東方見雲録

東方見雲録

2024.12.02
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カテゴリ: 文化
韓国の“いま”(上)仁川経済自由区域(IFEZ) ネットで結ぶ「夢のまち」

 1997年のアジア通貨危機で大打撃を受けた後、世界が驚く急回復・急成長の経済発展を遂げた韓国。韓流ドラマやK-POP、韓国コスメなどが日本の若者文化にも大きな影響を与える一方、学歴主義や出生率低下、ソウル一極集中による地方格差などの社会問題を抱える。来年は日韓国交正常化60周年。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の対日外交が活発化する中、本紙記者が駐神戸大韓民国総領事館の訪韓招請事業(10月21~24日)に参加し、韓国の“いま”を見てきた。全3回連載。

 関西国際空港から約1時間50分で仁川(インチョン)空港に到着。仁川広域市の松島(ソンド)地区に直行し、仁川経済自由区域(IFEZ)に入った。首都ソウルの西約28キロ。仁川広域市は、仁川空港や仁川新港を中心にアジアの重要なハブ拠点を持つ国際都市として発展を遂げている。米子-ソウル便を使えばもっと便利で近いはずだ。隣国はすぐそこだった。

未来のスマートシティー
 IFEZは、韓国の経済発展の躍進を支える一大プロジェクトとされる。韓国政府は2003年、「ビジネス」「物流」「レジャー」を3本柱に掲げ、松島、永宗(ヨンジョン)、青蘿(チョンラ)の3地区からなるIFEZ構想を表明した。最先端技術を持つグローバル企業を集めて外国投資を促し、最高の教育環境や住環境を整えた。

 同市国際交流担当課の案内で松島Gタワーを見学した。IFEZ広報館が入る360度ガラス張りの高層ビルで、33階の展示ホールからは開発の進む美しい街並みが見渡せる。高層ビルが立ち並ぶ中に公園が整備され、音楽ホールやゴルフ場、一流ブランドの入ったショッピング施設もある。まさに働く・遊ぶ・住む-を満たした夢のまちだ。

 パク・オンギョン市民外交官によると、Gタワーは「Green(緑)」「Global(地球規模の)」「Growth(成長)」の三つのGから名付けられたという。IFEZ内は公共サービスやビジネス、交通、医療、教育など生活に関わるあらゆるものをIPネットワークで結び、交通渋滞やごみ処理、火事や防犯、自然災害などにも対応する「未来のスマートシティー」だと胸を張る。

プライバシー配慮
 Gタワー内にあるスマートシティー運営センターで業務のほんの一部を視察したが、数え切れないほどのモニター画面を職員が見ている光景は衝撃的だった。地域内には約5千台の知能型監視カメラが設置されており、センター内で24時間監視しているとのことだ。



 日本でも持続可能な都市の実現を目指し「スマートシティー」と称した取り組みが各地で進んでいるが、事情が異なるようだ。既存の施設や環境を生かし、住民の同意を得た上でできることから慎重に物事を進める日本に対し、国家主導で一気に都市開発を進め、一元的な管理で経済発展を遂げた韓国-。そんな印象を抱いた。
引用サイト: こちら


こちら





日本海新聞 1123
 韓国とつながる南北連結道路を北朝鮮が爆破してから1週間後の10月22日。南北間の緊張がこれまでになく高まる中、北緯38度の軍事境界線上にある京畿道坡州(パジュ)市の非武装地帯(DMZ)の観光スポットを訪れた。平和観光として第3トンネルや都羅(トラ)展望台などを巡るDMZツアーは外国人観光客に人気だ。爆破翌日から観光客の受け入れを再開したというから、観光振興を優先する韓国の体制に衝撃を受けた。

■戦時下の緊張感
 北緯38度線は朝鮮戦争後に設定された軍事境界線で、韓国と北朝鮮を分断する象徴的な地点だ。DMZは北朝鮮との軍事境界線を挟んだ南北2キロ。外国人の立ち入りは板門店の共同警備区域がある坡州市など4自治体に制限されている。

 DMZ内には北朝鮮が韓国に攻め入るために掘った南侵トンネルが4本ある。このうち坡州市にある第3トンネルは1978年に発見され、板門店からわずか4キロ、ソウル市内から52キロほどしか離れていない。地下73メートルに掘られたトンネルは幅2メートル、高さ2メートル、全長約1・6キロ。南側の出口は3カ所あり、北朝鮮の兵士が1時間に3万人移動できる規模だという。

 ヘルメットをかぶり、爆破跡もある暗くて狭いトンネル内を200メートルほど歩く非日常体験は、軍事的な緊張が続く中で平和とは何かを考える機会になる。入り口にある保安施設など周辺の撮影は一切禁止され、韓国軍兵士が厳重に監視する中、手荷物を預けて見学しなければならない。

