銀は30,000トンもあり、世界の第5位に位置し、ウクライナの主要資源でもる。【その他のウクライナの主要資源】上述の他に、Facebook:https://www.facebook.com/512445543/posts/10158779344825544/に非常に分かりやすく整理された情報がでたので、それもご紹介する。WorldAtlasの情報量は膨大すぎて私が見つけられなかったが、Facebook上の資料に記されていることが下記。WorldAtlasの統計資料と重複する部分は省いて、それ以外の天然資源と工業生産力を記す。まず、ウクライナの天然資源は、その総量で世界第4位である。面積はヨーロッパで2番目に大きく、人口は4,000万人以上...ポーランドより多い。ウクライナは重要な工業国でもあり、その天然資源を製品化している。まず鉄鋼生産量...3,240万トンで世界第10位。そしてその鉄輸出量は、世界第3位である。アンモニアの生産量は欧州1位。粘土の輸出は世界4位。天然ガスパイプラインシステムは、欧州で2番目を誇り、世界で4番目である。 ロケーターとロケーティング機器の生産で、アメリカ、フランスに次いで世界第3位。世界第4位のロケットランチャーメーカー。防衛産業製品の輸出で世界第9位。 【原子力発電】私が注目しているのは、その原子力発電資源である。ウクライナは、原子力発電所の設備容量で欧州第3位、世界第8位。原子力発電所用タービン輸出国で、世界第4位の位置にある。 【天然資源と工業力、それを輸出する手段も持っているウクライナ】多くの人口を抱え、天然資源と工業力をもつウクライナ。さらに、その人流と物流を担保する鉄道網の長さは21,700 km。ヨーロッパで3位、世界で11位に位置している。これだけ並べただけでも、その大きな価値がわかるウクライナなのである。Facebookに資料を載せた人は「なぜウクライナ問題が世界にとっても重要なのか?(WHY DOES UKRAINE MATTER? )」と問いを発し、上述のような多くの統計数字を提示した後、「だからこそ、その独立性は他の国にとっても重要なのです(That’s why its independence is important to the rest of the world.)」と述べている。その人の言葉を、そのままここに引用しておく。次回は、日本の食糧事情にも影響がでると注目されている小麦も含めて、ウクライナの農業力について記そうと思う。
2022.02.26
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