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さて、必死の思いで発売に漕ぎ着けたムコスタ点眼液ですが、実際に出来上がってきた製品は成分が安定しにくいために一回毎の使いきりタイプのみで、液は濃く白濁し点眼すると強い苦味を感じる、という典型的な、 「良薬口に苦し」のややハードボイルドな使いにくい目薬 でした。 また、ドライアイの患者様には高齢者の方が多いのですが、この1回1回使いきりのユニットドーズの目薬は、「開封が難しい」、「小さいので点しにくい」などの大きな欠点がありました。 また、目薬が白色の濁り液なので、点眼した後にしばらく目がかすんで見えにくくなる、点した後に強い苦味が来る、というのも大きな欠点でした。 このような弱点から、発売後のムコスタ点眼液は臨床の現場では「かなり処方しにくい」、「処方した後に患者様からのクレームが出やすい」、気難しい薬となってしまいました。 製造販売元の大塚製薬では発売前のマーケティング調査で、「使いきりタイプで濁り液なので、それにより普通のフルボトルタイプの無色の点眼液だった場合に較べて売上が1割程度減る。」というデータが出ていたということなのですが、私は初めてムコ点の見本を見た瞬間に「これは実力の3分の1売れればいいところだろうな。」と直感したくらいだったので、やはり発売前のマーケティングに甘さがあったのは事実ではないか?と個人的には考えています。 そしてこの厳しい状況に輪をかけたのが、ライバルの参天製薬のジクアス点眼液の「トータルでの圧倒的な完成度の高さ」でした。 参天製薬は「クスリの成分を溶かして目薬に仕立て上げる能力」では世界一と言われており、またその眼科薬メーカーとしての長い歴史から、「使いやすくて点しやすい」目薬を作ることに長けています。 具体的には参天製薬の目薬というのは、 瓶の真ん中にくぼみ(ディンプル)があって、高齢者等指の力が弱い方でも楽に確実に点眼しやすい工夫がされています。 また目薬に含まれる防腐剤というのは、角膜(黒目)や目の周りの皮膚の荒れを引き起こすことがあるのですが、参天製薬はこの防腐剤に関する 特許 をたくさん持っており、他社よりも目に優しくて安全な目薬を作ることが出来ます。 つまりジクアスは「点眼薬としての総合力が抜群」で、しかも販売でも既に圧倒的に先行していたのです。 発売が遅れ、しかも製品としての総合的な洗練度もガクッと落ちるムコスタ点眼液、その戦いに数多くの苦難が待ち受けていることは初めから明らかだった、残酷な言い方をすれば「最初から勝負は見えていた」ともいえるんですね。(続く)
2013.03.11
さて、「日本発、世界初」の2つのドライアイ新薬、ジクアス点眼液とムコスタ点眼液が発売されて1年以上が経過しました。 この2剤にはそれぞれに従来型のドライアイ治療薬であるヒアルロン酸ナトリウム(代表は参天製薬のヒアレイン点眼液)を間違いなく超える長所があるわけですが、なかでも大塚製薬が社運を賭けて開発した「ムコスタ点眼液」の出来の良さ・薬効の高さは際立っています。 ところがクスリの出来の良さとは裏腹に売上はズタボロに低迷し、大塚製薬の担当MRの方々はプレッシャーから自社のベストセラー胃薬の「ムコスタ錠」を片時も手放せない、青息吐息の日々であるとの噂も聞いています。(笑) 今日からシリーズで、この「ムコスタ点眼液」の素晴らしさ、そしてそれなのにどうしてこんなに売れないのかについて、様々な角度から考えてみたいと思います。 ムコスタ点眼液の悲劇、その最大の理由は「発売が遅れたこと」でした。ムコスタは後でも書きますが元々は胃薬でした。ところが大塚製薬はその成分を溶かして目薬に仕立て上げるのに苦しみ抜き、実際の発売は遅れに遅れました。それは一部で、 「出る出る詐欺」 とまで言われるほどでした。 そしてムコスタ点眼液の発売が遅れる一方で、ライバルの参天製薬からは、 世界初のP2Y2受容体作動薬で、目の水分分泌・ムチン分泌を促進する、ジクアス点眼液が先行して発売されました。 このジクアス点眼液は、それまでのドライアイの標準治療薬であったヒアレイン点眼液を確実に着実に上回る薬効を持っており、この分野では待ちに待たれていた15年ぶりの大型新薬だったこともあって、あっという間にベストセラーとなりました。 また製造販売元の参天製薬は「眼科一筋」の製薬会社で、眼科分野では日本でナンバーワンの製薬会社であり、MR(医薬品の情報を医師に伝える営業マン)さんの数が多くて宣伝体勢が充実していたこともそれを後押しする形となりました。 つまりムコスタ点眼液は、発売前から強力なライバルに圧倒的に先行されるという過酷な状況にあったわけです。しかし、ムコスタ点眼液の悲劇はこれだけに留まりませんでした。(続く)
2013.03.07
さて当院では、最新型の「角膜形状・屈折力解析装置」である、日本の二デック社のOPD-ScanIII(オーピーディースキャン3)を今月新規購入しました。この機械の導入は、愛媛県内では愛媛大学医学部附属病院眼科に続いて2件目となります。 この機械が具体的にどのように役立つのかというと、角膜移植後や円錐角膜といった角膜(黒目)の病気の患者様の状態把握や今後の診療方針の決定に抜群の力を発揮します。 また最近では近視矯正のためにレーシック手術を受けられる方が激増していますが、このレーシック、施行されて数年も経つと傷跡は顕微鏡でもほとんど見えなくなります。しかも患者様の中には術後の状態が快適で違和感が全く無いために、自分が元々は近視であったことやそのために頑張って手術を受けたことなどをきれいさっぱり全てケロッと忘れてしまっている方まで実際にいらっしゃいます。(笑) 傷跡は見えない、患者様は自分で覚えていないでは、眼科専門医としては様々な意味で診断が狂う可能性があるので大変なのですが、このOPD-ScanIIIがあればもう心配はありません。レーシック術後眼を一発で判定してくれます。 また白内障のある患者様は見え方の質が色々な意味で低下しているのですが、このOPD-ScanIIIがあれば、 患者様の現在の見え方をシュミレーションで表示することも出来ます。実際に患者様に聞いてみても「うん、言われてみるとそんな見え方です。」と割と精度が高いようです。 このようにOPD-ScanIIIは、多彩な機能、簡単な撮影法、分かりやすい出力画面を兼ね備えた3拍子揃った素晴らしいマシンです。買った私が言うのもなんですが、未導入の全国の眼科開業医の先生方は是非一度実際にデモして戴ければと思います。驚くほど頼りがいがありますし、クリニックに1台あると非常に心強い機械です。 名機OPD-ScanIIIを得て、にしわき眼科クリニックはまた一歩パワーアップしました。これからも適切な設備投資を欠かさず、全国レベルの眼科医療をここ愛媛県八幡浜市で提供し続けることが出来るよう、スタッフ一同精進し続けていく所存です。
2013.03.04
さて第6回東京眼科アカデミーもいよいよ最後のプログラムとなりました。 加齢黄班変性症(AMD)はこのブログでも何度も取り上げていますが、近年日本人に急増している疾患です。この講演では加齢黄班変性の日本の第一人者の先生からその最新の話題を聞くことができました。以下、個人的なメモ書きです。 萎縮型AMDは有効な治療法が無いが欧米では凄く多い(AMDの85%)。現在10以上のクスリがphase1~2の治験中であり、今後新薬が出てくる可能性がある。 最新の治療法のまとめ。 白内障手術後にAMDの発症率が1.7~3.8倍に増加したというデータ(ただしやや古い)があり、注意が必要なこと。 クラシック型AMDと黄班下血腫は出来る限り早期の治療が望ましいこと。 AMDはどうやら従来考えられていた以上に遺伝要因が強い疾患であること、具体的に言うと例えばARM2遺伝子というのを持っていると、発症リスクが1.5~5倍になることなど、非常に勉強になりました。(続く)
2013.02.24
さて第6回東京眼科アカデミーは2日目となりました。この日、非常に勉強になったのは、ドライアイの新しい治療戦略というプログラムでした。 実はドライアイの治療というのは日米でそのコンセプトに大きな差があります。日本では涙の安定性を重視してヒアルロン酸点眼液(商品名だとヒアレインやティアバランスなど)を第一に処方してきたのですが、アメリカではドライアイ=炎症という考え方があり、シクロスポリンという免疫抑制剤の点眼液を第一に処方してきたのです。 この考え方には両者にそれぞれなるほどという部分があり、ドライアイ業界では長年その治療法を巡って論争があったのですが、最近になって日本では世界に先駆けてドライアイ新薬が使えるようになったことから、その治療法は昔の論争のレベルを軽く超え劇的な進化を遂げています。 具体的にはジクアホソル(商品名ジクアス点眼液)とレバミピド(商品名ムコスタ点眼液)という2つの新薬があるのですが、どちらも旧来のドライアイ治療薬を圧倒的に上回る薬効を持っています。 そしてドライアイの病態に応じて、患者様一人ひとりにオーダーメード感覚でキメの細かい治療を出来るようになってきています。 今回のプログラムではそのドライアイの最新の治療法について深く学ぶことが出来て大変勉強になりました。(続く)
2013.02.20
さて今日も第6回東京眼科アカデミー参戦記の続きです。 次のセクションは「緑内障診療の進め方」という、日本の緑内障診療の第一人者の先生による特別講演でした。 この講演では緑内障診察で大切なことが豊富なデータ・論文と共に示され、抜群に分かりやすい上に内容が深くて感嘆しました。以下に勉強になったことを個人的なメモとして残しておきます。眼科専門医向けのややマニアックな内容となりますことを御了承下さい。 緑内障は慢性疾患で何十年も患者様を診ないといけないので、常に「基本に忠実に診ること」、目の中の水の出口である隅角(ぐうかく)を必ず診ることが大切であることが強調されました。特に隅角検査については、見ないと分からないぶどう膜炎や続発緑内障、外傷による隅角解離などがあるので必須であることを繰り返し述べられていました。 また最近では緑内障の目薬は新薬や配合薬の発売で百花繚乱の状態であるものの、実質はPG、β、CAI、α2の4択であること、PGが入っているとα1(デタントール)はほとんど効果が無いので注意が必要なこと、 新薬のアドレナリンα2受容体作動薬のアイファガンは、他のどのクスリにも追加できる良さがあること、ただし、その追加の効果は先生のデータでは107例107眼で平均0.5mmHgの下降に過ぎず、やってみると思ったほどでもなかった、ただし中には凄く効く人もいたこと、「眠ったまま起きなくなった子が実際にいた」ことから2歳未満には禁忌であること、副作用として眠気やめまいが出る人はどうしてもいること、併用注意にアルコールがあるがまあ大丈夫でしょう、など細かいノウハウが凄く勉強になりました。 また現在緑内障治療の第一選択薬であるプロスタグランジン(PG)関連薬の副作用の一覧表も滅茶苦茶勉強になりました。 ここで私なりに各PG薬の長所をまとめると、 ラタノプロスト(キサラタン)は、最初に出た薬で非常にバランスが良い トラボプラスト(トラバタンズ)は、効き目が他のPGより長い可能性があり、また防腐剤に工夫が凝らされているのが良い ビマトプロスト(ルミガン)は、副作用が多いがとにかく効き目が強くて眼圧がガツンと良く下がる タフルプロスト(タプロス)は日本の参天製薬の自社開発品で、日本人の瞳を見つめて作られた良さがある、また全体に副作用が少なく防腐剤の濃度も極めて低い(0.001%) となります。 ここで最初の副作用の表の話に戻ると、最近DUES(デューズ)といって、目の上の皮膚が奥に落ち窪んでしまう副作用が割と問題になっているのですが、PG関連薬の中で最初に発売されたラタノプロスト(キサラタン)ではこのDUESがほとんど無いという話が印象に残りました。PG関連薬では今でも一番古いラタノプロストがシェアナンバーワンなのですが、それはやっぱりクスリとしてのバランスが非常に良いということなんだろうなあ、と納得しました。(続く)
2013.02.12
さて次に勉強になったのは、「細隙灯顕微鏡(さいげきとうけんびきょう:皆様が眼科の外来を受診して顔を乗せる顕微鏡のことです)所見から考えるぶどう炎の鑑別診断」というプログラムでした。 このぶどう膜炎というのは、 「目の中に炎症を起こす病気」の総称で、皆様にはあまり馴染みがない名前でしょうが、実はその患者様の総数は膨大です。 そして「ぶどう膜炎」と一括りにはしているものの、実際にはその中に細かく言うと数百もの病気があると言われており、このぶどう膜炎の診断・治療は良く「推理小説」に例えられるほど難しく複雑です。 今回のプログラムでは、このぶどう膜炎の中でどの病気が多いかの最新のランキングが示されました。それによると、1位のサルコイドーシス、2位の原田病は不変ですが、3位には急性前部ぶどう膜炎(AAU)が入りました。以前にはベーチェット病がトップ3の常連だったのですが、この数年で減り今回も6位という結果になりました。画期的な新薬が開発されたこともありますが、どうも患者様自体が減っているような印象もあります。その理由は良く分かりませんが。 今回のプログラムは日本のぶどう膜炎治療の第一人者の先生によるものでしたが、本当に素晴らしい内容でした。というのは、 外来で診てすぐ分かる顕微鏡所見だけに絞って、良くある病気に付いて「分かりやすくかつ深く」教えて頂けたからです。その内のいくつかを見ておきましょう。 ぶどう膜炎では角膜後面沈着物(KP)というものが出てくるのですが、病気によってその性状には差があります。 原因疾患1位のサルコイドーシスでは、 このように豚の脂のようなベトッとしたKPが出ます。 5位のヘルペス性虹彩炎では、 KPが「整然とした配列」をしているのが特徴です。 9位のポスナー・シュロスマン症候群では、 サルコイドーシスに似ているものの、ちょっと「少なくて薄い」のが特徴です。 25位のフックスでは、 小さくて範囲が広いのが特徴です。 また炎症細胞が眼の表面の下側に貯まる、前房蓄膿(ぜんぼうちくのう)というものがあるのですが、 3位の急性前部ぶどう膜炎ではそれが「山盛り」になり、6位のベーチェット病では「サラサラで水平」になるなど、日常良く出会うぶどう膜炎について非常に良い勉強になりました。 そして、 ぶどう膜炎ではすぐに鑑別のための血液検査に進みがちだが、そうではなくスリット(外来顕微鏡)所見で病気を絞っていくことがまず大切、という講師の先生のメッセージが深く心に残りました。(続く)
2013.02.07
目のかゆーい、花粉症によるアレルギー性結膜炎。 その原因のダントツの1位であるスギ花粉 の襲来の時期が今年も近づいてきました。 予測によると今年は花粉が多そうです。東京などの首都圏は軒並み昨年の2倍以上、私のクリニックのある四国でも昨年の50%増し近くは飛びそうです。また今年は中国から猛毒の大気汚染物質が西日本を中心に来襲しそうで、その影響も出そうです。 さてこのアレルギー性結膜炎の治療では副作用が少ない「抗アレルギー点眼薬」が第一選択なのですが、その中にはたくさんの目薬があります。 現在治療の主流になっているのは、即効性があって効き目を実感しやすい「ヒスタミンH1拮抗薬」なのですが、この中にはザジデン、リボスチン、パタノールの3種類があります。この中でザジデンは最近はドラッグストアでも買える様になりましたが、この目薬はpHが酸性でかなりしみるという欠点があります。 ただし、市販薬の中ではこのザジデン点眼薬のみがかゆみに即効性を持つ抗ヒスタミン作用のある「ヒスタミンH1受容体拮抗薬」であり、間違いなく「市販薬最強」です。「病院が開いていないのにどうしても目が痒くてたまらない」と言う時には迷わずこのザジデンを買って下さい。というのは、ザジデン以外の市販のアレルギー用の目薬は「細胞膜安定化作用薬」といって、即効性が望めないお薬だからです。 ただ、眼科に来て頂ければもちろんザジデンよりも更に総合力に優れた目薬を処方できます。現在アレルギー点眼剤で売上ナンバーワンのパタノール点眼液はpHが中性で点眼しやすくまた効果も抜群ですし、 リボスチン点眼液も成分変更で以前より点しやすさが改善され、更に良い目薬になっています。 またこれらの目薬で症状が改善しない場合にも低濃度のステロイドの点眼液や、ステロイドの点鼻薬、効果が高く眠気等の副作用も少ない新世代の内服のアレルギー剤などの多彩なお薬を、患者様の症状に合わせてオーダーメード感覚で処方することが可能です。 特に上記の点鼻ステロイドは、鼻だけではなく目にも効いて一石二鳥です。鼻の中のヒスタミンなどの炎症性メディエーターの減少により、鼻-眼反射(naso-ocular reflex)が減ることによって目にも効くと言われていますが、本当に効果が高いです。 我々眼科専門医は、それぞれの患者様に合わせて最適な眼科医療を提供できるように日々勉強を続けています。、皆様も目のかゆみがひどい時には我慢せず、是非気軽に近くの眼科専門医を受診してくださいね。
2013.02.04
前回までで日本の眼科医療のレベルの高さ、それを保障している眼科専門医制度の厳格さを説明してきましたが、一旦専門医となった後も各個人が必死に研鑽を積まなければならないことは言うまでもありません。 特に私のように都会から遠く離れた地方都市で更に一人で開業している場合は、学会に参加できる機会が限られ、最新知識を得るチャンスが少なくなりがちなので尚更です。 眼科専門医であり続けるためには、前回の日記で書いたように5年間で100単位、1年間では20単位を取ればよいわけですが、私は個人的に「普通の眼科専門医の3倍は勉強しよう。」と考えており、年間最低60単位の取得を目標としています。また全ての学会・勉強会では常に一番前の席に座り集中して学び、もしも疑問点があればすぐに講師の先生に質問もするようにしています。 ちなみにこの1年では、 合計78ポイントを獲得し、しっかりと目標を達成しました。今年も更に少しでも上積み出来るように頑張ろうと思っています。 ただ地方在住の私がこのように全国を飛び回って勉強し続けるには、どうしてもクリニックを留守にせざるを得ないこともあります。大切な患者様にご迷惑をかけることを心苦しく思っていますが、私が常に極限まで学び成長を続けること、それが結局八幡浜地域の皆様の目の健康を守り続けるために一番大切なことだと確信していますので、どうか御了承下さい。
2013.01.20
今日は前回の日記の続きです。現在の日本では各科毎にそれぞれ独自の専門医制度が設けられています。眼科にも当然専門医制度はあり私ももちろんその専門医なわけですが、実は前回述べた通り眼科の専門医制度は他科に較べて非常に厳格なものとなっています。 これは各科の専門医試験の合格率を比較したものですが、眼科専門医は過去3年間の平均で62.2%となっています。耳鼻科の70.3%、皮膚科の76.8%、外科の81.9%、産婦人科の89.2%などと較べて際立って低いものとなっています。 眼科専門医になるには、まず受験資格として、 1)日本眼科学会及び日本眼科医会の会員である者。 (2)第9条に規定する施設において、施行細則で定める研修内容により5年以上眼科臨床を研修した者。あるいは厚生労働省の定める卒後臨床研修(2年間)終了後、第9条に規定する施設において施行細則で定める研修内容により4年以上眼科臨床を研修した者。即ち卒後臨床研修を含め6年以上の臨床経験を終了した者。 がありそれを前提とした上で、 更に具体的な研修内容として、 1)一般初期救急医療に関する技術の習得 2)眼科臨床に必要な基礎的知識の習得 3)眼科診断、ことに検査に関する技能の修得 4)眼科治療に関する技能の取得<関与する眼科手術が100例以上:外眼手術、内眼手術、およびレーザー手術が執刀者としてそれぞれ20例以上> 5)症例検討会などへの出席 6)眼科に関する論文を単独または筆頭著者として1編以上および学会報告を演者として2報以上が指定されている 2.4年以上日本眼科学会会員で、かつ受験時に日本眼科医会の会員である者 の条件を満たした上で 委員会が行う専門医認定試験に合格した者 となっています。 そして具体的な試験の内容ですが、 初日は午前中に2時間眼科に関する一般問題、午後には更に2時間実際の臨床に関する実地問題の筆記試験があります。 一般問題に対する回答の仕方は上記写真の通り、「選択肢5つから正しいものを3つもしくは2つ選べ」等というものが多くなっています。