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時が、満ちる。最後に至る力のかけらが届けられる。それは最初から約束されていたもの、同時に五つ目に届けられることが決められていたものだ。世界に生まれ落ちて以来ずっと眠りの繭に包まれていた存在は、そのかけらを手にすることでようやく繭を破ることが許される。眠りはもう必要ない。今こそ目覚めの時なのだ。微睡みを護る繭が四散していくさまを、彼女はうっとりと見つめて呟いた。「綺麗・・・」そう、本当に綺麗だと思った。それは無力な自分をずっと護り続けていた産着だった。けれどその護りはもう必要ない。目覚めて自分は全てを手に入れる、この世界を構成するものとこの世界を破壊するものを。何より自分という存在を。今はまだ、何者でもない存在だけれど。目覚め奪って、自分は自分という存在を獲得する。「さあ、わたしは目覚めるわ」その頃、ラエスリールはずっと眠ったままで・・・。 「破妖の剣」シリーズは、母チェリクが死んだことで家族と一緒に暮らすことができなくなった主人公の少女・ラエスリールが伝説の破妖刀「紅蓮姫」(破妖刀とは魔性の命を奪うことができる武器のことです。「剣」や「斧」の形状でも「破妖刀」と呼ばれます)に選ばれて破妖剣士となり、強大な力を持つ魔性と戦うことになっていくというストーリーです。魔性の王である妖主の父と魔性を魅了して支配する力を持つ人間の魅縛師を母に持つラエスリールは、半人半妖であるもののお姫様として幸せに暮らしていました。しかし、その生活は母チェリクが死んだことで一変します。父は最愛の妻を亡くしたことに耐えられず失踪。父の部下だった魔性たちは、半人半妖のラエスリールを追放してしまいます。箱入り娘として育てられたラエスリールは途方にくれますが母の友人マンスラムを頼ることになり、最強最美の魔性のストーカー闇主に付きまとわれたり、魔性として生きる超ド級のシスコン実弟・乱華に監禁されそうになったり(姉を愛するあまり弟は監禁することで守ろうとします)、魔性の魂を食べることしか考えていないグルメで大食いの相棒・紅蓮姫に振り回されたり、大変な困難を天然ボケ(お嬢様なので)と努力で乗り越えることになっていきます。 とても久しぶりに、このシリーズを読みました。前巻「鬱金の暁闇 3」を何年前に読んだのか?思い出すことができないほどです。主人公であるラエスリールがずっと眠ったままになっていたり、前巻「紅蓮姫」を譲ってもらったアーゼンターラが臨時主人公になっていたり、行方不明になっている魔性の方々がさらに増加していたり、死んでいるはずの人物が唐突に登場したり、単に「久しぶりに読んだから」では済まされない激動の超展開になっていてビックリしました。とは言え、妖主の方々や新たに生まれた謎の妖主・雛の君の事情が少しずつ明らかになったり、登場人物ひとりひとりの現状など謎が明かされていく過程が面白かったです。ただ、久しぶりに読んだのに主人公・ラエスリールが眠ったままでさっぱり活躍しなかったのがちょっと不満です。 ジャンルは、魔性アクション・ファンタジー。アクションやファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>破妖の剣シリーズ(その他にも外伝7冊、コミックも出てます)
2009年10月26日
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みんな、夏休みはどこ行くかな。ぱっと思いつくのは海や山。あるいは家族で帰省。金があったら海外旅行。なければ家でごろ寝。俺こと瀬能ナツルはそのどれでもなくて、テーマパークへ一泊旅行としゃれ込んだ。温泉付き。そこで例によって様々なトラブルに遭遇。温泉だか戦争だか革命だか分かんない目にあった。どうも俺は色んな災いを引きつけてしまうらしい。テーマパークでのトラブルを乗り越え、身体を休めるはずが疲れを倍化させて帰った俺は「外に出なければ何も起こらない」という高邁な精神の元、惰眠をむさぼる。ところが午前六時四十五分、早朝目を覚ましてしまった俺は朝食にカレーを食べた直後、幼馴染みの水琴に「群馬までカレーを食べに行こう」と無理矢理連れ出されて・・・。 