東方見雲録

東方見雲録

2025.03.24
XML
カテゴリ: 環境
人間が老化するように、土も老化する。これを風化という。人間の老化は腰痛や記憶力の低下として現れるが、土の老化は栄養分の低下として現れる。

若い土は、スメクタイトやバーミキュライト、雲母(うんも)などの粘土鉱物が多い。そこではケイ素・アルミニウム・ケイ素のトリオによって結晶構造や電気が保たれている。ところが、初期メンバーのケイ素が流出すると、粘土の結晶構造が崩壊する 【図5-2】。


残されたアルミニウムとケイ素はデュオのユニットを再結成してカオリナイト粘土としてやり直す。さらにケイ素が流出すると、最後にはアルミニウム酸化物だけのソロになる。

その間、粘土はマイナスの電気を失い続ける。粘土の電気がなくなると栄養保持力が低下し、肥沃な土ではなくなる。最後に残るのは、風化しにくい砂(石英)とアルミニウムと鉄の酸化物ばかり。栄養分を失った赤土が固結するとラテライト、化石化するとボーキサイト(アルミニウムの原料)となる。

奥に追いやられるリン
この時、深刻なのがリンの減少だ。

生物にとって、リンは遺伝子やエネルギーの生産に欠かせない。しかし、リンは究極的には岩石中の鉱物(アパタイト)しか供給源がない。アパタイトは私たちの骨や歯とほとんど同じ組成の鉱物である。岩から土に成長する段階では、鉱物は徐々に風化されることで植物や微生物が吸収できるリンが増加する。

ところが、リンは窒素と違い、大気や雨から供給される見込みがない。風化・流出しても補給されないため、時間とともに土壌中のリンは減少してしまう 【図5‒3】。


さらに、残されたわずかなリンはプラス電気を帯びた鉄サビ粘土に強く吸着される。



隣の人はお弁当を食べ始め、通路側の席の人は靴を脱いで寝ている。簡単にはトイレに立てないし、降りるには新たに膨大なエネルギーを要する。鉄サビ粘土に吸着されたリンはこの状態に近く、多くの植物は簡単には吸収できない。このため、オーストラリア大陸やアフリカ大陸中央部、南米大陸の赤土はリンの不足という問題を抱えることになった。これが人類の祖先の暮らしに大きく影響を及ぼすことになる。


リンを求める哺乳類
土壌中でリンは最も溶出しにくい栄養分の一つだが、人体(水を除く)にはリンが3パーセントも蓄積されている。魚類や鳥類のリン含有量の1・5〜2倍にもなる。体内でリンが最も多い場所は骨や歯(リン酸カルシウム)だが、その次にリンが濃縮している場所は脳だ[参考文献5‒1]。

脳はもともと腸から発生、進化したものとされる。腸を「第二の脳」と呼ぶことがあるが、むしろ脳が「第二の腸」だ。脳を進化させた生物のうち、脳の大きい哺乳類は鳥類とともにエネルギー消費が多く、脳の発達とエネルギーの生産にリンを多く必要とする。

ところが、動物は岩石を溶かしてリンを直接吸収することができない。このため、哺乳類にとって土と植物を介したリン循環が生命線となる。
・・・・
根から有機酸を放出することで粘土に強く吸着したリンを溶かし、酵素(フォスファターゼ)を放出することで有機物中に格納されたリンさえも溶かしだす。溶けだしたリンを張り巡らせた極細の根で回収する。これらの機能は栄養分の乏しい条件でのみ活性化する[参考文献5‒2]。水不足、肥料不足で野菜たちが全滅した私のプランターでも、バンクシアだけは憎たらしいほど元気だ。

オーストラリアの古い赤土の上で、限りあるリンをバンクシアとフクロミツスイが受け渡しながら、命をつないでいる。気候変動によって火災が頻発するようになったことで、バンクシアの再生が間に合わず、フクロミツスイも絶滅の危機に瀕(ひん)している。

哺乳類にとって、土壌のリン、そして、それを吸収してくれる植物の存在は不可欠なのだ。限りあるリンと被子植物に食料の多くを依存している点は人類も共通しており、フクロミツスイのピンチは対岸の火事ではない。

引用サイト: こちら





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2025.03.24 08:00:10
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: