東方見雲録

東方見雲録

2023.09.12
XML
カテゴリ: 教育



そもそも、1人当たりの所得が増えていくという意味での経済成長には200~250年ほどの歴史しかありません。それ以前の世界は農業が中心であり、人が所得を増やすことはほとんどありませんでした。

なぜかというと「マルサスの法則」が働いていたからです。ある社会が何らかの理由で、必要最低限以上のものを生産できるようになったとしても、それがすぐに人口の増加をもたらしたので、結局、1人当たりの所得は増えなかったのです。

言ってみれば、1人当たりの所得が上がらないようにする万有引力の法則が働いていて、人類は何千年もその力に支配されていたようなものです。そのマルサスの法則に縛られていることを人類が何千年も理解できていなかったのは、考えてみるとゾッとする話ですよね。

産業革命で経済が大きく変わったので、いまのところ人類はマルサスの法則から逃れられています。しかし、地球温暖化で、また人口の量が所得の水準に影響する時代、世界の有限性を考えなければならない時代になる可能性はあります。

興味深いのは、産業革命でマルサスの法則を逃れられたと思ったら、今度は人類が「イースタリンの逆説」という、別の法則に支配されるようになったことです。これはどういう法則かというと、さきほども述べましたが、豊かさだけでは人は幸福になれず、社会内の緊張を緩和させるには経済成長が必要だった、というものです。

マルサスの法則とイースタリンの逆説は、どちらも私たちの暮らし全体を支配する法則だったのに、私たちはいずれの法則も理解できていませんでした。農業が中心だった時代、人はマルサスの法則を理解できていませんでした。

いまも経済成長が無駄だと言っても、それを認めようとしない人がほとんどです。経済成長こそ進歩だと信じきっているからです。でも、進歩の部分はほんの一部分に過ぎず、大部分は社会の疲弊やエネルギーの無駄遣いだという可能性もあるのです。

何千年もの間、人類の前には人口の問題が立ちはだかっていたわけですが、人類はその問題を理解できていませんでした。この200~250年ほど、人類がぶつかっている問題は、豊かさだけでは社会内の緊張を緩和できないというものなのですが、人類はその問題もしっかり理解できていないということなのかもしれません。

コーエンさんは幸福になるために何をしていますか。人は幸福になるために何をすればいいのですか。

人とともに生きること、信頼できる友人を持つこと、ほかの人との競争をできるだけ敵意のないものにすること。そんなことを意識しています。私はあまり嫉妬する性格ではありません。競争意識もあまりないので、そのおかげで幸せになれている側面はあると思います。

いずれにせよ、幸福を目標としてとらえるのはよくないですよね。「幸せになろう」と思ってもうまくはいきません。アリストテレスだったかと思いますが、幸福は報酬であり目標ではないと言っています。

目標とすべきは、近しい人とともに時間を過ごし、その人たちを助けたり、会話をしたりすることです。家族や友人だけでなく、交流の範囲をもっと広げるのもいいかもしれません。私は教師なので、自分の教え子がそれぞれの進む道を見つけたときには大きな満足感を覚えます。

幸福になるために何かをしようとは思わずに、ほとんど幸福のことは忘れたほうがいいのです。フロイトによれば、幸福とは、寒くて毛布をかけたときに味わう束の間の感覚のようなものだとのことです。心掛けるべきなのは、自分の内の調和を保ち、周りの人とも調和を保つことです。
・・・・
かつて哲学者のデカルトは人間を「自然の主人にして所有者」だと言いましたが、これは自然を隷属させる思想だったので、大惨事を招くことになりました。だから私はデカルトの表現を少しだけ変えて、人間が「技術の主人にして所有者」であるべきだと言っています。人間が技術に圧倒されるようなことがあってはなりません。
・・・・
オンライン上のコミュニケーションも、コミュニケーションではありますが、そこからは「身体性」が抜け落ちてしまっています。ですから仮にオンラインでしか人が会わない世界が到来したら、身体がそれに反発すると考えられます。いまの人から見れば、奇妙な現象が起きる可能性もあります。

たとえば、日本では祖父母や友達をレンタルするサービスがあるという話を読んだことがありますが、社会が人と出会えるチャンスを用意するようになるのかもしれません。人間は出会いを必要とするので、学校や工場で仲間と会って会話をする経験が減っていけば、「他人との関係を作ってくれる産業」が発達していく可能性があります。
・・・・


学生たちには、この好奇心も伝えようとしてきました。学生の中には、自分の専攻は経済学なので哲学の勉強は嫌だという人もいれば、自分の専攻は哲学なので経済学の勉強は嫌だという人もいます。そういった学生には「経済学が専門でも哲学の勉強をしたほうがいい。哲学が専門でも経済学の勉強をしたほうがいい。そのほうが思考力が豊かになり、独創的な仕事ができるようになる」と言っているのです。
引用サイト: こちら





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2023.09.12 08:00:10
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: