東方見雲録

東方見雲録

2022.08.12
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カテゴリ: 教育


出典: 朝日新聞





「人間を一定の閉鎖的空間に置き、その心身を何らかの形で刺激する。そうすると、外部から思想をたたき込まれやすい心理状態になるものです。こうした構造は近代以降、統制のため、効率的に利用されてきました」。辻田さんが話します。

画一的・強制的な教育により、組織や権力に忠実な人間性を育む。その実例は枚挙にいとまがありません。特に分かりやすいのが、太平洋戦争下に行われた国粋主義的な施策です。辻田さんは「教育勅語」をめぐる動きに触れました。

教育勅語は1890年、明治天皇の名前で発布されました。歴代天皇の偉業をたたえ、様々な徳目を守ることなどを、臣民(天皇が治める国の国民)に呼びかける内容です。戦時中は国威発揚や、アジア諸国に対する侵略の正当化に利用されました。
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辻田さんいわく、教育勅語に元来、自国第一主義的な意味合いはなかったそうです。実際に読むと、古代中国の儒教に基づく徳目が目に入ります。さらに「国憲(憲法)」「博愛」など西洋由来の概念も引きつつ、天皇中心の国家観の正当性が述べられています。

明治初期、日本は近代化のただなかにありました。西欧列強に対抗するため、国民を統合する必要に迫られていたのです。教育勅語は愛国心を広め、当時流行していた、反政府的な自由民権運動を抑え込む一手段だったと、辻田さんは語ります。

「しかし戦時下で拡大解釈され、『天皇の言葉に無条件に従わねばならない』とのメンタリティーを人々に植え付ける媒体となった。結果的に戦争を受け入れる態度も養ったのです。言葉そのものというより、使われ方が問題だったと思います」


「内なる戦前」への警戒を怠らない
国家や企業による価値観の拡散は、「教育(学校における教育勅語の刷り込み・企業研修など)→教化(社会や職場における同調圧力によるものも含む)→内面化」の順に進んでいくと言えそうです。

価値観を広める側と受け取る側との相互作用。その磁場に引き込まれそうになったら、立ち止まり状況を俯瞰(ふかん)してみる。そんな試行錯誤の積み重ねこそ、私たちを取り巻く言葉や空気に耐性をつける、最良の手立てなのかもしれません。(抜粋)

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辻田真佐憲(つじた・まさのり)
1984年、大阪府生まれ。評論家・近現代史研究者。慶應義塾大学文学部卒業、同大学院文学研究科中退。政治と文化芸術の関係を主なテーマに、著述、調査、評論、レビュー、インタビューなどを幅広く手がけている。単著に『防衛省の研究』(朝日新書)、『超空気支配社会』『古関裕而の昭和史』『文部省の研究』(文春新書)、『天皇のお言葉』『大本営発表』『ふしぎな君が代』『日本の軍歌』(幻冬舎新書)、『空気の検閲』(光文社新書)、共著に『教養としての歴史問題』(東洋経済新報社)、『新プロパガンダ論』(ゲンロン)などがある。監修に『満洲帝国ビジュアル大全』(洋泉社)など多数。軍事史学会正会員、日本文藝家協会会員。
引用サイト:withnews  こちら





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