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2009.04.03
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~講談社ノベルス、2003年~

 講談社ノベルス刊行の、森博嗣さんの第4短編集です。
 それでは、それぞれについて簡単にコメントを。

ーーー
「トロイの木馬 Trojan Horse Program」 人々が物理的な接触をほとんどとらなくなり、デジタル世界での交流が一般的となった社会。僕が働く職場に、トロイの木馬が仕掛けられていたらしい。僕がその原因を追及していくうちに、ある企業の重大な秘密が浮かび上がってくる…。
 こちらは謎解きというよりも、サスペンス風味の強い短編です。現代日本に生きていると、この中で描かれた社会が、もはやそう荒唐無稽でもないように感じてきますね。

「赤いドレスのメアリィ Mary is Dressed in Red」 いつもバス停にいる、赤いドレスをきた老女。彼女は、メアリィさんと呼ばれる、町の有名人だった。ある日、私は、彼女について知っているという人物から、彼女にまつわるある物語を聞く。
 なんとも読後感の悪い作品です。悲しいというか、重いというか…。

「不良探偵 Defective in Detective」
 こちらも読後感の悪い作品。

「話好きのタクシードライバ That's Enough Talking of Taxi Driver」
 タクシーの運転手に話しかけられるのを嫌う主人公が、あるタクシー運転手に話しかけられたときの話です。べらべら喋られるのを嫌がりながらも、しっかり話を聞いていて、心の中でツッコミを入れたりと、こういうのあるなぁと思いながら楽しく読みました。でもこんな当たり前のことに気付かないなんて…。ラストにはやられました。

「ゲームの国(リリおばさんの事件簿1) The Country of Game」
 回文同好会を主催するリリおばさんが、職場で起こった殺人事件を鋭く解決します。
『今夜はパラシュート博物館へ』 所収の「ゲームの国」では、アナグラムがメインのゲームでしたが、今回は回文がメインです。逆にたどればはっきりするので、アナグラムよりは分かりやすいですね。
 この中で何が面白いって、土井さんの作った回文です。「 練無なりね 」など、短いながらも直球勝負で、大笑いしました。「 若い犀川 」と並んでいるところが、いろいろ意味深な感じもあったりして楽しいです。

「探偵の孤影 Sound of a Detective」 廃墟のようなビルの一室に、ときどき電気が灯るという話を聞いた探偵、ティモシェンコは、まさにそのビルにまつわる依頼をもちかけられる。依頼人の女性は、姉を捜しているというのだった。
 ハードボイルド色の強い短編です。このラストを読んで、とても綺麗な物語だ、と感じました。

「いつ入れ替わった? An Exchange of Tears for Smiles」
 変声期(!?)をむかえた近藤刑事が、奇妙な事件を体験したということで、西之園萌絵は彼も自宅へのパーティに招く。犀川創平と二人きりの予定が、犀川も喜田を連れてきており、萌絵は内心複雑になるが…。それはともあれ、近藤の体験が主な話題となる。誘拐犯からの連絡を受け、身代金を運ぶ役目を近藤が負った。犯人からの指示通りに動き、指定の場所に紙幣の入った紙袋を置く。ところが、警察たちがずっと見張っていたにも関わらず、紙袋の中身は大量の石ころにかわっていた。

ーーー

 本書は、最初の3話が割と重たいので、なんとなく全体的に重たいイメージをもってしまいましたが、それでも最後の2編はとても綺麗だと思いました。「ゲームの国」の回文も秀逸です。アナグラムのときもすごいと思いましたが、ものすごく長い回文にはただただ唸らされました。

(2009/03/29読了)





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Last updated  2009.04.03 06:37:33
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のぽねこ @ シモンさんへ コメントありがとうございます。 久々の再…
シモン@ Re:石田かおり『化粧せずには生きられない人間の歴史』(12/23) 年の瀬に、興味深い新書のご紹介有難うご…
のぽねこ @ corpusさんへ ご丁寧にコメントありがとうございました…

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