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2005.01.20
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カテゴリ: 日替わり日記



僕にとっては 南こうせつの「神田川」 や、さだまさしの「無縁坂」と「檸檬」がすぐに思いつく。
ちょっと「檸檬」について書いてみよう。


    「檸檬」      さだまさし

 あの日湯島聖堂の白い石の階段に腰掛けて
 君は陽だまりの中へ盗んだ檸檬細い手でかざす

 それをしばらく見つめたあとで きれいねと言ったあとでかじる
 指のすきまから青い空に カナリヤ色の風が舞う

 食べかけの檸檬ひじり橋から放る


 川面に波紋の広がり数えたあと 小さなため息まじりに振り返り
 捨て去る時にはこうしてできるだけ 遠くへ投げ上げるものよ


この歌の“檸檬”からはそう、お茶の水の丸善での出来事を書いた、梶井基次郎の「檸檬」を思い起こす人もいることだろう。
梶井の「檸檬」は、お茶の水駅裏通りの画材店丸善の画集のうえに“得体の知れない塊「檸檬」”を置いてくるというこころの世界を書いている。
さだの「檸檬」は、まるでその画集の上から檸檬を持ってきたかのように書かれている。その場にいたわけでもないのに、さだが檸檬を聖橋から神田川に向かって放るという情景が鮮やかに脳裏に映える。

僕は青春時代に、本郷界隈に住んでいたことは前にも書いた。
国電から本郷への最寄り駅はお茶の水。
普通は、スクランブル交差点のあるお茶の水橋を渡って、順天堂病院の前を通って本郷通りへと歩いたのだが、事情があって遠回りしたいときには聖橋を渡った。いつもの道を歩くと、バッタリと知人に出会う確率が高かったからだ。
聖橋付近は都会にしては静かで、近くには小公園や「湯島聖堂」など格好の散歩コースがあった。
もちろん、ひとりで歩くわけではないから、人目に触れにくい場所が欲しかった。
夕暮れの“湯島聖堂の白い石の階段”。はじめて、やわらかい異性のくちびるを感じた遠い記憶もその付近に微かに残っている。

たぶん、さだまさし自身の体験が下敷きになって書かれた詞なんだろうが、梶井の小説もどこかにかすめたのかもしれない。

芥川龍之介の掌編「蜜柑」も、投げるという行為がひとつの情景を描いているが、さだまさしはこの物語も読んでいたのだろうか。
やや記憶があいまいだが、そのほのぼのとした情景の一節を紹介してみよう。


娘は何を思ったか列車がトンネルを通過している最中に窓を開ける。途端に煤煙がなだれこんできて「私」はむせかえった。トンネルを抜けると踏切の柵の向こうに三人の男の子供が声をはりあげていた。娘はそれに向かって懐に持っていた蜜柑を五、六個放り投げた。
奉公に出る姉を見送りにきた弟たちなのである。
「私」はそのときの蜜柑の色の鮮やかさをはっきり覚えている。それまでの疲労と倦怠も一時的に忘れ朗らかな気持ちになった。

というようなものだ。投げた蜜柑、そして檸檬。この短い文や詞のなかに、放たれた物体の放物線の先にある未来をも予感させられる。






ほん
















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Last updated  2005.02.10 10:20:15
コメント(10) | コメントを書く


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※コメントに関するよくある質問は、 こちら をご確認ください。


Re:投げあげた下駄 その先にある未来(01/20)  
苺1500  さん
うちのレモンより色がいい。

拾った下駄 カランコロンと きのうまで
(2005.01.20 17:35:02)

神田川♪の方は  
ポンボ  さん
リバイバルしたから、こどもも唄っていますよ。
お茶の水界隈は、私の幼少期(住んでいた訳ではなくて、よく遊びに行ったので)そして、夫とのデートの場所でした。本屋さんがたくさんあって、カルタやさんとか、紙屋さんとか、古い名曲喫茶とか、あななつかしや。夫にとっては今も勤務地ですけどね。あまり行かなくなりました。年に2回ぐらい。 (2005.01.20 18:59:48)