「けんぷファー」シリーズは、朝起きたら突然女の子に変身していて「けんぷファー」になっていた主人公の男子高校生・瀬能ナツルが男女を問わずモテモテになったり、理由の分からない謎の戦いに巻き込まれていくことになるというストーリーです。憧れの女性・沙倉楓から内臓のはみ出た気味の悪いぬいぐるみ「ハラキリトラ」をもらったナツル。しかし、朝起きたら女の子になっていたばかりかハラキリトラが「源しずか」の声で喋り出し、ナツルは大混乱に陥ります。しかもハラキリトラは「あなたはけんぷファーになったので戦わなければなりません」「詳しいことは知りません」と無責任なことを言うばかり。こうしてナツルは美少女になって異常にモテモテで困ったり、何だか分からないまま戦ったり、変人揃いのけんぷファー仲間に振り回されたり、奇妙な恋のバトルが始まったり、男子・女子両方の学園生活を送ったり、大変なことになるのです。 この8 1/2巻は衝撃的だった本編とうって変わり恋愛ストーリー中心になっています。同性愛者でグロテスクなぬいぐるみを愛好する変人・沙倉楓を相変わらず狂信的に愛しているナツルに対し、ナツルのことが好きなけんぷファーな女の子・水琴、紅音、雫たちは夏休みということもあって強引にデートに連れ出したり、お祭りに誘ったり、自宅に泊めようとしたり、積極的に頑張ることになります。「カレーで洗脳」という変な作戦から「一夜をともに」という大胆なものまで必死に健気にあの手この手で恋を引き寄せようとする女の子たちの活躍がとても面白かったです。それにしても「デートじゃなくて一緒に行っただけ」「キスしたんじゃなくて、女の子にレイプの一種をされたんだよ」とデートやキスを誤魔化そうとするナツルの態度にはあきれてしまいます。 ジャンルは学園アクション・ラブコメディ。アクションやラブコメディが好きな人にお薦めです。<終>けんぷファーシリーズコミックやDVDもあります
2009年10月19日
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(ああーみんな、死んでしまった・・・)次の朝がきても、草原はやはり何一つ変わったことなどないかのようにうららかに広がっていた。事実、おそらく、この広大な草原にとっては、そんなことくらいはたいした事件でさえないのだろう。わずか数十人ばかりの人の生死など、あまりに広大なこの草原にとっては、何一つ変わったことが起きていないに等しいに違いない。何匹かの虫けらが踏みにじられて死んでいったところで、人間が何も気にかけぬであろうように、広々と青い空の彼方にいるであろう草原の神モスにとっては、この地上で起きる人間たちの愚かしくも様々な営みなどは、まったく取るに足らぬ出来事でしかないのかも知れぬ。ヨナは結局、傷の痛みと心の苦しみのために全く寝ずの夜を過ごしたのだった。そして、ミロク教徒の仲間たちと盗賊たちが火葬されていく中、ヨナは「自分を殺す相手さえ恨んではいけない。殺す相手のために祈りなさい」というミロクの教えに疑問を持つことになって・・・。 「グイン・サーガ」シリーズは、記憶を失った状態で突如ルードの森に現れた豹頭人身の異形の主人公グインが苦難に襲われているパロの王子王女を助けたり、中原の平和のために戦ったり、失われた記憶を求めて高名な魔道師を探したり、様々な冒険を繰り広げることになるというストーリーです。体育会系の人々が大部分を占める軍事大国ケイロニア、物体を瞬間移動させられる謎の古代機械と不思議な魔道を使う魔道士たちが多くいる怪しげな文化大国パロ、そして若くて野心的ででたらめな王が恐怖とカリスマで君臨するゴーラ。中原と呼ばれる地方には三つの大国が存在します。最強戦士であるグインは異形で記憶喪失ではあるものの、数々の武勲を立てケイロニアの王と認められるまでになります。ところが、中原を侵略しようとする強敵と対決したグインは再び記憶喪失に。一方、パロを支える学者ヨナは魔道師宰相ヴァレリウスに命じられて異変が起こっているミロク教の聖地ヤガを目指して旅をすることになっていきます。 最近、NHKで「グイン・サーガ」のTVアニメを見ました。十四歳の子どもの頃のリンダとレムス、元気に動いているアルド・ナリス、原作では印章の薄かったパロ国王夫妻やリヤ大臣、そして勿論相変わらず強くて記憶喪失なグイン。数年前に読んだ「グイン・サーガ」1巻「豹頭の仮面」の内容が思い出されて懐かしかったです。