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「ハァァ・・・」ベッドの上で重いため息。なんだってこんな事になっちゃったのか。思い返してみるとウラヌスちゃんを天空郷に送り届けるって約束した辺りが、そもそもこの騒動の始まりだった気もしてくるけど・・・。まぁ、でも、イシちゃん可哀想だったし。たぶん、もう一度おんなじような場面があったとしてもオレ、結局、イシちゃんのお願い引き受けちゃうだろうしなぁ・・・?「うーん・・・」オレは体を起こし、右手に握り締めた地獄の薔薇(注・武器の名前です。植物ではありません)をしみじみと見つめながら呟く。「こんな風にグジグジ悩んでたって意味ないんだけど・・・。なんか、焦っちゃうんだよなぁ・・・」そう、キャラバンを脱出してしばらくはずっと命を落とすかもしれないような極限の緊張状態だったから気にならなかったけど・・・。こんな風に一週間もポッカリ時間が空くと、なんか、『オレがこんな事してる間にもアスベルの他の生徒は必死に修行して成長してる』とか、ふいに思ってしまうのだ。天空郷の事件を解決してから一週間、地上へ戻ることができなくなってしまったマーガスたちは・・・。 「七人の武器屋」シリーズは、「武器屋オーナー募集」のチラシに誘われて集まった七人が武器屋「エクス・ガリバー」を経営することになるというストーリーです。しかし、水道水を売りつけて小金を稼いでいたマーガスとジャン、サンク・マリカ大聖堂を買うためとにかく二十億もの大金を必要としているイッコ、家事が得意なイッコの親友ノン、掃除夫のドノヴァン、お嬢様のミニィちゃん、鍛冶屋の息子ケンジ、の七人は誰ひとりとして武器屋で働いた経験が全くない素人ばかり。しかも詐欺師に騙されたり、恐ろしい灼熱竜と戦ったり、世界的な大企業と争うことになったり、自然災害で突然店舗が潰れたり、天下一武器屋祭で絶対優勝しなくてはならなくなったり、絶体絶命の大ピンチが次から次へと起きてその度に武器屋「エクス・ガリバー」は倒産に追い込まれそうになるのです。そして、6巻から始まる第二部では聖剣エクスカリバー強奪の濡れ衣で指名手配されることになってしまう七人。またまた大ピンチの七人は、問題をいっきに解決するため聖剣に封じられていた悲運の王女ウラヌスとともに天に浮かぶ幻の天空郷アトラを目指すことになっていきます。 ものすごく強いペンギン親衛隊を倒し何とか天空郷を救った七人でしたが、地上へ降りる手段が全て破壊されていて今度は地上に帰れなくなってしまいます。一刻も早くアスベルのレンジャースクールに戻らなくてはならないマーガス、自宅にいる病弱な母ダリアが心配なイッコ、夫・デクさんを一人家に残してきたノン、地震で壊滅した故郷を救いに行きたいドノヴァン、たちは早く地上に戻らなくてはなりません。その上、世界中でかけられている七人の指名手配を取り消す必要もあり、故郷とは言え荒れ果てた天空郷にウラヌスちゃんを残していくわけにも行かず、天空郷に来ているはずの行方不明のイッコの父も見つからず、問題はまだまだ山積みです。もちろん世界最高峰の建築家に作ってもらったせいで営業することができなくなってしまった武器屋「エクス・ガリバー」をどうするのか?肝心の問題も手つかずです。絶体絶命の中、七人はとりあえず地上へ帰るため伝説の聖剣エクスカリバーを自らの手で作り出そうと力を合わせることになります(エクスカリバーの所持者は地上へ戻れます)。経済危機以降、苦境にある会社はリストラや派遣切りを行い社会の雰囲気が悪くなっていますが、だからこそ社員を切り捨てるのではなく「みんなの力を合わせてどんな苦境も乗り越える」というストーリー展開はとても痛快で大変面白かったです。 ジャンルは、武器屋経営アクション・ファンタジー。アクションやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>七人の武器屋シリーズコミックもあります
2009年02月23日
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世界一敏感なボディを持つ成人男子・敏感一郎は、サラリーマンである。彼が勤める猿山商事から豪華客船「MW(ミレニアム・ワンダー)号」の下見を命じられた一郎が次に訪れた場所は、「し、しつれいします!」彼が密かな想いを寄せている同僚の南さんに割り当てられたスイートルームであった。普段ならば決して女性の部屋になど入りたくても入れない一郎であったが、社命となればそれに準じなければならない。「今、扉を開けます敏感さん」彼を迎えてくれた南さんはすでに黒色のカクテルドレスを身につけていた。「すいません、こんな格好で。明日きちんと着られるように練習をしていたんです」照れた様子で答える南さん。しかし、一郎はそれどころではなかった。「(なんて可愛らしいんだぁッ!びくびくぅがくーんッ!!)」彼の背は意思に反して大きくのけぞってしまう。