ヤマ勘で正答することは出来ず、しっかりとした実力が無いとなかなか答え切れない骨のある問題が並んでいます。 午後の臨床実地問題の方は、 ↑ このような実際の患者様の眼の写真を見ながら設問に答えて行くもので、これまたしっかりとした眼科外来診療での経験と努力が無いと答え切れません。 更に2日目には口頭試問があるのですが、これは各大学の教授クラスの先生方を目の前にして出される各種の問題によどみなく答えられなくてはならず、毎年筆記試験をクリアしてもこの口頭試問で撃沈する人もいます。 この試験は毎日バリバリと臨床の第一線で働いている我々眼科医を対象にしたものなので、その眼科医が真剣に戦って合格率が60%というのはかなり低いのではないか?と思います。その意味では「眼科専門医制度」というのは一定の能力のある眼科医を認定する試験として、良く機能していると考えており、これが日本の眼科医療のレベルの高さを守り続けています。 そしてもちろん眼科専門医試験に一度パスすればそれで終わり、というわけではありません。 合格すると専門医の認定証がもらえるのですが、その期限は5年間限定です。眼科専門医資格を更新するには、この5年の間に眼科専門医制度委員会が認定する学会参加や点数制の研究・学術活動を行い、合計100単位を取得しなければなりません。 この点数は、例えば学会出席で半日2単位・1日3単位、講習会出席1時間1単位、学会発表2~4単位、論文執筆4単位など細かく規定されています。なので、眼科専門医になってもその後の勉強を怠ると、一旦手に入れた専門医の資格を失ってしまいます。眼科専門医を名乗り続けるには一生涯を続けての勉強が必要ということです。 このように我々眼科専門医は、毎日毎日皆様の眼の健康を守り続けることが出来るように勉強し続けています。私も「最新・最適・快適な全国レベルの眼科医療をここ八幡浜で提供し続ける」ことが出来るように、これからも頑張っていきたいと思っています。(続く)
2013.01.17
以前大型ドライアイ新薬である「ジクアス点眼液」についてのまとめの日記を書いた時に、「日本の眼科医療は世界トップレベルである」と書いたところ、「どうして日本の眼科医療が世界トップレベルってそんなに自信を持って断言できるの?」という質問を戴きました。今日は、これを違った角度から説明して見ようと思います。 日本では1970年代から「医学部進学ブーム」が始まりました。この頃は今ほど医学部の数が多くなくて定員数が少なかったこともあって、特に国立大学の医学部は地方の最低レベルのところでも東京大学や京都大学の理系学部よりも偏差値が高いというような異常な状況でした。 日本中が好景気に沸いた1990年前後に一旦医学部の入学難易度はやや下がりましたが、その後の「失われた20年」の酷い不景気の中で再び医学部人気は高まり、入学定員が大幅に増えた現在も、国立最底レベルの難易度の医学部でも大阪大学や東北大学などの旧帝国大学の理系学部と同程度の総合偏差値が入学に必要とされます。 つまりこの40年間、日本でトップの学力を持った理系エリート層はその大多数が医学部に進学するという状況がありました。そして、今は医療制度の改革で眼科全体の保険点数が大幅に引き下げられた影響で人気が急降下し不人気になってしまいましたが、10年程前までの一時期の眼科は「白内障手術で水晶体御殿が建つ」と言われるほど経済的に潤う状況だったことがあり、それによって医学部の中でも特に優秀な層が眼科を志望選択するという時代が長く続いたのです。それが現在の日本の眼科医療が極めて優秀であることを担保してくれているのです。 更に日本の眼科医療は、極めて優秀な人材が揃っていることを背景として非常に厳格で洗練された専門医制度を持っています。これらによって「日本の眼科医療は世界トップレベル」であると言えるのです。(続く)
2013.01.14
新年明けましておめでとう御座います。今年2013年も進化の激しい眼科医療のスピードに負けないように毎日の勉強を欠かさず、全国レベルの眼科医療をここ八幡浜地域の皆様にお届けできるように頑張ります。 学会出張による臨時休診で皆様に御迷惑をかけることが多々あるかもしれませんが、常に最先端の臨床・研究を学び続けることは眼科専門医として非常に大切なことですので御了承下さい。 なお、新年は本日1月7日より通常診療を開始しております。(白内障手術は明日1月8日からです) それでは皆様、今年も にしわき眼科クリニック をよろしくお願い申し上げます。
2013.01.07
当院の年内の診療は、明日12月29日(土)の午前中を持って終了となります。 この1年間、たくさんの患者様に御来院戴けたことに感謝しています。来年もスタッフ一同笑顔を絶やさず、努力を怠らず頑張っていきます。 なお、新年は1月7日(月)診療開始となります。 来年も、全国レベルの眼科医療を提供し続けることを目指し、常に全力で勉強しながら患者様の実際の診療に臨みたいと考えています。
2012.12.28
自動で眼の屈折力と角膜曲率半径の測定が行え、眼科の検査機械の中でもっとも使用頻度が高いものの一つにオートレフケラトメーターというものがあります。覗くと気球が見えたりするやつで、皆様も間違いなく一度は眼科や街中の眼鏡屋さんなどで経験したことがあると思います。 当院では4年半前の開業時には予算の関係もあって程度の良い中古の製品を買って使っていたのですが、ついに壊れてしまったので今回思い切って最新型のものに買い換えました。 買ったのは二デック社のARK-530Aというマシンです。 実はこのマシン、開院時に買った機械が壊れてしまったので修理の間の代替機として一度借りていたのですが、その時に極めて性能が高くてデータが正確で、かつ検査スピードも驚異的に早いので、スタッフから「どうしてもこれ買って欲しい。元々あった壊れた機械はもう修理していらん。」との声が強く上がり、そのまま購入を決断したのでした。二デック社には元々良い製品が多いですが、この数年は特に当りの素晴らしいものが多いと感じています。 これからも適切な設備投資を怠らず、常に全国レベルの眼科医療を提供していけるよう、スタッフ一同努力していきたいと考えています。
2012.12.25
ただいま全国の書店で絶賛発売中の、健康雑誌No1の「壮快」2013年2月号。 その中に「視力大幅アップNo1療法」という特集があり、 近年患者様数が激増している「加齢性黄班変性症」を予防するにはどういった食生活が大切か、というテーマで私が編集部からインタビューを受けた記事が掲載されました。具体的な内容は、私がこのブログで以前シリーズで書いたものに+αしたものになっていますが、一言で言えば「野菜やお魚中心の伝統的な日本食が一番予防に良い」ということです。 加齢黄班変性とはどんな病気か? 加齢黄班変性とサプリメント 加齢黄班変性の治療の実際 加齢黄班変性の治療法の未来 興味のある方は是非本屋さんで手に取って見て下さいね。
2012.12.18
さて第18回糖尿病眼学会、続いて参加したのは、 「糖尿病の合併症にとって悪いのは、高血糖か、それとも低血糖か?」というディベートのセッションでした。 これは古くて新しくそして深いテーマなんですね。パッと考えると、「糖尿病は治療しなかったら合併症で怖いことになるんでしょ。だったらガンガン治療して血糖値をドンドン下げたらそれでいいんでしょ。」ということになるんですが、実際の我々人間の体というのはそんなに単純には出来ていないんですね。 このセッションでは内科では有名な「アコードスタディ」というものが再々引用されていました。このスタディは糖尿病を厳しくコントロールする強化療法群と、普通の治療を行う通常療法群に分けて総死亡率を見るものだったのですが、なんと厳格に血糖値をコントロールした強化療法群の方が総死亡率が高い!ということが途中で分かり、スタディ自身が打ち切りになりました。 これは、厳格すぎるコントロールは頻繁に低血糖を引き起こし、それがかえって様々な合併症の発症率を高めるということなんですね。眼科の世界でも糖尿病で内科から最初に紹介を頂いた時には全く網膜症がなかったのに、数ヵ月後に再診すると突然激しい網膜症を発症していて驚くことがたまにあります。「糖尿病治療後網膜症」と呼ばれ、急激な血糖値の変動で目がびっくりしてしまって虚血に陥り、それで急激に眼底が悪化すると言われています。 糖尿病の治療は急激過ぎてもいけない、むしろ少し緩めのコントロールの方が結果としてよい、ということなのですが、 「過剰な治療はかえって健康に悪い」 ということは我々医師全員が常に意識していなくてはならない重要なポイントであると、改めて認識を新たにしました。
2012.12.14
さて今日は「第18回日本糖尿病眼学会参戦記」の続きです。 ランチョンセミナーが終わった後はしばらくプログラムがないので会場内をブラブラと散歩します。歩いていると、 商業展示場にたどり着きます。ここにはドリンクコーナーや様々な新しい検査器械の展示があって楽しいんですね。 展示場に入ると、 最近我々眼科専門医の中で話題のoptos(オプトス)という眼底カメラ(目の奥の網膜の写真を撮る器械)が置いてあります。 このオプトスの何が凄いかというと、 普通の眼底カメラは画角30度くらいの狭い範囲しか撮影できないのに対して、このオプトスは一度に200度、網膜の80%をカバーできる範囲を撮影できるという点なんですね。しかも無散瞳(むさんどう、瞳を開く検査薬を使わずにそのまま撮影できる)、非接触(目に器械が触れない)、短時間という、いい所だらけの夢のマシンです。 そのため、たくさんの人がオプトスに群がり実際に体験をしていました。 そして私も実際に体験しました。じゃーん、これが私自身の眼底写真です。 右目と、 左目 です。特に大きな病気はなく安心しました。(笑) というのは、このオプトスは眼底のほぼ全てを一度に確認できるので、たまたま撮影して網膜はく離裂孔などの病気が発見されることも非常に多いんですね。 このオプトス、クリニックに1台あれば病気の見逃しの率が大きく下がるでしょうし、私も本当に欲しいです。 でも、1台1380万円!もするんですね。 展示場にいたメーカーの方に、「よし、今すぐ買うので思い切って頭の数字落として380万円にしてください。」とお願いしてみましたが、「そんなの死んでも絶対無理です。」とのことでした。それはそうでしょうね。(笑) 「うーん、もうちょっと安くなるまで待つしかないか、、、それにしても滅茶苦茶欲しいなあ。」と、学会場でよだれを垂れ流す私でした。(続く)
