東方見雲録

東方見雲録

2025.01.15
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カテゴリ: 宙(そら)学入門


© 産経新聞
日本の宇宙ベンチャー「アイスペース」(東京都中央区)は日本時間15日午後3時11分、2機目の月着陸船を、米スペースXのロケット「ファルコン9」で、米フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げた。今後、ロケットからの分離を確認する。


打ち上げの映像に拍手するアイスペースの関係者ら(同社の配信映像から)
© 産経新聞
アイスペースの月着陸船は、1機目が一昨年4月、月面着陸に失敗している。今回成功すれば、日本の民間企業では初の快挙となる。
引用サイト: こちら

関連サイト:アイスペース、着陸も成功なら日本企業の存在感向上 宇宙ビジネス市場での地位構築へ こちら
アイスペースの月着陸船を15日に打ち上げた米スペースXのロケット「ファルコン9」には、米宇宙企業 ファイアフライ・エアロスペース

また、民間で一番乗りを果たした インテュイティブ は、今年の第1四半期に次の月着陸船を打ち上げる計画で、これもアイスペースより先に着陸する見通しだ。各社が計画通りに成功すれば、アイスペースの月面着陸は民間で4例目となる。

それでも、アイスペースが月面着陸に成功すれば、世界3社目というトップ集団に入れる。月面への物資輸送という、急拡大が確実視されている分野で、日本が国際的に大きなリードを獲得できることは間違いない。宇宙ビジネス市場で確固たる地位を築くため、成功を目指す意義は極めて大きい。(伊藤壽一郎)

関連サイト:米民間企業インテュイティブ・マシーンズの月着陸ミッション「IM-1」 こちら
日本時間2024年2月23日8時23分、米国の民間宇宙企業インテュイティブ・マシーンズ(Intuitive Machines)の月着陸船「Nova-C(ノヴァC)」が月着陸に成功しました。米国としては1972年12月に実施されたアポロ17号以来51年2か月ぶり、民間企業としては世界初の月着陸(軟着陸)です。

【▲ 月着陸船「Nova-C」に搭載されているカメラで撮影された月面の様子。このカメラは機体の上部から下部を見下ろすように取り付けられているが、Nova-Cは月面で横転した状態のため月の地平線が写っている(Credit: Intuitive Machines)】

関連日記:2024.12.19の日記  「HAKUTO-R」ミッション2   こちら
関連日記:2023.04.26の日記  ミッション1、着陸後の通信確立できず   こちら
関連日記:2024.01.25の日記  JAXA SLIM   こちら

追記 0116
アジア民間初目指し再挑戦―アイスペース こちら


 着陸機には高砂熱学工業の水電解装置やユーグレナの藻類培養装置なども積んでおり、月面でさまざまな技術を実証する。

 袴田武史最高経営責任者(CEO)は15日夕、記者団に「ようやくここまで来られて少しほっとしている。心を引き締めてやっていきたい」と話した。

言葉の森:レゴリス
レゴリス(日: 表土・英: regolith)は、固体の岩石の表面をおおう軟らかい堆積層の総称。

地球科学一般

・・・・
月面花粉症
月面花粉症 (Lunar hay fever)は、アポロ宇宙船内に持ち込まれたレゴリスによって引き起こされる花粉症のようなくしゃみ・かゆみのことである。アポロ17号の乗組員であるハリソン・シュミットによって説明され、月面に降り立った12人全員が発症した。呼吸器に侵入し、発がんリスクをもたらす可能性が指摘される。
引用サイト:Wikipedia情報   こちら


レゴリスで汚れたアポロ17号ハリソン・シュミット宇宙飛行士の宇宙服(NASA/Eugene A. Cernan)




月には実際に「盆のよう」に見える性質があった
こう思ったことは、実は大人になるころには忘れていたのだが、月周回衛星「かぐや」の地形・地質カメラの開発メンバーになった時に、衝撃をもって思い出すことになった。

