東方見雲録

東方見雲録

2024.06.17
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カテゴリ: 文化
2007.06.17の日記 こちら

蒲公英(ぼこうえい)

薬用には、セイヨウタンポポも在来のタンポポも同様に用います。
ヨーロッパなどでもセイヨウタンポポは、健胃薬として重要な薬草のひとつです。
蒲公英(ぼこうえい)、蒲公英根(ぼこうえいこん)はともに、健胃、利胆、解熱、強壮などの多種多用の目的で広く用いられています。
・・・・
名前の由来は、民俗学の柳田国男著から、茎の両端を細かく裂いて水に漬けると、そり返って放射状に広がった両端が、鼓(つづみ)の形に見えることから、鼓を打つときの音から連想して、タン・ポンから、タンポポの名になったという説が主流になっています。

また一説は「田菜ほほ」からで、花が終わって白い冠毛が風に乗って飛ぶことからという

タンポポの根は乾燥して、粗い粉末にしてからよく炒ってタンポポ・コーヒにして飲用します。
引用サイト:薬用植物一覧   こちら

ちょっと道草:柳田国男 タンポポ

津の国の鼓の滝を来て見れば川べに咲けりたんぽぽの花
 そうすると傍に草刈りの童子がいて、第三の句を「うち見れば」と改めてくれた。宗匠自慢の鼻はたちまち折れ、その童子の何とか明神の化現けげんなることを知ったという類の物語、これを詳しく説明することは退屈だが、とにかくこの話の出来た頃までは、人がタンポポの本もとは鼓の名であることを知っていた。後年この楽器の流行がすたれて、小児は名の起りをもう忘れてしまったのである。

ちょっと道草:柳田国男 庭づくり観
私の家では、始めには庭に何物をも栽うえない主義であった。木は門を出ること数歩にして松でも何でもある。草は抜ききれないほど色々のものが生える。どんなものが先まず生えて来るか、見ようと思って空地にして置いたのだが、あまり土埃つちぼこりが立つというので芝を張った。そうするとその隙間から顔を出したのが、隣の地面からの根笹の芽であった。これは棄すてて置くと笹原になるから鋏はさみで切った。その次には職人が食べてほうったかと思う梨の芽生えが二本、松が一本と片隅に合歓ねむの木とが生えた。これだけは約束だから成長にまかせ、もうそのあとは構わずに置くとよかったのだが、春になって気がかわって梅をたった一本、竹垣の近くに移植したのが病みつきで、秋はその隣へ小さな木犀もくせいと山茶花さざんか、安行あんぎょうからは富有柿ふゆうがきの若木が来る。いけて置いた丹波栗たんばぐりが芽を出す。何やらかやら皆大きくなり、おまけに隣地の檜ひの木までが林のように茂って来て、目隠しにはよいが日陰が多くなった。幼な馴染なじみの草などは、大抵たいていは十分な日の光の中で育つものばかりだから、こんな処には見切りをつけて、ずんずんと野外に退却してしまい、家のまわりにはいやな草ばかりがはびころうとする。雨でも降りつづいて五六日も出ずにいると、すぐに化物屋敷のようになって心までが荒びるので、近年は草取りが夏秋の日課になってしまった。人も草取りを日課にする年になると、もはや少年の日の情愛を以てこの物に対することが出来ない。この変化は相応に寂しいものである。
 よい草いやな草の差別は子供もするが、標準は違っている。かたばみは我々にとっては迷惑至極な草だが、彼等はあの葉の珍めずらしい形と、実が胡瓜きゅうりのようなのに興味をもつ。千なりほおずきなども怖ろしいやつで、うっかり一本を見のがすともう翌年は畠中に満ち、抜いても棄てても後から出てきて、小さななりをして花をもち実が熟する。どうして退治しようかと思うほどであるのに、孫どもはやって来ると先ずそれに目を著つける。杉菜が畠に入ると飛び上るほども農夫が騒ぐのは、一つには根が深くて除きにくいためもあるが、それがまた土筆つくし採りの子供を誘引して、畝うねを踏み荒される気づかいもあるからであった。佇たたずんでただながめるだけなら、ああ美しいと思うような草でも、土地を再び曠野こうやに返すまいと思えば、精出して抜かねばならぬものが多い。それを承知の上で雑草の方にも、驚くような繁殖力、智慧ちえと名づけてもよいほどの対抗手段をもっていることが、子供でないだけに少しずつわかって来た。触れるとすぐに莢さやが弾けて、遠くまで種子を飛ばすものがある。蔓つるが容易にちぎれて残りだけでまた根付くものがある。あるいは地獄蕎麦そばとも呼ばれる※(「くさかんむり/(楫のつくり+戈)」、第3水準1-91-28)草どくだみのように、悪く臭いので人を近づけぬものもある。環境に応じて大きくも小さくも、形を色々にかえて生きて行こうとする努力などは、ある草は全く知らず、他のある種には特に著しい。自然の始めからの配慮と言おうよりも、何だかめいめいの発明の如ごとくにも感ぜられる。自身庭に降りて直接の交渉に当るまでは、眼の前にいながら丸で知らずにいた。子供でなくなったということも必ずしもそう悪いものではない。私は今も草取りによって少しずつ学んでいるのである。
引用サイト:青空文庫   こちら





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Last updated  2024.06.17 08:00:11コメント(0) | コメントを書く


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