2012.12.10
いよいよ12月ですね。当院は四国有数の漁港である愛媛県八幡浜市の国道197号線に面した超一等地に立地することもあり、毎年頑張ってイルミネーションをしています。今年もスタッフの尽力で、先日から冬のイルミネーションを開始しました。 皆様もご覧になったら、イルミネーションの感想を是非聞かせてくださいね。
2012.12.06
さて今日は先月福岡市で開催された、「第18回日本糖尿病眼学会」参戦記の続きです。 お昼になったので、御飯を食べながら勉強できる恒例のランチョンセミナーへ参加します。 糖尿病の学会なので、お弁当もローカロリーでヘルシーです。写真の真ん中のお寿司の上に乗っているのは出汁(だし)昆布なんですね。 ところで実は今回参加した学会は、「第27回日本糖尿病合併症学会(内科医向け)」と「第18回日本糖尿病眼学会(眼科医向け)」の2つの併催でした。そして私の見る限り、どうやら眼科医よりも内科医の方が割合が高いようでした。 というのは、全体に先生方の服装が黒っぽいというか地味なんですね。(笑)我々眼科医というのはどちらかというと手術がメインの外科系に属するので、イケイケの先生が多くてスーツも色物というか、もう少し全体に派手なんですね。「うーん、興味深いなあ。そういえば学生の頃内科を選んだ同級生って、どちらかというと真面目で地味な人が多かったもんなあ。」などと、下らないことを考えながら、ランチョンセミナーは終了します。(続く)
2012.12.04
さて当院では、診察までの待ち時間のために各種のあめ玉や、「種なし梅」などのお茶菓子を受付に置いているのですが、 もうすぐクリスマスということで、限定お茶菓子が追加で登場しています。 このようなクリスマスにちなんだ様々なお菓子をバラエティ豊かに御用意しています。 クリスマスまでの期間限定となりますので、良かったら是非手にとって見てくださいね。
2012.12.01
さて日本では糖尿病の患者様への必要不可欠な眼底検査の実施率が先進国で一番低い!という衝撃のデータが示されたわけですが、このセミナーでは引き続き、どうすれば内科の先生方に糖尿病に対する眼科検診の大切さをアピールできるか、ということについて興味深い話がありました。 それは「内科の先生というのは、糖尿病のメジャーな合併症である脳血管障害(脳卒中など)や虚血性心疾患(心筋梗塞など)には非常に敏感なので、糖尿病網膜症と内科の先生が興味のある大血管障害を絡めて紹介状の返事を書くようにすると良い。」ということでした。 具体的には、 糖尿病患者様では、経過観察開始時に網膜症がある場合には、網膜症が無い場合に比較して8年間の観察で大血管疾患を発症するリスクが約2倍になる。 同じく経過観察開始時に網膜出血がある患者様では、無い場合に比較して8年間の観察で冠動脈疾患を発症するリスクが1.6倍となる。 同じく経過観察時に軟性白斑(一般的に言って糖尿病網膜症の中期に出現)がある患者様では、無い場合に比較して8年間の観察で脳卒中を発症するリスクは2.4倍になる。 などのように、眼底所見の臨床的な意義を添えて内科へ情報提供をすることが大切であるという話で、非常に勉強になりました。
2012.11.28
さて最初に参加したのは、「糖尿病診療と糖尿病網膜症」という教育セミナーでした。この中で非常に印象に残った話があったのですが、それは、ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め34 ヶ国の先進国が加盟する国際機関であるOECD(経済協力開発機構)の中で、 日本が糖尿病患者様への眼底検査の実施率が最も低い、という衝撃のデータでした。イギリスやスウェーデンでは80%、アメリカでは70%弱、OECD平均で50%強なのに対して、日本は40%弱しかないのです。 世界最高と広く知られている日本の医療システムですが、この上記のデータは日本では診療科をまたがる連携に未だやや難があることを浮き彫りにしているとも言えます。実際の臨床の現場でも、「今日はなんだか眼がかすむから初めて眼科に来てみた。糖尿になって20年になるけど、今まで一度も眼科に行けなんて内科の先生に言われなかったよ。」という患者様もたまにいらっしゃいます。 どうしてこういうことが起こるのか、実はそれには糖尿病による眼の合併症である、糖尿病網膜症の発症機序が関与しています。 一般的に言って、最初に糖尿病になってからそれが「眼に来る」までに15年間かかります。糖尿病の患者様は平均すると発症15年後に単純糖尿病網膜症(SDR)という初期の合併症の状態になりますが、この時には眼底(眼の底の網膜)にはパラパラと小さな出血が見られる程度で視力低下は無く、自覚症状も全くありません。 ところがここからが糖尿病網膜症の恐ろしいところで、20年目には増殖前糖尿病網膜症(PrePDR)という中期の状態に、そして22年目には眼の底に大きな出血を来たして一気に視力が低下してしまう増殖糖尿病網膜症(PDR)という末期の状態になってしまうのです。 つまり糖尿病による眼の合併症は、 「なかなか出ないけど、一旦出現すると一気に進行し、急な坂道を転がり落ちるように悪化する。」 という怖い特徴を持っているのです。 そのため、糖尿病と診断された患者様は絶対に定期的な眼科でのチェックが必要なのですが、上記のように日本ではそこが必ずしもうまくいっていないのが実情なのです。この理由は日本では内科の先生というのは本当に忙しいのでなかなか体の隅っこの目の合併症のことまでは気にして頂けないことと、何より我々眼科専門医の発信力不足があると思います。 私もこれからも糖尿病の患者様への目の検診の大切さを、常に分かりやすく説明していかなくてはならないと肝に銘じました。
2012.11.24
さて今日は瀬戸内眼科コロシアム参戦記の続きです。 今回のプログラムでは、「網膜色素変性症治療の日本の第一人者」と言われる先生の講演もありました。 この「網膜色素変性症」は、遺伝性の疾患で全世界平均で3000~4000人に1人の発症率と言われている難病です。 これは進行性の病気で、最初は「薄暗い所で見えにくい」などの症状ですが、徐々にその夜盲・視野狭窄が進み、末期には高度の視力低下あるいは失明に至ることもあります。成人中途視覚障害原因3位であり、頻度が低いとはいえ大変重要な疾患です。 ↑ これが患者様の実際の眼底写真ですが、中心部を除いて網膜が高度に変性・萎縮しているのが分かります。 以前は有効な治療法は全く無いと言われていたのですが、数年前から「ウノプロストンという目薬が効果がある」という論文が出始め、 その後、0.15%ウノプロストン(オキュセバ)点眼液という名前で開発が続いています。現在は、第2相臨床試験で網膜感度悪化の抑制が確認され、引き続き第3相臨床試験に向けての準備が進められています。 この期待の0.15%ウノプロストン点眼液なのですが、実は0.12%とやや濃度が薄いものの全く同じ成分の目薬が「レスキュラ点眼液」という名前で20年近く前からすでに発売されています。 このレスキュラ、緑内障・高眼圧症の治療薬として発売され、発売後数年はベストセラー薬として一世を風靡したこともあったのですが、「点眼時に非常にしみる」、「角膜(黒目)の上皮障害を高率に起こす」、「眼圧下降効果が弱い」などの弱点があり、1999年に同系統で更に効果が強く副作用の少ないキサラタン点眼液が発売されると、緑内障点眼薬としての命運をほぼ絶たれ忘れ去られた存在となってしまっていました。 ところが薬の作用と言うのは不思議なもので、今また新たな病気に効く可能性が浮上しているわけです。「緑内障の薬としてはダメだったが、実は違う不思議な力を持っていた。」ということなんですね。 今回の講演では、このレスキュラ(ウノプロストン)が、何故網膜色素変性症の治療に有効なのかなどの最新の知見が語られました。 それによると、ウノプロストンは分かりやすく言うと、死にそうになっている網膜の視細胞を「おい、寝るな!」と言って起こしている可能性があり、そのために細胞感度の改善が見られるのだろう、ということでした。例えるならば、 冬山で意識を失い遭難しかけている人をフルビンタして叩き起こすような力がある。 とのことでした。専門的には、視細胞のアポトーシスの抑制及び脈絡膜の血流増加作用と言うことになります。 そして面白いことに、培養細胞でのアポトーシス抑制効果はウノプロストンのみに認められ、同じ系統で現在緑内障治療で第一選択薬として使われている、キサラタン、トラバタンズ、タプロス、ルミガンなどにはその効果が認められない、ということでした。 我々眼科専門医の間では、良く飲み会などの話題で「網膜色素変性症にレスキュラ(ウノプロストン)が効くのなら、それよりもっと眼圧が良く下がる同系統薬のキサラタンとかならもっと効くんじゃないの?」という意見があり、「うん、血流改善効果は一緒なんだし、効くような気がするよね。」という結論になることもあったのですが、どうやらレスキュラ(ウノプロストン)のみが効くようなんですね。これは、「学校ではどうしようもない不良だったけど、社会に出たら実は特殊な才能を持っていた。」生徒のようなものですが、薬の効果というのは、本当に不思議で意外性に満ちていることが多いんですね。 後もう一つ勉強になったのは濃度の話でした。私は「ウノプロストンがそんなに効くなら、0.15%とかじゃなくてもっとどーんと濃度を上げたほうがいいのになあ。」とずっと思っていたのですが、この薬は元々「非常にしみる」ので、「色々試したけど、0.15%が限界。これ以上だととても点眼できない。」ということでした。 難病の網膜色素変性症ですが、治療薬の登場する日は確実に近づいています。私も実際に発売になるのを今から心待ちにしています。(続く)
2012.11.12
さて 「にしわき眼科クリニック 院長日記」 は30万アクセスを達成しました。このブログは眼科専門医としての日常や勉強内容を語るだけの非常にマニアックな内容ということもあり、日記を書き始めた頃は訪問して下さる方もほとんど無く1日平均5アクセスくらい(しかもその内の半分は自分)だったのですが(笑)、いつの間にか最近では1日平均500アクセス程度にまで増えていました。そしてしばらく前の「ためしてガッテン」特需があって一気に30万アクセスを突破しました。非常に励みになりますし心から嬉しく思っています。 今日は30万アクセス突破記念ということで、過去の記事から皆様に大変御好評を戴いた ベスト日記 をいくつか紹介したいと思います。 1位 大阪伊丹空港にて 学会が終わり、地元の愛媛県に戻るために大阪伊丹空港に着き、のんびりとご飯を食べていた私に待ち構えていた、「あまりにも意外すぎる」 出来事とは、、、、、、 2位 忠犬グラちゃん? 飼い犬の爪が目に入り痛みで外来を緊急受診された患者様。普段は本当に良い子の忠犬グラちゃんが豹変したその真の理由とは?、、、、、、、 3位 緑内障は良くならないからもう治療をやめたい。 なんだか怖いイメージのある病気の緑内障。「点眼はめんどくさいし、治療しても良くならないなんて最低。そんなことなら、もう治療をやめてしまいたい。」と言われる、もしくは思われている患者様が多いですが、それでもどうしても治療を継続して戴かなくてはならない訳とは?、、、、、、、 ちなみにまだ御覧になっていない方は、ベスト日記第一弾 として自信作3本を紹介した、 20万アクセス有難う御座います。 も是非合わせてお楽しみ下さい。 それでは皆様、これからも にしわき眼科クリニック 院長日記 をよろしくお願いいたします。
2012.11.08
「ためしてガッテン」余波で中断していましたが、今日は久々に「瀬戸内眼科コロシアム2012参戦記」をお送りします。 続いてのセッションは「アレルギー性結膜炎」でした。 これは非常にありふれた病気であり、新鮮な話題が少ない分野なのですが、今回はアレルギー性鼻炎(花粉症)の鼻症状に対して耳鼻科で頻用されている点鼻(噴霧)ステロイドが実は眼症状にも有効である、という話題が少し新しかったです。 この点鼻ステロイド、具体的にはアラミスト、ナゾネックスなどの製品がありますが、本当に目のかゆみを取るのにも効果的なんですね。実は私自身もその効果を以前から実感していて患者様にも良く処方しますし、実際に自分でも使っています。(笑) この点鼻ステロイドの効果は、抗ヒスタミン薬の内服とほぼ同等ということでかなり強力です。ただ、何故効くのか?については実は不明な点も多いのですが、今のところ鼻の中のヒスタミンなどの炎症性メディエーターの減少により、鼻-眼反射(naso-ocular reflex)が減ることによるものとの説が有力です。またこの点鼻ステロイドは経口ステロイドと較べて眼圧に影響しないので、直接的な作用は否定的ということでした。 「耳鼻科でフルメトロン点眼などのステロイドを含めてアレルギーの目薬を貰っている患者様は多いが、逆に眼科で点鼻ステロイドを貰っている患者様はほとんどいない。副作用も極めて少ない薬だし、我々眼科医はもっと積極的に処方しても良い。」という、講演した先生の話が非常に印象に残りました。
2012.11.05
実用視力を改善する力のある「ムチン分泌促進薬」を紹介して話題沸騰だった、NHKの「ためしてガッテン」 ですが、この番組の放送以来私のブログにも特需が発生し現在全国から大変多くのアクセスを頂いています。今日はその特需を受けての第2弾です。(笑) さてムチン分泌促進薬を語るシリーズ、参天製薬のジクアス点眼液に続いては、日本の製薬会社の雄、大塚製薬から登場したムコスタ点眼液についてです。 まずは発売前の様子から。 ドライアイ新薬、ムコスタ点眼液も製造販売承認申請へ。 このムコスタ点眼液、数年前から発売が噂されていながら実際にはなかなか発売されず一部では、 「出る出る詐欺」 とまで言われかけていたのですが、ようやく船出の時を迎えました。 ムコスタ点眼液、近日中に登場です。 果たして効果はどうだったのか。 ジクアスとムコスタは薬としての実力はどちらが上なのか、その実際は、、、、、? ムコスタ点眼液、実際に使って見ました。 このムコスタ点眼液の有効成分「レバミピド」は大塚製薬が自社開発したもので、内服薬としてはずいぶん以前から発売されています。そして、胃潰瘍や胃粘膜病変に抜群な効果を発揮するベストセラー薬として知られていました。 内服で良い薬は、目薬になっても良い。 これはほぼ外れたことのない、 目薬の法則 であり、その意味ではムコスタ点眼液も期待通りの優れた薬効を示すお薬に仕上がっています。 ただその一方で、大塚製薬はこのムコスタを溶かして目薬に仕立て上げるのに苦しみ抜き、実際に出来上がった製品は成分が安定しにくいために一回毎の使いきりタイプのみで、液は濃く白濁し点眼すると強い苦味を感じる、という典型的な「良薬口に苦し」のやや使いにくい目薬となっています。 そのため、純粋に薬が持つパワーだけを見ればムコスタはジクアスを確実に上回ると個人的には思いますが、ジクアスはムコスタよりも圧倒的に点眼がしやすくて使いやすいので、総合力では逆にジクアスがムコスタをやや上回っている、というのが現時点での眼科専門医としての私の評価です。ただ、未確認情報ではこのムコスタは使いやすいフルボトルタイプの発売を目指して鋭意開発続行中とのことでもあり、これからの更なる進化に期待しています。 以上で、「ためしてガッテン」余波を受けての「ムチン分泌促進薬」関連の緊急シリーズは終わりです。この日記は地方で開業している眼科専門医である私の日常を綴っているだけのものですが、出来る限り一般の方にも面白く楽しく読んで頂けるように工夫を凝らしていますので、今回たまたまご訪問戴いた方には是非これを機会にブックマーク登録して頂ければ幸いです。(笑)
2012.11.01
さて「ためしてガッテン」で「動体視力改善効果がある」として紹介されたムチン分泌促進薬ですが、現在2種類が発売されています。 まずは先行発売された ジクアス点眼液 についてです。 このジクアス点眼液は画期的な効き目があると同時に、世界一新薬の承認が厳しいと言われるこの日本で、眼科専門の製薬会社の参天製薬が全世界に先駆けて先行発売に成功した薬です。また新薬の開発には製薬会社だけではなく、大学病院を中心とした研究・臨床の協力が不可欠であり、「日本発世界初」の効果抜群な目薬が誕生したと言うこの事実は、日本の眼科医療が総合的に見て世界最高水準であることの何よりの証明となりました。 ちなみに最近ではiPS細胞の臨床応用で加齢性黄班変性症が良くニュースでも取り上げられますが、これも日本の眼科医療が世界トップレベルであることが前提としてあると思います。 少し逸れてしまいましたが話をムチン分泌促進薬に戻します。まずは、ジクアス点眼液発売前夜の状況からです。 ドライアイの画期的新薬、ジクアス点眼液、もうすぐ登場です。 続いて、実際のサンプル品を使って見た時の感想です。 ジクアス点眼液、実際に体験して見ました。 発売後の患者様の感想です。 ドライアイ新薬 ジクアス点眼液、やっぱり大好評です。 発売1ヶ月が経過し、たくさんの患者様に実際に使用して頂いたことによって、ジクアスの長所と短所が見え始めて来た頃の日記です。 ジクアス点眼液発売1ヶ月が経過して思う。 このジクアス点眼液の登場によって日本のドライアイ治療は大きく飛躍しました。それには眼科一筋の頑固な製薬会社の参天製薬の力が何よりも大きかったと思います。参天製薬は薬の成分を溶かして目薬にする技術力が世界一で、それが今回の画期的な新薬発売に繋がったと思っています。私もドライアイ治療医として新薬の恩恵をしっかりと患者様にお届けできるように、参天製薬に負けないくらい日々精進していきたいと考えています。
2012.10.28
一昨日のこの日記のアクセス数の急騰、これはNHKで「ムチン(納豆やオクラなどのネバネバ成分のこと)分泌を促すドライアイ治療薬(ジクアス、ムコスタ)を点眼すると動体視力が改善する。」と言った内容の番組が放映され、 それに関連してどうやら私が以前に書いたムコスタ点眼液とジクアス点眼液を比較する日記がネット上で取り上げられた ことが影響したようなのですが、「それにしてもアクセス数が異常に多いな。」と考え直してもう一度色々と調べて見ると、 話はもっと単純で、グーグルで「ジクアス点眼液」と打ち込むと、私が以前に書いた、「ジクアス点眼液発売1ヶ月が経過して思う」 という日記が検索結果の3番目で表示され、それでためしてガッテンを見てからネットで検索をかけた多くの方にご訪問戴けたのでした。(笑) ま、どういった理由であれ、多くの方にこのマニアックな日記を見て頂けるのは光栄なことです。せっかくの機会ですので、次回は悪乗りして私が今までに書いた「ムチン分泌促進薬」関連の日記をまとめて紹介しておきます。(続く)
2012.10.26
私はほぼ毎晩温泉に出かけることを日課にしているのですが、昨日の夜も出かけると、いつもの常連さんが、「おっ、先生、いいところに来た。さっきNHKの ためしてガッテン という番組でムチン?とかなんとか言う目薬すると視力が良くなるって言ってたけどほんとなの?」と問いかけて来ます。 私はその番組を見ていなかったので、「最近はドライアイ領域でジクアス、ムコスタの2つの 日本発世界初 の目薬が登場していてドライアイ治療が劇的に進歩したのは事実です。 まあ、眼の表面がスムーズに滑らかになるので実際に視力改善に大きな効果はあると思いますが、その番組を実際に見ていないのでなんとも言えないです。」と返答しました。 ところが、その後サウナに入っていてもたくさんの方から、「先生、ムチン?を点すと視力が回復するらしいね。明日目薬貰いに行くよ。」などと声を掛けられます。私は、「これは何かテレビでドライアイ治療薬のムチン産生薬(ジクアス、ムコスタ)のことが取り上げられたんだな。家に戻ってチェックしないといけないな。」と思いながら家に戻りました。 家に戻って自分の「にしわき眼科クリニック院長日記」を見てみると、突然アクセス数が急増しています。出かける前は277000前後だったのにいきなり282000になっているのです。! 最近の1日平均アクセス数は400前後なのに、昨日は一日だけでなんと驚愕の5000越えです。! これは一体どうして、、、、、(続く)
2012.10.25
さて今日は「瀬戸内眼科コロシアム2012」参戦記の続きです。 9月23日(日)最初のプログラムは「コンタクトレンズ・アレルギー領域」でした。 この中で一番印象に残ったのは、この数年でカラーコンタクトレンズ(以下カラコン)による眼の障害が激増しているという話でした。昨年のコンタクトレンズによる眼の障害の半分以上がカラコンによるものだったそうです。 カラコンは以前は「おもちゃ」扱いで販売されていたのですが、2009年のカラコンに対する薬事法改正で逆に焼け太りの結果となり、2011年以降書類審査のみで劣悪な品質のものもガンガン承認されるようになりました。その結果、医師の処方箋無しに合法的にネットやドンキホーテなどの大型ディスカウントショップで販売されるようになっています。 カラコンには大きく分けて2種類あり、1つは一般の眼科クリニックで処方するジョンソン&ジョンソン社の「ワンデーアキュビュー ディファイン」のような酸素透過性が高く安全性の高い(グループ4 高含水イオン性)タイプ、もう1つが2011年以降に承認されたキャンディマジック、ラバーズカラーなどの酸素透過性が低かったりレンズの作り方が雑だったりと安全性にリスクのある(グループ1 低含水イオン性)タイプとなります。 ところが我々眼科専門医が処方させて頂けるような前者のタイプは、「デザインが地味で目力が大幅にはアップしない」ので不人気なんですね。後者の新承認のレンズはデザインが派手でカワイイのでどんどんシェアが上がっているのが現状なのです。具体的には以下のような商品群ですね。 今回のプログラムでは、「女子中学生の3種の神器」が紹介されていました。それは、「スマホ、つけま(つけまつげ)、カラコン」で、講演された先生は都会の繁華街で開業されていることから実地に女子中学生に調査したところ、カラコンは、「ドンキで買ってるよ。」、「目医者なんて行ったこと無いよ。」、「カラコンで眼が痛くなっても、目医者に行くと怒られるから絶対行かないよ。気合で治すよ。」とのことでちょっと唖然としたとのことでした。 またこの講演された先生は、素晴らしいことに若い女性が大量に働く飲食施設(分かりやすく言うとキャバクラ)でも、崇高な私財を投じて実地調査を行い、その結果、働く女性の「4人に3人」が新承認のカラコンを使用していること、その購入の際に眼科を受診された方は0%!だった、という貴重なデータを発表されていました。そして、これらの独自調査の結果から「2020年には球面レンズを使用している女性の80%はカラコンを使用している状況になるだろう。」という予想をされていました。 このように新承認のデザインの優れたカラコンは、 1. 10代の年齢層の構成比が極めて高い。 2. 中学生からの使用開始が多い。 3. 大型ディスカウントストアやインターネットでの購入が多い。 という特徴があり、またその販売・管理に我々眼科専門医がほとんどタッチ出来ていないことから、眼の障害が起こっても治療できない、もしくは重症になってから眼科に駆け込んでくるという問題点が指摘されていました。 そして、カラコンを使用している患者様との接点は「トラブル発生時のみ」であることを十分に認識して、 1. カラコントラブルの患者様に決して怒ったりしてはならない。治療させて頂ける唯一の機会と考えて、優しくかつ全身全霊をかけて治療にあたることが必要である。 2. 新基準のカラコンは酸素透過性が極度に低かったり、酷いものになるとレンズの内側を綿棒でこすると色素が取れたり、と品質に大きな差がある。しかも患者様はそのカラコンを説明書を全く読まず使用期限も守らず滅茶苦茶な使い方をしている場合も多いので、「最長でも使用は1ヶ月にしてくださいね。」など、最低限のガイドラインを示すようにする。 ことが大切であると、提案されていました。 このように「カラコン」を巡る状況は急激に変化しています。実際にドンキホーテに行くといつの間にかカラコンの販売売り場はどんどんと大きくなっていますし、都会ではゲームセンターの横にカラコン販売専門店が出来たりしています。我々眼科専門医は、今後カラコントラブルが激増することを前提として、角膜(黒目)感染症に関する知識を深めるべく全力で勉強していかなくてはならない、と気持ちを新たにしました。
2012.10.24
当院では待合室の一角にティーサーバーを設置しており、 上煎茶、玄米茶、ウーロン茶、グレープフルーツウォーターなど、4種類のドリンクがコールド、ホットで楽しめて患者様から大変ご好評を戴いています。 それ以外に、診察までの待ち時間のために各種のあめ玉や、「種なし梅」という、お茶に抜群にあう「梅に味付けし、天日で干したものを種を抜いて仕上げた干し梅」などもご用意しているのですが、 今月はハロウィンということで、限定お茶菓子が追加で登場しています。 今月いっぱいの期間限定となりますので、良かったら手にとって見てくださいね。
2012.10.20
瀬戸内眼科コロシアム、続いてのセッションは「緑内障領域」でした。最近、検査機器の進歩で早期発見が出来るようになったこともあり緑内障の患者様が激増しています。その意味で、眼科専門医として緑内障治療に長けることは今や必須の状況となっています。 このセッションでは、まず「緑内障と診断されると約半数の患者様は失明を意識する」ことが説明されました。そのため我々眼科専門医は、すでに精神的に詰まっている患者様をより追い込むような説明を安易にしてはならないということが強調されていました。 具体的には早期の緑内障の患者様には、「緑内障は失明する病気ですから絶対に点眼を忘れずにしてください。」ではなく、「早めに緑内障が見つかってよかったですね。点眼はあなたの神経を守るための貯金ですよ。」と説明したほうが治療に対するモチベーションが上がること、また、進行してしまった緑内障の患者様には「どうしてこんなに悪くなるまで眼科に来なかったのですか?」ではなく、「両目で見ているとなかなか視野の異常は分かりにくいですよね。まだ残っている視野を残すために積極的に治療していきましょう。」というように、気持ちを傷つけないように日々の診療に当らなくてはならないことが説明されました。私も今までも気をつけているつもりでしたが、これから更に意識して緑内障の患者様が前向きに治療に向き合っていける、その手助けができるように頑張りたいと気持ちを新たにしました。 また、患者様の治療へのモチベーションを上げるためには、点眼で眼圧が下がればきちんと誉めてあげることが大切であること、日常生活で困ったことが無いか(階段の上り下りは大丈夫か?など)を尋ね、視野の状況に応じて適切なアドバイスをすることが肝要であることも強調されていました。 次に緑内障診察の実際については、隅角(ぐうかく:目の中の水の出口のこと)検査をしっかりすることの必要性が説明されました。そして目の中の炎症に続発するセカンダリー緑内障に注意すること、炎症のある緑内障ではステロイド+ピバレフリンやアイファガンなどのフレア(炎症)を抑える点眼を使用するのがポイント、という話も印象に残りました。 また、新薬のアイファガンは、 2歳未満は禁忌(めまい、頭痛、傾眠などの神経障害がある)なこと、またトラフが低いので注意が必要なこと、現在緑内障薬物治療で第一選択薬のPG(プロスタグランジン)製剤の中で、シェアナンバーワンのキサラタンから一番効果の強いルミガンにスイッチすると60%の患者様にDUDE(デューズ)という目の周りが窪む合併症が出ること、などの緑内障の最新豆知識も勉強になりました。 そして最後に、緑内障薬物治療は一人ひとりの患者様に一番合う目薬を探してできるだけ眼圧を下げることで視野を維持していけるよう、「テーラーメイド」の治療を目指すべきであることが強調されました。 現在では緑内障の目薬は様々な系統のものがあり、新薬もどんどん登場しています。私はその全ての薬の薬理作用、長所、短所、防腐剤濃度を完全に把握してかつそれを暗記し、目の前の患者様に合わせて最適解を瞬時に判断できるように常に心掛けています。
2012.10.09
さて少し前のことですが、9月22日(土)、23日(日)に広島で開催された「瀬戸内眼科コロシアム」という勉強会に参加してきました。これは以前の「中四国眼科学会」が終了・発展して開かれているものなのですが、毎年非常に勉強になるんですね。 9月21日(金)夕方の18時30分、外来が終了した私がクリニックの外に出るとすでに完全に日は暮れています。秋の訪れを実感しますね。 私のクリニックのある愛媛県八幡浜市から会場の広島県広島市のホテルまでは車で270キロ!の長丁場です。海の上を渡れたら直線距離は近いのですが、そういうわけにも行かないので、愛媛と広島を結ぶガラガラの「ひまなみ街道」を通るとこの距離になってしまうんですね。気合を入れて出発です。 四国から本州に渡って毎回最初に思うのは、 本州の高速道路は四国に較べて全体にスピードが速い上にトラックが多くて怖い、ということです。運転していていつも少しドキドキしますね。 ふー、夜の22時30分になってようやく会場のホテルに到着しました。 持ち込んだ「バブ」で全身の疲れを癒して眠りにつきます。(笑) 明日からの勉強が楽しみですね。
2012.09.29
患者様の診察で毎日使用する倒像鏡(とうぞうきょう)という検査道具があります。 この倒像鏡の先っぽから光がでて、それを利用して患者様の眼底(がんてい:目の奥の網膜のこと)を観察するのですが、具体的には自分の目のすぐそばで使用します。しばらく前に実際に使って診察をしていると、突然「ジュッ!」という音と同時にこげくさい臭いと熱が立ち込めました。 「これは何かヤバイぞ。」と思って分解して見ると、使いすぎたのか内部の電球の周りの部品が黒こげになっていました。そこで当然修理に出したのですが、いつの間にか電球が従来型のものからLEDタイプに進化した後継機が発売されており、思い切って新型に買い換えました。(旧型は修理に出した上でバックアップ用としました。) ↑ 見た目は瓜二つですが、中身は刷新されています。 この新型のLED倒像鏡は従来型と較べて、 1. 使っていて全く熱を発しないので快適でより安全である。 2. 従来型よりかなり明るくなっており、眼底が非常に見やすい。 という大きなメリットがあります。毎日ほぼ全ての患者様に対して使用する基本道具ですので、買い換えて非常に良かった、価格を上回る大きな価値があったと実感しています。これからも院内の全ての器械を常に適切にメンテナンスしながら、患者様の診療に当たりたいと考えています。