私はもともと隕石を切断して電子顕微鏡で観察したり、小さな鉱物の化学組成を測定したりすることを専門としていたので、「かぐや」のように、月の上空からカメラで画像を撮影して、その画像を分析するという手法の研究はやったことがなかった。そこで、月惑星探査のさまざまな論文を読みながら、大学の屋上に望遠鏡を担ぎ上げて撮影した月画像をコンピューターで解析しつつ、勉強をしていた。

そしてとある論文の中にこのような文を見つけたのである。「月は、表面の特性によって平板な円盤(flat disk)に見える」。この文を読んだ瞬間に、文部省唱歌「月」を突然に思い出したのである。文部省唱歌の作詞者は不詳ということになっているが、もちろん、天体の光観測の論文を読んだはずはない。おそらく、純粋に月を見て「お盆に見える」と思ったのだろう。

それに引き換え、自分は月が球体であるという先入観から、きちんと月を見ることもできていなかったのか……不詳の作詞者の観察眼への敬服、自分の浅はかさへの恥じらい、何気ない観察に科学の本質が隠されていたことへの驚き、さまざまな感情が一度に湧き上がってしばらく茫然としてしまった。

まずは下敷きのような平面を考えていただきたい。この下敷きの表面がつるっとなめらかだと、下敷きに当たった光は、ほとんどは、鏡で反射するような決まった角度に反射して進む。光が反射する方向から見ると、この平面はぴかっと光って見えるが、それ以外の角度から見ると暗く見える。一方で、この平面が砂地のように荒れていると、入射した光は四方八方に散乱されて跳ね返るので、この平面をどの角度から見ても、同じような明るさに見える。このような平面を拡散反射面という。

月はレゴリスという粉体に覆われているので、月面は拡散反射面の性質を持っているのだ。

光を当てる物体が球体だとどうなるだろうか。盆のように見えるのは、「まんまるい」月、すなわち満月である。満月の状態というのは、「菜の花や……」の俳句のとおり、太陽・地球・月がほぼ一直線に並んでいる状態で、太陽の光が月に差し込む方向と、我々が月を見る視線の方向がほとんど同じである。この時、月面がつやつやピカピカの滑らかな平面であった場合は、中心付近は光がまっすぐ跳ね返って明るく見えるが、満月の周辺部では、光は、地球方向ではなく、宇宙方向に跳ね返っていく。そうすると、満月は中心が明るく、周辺は暗い球体のように見える。

一方で現実の月は、レゴリスで覆われているために、月面が太陽光線に対してどういう角度になっていても、同じような明るさに見える。そのために、実際の満月の中心と周辺部は同じ明るさに見えて、まるで盆のように見えるのだ。
引用サイト: こちら

なぜ、レゴリスはできたのだろうか。地球には当たり前のようにある空気、大気が、月の場合はない。そうなると、宇宙から、そして月面から高速で微粒子が直接月面にぶつかってくる。その衝撃によって月面の岩が削りとられたものがレゴリスだ。

レゴリスの粒の大きさはおよそ50μm(1mmの20分の1)。レゴリスにはガラスの粒子、岩の破片、鉄粉が含まれている。ガラスは衝突の衝撃によって岩の表面が溶け、再度急速に固まったもの。もし月に大気や水などがあって地球と同じような環境があれば、このような細かい砂であるレゴリスは水に流されたり、粘土として集められたり、細かい砂同士がぶつかり合って角が取れ丸くなったりする。

それが長い年月の中で堆積岩という岩に変わり、やがてプレート運動によって地球内部に運ばれると溶岩に生まれ変わるのだが、月には水もプレート運動も無いため、レゴリスは一度作られると、ひたすらこのような鋭利な尖った形を保ったままで、積もりつづけてしまうのだ。

レゴリスの利用価値とは?
レゴリスについて知っていただけたところで、レゴリスには、どのような利用価値があるのだろうか。その前に、レゴリスの成分について解説しよう。

レゴリスは重さの比率で約45%が酸素からできていて金属類と結びついた化合物として存在する。そして、微小だが水素も含まれている。この水素は太陽から吹いてくる風(太陽風)に含まれているもの。そのため、レゴリスは、酸素、水、金属の原料となりうるのだ。

