東方見雲録

東方見雲録

2025.03.23
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カテゴリ: 生命




 こうして、エリートの芋が選抜されて、殖やされていったのである。

 ところが、である。

 エリートとしての優秀さの尺度は、「収量が多い」という基準のみで評価されたものでしかなかった。

 そして、そのエリートには、重大な欠点があったのである。

 それが、ジャガイモ疫病という病気に弱いということだった。

 全国で、1つの品種しか栽培されていないということは、1つの株がある病気に弱ければ、国中のジャガイモがその病気に弱いということになる。そのため、アイルランドでは国中のジャガイモが壊滅してしまったのである。

 それがアイルランドで起こった事件である。

 それでは、原産地の南米アンデスでは、どうだっただろう。



なぜ壊滅を免れたのか

 アンデス文明から続く、長い歴史の中で、南米アンデスでジャガイモが壊滅するようなことは起こらなかった。

 南米アンデスでは、さまざまなジャガイモの品種が栽培されている。つまりは、個性豊かなジャガイモがそこで栽培されていた。

 収量が多い品種もあれば、ある病気に強い品種もある。ある病気に弱くても、他の病気に強い品種もある。このように南米アンデスでは、さまざまな個性を持っていたジャガイモを一緒に栽培していたのである。そのため、病気が発生して枯れる株があったとしても、すべての株が枯れてしまうようなことは起こらなかったのである。

 このアイルランドで起こった大飢饉は、「多様性」の大切さを説明するエピソードとして語られる。

 アイルランドのジャガイモは個性を失っていた。そのため、ジャガイモ疫病によるアクシデントを乗り越えることができなかったのだ。
・・・・
そういえば、アイルランドのジャガイモだって選び抜かれたエリートのジャガイモのクローンだった。

 やはり、多様性のないクローン人間の社会は、アイルランドのジャガイモと同じように、みんなで滅んでしまいそうだ。

 やっぱり、さまざまな人がたくさんいないと社会は成り立たないのだろうか。

 そして……、これが、「個性」の役割なのだろうか。

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Last updated  2025.03.23 09:00:10
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