24階のミミック

24階のミミック

2012.06.03
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 毎年、近くの植物園でおこなわれているホタルの鑑賞会。引っ越してきて10年近くにもなるのに、一度もいったことがなかった。


 けど、日曜日はパパが仕事で、休日にあまり外に出たがらない人がいないことだし、颯ちゃんも「ぼくホタルみたい」と言い出したので、ご飯を早めにすませて行ってみようと思い立った。

 7時半からの鑑賞会にあわせ、ご飯を早くすませて3人で手をつないででかけた。
 場所もいまいちよくわからなかったのだけど、検討をつけていた場所にむかうと同じ目的と思しき人がたくさんそちらにむかって歩いていたので、すぐにわかった。

 初めてだったのでこんなに人が来るとは知らなかったのだけど、現地は結構な行列。列にならんで、暗い植物園の道で待つこと20分、ようやく園の中に入れた。

 ゲートを入ると、右手に回り込む細い道があり、暗くてよくわからないものの右側は小さな小川のある藪になっていて、左手奥には池があるみたいだった。ときどき、藪の中や上に緑色の光を放つホタルがつうう~と飛んで、「いたいた!」などと子どもたちがはしゃぐ。ふふ、ホタルだ、いたなぁなどと私も普通に思っていたのだが。
 それはまだ全然序の口だった。この鑑賞会の真打はこれから登場だったのだ。

 人渋滞のまま、ちらほら現れるホタルにいちいちはしゃぎながらじりじりと進んでいくと、左の潅木の間を縫って、少し離れた奥の崖のほうにたくさんの光がついたり消えたりしているのが見える。


 潅木林がきれ、崖があらわになったとき、思わず感動の声が行列の中におこる。
 10メートルほどの崖に木がドームのように覆いかぶさった、行き止まりの池の上に、何百というホタルの乱舞。池の表面から木の一番上のあたりまで、すごく高いところまで光りながら飛び回る緑の光。
 呼吸をするかのように、いっせいに光っては消え、消えては光り、つうぅと闇の中を光のすじを引いて乱舞するホタル。

 私も今までホタルを自然の中でみたり、わざわざ鑑賞会にでかけて行ったりしたことがあったけれど、これほどすごい数のホタルをみたことは一度もない。
 まるで、生きているクリスマスツリーみたい。でも、人工的なまぶしい光ではなくて、微妙に強くなったり弱くなったりするやさしい光。近くでみると緑なのに離れると白い光が、ついたり消えたりしながら円を描くように飛び交う様は、まさに幻想的。その美しさはことばでは言い表せない‥‥。

 みんな魂を抜かれたように立ち止まって見続けてしまい、渋滞がおこってしまうので、係員に肩をたたかれて無理やり一番前を交替させられている。私たちも、ようやく前にきたけれど10秒くらいみたら交替になり、後ろを振り返りながら順路に戻った。

 その場所が一番すごいところだったのだけど、その後も川にそって続く遊歩道を歩いていくあいだ、今度はすぐ近くにホタルがたくさん現れてくれ、これまたすばらしい体験ができた。
 右手の藪の中には多分川があって、ホタルがふわりふわりと飛んでいる。数はさきほどではないけれど、それでも視界に10くらいはとんでいて、中には飛びながら近づいてきたり、歩道のわきの木の葉に止まったりするので、子どもたちは大喜び。
 ここまでくると人はあまりいなくて、空いているのでのんびりホタルと遊べた。

 子どもたちが暗い中をホタルにむかって手をのばしている間に、私ものんびり歩いていたら、ふっと歩道におおいかぶさっている木の枝、上のほうにホタルがたくさんいるのが目にはいった。

 緑の雪みたいに、いくつものホタルが手をのばした先に光りながら次々と降って来るのだった。

 なんてきれいなんだろう~。
 きれいなんてありきたりの言葉しかでてこないのが悔しいくらい。
 えもいわれない。
 こんな言葉がふさわしい光景なのかも。


 毎年、これを知らずにすごしてきたのかと思うとこの10年がなんともったいなかったことか。

 あまりに美しすぎて、子どもたちも私も、帰るに帰れず。
 遊歩道はすぐに終わってしまったけれど、もう一度外から見るために帰り道と反対方向に向かって歩いていき、ぐるっと園をまわってさきほどの崖の上に上がり、金網の上から木の間をぬって池をみおろしてみた。

 何度見ても見飽きることがない。
 そうして外側から見ていると、園の中からはぐれたホタルがつううと飛んできて、すぐそばの木にとまったりして、また面白い。

 普段と違って真っ暗な園の外側の細道はちょっとこわい。園の中とちがって反対側は見物の人もすくなく、パパもいないし3人で手をつないで歩いていても森の中の知らない道を通るのがこわくて、あげくの果てには道に迷ってしまい、かなり戻って警備員さんにきいて知らない道を降りてきたら、また園の入口にきてしまった。

 時刻は8時半を過ぎていたけれど、せっかく入口まできたのだし、抜けていっても帰り道だしと、もう一度園を通って帰ることにした。
 再び夢のようなホタルを堪能し、最後、園を抜けるときにホタルがついてきて、出口の木の葉にとまり、さよならするように光っていた。

 3人ともあまりの感動にぼうっと歩いていたら、何人もの警備員さんたちに声をかけられた。
 「いっぱい見られた?」「今年はよかったでしょう~?」

 聞けば、今年は特別よかったのだという。
 ここ数年、「ホタルどこにいるんだ~?」って探すほどちらほらとしか見えなかったらしく、今年は見る価値があった、本当に大当たりでよかったねぇ、と警備員さんたちが口をそろえる。

 へええ~、毎年こうじゃなかったんだ。
 でもとにかく、初めての年でこんなにすごいものが見られてよかった。
 以前、テレビで見たことのあるインドネシアのホタルが乱舞する木みたいだった。

 外国までいかなくても、ここで見られるんだ。
 初めてだから、余計に感動したのかもしれないけれど‥。
 また来年もきたい。パパもつれてきてあげたいと思いました。

 暗闇の中で、係の人にもらった紙を、家で見てみた。
 ホタルの育成のスケジュールと、ホタルについての解説が書かれていた。

 ここのホタルは1年かけて卵から育てられ、一年に一度のこの鑑賞会までに成虫に育てられ、そしてこの3日間にあわせて放される。
 成虫でいられる期間はたった2週間。きれいな水、ととのえられた環境で新しい世代に交替し、また一年、ホタルは来年の鑑賞会にむけて水の中で静かに時を過ごす。

 あの光がたった二週間で消えてしまうものだと知れば、ますますはかなく幻想的に思えてやまない。命短い生き物はたくさんいるけれど、あれほど美しく胸をうつ光を見たらそうした生き物たちの命に思いをよせられる。子どもたちも同じように思ったようで、寝る前に少し命のことなんかを語ったりしました。 

 今年のホタルは特別だったとみんな言うけれど。
 来年もまた、見に行ってみたいものです。
 日曜日だというのに、帰ってきたら9時過ぎてました。それも今日は特別だー、えへへ‥





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Last updated  2012.06.06 18:11:42


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