当初は全100巻を目標にしていた「グイン・サーガ」シリーズも今では本編・外伝を合わせて150冊ぐらい出ています。しかも内容的にはまだまだ終わるような気配はありません。なので著者の栗本薫さんが逝去されたというニュースを聞いてビックリしました。この巻でヨナが仲間たちの冥福を祈ったように、栗本さんの冥福を祈りたいと思います。栗本さんが書いた「グイン・サーガ」の続きが読めなくなってしまうのは非常に残念ですが、「今まで楽しくて面白い物語を書いて下さって有難う」と伝えたいです。 ジャンルは大河ファンタジー。壮大で読み応えの在るファンタジーが好きな人にお薦めです。<終>グイン・サーガシリーズコミックや新装版、ガイドブックなどもありますDVDも出てます
2009年10月12日
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「ゲームをするです~」「今日は日本のゲームをしよう」ナイトは押入れにしまってあった将棋盤と駒を取り出した。「ナナが勝ったらなにかご褒~美が欲しいですね」「そうだな、勝てたら好きなお菓子をあげるよ」「・・・ナナ、甘~いやつがいいです」命懸けのゲームに慣れているナナを相手に賭け将棋をすることになったナイト。ナナが将棋初心者だと思いこんでいたナイトは、ハンデとして飛車角落ちで勝負した結果あっさりナナに負けてしまいます。その頃、ナイトに一世一代の愛の告白をしたヨルは「ナイトの態度が変わらない、それが何とも理解できない。いきなりナイトにベタベタして欲しいわけじゃないけど・・・」と悩んでいました。実は告白の時、ナイトはエリザベートさんに精神を乗っ取られていたので記憶がはっきりしないのです。ナイトとは相思相愛だと信じているヨル。しかし、ナイトはナナを始めとする低年齢の女の子にモテモテです。そして、ヨルはナイトとナナのお菓子のように甘いキスシーンを目撃することになって・・・。 「ぼくと彼女に降る夜」シリーズは、オーストリアからやって来た美少女ヨルミルミ(通称・ヨル)と同棲することになった主人公の高校生・清夢騎人(通称・ナイト)が魔宴と呼ばれる魔乖術師たちの争いに巻き込まれていくことになるというストーリーです。世界最強の剣士集団として名高い「七剣八刀」(ソード・オブ・ブレイド)に所属する祖父・絶端剣人から剣術を学び、「最強」と恐れられる魔乖術師「マイステリン」からは魔乖呪を教えてもらったナイト。非凡な才能で「剣術」「魔乖呪」を習得したナイトでしたが、記憶を封じられたことが原因で生きる活力を喪失。以来、無気力な人生を歩んできました。しかし、魔宴(魔宴とは魔王の称号をかけて7人の優秀な魔乖術師たちが世界規模のバトルロイヤルを行う大会です)に参加しているヨルと出会ったことで、ナイトは魔乖術師としての記憶を取り戻すことになります。そして、お人好しなナイトはヨルに協力して魔宴に参加する魔乖術師など強敵たちと戦うことになっていくのです。また、同時にヨル、アイリス、ナナ、をはじめ美少女たちも集まってきて恋のバトルも始まります。 告白後も全然態度が変わらないナイトに対し、ヨルは「ナイトがロリコンだったら脳を徹底的に治療しなてくは」と物騒なことを考えていました。そんな中、細胞の一片すら残らず消滅してもすぐに復活する不死身の剣士キョウシロウが強襲、さらにヨルとはライバルのはずの魔宴参加者「天才」サクラリスも「ボクと友達にならないかい。ナイトくん」とやって来て、ナイトたちは大混乱に陥ることになってしまいます。大規模すぎる必殺技で街を跡形もなく消し飛ばす大迷惑なキョウシロウ。一方、「友達になろう」と主張するサクラリスはあまりに頭が良すぎるせいか、なかなか会話が成立しません。とんでもないおバカな行動でナイトたちを振り回すナナも健在。ドンドン苛烈になっていくバトルとさらに複雑になっていく恋模様が非常に面白かったです。それにしても「一億円ほどあげるから友達になろう」とか、「命を助けてあげるから友達になろう」とか、「美味しいケーキをあげるから友達になろう」とか、サクラリスは「天才」なのか「単なる変人」なのか微妙でした。 ジャンルはマジカル・ラブコメ・アクション・ファンタジー。ラブコメディやアクションが好きな人にお薦めです。<終>ぼくと彼女に降る夜シリーズ
2009年10月05日
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