2012.09.25
このところ、「まつげエクステ」による眼のトラブルが急増しています。以下に最近見つけたニュースを引用します。 まつげエクステ、摘発増加=無資格で営業、トラブル相次ぐ-注意呼び掛け・警察庁 時事通信 9月3日(月)14時31分配信 目元のおしゃれとして幅広い年代の女性に人気がある「まつげエクステンション(エクステ)」をめぐり、視力が低下したり、角膜が傷ついたりするトラブルが後を絶たない。警察による美容師法違反(無免許営業)容疑での摘発は今年上半期だけで4件あり、2010年と11年の2年分に並んだ。 東京都内に住む30代の女性は、まつげエクステをした日の夜から目が痛くなった。救急車で病院に運ばれ、「角膜全体に傷が付いている」と診断された。 国民生活センターなどによると、まつげエクステをめぐる健康被害の相談は、店舗の増加に伴い、07年ごろから目立つようになった。09年以降は「目が痛い」「充血が治らない」といった相談が毎年90件前後寄せられている。 業界団体「日本まつげエクステンション協会」は「人気が先行し、技術が未熟なままサロンを経営するケースはある」と指摘。技能検定を実施するなど、技術力の底上げに力を入れる。 厚生労働省も9月以降、全国の眼科や皮膚科の医師約3500人を対象に健康被害の実態調査に乗り出す方針だ。 警察庁によると、今年上半期に摘発したのは埼玉、千葉、京都、兵庫の各府県警で計4件。いずれも施術に必要な美容師免許を持たずに、顧客にまつげエクステをしていた。 同庁幹部は「無免許営業は、健康被害に遭った顧客の訴えで発覚するケースが多い」と指摘。発覚した分は氷山の一角にすぎないとして「トラブルがあれば積極的に警察に届けてほしい」と呼び掛けている。(引用終わり) まつげエクステは簡単に女性の「目力」を上げてくれるので大人気ですが、 接着剤が目に入ってしまい、角膜(黒目)の上皮ごと剥がさざるを得なかった患者様や、まぶたの裏に接着剤が入り込み重いアレルギーを起こした患者様など、当院でも様々なトラブルを抱えた症例を経験しています。 皆様も「まつげエクステ」後に目の異常を感じたら、すぐにお近くの眼科専門医で診て貰う様にしてくださいね。
2012.09.17
しばらく前にテレビのバラエティ番組を見ていると、「人間の視力の限界はどのくらいなのか?」を、視力が良いので有名なアフリカのマサイ族の元に出かけて調べるという企画をやっていました。 前提として眼科専門医として基本的な事項を説明すると、人間が持っているレンズ(水晶体)の光学的限界からは視力4.0程度が、また光を感じる網膜の視細胞の密度からもその程度が限界であろうとされています。 では、果たしてその実際はどうだったのでしょうか? 以下に番組の内容を引用しながら見て行きましょう。 なんと視力5.0はあっさりとクリア。アフリカの人たちは遠くの獲物を見つけなくてはならないので、人間が持っている能力の限界まで使い切っているのでしょうね。 次はなんと視力20.0!に挑戦です。 まさかの視力20.0もクリアでした。また、以前の別のテレビ番組でも、視力8.0 の方が紹介されていました。ただ、日本人で視力検査をすると3.0以上の方はほとんどいないと言われています。育った環境によっては人間は驚異的な能力を発揮できる、ということでしょうね。
2012.09.11
しばらく前にテレビを見ていると、 都市型スズメバチが増えてしかも現在繁殖のシーズンを迎え、猛威を振るっているというニュースをしていました。 「スズメバチに刺されたら大変だ」と言うのは皆様もなんとなく意識されていると思うのですが、もしもこの恐ろしいスズメバチに眼を刺されると、 目は上記のような状態になってしまいます。この患者様はスズメバチに角膜(黒目)を刺され前房(目の中)にまで毒素を注入されてしまい、その結果、角膜の一部、水晶体(目のレンズ)が溶けてしまいました。何度かの手術を経て何とか眼球自体は摘出せず温存することはできたのですが、残念ながら視力は失ってしまいました。 このようにスズメバチと言うのは、「目にとっても大敵」なのです。皆様も十分に気をつけてくださいね。
2012.09.08
まだまだ蒸し暑い時期が続きますね。草刈り等の農作業も多く、「目にゴミが入った」などの訴えで受診される患者様が多い季節です。 さて、この目の中なのですが、実に様々な異物が入り込みます。今日はどのようなものが入るのか、いくつかその内の珍しい事例を見て頂きましょう。 ↑ この患者様は以前も紹介したことがありますが、農作業中に田んぼで転んでその時に目にヒルが食い付いてしまいました。非常にすばしっこく逃げるので摘出するのが大変でした。 ↑ この患者様はみかんの摘果作業中に目にゴミが入り「洗っても何してもどうしても取れない」との訴えで受診されました。それもそのはず、蟻が目から振り落とされないように結膜(白目)に足を深く刺してしがみついたまま絶命していました。このありんこも引っぺがすのが大変でした。 ↑ この患者様は、「まぶたの裏で何かがもぞもぞ動いている!」との訴えで来院されました。上まぶたをめくって調べて見ると、ショウジョウバエと思われる2ミリ大の虫が目の中で既に絶命していました。 このように、目の中と言うのは様々な異物が入り込みます。自力ではなかなか取れないもの、取るのが危険なものもあります。ですので、「あれ?何か目にゴミが入ったぞ。」という時には、是非気軽にお近くの眼科専門医を受診するようにしてくださいね。
2012.09.01
夏ももうすぐ終わりですね。さてこの夏から秋に移り変わる時期なんですが、「このところ急に目がかゆくなった」という患者様が意外にも多いんですね。 実は今は、キク科・ブタクサ属の1年草であるブタクサ による花粉症が始まる時期なのです。スギ・イネ・そしてこのブタクサが「世界3大花粉症」の原因で、日本でも花粉症の原因の第3位なのです。 しかも今の時期は花粉症原因2位のイネ科の雑草(イネ・オオアワガエアリ・メヒシバなど)による花粉症もまだ残っているので、それでイネとブタクサのダブルパンチで非常に花粉症の多い時期なんですね。 目薬・内服薬で速やかに改善しますので、症状のある方は我慢せず早めにお近くの眼科専門医を受診されてくださいね。
2012.08.23
当院では昨日からお盆明けの通常診療を再開しました。 さて、視力検査室では開院時に白の革張りのスタイリッシュなイスを導入していたのですが、それがほつれて痛んできてしまい修理不能ということだったので、新しいものに買い換えました。 左が従来のもの、右が新しいイスになります。検査室全体の配色のバランスを考えて今回は緑色にしました。 ついでに、この間の「まるお眼科」の見学の時に見つけて「なかなか便利だな」と思った、机にも変身する便利イス も購入しました。 これからも少しでも良いクリニックになるよう、スタッフ一同知恵を絞って頑張っていこうと思っています。
2012.08.17
今日は「フォーサム2012横浜参戦記」の続きをお送りします。 さてランチョンセミナーが終わった後はしばらくプログラムが無いこともあり、ブラブラと会場内を散歩します。器械展示場には無料のドリンクコーナーがあるので、足は自然とそちらを向きます。 器械展示場ではスタンプラリーが開催されており、 集めると商品を貰うことができます。 今回は、 うちわとヨコハマキャラメルを戴きました。このスタンプラリーというのは、集めて回るうちに眼科関連企業の最新の動向に自然に触れることが出来るので一石二鳥の素晴らしいものなんですね。(続く)
2012.08.11
毎日暑い日が続きますね。さて今年の当院の夏休みの予定ですが、8月11日(土)までは通常通り診療いたします。 そして8月13日(月)~15日(水)までがお盆休みとなります。この週は手術もお休みです。8月16日(木)からは再び通常診療となります。スタッフ一同しっかりとお盆休みで精気を養い、お盆明けには再び元気全開で頑張ります。
2012.08.08
さて午前中のセッションも全て終了しました。4時間ほどぶっ続けで勉強したのでお腹もペコペコです。お昼は美味しいお弁当を食べながら勉強できる一石二鳥の「ランチョンセミナー」です。今日は「ベーチェット病」のセミナーを選択しました。 お弁当の内容は、 エビフライ、ハンバーグ、ナポリタン、ポテトサラダなど、ハイカラな港町横浜らしい小粋な洋食でとっても美味しかったです。 さて、ベーチェット病というのは「ぶどう膜炎」というジャンルの病気の一つです。このぶどう膜炎というのは、 「目の中に炎症を起こす病気」の総称で、皆様にはあまり馴染みがない名前でしょうが、実はその患者様の総数は膨大です。そしてベーチェット病は1937年にトルコの名門イスタンブール大学のベーチェット博士が発見した病気です。 このベーチェット病、トルコと同じ緯度のシルクロード沿いに多く(そのため、別名シルクロード病)、日本にも多くの患者様がいらっしゃいます。しばらく前には人気グループのEXILEのメンバーの方がこの病気であることを告白して大きな話題にもなりました。 口の中の潰瘍、皮膚の炎症症状、外陰部の潰瘍、そして急性症状を繰り返しながら悪化していく目のぶどう膜炎症状の4つが主症状なのですが、予後不良なことが多く以前から恐れられてきました。1970年代には我が国のぶどう膜炎原因疾患の第1位であり、必死に治療しても発病から5年以内に半数の患者様は視力が0.1以下になってしまうと言う状況でした。 その後1980年代の後半になって免疫抑制剤のシクロスポリンが導入されて治療成績はかなり良くなりましたが、重い副作用が生じる場合もあり相変わらず難治性の病気であり続けてきました。 ところが2007年になって世界に先駆けて、インフリキシマブ(抗TNF-αモノクローナル抗体)という新薬が日本で承認され、これが劇的に効くことからベーチェット病の治療は驚異的な進歩を遂げました。 今回のセミナーでは、近年劇長足の進歩を遂げたベーチェット病治療の最前線を勉強することが出来ました。 以前は、サルコイドーシス、原田病、ベーチェット病が3大ぶどう膜炎と言われていたのですが、 治療法の画期的な進歩により、既にベーチェット病は3大ぶどう膜炎ではなくなったと言う事がデータと共に示されました。