目の前の南さんの容姿はもちろんのこと、今や彼はスイートルームに満ちる彼女の香にまで反応してしまっているのだ。「入ってください敏感さん。きちんと各部屋を二人でレポートしないと」そして彼女が一郎を部屋へ導いた、その時・・・。 「MW(ミレニアム・ワンダー)号の悲劇」は、6月18日午後9時に異変を生じた豪華客船MW号のストーリーです。沖縄県宮古島沖約150キロを航海中のMW号より、救難を求める無線連絡が海上保安庁にありました。しかし、その後の連絡は途絶え日本人乗客多数を含む乗員乗客618人の安否は確認できず。MW号が遭難したと思われる海域には突発的に発生した台風の暴風域にあり、海上保安庁の巡視船と航空機による捜索は難航。救難を求める無線の内容は「巨大ダコ出現」「テロリストによるシージャック」など信じられないものばかり。MW号にいったい何が起こったのか?「タコ・電撃・30」という三つのキーワードを必ず織り込むルールをもとに電撃文庫を代表する作家11人が、それぞれ短編を綴って様々な思惑と陰謀の絡まりあう奇想天外なストーリーを完成させていくことになります。 あらゆる刺激に敏感すぎる体質を生かして海賊に立ち向かう「びんかんサラリーマン!」、人形のように生きる少女エリハとそんなエリハを守ろうとする青年・春斗の不思議な心の交流を描いた「残酷劇(ぐらんぎにょる)の夜」、変なカップルとその同行者が沈み行く船の中でパニックになる(DIVE TO BLUE」、インターネットの暗黒面が強調された『MW号専用掲示板「ウィー・アー・オン・ボード!」』、いたって普通の中年男性が主人公の「万年すだれ禿係長・小保多喜八郎の冒険」、どこか憎めない海賊たちと恐るべき殺人鬼と巨大タコのバトルロイヤル「蟻塚と500人の海賊」、漁船ノーチラス号で巨大タコと戦うことになってしまう「Les Aventures」、オタクで引きこもりなアンドロイドが活躍する「HERO」、何が起こってもギャグになってしまう「内藤君と水野君の場合」、似た者姉妹の話「Sisterhood」、MW号の沈没原因をオカルト的に追求する「MW号の命題」、などの短編によって構成されています。それぞれの作家さんたちが自身の持ち味を存分に発揮したエピソードばかりなのに全体として一つに繋がっていて楽しかったです。 ジャンルは、豪華客船沈没コラボレーション・ストーリー。電撃文庫が好きな人にお薦めです。<終>電撃コラボレーション「びんかんサラリーマン」は、「撲殺天使ドクロちゃん」シリーズに登場する作中作のストーリーです。
2009年02月16日
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フレイムヘイズ「万条の仕手」ヴィルヘルミナ・カルメルと同じく「炎髪灼眼の討ち手」シャナが、平井家の表札を掲げるマンションの一室で同居を始めてから一ヶ月余が経つ。世界のバランスを守る異能者として世の陰に跋扈する「紅世の徒」討滅の使命を持つ彼女らが諸事情あるとは言え、また仮初の宿とは言え、定住と言って良いほど長逗留しているのは全く久方ぶりのことだった。移動城砦「天道宮」で別れて以来数年ぶり、という共同生活にも慣れてくると一定のサイクルが生まれる。二人して異能の身にまかせて自堕落な生活を送ることを良しとしない勤勉かつ実直な性格である。日々のサイクルは、細かな時間割のように厳密なものになっていた。ヴィルヘルミナがそこに微妙なズレのあることを感じたのは残暑の宵闇の中。「照明点灯」彼女の頭上のヘッドドレス型の神器「ペルソナ」に意思を表出させる相棒ティアマトーから促された瞬間だった。「・・・もう、こんな時間でありますか」不分明な違和感に数秒遅れて手元の暗さに気づく。「遅い、でありますな」「要用発生」生真面目なシャナの突然の生活サイクル変調、そしてシャナがヴィルヘルミナに隠す秘密。「シャナが道を踏み外す」ことを心配したヴィルヘルミナは・・・。 「灼眼のシャナ」シリーズは、主人公のフレイムヘイズの少女シャナが世界のバランスを乱す異世界の住人「紅世の徒」を討滅することになるというストーリーです。「紅世の徒」たちは、人間が持つ「存在の力」を喰らうことで自身を顕し様々な力を振るいます。そんな中、異世界「紅世」において「存在の力の欠落により世界は歪みやがて両方の世界に大いなる災厄が起こる」という問題が大きくなっていきました。危機感を覚えた「紅世の王」たちは人間たちに異能を与え、「存在の力」をむさぼり喰らう「紅世の徒」たちを討滅することになったのです。「紅世の徒」たちに酷い目に遭わされた人間たちは、そうした「紅世の王」たちに協力することになり、フレイムヘイズとなって復讐することになります。「紅世の王」アラストールやシロと一緒に「復讐でなく純粋に世界のバランスのために戦うフレイムヘイズを育てる」ことになったフレイムヘイズのヴィルヘルミナは、人間世界の常識が分からなかったり料理ができなかったり(彼女は元々人間ですがフレイムヘイズとしての生活が長すぎて全く常識がありません)苦労しながらも養育係として頑張りました。