Re:投げあげた下駄 その先にある未来(01/20)  
さだまさしの「檸檬」

 高校時代、同級生が片思いをしていた時、彼が好きだからと買ったレコードがそれでした。

 私がキュンとなる曲は・・・
「順子」かな。
 さて、これからの人生でキュンとなるような恋と重なる曲に出会うことがあるかしら・・・(笑)
(2005.01.20 21:40:43)

小学生の頃  
レモンティーを飲むのが楽しみだった記憶がある。
いつのまにか、そんな嗜好の人がまばらになって
来たように感じる。会社で後輩が、ミルクティーだと
言い出した時、たじろいだ。最近は、ウーロン茶
ばかりを飲みだしてついぞ紅茶を飲むことがない。

そういえば、レモンともさっぱり縁がなくなった。
(2005.01.21 06:50:20)

Re[1]:投げあげた下駄 その先にある未来(01/20)  
msk222  さん
苺1500さん
>うちのレモンより色がいい。

>拾った下駄 カランコロンと きのうまで
-----
あっ、その下駄の片方は玉川上水に転がっていたような…。
(2005.01.21 18:56:15)

Re:神田川♪の方は(01/20)  
msk222  さん
ポンボさん
>リバイバルしたから、こどもも唄っていますよ。
>お茶の水界隈は、私の幼少期(住んでいた訳ではなくて、よく遊びに行ったので)そして、夫とのデートの場所でした。本屋さんがたくさんあって、カルタやさんとか、紙屋さんとか、古い名曲喫茶とか、あななつかしや。夫にとっては今も勤務地ですけどね。あまり行かなくなりました。年に2回ぐらい。
-----
「田園」で待ち合わせて、神田方面に歩いたのですね。そこから、九段通りを右に折れて……。
(2005.01.21 18:58:48)

Re[1]:投げあげた下駄 その先にある未来(01/20)  
msk222  さん
やまじゆみこさん
>さだまさしの「檸檬」

> 高校時代、同級生が片思いをしていた時、彼が好きだからと買ったレコードがそれでした。

同級生「が」ですか?「と」ではない?

> 私がキュンとなる曲は・・・
>「順子」かな。

永渕剛は、たしか南こうせつのオールナイトニッポンから出始めたような…。

> さて、これからの人生でキュンとなるような恋と重なる曲に出会うことがあるかしら・・・(笑)
-----
それはもう、つくることですね。
(2005.01.21 19:02:10)

Re:小学生の頃(01/20)  
msk222  さん
シャルドネ☆さん
>レモンティーを飲むのが楽しみだった記憶がある。
>いつのまにか、そんな嗜好の人がまばらになって
>来たように感じる。会社で後輩が、ミルクティーだと
>言い出した時、たじろいだ。最近は、ウーロン茶
>ばかりを飲みだしてついぞ紅茶を飲むことがない。

>そういえば、レモンともさっぱり縁がなくなった。
-----
シャルドネさんから、叙情的なコメントをいただけるとは思わなかった。
ありがとうございます。
(2005.01.21 19:03:43)

Re:投げあげた下駄 その先にある未来(01/20)  
志穂音  さん
知ってます!知ってます!大好きです、その歌。
♪捨て去るときにはこうしてできるだけ遠くへ投げ捨てるものよ~というところが好きなわたしです。
確か原調はc-mollだったなあ?
さだまさしの針金のような声で顔をひきつって歌うところがいいですね。このシリーズでいえば歳時記「ダイアリー」も好き。あとなんだっけ?
♪君は信号が待ち切れなかっただけ。たとえば心変わりにしても。銀杏並木の舞い散る交差点でたった今思い出と出会った~って言う歌。何だか悲しい歌ばっかりよね
(2005.01.21 19:55:10)

田園は  
ポンボ  さん
いかにも名曲喫茶...あまり好きではありませんでした。むしろ裏路地にあったラドリオ、もう一つありましたよね、近くに。あぁいう雰囲気の方が好き。 (2005.01.22 11:39:18)

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