余談ですが、最近、上の表で6位のポスナー・シュロスマンにはサイトメガロウイルスというウイルスが関係しているらしいことが分かってきており、それも含めて3大ぶどう膜炎はベーチェット病の代わりに既に「ウイルス性ぶどう膜炎(ヒト単純ヘルペスウイルスHSV、水痘帯状疱疹ウイルスVZV、サイトメガロウイルスCMV)」が入賞したものと個人的には考えており、疫学の変化を強く意識しながら毎日の患者様の診療に当るように心掛けています。 次に画期的な新薬、インフリキシマブの症状改善率は92%にもなること、40~50%の患者様では眼発作が完全に消失した状態まで持ち込めること、ベーチェット病の病巣部位、重症度、罹患期間などに関わらず有効であること、副作用は30~50%に出るが、そのほとんどは発熱や皮膚症状等の軽度なものでポララミンやアレジオンなどの抗アレルギー薬でコントロール可能なことなどの説明がありました。 また、このインフリキシマブ、無効例や投与中の効果減弱例があることが知られていましたが、実はそのほとんどは「血中濃度の不足」によるもので、個別の患者様に合わせて投与間隔を短縮したり、薬剤を増量すれば、眼炎症を抑制していくことが可能であることが分かりやすい資料と共に提示されました。 私が研修医だったほんの10年近く前にはまだこのベーチェット病は非常に難しい病気で、実際に受け持った患者様の中には何度も重篤な目の発作を繰り返して結局失明されてしまった方もいました。私はその時の悔しさを思い出しながら、「ベーチェット病の治療は、ここまで来たんだなあ。」と感動し、セミナーを後にしました。(続く)
2012.08.06
さて楽しくまるお眼科を探検しているうちに2時間近くが経ってしまいました。気が付くとお腹もペコペコです。そろそろお暇を、と思って外に出ます。駐車場には、お洒落な緑の植え込みがたくさんありました。 近づいて見て見ると、 メグスリノキやブルーベリーでした。細かいところまで遊び心と配慮が行き届いた本当に素敵なクリニックに仕上がっていました。(続く)
2012.07.12
さてまるお眼科探訪記の続きです。 次は検査室です。 検査室を見てすぐに思ったのは、「動線がシンプルで綺麗」ということでした。横一直線に検査器機が整然と並び、コンパクトに効率よく各種検査が出来るようになっています。そして、この無駄の無い動線を実現するために、 90センチという短距離で可能な新型の視力測定装置が採用されていました。うーん、これは素晴らしい。是非当院でも採用を検討したいと思います。 また特筆すべき点として、光干渉式眼軸長測定装置の AL-scan が四国で初導入されていました。 これは白内障手術前の検査で使う機械で、目の長さを測るものです。正確な測定が行える光学式と、進行した白内障の場合に使用する超音波式の2つの測定方式を併載した優れた最新鋭のマシンです。本当は私も自分のクリニックへの導入を検討していたのですが、発売を待ちきれず昨年従来型の他の光学式のマシンを買ってしまいました。でもまるお眼科でAL-scanを見ていたら私も改めて欲しくなりました。いいなあ(涎)。。。。 このAL-scanに限らず、まるお眼科には保険診療を行う眼科クリニックとしては考えうる限りの全ての必要な検査機械が揃っていました。香川県三豊地区の眼科医療レベルを大きく引き上げる頼もしいクリニックの誕生ですね。 次に手術室です。 手術室はガラス張りで、手術の様子を患者様の家族が実際に近くで見学できるようになっています。また手術室自体も近未来の宇宙船の中みたいで収納の仕方にも工夫を凝らしてあり、更にそのサイズも極めて大きく、まるお先生の白内障手術にかける情熱がほとばしった極上の出来栄えでした。(続く)
2012.07.06
さて今日もまるお眼科探訪記の続きです。 院内に入ると、お祝いのお花が一杯です。華やかですね。 良く見ると、 日本を代表する著名な白内障手術専門医からのお花もあります。まるお先生夫妻の白内障手術の力量がどれだけ認められているかを端的に示していますね。 待合室には外光が優しく照らす中庭もあります。その壁面のガラスを良く見ると、 なんと視力検査が出来るようになっています。また、 トイレやドア等にも視力検査のランドルト環がデザインされる等、細かいところにまで遊び心が満載で、非常に明るく楽しい雰囲気です。(続く)
2012.07.02
さて私の親友でこの日記でもトップリンクしている まるお先生 がいよいよ7月2日香川県三豊(みとよ)市で開業されるのですが、6月24日の日曜日にその内覧会に出かけてきました。 まるお先生は開業にあたって設計士の先生と共に全国の著名眼科を10軒以上見学して、徹底的にこだわって創り上げただけあって素晴らしいクリニックになっていました。 今日から数回に分けて、その探訪記をお送りしたいと思います。 看板がオレンジで映えますね。 外壁に視力検査のランドルト環がデザインされているのが面白いですね。 早速入り口に向かいます。 診療時間前に到着した患者様のために、壁に椅子が埋め込まれています。これはいいアイデアですね。 入り口では、先生の白内障手術に関する受賞トロフィーと、 先生夫妻にそっくりの手作りのお人形が皆様をお迎えです。 それではいよいよ院内に入ります。(続く)
2012.06.29
さて今日も第6回四国EYEランドセミナー参戦記の続きです。 ヘルペス角膜炎という病気があります。目の表面や中にヘルペスが出て来て悪さをするというものです。以下に実際に当院で治療した患者様の写真をお示しします。 このヘルペス角膜炎、ずいぶん以前には良い治療法が無くて多くの方が失明した恐るべき病気なのですが、 エリオン博士と言う方が、アシクロビル(ゾビラックス)という特効薬を発明してほとんどの方が治るようになりました。これは画期的な業績でエリオン博士は1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞された程でした。 ところがこのアシクロビルは粒子が粗くて目薬に出来ず、眼軟膏(塗り薬)の形でしか使用できないという欠点があります。 また、薬の粒が粗くて目に入れると角膜(黒目)の表面が荒れやすい、更に薬の効き目が短くて1日に5回も使用しなくてはならない、と言う弱点もあります。 更に、最近ではこのアシクロビルが効かない耐性株が出現していることもあり、ヘルペス角膜炎の治療には相変わらず困難が付きまとっているのが現状です。 今回のセミナーでは、日本の目のヘルペスの第一人者と言われるエキスパートの先生の講演があり大変勉強になりました。 タイゲソン点状表層角膜炎やソフトコンタクトレンズによるキズなどのヘルペスと区別しにくい病気の復習も役立ちましたが、 一番印象に残ったのは、 効かない、治らない、ヘルペス角膜炎は、ほとんどは薬をちゃんと1日5回使えていないだけ。 というお話でした。使いにくい軟膏なので、患者様がキチンと1日5回使用するのは至難の業というのが実際なんですね。今後のヘルペス角膜炎の治療にあたって、肝に銘じようと決意しました。 これで第6回四国EYEランドセミナー参戦記は終了です。来年の第7回も是非参加したいと考えています。
2012.06.26
さて先日のことなのですが、ある陶芸家で人形作りの名人の方が私の人形を作ってプレゼントしてくれました。戴いてしげしげと眺めていると、これは確かに私に似ています。 なので、クリニックのどこかに置いて、隠れキャラとして皆様をお迎えすることにしました。果たしてどこに隠れているのか、皆様も是非探して見てくださいね。(笑)
2012.06.21
さて今日も第6回四国EYEランドセミナー参戦記の続きです。 この数年のことですが、ソフトコンタクトレンズは従来型の瞳に酸素が届きにくくて乾燥しやすい素材のレンズ(ヘマ)から、シリコーンハイドロゲルレンズと言う、酸素透過性が高くて目に安全なタイプに急激にシフトしてきました。 当院で現在最も処方が多いソフトコンタクトレンズはボシュロム社の「メダリスト フレッシュフィット」なのですが、これも当然シリコーンハイドロゲルタイプとなります。 ちなみにこのメダリストフレッシュフィットなんですが、 極めて薄型で装着感が良く、目への酸素透過性も130Dk/tと十分なレベルで、非球面デザインで隅々まで視界くっきりはっきりすっきり良く見える上に、内容の割には値段もまずまず安いと言う、総合力に優れた抜群に良いレンズです。 実はこのフレッシュフィットの前には「メダリストプレミア」という、酸素透過性は高いものの分厚くて固くて装着感が非常に悪い、ある意味失敗作ともいえるようなレンズがあったのですが、そのプレミアがあったからこそ、欠点を潰してこのフレッシュフィットのような名作レンズが誕生したのかな?と思っています。(笑) このフレッシュフィットの製造販売元のボシュロム社は、最近はどの製品も極めてレベルが高くて侮れません。新型の白内障手術器械の ステラリス も、 凄まじいほどの出来の良さ で、我々白内障手術専門医を驚愕させたのは記憶に新しいところです。 すいません、話が大幅に脱線しました。このようにシリコーンハイドロゲルレンズは非常に素晴らしいものなのですが、 先ほど言及したメダリストプレミアのように素材が固くて異物感や結膜炎が出やすいと言う欠点も実はあります。そのため、 患者様によってはどうしてもこのシリコーンハイドロゲルレンズが合わず、従来型のヘマという素材のレンズを好まれることもあります。我々眼科専門医はそのあたりは1人1人の患者様に柔軟に適切に対応することが極めて大切です。 また、このシリコーンハイドロゲルレンズの中には、ジョンソン&ジョンソン社の「アキュビューアドバンス」が典型的ですが、脂質汚れ(化粧品の成分)が付きやすいタイプのものもあります。こういったレンズは、お化粧が人生にとって非常に大切な若い女性にはやや不向きであると言えると思います。 それ以外にもこのシリコーンハイドロゲルレンズにはメーカー、またグレードによっても様々な特色があり、 今回のセミナーでは、それぞれのレンズの長所と短所をしっかりと復習して頭に叩き込むことが出来て大変勉強になりました。
2012.06.17
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