こうして一般常識を全く知らない三人に育てられてしまったシャナは、フレイムヘイズとして優秀でも常識のない人間になってしまいました。 今回の「灼眼のシャナS2」は、シャナの養育係でありフレイムヘイズとしての先輩でもあるヴィルヘルミナが主人公として活躍する番外編です。何だか分からない理由でいつもメイド服を着ていて(同行者は目立って仕方ないと困っています)、感受性が豊かなのに無表情を通していて、想い人とずっと一緒に暮らしていたのに全く恋愛の進展がなく、メイド服を着ているのに料理がダメで(冷凍食品中心)、相棒の「紅世の王」ティアマトーは漢字四文字でヴィルヘルミナと会話をし、いつも所構わずイチャイチャして二人だけの世界を築いている「約束の二人」(エンゲージ・リンク)フィレスとヨーハンの旅に問題なく同行できる、ミステリアスすぎる女性ヴィルヘルミナの魅力が満載です。「紅世の徒」たちから「戦技無双の舞踏姫」と恐れられるヴィルヘルミナが人間世界では常識がなくて色々と悪戦苦闘していて、その姿がとても面白かったです。また、そんなヴィルヘルミナに育てられてしまったシャナのビックリするような失敗の数々も必見です。 ジャンルは、常識無用アクション・ファンタジー。アクションが好きな人にお薦めです。<終>灼眼のシャナシリーズ(時系列順で一部紹介)
2009年02月09日
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海と草原の間を一台のモトラド(注・二輪車 空を飛ばないものだけを指す)が走っていた。空に雲はない。天頂からさんさんと降り注ぐ強い陽光の下、蒼く澄んだ大海原が水平線まで広がり白く狭い砂浜を挟んで一面緑色の大地が地平線まで広がる。白い線は計ったように南北にまっすぐ走り、そしてモトラドもまた南へ向けてまっすぐ走っていた。モトラドは後輪の脇に黒い箱を、上に鞄を載せていた。さらに燃料と飲料水の缶をいくつも取り付け、寝袋とともにロープで縛っている。砂浜と草原の境にある細い道をモトラドは進んでいく。運転手は若い人間で白いシャツと黒いベストを着ていた。つばと耳を覆うたれの付いた帽子をかぶり、あちこちが剥げかかった銀色フレームのゴーグルをはめていた。腰を太いベルトで締めて右腿にはホルスターでリヴォルバー・タイプのハンド・パースエイダー(注・パースエイダーは銃器。この場合は拳銃)を吊っていた。「あ、向こう曇っているね。珍しい」モトラドは言って、「これで少しは涼しくなるかな?」運転手は答える。突然、寒くなった国。しかし、住民たちは寒くて震えているにも関わらず何故か異常なほどの薄着をしていて・・・。 「キノの旅」シリーズは、主人公の旅人キノが相棒の会話するモトラド(バイクのような乗り物です)エルメスとともに奇妙な国々を旅して周ることになるというストーリーです。キノは女の子なのですが、達人レベルの銃の腕前としっかりとした抜け目のない行動で山賊に襲われるなどの危険をものともせず旅を続けています。そして、「ひとつの国に三日滞在する」という自分ルールを定めて様々な国から国へと移動しているのです。エルメスはキノと楽しく会話しながら、自分を操縦していろんな所に連れて行ってくれるキノを助けます。その他にも移住する国を探しながら旅をする好青年の剣士シズやシズの飼い犬・陸、手榴弾とグレネードランチャーで武装している少女ティー、極悪非道すぎるキノの師匠とその相棒、ちょっとおかしな登場人物がいっぱい出てきて様々な国で騒動を繰り広げます。出てくる国も登場人物たちもそれぞれあり得ないほど変なのですが、様々な所にリアルな出来事が投影されていてブラック・ユーモアたっぷりに描かれています。 どう考えてもおかしな法律を国民全員が必死に守っている国、鎖国が長く続き過ぎて周辺諸国の常識が全く通用しなくなってしまった国、政策の転換のたびに政治家や評論家や市民活動家たちが処刑される国、昔からの方針というだけで盲目的に世界征服をしようとしている国、「温暖化」の意味を誤って理解してしまったせいで無意味な政策を誇らしげに続けている国、国民全員が詐欺師に何十年もずっと騙され続けている国、良いことをして得たポイントを貯めることで罪を犯してもポイントに応じて減刑される国(大量のポイントを貯めれば殺人罪すらも減刑されて無罪になってしまいます)、郵便屋さんが決死の覚悟で手紙を届ける国、など本のカバーの裏にまでストーリーが書かれていて変な国々がいっぱい出てきます。荒唐無稽な国々の楽しさ、「その国にとっても常識・非常識」など考えさせられる内容が大変面白かったです。 ジャンルは、トラベル・ブラックユーモア・ファンタジー。ブラックユーモアやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>キノの旅シリーズ番外編もあります
2009年02月02日
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