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みらい0614さんComments
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その年の10月のなかばすぎ、ひとりの婦人が療養所を訪ねて「夢二がお世話になりました。そのお礼になんでもおてつだいしたいのですが」と、正木院長にもうしでる。それから3カ月ちかくのあいだ、この女性は、患者たちが使ってよごれた、寝具のしたてなおしなど、だれもが好んでしようとはせぬ仕事をしつづけた。かの女がたち去ってからはじめて、病院の職員たちは、この人が故人のかつての妻の岸たまき(他万喜)であると、院長から教えられたという。夢二入院のことは、他万喜は洩れ聞いてはいたが、かつての夫の死は、新聞記事でようやく知ったのであった。