三菱マテリアル、清水建設、大林組などでは、レゴリスを模擬した砂からから焼結材(しょうけつざい)というコンクリートを作る研究開発を行なってきた。居住施設の建築材料となり、月面生活者を守る防御壁となるからだ。建物をさらに厚さ3mのレゴリスで覆えば、微小粒子の衝突や放射線から建物や人を守り、室温の変化を穏やかにすることもできる。この研究は、昔からずっと続けられていて、ようやくアルテミス計画などで人類が月を目指している絶好の機会なので、ようやく脚光を浴びるかもしれない。

他にも、大林組とTOWINGは、月のレゴリスの模擬砂と有機質肥料を用いて植物の栽培の実証実験を実施し、見事、作物の栽培に成功している。

また、レゴリスを700℃に熱すると水素を回収することができる。1gの水素を回収するのに20kgほどレゴリスが必要だというが、さらに、その水素を1000℃以上でレゴリスと反応させると、水素がレゴリスの中の酸素と結びつき、レゴリスを水と金属類に分けることができる。 こうして作られた水を電気分解すれば酸素ができるのだ。燃料電池も検討することができそうだ。

ちなみに、月には空気がない。液体の水もない。だからといって、月面での居住に必要な水や酸素をすべてを地球から輸送することは現実的ではない。現在の輸送技術では、1kgあたり200万円のコストがかかるといわれているので、例えば、お風呂1回分約400kgの水道代がなんと8億円という高いコストなのだ。

太陽光発電装置に必要な材料(シリコン)もレゴリスから取り出せるという。宇宙で太陽電池セルも作れるかもしれない。また、最近Airbusは、ROXYというプロセスにおいて、レゴリスを模擬した砂を酸素に変える技術を確立したという報道もあるのだ。意外とレゴリスが、宝の砂であるというイメージを持っていただくことができただろうか。

”宝の砂”とは別の側面も

アポロ計画から約50年。アポロ17号で月に降り立ったNASAの宇宙飛行士ハリソン・シュミットやキムプリスクは、喉の痛みや目のうるみなどの症状を訴えたという。当時その症状を、「月花粉症」、英語でlunar hay feverと呼んでいた。

欧州宇宙機関ESAによれば、月のレゴリスは、火山活動のある惑星体によく見られるケイ酸塩を含んだもので、これをもし吸引してしまうと、肺を傷つけたり肺に炎症を起こしたりしてしまうという。月のレゴリスは研磨性が強く、宇宙服のブーツ層に穴を開けるだけでなく、サンプル容器の真空密封も壊してしまうほど。

月の重力は、地球の6分の1。気象もない。そのため、長い間、レゴリスが月面にとどまるので、それだけ肺に入りやすい傾向にあるのだ。そして、月のレゴリスの大きさは、実は、人間の髪の毛の50分の1程度で、肺の中で何ヶ月もぶらぶらする可能性があるという。その上、大気がないため太陽からの放射線の影響が強い月では、土壌が帯電することにより、埃が浮き上がる。

今地球上では、月のレゴリスを模した物質の研究が進んでいて、実は、細胞が長期間暴露されると、肺や脳の細胞が破壊されるという研究結果がでているという。そして残念なことに、現状では有効な対策はあるようでないというのだ。

アルテミス計画においては、月の表面に、宇宙服で出た後には、宇宙服についた月のレゴリスを完全に除去してから、ヘルメットを脱ぐ必要があるだろう。エアーシャワーのようなものを使ったり、完全に月のレゴリスを除去できるような掃除機のようなものの開発も必要となるのだろう。

月のレゴリスには、宝の側面もあるが、しっかりと管理する必要がある。取り扱いを間違えると、健康を害する側面もあるとても危険なものなのだ。

文/齊田興哉
引用サイト: こちら

0117

引用サイト:月着陸船「レジリエンス」の初回軌道制御マヌーバに成功   こちら





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Last updated  2025.01.17 13:44:17
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