 第3トンネル映像館ではDMZや南北分断の歴史などが英語や日本語などの字幕付きで上映された。北朝鮮側を眺める都羅展望台の屋上への立ち入りは禁止されたが、わずか数キロ先だ。

■歴史への薄れる関心


 歴史教育を学ぶ遠足として訪れるようだが、韓国人ガイドは「若い世代は南北統一のことも平和への意識も薄くなった」と懸念。入試試験に出題されない現代史を勉強しない学生が増え、北朝鮮による拉致問題についても関心は薄れているという。日本も同様だ。広島や長崎を修学旅行先に選び、平和学習をする学校がどれほどあるのか。

 韓国滞在中の10月24日朝、北朝鮮が飛ばした「ごみ風船」の落下物に注意を呼びかけるソウル市の緊急通報がスマホに届いた。緊急事態と焦る記者に対して、ソウル市民は「いつものこと」と落ち着いた様子。「通知はうるさいので消している」という人もいた。

 北朝鮮による大陸間弾道ミサイル発射やロシアとの軍事協力など核の脅威が増す中で、韓国人は有事に慣れているのだろうか。石破茂首相と尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は、日韓の安全保障分野で緊密な連携を確認し合っている。政治的緊張と観光地のにぎわいが共存する独特な雰囲気に圧倒させられた。

韓国の“いま”(下)超少子化とジェンダー問題 根強い性別役割意識 こちら

韓国社会は短期間で経済成長を遂げた一方で、少子化が異例の速度で進んだ。2023年の合計特殊出生率は日本1・20に対し、韓国は0・72。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最下位だ。日本の少子化対策も正念場だが、韓国に比べるとマシに思えてくる。韓国女性たちはどう見ているのか。ジェンダー問題への意識とともに少しだけ話を聞くことができた。


 政府や地方行政機関で働く人たちと食事をする機会があった。仁川広域市外交部トップの金(キム)栄信(ヨンシン)部長は男性だが、国際交流増進課アジアチームは、リーダーの朴(パク)昭英( ソヨン )さんをはじめ課員4人が全員女性。金部長は「国際交流を担う部署は女性が多い」とし「男女とも仕事と家庭の両立(ワーク・ライフ・バランス)を考え、働きながら子育てできる環境づくりを進めている」と話した。

 深刻な人口減が進む韓国で、先進的なスマートシティーを目指す仁川広域市だけは人口増という。「地域の活力は人材。少子化や人口減対策は国の喫緊の課題」(金部長)との認識は日韓共通。だが、韓国には徴兵制度があるため、男性は社会に出る年齢が遅れる。また、受験競争の激化による教育費の増加、若者の就職難、家事労働は女性がやるべきだという根強い性別役割分担意識などもある。

 キャリア女性たちとの会話で驚くこともあった。「韓国人は忙しい。業務後に飲み会に行っても(飲んだ後に)また職場に戻って働く」「時間がもったいないので食料品も本もネット購入するが、夜に注文すれば朝には届く。日本の宅配サービスは遅過ぎる」「病院の受診予約などもネットで行い、すべてカード決済。現金を持ち歩く必要はない」-などなど。時間をフルに使って猛烈に働く姿が想像できる。さて、ワーク・ライフ・バランスはどう取っているのか。

ジェンダー不平等
 日本も韓国も根強いジェンダー不平等がある。今年のノーベル文学賞はアジア人女性として初めて韓国人作家のハン・ガンさん(53)が受賞した。さぞ韓国社会は盛り上がっているだろうと思っていたが、意外とそうでもなかった。ソウル在住の知識層の男性は「一度も読んだことがない」「メジャーな作家ではないので受賞を不思議に思っている人もいる」などと言う。

 だが、記者との会話を聞いていた40代の韓国人女性が後で「そんなことはない。本も増刷され人気だし、周りの女性は自分事のように喜んでいる」と教えてくれた。ジェンダーギャップの微妙な感覚というものはこういうものなのだろう。

 スウェーデン・アカデミーは、ハンさんの受賞理由を「過去のトラウマに立ち向かい、人間の命のもろさをあらわにする強烈な詩的散文」と称賛した。韓国が民主化されてからまだ40年足らず。前述の40代女性の母親世代は民主化運動に対する軍の弾圧などに直面し自由に声を上げられない抑圧の中で暮らしてきた。

 女性の社会進出に伴う晩婚化・非婚化を少子化の理由にしてはならない。だが、ジェンダー問題への社会の意識の低さや根深さも、少子化の一つの要因であることは容易に想像できる。(この連載は植田紀子が担当しました)

関連日記:2024.11.26の日記 東アジアの奇跡   こちら





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Last updated  2024.12.02 07:00:13
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